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『おにぎりの魔法』
県コンクール 三部 優秀賞 『おにぎりの魔法』 北杜市立須玉中学校一年 内藤 鞠香 さん 私は中学校に入学し、吹奏楽部に入りました。毎朝、毎放課後の 練習はとても厳しく、体力のない私にとっては、とても大変な日々 が続きました。そしてやっと夏休み、 「さぁ、休めるぞ」と思ったの は大きなまちがいでした。 吹奏楽部にとっては、最大のイベント、吹奏楽コンクールが八月 中旬にあり、夏休みの前半は、毎日一日練習でした。土・日もなく、 猛暑の中、朝早くから夕方まで楽器を吹き続けなければなりません。 もう二日目ぐらいから、私はへとへとになってしまいました。 そんな私にとって、唯一の楽しみはお弁当の時間です。母が作っ てくれるお弁当のフタを開けるのは、とてもワクワクします。母は 私に、 「お弁当はおにぎりがいい?パンがいい?」と聞きます。 その度に私は、 「絶対おにぎり」と答えます。母が作るのは、三角形の大きなおに ぎり、持ちやすいようにのりが付けてあります。具は、私の好きな コンブや焼きサケなどです。まぜ込みご飯の日もあります。私はど れも大好きで、 「今日の中身は何かな?」と想像していると、つらい 練習にも耐えられました。おにぎりは、練習のつらさを消す魔法の ようなものでした。 でも、なぜ私はこんなにおにぎりが大好きなのでしょうか。思い 返してみると、私が一、二歳の頃、食欲がない時は決まって祖母が 小さいおにぎりを作ってくれました。そして散歩に行き、大きな石 の上で食べさせてくれたのです。外に出て運動したことと、一口で 食べられる大きさにつられて、パクパク食べたことを思い出しまし た。このおにぎりがなかったら、私はこんなに健康に大きくなれな かったと思います。おにぎりは、まさに、私を成長させてくれた魔 法の食べ物だったのです。 おにぎりは、 「おむすび」とも言い、 「むすび」という言葉には「た ましい」という意味もあると聞きました。おにぎりの中には、母や 祖母の、私を心配する心が込められていたのです。ごはんをギュー っとにぎる時に、私のことを考えていてくれたと思うと、ありがた い気持ちでいっぱいになります。小さかった私、大きくなった私、 いつもおにぎりの向こうには、私を思ってくれる人の顔が見えるの です。 また、お米はとれるまでに八十八回手がかかると言われます。私 の家の近くは田んぼが多く、おいしいお米がとれるので有名です。 遠くからわざわざお米を買いに来る人もいるそうです。だから、農 家の人が稲を大切に育てている姿を身近に見ています。特に水には 気を遣っていて、川の水をきれいにしたり、水の量をこまめに調整 している姿をよく見ます。このように、お米は大事に大事に育てら れるので、特別な力が宿っても不思議ではない気がします。 初めての吹奏楽コンクールは、おにぎりのおかげで全力を出しき ることが出来ました。結果は残念でしたが、私のこの夏一番の良い 思い出になりました。夏休みももう少しで終わります。家の周りの 田んぼを見渡すと、稲穂が出そろい、白い花が見えています。今年 も、お米がたくさん採れると思います。秋になって新米が届いたら、 今度は私が家族のためにおにぎりをにぎってあげたいと思います。 今までの感謝を込めて「たましい」のこもった魔法のおにぎりをた くさんにぎって、食べてもらおうと思っています。