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相馬市で震災救援 に 奮闘 ホースセラピー実践の場

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相馬市で震災救援 に 奮闘 ホースセラピー実践の場
ひ と
川嶋 舟さん
東京農大農学部講師
相馬市で震災救援に奮闘
ホースセラピー実践の場
常磐線の電車が福島県・新地駅構内で脱線、転
覆した。4両の車体は激しく折り重り、駅舎も倒
壊した。大震災の津波による惨状を伝えた報道写
真は衝撃的だった。
「あれに乗っていたんですよ」。あっ
さりと、そう言われて驚く。
電車は地震には持ちこたえた。しか
し、安堵する暇もなく車内に津波情報
が伝えられた。とっさに高台に避難し
ようと思った。同じ車輌の乗客にも呼
びかけ、協力して約1キロ離れた町役
場に誘導した。
津波が駅と電車を襲ったのは、その
後だった。乗客約40人は乗り合わせた
警察官の誘導もあって無事だった。そ
れぞれが九死に一生を得た。
「被災地ではもっと悲惨なこと、す
さまじいことがあまりにも多くありま
したから…」。目撃したあれこれを思っ
てだろうか、いつもはさわやかな、そ
の表情が曇った。
秋篠宮妃紀子さまの実弟である。皇
室に嫁ぐ姉を、りりしい学習院高等部
の制服姿で見送ってから、もう20年に
なる。麻布大学獣医学部から東京大学
大学院農学生命科学研究科に学び、獣
医師の資格を持つ。アニマルセラピー
(動物介在療法)、
とくにホースセラピー
を研究、実践している。
「動物と触れ合い、きっかけとして
コミュニケーション能力が高くなるな
ど、人間が生活に必要とする能力向上
にさまざまな効果をもたらす。生活の
質の向上につながるといえるでしょう。北海道和
種馬など日本在来馬の新たな活用についても研究
しています」
5年前に結ばれた妻麻紗美さんは、野馬追の神
事で知られる相馬市の相馬中村神社宮司の長女
で、禰宜を務める。馬を愛好する者同士、馬が取
1973年静岡県生まれ。東京大学大学院農学生命
科学研究科獣医学専攻(博士課程)修了。同研
究科研究拠点形成特任研究員などを経て、2006
年から東京農大農学部バイオセラピー学科講師。
著書に、馬事知識普及公開セミナー用テキスト
─新たな馬の利活用治療的乗馬─、など。
り持った縁だった。神社のそばに自宅を構
え、大学にはいわば単身赴任の日々だ。
ホースセラピーの実践の場の一つは、
相 馬 市 に あ る。NPO法 人「 馬 と あ ゆ む
SOMA」を組織した。神社境内の厩舎で
ポニーなど馬10頭を飼育して、市内の養護
施設や保育園、幼稚園などで馬と親しむ活
動の輪を広げている。
大震災のあの日も、相馬市へ向かう途中
だった。神社や自宅周辺の被害は軽微だっ
たが、海沿いの一帯は水田も港も甚大な被
害を受けた。
「できることは、なんでもやろう」。行動
は素早かった。震災の翌々日には車で上京
した。馬の仲間、学生時代の友人らの協力
を得て、飲料水や食料などを満載したト
ラックでとんぼ返りした。それを何度も繰
り返した。
東京農大の「東日本支援プロジェクト」
も、相馬市を対象に現地調査が始まった。
その一員として、学生ボランティアの組織
化に取り組む。野馬追の馬たちもだいぶ犠
牲になったから、その馬の保護、伝統の継
承も大きな課題だ。被災した子どもたちや
その家族に、馬と関わる事によって楽しい時間を
持ってもらうホースセラピーも提供したい。
「これからも長期にわたって、やらなければな
らないことが山積している」。そう覚悟を決めて
いる。
(文・秋岡伸彦、写真・神本洋治)
新・実学ジャーナル 2011.7・8
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