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憲法問題に関する懇談会報告書 ―憲法改正について

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憲法問題に関する懇談会報告書 ―憲法改正について
憲法問題に関する懇談会報告書
―憲法改正についての意見―
平成17年6月16日
日本商工会議所
=
目
次
=
はじめに
・・・・・・
P2
・・・・・・・・・・
P4
・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・ ・ ・ ・
P5
1 . 憲 法 改 正 に つ い て の基 本 認 識
2 . 具 体 的 提 言( 意 見 )
∼ 「 期 待 す る 憲 法 改 正 の ポ イ ン ト」 ∼
( 1 )前 文
(P 5)
( 2 )安全保障
(P 6)
∼P9
( 3 )国 民 の 権 利 と 義 務・ 公 共 の 利 益 と の 関 係 、及 び 、新 し い 人 権
( P 7)
( 4 ) 地 方 自 治、 地 方 分 権 の 推 進 ( P 8 )
( 5 )教 育
( 6 )改 正の 発議
(P 9)
( P9 )
3 . その 他
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
P10
4 . 最後 に
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
P11
< 参 考>
「 憲 法 問 題に 関 す る 懇 談 会 」 委 員 名 簿( P 1 2 )
1
はじめに
憲法の改正を 巡る議論 が多くの 関心を集 めています 。先頃も 、自民党 の新
憲 法 起 草 委 員 会、 次 い で 衆 参 両 院の 憲 法 調 査 会 が そ れ ぞ れ 改 憲 要 綱 、 最 終 報
告 書 を 明 ら か に し ま し た が 、と く に こ の 1 年 ほ ど の 間 、国 会 の 機 関 や 与 野 党 、
民間団体な ど が、相次 いで憲法 の改正についての見 解を表明 し、国民 の注目
するところとなっています。
わ が 国 で は 、 日 本 国 憲 法を 「 不 磨 の 大 典 」 と 譬 え 得 る よ う な 情 勢 が 長 ら く
続 い て き ま し た。 し か し 、 現 在 で は 、 今 日 の 世 界 情 勢や 国 内 政 治 ・ 経 済 ・ 社
会 の 現 況 、 そ し て 国 民 の 生 活 や 意 識 な ど に 照 ら し て 、 現 行 憲 法が 国 の 基 本 法
と し て 望 ま し い 姿 と な っ て い る か、虚 心 坦 懐 に 見 直 し て み る べ き で は な い か 、
と の 意 識 が 拡 が り つ つ あ る よ う に思 わ れ ま す 。
そうした意識 の根底に は、おそらく、戦 後の日本の 歩みのなかで、国 民の
うちに長らく 堆積してきた、< 国の現実 と憲法との 間に生じ た乖離> に対す
る違和感があるといってよいでしょう。
1947 年 の 現 行 憲 法の 制 定 当 時、一 敗 戦 国と な っ た わ が 国 は 、そ の 後 、工 業
化 の 優 等 生 と し て 急 速 な 発 展 を 遂 げ 、 今 や G D P 世 界 第 2 位 の 経 済 大 国と な
り ま し た 。 国 連 の 常 任 理 事 国 入 り を め ざ す ま で に な っ た そ の プ レ ゼ ン スに 応
じ て 、 国 際 社 会に お け る相 応 の 役 割 が 求 め ら れ て い ま す 。 東 西 冷 戦 は 終 結 し
た も の の 、 今 も な お 多 く の 地 域 ・ 国 家 ・ 民 族 が 紛 争 の 火 種 を 抱 え て お り、 日
本 の 近 隣 諸 国 間も 例 外 で は あ り ま せ ん 。 現 行 憲 法 が 掲 げ る 崇 高 な 平 和 主 義 を
尊 び つ つ 、国 際 貢 献 と 安 全 保 障 の 新 た な 枠 組 み を 示 す 必 要 は な い で し ょ う か 。
国民生活においても 、所得の 向上とともに人々の 暮らしぶりや意識 も大き
く変化しています。さらに科学技術の進 展を受けて 、環境権 やプライバシー
権 と い っ た 、60 年 ほ ど 前 の 憲 法 制 定 当 時 に は 想 定 し 得 な か っ た新 し い 権 利 に
ついて、どのように考 えればよいのでしょうか。そ の一方で 、個人の 権利や
自由の行き過 ぎともとれる行為 が、公共 の福祉と衝 突し、社 会の健全 な発展
と 安 全 の 妨 げ に な る こ と が 懸 念 さ れ る 場 面 も 少 な く あ り ま せ ん。
「 公 」に つ い
て国民的再考 が必要であるようにも思われます。
さらに、行 政のあり 方についても、生活水準の向 上、先進国経済へ のキャ
ッ チ ア ッ プ を 図 る こ と が政 策 の 重 要 課 題 で あ っ た 戦 後 に あ っ て は 、 中 央 集 権
型の執行が効率的で し た。ところが、現 在のように 所得や資 産のレ ベ ルが上
が り 、 ま た 都 市 間 競 争 が 問 題 と な る 「 グ ロ ー カ ル 化 」 の 時 代 に あ っ て は、 極
力、地方や地 域が自前 の知恵と 財源で そ の将来を切 り拓く地方分権型 の行政
が 重 要 と さ れ て い ま す 。 地 方 自 治の 規 定 に つ い て 踏 み 込 み 不 足 と の 指 摘 も あ
る現行憲法の 条文を手 直しする 時期ではないでしょうか。
こ う し た 論 点 に つ い て、 私 ど も 「 憲 法 問 題 に 関 す る 懇 談 会 」 は 、 昨 年 7 月
以来、近時の 議論の中心的な方 々からの レクチャー を交えながら、様 々な意
見を交わしてきました 。今回、 当懇談会 で委員が共 有した意 見を提言 の形で
取 り ま と め た も の が こ の報 告 書 で す 。
2
商工会議所 の使命のひとつに 、政策提言活動があります。 地域の総合経済
団体として、 中小企業対策、税制等について、これまでも様 々な要望 や提言
を 行 っ て い ま す。 今 回 の 議 論 の 過 程 で は 、 商 工 会 議 所の 会 員 で あ る 、 全 国 の
地 方 経 済 を 支 え る た く さ ん の 企 業 者 か ら も 意 見 を 伺 い ま し た が、
「経済 や産業
の 分 野 だ け を 良 く す る こ と を 中 心 に 考 え て い た の で は、 世 の 中 が な か な か 良
い 方 向 に 向 か わ な い 、 国 民 の 公 共 意 識 や 教 育 と い っ た問 題 に つ い て も 幅 広 く
思いを致すことが、結 局、経済 や産業、 企業を活 性 化することにつながる」
と い っ た 思 い を 多 く の 方 々 が 抱 い て い る こ と を 知 ら さ れ ま し た。
も と よ り 、 私 ど も は 憲 法 の 専 門 家 で は あ り ま せ ん 。 た だ 、 上 述 の よ う な思
い を 集 約 す る よ い 道 と し て 、 国 の 最 高 法 と し て の 憲 法 の あ り 方 に つ い て、 幅
広く考え、こうして意 見を明らかにする 機会を得たことはたいへん意 義ある
こ と で あ っ た と考 え て い ま す 。 本 報 告 書 が 、 国 民 が 憲 法 を 見 つ め 直 す 一 助 と
なれば幸い で す。
平 成 17 年 6 月
日本商工会議所
憲 法 問 題 に関 する懇 談 会
座長 高梨 昌 芳
3
1.憲 法 改 正についての基 本 認 識
日本国憲法は 、昭和2 2年の施 行以来5 8年間一度 も改正されたことがな
い。経済のグローバル 化や科学技術の急 速な進歩な ど、世の 中の変化 は著し
く 、 憲 法 と 現 実 の 乖 離 が 顕 在 化 し て 久 し い 。 こ う し た中 、 国 会 に お い て は 平
成12年、衆参両議院 に憲法調査会が設 置され、これまで様 々な角度 から憲
法改正に関す る議論が 行われ、 先頃最終報告書が両院議長に 提出さ れ た。ま
た 政 党 に お い て も 、 自 民 党 は 党 内 に 新 憲 法 起 草 委 員 会を 置 き 、 こ れ も 先 般 、
小 委 員 会 の 要 綱 を 公 開 し 、来 る 11 月 15 日 の 結 党 5 0 周 年 の 大 会 に お い て 新
憲法草案を発 表する予 定である 。その他 、民主党も 昨年に「 憲法提案 の中間
報 告 」を 発 表 し て 以 来 、
「 憲 法 提 言」の 骨 子 を 公 表 し た ば か り で あ る。公 明 党
も 現 行 憲 法 を 補 強 す る 「 加 憲 」 と い う 立 場 で 議 論 を 進 め て い く方 針 を 打 ち 出
している。
こ の よ う に 改 正 に 向 け て 活 発 な 議 論 が 進 め ら れ て い る中 、 地 域 総 合 経 済 団
体 た る 商 工 会 議 所 も 、 全 国 各 地 の 地 域 経 済を 支 え る 企 業 者 の 声 を 来 る 改 正 の
議論に反映させるた め に、意見 を集約し 提言してい くべきと 考え、懇談会を
設 置 し て 、議 論 を 進 め て き た 。又 、こ の こ と は 、今 日 の 内 外 の 情 勢 と 将 来 を 見
据えて、真に 必要とされる憲法 の在り方 を主権者た る国民の 一員と し て責任
を持って考え る良い機 会であったと思う。
そ の 中 で 当 所 は 、憲 法 の 基 本 的 性 格 を『 憲 法 と は 、
「主権者た る国民が 代理
人に託した国家権力の 行使について歯止 めをかけるもの」で あり、国 家の役
割 は 、 国 民 に 幸 福 な 生 活 を 保 障 す る こ と で あ り 、 憲 法 は 国 家 権 力 担 当 者が 一
般 国 民 を 統 制 す る 手 段 で は な い 。』と 伝 統 的 な 認 識 を 共 有 し て き た 。主 権 者 た
る立場には義 務が伴い 、権利の 濫用が許 されないことは当然 であるが 、憲法
改正というと 、時に、 国家が国 民に責務 を押し付け る内容の 議論が出 てくる
こ と は 望 ま し い こ と で は な い 。 代 表 民 主 制の 下 で 日 本 国 民 が 作 る 憲 法 で あ る
ことから、時 代の変化 に則した 世界に誇 り得る新し い憲法を 表明し た いもの
である。
懇談会では、 すべての 条文に関 して意見 を取りまとめるのではなく、 地域
総 合 経 済 団 体 で あ る 商 工 会 議 所 と し て 提 言 す る こ と が望 ま し い 項 目 を 中 心 に
議論を行い、 全国各地 の商工会議所の意 見の集約も 経て、今 回の報告 に至っ
た。
4
2.具 体 的 提 言 (意 見 )
∼「期 待 する憲 法 改正 のポイント」∼
改憲の必要性 やその方向性について議論を 行なった 中で、
「期 待 する憲 法 改 正 のポイント」として、特 に議 論 が 集 中 したのは、前 文 、 安 全 保
障 、国 民 の 権 利 と義 務 ・公 共 の 利 益 の 関 係 、地 方 分 権 、教 育 、改 正 の 発 議 であっ
た。
(1)
前文
前 文 は、誰 がみてもこの国 の姿 勢 がはっきりわかる平 易 な文 章 で表 現 されるべ
きで あ り 、 以 下 の 内 容 を 盛 り 込 む べ き で あ る 。
特 殊 な 表 現 や 、 解 釈 が 分 か れ る よ う な 表 現 は 極 力 避 け 、 明 確 に し て お く。
1
憲 法 は「今 と将 来 の」国 家 像 を世 界 に表 明 するもの と考 える。
日 本 国 民 が 国 家 と し て 目 指 し て い る 方 向 が 謳 わ れ て い る べ き であ る 。
2 「国 民 主 権 、基 本 的 人 権 の尊 重 、平 和 主 義 」(現 行 憲 法 の三 大 原 理)を引 き続 き
堅 持 する。
国民主権、基本的人権 の尊重は 民主国家 の基本原理 であり、 また侵略戦
争を行なわないことを 引き続き 宣言することで、世 界の一員 としての 日本
の姿勢を示す べきで あ る。
3 独 立 主 権 国 家 が 共 存 する国 際 社 会 において、国 民 の 生 命 、身 体 、財 産 の 安 全
と名 誉 を保 障 する究 極 の共 同 体 である日 本 国 の構 成 員 として、この国 を大 切 にし、
相 互 の 連 帯 意 識 を育 みつつ 世 界 に誇 れる日 本 人 のアイデンティティーを築 き上
げていくことを明 らかにするべきである。
こ れ は 、国 民 が 自 然 に 家 族 を 愛 し 、そ の 属 す る 地 域 社 会 と 国 を 大 切 に し 、
歴 史 ・ 伝 統 ・ 文 化 を 誇 り に 思 え る ・ ・ ・ そ う い う 国 で あ り た いと い う 願 い
をこめている 。
4 「国 際 社 会 に貢 献 し信 頼 される日 本 の 実 現 を目 指 すこと」を宣 言 すべきと考 え
る。
これらの基本原理は、 児童の頃 からの家庭教育や学校教育、 そして社 会
生活を通じて 自然に育 くまれていくべきものである 。
5
(2)安 全 保 障
特に安全保障問題(第 9条問題 )に関しては、条文 と現実と の乖離が 大き
くなってきており、これまでの 「解釈」 による対応 では逆に 危うさを 感じさ
せ る 。 独 立 主 権 国 家 が 国 際 法 上 保 有 し て い る と さ れ る自 衛 権 は も と よ り、 既
に国民に広く 認知されている自衛隊の存 在や、国 際 的にも評 価されている戦
後 復 興 支 援 活 動へ の 自 衛 隊 の 派 遣 な ど の 国 際 貢 献 に つ い て 条 文 上 明 確 に 規 定
すべきと考え る。
1 現 行 の 第 9条 第 1項 (国 権 の 発 動 たる戦 争 と、武 力 による威 嚇 又 は 武 力 の 行 使
は、国 際 紛 争 解 決 の 手 段 としては永 久 にこれ を放 棄 )つまり「侵 略 戦 争 の 放 棄 」
はそのまま残 し、これまでの平 和 憲 法 の根 本 原 理 は維 持 する。
2 第 9条 第 2項 で自 衛 権 を保 持 することを明 記 すべきと考 える。その当 然 の帰 結 と
して、自 衛 のための「戦 力 の保 持」を明 記 する。
自衛権と自衛 の為の戦 力の保持 を明確に し、無益な 憲法上の 解釈論争 の
余地をなくすためにも 、条文に 明記すべきである。
な お 、 自 衛 権 に は 、 集 団 的 自 衛 権も 含 ま れ て い る こ とは 国 際 法 上 の 常 識
で あ り 、 そ れ は 国 連 憲 章で も 認 め ら れ て い る 「 独 立 主 権 国 家 」 が 保 持 す る
自 然 権 で あ り 、 現 行 憲 法の 下 に お い て も 我 が 国 も 当 然 に 保 持 し て い る と考
えられる。
3 第 9条 第 3項 を新 設 し、「国 際 社 会 の 平 和 の 維 持 ・回 復 、並 びに人 道 的 支 援 」の
ための国 際 協 力 活 動 に対 する現 行 の自 衛 隊 の派 遣 を改 めて憲 法 で認 め、これを
国 防 活 動 と並 んで現 行 自 衛 隊 の本 来 業 務 とする。
グ ロ ー バ ル な 国 際 社 会 の 中 で 活 動 す る 日 本 と し て 、 可 能 な 限 り 国 際 平 和に
貢献するこ と は当然のことであろう。
また、現実問 題として 、イラク 復興支援 、スマトラ 沖地震の 津波被害 に対
する国際協力支援な ど に自衛隊 が出動し て、機動的 、組織的 に活動している
に も か か わ ら ず、 そ の 合 憲 性 が 問 題 に さ れ る こ と は 適 当 で は な い 。
<集 団 的 自 衛 権に関 して>
集 団 的 自 衛 権 に関 しては、本 来 、それが自 衛 権 の 中 に含 まれるというの が 国 際
法 上 の 常 識 であり、自 衛 権 を保 持 することを明 記 する以 上 、集 団 的 自 衛 権 を当 然
保 有 していると考 えるべきである。(国 際 政 治 軍 事 情 勢 の実 情 を勘 案 すれば、個 別
的 自 衛 権にのみ頼るのではなく、他 の友 好 国 と共 同 して侵 略 の 危 険 に対 処 したほう
6
が平 和 維 持 の観 点 から効 果 的 である。)
なお、その具体的な行 使の範囲 や態様及 び手続きに 関しては 、それぞれの
状 況 に 即 し て 条 約 及 び 法 律 で 定 め る こ と が現 実 的 で あ る 。 そ の 際 近 隣 諸 国 に
不安を感じさせないように配慮 することも 必要であ ろう。
(3)国民の権 利と義 務・公 共の利益との関係、及び、新しい人 権
1 憲 法 は主 権 者 たる国 民 が国 家 機 関 の 権 力 行 使 について歯 止 めをかけるもので
あり、国 民 が 国 家 による権 力 濫 用 から身 を守 るためのいわば武 器 としての人 権 を
規 定 するものであるから、個 人 の権 利 は最 大 限 尊 重 され保 障 されるべきである。
このように、 本来、憲 法は国家 が国民に 義務を強い て統制す る手段で は
ないが、人権 を保障す る舞台は 国家における国民の 共同生活 という場 であ
る以上、国家 の存続を 支えるために最低限不可欠な 国民の責 務は憲法 の中
に規定されざるを得な いのも事 実である。
2 但 し、行 き過 ぎた個 人 主 義 の 蔓 延 などの 反 省 から、権 利 には当 然 に限 界 がある
ことも改めて明 確にする必 要 がある。
現 行 憲 法 の 条 文 で は 、自 由 及 び 権 利 の 濫 用 の 禁 止( 第 12 条 )と 、人 権 は
公 共 の 福 祉 に 反 し な い 限 り で 尊 重 さ れ る ( 第 13 条 ) と 規 定 さ れ て い る が 、
「 公 共 の 福 祉 」に 関 し て は そ の 解 釈 が 不 明 瞭 で あ る こ と も あ り 、
「公共の 利
益 」 と 表 現 を 変 更 し 、 個 人 の 自 由 と 権 利 を 保 障 す る た め の 調 整 原 理と し て
公 共 の 利 益 が あ る と い う こ と を 、 よ り 明 確 に 規 定 す べ き で あ る。
ここで言う「 公共の利 益」とは 、国の安 全や公の 秩序、国 民の健全 な生
活環境を確保 する全て の事柄をいう。
3 新 しい人 権 <環 境 権 、プライバシー権 、知 る権 利 (情 報 享 受 権 )、知 的 財 産 権 な
ど>について
現行憲法制定時以降に 確認さ れ た人権( つまり、経済成長や 技術進歩 等
に促された社 会情勢の 変化に伴 って新た に認識さ れ た権利) を明示し 、保
護 す べ き で あ る。
同 時 に 弱 者 、 少 数 派 ( 犯 罪 被 害 者、 障 害 者 な ど ) の 権 利 も 同 等 に 保 護 さ
れ る べ き こ と は言 う ま で も な い 。
7
(4)地 方 自 治、地 方 分 権の推進
1 地 方 自 治 に関 する現 行 第 92条 (つまり国 が法 律 によって、事 実 上 、地 方 自 治 の
範 囲 を決 めることができる)の改 正 が必 要 と考 える。
ヨーロッパで は、地方自治こ そ が行財政 の根本基盤 であることを欧州 地
方自治憲章において謳 っており 、それが憲 法でも承 認されている。
一 方 、 日 本 は 「 地 方 自 治の 本 旨 に 基 づ い て 」 と の 制 約 が 付 け ら れ て い る
が 、自 治 の 具 体 的 内 容 は 国 の 法 律 で 画 一 的 に 規 定 さ れ る こ と に な っ て お り 、
加 え て 明 治 以 来の 中 央 集 権 型 統 治に よ り 先 進 国 へ の 効 率 的 な キ ャ ッ チ ア ッ
プ を 追 及 し た 結 果 、 現 状 は 過 度 に 中 央 集 権 的に な っ て し ま っ たと い え る。
住民が納得し て行政サービスの コストを 負担し、そ の使途を 監視し、 よ
り ニ ー ズ に 適 合 し た サ ー ビ ス を 受 け ら れ るシ ス テ ム と す る た め に は 、 行 財
政機関が住民 に近い ほ ど好ま し いという考 えに立っている。
2 真 の地 方 分 権 を推 進 するために、国 と地 方 の 役 割 分 担 を憲 法 上 に明 確 に規 定
すると共 に、必 要 な財 源 も国 から地 方 に移 譲 すべきである。さらに地 方 の 課 税 自
主 権 の 範 囲 を拡 大 させ、地 方 分 権 (地 方 自 治 )を憲 法 で名 実 共 に推 進 していくよ
うにすべきである。
但 し 、 単 一 国 家で あ る 以 上 、 国 家 に よ る 総 合 調 整 機 能は 不 可 欠 で あ る 。
要は、国と地 方の役割分担に応 じて必要 な財源の調 整・配分 がなされるこ
とが肝要で あ る。例え ば、福祉 ・教育などの、基礎 レベルの 維持の為 の最
低 限 度 の 財 源 保 障 な ど ― 自 治 体 間の 財 政 調 整な ど ― は 国 の 仕 事 で あ ろ う。
3 地 方 自 治 体 の 組 織 は基 礎 的 自 治 体 と広 域 自 治 体 とする。そして地 方 分 権 の基
盤 を強 化 するために、自 治 体 の広 域 化 をはかり、行 財 政 コストの削 減 と地 域 の活
性 化 を実 現 すべきである。そのために、今 後 も市 町 村 合 併 を推 進 していくべきであ
る。
近 時 に お い て は交 通 や 通 信 な ど の 手 段 が 格 段 に 進 歩 し て お り 、 人 々 の 活
動領域は大幅 に拡大している。 生活圏や 経済圏の広域化に対 応して広域行
政 を 目 指 す べ き で あ ろ う。 そ の 際 、 道 州 制 も 有 効 な 選 択 肢 で あ る が 、 連 邦
制 を 目 指 す の で な け れ ば、 あ え て 憲 法 で 道 州 制 の 規 定 を 設 け る 必 要 は な い
と考える。
現 在 で は 運 輸・通 信 技 術 の 発 達 に よ り 、広 域 自 治 体 の 形 成 が 可 能 に な り 、
行 政 シ ス テ ム の 統 合 ・ 合 理 化 に よ る 行 財 政 の ス リ ム 化 メ リ ッ トや 、 統 合 に
よる住民生活 の利便性 向上を実 現できるようになっ てきてい る。この メリ
ッ ト を 住 民 に 明 確 に 開 示 し 、 住 民 の 参 加 意 識の 向 上 を 図 る べ き で あ る 。
8
(5)教育
1 教 育 問 題 に関 しては「教 育 基 本 法 」に拠 るとする考 え方 が主 流であった。
し か し な が ら 、 日 本 の 将 来 を 決 め る の は 教 育 で あ る と い っ て も過 言 で な
い の で 、 教 育 の ビ ジ ョ ンと し て 「 自 由 で 安 全 で 豊 か で 誇 り の 持 て る 日 本 、
国 際 社 会 で 信 頼 さ れ る 日 本 の 実 現 」を 憲 法 に 明 示 し 、そ れ を 教 育 基 本 法( 改
正)に繋げて いくべきである。
2 各 人 が「歴 史 ・伝 統 ・文 化 を尊 重 し、家 族 ・友 人 ・郷 土 と国 を大 切 にし、国 際 社 会
の平 和 と発 展に寄 与 すること」を望 む
こ れ を 憲 法 で 唱 え る の では な く 、 教 育 基 本 法 の 改 正 の 際 に 盛 り 込 み 、 自
然 に 教 育 の プ ロ セ ス の 中 で そ れ ら が 育 ま れ て い く よ う に し て も ら い た い。
3 特 に集 団 生 活 における個 の 協 調 の実 現 は 学 校 教 育 にもっとも期 待 するところで
ある。
その上 で、基礎教育以外 の個性 を引き 伸ば す専門 教育に も更 に期待 した
い。
4 そ の 他 、 第 89 条、( 公 の 財 産 の 用 途 制 限・ ・ ・ 公 の 支 配 に 属 さ な い 慈 善 、
教育もしくは 博愛の事 業に対し 、これを 支出し、又 はその利 用に供しては
な ら な い 。)を改 正 し、現 状 の私 学 助 成 金の支 出 の合 憲 性 が疑 われないようにす
べきである。
(6)改正の発議
憲 法 改 正 に関 する現 行 第 96条 の条 件 について
改 正 発 議 要 件 を(総 議 員 3分 の2から過 半 数 の賛 成 に)緩 和 すべきである。
憲 法 改 正 の 是 非 の 判 断 は 国 民 投 票に よ り 主 権 者 国 民 が 下 す も の で あ り な
がら、国会内 での改正発議の要 件が厳しすぎて国民投票にまでたどり 着け
ていないのが 現実で あ る。国を 取り巻く 環境の変化 に憲法が 対応で き ず現
実 と 乖 離 し て い る こ と は不 都 合 で あ る 。
9
3.その他
(1)天 皇
象 徴 天 皇 制 は今 後 とも維 持 すべきであろう。
女 帝 な ど の 皇 位 継 承 問 題は 皇 室 典 範 の 改 正 で 対 処 す べ き 問 題 で あ る 。
(2)統 治 機 構
1 二 院 制 について
参 議 院 に つ い て、 今 の ま ま で は 衆 議 院 と の 違 い が 薄 く 、 二 院 制 を 進 め る
ために衆参両議院の位置付けを 明確にし 、参議院議員の選出方法等 も改正
し、区別すべきと考え る。
2 首 相 公 選 制 について
望 ましくない。
実力・能力に 人気が伴 うとは限 らない。 国民が国政 を委ねる 長たる人 物
の選出は、少 なくとも 全国民か ら選挙された国会 議 員たちに より行なわれ
るほうが安全 であろう 。
(3)司 法 改 革
1 憲 法 裁 判 所 の設 置 について
今 後 、時 間 をかけて検 討 していくべきであろう。
それ以前に、 違憲審査 に対して 消極的な 日本人の民族性や法 意識を変 え
なければ憲法裁判所を 創設し て も意味が ないのではないかという意見 があ
った。
2 国 民 審 査 について
現 在 の最 高 裁 裁 判 官 の国 民 審 査 の方 法 は改 めるべきであろう。
現 在 の 方 法 に 妥 当 性 を 感 じ て い る国 民 は 少 な い の で な い か 。 投 票 に よ る
国民審査よ り も、任期 の短縮や 再任の際 の資格審査 の導入のほうが理 解さ
れやすいであろう。
(4)非 常 事 態
非 常 事 態 への対 処 に関 する項 目 を設 定 すべきである。
現行憲法では 非常事態 に関する 条文は無 いが、外国 からの侵 略や大規模
テ ロ 、 自 然 災 害な ど の 非 常 事 態 に 備 え る た め の 法 規 制 の 根 拠 規 定 を 置 く べ
きである。
10
4.最 後 に
豊かさを求め 「列強に 追いつき 追い越せ 」をスローガンと し た高 度 成 長時
代までと今日 ではあらゆる面で 環境が変 わっている 。特に明 らかなこ とは、
「 自 分 だ け よ け れ ば そ れ で よ い 。」で は 、世 界 を 相 手 に 友 好 関 係を 保 ち ビ ジ ネ
スを行っていかねば生 きていけない日本 が世界で孤 立するということ である。
そこで、日本 が、世界 の中でいかに主 体 性を持てる 国家で あ り、かつ 、世界
中で必要と さ れる国家 であるということ を示さねば ならない 時代に な ってき
て い る 。例 え れ ば 、世 界 を「 家 族 」と し て 考 え た 場 合 、日 本 は「 家 族 の 一 員 」
と し て 、 家 族 生 活 の 中 で 協 力 し て い か な け れ ば な ら な い の と 同 じ で あ る。
ところが昨今 の不透明 な景気、 長引くデフレ状況、 不安定な 雇用と、 国民
の 政 治 に 対 す る 不 信 感 、 個 人 主 義の 行 き 過 ぎ 、 少 子 化 の 進 行 と 年 金 未 払い 問
題など、日本国民の中 に蔓延す る先行きの 不安感は 大きい。
そ れ ゆ え に 、 今 回 の 憲 法 改 正 論 議を 契 機 に 「 わ れ わ れは ど う あ る べ き な の
か 。 国 際 社 会 に お い て ど の よ う に貢 献 し て い け ば よ い の か 」 を 国 民 自 ら が 考
え、責任をもって憲法 を作り上 げることができれば 、私た ち は、秩序 と理念
を共有して前 向きで積極的な国民生活を おくることができるようになるだろ
う。
す べ て の 条 文 に 手 を つ け る 必 要 は な い 。 又 、 賛 否 両 論が あ る テ ー マ に 関 し
て は 継 続 審 議 と し 、 と も か く 合 意 で き る 部 分 か ら で も、 時 代 に 合 っ た 憲 法 改
正 を 実 現 す る こ と に 「 意 義 」 が あ る 。 制 定 以 来 60 年 近 く 改 正 さ れ な か っ た
憲法に、国民 が責任と 関心を持 つこと自体 が重要なのである 。
憲法を、日本 のように 長年、改 正しなかった国はな い。憲法 とは、時 代の
変化に合わせ て「その 国のアイデンティティー」を 内外に知 らしめるものだ
からこそ、適宜改正さ れ続けていくべきものではないか。
以
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上
「憲 法 問 題 に関 する懇 談 会 」委 員 名 簿
平成17年5 月31日 現在
(50音順、 敬称略)
1.座長
高梨
昌芳
2.メンバー
室伏 稔
(座長代理)
池田
守男
井上
秀一
井上
裕之
加藤
義和
児玉
幸治
田尻
英幹
坪井
孚夫
鳥海
巌
丸森
仲吾
3.学識経験委員
小林
節
日 本 商 工 会 議 所 副 会 頭、 横 浜 商 工 会 議 所 会 頭
高梨乳業株式会社 代表取締役会長
日 本 ・ 東 京 商 工 会 議 所特 別 顧 問
日商 ・東商政策委員長
伊藤忠商事株式会社 相談役
日本商工会議所特別顧問 、東京商工会議所副会頭
日商・東商税制委員長 、
株式会社資生堂 代表取締役社長
東商政策委員会副委員長
東日本電信電話株式会社 相談役
日本商工会議所特別顧問、東京商工会議所副会頭
東商中小企業委員長、
愛知産業株式会社 代表取締役社長
日 商 政 策 委 員 会副 委 員 長 、 観 音 寺 商 工 会 議 所 会 頭
株式会社加 ト吉 代表取締役会長兼社長
日本・東京商工会議所特別顧問
日商・東商政策委員会副委員長
財団法人日本情報処理開発協会 会長
日 本 商 工 会 議 所 副 会 頭、 福 岡 商 工 会 議 所 会 頭
日商国民生活委員長
西部瓦斯株式会社 取締役相談役
福島商工会議所顧問
福島貸切辰巳屋自動車株式会社 代表取締役相談役
東 商 教 育 改 革 副委 員 長
株式会社東京国際フォーラム 代表取締役社長
日本商工会議所副会頭 、仙台商工会議所会頭
日商行財政改革特別委員長
株式会社七十七銀行 取締役頭 取
慶應義塾大学
法 学 部および 大学院法学研究科 教授
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