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かけ手と私の間に起きること
特定非営利活動法人 広報 第74号 秋田いのちの電話 相談電話 018-865-4343 2016.7.25 (毎日正午~午後9時) 秋田市のぞみ地域活動支援センター 絵手紙教室参加者作品 「かけ手と私の間に起きること」 水俣健一 …… 2 活動日誌 ……………………………………… 7 通常総会開催 …………………………………… 4 ありがとうございました …………………… 8 2015(平成27)年度受信統計 ……………… 5 維持会費・寄付のお願い …………………… 8 2015(平成27)年度会計収支決算 ………… 6 編集後記 秋田県の自殺者数 …………………………… 7 1 ……………………………………… 8 かけ手と私の間に起きること 市立秋田総合病院 精神科 水 俣 健 一(研修委員) も自分の問題が出てきます。 いのちの電話はかかってくるいろいろな電話に 対して、傾聴を基本にしています。かけ手(コー ───── ◇ ───── ◇ ───── ラー)に何かを与えるものではありません。 「相 談員から教えてもらった、いいことを言っても らった」とコーラーがその時は思っても、本当に この大切な問題に適切に取り組むために、スー それが相手の役に立つということはありません。 パービジョンの大切さを強調したいと思います。 コーラーは時に「私はこんなに悩んでいる。気 カウンセリングは相談を受ける側の自分自身の問 持ちをスッキリさせてください。ヒントになるこ 題とかかわってきます。自分のことにはなかなか とを教えてください」と求めます。こちらはつい 気づけないものです。誰かに指摘されて初めてわ 「こんな風にしたらうまくいくんじゃないですか」 かるのです。相談相手と私の間で何が起きている と伝えたくなりますが、いのちの電話は基本的に かが大事ですが、そのことに気づくのは難しいの は指示的なことは言いません。その時、コーラー です。それを気づかせてくれるのがスーパービ は、 「ちっとも教えてくれない」と不満を持つこ ジョンです。相談する側、相談される側、二人の とがありますが、私たちはコーラーが自分のこと 関係を見ている別の眼が、私にわからないことに を自分で理解できるようなサポートを提供するだ 気づかせてくれます。私がわからないことにこそ けです。実は、こちらは残り少なくなった自分の 大切な問題があります。相談がうまくいくために 人生の貴重な時間を相手に提供するのです。これ は、 気づいていないことに気づくことが大切です。 は大変なことです。 ───── ◇ ───── ◇ ───── ───── ◇ ───── ◇ ───── しかし、誰かに指摘されることは非常に恥ずか これからいのちの電話相談員になろうとする方 しいことですね。なんでそんなことに気づかな は、自分というものを考えていかなければなりま かったのか、 と。 「それがあなたの特徴 (問題)だね」 せん。必ず自分に向き合い自分自身を理解し、相 と言われるのはつらいことです。いのちの電話の 手と自分との関係の中に何が起きているかを理解 研修では、グループスーパービジョンを行ってい することが大切です。相談する方は自分のことが ますが、その場で自分の恥ずかしいところが他の わからずに電話をかけてきますが、こちらも自分 人にわかられてしまう。それはイヤなことで、で のことがわからなければ相談は進んでいきませ きるだけ避けたい。しかし、それが相談員を成長 ん。相手を理解することも大切ですが、どうして させるのです。そして相談を成功させます。 2 皆さんも今後の課程でグループ研修を行います と思われていますが、精神分析療法を産み出した が、そこではこういう電話を取ったと報告し相談 フロイトがたどり着いた境地は、あなたと私の間 内容を検討していきます。するとだんだん相談員 に何が起きているかを分析するということです。 の方の問題が出てきます。うまく聴けなかった、 相手の心を分析するのではありません。そしてあ つい言ってしまった、もうちょっとガマンして聞 なたと私の間に起きる問題は、実は私自身の問題 くべきだった、傾聴がなかなかできなかった…。 でもあるのです。 こういう話し合いが相談員を育てていくのです。 いのちの電話でも、コーラーと電話をとってい ですから、 いのちの電話の研修の中でスーパー る私の間に何かが起きているわけで、それに気づ ビジョンがしっかり行われているかどうか、それ くことがとても意味のあることなのですが、なか によってずいぶん違ってきます。スーパービジョ なか気づけないのでスーパービジョンが必要に ンはエライ先生が指導してくれるというものでは なってくるのです。 なく、相談員同志の話し合いの中でお互いを理解 ───── ◇ ───── ◇ ───── し合うためのやり取りを通して行われます。そこ に経験ある先輩や指導的メンバーがいて適切な助 言を与えてくれればスーパービジョンはより生き もう一つ心に留めていただきたいことは、薬に てきます。 副作用があるようにカウセリングにも副作用があ るということです。このことは意外に注目されて いません。人の話を聞いてあげると、 「よかった、 ───── ◇ ───── ◇ ───── スッキリした」という反応が返ってくることが多 歴史的にいうと、スーパービジョンという体験 いのですが、時には自分では気づかずに相手の心 の大切さは、精神分析療法によって明らかにされ のキズを逆なでにして、そのまま気がつかないこ てきました。精神分析という言葉は誤解されてい とがあります。あとでこちらの方に問題があった ます。いかにも患者の心を分析する、あるいは心 と考えることができればよいのですが…。 を切り開いて、そこに心の闇のありかを探るもの 頻回通話者もいます。こういうコーラーとは慣 れ合いになりがちです。慣れ合いになればなるほ ど大事なことにお互い気づけなくなります。誰も 一番肝心な部分には触れられたくないのですか ら。馴れ合いになることで問題の解決から遠ざ かっていっているのです。 このような危機をこそ、スーパービジョンが救っ てくれるのです。 (5月25日 20期生相談員養成講座・講義 『かかわりとしての個人精神療法』から抜粋) 3 NPO法人秋田いのちの電話通常総会開催 5月15日(日)に開催され、次の議案が審議を経て承認されました。 第1号議案 2015(平成27)年度事業報告書及び収支決算書・会計監査報告承認の件 第2号議案 2016(平成28)年度事業計画書及び収支予算書承認の件 事業報告書(抜粋) はじめに 秋田いのちの電話は1998(平成10)年に開局しましたので、活動歴は丸18年になりました。相談員の 人数、相談時間そして経済的基盤のいずれもまだ十分とは言えませんが、多くのボランティア相談員が 電話を通した傾聴活動に精一杯取り組んでいます。 今後も、精神的に悩んでいる方、特に自殺念慮をもっている方の気持ちに寄り添い、共感を持って受 けとめ、立ち直りのきっかけを作る役割を果たすことができるように、社会的使命と責任を自覚しつつ、 活動を継続していきたいと思っています。 昨年度は事務所の今後の使用について問題が発生しましたが、活動拠点にかかわることであり、将来 に不安を残さないよう慎重に対処して参ります。 私達のボランティア活動を経済的・精神的に支えてくださった多くの方々に心から感謝しつつ、この 1年間の活動について報告をいたします。 1.電話相談活動 1)受信時間 日曜祝日を含む毎日(正月3日間を除く)正午~午後9時。 2)受信件数 総受信件数(24時間フリーダイヤルを含む) 12,350件(前年度12,812件) 。1日平均34件。 2.全国一斉24時間フリーダイヤル 日本いのちの電話連盟が厚生労働省の補助を受けて、自殺予防に特化して実施している事業。全国の センターが統一電話番号で毎月10日午前8時~翌11日午前8時の24時間電話を受けている。秋田いのちの 電話も参加。 3.広報活動 広報誌「秋田いのちの電話」を一昨年度まで年4回発行し、会員・支援者のほか関係公共・民間団体、 病院、マスコミ等に送ってきたが、情報に関してはホームページ上に迅速に掲載することとし、昨年度 は3回の発行にとどめた。 街頭キャンペーンは10月11日秋田市・アゴラ広場にて、10月25日にはイオン大曲店にて実施し、いの ちの電話のPRを行った。主催は秋田いのちの電話後援会で、ボランティアの会の会員等がチラシの配 布を行った。 4.相談員の養成、研修 1)電話相談員養成講座 これまで相談員養成は公開講座を第1課程とし て実施してきたが、近年参加者が減少しているこ とを深刻に受け止め、昨年度は相談員を志望する 方に限定して募集を行った。さらに第1課程の回数 を15回から10回に少なくした(1回の時間は1時間 30分から2時間に拡大) 。その結果最近にはない17 名という多数の応募があり、5月から研修をスター トした。9月以降の第2課程にはそのうち16名が進 んだ。 4 2015(平成27)年度 受 信 統 計 ─ 2015 (平成27) 年4月∼2016 (平成28) 年3月 ─ 1.総受信件数(毎月10日のフリーダイヤルを含む) ( )内は前年度 受 信 件 数 う ち 自 殺 志 向 自 殺 志 向 率 男 女 計 7,891(8,379) 4,459(4,433) 12,350(12,812) 643(566) 608(582) 1,251(1,148) 8.1%(6.8%) 13.6%(13.1%) 10.1%(9.0%) 不明 1,108 (9.0%) 2.年代別内訳 19歳以下 762 (6.2%) 20歳代 1,430 (11.6%) 60歳代以上 1,123 (9.1%) 50歳代 2,272 (18.4%) 30歳代 2,625 (21.2%) 40歳代 3,030 (24.5%) 3.相談内容別内訳 その他 精神 2,822 (22.9%) 2,800 (22.7%) 職業 504 (4.1%) 人生 2,614 (21.2%) 夫婦 506 (4.1%) 対人 903 (7.3%) 身体 1,056 (8.6%) 家族親族 1,392 (11.3%) 4.全国一斉24時間フリーダイヤル受信件数 毎月10日実施 秋田いのちの電話受信 男 女 計 うち自殺志向 自殺志向率 288 288 576 157 27.3% 5 2015 (平成27)年度 会計収支決算 2015(平成27)年4月1日から2016(平成28)年3月31日まで 昨年度の決算は次の通り厳しい内容でした。会費・寄付金の収入が減少しており、特別会計から穴埋 めして急場をしのいでいる状態です。実質赤字は50万円弱に達しています。何らかの手を打たなければ 消滅の危機に追い込まれます。 〈収入の部〉 (単位 円) 科 目 予算額 1.会 費 収 入 決算額 対予算増減 摘 要 720,000 518,200 △ 201,800 費 170,000 140,000 △ 30,000 26名 個人維持会費 200,000 123,200 △ 76,800 21件 団体・法人維持会費 350,000 255,000 △ 95,000 8件 2.寄 付 金 収 入 1,900,000 1,412,110 △ 487,890 個 人 寄 附 金 1,250,000 969,998 △ 280,002 168件 団体・法人寄附金 650,000 442,112 △ 207,888 35件 3.事 業 収 入 360,000 462,000 102,000 公開講座参加費 160,000 170,000 10,000 相談員養成講座受講料 研 修 受 講 料 200,000 292,000 92,000 第19期生第2・3課程受講料 4.補 助 金 等 収 入 1,850,000 2,192,951 342,951 5.雑 収 入 2,451 28,359 25,908 前年度よりの繰越金 7,549 7,549 0 正 会 員 収 入 合 計 特別会計からの繰入 収 入 合 計 4,840,000 秋田県、日本いのちの電話連盟、県共同 募金会、秋田市 預金利息他 4,621,169 △ 218,831 - 631,000 631,000 4,840,000 5,252,169 412,169 〈支出の部〉 (単位 円) 科 目 予算額 決算額 1.事 業 費 2,000,000 2,483,311 483,311 研 修 事 業 費 1,500,000 1,658,717 158,717 研修会場使用料、研修講師謝礼 広 報 事 業 費 500,000 824,594 324,594 広報誌、チラシ、リーフレット、広報誌送料 2.管 理 費 2,560,000 2,344,374 △ 215,626 費 60,000 45,800 △ 14,200 理事会交通費 役 員 活 動 費 130,000 120,000 △ 10,000 事務局長活動費 会 議 対予算増減 摘 要 事 務 局 費 1,550,000 1,535,820 △ 14,180 事務局員手当 事 務 諸 費 500,000 435,346 △ 64,654 振込手数料、コピ-用紙代、郵送料、電 話料、フリーダイヤル関係立替分他 什 器 備 品 費 50,000 680 △ 49,320 費 220,000 195,928 △ 24,072 建 物 営 繕 費 50,000 10,800 △ 39,200 △ 26,000 光 熱 水 3.分 担 金 140,000 114,000 4.諸 雑 費 70,000 171,602 5.予 備 費 70,000 0 4,840,000 5,113,287 支 出 合 計 101,602 △ 電気料、水道料、灯油代 秋田県心の健康福祉会、日本自殺予防学会、 日本いのちの電話連盟、21世紀医療を守る会 お茶、掃除用品他 70,000 273,287 ※収支差引残額 5,252,160円 − 5,113,287円 = 138,882円(次年度へ繰越) 6 秋田県の自殺者数 月別推移 秋田県警発表 1月 2月 3月 4月 5月 6月 計 昨年 20 21 24 26 21 29 141 今年 19 24 25 23 18 17 126 増減 −1 3 1 −3 −3 −12 −15 全国の自殺率 (2015年) (10万人当たり)厚生労働省 人口動態調査より 自殺率が高い順 自殺率が低い順 県 名 自殺率 県 名 自殺率 1 福 井 15.4 1 秋 田 25.7 2 高 知 15.7 2 岩 手 23.3 3 奈 良 15.9 3 宮 崎 23.2 4 愛 知 16.0 4 島 根 22.9 5 香 川 16.1 5 新 潟 21.9 活動日誌 12月 1月 2月 3月 4月 2015 (平成27) 年12月〜2016 (平成28)年5月 5月 12月7日 研修委員会 18日 県中央児童相談所電話相談 連絡会議(事務局2名)) 21日 運営委員会 ────────────────── 1月7日 事務所土地所有者と理事長会 談 12日 研修委員会 25日 理事会 ────────────────── 2月1日 研修委員会 23日 相談員ファシリテーター、釜 石市へ。現地ボランティアと 交流 28日 自殺予防公開講座(会場 県 社会福祉会館、講師 竹島 正 川崎市健康福祉局障害保健福 祉部長) 29日 運営委員会 ────────────────── 3月9日 研修委員会 18日 理事会 ────────────────── 4月4日 研修委員会 9日 イオンイエローキャンペー ン還元金贈呈式(ボランティ アの会会長) 16日 理事会 ────────────────── 7 5月9日 監査会(鈴木・三浦両監事他) 理事会 15日 秋田いのちの電話総会、19期 生認定式(2名)、永年活動相 談員表彰式、ボランティアの 会総会・祝賀会(会場 フォー ラム秋田) 21日 日本自殺予防学会、日本自殺 予防シンポジウム(東京、稲 村理事長) 27∼29日 日本いのち の電話連盟 総会・事務 局長研修 ( 岡 山、 事 務局長) 30日 研修委員会 ありがとうございました 維持会費・寄付をお送りいただきありがとうございました。皆様からのご厚意を受けて活動を続けて います。お寄せくださった方々は次の通りです。心から感謝申し上げます。 2015年12月〜2016年6月 〈個人〉(アイウエオ順) 相川美知子 赤 羽 絢 子 朝 日 和 博 芦野チヤ子 阿 部 恒 夫 五十嵐妙子 石 田 豊 子 伊 藤 正 祥 伊 藤 博 之 伊 藤 幹 子 稲 村 茂 井 上 悦 子 岩 淵 朗 岩 淵 淳 子 岩 渕 和 子 打 矢 裕 子 小笠原宣子 奥 原 英 二 岡 田 憲 二 小棚木宏子 加賀谷信雄 伽羅谷雪子 河 村 鴻 允 神 田 仁 菊 地 弘 文 木 村 高 寛 雲 然 俊 美 後 藤 敬 太 小 林 敏 小 林 錦 佐々木久長 佐 藤 光 子 佐 藤 正 隆 佐 藤 保 子 佐 藤 陽 吉 信 太 協 子 東海林逸子 東海林淑子 菅原真砂子 高 堂 祥 子 高 野 聡 子 髙 橋 郁 夫 高橋みどり 髙 橋 利 香 武 石 成 正 田 中 伸 一 田 牧 綾 子 丹 波 望 丹 波 澄 江 塚田安寿子 照 井 信 広 戸 部 英 二 中 嶋 和 美 長山美枝子 橋 本 禎 嗣 長谷川ちづ子 秦 諒 子 林 美 加 子 平岡多美子 平野内八重子 福 田 稔 船 木 正 博 松本美知子 水 俣 健 一 皆 川 養 悦 武 藤 一 村 上 京 子 最 上 静 子 森川 傳代 柳 原 幸 子 山 田 志 保 山本由加里 山内視都子 吉 田 直 子 匿名希望9名 〈団体〉 私たちも秋田いのちの電話を応援しています ㈱秋田林産 大館市内キリスト教会合同祈祷会 聖体奉仕会 NTT東日本㈱ 秋田支店 大曲仙北医師会 曹洞宗秋田県宗務所 秋田銀行 雄勝地域振興局 福祉環境部 日本キリスト教会秋田教会 秋田聖救主教会聖使幼稚園 カトリック土崎教会 日本キリスト教団 秋田桜教会 秋田大学医学系研究科 精神科学講座 北秋田地域振興局 鷹巣阿仁福祉環境部 日本基督教団本荘教会 秋田ロータリークラブ 矯風会秋田 医療法人久盛会 心といのちを考える会 のお願 い 維持会費・寄付 日本基督教団秋田高陽教会 平鹿地域振興局福祉環境部・ 南児童相談所 誌面でお伝えのように財政 状態が思わしくありません。 努力が足りないと言えば確か にその通りで、収入増に向け て何をするべきか、何ができ るかと本腰を入れなければ …。 そんなことで、経費節約のため広報誌の発 行は一昨年までは年4回、昨年は3回、今年 からは年2回となります。その代わりホーム ページを充実させつつありますので、ご覧下 さい。 (A・T) 毎回郵便振替用紙を同封していますが、維持会費あ るいは寄付金送金用としてご利用いただければ幸い です。 強制ではありませんのでご理解下さい。 維持会費・寄付のお願い 毎回郵便振替用紙を同封していますが、維持会費あ ◎郵便局「秋田いのちの電話」 振込 るいは寄付金送金用としてご利用いただければ幸い です。 口強制ではありませんのでご理解下さい。 座 02560-0-8694 ◎郵便局「秋田いのちの電話」 振込 ◎秋田銀行 大町支店 788506 02560-0-8694 口 座 「特定非営利活動法人秋田いのちの電話 理事長 稲村茂」 ◎秋田銀行 大町支店 788506 「特定非営利活動法人秋田いのちの電話 理事長 稲村茂」 8