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1 研究課題名 微細植物資料に対する鑑定の高度化に関する研究 2 研究

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1 研究課題名 微細植物資料に対する鑑定の高度化に関する研究 2 研究
1
研究課題名
微細植物資料に対する鑑定の高度化に関する研究
2
研究担当者
主研究担当者
杉田 律子
法科学第三部
他研究員5名
3
研究期間
平成20年4月 ~ 平成23年3月(3年計画)
4
5
研究予算
平成20年度
44,076千円
平成21年度
44,890千円
平成22年度
12,745千円
研究の目的
花粉を中心とする形態学的な研究と植物の化学組成分析の両面から、植物の微細証拠
物件としての鑑定検査法を確立することを目標とする。
6
成果
(1) 当初予定していた成果
走査型電子顕微鏡を用いた形態観察による花粉の異同識別法では、観察法の条件を決
定し数多くある植物種のうちシソ科及びキク科を中心に研究を行った結果、表面形態、
外径等が異同識別の指標となることを明らかとした。さらに、身近に存在する代表的な
植物であり、数多くの種及び属を有するキク科植物の花粉の形態を観察したところ、キ
ク亜科とタンポポ亜科で明瞭な差異が認められ、さらにキク亜科の花粉は、花粉表面の
棘の数と粒子径の計測結果からより詳細な分類が可能であった。
化学成分の分析による植物製品の異同識別法では、たばこ及び木材を対象に研究を行
った。
銘柄や製造時期が異なるたばこを誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)で分析
して得られた結果を比較し、含有が認められた11元素を異同識別の指標に選択した。
植物標準物質に含有される11元素の測定値が保証値あるいは参照値と良好な一致を
示したことから、本研究で考案した手法による測定値の正確さを確認できた。異なるた
ばこでの測定値の差異は、たばこ1本の中での変動と比較して十分に大きく、測定値の
比較は異なるたばこの識別に有効であった。たばこから作製した灰を同様に分析し、得
られた結果を灰になる前の試料と比較したところ、2元素(カドミウム及び鉛)を除い
て両者の測定結果は良好に一致し、微量無機元素の比較は灰になった試料にも適用可能
であることが示された。
植物の二次代謝産物であるリグナンに着目し、針葉樹材からの抽出及び機器分析(
HPLC及びGC/MS)のための最適条件を得た。確立した条件で国内に植生の認められ
る針葉樹材中のリグナンを分析した結果、樹種による存在比の差異が認められた。
(2) 当初予定していなかったが副次的に(あるいは発展的に)得られた成果
木炭については炭素を主成分とするため、化学的な分析が困難と考えられていたが、
焼成温度による構造変化に伴うと推定される差異をX線回折法により探知することが
できることを示す結果を得た。また、原料に由来すると考えられるカルシウムを主成分
とする結晶のピークが資料により見出されたことから、X線回折法が木炭の異同識別の
指標を与えることが示唆された。また、木炭や脆くなった木片はそのままでは観察に必
要な断面の作成が困難であるが、エポキシ樹脂を用いることで良好な観察試料を作成す
ることができ、木炭は丁寧な試料作成により、木材の異同識別に重要な非常に微細な構
造も観察できることが明らかとなった。
たばこから生じた灰に含有される微量無機元素の含有量を元のたばこと比較した結
果、灰に含有されるカドミウム及び鉛の2元素は、元のたばこから計算で求めた値より
も低い含有量を示したため、灰の異同識別には不適当であるとの結論を得た。
(3) 当初想定していたが得られなかった成果
共焦点レーザー顕微鏡を用いた花粉形態の観察による異同識別法の開発については、
観察試料の作成方法について一定の成果を得たが、観察条件の最適化ができなかった。
7
成果の発表
(1) 論文・総説・著書 ( Publication to academic journals )
1) 走査型電子顕微鏡を用いる花粉形態観察と犯罪捜査への応用に関する予察的研究
杉田
律子,吉川
ひとみ,吉田 浩陽,鈴木
真一
分析化学, vol.57, no.12, pp.1171-1175, 2007.
2) 法科学における花粉分析の利用
杉田
律子,吉川
ひとみ,鈴木
真一
環境地質学論文集, vol.18, pp253-258, 2008.
3) 牧舎由来植物試料のDNA解析による識別
吉川
ひとみ,杉田
律子,鈴木
真一
日本法科学技術学会誌, vol.15, no.2, pp151-158, 2010.
4) Potential utility of DNA sequence analysis of long-stored plant leaf fragments
for forensic discrimination and identification
Kikkawa, S. H., Sugita, R., Matsuki, R., Suzuki, S.
Anal. Sci., vol.26, no.8, pp.913-916, 2010.
5) DNA解析による小麦粉の同定及び異同識別,
吉川
ひとみ,田原
誠,山下
裕樹,鈴木
真一
日本法科学技術学会誌, vol.16, no.1, pp43-48, 2011.
6) ICP-MSを用いる木炭灰中の微量元素の分析と法科学的異同識別への応用
笠松
正昭,鈴木
康弘
分析化学, vol.61, no.7, pp.577-581, 2012.
7) ICP-MSによるたばこ及びたばこ吸殻中微量元素の分析と法科学的異同識別への応用
鈴木
康弘,鈴木
真一
分析化学, vol.61, no.8, pp.911-916, 2012.
(2) 学 会 に お け る 口 頭 発 表 ( Oral presentation at the academic meeting and
conference )
1) Project on development of examination methods for trace botanical evidence in
NRIPS,Japan,
Sugita, R., Suzuki, Y., Yoshida, H., Kikkawa, H., Suzuki, S.
19th International Symposium on the Forensic Science,The Australian and New
Zeeland Forensic Science Society (2008)
2) Identification of species from aged plant samples by DNA analyses
Kikkawa, H. S., Sugita, R., Suzuki, S.
19th International Symposium on the Forensic Science,The Australian and New
Zeeland Forensic Science Society (2008)
3) Determination of minor and trace elements in cigarettes by ICP-AES and ICP-MS
Suzuki, S., Suzuki, Y., Kasamatsu, M.
2008 Third Asia-Pasific Winter Conference on Plasma Spectrochemistry (2008)
4) 経年植物片の DNA 解析による種名同定の検討
吉川
ひとみ,杉田
律子,鈴木
真一,他
日本法科学技術学会第14回学術集会 (2008)
5) ICP-MS によるたばこ中微量元素の定量と法科学的異同識別への応用
鈴木
康弘,鈴木
真一
日本分析化学会第57年会 (2008)
6) 花粉学の法科学への応用,
杉田
律子,吉川
ひとみ,吉田
浩陽,鈴木
日本花粉学会第50年会 (2009 )
7) 走査型電子顕微鏡による花粉の異同識別
杉田
律子,吉川
ひとみ,鈴木
真一
日本法科学技術学会第15回学術集会 (2009)
康弘,鈴木
真一
8) 植物試料の DNA 解析による識別
吉川
ひとみ,杉田
律子,鈴木 真一
日本法科学技術学会第15回学術集会 (2009)
9) ICP-MS によるたばこ吸殻中微量元素の定量と法科学的異同識別への応用
鈴木
康弘,鈴木
真一
日本分析化学会第58年会 (2009)
10) ICP-MS によるたばこ中微量元素の定量と法科学的異同識別への応用(3)
鈴木
康弘,鈴木 真一
日本分析化学会第59年会 (2010)
11) Forensic discrimination of cigarette ash by the analysis of trace elements by
ICP-MS
Suzuki, Y., Suzuki, S.
Pacifichem 2010 (2010)
12) Preliminary examination for discrimination of wood charcoal, 20th International
Symposium on the Forensic Science,
Sugita, R., Suzuki, S.
The Australian and New Zealand Forensic Science Society(2010)
(3) 招待講演 ( Invited oral presentation at the academic meeting and conference )
1) 犯罪現場に遺留された微細物を対象にした異同識別法
鈴木
康弘
プラズマ分光分析研究会
第74回講演会 (2008)
2) 微量元素の分析による証拠物の異同識別
鈴木
康弘
表示・起源分析技術研究懇談会第4回講演会 (2010)
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