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Vol.64 - 日本学術振興会
Vol.64 「海外における高等教育に関する動向」(平成 25 年 10 月分) 日本学術振興会 【目 次】 1.米国 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P1 1-1.連邦政府や全国的な大学団体等に関するもの(ワシントン研究連絡センター) ① 2012 年秋学期の大学院入学者数、前年同期比で 1.8%増加 ② プリンストン大学、US ニュース誌による全米大学ランキングの第 1 位に ③ 米国とロシア、原子力及びエネルギー関連科学研究開発協力に関する政府間協定に 署名 ④ NIH、「BRAIN イニシアティブ」における 2014 年度の最優先領域を承認 ⑤ 約 60%の大学において、2013 年 5 月 1 日の段階での合格者数が同年秋学期の目標入 学者数に到達せず ⑥ 大学における研究開発費のうち約 5%は企業からの拠出 ⑦ NIH、生物医学研究の人材育成強化に向け約 370 万ドルを助成 ⑧ 2011 年度の連邦研究助成は、前年度比約 9%減の 580 億ドル ⑨ 最新 2 年間の連邦学資ローン返済滞納率、過去 20 年間で最高水準の 10%に 1-2.主として州政府や個別の大学に関するもの(サンフランシスコ研究連絡センター) ① 新聞報道等 2.ドイツ(ボン研究連絡センター) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P9 ① ドイツ大学長会議(HRK)の動向 ② その他大学等の動向 3.英国(ロンドン研究連絡センター)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P11 ① ビジネス・イノベーション・技能省(BIS:Department for Business,Innovation and Skills)の動向 ② イングランド高等教育財政会議(HEFCE)の動向 ③ 高等教育統計局(HESA: Higher Education Statistics Agency)の動向 ④ その他機関の動向 ⑤ 英国のメディア報道(2013 年 9 月 16 日~2013 年 10 月 15 日) 4.フランス(ストラスブール研究連絡センター)・・・・・・・・・・・・・・・P19 ① フランス高等教育の動向 5.中国(北京研究連絡センター) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・P22 ① 国、地方レベルでの高等教育政策の動向 ●教育部による「教育における扶助プロジェクト実施に関する意見の通知」について ② 中国の主要大学等の動向 ●西南科技大学、四川省唯一の省政府、教育部共同建設の大学に ③ その他、高等教育に関する有益な情報 ●中国における複雑な人間関係、傑出した研究人材の帰国を妨げる要因となる ●高等教育機関ウェブサイトによる情報公開につき、進歩はあるものの改善の余地あり ●上大学網学部専攻ランキングについて ●「留学赤字」現象が深刻化 1.米国 1-1.連邦政府や全国的な大学団体等に関するもの(ワシントン研究連絡センター) ① 2012年秋学期の大学院入学者数、前年同期比で1.8%増加(9月12日) 大学院協議会(Council of Graduate Schools:CGS)は 9 月 12 日、1986 年以降毎年実施して いる大学院在籍者に関する年次調査報告書の最新版「大学院在籍者と学位に関する調査 ~ 2002 年から 2012 年~(Survey of Graduate Enrollment and Degrees:2002 to 2012)」を発 表した。本報告書は、CGS と大学院入学検定試験の GRE 理事会(Graduate Record Examinations Board)が共同で、大学院を有する大学 675 校から得られた回答を分析し、その結果をまとめた ものである。これによると、2012 年秋学期の大学院入学者数は、前年同期と比較して 1.8%増 の約 46 万 1,000 人であったが、大学院在籍者総数は約 174 万人で、前年同期比 2.3%減となっ た。その他、①2012 年秋学期の大学院出願者数は約 198 万人で、前年同期比 3.9%増であった が、合格率は 39.5%、②2012 年秋学期の大学院の留学生入学者数は、前年同期比約 8%増であ ったが、市民権もしくは永住権を保有する大学院入学者数は同 0.6%増でほぼ変化なし、③2012 年秋学期に大学院に入学した一時滞在学生(Temporary resident)の 54.7%が工学、数学・コ ンピューター科学、物理・地球科学、生物・農業科学分野を専攻しているのに対し、市民権・ 永住権保有新入生では 17.3%、④人種別で見ると、ヒスパニック・ラテン系の大学院入学者は 前年同期比 7.4%増、米国先住民・アラスカ先住民は同 5.7%増、アフリカ系は同 4.6%増と、 マイノリティが増加した一方、白人は同 0.9%減、⑤前年同期比で在籍者数増加が著しい専攻 分野は、11.1%増の数学・コンピューター科学、9.6%増の医療科学、9.3%増の工学であるが、 在籍者数の割合が高い専攻分野は、全体の 20%を占める教育学と同 16%の経営学、⑥2012 年 秋学期の大学院の在籍者数の約 74%が修士課程もしくはサーティフィケートコースに在籍し ている。博士課程の入学者数は前年同期比 5.0%増であるのに対し、修士課程の入学者数は同 1.2%増、⑦2012 年秋学期の大学院入学者の約 58%は女子学生で、修士課程在籍者の 60%、博 士課程在籍者の 52%が女子学生、などが合わせて明らかにされている。 Council of Graduate School, Graduate Schools Report Slight Growth in New Students for Fall 2012 http://www.cgsnet.org/us-graduate-schools-report-slight-growth-new-students-fall-201 2 ② プリンストン大学、US ニュース誌による全米大学ランキングの第1位に(9月10日) US ニュース&ワールド・レポート(U.S. News & World Report)は9月10日、「2014年 US ニュ ース大学ランキング(2014 U.S. News Best College rankings)」を発表した。大学約1,800 校を対象に、授業料、合格率、クラスあたりの学生数、卒業率、卒業生の平均学資ローン負債 額などを含む様々な要素を勘案して行われた調査により、「ベストバリュー大学(Best Value Schools)」や「新進気鋭大学(Up-and-coming Schools)」など、10部門のランキングが明ら かにされている。今回の特徴として、前年までと異なり、学生の高校における成績の比重が顕 著に低くなり、代わりに大学の卒業率及び在籍率が重視されている。比重を変更したにもかか わらず、上位校の変更は少なかった。10部門の中で、研究活動を重視し、学士・修士・博士課 程を有する大学のランキング「全米大学ランキング(National University Ranking)」では、 プリンストン大学(Princeton University、ニュージャージー州)が第1位となり、第2位には 前年プリンストン大学と共に1位であったハーバード大学(Harvard University、マサチューセ 1 ッツ州)が選出されている。また、学部教育に重点を置き、授与する学位の50%以上が英語学・ 経済学・社会学など文系分野である「全米リベラルアーツカレッジランキング(National Liberal Arts College Rankings)」では、ウィリアムス大学(Williams College、マサチュー セッツ大学)が4年連続で第1位となり、第2位にはアマースト大学(Amherst College、マサチ ューセッツ州)が選出された。いずれの部門も上位校には大きな変動はみられなかったが、上 位20位圏外では、例えばペンシルバニア州立大学(Pennsylvania State University)が全米大 学ランキングで前年46位からケース・ウェスタン・リザーブ大学(Case Western Reserve University、オハイオ州)と並んで37位に上昇した他、ピッツァー大学(Pitzer College、カ リフォルニア州)が全米教養大学ランキングで前年43位から35位に上昇するなど、大きな動き も見られる。 なお、全10部門における2014年大学ランキングは、 <http://colleges.usnews.rankingsandreviews.com/best-colleges>から閲覧可能。 U.S. News and World Report, Princeton, Williams Top U.S. News Best Colleges Rankings http://www.usnews.com/education/best-colleges/articles/2013/09/10/princeton-williams -top-us-news-best-colleges-rankings ③ 米国とロシア、原子力及びエネルギー関連科学研究開発協力に関する政府間協定に署名(9 月16日) エネルギー省(Department of Energy)のアーネスト・モニツ長官(Ernest Moniz)とロシア 国営原子力公社「ロスアトム」(Russian Federation State Corporation、通称 Rosatom)の セルゲイ・キリエンコ社長(Sergey Kirienko)は9月16日、「米露原子力及びエネルギー関連 科学研究開発協力協定(Agreement between the Government of the United States of America and the Government of Russian Federation on Cooperation in Nuclear- and Energy-Related Scientific Research and Development)」に署名した。本協定は、原子力研究施設の利用に関 する米露間での協力拡大に必要な法的枠組みを提供するもので、2011年1月に施行された「米露 原子力エネルギー平和利用協力協定(U.S.-Russian Agreement for Cooperation in the Field of Peaceful Uses of Nuclear Energy)」を補完するものとなる。なお、本協定により、国際 的保障措置、多目的研究用高速原子炉国際研究センター(Multi-Purpose Fast Research Reactor International Research Center)設立、研究用高速スペクトル原子炉「BOR-60」内での燃料及 びマテリアル照射、小惑星からの地球保護などのプロジェクトが実施される可能性があるが、 経費に関しては両国が自国分を負担することになる。 U.S. Department of Energy, United States, Russia Sign Agreement to Further Research and Development Collaboration in Nuclear Energy and Security http://energy.gov/articles/united-states-russia-sign-agreement-further-research-anddevelopment-collaboration-nuclear ④ NIH、「BRAIN イニシアティブ」における2014年度の最優先領域を承認(9月16日) 国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)のフランシス・コリンズ長官(Francis S. Collins)は9月16日、2014年度大統領予算案で1億1,000万ドルが要求されている「イノベー ティブな先進神経科学技術を通じた脳研究(Brain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies:BRAIN)イニシアティブ」予算の中から、NIHに配分される予定の4,000万 ドルの拠出対象となる最優先脳研究領域を承認したことを発表した。これらはBRAINイニシアテ 2 ィブ作業部会(BRAIN Working Group)が特定したもので、①脳細胞種の個体数調査、②脳構造 マップ作成、③機能を記録する新たな大規模神経回路網の開発、④神経回路操作のためのツー ル一式の開発、⑤ニューロン活動と行動の関連付け、⑥神経科学実験における理論・モデリン グ・統計・計算の統合、⑦ヒトの脳の画像化機能の根底にあるメカニズムの描出、⑧科学研究 のためのヒトのデータ収集を可能にするメカニズム作成、⑨知識と研修の普及、の9領域となっ ている。 National Institutes of Health, NIH approves high-priority research within BRAIN Initiative http://www.nih.gov/news/health/sep2013/od-16.htm ⑤ 約60%の大学において、2013年5月1日の段階での合格者数が同年秋学期の目標入学者数に 到達せず(9月18日) 高等教育情報を提供するインサイド・ハイヤー・エド社(Inside Higher Ed)は、ギャラップ 社(Gallup)と共同で、大学入学責任者を対象とした調査報告書「2013 年インサイド・ハイヤ ー・エド大学入学責任者調査(The 2013 Inside Higher Ed Survey of College and University Admissions Directors)」を発表した。大学入学担当者 381 人からの回答に基づく本調査結果 によると、約 60%の大学において 2013 年 5 月 1 日の段階での合格者数が、同年秋学期の目標 入学者数に到達していないことが明らかにされた。カテゴリー別で見ると、ほぼ目標数に到達 しているのは博士課程のみで、コミュニティ・カレッジの 66%、私立 4 年制大学の 59%、公立 4 年制大学及び修士課程の 77%が、5 月 1 日現在で目標数に到達していないという。このよう な現状であるため、回答した入学担当者の 29%が、米国大学入学カウンセリング協会(National Association for College Admissions Counseling:NACAC)の適正実施原則声明文(Statement of Principles of Good Practice)の中で禁じられているにもかかわらず、他大学への入学誓 約を済ませた学生を 5 月 1 日以降勧誘したと認めている。その他、①入学者の人種・民族に対 する考慮に関しては、現時点では方針変更しない大学が大半、②大学による学資援助プログラ ムは学生の経済的必要性を完全に満たしていないが、今後も同様の状況が継続する見通し、③ 留学生募集において大学が海外エージェントの活用を容認する動き、④US ニュース&ワール ド・レポート(U.S. News & World Report)などの格付け団体に対し、他大学は虚偽の報告を していると大半が回答、⑤学生の性的指向及び性別認識に関して任意回答を求めることには回 答者の約 25%が賛成、などが合わせて明らかにされている。 なお、本報告書は、 <http://www.insidehighered.com/news/survey/feeling-heat-2013-survey-college-and-univ ersity-admissions-directors>に必要事項を記入後、ダウンロード可能。 Inside Higher ED, Feeling the Heat: The 2013 Survey of College and University Admissions Directors http://www.insidehighered.com/news/survey/feeling-heat-2013-survey-college-and-unive rsity-admissions-directors ⑥ 大学における研究開発費のうち約5%は企業からの拠出(9月19日) 米国科学財団(National Science Foundation:NSF)は、研究開発事業に関する調査である、 「高等教育機関研究開発調査(Higher Education R&D Survey)」と「企業における研究開発及 びイノベーション調査(Business R&D and Innovation Survey)」の2つの調査結果に基づき、 3 産学間の研究開発協力を検証した報告書「研究開発に関する NSF 調査2件、様々な産学官関係を 検証(Two NSF Surveys on R&D Document Varied Relationships between Businesses and Academia)」を発表した。本報告書によると、2011年度の大学における研究開発費支出総額650 億ドルのうち、約5%にあたる32億ドルは企業からの拠出によるもので、この割合は1970年代後 半からほぼ変わらないことが明らかにされた。また、回答した大学の67%は、2011年度に何ら かの形で企業から研究開発資金援助を受けており、そのうちの38%は、研究開発費の企業負担 額は100万ドル以上と回答した。その他、①企業による研究開発費負担額の多い上位15校が、総 額32億ドルのうちの37%を受給、②企業が負担した研究開発費が使用された主な研究分野は、 医療科学分野が39%、工学分野が26%、③企業が米国大学との研究開発協力のために投入した 資金は、企業の研究開発費全体の1%未満、などが合わせて明らかにされている。 なお、本報告書は、<http://www.nsf.gov/statistics/infbrief/nsf13333/>から閲覧可能。 National Science Foundation, NSF study documents proportion of university R&D funded by business http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=129185&WT.mc_id=USNSF_51&WT.mc_ev=clic k ⑦ NIH、生物医学研究の人材育成強化に向け約370万ドルを助成(9月23日) 国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)は、生物医学研究に従事する人材の 育成強化のために、大学院生とポスドク研究者を対象とした研修プログラム 10 件に対し、NIH コモンファンド(Common Fund)の「生物医学研究人材強化(Strengthening the Biomedical Research Workforce)プログラム」を通じて、「科学研修経験拡大(Broadening Experiences in Scientific Training:BEST)」助成として総額約 370 万ドルを拠出すると発表した。BEST は、 大学院生とポスドク研究者に対し、研究職や研究関連職といった幅広い職業を経験させること を目的とするもので、授業・輪番・ワークショップ・実地研修など含む研修プログラムの実施 を支援する。第 1 回目となる BEST 助成を受給するのは、コーネル大学(Cornell University、 ニューヨーク州)の「コーネル大学 BEST 研修プログラム(Cornell University BEST Training Program)」を含む 10 件の研修プログラムで、各プログラムには直接経費として年間最高 25 万ドルが最長 5 年間助成される。 第 1 回 BEST 助成受給プログラムのリストと詳細は、 <http://commonfund.nih.gov/workforce/fundedresearch.aspx>から閲覧可能。 National Institutes of Health, NIH announces awards to strengthen the biomedical research workforce http://www.nih.gov/news/health/sep2013/od-23.htm ⑧ 2011年度の連邦研究助成は、前年度比約9%減の580億ドル(9月26日) 米国科学財団(National Science Foundation:NSF)は、連邦政府による 2011 年度研究助成に 関する報告書「2011 年度の連邦政府による研究助成は 9%減少(Federal Funding for Research Drops by 9% in FY 2011)」を発表した。本報告書によると、2010 年度の連邦政府による研究 助成は 640 億ドル、そして、2011 年度は前年度比 9%減の 580 億ドルであったことが明らかに された。これは、「2009 年米国再生再投資法(2009 American Recovery and Reinvestment Act: ARRA)」から拠出された最後の景気刺激助成が 2010 年度の研究助成には含まれていたためと分 4 析されており、具体的に 2010 年度の ARRA 助成は、連邦研究助成全体の 9%に相当する 57 億ド ルであった。2012 年度の連邦研究助成は、2011 年度とほぼ同額が維持され、580 億ドルが拠出 されたと予測されているが、2013 年度は 2012 年度比約 3%増の 600 億ドルが拠出される見通し である。 なお、本報告書は、<http://www.nsf.gov/statistics/infbrief/nsf13336/>から閲覧可能。 National Science Foundation, Recent NSF study details post-stimulus decrease in federal research funding http://www.nsf.gov/news/news_summ.jsp?cntn_id=129264&WT.mc_id=USNSF_51&WT.mc_ev=clic k ⑨ 最新2年間の連邦学資ローン返済滞納率、過去20年間で最高水準の10%に(10月1日) 教育省(Department of Education)は9月30日、連邦学資ローンの返済滞納状況に関する最新 データを発表した。今回発表されたデータは、①2010年10月1日から2011年9月30日の間にロー ン返済を開始した債務者の最新2年間の滞納率と、②2010年度にローン返済を開始した債務者の 最新3年間の滞納率である。これによると、①は、滞納率10%と過去20年間で最高で、2009年10 月1日から2010年9月30日の間にローン返済を開始したグループと比較し0.9%上昇、②は、滞納 率14.7%で、3年間の滞納率の評価を初めて行った2009年度にローン返済を開始したグループと 比較し1.3%上昇したことなどが明らかにされた。連邦学資ローン返済滞納率は、大学の連邦学 資援助受給資格の指標となっており、現行規則では「ローン債務者の滞納率が2年連続で25%以 上、もしくは40%以上となる年が1年でもあった場合」、その大学は連邦学資援助受給資格を喪 失するが、2014年からは「ローン債務者の滞納率が3年連続して30%以上、もしくは40%以上と なる年が1年でもあった場合」と変更される。今回のデータによると、現行規則に基づき、2014 年度から連邦学資援助受給資格を喪失する大学は、フロリダ理容学校(Florida Barber Academy) など8校で、前年の2校から増加している他、大学セクター別で見ると、最新3年間の滞納率が最 も高いセクターは営利大学の21.8%で、公立大学が13%、私立大学が8.2%と続いていることや、 滞納者全体の43%は営利大学に在籍していた学生であることも合わせて明らかにされている。 The Chronicle of Higher Education, Student-Loan Default Rates Continue Steady Climb http://chronicle.com/article/article-content/142009/ 5 1-2.主として州政府や個別の大学に関するもの(サンフランシスコ研究連絡センター) ① 聞報道等 1.国、地方レベルでの高等教育政策(教育改革、予算制度など)の状況 ●米国政府のシャットダウンが及ぼす学術界への影響はいかほどか How a Government Shutdown Would Affect Academe (The Chronicle of Higher Education, September 30, 2013) http://chronicle.com/article/article-content/141987/ ●ホワイトハウスは国立の科学関連機関などに甚大な被害がでているとする声明を発表 ~連邦政府が所管する科学研究機関(NSF,NIH,CDC など)の多くが閉鎖され、自宅待機や研究 の中断を強いられている~ President Briefed on Shutdown Impacts (The White House, October 12, 2013) http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/10/12/potus-briefed-shutdown-impacts ●学術界を救出するためにも、米国政府のシャットダウンを終わらせることに合意 To the Relief of Academe, Deal Is Reached to End Federal Shutdown The Chronicle of Higher Education, October 17, 2013) http://chronicle.com/article/To-the-Relief-of-Academe-Deal/142381/ ●大学ランキングの根拠ともなるアドミッションレート等のデータの虚偽報告について、 National Association for College Admission Counseling(NACAC:全国大学入学相談活動協 会) 倫理委員会が協会への報告及びデータの検証を各大学に要求 Validation Required (Inside Higher Ed, September 23, 2013) http://www.insidehighered.com/news/2013/09/23/admissions-association-will-require-va lidation-rankings-statistics#ixzz2hYK9R7Bm ●世界的学術賞が受賞者の学術的生産性低下を招いている? Do Major Prizes Decrease Scholarly Productivity? (Inside Higher Ed Quicktakes, October 2, 2013) http://www.insidehighered.com/quicktakes/2013/10/02/do-major-prizes-decrease-scholar ly-productivity ●ブリティッシュカウンシル報告:留学生数増加傾向に陰り New Report Forecasts Growth of International Students (Inside Higher Ed Quicktakes, October 8, 2013) http://www.insidehighered.com/quicktakes/2013/10/08/new-report-forecasts-growth-inte rnational-students 6 ●カリフォルニア高等教育マスタープランの発展~加州では、2年制のコミュニティーカレッ ジにおける学士号取得が広がりをみせている~ California's Evolving Master Plan (Inside Higher Ed, September 27, 2013) http://www.insidehighered.com/news/2013/09/27/two-year-colleges-california-mull-bach elors-degrees#ixzz2hYFjkZmz ●加州教育長、STEM 教育推進のための特別調査委員会報告について言及~低学年における基礎 教育の整備、教員の専門的指導力の向上等が必要~ State Schools Chief Tom Torlakson Previews Expert Task Force Report on Boosting STEM Education (California Department of Education, October 4, 2013) http://www.cde.ca.gov/nr/ne/yr13/yr13rel101.asp 2.高等教育に係る財務の状況(大学基金、学生への支援、プロジェクトを含む事業を実施す るための資金の確保や措置など) ●多くの大学が、学生の経済的支援に関するニーズを十分に満たしていると主張 Colleges That Claim to Meet Full Financial Need http://www.usnews.com/education/best-colleges/paying-for-college/articles/2013/09/18 /colleges-that-claim-to-meet-full-financial-need-2014 (U.S. News, September 18, 201) ●加州コミュニティカレッジ6校で授業料の二段階設定を試験的に導入 Two-Tiered Tuition is Back http://www.insidehighered.com/news/2013/10/11/californias-governor-signs-two-tier-tu ition-law (Inside Higher Ed, October 11, 2013) ●私立大学の学費、昨年度比で平均 3.6%増加 Private College Tuition Rates Are Up 3.6% (Inside Higher Ed Quicktakes, October 11, 2013) http://www.insidehighered.com/quicktakes/2013/10/11/private-college-tuition-rates-ar e-36 3.個別の大学の特色ある取組みなど有用な情報 ●ルイジアナ州センテナリー大学、学生の海外経験のため新入生全員をパリに8~10 日派遣 All the Freshmen in Paris (Inside Higher Ed, October 10, 2013) http://www.insidehighered.com/news/2013/10/10/louisiana-college-plans-send-all-fresh men-paris-first-days-class#ixzz2hXurAqqX ●ハーバード大学、高等教育界において史上最大規模の 65 億ドルの寄付金募集活動を開始 Harvard Launches $6.5 Billion Capital Campaign (USA TODAY, September 22, 2013) 7 http://www.usatoday.com/story/money/business/2013/09/22/harvard-multibillion-dollarcapital-campaign/2849659/ ●カリフォルニア大学サンフランシスコ校、医学部学生の Wikipedia 記事編集作業を単位とし て認定 Med Students Earn Credit by Editing Wikipedia Articles (Inside Higher Ed Quicktakes, September 30, 2013) http://www.insidehighered.com/quicktakes/2013/09/30/med-students-earn-credit-editing -wikipedia-articles ●スタンフォード大、若手高校教員の離職率低下を目的としたフェローシップ制度を導入 Stanford Fellowship Offers Early-Career Teachers Support and Incentive to Stay in the Classroom (Stanford University, October 9, 2013) http://news.stanford.edu/news/2013/october/hollyhock-teachers-fellowship-100913.html 8 2.ドイツ ①ドイツ大学長会議(HRK)の動向 ●ドイツ国内の高等教育機関に関する進路情報をオンラインで提供、10 月末まで(2 Sep. 2013) ドイツの各大学は大学進学希望者に対して、学位プログラムを含む様々な進路情報をオン ラインで提供している。ドイツ大学長会議(HRK)が設置した“German Study Place Exchange“というシステムで、情報は毎日更新され、10 月末まで無料で利用できる。 German Study Place Exchange (http://www.hochschulkompass.de/studienplatzboerse) HRK HP (http://www.hrk.de/press/press-releases/press-release/meldung/study-p lace-exchange-back-online-2715/) ②その他大学等の動向 ●名門工科大学 9 校の大学連合(TU9)は連邦政府に運営費交付金を要請 ドイツの名門工科大学9校から構成される大学連合(TU9)は、連邦政府が大学に対して運 営費交付金を交付可能となるよう、ドイツ連邦基本法の変更を要請した。 TU9 の会長を務めるライン・ヴェストファーレン・アーヘン工科大学(RWTH)のエルンスト・ シュマハテンベルク学長は、9 月 10 日、各州は過去 10 年間で基本的な設備を改善すること ができなかったと述べた。大学の資金不足のため、将来いつ頃基本設備を改善することがで きるのか、見通しがつかない。ドイツ連邦基本法では、大学の運営費交付金は各州のみが負 担することとなっている。シュマハテンベルク学長はある記者会見で、 「早急に対策を講じな ければならない」と強調した。研究と教育が国際競争において劣勢となれば、研究・勉学の 場としてのドイツは競争力を失う。 TU9 の連合は、アーヘン工科大学(RWTH)、ベルリン工科大学、ブランデンブルク工科大学、 ダルムシュタット工科大学、ドレスデン工科大学、ハノーヴァー大学、ミュンヘン工科大学、 シュトゥットガルト大学、およびカールスルーエ工科大学から構成されている。 dpa(ドイツ通信)-Dossier Bildung Forschung Nr.38/2013 16 Sep 2013 ●旧東独地域の大学で旧西独地域出身の新入生が増加 旧西独地域のギムナジウム卒業者の間で、旧東独地域の大学 43 校の人気が急上昇している。 メクレンブルク・フォアポンメルン州 における旧西独地域及びベルリン出身の新入生数は、 4 年間で 19.3 パーセントから、2012 年 2013 年にかけての冬学期においては 39.5 パーセント に上昇した。ザクセン・アンハルト州では 15.9 パーセントから 36 パーセントに、チューリ ンゲン州では 20.7 パーセントから 39.9 パーセントに、ザクセン州では 12.3 パーセントか ら 26.1 パーセントに上昇した。 ブランデンブルク州は伝統的にベルリン、もしくは旧西独地域出身の学生の占める割合が 高い地域だが、ここでは 41.1 パーセントから 48 パーセントに上昇した。 dpa(ドイツ通信)-Dossier Bildung Forschung Nr.39/2013 23 Sept 2013 9 ●ドイツ南西部の大学は卒業生に同窓会加入を勧誘 ドイツの南西部にある大学の多くは、卒業生の母校に対する連帯感の欠如を嘆いている。 ドイツ通信が実施したアンケートによって、このことが明らかになった。 フリードリクスハーフェンにあるツェッペリン大学の同窓会事務所のシュテファニー・ヘ ーフィック氏は、多くの大学で、卒業生は母校を「知性のふるさと」とは感じていないと語 った。間もなく退任予定のチュービンゲン大学連盟会長、フーベルト・ヴィケルト氏も同様 の考えで、卒業生の大学に対する連帯感の欠如を嘆いている。 しかし、肯定的な例もある。連帯感が最も強いのは私立大学においてである。 上述のツェッペリン大学(私立)では、同窓生 1200 人からなるネットワークが 1162 人の 在学生にとって重要な役割を果たしている。同窓生は、インターンシップ、新規就職先、あ るいは企業などのプロジェクトを斡旋することによって、大学を支援しているという。 ロイトリンゲンにある EBS ビジネス・スクール(私立)の同窓生は、キャリアプランにつ いて助言するなどにより、在学生を支援している。毎年 100 人近い同窓生が、助言を得たい 在学生の相談にのっている。 コンスタンツ大学では、在学生数は 1 万 1500 人であるが、同窓会員は 2500 人程度で多く はない。広報担当者は、同窓会の会員数が少ないのは、例えばアメリカ合衆国のように同窓 会組織の伝統がドイツにはなかったからだと言う。 「同窓会の企画運営はこれまで、ほとんど の場合ボランティアが担っていたが、徐々に大学により職業化(Professionalisierung)され てきた。同窓会という組織の伝統ができあがるまでには、時間がかかる。」 このことは、フライブルク大学の責任者も承知している。フライブルク大学は、1996 年に 大規模な同窓生活動を展開したドイツ最初の大学である。卒業生のために学部の枠を超えた 全学組織の同窓会を設立し、今では 2000 人の会員がいる。フライブルク大学の同窓会の支部 は世界中で 17 を数え、現在約 2 万 4000 人の正会員がいる。同大学のルドルフ・ベルナー・ ドライエル同窓会長は、大学間の競争が激化していくなかで、卒業生は大学の評判を高め、 大学の良さを代弁してくれる重要な存在であると述べる。 チュービンゲン大学の卒業生は、2 万 6000 人の在学生をかかえる大学に資金援助してもよ いと考えている。例えば、奨学金による援助などである。 ハイデルベルク大学では、外国人卒業生の同窓会員が多い。同大学には約 1 万人の同窓生 が登録されているが、その中でドイツ人はごくわずかしかいないと言う。 カールスルーエ工科大学(KIT)は 2013 年以降、卒業者全員を自動的に同窓生ネットワーク に登録している。国際同窓会支部が 18 あり、約 2 万人の会員がいる。それ以外にも 3 つの助 成機関があり、これらはたとえば賞金を寄付したり、著名人を KIT のカールスルーエ技術研 究所に招聘するなど、同大学のプロジェクトを援助している。同窓生のネットワークは、奨 学金のための資金も拠出している。 dpa(ドイツ通信)-Dossier Bildung Forschung Nr.41/2013 07 Oct 2013 10 3.英国 ①ビジネス・イノベーション・技能省(BIS:Department for Business,Innovation and Skills) の動向 ● 科学・工学分野での大学教育を支援する投資を発表 9 月 30 日、BIS はイングランドの大学における科学・工学分野の教育を強化するための計£4 億の投資についてウィレッツ大学・科学担当大臣が発表したと伝えた。 本投資は HEFCE からの£2 億の投資に、大学からの投資(金額は政府からの資金に一対一以 上の割合で対応する必要あり)が加わり、総額£4 億の投資になると見込まれている。大学の インフラを改善し、英国経済の背骨ともいうべき科学・工学系の設備や教育をさらに強化する ことを狙ったものであり、また、現在工学系の労働人口のうち女性は 6%のみであることを踏 まえて、同分野の大学レベルでの教育をより多くの女性が受けることを支援するものでもある。 さらに、現時点ではフルタイムからパートタイムの学生になると授業料の援助対象ではなく なるが、今後は工学・テクノロジー・コンピューター科学の分野においては、こうした場合で も授業料の援助が受けられるようになる。 ウィレッツ大臣は、 「本投資により、世界クラスかつ産業レベルに相応しい設備や教育が提供 されることが期待され、さらに工学分野に存在する性別間格差を超える架け橋となるだろう」 とコメントしている。 【BIS の関連 URL】 http://news.bis.gov.uk/Press-Releases/-400-million-will-help-science-and-engineer ing-students-get-ahead-in-the-global-race-and-encourage-m-693ca.aspx 【HEFCE の反応】 http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2013/name,83329,en.html 【Russell Group の反応】 http://www.russellgroup.ac.uk/russell-group-latest-news/154-2013/5531-announcemen t-of-200-million-capital-funding-for-teaching/ ● 大学と経済発展に関する報告書を発表 10 月 15 日、BIS は大学と経済発展に関する報告書‘Encouraging a British Invention Revolution: Sir Andrew Witty’s Review of Universities and Growth’を発表した。本報告 書は、製薬会社グラクソ・スミスクラインの CEO であり Nottingham 大学の総長、さらに BIS においても重要な役割を担うアンドリュー・ウィッティ氏によって取りまとめられたものであ る。 本報告書では、大学はテクノロジーやイノベーションで世界を先導する英国の経済発展を促 す可能性を持つ、国にとって重要な財産であり、今後、技術革新を起こし、経済成長に貢献さ せていくためには、産業界との連携を一層推し進める環境整備が必要としている。具体的な取 組みとして、 ‘Arrow Project’というプロジェクトを設立し、£10 億を投資することで、大学・ 企業・地域産業パートナーシップ(LEP:Local Enterprise Partnership)※1 が協力して学術研 究を活かした新たなテクノロジーの開発や実践利用を目指すことや、高等教育革新基金(HEIF: Higher Education Innovation Funding )※2 を£2 億 5000 万まで増額すること等を提言してい る。 ※1 地域の経済開発促進を担う自治体と企業のパートナーシップ ※2 地方企業による大学の資源活用を促し、産学連携を強化するための補助金 11 【BIS の関連 URL】 https://www.gov.uk/government/consultations/universities-and-growth-the-witty-rev iew-call-for-evidence 【UUK の反応】 http://www.universitiesuk.ac.uk/highereducation/Pages/WittyReview.aspx 【Russell Group の反応】 http://www.russellgroup.ac.uk/russell-group-latest-news/154-2013/5534-the-witty-r eview-of-universities-and-economic-growth/ 【メディア報道】 ・BBC Use universities to drive economic growth, report urges 経済発展に大学の活用を-報告書が奨励 http://www.bbc.co.uk/news/education-24526627 ②イングランド高等教育財政会議(HEFCE)の動向 ● 学生の高等教育への参加機会拡大に関する国際的な調査報告書を発表 10 月 9 日、HEFCE は学生の高等教育への参加機会拡大(Widening Participation)に関する 各国の取組みについて調査した報告書‘International Research on the Effectiveness of Widening Participation’ を発表した。本報告書は、英国では HEFCE や OFFA が積極的に進め ている学生の高等教育への参加機会拡大や学生の成功(Student Success)※1 への取組みについ て、英国以外の国々の国家的戦略について調査したもの。調査は CFE Research※2 と Edge Hill 大学に委託して実施したもので、オランダ、米国、オーストラリア、南アフリカ、ノルウェー、 アイルランドの 6 カ国の事例が紹介されている。 ※1 学生のドロップアウト防止や達成度向上を目的とした活動 ※2 リサーチや評価の委託サービスを提供する非営利団体 【HEFCE の関連 URL】 http://www.hefce.ac.uk/pubs/rereports/year/2013/wpeffectiveness/ ● 各大学への助成金配分と学生定員に関する文書を発表 10 月 9 日、HEFCE は 2013 学事年度における高等教育機関への助成金の配分と学生定員に関す る文書を発表した。HEFCE から各高等教育機関に配布される公的助成金の合計は£4,500 億にな る予定であり、本文書には各機関への配当額の算出法や算出にあたっての指針、機関ごとの助 成金の内訳が示されている。また、学生定員超過によるリスクを避けるため、政府が設ける制 限についても言及されている。 【HEFCE の関連 URL】 http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2013/news83344.html ● イングランドの高等教育の運営枠組みに関する報告書の要約版を発表 10 月 15 日、HEFCE は今年 7 月に発行されたイングランドの高等教育の運営枠組みに関する報 告書‘Operating Framework for Higher Education in England’の要約版‘A Short Guide’ 12 を発表した。 要約版では学生が高等教育で有益な経験を得るために行われる下記の取組みの概要を紹介し ている。 ・学問の質と基準がどのように維持されているか ・コースや資格に関する正確な情報 ・高等教育への公平なアクセス ・高等教育を提供する機関における優れた統治と経済的持続性 ・問題はどのように解決されるのか 【HEFCE の関連 URL】 http://www.hefce.ac.uk/news/newsarchive/2013/news83415.html ③高等教育統計局(HESA: Higher Education Statistics Agency)の動向 ● 「高等教育統計 2011-12」を発表 9 月 19 日、HESA は 2011 学事年度における英国高等教育セクターの概要をまとめた、 「高等教 育統計 2011-12」を発表した。主な統計結果は以下のとおり。 ・出願:英国在住者の 58 万 9350 人が出願し、合格者は 43 万 1235 人 ・学生:249 万 6645 人が高等教育機関に所属(56%が女子) 、18 万 390 人が継続教育カレッジ に所属 ・42%の学生が理系科目を専攻。もっとも人気の科目はビジネス・経営学 ・資格:78 万 7205 の高等教育による資格が授与された(50%が第一学位、34%が大学院以降 の学位) ・卒業生:卒業から半年後の進路状況は、75%が就職、21%が学業に専念、7%は就労と学業の 両立 ・スタッフ:2011 年 12 月 1 日時点での高等教育機関のスタッフは 37 万 8250 人、うち 18 万 1385 人(48%)が教員 ・財政:英国の高等教育機関の収入は£280 億、うち 35%は授業料収入 ・ローン:学生ローン会社が貸し出した授業料ローンは£30 億 【HESA の関連 URL】 http://www.hesa.ac.uk/content/view/2993/393/ ④ その他機関の動向 1)UCAS(Universities & Colleges Admissions Service)の動向 ● 2013-14 年度 高等教育機関への合格者数暫定見積りを発表 9 月 24 日、高等教育機関の願書受付・処理機関 UCAS は 2013-14 年度入学予定の合格者数の 暫定的な統計‘Interim assessment of UCAS acceptances by intended entry year, country of institution and qualifications held’を発表した。本統計は統一試験 A レベルの結果発表 4 週間後に記録されたもので、例年の傾向から、この時点での数字が実数の約 97~99%を占める ことがわかっている。 本統計によれば 2013-14 年度の合格者数は 44 万 5,820 人で、昨年に比べて 3 万 7,350 人増(9% 増)の結果となった。また、ABB 成績記録者※は 11 万 1,010 人で、昨年より 7,030 人増(7%増) となった。 13 ※ A レベルにおいて A 一つと B 二つ以上という好成績を修めた学生。こうした学生について、大 学及び継続教育カレッジが競争的に受け入れることが認められた追加定員枠「ABB 枠」が 2013 学年 度に導入された。 【UCAS の関連 URL】 http://www.ucas.com/news-events/news/2013/interim-assessment-ucas-acceptances-int ended-entry-year-country-institution-0 【メディア報道】 ・The Guardian Number of students starting university back to levels before tuition fees raised 大学進学者数、授業料値上がり前の数とほぼ同じに戻る http://www.theguardian.com/education/2013/sep/24/uk-student-numbers-recover-tuiti on-fees ・The Independent University entry figures settle down after entry fees blip 大学の授業料の急上昇後、入学者数が回復 http://www.independent.co.uk/student/news/university-entry-figures-settle-down-af ter-entry-fees-blip-8836910.html ・Times Higher Education Student numbers soar almost 10 per cent 大学入学者数、約 10%増える http://www.timeshighereducation.co.uk/news/student-numbers-soar-almost-10-per-cen t/2007618.article ・BBC University acceptances bounce back 大学入学者数、元に戻る http://www.bbc.co.uk/news/education-24231367 2)Times Higher Education(THE)の動向 ● 世界大学ランキング 2013-14 年度版を発表 10 月 2 日、英国の高等教育専門誌である THE が、“World University Rankings 2013-2014” を発表した。同ランキングは、米国に本社を置く国際的な情報企業 Thomson Reuters から情報 提供を得て作成された。 同ランキングでは、以下の 5 つのカテゴリーに分類される 13 の評価基準が設定されており (【 】内は評価ウェイト) 、教育、研究から知識移転活動まで、大学のあらゆる活動が幅広く 精査されている。 ① 教育【30%】 (評価基準)教育評価結果、教員 1 人当たりの学生数、PhD 授与数/学士号授与数比、 教員 1 人当たりの PhD 授与数、教員 1 人当たりの大学全体の収入 ② 研究【30%】 (評価基準)研究評価結果、教員 1 人当たりの研究収入、教員・研究者 1 人当たりの 出版論文数 14 ③ 論文被引用【30%】 (評価基準)研究の影響力(論文 1 本当たりの平均被引用回数) ④ 産業界からの収入【2.5%】 (評価基準)教員 1 人当たりの産業界からの収入 ⑤ 国際性【7.5%】 (評価基準)留学生/国内学生比、外国人教員/国内出身教員比、国際共著の研究ジャ ーナル出版数 総合ランキングでは、上位 200 大学と、200 位以下の大学の 25 または 50 位毎に大括りされ た順位が公表されている。また、(1)工学・技術、(2)生命科学、(3)臨床・前臨床・保健、(4) 物理学、(5)社会科学、(6)芸術・人文科学の 6 分野における上位 100 大学のランキングも提供 されている。 【概観】 ○総合評価:3 年連続でカリフォルニア工科大学が 1 位に選ばれ、上位 10 位のうち7大学、上 位 100 位のうち 46 大学(昨年は 47 大学)を米国の大学が占めるなど、米国が引き続きその圧 倒的な優位性を示した。しかし同時に、昨年に引き続き、ヨーロッパ大陸の大学が順位を下げ、 アジア諸国の大学が順位を上げるとの傾向が見られる。上位 5 大学の順位は、1 位:カリフォ ルニア工科大学(米国)、2 位:ハーバード大学(米国)とオックスフォード大学(英国)、4 位:スタンフォード大学(米国) 、5 位:マサチューセッツ工科大学(米国)となっている。ま た、英米以外の国では 14 位に位置したスイスの ETH Zürich – Swiss Federal Institute of Technology Zürich が最上位であり、非英語圏から上位 20 位入りした唯一の大学となっている。 ○英国の大学:3 大学が上位 10 以内に、11 大学(すべて Russell Group 構成大学)が 100 位内 に選出された。全体としては順位を上げた大学が 14、下げた大学も 14、昨年と同順位の大学が 3 となった。スノードン UUK 理事長は、 「各種ランキングは、英国は、米国に次ぐ世界第二位の 優れた大学システムを持っていることを示している」 「しかし、我々がこの国際競争力を維持し ていくためは、国は高等教育への投資を継続していかなければならない」と述べている。 ○日本の大学:上位 200 位に入ったのは、東京大学がアジアの大学で最高位の 23 位(昨年 27 位)であったほか、京都大学 52 位(昨年 54 位) 、東京工業大学 125 位(昨年 128 位)、大阪大 学 144 位(昨年 147 位) 、東北大学 150 位(昨年 137 位)の合計 5 大学で昨年と同数であったが、 多くの大学が僅かながら順位を上げた。THE は、 「安倍総理は経済同様教育に重点をおいており」 、 「政府は世界における日本の大学の認知と評価の向上に向けた支援を確約した」との加藤文部 科学省国際統括官の言葉を紹介しつつ、同旨の意見が他のアジア諸国の政府からも聞かれると ころ、西から東へのパワーシフトは今後とも続きそうだと述べている。 【THE の関連リンク】 http://www.timeshighereducation.co.uk/world-university-rankings/2013-14/world-ran king 【参考】 総合上位 10 位と、50 位以内に入ったアジアの大学、及び 200 位以内に入った日本の大学のラ ンキングと総合評価得点は以下のとおり。 15 World Ranking 2013-14 World Ranking 2012-13 1 1 California Institute of Technology US 94.9 2 4 Harvard University US 93.9 2 2 University of Oxford UK 93.9 4 2 Stanford University US 93.8 5 5 Massachusetts Institute of Technology US 93.0 6 6 Princeton University US 92.7 7 7 University of Cambridge UK 92.3 8 9 University of California, Berkeley US 89.8 9 10 University of Chicago US 87.8 10 8 Imperial College London UK 87.5 23 27 University of Tokyo Japan 76.4 26 29 National University of Singapore Singapore 72.4 43 35 The University of Hong Kong Hong Kong 65.3 44 59 Seoul National University Republic of Korea 65.2 45 46 Peking University China 65.0 50 52 Tsinghua University China 63.5 52 54 Kyoto University Japan 63.2 125 128 Tokyo Institute of Technology Japan 50.8 144 147 Osaka University Japan 49.0 150 137 Tohoku University Japan 48.5 Institution Country Overall Score 【UUK の反応】 http://www.universitiesuk.ac.uk/highereducation/Pages/THEWorldUniversityRanking20 1314.aspx#.Uk0_6ySkq8Q 【Russell Group の反応】 http://www.russellgroup.ac.uk/russell-group-latest-news/154-2013/5532-times-highe r-education-world-university-rankings/ 16 【メディア報道】 ・The Guardian Caltech, Oxford and Harvard lead world university rankings カリフォルニア工科、オックスフォード、ハーバードが世界大学ランキングを先導 http://www.theguardian.com/education/2013/oct/02/caltech-oxford-harvard-times-hig her-education-university-rankings The world's top 100 universities 2013 - how the Times Higher Education ranks them 世界トップ 100 大学‐Times Higher Education によるランキング http://www.theguardian.com/news/datablog/2013/oct/02/world-top-100-universities-t imes-higher-education ・Times Higher Education World University Rankings 2013-2014: London outruns UK regions 世界大学ランキング 2013-14:ロンドンが英国の他地域より傑出 http://www.timeshighereducation.co.uk/news/world-university-rankings-2013-2014-lo ndon-outruns-uk-regions/2007862.article ・BBC London top city in global university rankings 世界大学ランキング、都市の中ではロンドンが最高位 http://www.bbc.co.uk/news/education-24367153 ⑥ 英国のメディア報道(2013 年 9 月 16 日~2013 年 10 月 15 日) ・The Guardian 10 月 7 日 European language degree courses abandoned by many UK universities 多くの英国大学がヨーロッパ言語のコースを廃止 http://www.theguardian.com/education/2013/oct/07/european-language-degree-courses -abandoned-universities 10 月 10 日 Number of university students seeking counseling rises 33% カウンセリングサービスの増加が必要な学生を抱える大学が 33%上昇 http://www.theguardian.com/news/datablog/2013/oct/10/university-students-seekingcounselling-mental-health-uk ・The Independent 9 月 28 日 Out of 91 UK universities, Durham students have the best quality of life 英国の全 91 大学のうち、学生の生活の質はダラム大学がトップ http://www.independent.co.uk/student/news/out-of-91-uk-universities-durham-studen ts-have-the-best-quality-of-life-8844763.html# 10 月 14 日 No new tuition fee rise, promises Clegg 授業料の値上がりはこれ以上ない-クレッグ自由民主党党首が確約 17 http://www.independent.co.uk/student/news/no-new-tuition-fee-rise-promises-clegg8879728.html# ・Times Higher Education 9 月 18 日 FutureLearn Moocs unveiled 放送大学が設立した MOCS プラットフォーム FutureLearn が講座概要を公表 http://www.timeshighereducation.co.uk/news/futurelearn-moocs-unveiled/2007484.art icle 10 月 10 日 Cambridge still top university in table of tables ケンブリッジ大が英国内の 3 大大学ランキングの全てで首位を維持 http://www.timeshighereducation.co.uk/news/cambridge-still-top-university-in-tabl e-of-tables/2007987.article ・BBC 9 月 18 日 UK enters global online university race グローバルなオンライン大学サービスへ英国も参入 http://www.bbc.co.uk/news/business-24109190 9 月 25 日 Universities testing 13 levels of degree grades 大学で 13 段階の成績評価方式を試験的に実施 http://www.bbc.co.uk/news/education-24224617 10 月 1 日 Northern Ireland exam system: No case for change 北アイルランド、A レベル改変は当面ない http://www.bbc.co.uk/news/uk-northern-ireland-24327786 10 月 7 日 Oxford head challenges fixed limit on tuition fees オックスフォード大学長、授業料の制限に異議を唱える http://www.bbc.co.uk/news/education-24444600 10 月 14 日 More UK students taking part of degree in Europe 学位の課程の一部をヨーロッパで取得する英国学生増加 http://www.bbc.co.uk/news/education-24519377 18 4.フランス ●「フィオラゾ大臣の来日:研究協力と大学のモビリティ促進」 2013 年 6 月にオランド大統領の訪日と安部総理大臣と調印した協定を受けて、 2013 年 10 月 5‐7 日、ジュヌヴィエーヴ・フィオラゾ高等教育研究大臣は 3 度目の 日本訪問を行った。フィオラゾ大臣は日本側と、両国間の学生と研究者のモビリテ ィ強化と研究協力の発展について検討した。 学生のモビリティに関しては、フランスが毎年約 2,000 人の日本人学生(その多 くは芸術関係)を受け入れるのに対し、日本へ来るフランス人学生は 1,000 人に満 たない。そのため、特に科学分野で渡仏する日本人学生の受入強化と日本へのフラ ンス人学生の留学推進に取り組む。 研究協力に関しては、フランスは、日本にとって 4 番目の協力相手国である。フ ランスは、日本とは核融合の分野(ITER)や宇宙産業で協力関係にあるが、それ以 外に「France Europe 2020」の方針に沿って、生命科学、再生可能エネルギー、ロ ボット工学とデジタル工学、ナノテクノロジー・物質科学の分野に重点を置いてい る。フィオラゾ大臣は筑波を訪れ、独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)や産 業技術総合研究所(AIST)と研究協力の強化を確認した。また、京都大学と CNRS 間の協定、筑波大学とボルドー大学間の協定が締結されるなど、両国間の協力強化 を確認した。 ・フランス高等教育研究省 “France-Japon : développement de la coopération scientifique et de la mobilité dans l'enseignement supérieur”(2013 年 10 月 7 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid74274/france-japon-develo ppement-de-la-cooperation-scientifique-et-de-la-mobilite.html ・Figaro Etudiant, AFP agence (2013 年 10 月 7 日) ●「西地中海会議」 2013 年 9 月 20 日、ジュヌヴィエーヴ・フィオラゾ高等教育研究大臣は、モロッ コのラバトで開かれた西地中海「5+5」会議の第 1 回高等教育研究大臣会議に出席 した。 この会議は、同 8 月 27 日に行われた大使会議でフランス大統領が強調した「プ ロジェクトの地中海」の取り組みの一環であり、サブサハラアフリカ(サハラ砂漠 より南の地域)に向けて開かれた「欧州の高等教育・研究」を築くための新たな一 歩となる。 今回の会議では、フランス、スペイン、イタリア、マルタ、ポルトガル、アルジ ェリア、リビア、モロッコ、モーリタニア、チュニジアの 10 カ国の大臣が、欧州 地中海地域の経済発展や若者の雇用のために、高等教育や研究、イノベーションが 重要であることを確認した。 ・フランス高等教育研究省 “Dialogue en Méditerranée occidentale 5+5”(2013 19 年 9 月 20 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid73924/dialogue-en-mediter ranee-occidentale-5-5.html ●「2014 年度高等教育・研究予算」 2014 年度予算は、学生及び研究とイノベーションに基づいた成長への投資を優先 する政府の方針を裏付けるものとなった。 高等教育研究費は、小・中・高等学校教育費、防衛費に次ぐ 3 番目に多い予算で、 2013 年度比で 1 億 2000 万ユーロ増(0.5%増)で、初めて 260 億ユーロを超えた。 高等教育関連の予算に関しては、学生の就学、学生の生活水準向上のため、住居費 と奨学金の予算額が増加され、1 億 400 万ユーロ増(2013 年度比 6%増)となった。 研究費に関しては、Ariane 6 や ITER プロジェクトなど大きな国際科学研究パート ナーシップに割り当てられる予算が増加した。 なお、2013 年 7 月 9 日に、Jean-Marc Ayrault 首相がパリ第 6 大学での講演で、 第 2 次”未来への投資“プロジェクトを発表した。今後 10 年間で総計 120 億ユー ロ、内、大学と国際科学研究パートナーシップに 53 億ユーロ(43%) 、卓越した大 学プロジェクトに 31 億ユーロ(科学研究機器に 4 億ユーロ、デジタルテクノロジ ーに 15 億ユーロ)となっている。 ・ フ ラ ン ス 高 等 教 育 研 究 省 “Budget 2014 : éditorial de la minister "L'université et la recherche en mouvement"”(2013 年 9 月 25 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid74025/budget-2014-editori al-de-la-ministre.html ・フランス政府“"Investir pour la France" : les détails du plan de Jean-Marc Ayrault” (2013 年 7 月 9 日) http://www.gouvernement.fr/premier-ministre/investir-pour-la-france-les-d etails-du-plan-de-jean-marc-ayrault ●「2013 年の新学期」 2013 年は、高等教育機関に入学した学生が約 242 万人、2012 年比で 36,000 人増 加した。その内 46 万人近くが今年のバカロレア合格者で、進学率が 1.5%増加した ことになる。また、高等教育に関する政府の方針を受けて、職業バカロレア取得者 の S.T.S への進学者が 8%、 技術バカロレア取得者の I.U.T.進学者が 2%増加した。 ジュヌヴィエーヴ・フィオラゾ高等教育研究大臣は、2013 年 9 月 11 日の新学期 の記者会見で、学生の成功に投資することは若者と未来に投資することで、大衆主 義や危機に対抗する武器となると語り、学生を激励した。 ・フランス高等教育研究省 “Rentrée étudiante 2013 : éditorial de la ministre” (2013 年 9 月 11 日) 20 http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid73709/rentree-etudiante-2 013-editorial-de-la-ministre.html ●「フランスのデジタル大学:未来の大学の設立」 2013 年 10 月 2 日、ジュヌヴィエーヴ・フィオラゾ高等教育研究大臣は、高等教 育のデジタル計画、フランスのデジタル大学を発表した。高等教育におけるデジタ ル革命を推進するために、 「18 項目から成るデジタルアジェンダの実施」 、 「講義の 配信を整備する財団の創設」 、「MOOCs(WEB 上で無料で参加可能な大規模講義)ま たはオンライン講座のフランス初のプラットホームの開設」 、の 3 本柱が設定され た。 ・ フ ラ ン ス 高 等 教 育 研 究 省 “France Université Numérique : construire l'Université de demain”(2013 年 10 月 2 日) http://www.enseignementsup-recherche.gouv.fr/cid74183/france-universite-n umerique-construire-l-universite-de-demain.html ●「研究管理行政修士第一期生への学位授与」 2012 年 1 月、ANR とパリ・ドフィーヌ大学は研究管理行政修士課程を創設した。 2013 年 9 月 9 日、その第一期生の学位授与式がパリ・ドフィーヌ大学で、同大学学 長 Laurent Batsch 氏と ANR 会長 Pascale Briand 氏出席の下行われた。 本研究管理行政修士号は、研究管理の問題は研究を行う上で必須であり、現状の 改善を目指して研究に即した管理の専門家を育成することを目的に創設された。 ・ANR “Remise des diplômes pour la première promotion de l’Exécutive Master de Management de la Recherche”(2013 年 9 月 13 日) http://www.agence-nationale-recherche.fr/informations/actualites/detail/r emise-des-diplomes-pour-la-premiere-promotion-de-lexecutive-master-de-man agement-de-la-recherche/ 21 5.中国 ① 国、地方レベルでの高等教育政策の動向 ●教育部による「教育における扶助プロジェクト実施に関する意見の通知」について Science Times/中国科学報(2013.9.13) 国務院弁公庁は『教育における扶助プロジェクトの実施に関する意見の通知』(以降「通 知」とする。)を配布した。 「通知」の主な項目は以下の通りである。 ・地方大学における高等教育の質の向上 ・中央政府による高等教育関連プロジェクト、および資金については地方大学に対して傾斜 的配分を検討するべきである。 ・地方大学を掛合支援計画※に組み入れ、当計画による地方大学への支援の長期的に有効な メカニズムを打ち立てる。 ・貧困地域における学生募集の特別計画を実施し、地方の学生に良質な高等教育を受けさせ るチャンスを拡大する。 ※ 掛合支援計画:経済が発達している、或いは実力の比較的強い地方が経済の発達して いない或いは実力の比較的弱い地方に対し実施・援助する一種の政策的行為。主要な 種類として、災害援助、経済援助、医療援助、教育援助がある。 ② 中国の主要大学等の動向 ●西南科技大学、四川省唯一の省政府、教育部共同建設の大学に Science Times/中国科学報(2013.9.3) 9 月 2 日のニュースによると、『四川省人民政府、教育部の西南科技大学の共同建設に関す る意見』(以降「意見」とする。)が近く発布され、西南科技大学が四川省の唯一の省(政府)・ (教育)部により共同で建設される大学になるという。「意見」によると、省政府がキャンパ スの基本建設、人材育成、重点学科や科学研究のプラットフォームなどの方面への経費投入を 増加させ、学校建設を綿陽科技城※の建設における重要な内容とし、綿陽科技城の建設に対す るサポートと促進を行うとしている。 ※ 綿陽科技城(サイエンスシティ): 「軍民融合による経済発展促進モデル都市」建設を 目指すものであり、四川省綿陽市に対し政府より認可されているプロジェクトである。 2015 年までに軍民融合産業の生産高を 1500 億元にすることを計画している。 現在、教育部は大学の博士学位授与機関、重点学科、重点実験室、工学技術研究センター、 重点研究基地実験教育模範センター、人材育成基地、協同イノベーションセンター、ポスドク イノベーション実践基地などの建設を支援している。西南科技大学においては教師の養成、特 にベテラン教師や学術リーダーの養成を支援し、国内外のリーダー人材の導入、国家レベルの ハイクオリティなカリキュラム教育チームの建設及び著名な教員育成などの方面において重点 的に支援していく。 ③ その他、高等教育に関する有益な情報 ●中国における複雑な人間関係、傑出した研究人材の帰国を妨げる要因となる 22 Science Times/中国科学報(2013.9.5) 改革開放以来、我が国(中国)の海外留学からの帰国者の総数はすでに 109 万人に達している。 特に 2012 年は、海外留学帰国者数は 27 万 2900 人に達し、前年比で 46.57%増加し、我が国の 史上最大の帰国ブームとなっている。我が国の海外留学生の帰国率は全体的に上昇している一 方で、中国における傑出した研究人材の流失数は世界首位に位置し、うち科学とエンジニアリ ング分野での平均海外滞在率は 87%に達している。中国におけるいかなる社会・環境的要因が 傑出した人材の帰国を妨げているか、についての調査結果は以下の通りである。 78.8%の回答者が「中国における複雑な人間関係」を一番の要因として選び、77.8%の回答者 が「社会信用度が低い」と考え、75.1%の回答者が「生活の質が低い」と感じている。その他の 要因は「法制度整備が十分でない」が 67.7%、「食品安全問題の深刻さ」が 61.9%、「住宅価格 の高騰による住宅購入の困難さ」が 61.4%、「自然環境の劣悪化」が 60.3%、「戸籍・個人の身 上調書に関する制限の厳しさ」が 48.2%などとなっている。 ●高等教育機関ウェブサイトによる情報公開につき、進歩はあるものの改善の余地あり 中国教育和科研計算機網(2013.9.4) 2011 年の初め、中国高等教育学会は中国高等教育改革発展網を利用し、全国高等教育機関の 情報公開状況に対して、全面的な調査を行い、2013 年の初めにウェブサイト構築情報の公開状 況に対して詳細な調査レポートを完成した。調査対象となったのは 985 プロジェクト、211 プ ロジェクト※2対象校 114 校、また 985 プロジェクトと 211 プロジェクト対象外の大学 743 校で ある。 調査レポートによると、985 プロジェクトと 211 プロジェクトの対象校 114 校のうち ・情報公開体制の構築が比較的良い ・掲載項目が完備されている ・情報更新が適時になされている といった調査項目を満たす大学は 66 校あり、全体の 57.89%を占めた。情報公開体制の構築 が不十分、とされた大学は 36 校で、31.58%を占めた。 一方で、985 プロジェクトと 211 プロジェクト対象外の大学計 743 校のうち同様の調査項目 を満たす大学は 60 校にすぎず、全体の 8.07%にとどまった。一方で情報公開体制の構築が不十 分、とされた大学が 498 校であり 67.03%にも上った。 この調査により 4 年制大学の情報公開状況は一定の進歩があったが、985 プロジェクト 211 プロジェクト対象外大学には改善の余地が大きいことがわかった。 ※ 985 プロジェクト:複数の世界一流の大学や国際的に知名度の高い一群のハイレベル 研究型大学を育成するために中国政府が展開しているプロジェクト。 1998 年 5 月 4 日、 江沢民氏の北京大学創立 100 周年大会での提言を受け、教育部は 21 世紀に向けた教育 振興行動計画を実施する中で、985 プロジェクトとして世界一流の大学とハイレベルの 大学を目指す一部の大学を重点的に支援することとなった。 211 プロジェクト:21 世紀へ向けて中国全土に 100 余りの重点大学を構築することか 23 ら名付けられた国家プロジェクト ●上大学網学部専攻ランキングについて 中国教育和科研計算機網(2013.9.16) 近頃、上大学網※4は『普通大学の本科専攻学科目録(2012 年)』内の学部専攻 506 種に対し て統計調査および分析を行い、『上大学網における中国の大学で最も好かれる学部専攻ランキ ング』を発表した。本ランキングは以下のように示している。 設置数の多い学科専攻についての項目については、中国の 4 年制大学のうち 903 校において 英語専攻が開設されており、我が国の 4 年制大学総数の 77.4%を占めている。その他開設数の 多い順に、コンピュータ技術、マーケティング、国際経済、会計学、電子情報工学、情報管理、 芸術学、観光、経営学となっている。 専攻育成の実力における項目については大半が 985 プロジェクト対象校である。清華大学は 計 24 の学部専攻がランキング入りしている。その他ランキング入りした学部専攻数があ多い順 に(【】内の数字はランキング入りした学部専攻数)、浙江大学【18】北京大学【17】南京大学 【16】復旦大学【15】厦門大学【14】武漢大学【14】中国人民大学【13】天津大学【11】ハル ビン工業大学【11】北京師範大学【10】となっている。 ●「留学赤字」現象が深刻化 中国新聞網(2013.9.25) ここ数年、中国人留学生の帰国が加速化している。最近 5 年間の留学帰国者は 80 万人近くに 達し、これまでの 30 年の 3 倍に近づいている。特に 2012 年、留学帰国者は 27 万 2900 人に達 し、前年比で 46.56%増加した。この現象について、人力資源・社会保障部の尹蔚民部長は「史 上最大の帰国ブーム」だと述べている。 9 月 24 日、中国・グローバル化研究センターと社会科学文献出版社は共同で 2013 年『国際 人材青書:中国留学発展報告』を発表した。本報告は中国の留学における最新状況を分析した ものである。 報告によると、中国人学生の海外留学に比べて、中国への外国人留学生の数は非常に少なく、 このような留学市場に関する輸出好況、輸入不況の現象を「留学赤字」と呼んでいる。2012 年 については、海外にいる中国人留学生の総数は 113 万 6900 人で、米国、イギリス、オーストラ リア、カナダ、日本、ニュージーランドなどの国々への最大の留学生輸出国であるが、中国へ の留学生はわずか 32 万 8300 人で、 「留学赤字」は合計で 80 万 8600 万人にも達した。 本報告は「留学赤字」が生まれている要因として ・良質な高等教育が相対的に不足していること ・国際教育レベルが不十分であること ・教員の国際化対応が不十分であること 24 ・留学生への住居や学外アルバイトに対する管理基準が不明確であること ・国外からの留学生獲得のための国際マーケティング意識の不十分であること を挙げている。 ※ 上大学網:中国の教育情報サイトである。サイトアドレス www.sdaxue.com 25