...

八雲国際演劇祭実行委員会(島根県松江市)

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

八雲国際演劇祭実行委員会(島根県松江市)
受賞団体資料
八雲国際演劇祭実行委員会(島根県松江市)
ボランティアが輝いて活動している姿
これは、①三者が手をつなぎ、②「演
を見て、一劇団による演劇活動だけで
劇」の浸透を図るとともに、③国際社会
ほぼ中央、島根県東部に位置し、古く
なく、地域の人々を巻き込んで「国際演
で生きていく力を育てながら、④ディ
は古代出雲の中心として、また江戸時
劇祭」を開催することで、本当の意味
スカッションを重ね、⑤準備のプロセ
代には城下町として栄えたまちで、明
の<文化による地域づくり>ができる
スを大切にして丁寧な振り返りの上に
治4年には県都となりました。昭和26
と確信しました。
改善を続けていく、というものです。
1.松江市八雲町の状況
八雲町のある松江市は、山陰地方の
年に「松江国際文化観光都市建設法」が
このようにして、「八雲国際演劇祭」
この「活動の指針」を基にして準備はス
タートしました。
制定され、国際文化観光都市として、
は、「劇団あしぶえ」という一アマチュ
また、出雲・宍道湖・中海地方拠点都
ア劇団の<長年の思いと体験>がきっ
市地域に指定され、山陰の中核都市と
かけとなって、
「地域に誇りを持ちたい」
演を、415席の「アルバホール」で特別公
して発展しています。
という村民と「地域を活性化させたい」
演やセレモニーを開催することになり
という行政がひとつになって生まれま
ました。資金不足については助成金・
した。
寄付金・カンパ集めに奔走し、交通の
八雲町の前身である旧八雲村は、隣
に松江市を控えた人口7千人の都市近
郊農村であり、主な産業は農林業で、
しかし、村民・行政・劇団が全員ボ
「しいの実シアター」でコンテスト公
便の悪さは輸送ボランティアが補い、
しいたけ、ワサビ、メロンなどが特産
ランティアスタッフとなってスタート
参加劇団員の宿泊はすべてホームステ
品でした。
はしたものの、「国際演劇祭」がどんな
イで対応しました。通訳も3人のプロ
演劇祭開催が決定したころの八雲村
ものであるかを知っているのはあしぶ
以外はボランティアでまかないました。
は、松江市に隣接している地域ではベ
えだけで、村民も行政職員も未経験の
このように「八雲国際演劇祭」は、い
ッドタウン化が始まっていて人口が増
ことでした。そこで、平成9年度から
くつもの悪条件を乗り越えてスタート
加していましたが、村の奥、中山間地
の3年間、文化庁の助成を受けて公演
し、ボランティアスタッフの多大な労
域ではところどころ過疎化が始まって
やワークショップのほかに、国内外の
力と工夫によって、「プレ大会」
「第1回
いました。
演劇人を招いてのシンポジウムや、地
演劇祭」
「第2回演劇祭」ともすべて成功
域での勉強会などを重ねてきました。
裡に終了したのです。
平成17年3月31日に、八雲村は松江
市・八束郡6町と合併し、人口19万4
これらの準備の中で、村民・行政・
千人、面積530平方キロメートルの海、
劇団はそれぞれ考え方や仕事の進め方
山、湖という豊かな自然に恵まれ、そ
が違うため、三者が心をひとつにして
○広がりを求めて
して風情のあるたたずまいを併せ持つ
同じ方向を目指して活動するためには
回を重ねるたびに参加国・参加地域
新「松江市」となりました。
「指針」が必要であると痛感しました。
3.活動の成果
が増加し、観客も全国各地から訪れて
2.「八雲国際演劇祭実行委員会」
の
活動内容
昭和41年、松江市で「劇団あしぶえ」
を創立しましたが、この地域において
「演劇」はなかなか認めてもらえない文
化であったため、<演劇を人々の暮ら
しの中へ浸透させたい>と強く思うよ
うになり、拠点になる自前の劇場を建
てたいと土地探しをしていました。
コンテスト上演作品(スペイン)
第2回演劇祭開会式(式典デザイン委員会)
ベルギーの演劇学校の校長先生演ずるクラウン。
子どもたちに大人気(上演委員会)
手づくりのウェルカムバッグを渡す(登録委員会)
そして平成4年、「これからは文化に
よる施策が地域を活性化する」と考えて
いた八雲村と出会い、両者の思いが一
致し、国内初の公設民営劇場「しいの実
シアター(132席)」が建設されることと
なりました。
平成6年、あしぶえは「アメリカ国際
演劇祭」に宮沢賢治原作の「セロ弾きの
ゴーシュ」をもって参加し「第1席」を獲
得。このとき、観客の反応のすごさと、
− 38 −
います。ボランティアスタッフも「第2
か>を重点的に学び、観客や参加劇団
回」では奈良、大阪、京都などからの参
員からは「自然体で心あたたかい演劇
加や、他県の大学からの学生参加もあ
祭」という評価を得ています。
学力も向上してきています。
4.今後の課題と展開
このほか、小・中学生への演劇の浸
八雲村は合併して人口約20万人の「松
透と多文化理解の推進のため、学校公
江市」となり、劇団あしぶえも法人格
演や参加劇団員が学校を訪問するプロ
を取得して「特定非営利活動法人あし
グラムを実施しています。また「第2回」
ぶえ」となりましたが、演劇祭の創造精
が、終了後は充分な「振り返り」を行っ
では、中・高校生と20代の若者だけで
神と開催意志は継続され、すでに「第3
て記録をまとめるとともに、ボランテ
「子どもの広場委員会」が運営され、好
回演劇祭」の実行委員会では本格的な準
り、総勢609人にものぼりました。
○継続は力なり
八雲国際演劇祭は3年毎の開催です
ィアスタッフのレベルアップ研修会や
評を得ました。
備が始まっています。
多文化理解講座などを開催しています。
今後は、より多くの子どもたちへ演
劇祭参加の機会をつくり、将来的には
○地域の底力が演劇祭を支える
「国際子どもフェスティバル」も併催し
会場周辺に宿泊施設がないため、国
て更なる広がりをもたせたいと考えて
内外からの参加劇団員・審査員は全て
います。また、観客数を増やす企画を
ホームステイですが、ビジターの多く
立てるとともに、海外参加劇団員が再
は、演劇祭終了後のアンケートに「生涯
度訪れる機会をつくるなどして、地域
忘れられない思い出」と綴っていました。
の「グリーンツーリズムの取組み」と連
ホストファミリーも、国内外の演劇人
動させ、経済効果をアップさせること
から地元の歴史文化遺産・特産品・自
学校訪問での表現活動(学校活動委員会)
も今後の課題と考えています。
然環境などの良さが語られることによ
さらに、マーケティング専門のスタ
り、自らの地域を再発見する機会とな
ッフからインターネット活用について
っています。
学び、世界各地からの問い合わせや情
報収集、情報発信に役立っています。
そして、(社)企業メセナ協議会助成認
定活動団体の認定を受けたことで、地
域企業からの理解と信頼を得、経済的
支援が受けやすい環境も整いました。
集めた資金は、工夫し大切に使うとい
う精神の醸成もあり、「第2回演劇祭」
食事委員会の手づくり料理
のときに各委員会から提出された領収
ホームステイの様子(宿泊委員会)
書は、百円均一ショップのものが束に
なるほどでした。
この他、ボランティア参加をしてい
ない村民についても、地元手漉き和紙
○成 果
を活用した式典装飾、木材利用のパー
一番の成果は、村民が「地域に誇りを
ティトレイ製作、地元太鼓グループに
持ちはじめた」ことです。「ただの田舎」
よる式典演奏、高齢者による花づくり
という意識しかなかった村民が、他地
や民謡披露など、生きがい創出・住民
域の人々から「文化度の高い村」と評価
の活力創造といった地域活性化に影響
され、自信と誇りをもつようになりま
を与えています。
した。
交流委員会が準備した「さよならガラパーティー」
また、ボランティアスタッフが自ら
○創意工夫を重ねて
企画し、準備し、開催して徹底的に振
「活動の指針」をつくったことが、何
り返りをしています。この体験は家庭
よりの「創意工夫」です。20ほどある委
や学校、職場はもちろん、地域におい
員会においても、会の最初に「活動の指
ても活かされ、
「人づくり」から「地域づ
針」について充分ディスカッションした
くり」へと確実につながってきていま
委員会ほど、その後の準備が順調に進
す。
み、その結果、観客にも参加劇団員に
さらに、「演劇」はマイナーと叩かれ
も喜ばれ、ボランティア自身の充実感
一般にはなじみのない文化でしたが、
も感動も大きいものとなりました。
だんだんと身近なものとなり、鑑賞レ
また、「多文化理解」を推し進めながら
ベルも上がってきました。子どもたち
の準備も効を奏しました。特に、通訳、
は、学校公演、学校訪問、ホームステ
登録、食事、交流、宿泊などの委員会
イなどの体験から海外諸国に興味関心
では、<真のホスピタリティとは何
をもち、英語を学ぶモチベーションや
− 39 −
閉会式で感謝の拍手を受ける中学生ボランティア
Fly UP