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H27特研保健体育〈研究報告書〉

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H27特研保健体育〈研究報告書〉
研究主題
運動の楽しさやできる喜びを実感できる生徒を育む指導の工夫
-
マット運動における、互いに高め合う、学び合い活動を通して
前橋市立木瀬中学校
Ⅰ
主題設定の理由
-
井上 剛文
一方、指導上の課題として、生徒相互が励
ましたり助言したりする学び合いの場を十分
中学校学習指導要領解説保健体育編の改訂
に保障できていないので、生徒同士で協働し
の基本方針の中で、
「体育については、筋道を
ながらよりよい方向へ改善しようとする指導
立てて練習や作戦を考え、改善の方法などを
が十分できているとはいえない。
互いに話し合う活動などを通じて理論的思考
これらを改善するためには、互いに高め合
力をはぐくむことにも資することを踏まえ、
う、学び合い活動を行うことで、運動の楽し
それぞれの運動が有する特性や魅力に応じて、
さや、できる喜びを実感できる生徒を育む指
基礎的な身体能力や知識を身に付け、生涯に
導の工夫が必要であると考えた。
わたって運動に親しむことができるように、
本研究では、生徒にとって苦手意識の強い
発達段階のまとまりを考慮し、指導内容を整
「マット運動」の実践を進めていく中で、運
理し体系化を図る」としている。
動の楽しさや、できる喜びを実感できるよう
また、群馬県の本年度の「学校教育の指針」
の「保健体育科の指導の重点」では「一人一
にするために、以下のことを改善の視点と考
えた。
人の運動量を確保するとともに、他者と協働
1つ目は、技能のポイントを正しく理解し、
した学習活動を設定しましょう」と示されて
技がよりよくできるようなイメージをもたせ
いる。
ることである。2つ目は、自ら課題を発見し、
さらに、本年度の前橋市保健体育科指導の
修正・改善に向けての学び合いが活発に行わ
努力点には「発達段階に応じて、運動のねら
れるようにすることである。3つ目は、意欲
いや技能ポイントを示して教え合い、学び合
的に取り組めるようにしたり、課題が解決し
いのある協働的な学習を取り入れたり、能力
ているという達成感を得られるようにしたり
に応じて段階を踏んだ練習の仕方を取り入れ
することである。
たりすることで、児童生徒ができる喜びや技
互いに高め合う、学び合い活動を通して、
能の高まりを実感できるような指導を工夫す
技能のポイントを正しく理解し、自他の課題
る」と示されている。
を解決するために他者と協働しながら学んで
本校生徒の保健体育科の実態については、
いく。その中で、わずかな改善でも達成感を
学習意欲が高く、真面目に取り組んでいるが、
得られることができれば、運動の楽しさやで
運動が得意な生徒と苦手な生徒の二極化が進
きる喜びを実感できる生徒を育むことができ
む中で、授業への取り組みが消極的になって
るであろうと考え、本主題を設定した。
いる生徒が見られる。また、自ら課題を発見
したり、解決していこうとしたりする姿が見
Ⅱ
られないといった課題がある。
- 127 -
研究のねらい
運動の楽しさやできる喜びを実感できる生
とは、大変重要である。
徒を育むために、互いに高め合う、学び合い
「運動の楽しさを実感する生徒」とは、
「活
活動を取り入れたことの有効性をマット運動
動が楽しいな」
「 またやってみたいな」
「 次は、
における実践を通して明らかにする。
○○してみよう」というように運動に価値を
見いだし、活動自体を楽しんでいる姿と考え
Ⅲ
研究の見通し
る。また、一人では学べないことや克服する
ことが困難なことを他者と協働して学んでい
マット運動において、互いに高め合う、学
くことに意義を感じ、
「楽しさ」を感じている
び合い活動を充実させることにより、運動の
姿も含まれると考える。
楽しさやできる喜びを実感できる生徒を育成
「できる喜びを実感する生徒」とは、
「でき
することができるであろう。
なかったことができるようになること」や「記
録が向上すること」が一番であるが、
「完璧と
この見通しにせまるために、以下の 3 つの
はいえないが、少し改善したこと」や「でき
手だてを講じる。この3つの手だてを全体と
るようになるために努力したこと」に達成感
して機能させ、互いに高め合う、学び合い活
を得られている姿であると考える。また、自
動を充実させる。
分の助言によって、仲間の技能が高まったと
いう実感が得られることも「できる喜び」に含
1
技能のポイントを正しく理解し、技がよ
まれると捉える。
りよくできるようなイメージをもたせる
このように、運動に対して楽しさやできる
ために、ICT や図解資料を活用する。
2
喜びを感じることができれば、生涯にわたっ
自ら課題を発見し、修正・改善に向けて
て、運動に親しむことができるようになると
の学び合いが活発に行われるようにする
考える。
ために、三人一組に役割(実技者、補助者、
(2) 「互いに高め合う、学び合い活動」とは
助言者)をもたせるとともに、タブレット
PC を活用する。
3
互いに励ましたり、助言したりしながら、
技能向上を目指して協働的な学習に取り組む
意欲の向上や課題解決の達成感を得られ
ことである。このような活動を通して、技能
るようにするために、スモールステップの
のポイントを伝え合いながら練習し、自他の
考え方を取り入れ、到達段階を細かく設定
技能が高まったという実感を得られることが
したチェックリストやタブレット PC を活
できれば、新しい喜びや達成感を味わうこと
用する。
ができるであろう。また、技能取得が苦手な
生徒や活動に消極的な生徒も、仲間からの励
Ⅳ
研究の内容
ましや助言を受けると、素直に練習できたり、
技能の上達につなげられたりすると考えられ
1
基本的な考え方
る。また、これらから運動に対するコンプレ
(1)「運動の楽しさやできる喜びを実感でき
ックスの解消や学ぶ意欲を喚起することがで
る生徒」とは
きると考える。
生涯にわたって豊かなスポーツライフ(生
(3)「ICTや図解資料の活用」とは
涯体育)を実現するための基礎を培うことを
ICT は、教師がスクリーンに技能のポイン
重視するということである。そのためには、
トを大きく表示したり、動画で理想的な動き
「運動の楽しさ」や「できる喜び」を実感するこ
を示したりするために用いる。
- 128 -
図解資料は、生徒が技能のポイントを見付
に、修正・改善に向けての学び合いが活発に行
けたり、補助の仕方や見取るための視点、助
われると考える。
言の方法を見付けたりすることができるよう
(6)「チェックリストの活用」とは
に、技能のポイントや助言の例を掲載した自
作資料である(図1)。
技能のポイント
チェックリストとは、スモールステップの
考え方を取り入れ、到達段階を細かく設定し
たリストである(図2)。
助言の例
図2
側方倒立回転のチェックリストの一部
到達度によって、互いにチェックしていく
図1
ことで、完璧とはいえないが、改善が見られ
側方倒立回転の図解資料
それらを活用すれば、技能のポイントを正
れば、達成感を得られやすくなると考える。
しく理解することができるとともに、技がよ
さらに、あとどれくらいで完成に近付くの
りよくできるようなイメージをもたせること
か分かりやすいことから、各自のめあてを考
ができると考える。
える際にも具体的なポイントが確認でき、意
(4)「役割をもたせた三人一組」とは
欲の向上にもつながると考える。
基本を三人一組とし、
「実技者」、
「補助者」、
「助言者」という役割をもたせる。「助言者」
2
を設定することで、補助ばかりに目が向いて、
有効な助言を伝えられないという状況が減り、
実技者がやる気になるような励ましや具体的
な助言がしやすくなると考える。
その中で、運動が苦手な生徒は、仲間の励
ましや助言によって、意欲的に練習に取り組
めるとともに、技能の向上が見られれば、一
人で練習したとき以上のできる喜びを味わう
ことができると考える。
(5)「タブレット PC の活用」とは
役割をもたせた三人一組で学び合っている
際に、必要に応じて、助言者がタブレット PC
(以下 TPC)を用いて実技者の演技を撮影す
る。互いの動きを見合うことで、自分自身が
どのような動きをしているのか、なぜできな
いのか、どうすれば改善するのかなどを映像
という客観的な視点で確認することができる
ので、自他の課題が発見しやすくなるととも
- 129 -
構想図
Ⅴ
実践の概要とまとめ
次に、下線部③からは、本校職員の動画だ
ったということもあり技のイメージをつかむ
本研究では、中学1年生(男子 30 名、女
上で役に立っていたことが分かる(表1)。
子 33 名)の器械運動「マット運動」の領域
表1
において行った、互いに高め合う、学び合い
・先生が、動画を使って詳しく教えてくれたので、
技のポイントが分かりやすかった①。
・先生の見本で、一時停止の場面があったので、ど
こに気を付ければいいのかが分かった②。
・先生の見本だと、技のイメージかつかみやすかっ
た③。
活動を通した実践を報告する。
1
授業後の感想(技の見本動画を見て)
見通し1【ICT や図解資料の活用】
(1)実践の概要
マット運動において、理想的な動きを視覚
そして、図解資料を活用した際の感想には、
的に捉えることは、技能のポイントを理解す
次のようなものがあった。下線部を見ると、
る上で大変重要である。そこで、教師が、各
図解資料から技能のポイントや技のイメージ
種の模範となる技を動画に納めスクリーンに
をつかむ上で参考にしていたことが分かる
示すこととした(図3)。理想的な動きを示し
(表2)。
たり、ポイントとなる瞬間を一時停止で切り
表2
取り、技能のポイントを説明したりする際に
授業後の感想(図解資料を活用して)
・技の段階ごとに細かく見ることで、どうすれば上
手にできるのか、イメージがつかみやすかった。
・動きの一つ一つにポイントが書いてあったので、
分かりやすかった。
・こつが書いてあるところがよかった。どこに気を
付けると技が上手にできるのか分かりやすかっ
たから、上達につながった。
・できているところ、できていないところが見付け
られて分かりやすかった。次回につなげられてす
ごく役に立った。
活用した。
以上のことから、ICT や図解資料を活用し
たことは、技能のポイントを正しく理解し、
技がよりよくできるようなイメージをもたせ
る上で有効であったと考えられる。
図3
2
教師による倒立前転の模範動画の様子
また、生徒一人一人に自作の図解資料を配
見通し2【役割をもたせた三人一組の活動
布し、必要な時に技能のポイントや助言の例
と TPC の活用】
(1)実践の概要
が確認できるようにした。
(2)結果と考察
技の練習をする際に、三人一組を基本とし
た学び合い活動を行った。修正・改善に向け
まず、新しい技に入る前に、本校教師が実
た学び合いが活発に行われるようにするため
技を行っている動画をスクリーンに大きく映
に、実技者・補助者・助言者という役割をも
し出した。理想的な技を見せながら、技能の
たせた。助言者を設定することで、補助ばか
ポイントを示し、共通理解を図った上で練習
りに目が向いて、有効な助言がなかなか伝え
の時間を設定した。授業後の生徒の感想は以
られないという状況が減り、実技者の意欲が
下の通りである。
高まるような励ましや技能が高まるような具
下線部①②から、技の技能のポイントがし
っかり伝わっていたことが分かる。
体的な助言が増え、学び合いが活発になるで
あろうと考えた。必要に応じて、助言者が
- 130 -
TPC を用いて、互いの動きを撮り合い、確認
なった要因となっていたことも分かる(表3)。
し合う場を設定した。技能のポイントと自分
表3
たちの動画を見比べ、どのような動きをして
三人組の活動を行った感想
・補助者は、補助をすることに専念できたので、安
心して練習すること①ができた。
・補助者だけだと、補助することに気をとられてし
まい助言することができないと思うので、助言者
がいる方が、より正確な助言がもらえたと思う②。
・助言者は、違う角度で見てもらうことができたの
で、その角度ならではの助言や上達したところを
教えてもらえた③のでよかったと思う。
・二人組より多く意見が出たり、実技者と補助者の
両方に助言ができたりしたので、お互いに成長で
きた④と思う。
・上手くできた時に「よくなってる。」と褒めても
らえたので、「もっと上手になりたい。」と思うよ
うになった。2人では分からない部分を3人で学
び合うことができた⑤。
いるのか、なぜできないのか、どうすれば改
善するのかなどを映像という客観的な視点で
確認した。また、自分たちで課題や改善点を
発見するために話し合う際に、励ましや助言
がより一層具体的になる効果を期待して行っ
た(図4)。
次に、必要な時に TPC を活用して、練習
を行った際の生徒の感想は以下の通りである。
下線部①より、
「できること」と「できない
こと」を明確にさせる時に役立っていること
が分かる。
また、下線部②より、自分自身がどのよう
図4
TPC を使って撮影している様子
な動きをしているのか「つまずき」はどこに
運動が苦手な生徒は、仲間の励ましや助言
あるのかをつかんでいることが分かる。
によって、意欲的に練習に取り組めるととも
さらに、下線部③、④から、なぜできない
に、技能の向上が見られれば、一人で練習し
のか、どうすれば改善するのかなども見付け
たとき以上のできる喜びを味わうことができ
ることができていることが分かる(表4)。
ると考える。また、運動が得意な生徒が、苦
表4
授業後の感想(TPC を活用して)
手な生徒に励ましや助言をする場面が増える
・TPC の映像を見て、自分ではできていると思っ
ていたことがあまりできていなかった というこ
とが分かった①。
・倒立では、足は伸びていたけれど、腰が曲がって
いることに気付くことができた②。
・言葉で指摘されるより動画で見る方が、足や腕が
どれくらい曲がっているのかよく分かった ③の
で、意識して練習することができた。
・コマ送りで、どの部分から悪くなっているのかが
分かりやすかった④。
と考えられるが、自分の助言によって仲間の
技能が高まったという実感も、自分の達成感
と同様に、できる喜びとして感じることがで
きると考えた。
(2)結果と考察
三人一組で役割分担をしながら、学び合い
活動を行った生徒の感想は、以下の通りであ
また、課題解決を目指して、より具体的に
る。
下線部①~⑤から、助言者を設定したこと
修正・改善に向けて確認するために、あるグ
で役割分担が明確となり、補助者は安全に補
ループでは、TPC を活用しながら、次のよう
助をすることに集中でき、助言者はしっかり
な話合いを行った。
観察した上で、的確な助言を行えたことが分
TPC の映像を確認しながら、何がつまずき
かる。また、二人組で行っていた時よりも、
の原因なのかを正確につかめたことが、どう
励ましが増えたことや助言がより具体的で正
すれば解決することができるのかを話し合う
確なものとなったことが、充実した話合いに
上で重要であることが分かる。下線部から、
- 131 -
課題が正確につかめたことで、解決策も具体
よってチェックしていくことで、完璧とはい
的な言葉で表現でき、その後の充実した練習
えないが、改善が見られれば、達成感を得ら
につながっていることも分かる(表5)。
れやすくなると考えた。さらに、あとどれく
表5
らいで完成に近付くのか分かりやすいことか
TPC を活用し、側方倒立回転を練習するグループ
生徒 A(助言):足が曲がっているよ。(一時停止で
指差しながら)ここだね。
生徒 B(実技)
:そうだね。このときだね。どうすれ
ばいいの?
生徒 C(補助):ひざが曲がっているからだよ。
生徒 A:手を着いたときに、倒立を意識したほうが
いいんじゃない。
生徒 B:わかった、やってみるよ。
生徒 C:手を着いたときに、目線も気をつけてね。
ら、意欲の向上にもつながると考えた。
(2)結果と考察
実践を進めていく中で、TPC やチェックリ
ストを同時に使用すると、練習よりもチェッ
クしている時間が多く、中途半端になってし
まって、効果的に練習できないことが分かっ
昨年までの TPC 使わない活動に比べて、つ
た。体育の授業では、練習量を確保すること
まずきの原因や改善の方法を表現する際に、
はとても大切なことなので、話合いに時間を
具体的な言葉で表現することができていたの
使い過ぎないように、いつ、どのタイミング
で、自分たちで課題や解決策を発見しながら
で使うと効果的なのか、教師の的確な指示が
練習し、上達していく姿が見られた(図5)。
大切であることが分かった。
そこで、実践の途中から、練習の時間を充
実させるために、各学習の終末にチェックリ
ストを中心に互いの技について確認する振り
返りの時間を確保することとした。その際に、
TPC の映像と資料のチェック項目とを比べ
ながら確認することが一番効果的であること
が分かった(図6)。
図5
TPC による話合い
以上のことから、役割をもたせた三人一組
の活動と TPC の活用は、自ら課題を発見し、
修正・改善に向けての学び合いが活発に行わ
れる上で有効であったと考えられる。
3
見通し3【チェックリストと TPC の活用】
(1)実践の概要
技ごとに、スモールステップの考え方を取
図6
チェックリストで話合いをする様子
り入れ、到達段階を細かく設定したチェック
以下に、チェックリストと TPC を見比べな
リストを作成し、生徒がいつでも活用できる
がら、振り返りを行っていた班の様子を紹介
ようにした。
する。
生徒は、一単位時間終了ごとに、
「できるこ
下線部①から、チェックリストと自分の姿
と」
「できないこと」を互いに確認し、よくで
(動画)を比べることで、新たな課題を発見
きている:◎、まあまあできている:○、で
することができているとともに、下線部②、
きていない:△、と印を付けた。技能が高ま
③のように、改善点も確認することができて
れば、○から◎へと修正するなど、到達度に
いるので、技が完成に近付いているという達
- 132 -
成感を得ているといえる。さらに、下線部④、
持が表れている。さらに下線部⑤からは、新
⑤のように、あとどれくらいで技が完成する
しい技ができるようになった喜びとともに、
のか見通しがもてていることが分かる(表6)。
意欲的に取り組もうという前向きな気持ちが
表6
表れている(表7)。
倒立まではうまくいくが、前転につながらな
共通のツールを使い、同じ表現を使うこと
いグループの改善に向けての話合い
生徒 G(助言):まずは、ここのひざが曲がっている
でしょ①。(TPC の画面を指さしながら)
生徒 H(補助):振り上げ足は、伸びてきているでし
ょ。これはよくなったよね②。
生徒 I(実技):本当だ。よくなってる。でも、蹴り
足が曲がっているんだな。
生徒 H:でも、倒立になるときれいに伸びているよ。
このときは、手の間を見ているし、背中も反っ
ていないからいいと思うよ③。
生徒 I:でも、前転でうまくいかないんだよね。
生徒 G:後頭部じゃなくて、背中から「ドン」って落
ちてるからじゃない。後頭部の着く位置をもう
少し前にするといいみたいだよ。1時まで倒す
といいんじゃない④。
生徒 I:分かった。次はそこを意識してみるよ⑤。
で共通理解が進んでいることが、話合いやそ
の後の練習のめあてにつながっていた。
以上のことから、チェックリストや TPC を
活用したことは、意欲の向上や課題解決の達
成感を得る上で有効であったと考える。
Ⅵ
研究のまとめ
1
研究の成果
○マット運動の楽しさについて、実践前(図
本時の学習のまとめとして振り返る活動の
際に、TPC を活用すれば、映像として残って
7)と実践後(図8)に行ったアンケート
は、以下の通りとなった。
いることから、チェックリストの同じ場面と
一時停止で技の一瞬を切り取った場面とを見
比べて、技の完成度や課題を確認することが
できていた。
次に、チェックリストを使って振り返りを
行った際の様子を紹介する。
表7
チェックリストを使用した感想
図7
・チェックリストに書いてある項目をすべてきれい
にできると、とても上手に技ができたし、チェック
することで、自分がどれくらいできるようになった
か分かってよかった①。
・自分は何ができていて、何ができていないのかが
一目で分かって②、とても見やすかった。
・次に意識するポイントが分かってやりやすかった。
次の目標ができてよかった③。
・技のポイントがつかめて、次回の目標を具体的に
決めることができた④。
・練習してどんどん◎が増えるのが嬉しくて、もっ
とやる気になった⑤。
実践前のアンケート
図8
実践後のアンケート
下線部①からは、技が上手にできるように
実践前は、マット運動について「とても
なったという達成感や満足感を得られている
楽しみ」
「楽しみ」と答えていた生徒は、半
ことが分かる。また、下線部②からは、自分
数以下の 47%(29 人)であったことから、
の技能段階を正確に捉えることに役立ってい
あまり積極的でなかったといえるが、実践
ることが分かる。下線部③、④は、技ができ
後には、97%(61 人)の生徒が、「とても
るようになりつつあるという手ごたえから、
楽しい」「楽しい」と感じるようになった。
具体的な目標を立てて頑張ろうとしている気
実践後に「とても楽しい」
「楽しい」と感
- 133 -
じた理由は、以下の通りである(表8)。
表8
とにできる喜びを感じていることが分かる。
さらに、下線部⑤からは、完璧とはいえ
マット運動が楽しかった理由
ないが以前と比べて上達していることに気
・タブレットを使い、自分の姿を見て改善したり、
友達とアドバイスし合えたりしたのが楽しかっ
た。
・マット運動は苦手だったけれど、友達からたくさ
んの助言をもらって、上達できたから楽しかった。
友達を思いやる心も育ったと思う。
・三人組で協力して練習すると、色々な角度から意
見交流ができて、改善することができたから楽し
かった。
・小学校の頃は、「危険・怖い」というイメージだっ
たけれど、自分からやろうとすればできる技が増
えて楽しかった。
・タブレットを使うと自分の姿を確認しながら練習
できたので楽しかった。
・三人組で練習すると、友達に褒められたり、アド
バイスをもらえたりして楽しかった。
付いたことが、できる喜びにつながってい
ることが分かる。最後に、下線部⑥、⑦か
らは、自分の助言によって、仲間の技能が
高まったという実感が得られたことが、で
きる喜びにつながっていることが分かる
(表 9)。
表9
達成感を感じた理由
・仲間の助言によって、できなかった技がきれい
にできるようになったから①。
・技の完成度を高めることができたから②。
・できなくて避けていた技や全くできなかった技
に挑戦して、少しずつでも上達することができた
から③。
・転んだり、倒れたりしたけれどそれを乗り越え
て、できる技が増えたから④。
・できなかった技が、完成に近づいたから⑤。
・三人組で、アドバイスがたくさんできたから⑥。
・自分の助言で、仲間が上達したときに、とても
うれしかったから⑦。
これらのことから、互いに高め合う、学
び合い活動は、生徒が「運動の楽しさ」を
実感する上で有効であったと考える。
○マット運動の達成感(できる喜び)について、
実践後に行ったアンケートは、以下の通り
これらのことから、互いに高め合う、学
となった(図9)。
び合い活動は、生徒が「できる喜び」を実
感する上で有効であったと考える。
○以上の結果から、マット運動の実践におい
て、互いに高め合う、学び合い活動が充実
したことは、運動の楽しさやできる喜びを
実感できる生徒を育成する上で有効であっ
たと考える。
2
図9
実践後のアンケート「達成感を感じたか」
今後の課題
○本研究は、マット運動における実践であっ
「とても感じた」39 人、
「感じた」23 人、
たが、他の運動領域でも応用が可能である
「どちらともいえない」、「あまり感じなか
と考える。その際、ICT や資料をどのタイ
った」、
「感じなかった」は、各 0 人となり、
ミングで、どのように活用すると、より効
全生徒が「達成感」を感じることができた。
果が上がるのか継続して考えていきたい。
その理由は、以下の通りである。
下線部①から、できなかった技ができる
〈参考文献〉
ようになった喜びを感じることが分かる。
・文部科学省:『中学校学習指導要領解説
下線部②からは、今までできていた技だが、
より完成度を高めることができたことにで
保健体育編』,株
式会社東山書房、2008
・群馬県教育委員会:
『はばたく群馬の指導プラン~実践の手
きる喜びを感じていることが分かる。また、
引き~』,2014
下線部③、④からは、マット運動特有の苦
・群馬県教育委員会:『学校教育の指針』,2015
手意識や困難を乗り越えることができたこ
・前橋市教育委員会:
『前橋市保健体育科指導の努力点』,2015
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