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膜の作製と 味 ・ 匂い識別システムへの応用

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膜の作製と 味 ・ 匂い識別システムへの応用
計測自動制御学会東北支部第l了4回研究集会(l那柑.5劇
資料番号174−l
磁性半導体厚膜の作製と
味・匂い識別システムへの応用
PreparationandApplicationtoThste/OdorRecognitionSystem
OfMagneticSemiconductorThick−Film
○阿部 孝弘.久保市 真悟,久保田 恒夫,高橋 政雄,佐々木 圭一,
長田 洋,関 享士郎,中村 誠串
07兢ahiroAbe,Sllill旦OKuboichi,lhJleOKubo(a,Mas且OThkahashi,
KeiichiSasaki,HiroshiOsada,KyoshiroSekiandMakotoNakamura*
岩手大学,傘サンデン
IwateUniversi耽♯sandenCo.,Ltd.
キーーワード:磁性半導体(m喝neticsemiconductor).電気泳動(electrophoresis),
共沈法(coprccipitation),味・匂い識別システム(tasLe/odorrecognilionsyslenl)
連絡先:〒020一日551岩手県盛岡市上田4−3−−5 岩手大草工学部電気電子⊥学科
電子システム工学講座
関享士恥Tbl,019(621)63町 Fax.O19(621)6380,E・mail:Seki@iwate−u.aC.jp
1はじめに
センサは人の五感を再現する物であり,
いてニーズは高まってきている11即〕.嘆賞,
味覚センサの実現が困難な埋「上1として,視
人の持つ主観的かつ曖昧な感覚を定量化す
覚,聴覚,触覚センサは単一の物理量をと
る目的で作られる.現在.視覚,聴覚,触
らえればよいのに比べ,嗅覚,味覚センサ
覚に対してはCCDカメラ,スピ←カ,圧
は非常に多種の化学物質の刺激を総合的に
力センサ等がよく知られ,各分野で利用さ
とらえる必要があることが挙げられる】).
れている.それに対して,喚覚,味覚に応
味や匂いを測るといった場合,一般的に期
答するセンサは未だ発展段階にあるが,食
待される結束はその食品に対する人の感覚
品の品質管理やプロセス管理等の分野にお
量であるが,人の感覚は極めて主観的なも
のであり,かつ内的状態,外的環境等に影
響されるものでもある.−−」L■方,工業的に有
用な味,匂いとは,人の内・外的環境等に
影響を受けない客観的な食品の味や匂いの
基本要素を測定した物といえる.
フェライトと呼ばれる遷移金属酸化物を
ペースとした多孔質セラミックスである磁
性半導体は,スピネル構造を持ち,フェリ
磁性の磁気特性ならびにサーミスタやパリ
スタに類似した電気的特性を示す.磁気特
性は温度依存性を有し,.磁歪や焦性磁気効
果を示すため.附こ温度,圧九 音波及び
FiE.1PreparatioLtPrOCeSSOfMSS.
光センサとしての応用が研究されている
耶).また,電気的特性は温度,ガス,エッ
構造や組成の均一性の面で理想的な物が得
センスや味イオンに応答し,味センサや匂
られ,2価の金属イオンやアルカリ添加量
いセンサへの応用が可能である1)・5).特に
及び酸化温度によって粉末の粒子径を制御
厚膜型の磁性半導体センサは,これらの応
できることが挙げられる.また彼の成膜行
答性が良好であり,作製法も比較的容易で
程で電気泳動法を用いることを考慮すると,
ある.
フェライトを粉末の状態で得られることは
本報告は,厚膜化した磁性半導体センサ
都合が上い.
(M喝neticSemiconductorSensor:MSS)の作
共沈蛙はMllコ ̄■■,ヱ11コ十,Ni二十等の2価の金
製と,それを利用した味および匂い識別シ
属イオン(M6ユリを含む第1鉄塩水溶液から
ステムの構成について検討したものである.
出発し,アルカリを添加して2価金属を水
酸化物として沈殿させ,これを空気酸化す
2 MSSの作製
ることでフェライト粉末を得た(Fig.2).
Fig.1にMSSの作製工程を示す.まず共
以下に作製条件を示す71.
沈法によりプ.ェライト粉末を生成し,それ
① 出発推量はユ00nllとし,FeClコおよぴ
を電気泳動法により厚膜化した後,焼成を
M∈Clコの濃度の合計が0.7加101月になる
行って強度を加える.この3つの工程を経
ように水に溶かす.
ることで,膜厚が10∼20叩lのMSSが得
② 金属イオンをl,44n101/1のNaOHで沈殿
られる.
2.1共沈法
スピネル型フェライトはMeFe凡(M亡:
鉄属遷移金属)で表される.その生成怯は
いくつかあるが,本研究では共沈法占)を用
いることとした.その理由としては,微細
Fig.ユCoprecLPltalioll,
2
ヱ.2 竜気泳動法
させてから,3惜に希釈する.
③酸化時は混濁摘の温度を 80℃に保
ち.21/minで8時間空気を吹き込む.
味や匂いの識別においては,前述したよ
うに非常に多種の化学物質の刺激を総合的
にとらえる必要があるため,複数(マルチ
チャネル)のセンサが用いられるのが普通
である.MeClユの種類と混合比を恥bl亡Ⅰ
Fig.4Electropl10reSis.
のように変えることで4種類のスピネル型
前節で作製Lたフェライト粉末を用いて
多元フェライトを生成し,応答特性の異な
電気泳動法によりを成膜した.電気泳軌任
るセンサを生成した.Fig.3は.生成した
iLま,組成のずれや異相への転移などが起こ
4種類のフェライトのⅩRロバターンを示
らず,粉体の特性をそのままフイルムに生
す.同固より,4種類ともスピネル構造特有の
かすことが出来る.Fig.4に示すように,コ
ピークを示しており,フェライト化していることが
ロイド状またはそれに近い状態の粒子を分
分かる.
散媒中に分散させ,これに対向電極を浸し
て直流電界を加えるとどちらか−一一方の電極
Tht)lelMixiJl旦ra(iosofMechloride.
CHl
上に粒子が凝集して析出する即.分散媒と
MnCtコ:ZnClヱ=7:ヨ
CH2
NiClユ:Z瓜Clコ=3:7
CHヨ
CuClコ:ZnClユ=4:6
CH4
して挿発件が非常に高く彼のT程に影響を
与えないビリジン(C5H5N)を用いた.
ビリジン30ml中にフェライト粒子を祖
M旦Clコ:MnCIコ=5:5
の割合で分散させ,これを泳動溶推とする.
直径20mmlの円筒状陽極の中心に直径2111m
のロッド状インコネル電極を配置したもけJ
を泳動癖掛こ浸し王0〔Ⅳ/亡111の直流電界を5
秒間印加して成膜(グリーンブイ/レム)L
︼爛已∋ご已一爛モく
た.
この工程で用いた陰極は悍膜の基板とな
り.また味・匂い識別システムでの使用時
に応答信号を取り出すための電極としても
利用する..基板(電極)に用いたインコネル
は1260℃までの高温において耐酸化▲性を
40
ユ0
50
60
有し,耐食性に優れ,原子炉など■Fも使用
28【d確.】
①Mn−Zn(CIIl)
②Nトヱn(CH2)
③cu−加(CH3)
④M昌一Mn(CH4)
される材料である.フェライトとの相性も
よく,他の材質でよく見られる焼成彼の膜
FIg.3ⅩRDp正妃ms.
のはく離などの問煩がないため,MSSの
3
基板(電極)として最適である.
して取り出すが,匂い評価型MSSでは悍
2,3 焼成
膜表面から基板との界面までの間の電気抵
電気泳動を行ってグリーンフィルムを形
抗を測定する.厚膜に直接はんだ付けして
成Lた段階では,粒子間の結合はまだほと
配線を行うと膜を変性させてしまう可能性
んど無い.従って焼成プロセス等による結
があるため,導電性の樹脂材料を用いた.
合力の強化が必要である.また厚膜と基板
さらに強度不足を補うため,電極を設置し
(電極)との界面結合も焼結時に生じるE).
たアルミナ基板に接着剤で固定Lた.電気
MSSの焼成温度プロファイルをFig.Sに
抵抗を測定するLCRメい一夕とは,アルミ
示す.CH3 のCu−Zn フェライトを除き
ナ基板上の電極を介して接続する.
1100℃で焼成した.Cu一三nフェライトは,
3.2 昧・匂い識別システムの構成
CuとZnの特質により他よりも低温で焼結
Fig.7に味・匂い識別システムの構成図を
が進むため100D℃で焼成した.焼成時間
示す.味の測定では試料溶液をビトー
は一律30分間である.
50ml注ぎ,その中に4種のMSSと参照電
カに
極(銀一塩化銀電極)を浸す.試料溶液の温
度は20℃に保った.匂いの測定は密閉容
nU
00
ハリ
nU
El亡Ch・由仁
nU
′﹂U
nU
︻p︼山占冠h乱∈#
Th止k丘1m
4
︹U
(a)Be砧renⅦSkinき
T6nOnl11b亡
2
4
6
8
¶m巳【houT]
FiE.5Sinterl喝pmtile.
(b)Ton℃aSur亡taSt亡
8 昧・匂い祉別システムの構成
および測定結果
3.1センサの加工
弛
10
味・匂いの測定の際に測定対象の接触す
\
る面積が[定になるように,MSSにマス
na乱Ib畠Ir且te AILm
キング加工を施した.Fig.‘にマスキング
前のMSS,味評価型MSSおよび匂い評価
型MSSの形状を示す.円形の窓を向かい
合わせに開けた熱収縮チューブを用い厚膜
(C)T口11裾aSu帽Odor
部をコーティングLた.
味評価型MSSでは厚膜の電位を出力と
Fig.dShap8SOrMSS.
4
:mTI
ついてはそれとの比を求めた.
Fig.8∼13は,9種類の飲料(それぞれ
3種類のお茶,コ‥ヒーーおよぴワイン)に
対する味・匂いの測定結果をレーダーチャ
ーートで表したものである.同凶より,味・
匂いともにそれぞれの食品に対して異なる
パタ←ンを示Lており,これらの食品を識
別できることが分かる.また,同じ種類の
食品に対しては異なる食品と比較して類似
したパターンを示し,人間の感覚に近い応
答であると言える.
レーダーチャートを見ただけではその食
品の味・匂いの慣向を読みとるのは国難で
あるため,主成分分析という手法を用いて
Fig・7CoIⅦtr叫ionortasle血dor
味・匂いセンサより出力されたデータを要
rt∋COgnl【10nSySt61n・
約して散布図(幸成分マップ)に表lノた,味・
匂いの第1主成分と第2主成分の累積寄与
器中において行い,4種のMSSを設置し
率はそれぞれ91.9コ%,9臥57%であったた
て試料溶聴0,11nlを注入した.容器中の温
め,ともに第1主成分と第2主成分のみで
度は30℃に保った.
すべての情報を含んでいると考えられる.
前述のように.味の評価ではMSS と参
よって第2主成分までを取り上げ望次元の
照電極間に現れる電位差を,匂いの評価で
散布囲とLてプロットしたり1.
はMSSの電気抵抗を応答信号とし,それ
Fig.14,15に,レ←ダーーチヤ・一トで表L
ぞれバッファアンプ,LCRメータに入力し
たものと同じ結果を主成分マップで示す.
た.各4つの信号はチャネル切り換え用の
同固より,同じ種類の食品は近接したとこ
スキャナ回路により逐次選択されト〟Dコ
ろにまとまって分布する傾向があり,類似
ンバー
タによりデジタル信号に変換した後,
した味・匂いをその分布により識別できる
コンピュータに入力されてデータの記録・
ことが分かる.
処理が行われる.コンピュータのディスプ
レイに表示される出力値を見て,安定状態
に達したところで測定を終了した.
3.3 測定結果
測定したデータが各センサの特性を公平
に反映するように.結果の表示には相対的
な値を用いた.精製水に対する応答を基準
とし,味についてはそれとの差を.匂いに
5
ト→CH2
ートト」Cl一口
CHユ
CHユ
ー由一t巳aA−う←kal〕−1ト・・・t一∋aC
ー▲血−teaA・一路・・・・lea日・・・・(】−kaC
Fig・ZIT耶拇PatternSfbrvarioust6aS,
Fig.110dorpattenlSfbrvariousteas.
1」†トtCHコ
CH4トト」・−ト
ClI3
CH3
一也ーC〔】11盲亡A一一打−Cnf龍:EB−{:トC〔正由仁亡
・・・・・血一亡0仕盲∈A・・・・・甘・・・・亡8F臨e円・・・・・0一口口r托∈C
Fjg.1ユOdorpatterns払r
Fig.9Thstepattcrn$fbrvariousco脆6S.
various亡0仔ヒes.
十十十」CHコ
CH3
CHユ
ー止・・・・・・血亡W山亡A−う←血亡Win6B
・・「ト・・・ri(;eWiIltコA−う←ri仁巳Whl亡D
・・・・{ト・血8Wi岬C
・・・・・0−ric亡WiIlee
Fig.10Thstepatternsfbr
Fig.130dorpatter11Slbr
YanOuS n亡e・Wln仁S.
VanO11S;rlG6−WlnES.
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▲
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PrillCIPalconlPOllentl
Pri[1CipalconlpD11eLltl
Fig.15PrillCIPalco111POIlelltattalysIS
Fig.14PrincLpaLconlPOllenLallqlysIS
Ofrespons亡tOlasl亡.
OrreSPOIL旦e†0□dor・
4 むすび
参考文献
以上,磁性半導体厚膜MSSを利用した
1)都甲:味覚センサ,朝倉書店(1鱒3)
2)宮山:人の五感とセラミックセンサ,
味及び匂いの識別システムの構成について
報告した.
技報堂出版(l粥明
3)新札 武軋 原田:ガスセンサとその
本報告で明らかになったことを次に要約
する.
応用,パワーー杜(19郎)
(1)磁性半導体厚膜MSSを用いること
4)大豆牛乳 吉田,干葉,長田,関,吉
により,昧・匂い識別システムを構
田:磁性半導体悍膜の作製と味および
成できる.
匂い評価システムへの応用,計測自動
制御学会東北支部第167 回研究集会
(皇)種類の異なるスピネル型多元フェラ
イトを用いることで,様々な物質に
【167一夕](1!拍7)
封大豆生乳 吉恥 阿軌 T」尭.植軋
対して応答特性の異なるセンサを作
吉田,長田,関:磁性半導体を用いた
製できる.
昧および匂い評価システム,電気関係
(3)レ←ダ←チャーユト,主成分マップ等
を用いることで味・匂いセンサの出
学台東北支部連合大会LユH‖lウ叩
力を人間の感覚でとらえやすい形に
6)平乱 奥谷,尾島:フェライト 丸善
表せる.
(1986)
今回作製したMSSは,作製が比較的容
7)木山:水酸化鉄(Ⅲ)(Ⅲ)の化学,粉末
および粉末冶金,第2コ巻第]号〔1卯可
易であり,かつセラミックスであるために
即永井正幸,山「仁大:機能性セラミッ
耐久性に富む.今後はデー【タ処理の面で,
ニュ←ラルネットワークや多変量解析など
クフイルム,技報堂出版(1卵1)
9)次田隆志,加藤博通=新しいプレ←バ
を用いた自動認識システムを導入して,
後々には全自動の味■匂い識別システムを
ー分析技術とその応用,食品工業,Ⅵ〕Ⅰ.
構成する予定である.
加,No.14(1別D)
7
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