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ドライビット EIFS(外断熱仕上げシステム)のアイルランドおよび英国

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ドライビット EIFS(外断熱仕上げシステム)のアイルランドおよび英国
IBP リポート HTB-20/2007
ドライビット EIFS(外断熱仕上げシステム)のアイルランドおよび英国における
耐用年数の評価
パート 1: 発 泡ポリスチレン断 熱材 (EPS)を用いた EIFS
ドライビット・システム社のために実施
本リポートは、本文 6 ページ、23 の図から構成されています。
P. Slanina 工学士
D. Zirkelbach 工学士
ホルツキルフェン、2008 年 1 月 9 日
部門長
科学者
H.M. Kunzel 工学博士
D. Zirkelbach 工学博士
1
目次
1
概要
3
2
分 析の実 施
3
3
壁 アセンブリ
3
4
屋 外、屋 内条 件
4
5
結果
4
5.1
EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合
4
5.2
EPS を用いた EIFS をコンクリート壁に施した場合
5
5.3
EPS を用いた一般的なドイツ製 EIFS とドライビット EIFS との比較
5
6
結 果につ いての考 察 とまとめ
5
7
参 考文 献
6
8
図
7
8.1
付属文書 I ― 壁アセンブリ
7
8.2
付属文書 II ― 屋外、屋内条件
9
8.3
付属文書 III ― EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合
17
8.4
付属文書 IV ― EPS を用いた EIFS をコンクリート壁に施した場合
22
8.5
付属文書 V ― EPS を用いた一般的なドイツ製 EIFS とドライビット EIFS との比較
25
2
1 概要
外断熱コンポジット・システム(ETICS)は、英国やアイルランドでは外壁断熱システム(EWIS)、米国で
は EIFS(外断熱仕上げシステム)と呼ばれ、世界各国で施工されている。このことは、これらシステムが、
さまざまな地域の気候条件に適合性を持つのかという疑問を生じさせる。計算によって、さまざまな気候
条件下における温度・湿度特性を比較することができる。EIFS は、ドイツでは 30 年以上も使用されて
おり、従来の組積壁よりも優れた耐久性を示している。第一段階では、ドイツと、アイルランド、英国の気
候下におけるドライビット・システムの温度・湿度・温度特性を比較し、次に、ホルツキルフェンの気候下
で、一般的なドイツ製 EIFS との比較を行った。もし、両システムの温度・湿度条件が同程度であるなら、
ドライビット・システムについて、60 年を超える耐用年数を期待できる。
2 分析の実施
Fraunhofer-Institut fur Bauphysik で開発された WUFI® [1]は、過度熱および水分移動のシミュレ
ーション・ツールとして、検証済みのものであるが、これを用いることで、EN15026 [2]に従って、建築部
位/部材内の温度・湿度特性を調べることができる。この方法によって、2 つの一般的な下地構造上の
EIFS について、ドイツ、および、アイルランド、英国の異なる気候下における、5 年間にわたる温度・湿
度特性を測定できる。一定の時間内における異なる材料層での含水量や水の分布、また、動的平衡に
達した最終年に構造内にもたらされた温度、相対湿度、含水量のプロフィールについても、検討が加え
られた。
3 壁アセンブリ
EIFS は、80mm の発泡ポリスチレン断熱材上に施された 1.5mm のドライビット・フィニッシュと、メッシュ
を含む 3mm のドライビット・ベースコートからなる。この EIFS を、2 種類の下地構造上に施工した。1 つ
は、240mm のレンガ積の一枚壁で、室内側の壁面に通常の石膏プラスター(13mm 厚)を取り付けた
もの。この壁アセンブリについては、次の気候条件下で分析を行った。ホルツキルフェン(ドイツ)、シャノ
ン(アイルランド)、グラスゴーとマンチェスター(いずれも英国)である。その後、2 つ目の下地構造、すな
わち 200mm 厚のコンクリート壁に、上述と同じ内装石膏プラスターを取り付けたものについて、「最悪」
の気候条件下で分析を行った。両アセンブリを、付属書類 I の図 1、2 として示す。最後に、ドライビット
EIFS と一般的なドイツ製 EIFS について、両方の下地構造に施し、ホルツキルフェンの気候下で比較
を行った。
必要な材料データについては、発泡ポリスチレンや下地構造については WUFI®材料データベースを
利用し、ドライビット・システムについては、クライアントから提供を受けた。ドライビット・フィニッシュおよ
びドライビット・ジェネシス・ベースコートのμ係数、水分保持関数、液体移動係数については、クライア
ントから提供を受けた。
3
4 屋外、屋内条件
海抜 690m に位置し、アルプス山脈に面しているホルツキルフェンの平年の気候境界条件を、一時間
ごとに取った。それ以外の都市(アイルランドのシャノン、英国のグラスゴーとマンチェスター)の気候条
件については、METEONORM ソフトウェアを用いて、一時間ごとの値を生成した。これは、長期間に
わたって測定された月間平均値に基づくものである。我々の経験から見る限り、METEONORM モデ
ルは、ヨーロッパ、米国、近東については、実際の測定データと比較しても、十分に正確である。全ての
データについて、信憑性をチェックした上で、SI 単位に換算した。図 3 から図 10 に示すのは、4 地点に
おける、さまざまな気候パラメータ(気温、相対湿度、降水量、日照、風雨)である。4 地点共に、風は主
に西から吹いており、したがって、西向きのファサードに最も大きく風雨荷重がかかったので、計算はこ
れに基づいて行った。
室内気候は、冬季の 20℃、50% RH(相対湿度)と夏季の 22℃、60% RH の間で、(正弦関数で)変化
する。これらの値は、住宅の使用条件を表すものである。熱伝達係数は、屋外側の壁面では 17
W/m2K とし、屋内側の壁面では 8 W/m2K とした。外壁のドライビット・フィニッシュの断続的日照吸収値
は、0.4 の範囲であり、長波放射値は、0.9 である。全ての材料について、平衡含水量に相当する初期
含水量(新築状態)は、相対湿度 80%を用いた。計算は、10 月 1 日に開始した。
異なる気候条件下での温度・湿度の状態を比較するために、構造内の総含水量の時間的変化を評価
した。加えて、断面上の相対湿度と温度のプロフィール、ドライビット・システムと断熱材との境界面の相
対湿度の変化をプロットした。
5 結果
付属文書 III から付属文書 IV は、2 種類の下地構造に異なる断熱材を用いた EIFS を施工した場合
のシミュレーション結果を示す。付属文書 V は、EPS 上に施した一般的なドイツ製 EIFS とドライビット
EIFS との、ホルツキルフェンの気候下における比較を示す。
5.1 EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合
EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合の結果を、付属文書 III に示す。EIFS を施したレンガ壁
総含水量を、ホルツキルフェンについては図 12 に、シャノン、グラスゴー、マンチェスターについては図
13 にプロットした。いずれのケースでも、建築の翌年の年末には、動的平衡に達している。4 地点の含
水量には、ほぼ違いは無い。図 11 は、建築から 5 年目における断面(左側が屋外で右側が屋内)の温
度、相対湿度、含水量のプロフィールを示している。明色の部分は、計算期間中の値の範囲を示し、暗
色の実線は、計算期間における平均値を示している。赤が温度、緑が相対湿度、青が含水量である。
相対湿度について、レンガ壁と屋内のプラスターが、材料層全体を通じて、一定した分布を示している
のに対して、EPS 層内においては、屋外側から屋内側に向かって、RH の急激な低下が見られる。ホル
ツキルフェンにおいては、季節的な変動が、他の都市(シャノン、グラスゴー、マンチェスター)と比べて、
4
明らかに大きい。図 14(ホルツキルフェン)と図 15(その他の都市)では、断熱材とドライビット・ベースコ
ートとの境界面での相対湿度の変化を示す。RH については、全地点で、ほぼ同様の平均変化を示し
ているが、最も RH が高くなったのは、グラスゴーにおいてであった。これは、降水量が多く、温度が低
いためである。いずれの地点でも、RH が 100%になることは一度もなかった。すなわち、結露は生じな
い。
5.2 EPS を用いた EIFS をコンクリート壁に施した場合
付属文書 IV の図 17 は、ホルツキルフェンとグラスゴーにおいて、コンクリート下地構造に施した EPS
EIFS の総含水量の変化を示している。両地点とも、変化は極めて似通っており、3 年目以降に動的平
衡に達した。ホルツキルフェンにおいて、より大きな温度、RH の変動が見られたが、壁アセンブリ内の
相対湿度については、グラスゴーの方が若干高くなった(図 16)。断熱材とレンダー(下塗り)との境界面
における RH の変化を、図 18 に示す。最も RH が高くなったのは、グラスゴーにおいてであった。これ
は、降水量が多かったためである。いずれの地点においても、RH が 100%になることは一度もなかった。
すなわち、結露は生じない。
5.3 EPS を用いた一般的なドイツ製 EIFS とドライビット EIFS との比較
付属文書 V は、EPS を用いた一般的なドイツ製 EIFS とドライビット EIFS とを比較した結果を示してい
る。2 種類のシステムを、両方の下地構造に施した。図 19 は、5 年目における温度、RH、含水量の変動
を示している。左側がドイツ製 EIFS、右側がドライビット・システム、上がレンガ壁、下がコンクリート壁で
ある。総含水量の変化については、レンガ壁は図 20、コンクリート壁は図 21 にプロットした。いずれのシ
ステムでも、総含水量は、ほぼ同様の変化を見せている。ドライビット・システムで、総含水量の値が若
干、高くなっているが、これは、フィニッシュとベースコートの含水量が、より高くなっているためである。
断熱材とコーティングとの境界面における相対湿度の変化については、図 22(レンガ壁)と図 23(コンク
リート壁)に示した。この場所では、ドライビット・システムの方が、一般的なドイツ製 EIFS より、常に、いく
らか低い RH 値を示した。
6 結果についての考察とまとめ
EPS 上に施したドライビット EIFS は、4 地点のいずれにおいても、十分に妥当な温度・湿度特性を示し
た。レンガ、コンクリートの初期含水量は、おおむね 3 年の内に完全に乾燥する。壁アセンブリ内で最も
重要な場所であるベースコートと断熱層との境界面において、相対湿度が 95%を上回ることは一度も無
く、結露も生じなかった。このシステムは、レンガ、コンクリートのいずれの下地構造においても、調査し
た全ての気候条件下で、推奨できるものである。
5
80mm より厚い断熱材を用いることで、温度・湿度特性を、若干、向上させることができる。したがって、
80mm より厚い断熱材を用いてもかまわない。
ドライビット・システムは、アイルランド、英国の気候条件下で、ドイツの気候条件下におけるのとほぼ同
様の温度・湿度特性を示した。ただし、温度の極値はホルツキルフェンにおいてやや高く、含水量は、
特に冬場のグラスゴーとシャノンでやや高かった。しかしながら、その差は非常に小さく、壁の耐久性に
影響するとは考えにくい。1970 年頃に施工された既存のドイツ製 EIFS について、その修理状態を分
析するため、ドイツ各地で広範囲な実地調査が行われた。この調査によって、これらシステムの耐久性
が、レンガ壁を用いた従来型のファサードと同様の耐久性を備えていることが示された[3, 4]。したがっ
て、EIFS の耐用年数も、レンガ壁に施された従来型の左官塗りと同程度と考えられる。このことはすな
わち、ドイツの最先端の技術を用い、正しいメンテナンスを行うならば、EIFS を用いた外壁について、
60 年を超える耐用年数を期待できることを意味する。温度・湿度の負荷について言えば、アイルランド、
スコットランド、イングランドの気候条件はドイツのそれとほぼ同じであり、また、ドライビット EIFS の温度・
湿度特性は、一般的なドイツ製 EIFS と比べて若干優れていることから、EPS を用いた EIFS のこれら
の地域における耐用年数は、ドイツで調べた EIFS の推定耐用年数にほぼ等しいと推定できる。
7 参考文献
[1] Kunzel, H.M: 「建築部材内の熱と水分の同時移動: 簡単なパラメータを用いた 1 次元および 2
次元計算」 IRB-Verlag シュトゥットガルト(1995 年)
[2] EN 15026:2007 「建築部材および建築部位の温度・湿度性能 ― 数値シミュレーションによる水
分移動の評価」 CEN: ブルッセル、2007 年 24p
[3] Künzel, H., Ried, G. Kießl, K.: Praxisvewährung von Wärmedämmverbundsystem- en.
Deutsche Bauzeitschrift 45(1997), H. 9, 5, 5. 97-100.
[4] Künzel, H.: Warum sich Wämedämmverbundsysteme durchgeetzt haben – Vergleiche
mit andere Wandkonstruktionen. Bauphysik 20 (1998), H. 1, 5. 2-8.
6
8
図
8.1
付 属文 書 I ― 壁 アセンブリ
(レンガ壁、コンクリート壁に施した EIFS)
ドライビット・フィニッシュ
ドライビット・ジェネシス・ベースコート
EPS(熱伝達: 0.04 W/mK – 密度: 15 kg/m3)
レンガ積の一枚壁
内装プラスター(石膏プラスター)
図 1: WUFI®計算のための構造 ― バリエーション A: レンガ壁に施した EIFS
7
ドライビット・フィニッシュ
ドライビット・ジェネシス・ベースコート
EPS(熱伝達: 0.04 W/mK – 密度: 15 kg/m3)
コンクリート、C35/45
内装プラスター(漆喰)
図 2: WUFI®計算のための構造 ― バリエーション B: コンクリート壁に施した EIFS
8
8.2
付 属文 書 II ― 屋 外、屋 内条件
(ホルツキルフェン、シャノン、グラスゴー、マンチェスター)
風雨の合計[mm/a]
図 3: ホルツキルフェン ― 気候データ ― 年間の方向性の風雨荷重、降水量、日照(時間平均)
9
風雨の合計[mm/a]
図 4: シャノン ― 気候データ ― 年間の方向性の風雨荷重、降水量、日照(時間平均)
10
風雨の合計[mm/a]
図 5: グラスゴー ― 気候データ ― 年間の方向性の風雨荷重、降水量、日照(時間平均)
11
風雨の合計[mm/a]
図 6: マンチェスター ― 気候データ ― 年間の方向性の風雨荷重、降水量、日照(時間平均)
12
図 7: ホルツキルフェン ― 年間の屋外、屋内の気温、相対湿度(時間平均)
13
図 8: シャノン ― 年間の屋外、屋内の気温、相対湿度(時間平均)
14
図 9: グラスゴー ― 年間の屋外、屋内の気温、相対湿度(時間平均)
15
図 10: マンチェスター ― 年間の屋外、屋内の気温、相対湿度(時間平均)
16
8.3
付 属文 書 III ― EPS を用いた EIFS をレンガ壁 に施 した場 合
(ホルツキルフェン、シャノン、グラスゴー、マンチェスター)
図 11: EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合
シミュレーション 5 年目の断面の温度(赤)、RH(緑)、含水量(青)の最小、最大、平均プロフィール
17
図 12: ホルツキルフェン ― EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合(初期
水分が含まれる)。構造内の総含水量についての表面変化。
18
図 13: シャノン、グラスゴー、マンチェスター ― EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合(初期水
分が含まれる)。構造内の総含水量についての表面変化。
19
図 14: ホルツキルフェン ― EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合(初期
水分が含まれる)。コーティングと断熱材の境界面における相対湿度の変化。
20
図 15: シャノン、グラスゴー、マンチェスター ― EPS を用いた EIFS をレンガ壁に施した場合(初期水
分が含まれる)。コーティングと断熱材の境界面における相対湿度の変化。
21
8.4
付 属文 書 IV ― EPS を用 いた EIFS をコンクリート壁に施 した場 合
図 16: EPS を用いた EIFS をコンクリート壁に施した場合
シミュレーション 5 年目の断面の温度(赤)、RH(緑)、含水量(青)の最小、最大、平均プロフィール
22
図 17: ホルツキルフェンとグラスゴー ― EPS を用いた EIFS をコンクリート壁に施した場合(初期水分
が含まれる)。構造内の総含水量についての表面変化。
23
図 18: ホルツキルフェンとグラスゴー ― EPS を用いた EIFS をコンクリート壁に施した場合(初期水分
が含まれる)。コーティングと断熱材の境界面における相対湿度の変化。
24
8.5
付 属文 書 V ― EPS を用 いた一 般 的なドイツ製 EIFS とドライビット EIFS との比較
図 19: 一般的なドイツ製 EIFS とドライビット EIFS との比較。いずれも EPS を用い、レンガ壁(上)、コ
ンクリート壁(下)に施したもの。
シミュレーション 5 年目の断面の温度(赤)、RH(緑)、含水量(青)の最小、最大、平均プロフィール
25
図 20: 一般的なドイツ製 EIFS(上)とドライビット EIFS(下)との比較。いずれも EPS を用い、レンガ壁
に施したもの(初期水分が含まれる)。構造内の総含水量についての表面変化。
26
図 21: 一般的なドイツ製 EIFS(上)とドライビット EIFS(下)との比較。いずれも EPS を用い、
コンクリート壁に施したもの(初期水分が含まれる)。構造内の総含水量についての表面変
化。
27
図 22: 一般的なドイツ製 EIFS(上)とドライビット EIFS(下)との比較。いずれも EPS を用い、レンガ壁
に施したもの(初期水分が含まれる)。コーティングと断熱材の境界面における相対湿度の変化。
28
図 23: 一般的なドイツ製 EIFS(上)とドライビット EIFS(下)との比較。いずれも EPS を用い、コンクリ
ート壁に施したもの(初期水分が含まれる)。コーティングと断熱材の境界面における相対湿度の変化。
29
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