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2009 ガイドブック

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2009 ガイドブック
大阪大学 工学部
応用理工学科 機械工学科目
ガイドブック
2009
本ガイドブックの使い方
本ガイドブックは,高校生や大学生の皆様が進路を選ぶ上での参考となる
ように大阪大学工学部応用理工学科機械工学科目(大学院は機械工学専攻
と知能・機能創成工学専攻から構成されます)の教育,研究活動について,わ
かりやすく紹介したものです.応用理工学科に入学以降の進路を下図に示し
ます.教育,研究に対応したページを参照して下さい.
大阪大学工学部
1年次
2年次
大阪大学大学院工学研究科
3年次
4年次
博士前期課程
博士後期課程
応用理工学科
入学試験
オープンキャンパス
機械工学専攻(4部門+協力講座)
応用理工学科
機械工学科目
(120名)
知能・機能創成工学専攻
応用理工学科
マテリアル生産科学科目
(250名)
マテリアル生産科学専攻
(130名)
学科目の分属
研究室配属
大学院入試
目 次
1 機械工学科目の教育・研究····································································1-4
2 機械工学専攻·····························································································5-43
3 知能・機能創成工学専攻···································································· 44-53
M1棟
GSEコモンイースト
M3棟
M2棟
M4棟
表紙の写真:
機械系の建物群
機械工学科目の教育・研究
1
機械工学科目・専攻の魅力ある教育・研究
•
学部カリキュラムの特徴
–
–
•
コア科目+コア演習による機械工学専門基礎力の習得
豊富な専門科目による深い機械工学専門基礎知識の獲得
大学院カリキュラムの特徴
–
–
–
基盤科目による高度な基礎力の習得
8つの科目類によるオーダーメードな専門知識の習得
PBL科目によるシンセシス系問題設定・解決能力の実践
機械工学科目のカリキュラムの特徴は、機械工学の中核をなすコア科目群とモノづくりの基礎を学ぶ創成科目群を
二本柱として、専門科目群などがタイミングよく配されていることです。
2年次
3年次
4年次
基礎科目群(数学・情報系)
コア科目群
「材料力学」
「機械力学」
「流れ学」
「熱力学」
「動的システムの
モデリングと制御」
専門科目群
卒業研究
創成科目群
「機械のしくみ」
「機械創成工学実習Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」 「機械工学実験」
【新たな機械のしくみを創造する】
•
固体力学:機械材料の強度や変形挙動
•
流体力学:気体や液体の流れの現象
•
熱 力 学 :熱とエネルギーの変換
•
機械力学:機械の運動と力の伝達
【機械システムを作って機能させる】
•
制御:機械システムを自在に動かす理論
•
情報:機械を活かす五感と神経
•
設計:ライフサイクルを考慮したシステム設計
•
生産:計画から加工および計測
PBL (Project Based Learning): 総合力の時代を先取りした授業
機械工学科目のユニークな授業として「機械創成工学実習」があります。これは、機械工学の基礎を有機的に
結びつけ、設計・製作・試験からプレゼンテーションを含んだ総合的な設計プロジェクト入門です。
この成果により、2004年度日本機械学会教育賞を受賞しています。
衝撃試験: 卵が壊れないシェルターは可能か?
大型風洞で: テクニカルとアートを総合的に評価
設計プロジェクト入門の授業風景(ペーパークラフトによる衝撃吸収装置・風力発電装置の設計・製作・試験)
2
学部:卒業研究〜大学院への進学
・4年次の特別研究(卒業研究)は、機械工学専攻か知能・機能創成工学専攻のいずれかの研究グ
ループに所属して行います。
・3分の2以上の学生が大学院へ進学しています。
実践力UP!:学部・大学院教育カリキュラムのシステム化
による「実質化」
キャンパスを飛び出して多彩な活動が展開されています
自主的な課外活動として学生フォーミュラに参戦
阪大・機械が世界をリードする分野の国際会議を開催
3
4
機 械 工 学 専 攻
5
機械工学専攻長メッセージ
久保 司郎 教授
(機械工学専攻)
機械工学は,ジェームスワットの蒸気機関から最近のガスタービン,ロボットに代表されるように,
産業革命以来,その時代時代の人類社会の要請に応え,問題を解決し,人類社会の発展に大きく貢献し
てきました.しかし最近では,地球温暖化をはじめとする地球環境問題,エネルギーの枯渇と有効利用
にからむエネルギー問題,人と社会の安全・安心を確保する問題,少子高齢化社会により促進される医
療・福祉の問題が,相互に絡み合いながら,大きな問題として浮上してきています.これらの問題の解
決は,急務となっています.一方で,資源をもたない日本が,世界の中で発展し,その地位を高めてい
くには,新技術の開発にささえられた“ものづくり”をさらに推し進めていくことが必要です.私たち
の生活様式を変革し,生活をより豊かにするような革新的な設計,製品開発も大きな課題としてあげら
れています.
これらの現実にある重要課題を正面から解決するには,科学技術の役割は欠かせません.特に機械工
学は,その中核的技術として,これまで重要な役割を演じてきており,今後もその大きな貢献をするこ
とが期待されています.
大阪大学大学院工学研究科機械工学専攻は,上記の社会的重要課題の解決を視野に,力学を中核にす
え,周辺の科学と技術を取り込みながら,基礎から応用にまたがる領域の研究を推進してきました.す
なわち,固体力学,流体力学,熱力学といった基礎的力学分野に,制御・情報の理論,設計・生産・シス
テムなどの技術を含めた教育と研究を行っています.
機械工学専攻では,複合メカニクス部門,マイクロ機械科学部門,知能機械学部門,統合デザイン工
学部門からなる4つの部門の有機的連携に基礎を置いています.機械工学の基礎となる,固体力学,流
体力学,熱力学を進化させ,それらの複合した,いわゆる連成問題としての現象解明を進めています.
エネルギーに深く関与する燃焼や流動現象を,ナノ,マイクロの領域で把握するとともに,微小な要素
の特性・機能に出現に関する研究を行っています.また,機械の高度化,知能化に関する研究,さらに
は,設計や生産を統合化し,より価値の高い製品を生み出すとともに,地球規模のような高い視点から
の設計に関する研究を進めています.
これらの成果は,地球温暖化防止・エネルギー有効利用問題につながる各種プラントの高効率化と機
器の安全性確保,次世代の航空宇宙技術,少子高齢化・医療・福祉に貢献する各種ロボット,マイクロ
マシン,新製品デザイン,ライフサイクル設計等にもつながっています.
6
Complex
Mechanics
複合メカニクス部門
基礎となる力学の深化と複合化から新たな機械システムを創造します.
■固体力学領域
渋谷・垂水研究室
■ナノ工学領域
中山研究室
■複合流動工学領域
田中・川口研究室
■非線形非平衡流体力学領域
矢野研究室
■波動現象学領域
吉岡研究室
■複雑流体工学領域
山本研究室
■熱流動工学領域
片岡・大川研究室
■熱工学領域
武石・小宮山研究室
■レーザ接合機構学分野
片山研究室(接合科学研究所)
注:メールアドレスの@以下は mech.eng.osaka-u.ac.jp を付けてください.
7
複合メカニクス部門
固体力学領域
(渋谷・垂水研究室)
教 授 渋谷 陽二 ( sibutani@ )
准教授 垂水 竜一 ( tarumi@ )
助 教 松中 大介 ( matsunaka@ )
教員室・研究室
M1-636,635,634(教員室)
M1-633,632,124(研究室)
M1-123(実験室)
HP http://www-comec.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
我々が日常的に目にするマクロな材料や構造体と,それを構
成するミクロな原子や分子では,その変形や運動を特徴づける
時空間のスケールに極めて大きな隔たりがある.当研究室では,
■固体力学現象のマルチスケールモデリング
■コンピュテーショナルテクノロジーによる薄膜創製プ
ロセスデザイン
■バルク金属ガラスの内部構造・ガラス転移現象の解析
と高塑性変形能化
■集束イオン支援デポジションによるナノ構造体の創製
と評価
■電子線誘起超音波顕微システム(SEAM)によるメゾス
ケール非破壊欠陥場評価
■共鳴超音波スペクトロスコピー法による固体材料の力
学特性評価
プロセスの最適化,および理想強度評価まで,計算科学によっ
て支援された新しい薄膜創製プロセスデザインを行っている.
材料評価の観点からは,バルク金属ガラスと呼ばれる原子配
固体材料の示す力学現象の中でも,特に時空間スケールの拡が
置がランダムな構造体の内部構造,ガラス転移機構,および
りと,格子欠陥の発展挙動に代表されるような,材料の変形応
弾・塑性変形機構の解析を原子シミュレーションから進めてい
答がミクロ⇔マクロの双方向に関連する集団化現象に着目し, る.また,非破壊的な欠陥評価法の開発を目指して,電子線照
これらを階層的に取り扱うマルチスケールの観点から,理論計
射を利用した超音波顕微システムの開発も進めている.共鳴超
算と実験による研究を進めている.
音波スペクトロスコピー法を用いた研究では,固体材料の音色
具体的には,ナノスケールでの塑性現象の開始機構を解明す
とも言うべき共鳴周波数を精密計測し,その逆解析から全弾性
るために,ナノインデンテーション法を用いた直接実験と,第
定数の決定と,その理論解析による基礎物性の評価を進めてい
一原理計算・原子シミュレーション等を用いた理論計算を進め
る.
ている.また,構造体の大変形機構やそのサイズ依存性を解明
この他の研究として,機械工学と歯学の融合をめざしたオー
するために,集束イオンビームを用いたナノ構造体の創製と, ラルエンジニアリングを立ち上げ,噛み合わせに関する力学的
その機械的特性評価を電子顕微鏡の中で行っている.
研究を通じて 8020 運動に貢献している.
一方,従来にない特性や機能を持つ材料や構造体を創製する
ために,第一原理計算に基づいた材料スクリーニングから成長
8
複合メカニクス部門
ナノ工学領域 (中山研究室)
教 授 中山 喜萬 ( nakayama@ )
教員室 M1-712
研究室 M1-716, U1w-B112
HP http://www-ne.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
■ナノカーボン材料の合成プロセスに関する研究
■ナノカーボンや生体高分子を対象としたナノマニピュレ
ーション技術・加工技術の研究
■ナノおよびマイクロ領域における物理・化学・機械現象
の探究
■新規な機構で動作する電子機械デバイスの探索とその製
造基盤技術の開発
人類はナノ領域の観察やマニピュレーションの手だてを獲得
過電子顕微鏡の中で,サブナノメートル精度で自在に操作でき
して,
「原子や分子を設計指針通りに組み上げてサイズ特有の性
るマニピュレータが“手”として組み込まれている.たとえば,
質をもつ構造物を作り上げる」という新しいパラダイムへの挑
一本のカーボンナノチューブを様々な形へと変形させながらそ
戦が可能になった.そこでは,ナノサイズの材料物質の開発と
の構造変化をリアルタイムに原子レベルで観察することができ,
ナノレベルの加工技術の確立が重要な鍵を握ることになる.し
それと同時に,電気特性・力学特性を計測できる.また,切断,
かし,体積のきわめて小さいナノ物質では,原子レベルの構造
接合,融合,組み立てなどのナノ加工も行える.
不整や表面構造によって物質全体の特性が大きく変調を受ける.
ナノエンジニアリングの成果は,ナノサイズのデバイス構築
また,電子的・力学的特性もサイズによる効果が支配的になる.
を可能にするだけでなく,ナノチューブやナノコイルを用いた
したがって,そのエンジニアリングもナノの世界独特のものに
高機能性部材,たとえば超高強度繊維や高強度制振素材などの
なると予想できる.本研究室では,多様な結合形態を取りうる
開発の基礎を築く.
カーボン原子を骨格とするカーボンナノチューブやらせん構造
また,走査型プローブ顕微鏡の中でタンパク質一分子を対称
をもつカーボンナノコイルなどのナノカーボンさらにタンパク
としたダイナミクス計測を可能にする,ナノチューブを用いた
質などの生体高分子に着目し,これらナノ材料の「ナノエンジ
センサデバイスの開発を行っている.
ニアリングの体系化」を研究の中心課題に掲げている.
主力装置は,本学で独自に開発した「スーパーナノファクト
リ」で,これを用いてナノワールドを探求している.そこは透
触媒を用いた化学気相法によるカーボンナノチューブおよび
カーボンナノコイルの合成プロセスと成長機構解明に関する研
究にも取り組んでいる.
9
複合メカニクス部門
複合流動工学領域 (田中研究室)
教 授 田中 敏嗣 ( tanaka@ )
准教授 川口 寿裕 ( kawa@ )
助 教 辻 拓也
( tak@ )
教員室・研究室 M1-725,726,M3-113
HP http://www-cf.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
■固体分散相を含む流れの物理機構解明と予測・制御技術
の構築
■離散粒子法に基づく高濃度粒子流れの数値解析
■各スケールにおける粒子群の自己組織化・構造化現象の
解明
■MRI による複雑流れの非接触計測
■光学計測手法に基づく流れ場計測
固体粒子と流体が強い相互 また,それに基づく現象の制御 ケール流れまで広範なスケー 可欠である.しかし,粒子分散
作用を及ぼし合いながら流動 や各種応用に関する研究を行 ル領域にわたって存在する.本 相が存在すると,外部からの直
する固体・流体混相流は,様々 っている.
な工業装置内や自然現象にお
研究グループではこれらすべ 接観察ができないため,これは
このような流れは火砕流に てのスケール領域における粒 容易なことではない.本研究グ
いて広範に現れる重要な現象 代表されるマクロスケール流 子系の流れを研究対象として ループでは,従来の光学的な計
である.
れから,流動層などの各種工業 いる.
本グループでは,このような 装置内で発生するメゾスケー
測手法に加えて,核磁気共鳴画
高精度な数値シミュレーシ 像計測装置(MRI)を用いた,複
固体・流体混相流の計測,複雑 ル流れ,ナノ構造体を構築する ョンモデルの構築およびその 雑な流れ場の非接触可視化・計
な振る舞いを予測するための 上で極めて重要なナノ粒子の 検証を行うには,内部構造も含 測手法の開発も行っている.
モデル構築と予測手法の開発, 自己組織化現象などのナノス んだ流れの詳細なデータが不
10
複合メカニクス部門
非線形非平衡流体力学領域(矢野研究室)
教 授 矢野 猛 ( yano@ )
教員室・研究室 M4-401∼405
HP http://nnfm.mech.eng.osaka-u.ac.jp
■ 波と流れと熱の非線形現象の理論解析と数値シミュレ
ーション
■ 連続体の仮定に拠らない非平衡流体力学とその分子論
的基礎づけ
■ 混相流における相間輸送モデルの分子レベルからの構
築
■ 巨視的な運動量輸送とエネルギー輸送の脂質分子膜透
過過程に対する微視的レベルの数値解析
流体力学とは,空気や水の運動を「流れ」としてとらえて, います.そのように小さい世界では,上で述べた2つの事実が
数理的および実験的研究によってその詳細を明らかにするこ
当てはまらなくなり,新たに「非平衡」というキーワードが重
とを目的とする学問です.
要性を増してきます.また,そのような小さい世界で流体を運
元をたどれば不規則に運動している分子の集合体である空
んだり,流体に仕事をさせたりするためには,「非線形」性を
気や水の運動を「流れ」としてとらえることは,2つの事実に
うまく活用することが本質的となります.小さい世界以外で
基づいています.ひとつは,空気や水を構成する分子の数が大
「非平衡」で「非線形」な流体力学がとくに重要となる領域は
きくなればなるほど,分子集団の振る舞いを少数個の変数で記
希薄な気体で満たされている宇宙空間でしょう.これまでの宇
述できるようになることです.少数個の変数とは,流体の密度, 宙開発はロケットの打ち上げが主たる作業でしたが,将来は,
流体の速度,流体の圧力などのことです.ふたつめは,私たち
宇宙での居住を目指すものとなるはずです.そのときには機械
が,空気や水を多数の分子の集合体として見るような立場にあ
工学の全分野が中心的役割を担うようになると思いますが,
るということです.話は飛びますが,宇宙空間には,水素分子
『非線形非平衡流体力学』の役割もさらに重要となるでしょう.
あるいは電離した水素が 1 cm3 あたり数個程度の割合で存在し
『非線形非平衡流体力学』という言葉は造語であって確立さ
ます.そのような状況を,私たちが身の丈程度の尺度でながめ
れた術語ではありません.そもそも現状では,このような問題
ても,とても「流れ」があるとは認識できません.しかしなが
を取り扱う理論体系が確立されていないのです.これを基礎づ
ら,1 光年程度の尺度でながめることによって,銀河形成の過
ける新しい理論の創成が本研究室の究極の目標です.
程を流体力学で記述できるようになるのです.銀河形成は機械
研究室における教育に関しては,数学と物理学を中心とする
工学では扱いません.機械工学は,私たち人間が利用するため
基礎力の充実,論理思考力の鍛錬,常に物事の本質を追い求め
の技術に関わるものであり,それゆえに,私たちが見たりさわ
る姿勢,の3つを柱としています.本研究室で学ぶ学生の皆さ
ったりできる程度の大きさで特徴づけられます.そのような大
んには,この3つを自らの基盤として,将来の機械工学を切り
きさの尺度では,空気や水を構成する分子の数は 1023 個程度
拓いて行ってもらいたいと願っています.
です.このために,私たちは,空気や水の運動を「流れ」とし
て認識するように,自然に導かれてきたのです.
近年では,見たりさわったりできない程に小さい技術を利用
したくなったり,一部では既に利用できるようになったりして
本研究室の現在の研究トピックスは,本ページの右上部分に
要約しました.また,それらに関わるいくつかの図を下に掲載
していますが,その内容の詳細は紙数の都合により割愛するこ
ととします.
11
複合メカニクス部門
波動現象学領域
■絞りを含む管路系の共振現象:管路の途中に絞りがあ
ると系の固有周波数が変化する.その特性を利用して,
管路系に生じる詰まりの位置の計測を行う.
■音波を用いた漏れの計測:漏れのある管路系において,
その量の推定法を開発する.
■分布定数系における振動特性のモード分解法:分布定
数系の特性を,2次系の特性の和で表現する.
(吉岡研究室)
准教授 吉岡 宗之 ( yoshioka@ )
教員室・研究室 M1-724,M3-113
HP http://www-mupf.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
◎
様々な波
い電磁波は,紫外線,X線,γ 放射線障害等)の防止技術を考 ムはそれ自体に固有の周波数,
身の回りに様々な波が存在 線などがある.
する.人びとに広く知られてい
案することである.
水面の波としては,水に小石
する.そして,その固有周波数
る波は音波,可視光線(光)水 を投げ入れたときに出来る波 ◎
面の波であろう.
音波・超音波・インパルス はシステムの質量,大きさ,長
紋や,そよ風の作り出すさざ波 等の計測,検査への利用
音波は空気,水などの流体や から,暴風による激しい波浪,
システムの固有周波数で振動
さ,密度等の情報を含んでおり,
波動現象学領域では,各種の 各種状態量の計測,検査への道
金属などの固体中を伝わる波 更には津波までも存在する.
波のうち,音波,超音波,電磁 が開ける.音響計測,超音波検
であり,超音波も音波と類似の
波,打撃によるインパルス等の 査,モーダル・アナリシスなど
波である.
光は電磁波の一種であり,波
◎
波にかかわる研究
発生と伝播のメカニズムを考 と称する研究分野である.
様々な波の発生と伝播と作 察し,それらを入力としたとき
また波動現象解析のための
長の違いが色の違いとして感 用を研究するのが波動現象学 の各種システムの応答を求め 数学的手法,回路論的アプロー
知できることは周知の通りで の物理学的な側面である.一方,ることで,計測,検査,運動の チについても種々検討してい
ある.また可視光より波長の長 工学としての側面は,各種の波 制御等に関する情報を獲得す る.
い電磁波は,赤外線や遠赤外線 をいかに有効利用するかを考 るための研究を行っている.
や電波などで,電波はテレビ, えることであり,また波によっ
例えば力学的システムに音
ラジオ,通信等に広く利用され て生じる自然災害(津波,波浪 波,超音波,打撃などの音響的
ている.一方,光より波長の短 等)
,公害(騒音,電磁波障害, な刺激を与えると,そのシステ
12
複合メカニクス部門
複雑流体工学領域
(山本研究室)
准教授 山本 剛宏 ( take@ )
教員室・研究室 M1-714,M1-711
HP http://www-rheol.mech.eng.osaka-u.ac.jp/rheol-j.html
■ 複雑流体の流動に関する基礎的研究
■ 複雑流体の流動誘起構造形成メカニズムの数値解析
■ 流体内部構造を考慮した複雑流体のミクロ−マクロ
数値流動解析
■ 界面活性剤水溶液の流動誘起構造とレオロジー特性
■ サスペンション系の流動解析
■ ポリマー系ナノコンポジットの流動解析
■ 複雑流体の数理モデルに関する研究
当研究室では,複雑流体の流 応用されているし,高分子の液 いたマクロ流動解析,ブラウン 雑流体を原料とする種々の工
動メカニズムを研究している. 晶は,高強度・高精度の成形品 動力学法などのミクロシミュ 業製品の製造プロセスの効率
複雑流体とは,流体内部に分子 に利用されている.
レベルよりも大きなスケール
レーション,あるいは,ミクロ 化や製品の品質・機能性の向上
これらの製品は,複雑流体の シミュレーションとマクロ流 に役立つ.さらに,流動誘起構
の内部構造(図1)を有する流 内部構造に起因する種々の機 動解析のカップリングによる 造のメカニズムの解明は,新し
体のことで,水や空気などのニ 能性を活用したものである.複 数値解析により,複雑流体の流 い機能性材料(流体)の創成に
ュートン流体には見られない 雑流体の特異な流動挙動やレ 動メカニズムと流体内部構造 貢献することが期待される.
特異な流動挙動を示す.高分子 オロジー特性,種々の機能性は,の関係の解明を目指している. 我々の研究室では,流動による
流体,界面活性剤溶液,サスペ 流動中の流体内部構造の変化 また,解析のためのモデリング 流体内部構造の変化をキーワ
ンション系(懸濁液),エマル と密接な関係があるため,製造 手法についても研究を行って ードに,様々な複雑流体の流動
ション,液晶などが複雑流体の プロセスや製品の使用時に現 いる.
例である.複雑流体は,決して れる複雑な流れ場における複
メカニズムの解明を目指した
このような研究の成果は複 研究を進めている.
珍しいものではなく,身の回り 雑流体の流動メカニズムを
の種々の製品に利用されてい 解明することが大切になる.
る(図2).例えば,高分子流
身の回りの複雑流体
我々の研究室では,実験お
体を原料とするプラスチック よび数値解析の両面からの
高分子流体
プラスチック成形品
繊維,フィルム
複合材料
成形品は身の回りの様々なと アプローチにより,複雑流体
ころで使われているし,食品や の流動メカニズムの解明に
化粧品,医用品には,多くの(コ 取り組んでいる(図3).具
ロイド)サスペンションやエマ 体的には,流体の基本物性を
エマルション
食品,化粧品,
サスペンション(懸濁液)
塗料,化粧品,
複合材料
ルションがある.また,界面活 調べるレオロジー測定,流れ
性剤は,洗剤としての利用のほ の 可 視 化 や 流 動 複 屈 折 測
液晶,液晶高分子
ディスプレイ,
各種成形品
界面活性剤
洗剤,化粧品,添加剤
かに,分散剤,乳化剤として幅 定・光散乱測定による分子配
広い分野で使用されている.低 向の解析などの実験,有限要
分子の液晶はディスプレイに 素法解析や有限体積法を用
図2 身の回りの複雑流体
LIQUID
LIQUIDCRYSTAL
CRYSTAL
POLYMER
POLYMER
流体内部構造
特異な
特異な
レオロジー特性
レオロジー特性
高分子
高分子の
ネットワーク
変形
特異な流動挙動
特異な流動挙動
秩序構造
液晶分子
複雑流体の内部構造
複雑流体の内部構造
流動による内部構造の変化
界面活性剤分子
疎水基
球状粒子
球状ミセル
ひも状ミセル
親水基
棒状粒子
ディスク状粒子
SUSPENSION
SUSPENSION
SURFACTANT
SURFACTANT(MICELL)
(MICELL)
実
実験
験
図1 複雑流体の内部構造の概略図
数値シミュレーション
数値シミュレーション
図3 研究アプローチの概要
13
複合メカニクス部門
熱流動工学領域
(片岡・大川研究室)
■気泡流、スラグ流、環状流、液滴流等の気液二相流
教 授 片岡 勲
( kataoka@ )
准教授 大川 富雄 ( t-okawa@ )
(兼)准教授 吉田 憲司( yoshida@ )
助 教 松本 忠義 ( t_matumoto@ )
教員室・研究室 M1-622∼625,M3-124
■混相乱流、気泡や液滴の動的挙動、界面現象
HP
■強制対流沸騰を支配する現象素過程の解明と機構論的モデリング
■過渡現象、非定常挙動、相変化
■ 超高速二相流の可視化とその解析
■ 環境機器における気液二相流の流動現象
■ 微小流路内の気液二相流現象
■ ミクロな表面構造上の着霜現象
http://www-thd.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
エネルギー・環境関連機器を に検討するとともに,気液二相 オーダの構造をもった固体表 ルギー機器の効率化のための
初めとする様々な工業システ 流の数値シミュレーション及 面へ着霜現象についての、伝熱 複雑な流路内での気液二相流
ムの高性能化を考える上で,気 び大型実験装置を用いた総合 特性の解明(図 5)ならびに、 の実験ならびに解析に関する
体と液体が混在する熱流動場 試験(図 3)を実施することによ 環境機器(廃水処理装置)にお 研究を行っている。
に関する深い理解が必要とな り,気液二相流動現象について ける、気液二相流の循環流の実 また本研究室は、コマツ共同研
る.
深い理解を得ることを目指し 験ならびに解析とその実際へ 究講座と連携して研究を行い、
本研究室では,沸騰により形 ている.
成された蒸気泡の運動(図 1),
の機器への応用、また、非常に 建設機械の流動伝熱、省エネル
また、音速を遙かに超える超 微小な流路内での気液二相流 ギー特性、環境特性の改善に関
液滴が衝突した後の液膜の挙 高速で流動する液体のジェッ の流動の微視的な挙動につい する研究を協力して行ってい
動(図 2),液膜上に形成される トの流動毒性をナノ秒のオー ての研究、建設機器、輸送機器 る。
界面波の挙動といった現象素 ダで撮影しその流動特性を解 の性能向上のための熱交換器
過程について実験的かつ詳細 明する研究(図 4)、ミクロン の高性能化に関する研究、エネ
複合メカニクス部門
図 1 高速度カメラによる強制対流沸騰場の可視化
図 2 液滴・流下液膜衝突後の気液界面構造
図 4 超高速水ジェットの
図 5 10 ミクロンの多数の溝を持つ面への着霜
ナノ秒オーダーでの可視化
図 3 強制対流沸騰実験装置
14
複合メカニクス部門
熱工学領域
(武石・小宮山研究室)
教 授 武石 賢一郎 ( takeishi@ )
准教授 小宮山 正治 ( komiyama@ )
助 教 小田 豊
( oda@ )
教員室・研究室 M1-721,722,723, M3-122
HP http://www-tran.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
■ 省エネ ルギ ーおよび CO2 排 出抑 制に資 する 次世代
1700℃級・超高効率ガスタービンを実用化するための革新
的翼冷却技術の提案と基礎熱流動現象の解明と制御
■航空宇宙分野におけるジェット推進・熱防御に関わる遷
音速∼超音速流域での空力・燃焼現象の解明と制御
■NOx(窒素酸化物)の排出低減と安定燃焼を可能にする
希薄予混合燃焼技術の開発と基礎現象の解明と制御
当研究室では,人類社会が直 耐熱温度をはるかに超えている の混合方法や,ものが燃えるとい 見られる音速よりも速い流れ(超
面する地球温暖化問題,エネル ため,タービン翼には乱流・伝熱 う現象のメカニズムについても基 音速流)における伝熱・燃焼現象
ギー問題の解決に貢献することを 工学など機械工学の粋を集めた 礎的研究を行っている.
目的として,各種エネルギー・動 冷却技術が使用されている.当
や,それに伴って発生する衝撃
また,航空宇宙分野の研究とし 波がこれらの機器の性能に及ぼ
力機器(例えば,発電所で活躍 研 究 室 で は , さ ら に 高 温 の ては,衛星打ち上げ用ロケット(下 す影響の研究なども関係機関と
するガスタービン発電機や航空 1700℃で作動するガスタービンを の写真)や超音速旅客機などに の協力の下で実施している.
用ジェットエンジン,空調機器な 実現するため,最先端のレーザ
ど)の高性能化,省エネルギー化, ー計測技術や熱流体シミュレー
環境負荷低減に関わる研究を, ション技術を駆使して,実験と解
主に熱流体工学,燃焼工学的な 析の両面から新たな翼冷却技術
観点から行っている.
例えば,ガスタービンでは天然
の開発に取り組んでいる.
このほか,ガスタービンでは燃
ガスを燃焼させて得た『熱エネル 焼で生じる有害な窒素酸化物の
ギー』を如何に効率よく発電機を 生成をできるだけ抑える燃焼法の
駆動するための『力学エネルギ 開発が重要であるが,このために
ー』に変換するかが高性能・省エ は燃料と空気を燃焼前に十分に
ネルギーを実現するための鍵とな 混合させる必要がある.これは予
るが,このためにはできる限り高 混合燃焼と呼ばれ,燃焼器内の
温・高圧の燃焼ガスでタービンと 限られた空間の中で,安全かつ
呼ばれる羽根車(右下写真)を回 安定に進行させることが非常に困
す必要がある.現在,この温度は 難であることが知られており,そ
1500℃にも達していて翼材料の れを実現するための燃料と空気
15
複合メカニクス部門
レーザ接合機構学分野 (片山研究室)
(接合科学研究所)
教 授 片山 聖二 ( katayama@jwri.)
助 教 川人 洋介 ( kawahito@jwri. )
教員室・研究室 接合科学研究所,スマプロ1号館
HP http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/division/mjm-cbp.htm
■各種材料におけるレーザ溶接性,ハイブリッド溶接性,
およびレーザブレージング性の評価
■レーザ溶接現象,ハイブリッド溶接現象,レーザブレー
ジング現象および欠陥形成機構の解明と防止法の開発
■レーザ溶接時のインプロセスモニタリングと適応制御
■レーザ異材溶接(金属とプラスチックの接合)法の開発
■レーザプロトタイピング・補修法の開発
本研究分野は,レーザを高度 レーザブレージング現象,クラ 溶 接 性 の 評
に活用した接合加工法,表面改 ッデイング現象,ハイブリッド 価,インプロ
質加工法,分離・除去加工法な 溶接現象などについて光学的手 セ ス モ ニ タ
Laser head
Interference filter
Notch filter
どの材料加工法の開発と各加工 法,X線透視法等により高速度 リング,セン
Dichroic mirror 2
機構の解明に関する基礎研究を に観測・計測し,レーザと物質と シ ン グ お よ
Dichroic mirror 1
行うことを目的に設立された. の相互作用,溶融溶接現象およ び適応制御,
Light source:
He-Ne laser
最先端のレーザ材料加工法の び溶接欠陥発生機構の解明と防 レ ー ザ 異 材
反射光センサー
[sampling:1μs]
ファイバー(レーザ伝送)
High speed camera 1
[sampling:111μs]
Adaptable control system
150 μs
Adaptively controllable
High speed camera 2
pulsed YAG laser
[sampling:111μs]
(λ : 1,064nm)
Sample
x,y table
開発において,各種加工現象の 止法の開発などの基礎的な研究 接合,レーザ
解明に関する研究を行っている.を行っている.また,連続また ブ レ ー ジ ン
熱放射光センサー
λ : 1,300nm
sampling:1μs
レーザ溶接時のモニタリング・適応制御装置
特に,レーザ溶接・接合現象, はパルスレーザ溶接時における グ,レーザプ
ロトタイ
CO2 laser
High
speed
camera
CCD camera
ピング,レ
Synchronized unit
Laser beam
2nd image intensifier
Shielding gas
ーザ補修
Welding
direction
法の開発
など,高品
100 mm
X-ray tube
Work table
1st image intensifier
High speed camera
8-10
mm
X線透視法による溶融池内部の撮影装置(模式図)
質・高機能
SUS 304 レーザ溶接時の
X線透視像
16
接合部の作
(PA)
30 mm
70 mm
(SUS304)
金属と樹脂のレーザ直接接合
製に関する研究も行っている.
Micromechanical
Science
マイクロ機械科学部門
ミクロなダイナミクスから新たな機能を創出する原理を探求します.
■マイクロマテリアル工学領域 箕島・平方研究室
■ナノ加工計測学領域
高谷研究室
■流体物理学領域
梶島研究室
■マルチスケール輸送現象領域 山口研究室
■燃焼工学領域
赤松研究室
■マイクロ熱工学領域
芝原研究室
■複合化機構学分野
近藤研究室(接合科学研究所)
注:メールアドレスの@以下は mech.eng.osaka-u.ac.jp を付けてください.
17
マイクロ機械科学部門
■マイクロマシン用微小機械要素の創製と機械特性評価
■先進電子デバイス用ナノ・マイクロ薄膜およびその界面
の力学・強度特性
■ナノ変形特性解析による先端機械材料の変形解析と水
素ぜい化感受性評価法の開発
■高強度鋼の動的環境ぜい化特性に及ぼす水素吸蔵状態
の影響
マイクロマテリアル工学領域 (箕島研究室)
教 授 箕島 弘二 ( minoshima@ )
講 師 平方 寛之 ( hirakata@ )
助 教 米津 明生 ( yonezu@ )
技術専門職員 﨑原 雅之 ( sakihara@ )
教員室・研究室 M1-221,M1-222,M1-223
HP http://www-micro.mech.eng.osaka-u.ac.jp/home.html
電子デバイスやマイクロマ
したがって,その体系的な理
シンに象徴されるように,複
解にはナノ・マイクロの視点
雑な構造を持った微小構造物
からのアプローチが必要であ
の開発が活発に行われている. る.当研究室では,微視的な
これらの構造物は寸法がナノ
観点からの新たな変形と破壊
からマイクロメートルオーダ
の力学の構築を目指し,マイ
ーの材料(マイクロマテリア
クロマテリアルおよびその界
ル)を組み合わせることによ
面の力学挙動についての実験
って構成されている.様々な
および解析を行っている.ま
環境下において長期にわたっ
た,実際の使用環境を考慮し
て壊れない構造物を開発する
て,水素の材料に及ぼす影響,
には,材料の変形と破壊につ
疲労や腐食環境下における破
いての深い理解が不可欠であ
壊メカニズムの解明とそれら
る.特に,材料は原子,転位
の強度特性改善に取り組んで
や格子欠陥,析出物,結晶粒
いる.
結晶粒の生成
マイクロ試験片
マイクロマシン用微小機械
要素の力学特性評価
などの特徴的な内部構造を有
しており,力学特性はこれら
の内部構造に強く依存する.
構造解析
下部構造を考慮した機械的特性シミュレーション
負荷
マイクロ構造体機械特性評価装置
界面き裂発生
200 nm
その場観察実験
水素ぜい化き裂のナノ観察
ナノ・マイクロの視点からの
変形と破壊の力学
水素存在状態の解析と有害水素の同定
ナノ変形実験装置
Applied load P, μN
15
荷重, μN
Force mN
0.2
200
0.1
100
5
0
-5
0
0
0
20
40
20
40
Penetration
depth nm
変位, nm
き裂発生荷重
10
0
2
応力解析
6
負荷曲線
荷重―変位関係
ナノ変形特性解析
4
8
10
Time t, s
ナノ構造体のその場観察界面破壊実験
18
材料中の水素存在状態解析装置
環境ぜい化機構の解明と
余寿命評価手法の確立
マイクロ機械科学部門
ナノ加工計測学領域 (高谷研究室)
教 授 高谷 裕浩 ( takaya@ )
助 教 林 照剛
( hayashi@ )
教員室・研究室
M4-502,504
■光放射圧プローブ式ナノ CMM(ナノ3次元座標計測装置)の
開発
■フェムト秒レーザを用いた超時間分解能計測の研究
■フラーレンを用いた超精密研磨加工システムの開発
■マイクロ光造形法による微粒子組み立てに関する研究
■DNA 自律ジョイントを用いた自動組み立てに関する研究
HP http://www-optim.mech.eng.osaka-u.ac.jp/index.html
常に大きな志を抱き,未開拓の 分類される.
領 域 に 果 敢 に 挑 む ” Boys be ナノ計測の分野では,ナノス
ambitious”のフロンティア精神が,ケールものづくりの基盤をなす
当研究室の全ての活動の原点と 基準計測技術の開発を目指し,
して息づいている.そして,フロン
nano-CMM(ナノ3次元座標計
ティア精神の種は,「地域に生き
測機)の開発に関する研究を
世界に伸びる」大阪大学という土
行っている. nano-CMM では,
壌で,常に新たな成長と変化を
測定精度の向上のため,測定力
続けている.当研究室の研究フィ
ロ ソ フ ィ は ひ と こ と で 表 現 す れ の低減が課題となるが,我々は,
ば,”ものづくりオリエンテッド”の 光放射圧と呼ばれる光から生み
研究である.すなわち,ものづくり 出される力を利用して,空気中に
の本質を追究することを最終的 浮かべた微粒子をプローブとし
な目的として,異分野との融合や
新分野の開拓・展開を指向し,
基礎現象の深い探求とそれに立
脚した高度な技術の創造を行う
ことである.それによって,高い
独創性と柔軟な発想に基づいた
究極の加工計測技術を実現でき
るものと考えている.現在,ナノメ
ートル領域のものづくりの本質を
加工=計測と捉え,高度な光技
術(シミュレーション解析,光学設
計,オリジナル装置開発)をベー
スとした,ものづくりの基本となる
加工および計測に関する新技術
の開拓に向けて,これからの未
来をつくる加工計測技術に関す
る研究を進めている.
図 4 フラーーレンを研磨砥粒とし,研磨した時の加工面の初期状
態(左)および研磨後の状態(右)RMS(二乗平均平方根粗さ)が,
16nm から 1nm に大きく改善されていることがわかる.
粒子を利用した加工技術の開
発に取り組んでおり,これまで
てその加工メカニズムの解明に
向けて,加工方法の確立と加
工原理の解明,さらに,加工シ
て3次元形状を計測する技術の ステムの開発に向けた研究を
開発(図 1)など,次世代のものづ 実施している.(図 4,5)
くり計測の確立に向けた精力的
な研究を行っている.
また,ナノスケール組み立て
技術に関する研究では,DNA
図 5 水酸化フラーレン C60OH36
の構造推定式
ナノスケールのものづくりでは, の相補的結合を利用した位置 次元組み立てに関する研究では,
加工・計測融合システムが不可 決め技術をもとにマイクロシステ 微粒子を含んだマイクロ3次元樹
欠である.その観点から,計測技 ムの自動組み立て技術に関する 脂部品から,金属などの微粒子
術との親和性の良い新しい原理 研究を行っている他,マイクロ光 からなる3次元構造を形成するた
に基づいた光加工技術の開発を 光造形(図 6)を用いた微粒子 3 めの研究を実施している.
めざしている.現在,「光放射
圧を利用したマイクロ/ナノマ
シニングに関する基礎研究」
(図 2,3)では,加工位置を計
測しながら,ナノオーダの局所
微細加工を実現するためのナ
ノ加工システムの開発に向け
本研究室の研究内容はおおき た研究を行っている.
くナノ計測,超精密加工,ナノス また,超精密加工の分野では,
ケール組み立ての3つの領域に 直径 0.71nm のフラーレンナノ
図1 左上は対物レンズによって集光され
たレーザビームによって,空気に浮揚して
いる直径 8μm の微小球プローブ.写真は
その微小球プローブを用いた nano-CMM
で直径 168μm の真球の形状を計測してい
る様子
図 6 マイクロ光造形システムと,設計された CAD データおよび
作製された樹脂部品
図 2 レーザトラッピングプローブ
を用いたナノ表面加工の加工モデ
ル.シリコン表面などを nm の精度で
加工できる.レーザによる光照射や,
プローブによる機械的な作用など
が,加工因子として考えられる.
19
図 3 レーザトラップによって加工用微粒子プローブ
を制御するナノ表面加工システム.図中の青い光は,
レーザトラップ光源となる Ar イオンレーザ(波長
488nm).シリコンの表面に,レーザトラップされたプ
ローブ微粒子を近づけることによって,nm 精度の加工
が行える.
マイクロ機械科学部門
流体物理学領域
(梶島研究室)
教 授 梶島 岳夫 ( kajisima@ )
助 教 大森 健史
( t.omori@ )
技術専門職員 北田 義一 ( kitada@ )
教員室・研究室 M1-629∼631,M3-121
HP http://www-fluid.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
現象を乱すことなく,四次 遺伝子の解読が直ちに生命の
■数値シミュレーションによる流れの諸現象の解明
■乱流の渦構造の解析とモデリング
■流動抵抗や空力騒音の抑制技術への応用
■非定常キャビテーション流れの解析
■固体粒子や気泡などを含む乱流現象の解明
■水棲生物に学ぶ推進機構の開発
■新しい計算アルゴリズムの研究
当研究室では,乱流を代表
応用を目指しています.
そのために,高効率・高精
元(時間と三次元空間)場の
理解を意味しないことと同様, とする流動現象,多相の連成
データを求めることは実験で
流れのあらゆる情報が得られ
問題,騒音や伝熱に関連する
は不可能です.支配方程式が
ることと流れを理解すること
複合問題を主要な課題として, 方法,現象の解明と数式表現
確立されており,正確な計算
の間には大きな隔たりがあり
流れを in silico(コンピュー
(モデリング)に関する研究
が可能であれば,数値シミュ
ます.情報を知識に変えるた
ターの中)で限りなく in situ
を行っています.
レーションは実験にまさる研
めには,流体力学と数理が不
(自然のまま)に扱う「数値
究手段となります.しかし,
可欠です.
実験」手法の確立と工学的な
キャビテーション流れ解法の確立
と宇宙工学への応用
生物機能(推進,抵抗・騒音低減)の研究
度な数値シミュレーションの
粒子状物質,バイオリアクター,生体流れなどに
共通な,乱流中での粒子群のふるまいの解析
ロケットエンジンポンプ
(インデューサー)の流れ
遺伝的アルゴリズムによる遊泳の最適化
猛禽類の翼端形状による消音機構の解明
弾性構造物と高速流れとの干渉
可変形粒子の集団挙動と渦
イタリア,リド島(ベネチア国際映画祭会場)で開催された計算力学に関する
国際会議で発表を終えた4名の大学院生とアドリア海を背景に(2008 年 7 月)
20
マイクロ機械科学部門
マルチスケール輸送現象領域
(山口研究室)
准教授
山口
康隆
教員室・研究室
( yamaguchi@ )
総合研究棟(AR)G2-606,G2-607
HP http://www-gcom.mech.eng.osaka-u.ac.jp
■自由表面を有する液体の衝突,分裂過程を伴う動的現象
のシミュレーション
■分子スケールの流動における固液界面相互作用の影響
の解析
■ナノ粒子の超高速衝突に関する分子シミュレーション
■多重曲がり管による伝熱・攪拌促進に関する数値解析
■フラーレン,カーボンナノチューブなど炭素系物質の構
造形成メカニズムの解明
本研究室では,熱流体の運動,力が低下し,表面が「動く」と のダイナミクスが,その 100 このような背景を念頭に置き,
特に相界面,表面張力効果,化 いうことは以前から良く知ら 万倍の大きさを持つ「目に見え SPH 法を中心としたマクロス
学反応,衝突過程を含む動的現 れているが,分子の世界,いわ る」マクロスケールの挙動を支 ケールの計算手法と分子動力
象について,「目に見える」マ ゆるナノスケールから見て,水 配するということはそれ自体, 学法を中心としたナノスケー
クロスケール(巨視的)解析に 分子や界面活性剤の分子が実 驚くべきことであるが,実際に ル計算手法を併用したマルチ
加えて,「目では見えない」ナ 際にどのように「向きを変え」
, は産業界においても,半導体製 スケールの輸送現象の解析を
ノ・マイクロメートルスケール あるいは「手を結んで」,結果 造,製膜・塗布プロセスなどの 進めている.これに加えて「動
の分子論的解析の両面から計 的に巨視的な値である表面張 更なる高密度化,高精細化に際 きを見る」ことによって理解を
算機シミュレーションを行っ 力が低下することになるかは し,ナノスケールのダイナミク 深めるため,計算結果の可視化,
ている.
明確には分かっていない.この スの本質的な理解を踏まえた 提示技術の開発にも力を入れ
例えば水の表面に界面活性剤 ように「目では見えない」ナ マクロスケール現象の制御が ている.
を入れると,巨視的には表面張 ノ・マイクロメートルスケール 不可欠となってきている.
マクロスケールのダイナミクス
マルチスケール
輸送現象
ナノスケールのダイナミクス
液体ナノジェット噴射のシミュレーション
0.3 (ps)
「水しぶき」形成の数値計算
液滴の衝突分離過程
0.7 (ps)
ダイヤモンド表面へのナノ微粒子の超高速衝突
21
1.5 (ps)
マイクロ機械科学部門
燃焼工学領域 (赤松研究室)
教 授 赤松 史光 ( akamatsu@ )
教員室・研究室 M1-422, M3-123
研究室 HP:
http://www-combu.mech.eng.osaka-u.ac.jp/mpe06009/index.html
■
■
■
■
■
■
■
■
噴霧火炎中の油滴群燃焼挙動に関する研究
燃焼流の光学計測
燃焼流の数値シミュレーション
木質バイオマスの部分燃焼によるガス化
レーザ誘起ブレークダウンによる着火現象の解明
ラジカル自発光による燃焼診断
高圧純酸素燃焼火炎の燃焼特性
金属微粒子の燃焼合成
近年,開発途上国における急 化石燃料は有限の資源であり,
激な人口増加と経済発展によ 近い将来,枯渇することは避け
り,世界的にエネルギー需要は られず,燃焼機器の高効率化・
増加し続けており,また,地球 クリーン化に関する研究開発
温暖化等の地球規模の環境問 と並行して,現在の化石燃料依
題が顕在化するなど,今後はエ 存型の社会から脱却するため
ネルギーの供給と利用にして, に,化石燃料代替エネルギーに
環境問題への配慮がさらに求 関する研究を早急に進めるこ
められる時代となっていくこ とが必要不可欠である.
とは必至である.
本研究室では,レーザ応用計
しかし,全世界で使用されて 測と詳細数値シミュレーショ
いるエネルギーの内,約 90% ンを駆使して燃焼現象を根本
が化石燃料の燃焼から生み出 的に解明することにより,自動
されているのが現状であり,環 車用エンジン,ガスタービン等
境負荷の低減,省エネルギーの の燃焼機器の高効率化・クリー
要求に応えるには,クリーンか ン化,次世代新エネルギーの開
つ高効率な燃焼機器に関する 発,燃焼合成に関する基礎研究
研究開発が急務である.一方, を行なっています.
可視化窓付き高圧燃焼容器
高圧純酸素火炎
乱流予混合火炎
レーザ応用計測システム
層流対向場に形成される噴霧火炎
火炎中の液体噴霧燃料の可視化
22
マイクロ機械科学部門
マイクロ機械科学部門
マイクロ熱工学領域 (芝原研究室)
■ナノ構造やナノ構造間隔が固液界面熱抵抗や熱伝導率
に及ぼす影響の学理の解明と利用
■燃焼生成ナノ粒子の流動・堆積過程のモデリング
■低圧燃焼場におけるフラーレン・すすの生成機構解明
■マイクロ触媒燃焼器を用いた小型発電システムの開発
■表面から放出される電子へのエネルギー伝達過程の量
子分子動力学解析
准教授 芝原 正彦
( siba@ )
教員室・研究室 M1-423,M3-123
研究室 HP:
http://www-combu.mech.eng.osaka-u.ac.jp/mpe06999/microt/index.htm
本研究室ではナノ・マイクロ
高効率な固液間のエネルギ ルスケールの空孔やナノ粒子 ②巨視的な熱物質移動が超微
メートルでの微小な現象・構造 ー伝達システムを開発するた が熱伝導率を大幅に低下させ 小構造の生成・流動に与える影
がどのように積み重なって巨 めに,ナノ粒子を用いた表面化 ることが知られています.本研 響の評価
視的な熱流動ができていくの 学処理によって,金属界面にナ 究室では,ナノ構造ならびにそ
燃焼場中で生成される有害
かを実験および解析で研究す ノ・マイクロ多重多孔質構造を の間隔と熱伝導率の関係に関 微小粒子を低減しつつ,ナノテ
ることによって,そのような微 形成し,その構造によって,固 して分子動力学解析とフォノ ク材料として有用なフラーレ
小な現象や構造を使って巨視 液界面の熱抵抗を低減するた ン解析を行って,その最適な構 ン類を生成するために,低圧燃
的なエネルギー伝達特性をコ めの技術を研究しています.同 造について研究を行っていま 焼場におけるフラーレン・すす
の生成機構の実験的研究を行
ントロールするための新しい 時に,界面の微細構造や微細構 す.
学理と技術,逆に巨視的な熱流 造間隔がどのようなメカニズ
また,微小触媒球を用いて微 っています.また,燃焼場で生
動を使って微小な現象や構造 ムで固液界面熱抵抗を低減し 小空間での燃焼状態を実現す 成されたナノ粒子がフィルタ
をコントロールするための新 ているのか,さらに,元来存在 る触媒燃焼器を開発し,そこか ー表面でどのように流動・堆積
しい学理と技術を創出するこ する固液界面熱抵抗を極小と ら放射される近赤外線を利用 を行うかについて,分子動力学
とを研究の目的としています. するためにはどのようなこと して発電が可能な熱光発電素 シミュレーションによってモ
①超微細構造の相互作用が巨 を考えればよいのかについて 子と組み合わせることによっ デリングを行っています.
視的な熱物質移動に与える影 研究を行っています.
響の利用
て,小型発電システムの開発を
一方で,材料中のナノメート 行っています.
界面熱抵抗と微細構造の関係
さらに近づい
てみると
ナノ多孔質
マイクロ多孔質
C60の凝集体
反応・熱放射と微細構造の関係
ナノ・マイクロ多重多孔質構造
通常銅板上の水滴
ナノ構造面上の水滴
熱抵抗変化の
メカニズム
C60
超微小構造の相互作用が
巨視的な熱物質移動に
与える影響の利用
小型触媒燃焼器
低圧場でフラーレン(C60)・すすを
生成するトルエン・酸素予混合火炎
微視的にみた
固液界面
熱伝導と微細構造の関係
触媒球
巨視的な熱物質移動が超微小構造の
生成・流動に与える影響の評価
触媒球からの近赤外線放射
さらに近づい
てみると
フォノン散乱
液体分子
ディーゼル
粒子フィルター
マイクロ機械科学部門
ナノ構造
光熱発電セル(TPV)
マイクロ触媒燃焼器と近赤外
光を用いた小型発電システム
フィルター壁面
固体原子
炭素ナノ粒子
ナノ構造が界面熱抵抗に与える影響の
分子シミュレーション
ナノ構造による熱伝導率低減
機構のシミュレーション
炭素ナノ粒子の壁面堆積挙動のモデリング
23
マイクロ機械科学部門
複合化機構学分野 (近藤研究室)
(接合科学研究所)
教 授
近藤 勝義 ([email protected])
特任研究員 梅田 純子 ([email protected])
特任研究員 今井 久志 ([email protected])
HP http://www.jwri.osaka-u.ac.jp/index.jsp
■単分散カーボンナノチューブ(CNT)の真の機能発現に向
けた複合化材料設計
■微細組織制御による高強靭性・高エネルギー吸収性マグネ
シウム粉体合金
■非食部バイオマスの高度再資源化:籾殻由来多孔質非晶質
高純度シリカの生成
■粉体プロセスによる完全鉛フリー・高強度快削性黄銅合金
資源・エネルギーの有効利用は,省エネとしての直接的効果の他,地球温暖化防止や環境負荷削減,さらには人体・生命への負
荷軽減などの波及効果を伴う.他方,化石資源の枯渇を考えると,再生可能エネルギーの積極的な利活用の必要性も明らかである.
そこで,本分野では材料・プロセス設計の観点から資源・エネルギーの効率的活用を支
援・促進する素形材の実現を目指し,粉体プロセスを基調にナノ∼ミクロンの階層的マ
Un-bundled MWCNTs
MWCNTs on
Aluminum powder surface
ルチスケール設計による材料の複合化・高機能化に関する基礎学理の構築と実用化研究
を遂行する.
Three
Three dimensional
dimensional micro-nano
micro-nano continuous
continuous
pores
pores originated
originated in
in cells
cells of
of rice
rice husks
husks
Stress, s / MPa
600
Micro-pores
(Primary pores)
P/M Titanium with 0.13% CNT
500
400
300
Conventional P/M
Titanium
200
100
Nano-pores
(Secondary pores)
0
0
0.1
0.2
0.3
Strain, e
24
0.4
0.5
Intelligent
Machines
知能機械学部門
複雑で動的な環境に適応する知的な機械システムを追究します.
■制御工学領域
池田・浅井研究室
■人間機械学領域
古荘研究室
■ハイパーヒューマン工学領域 金子・東森研究室
注:メールアドレスの@以下は mech.eng.osaka-u.ac.jp を付けてください.
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知能機械学部門
制御工学領域
(池田・浅井研究室)
教 授 池田 雅夫 ( ikeda@ )
准教授 浅井 徹 ( tasai@ )
助 教 甲斐 健也 ( kai@ )
教員室・研究室 M1-736, 734, 227, 228
HP http://www-watt.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
■制御って何?
テーマについて紹介する.
「制御」とはシステムを自在 人に直接関わる制御
にあやつることを言う.「シス
■パワーアシストスーツの開発・制御
■大型宇宙構造物の振動抑制制御
■移動体の運動制御
■達成可能な目標値追従性能の解析
■PWM 型制御入力に基づく安定化制御
■非ホロノミックシステムの解析と制御
■微分幾何学に基づく非線形制御理論
■非線形システム・力学システムにおける離散構造
計理論を考えている.さらに, ラスタは数種類(ON/OFF)の
模型を用いた制御系実験環境 制御入力値しか与えることが
「パワーアシストスーツ」は を構築し,それらを用いて理論 できない,一つのセンサーでは
テム制御」
,
「自動制御」などと 空気圧アクチュエータを用い の検証実験などを行っている. 計測可能な周波数帯域が限ら
言われることもある.高校迄で て人間の重労働を軽減するた このような実験を行うために れている,通信容量の制限によ
は全く扱われていない学問な めのシステムであり,福祉・介 は,実験機−ホストコンピュー って制御に用いることのでき
のであまり馴染みがないかも 護をはじめ,さまざまな分野で タ間の無線通信が必要となる. る情報量が制約されるなど,現
しれないが,制御はさまざまな の利用が期待されている.そう そこで,移動体上のマイクロコ 実の制御対象を制御する際に
分野で必要な技術であり,実際 したパワーアシストスーツを ンピュータと通信経路の存在 はアクチュエータ,センサーな
にさまざまなところで利用さ 実用化するために,どのような を前提とした制御系の設計論 どに関するさまざまな制約が
れている.
制御系を構成すればよいのか に関する研究も行っている.
あたりまえのことだが,モノ について研究を行っている.
存在する.そのような状況を考
慮して,より現実的な制御系を
が自然に人間の都合のいいよ
系統的に設計するための制御
うに動くことはありえない.モ
系設計理論を考えている.
ノが人間の役に立つような動
非ホロノミックシステム・非線
作をするならば,それは必ず制
形システム制御理論
車両システム・宇宙ロボッ
御されているはずである.例え
ト・劣駆動マニピュレータなど
ば,ロケットや人工衛星などで
は,それらを目標の軌道にのせ
4輪操舵車両
に代表される「非ホロノミック
るための制御が必要になるし,
目標値追従制御のための入力 システム」は,非線形システム
飛行機のオートパイロットは
設計と達成可能な性能
の中でも制御するのが難しい
目標のコースに沿って飛行す
目標値への追従は制御系に ことが良く知られており,非常
るように飛行機を制御してい
求められる重要な仕様の一つ にチャレンジングな問題とい
である.高い目標値追従性能を える.このようなシステムに対
る.他にも,マスコミで頻繁に
とりあげられるロボット,ハー
パワーアシストスーツ
ドディスクドライブ,自動改札 振動を抑制する制御
機,エアコン,コピー機,街で
得るためにはフィードバック して,モデリング方法・理論的
制御だけでなくフィードフォ 解析・制御系設計に関する研究
「大型宇宙構造物の太陽電池 ワード制御を活用することが を行っている.そして,より一
よく見る自動ドアやエスカレ パネル」から「電子顕微鏡」な 効果的である.そこで,フィー 般的な非線形システムのふる
ータ,エレベータ,工場の生産 どの精密機器に至るまで,振動 ドフォワード制御を利用した まいを解析・制御することも工
機械など,これらすべてのもの の抑制は機械を正常に機能さ 場合に達成できる性能の限界, 学においては重要な課題であ
は制御があってはじめて実生 せるために避けられない重要 とくに制御対象のモデルに不 る.そのために,微分幾何学・
活で役立つ道具になる.
な課題である.そうした振動を 確かさが存在するようなより 非線形力学などのツールを用
抑制するために,振動抑制制御 実際的な意味での限界を解析 いて,非線形制御理論のさらな
■研究内容
系の設計を行っている.さらに,する研究を行っている.また, る構築を目指している.
本研究室では「制御」をキー 初めから振動が発生しにくい そのような限界性能を実現す
ワードに,様々な研究を行って ように構造を設計する方法も るフィードフォワード制御入
いる.その内容は,基礎理論の あわせて考えている.
力を設計する手法についての
研究から,実際に装置を作成し 移動体の運動制御
研究も行っている.
て実験を行う応用まで,多岐に
「4輪操舵車両」などの移動 現実の制約を陽に考慮した制
渡っている.それでは,その中 体に対して,所望の振る舞い・ 御系設計法
からいくつかの具体的な研究 運動をさせるような制御系設
人工衛星のガスジェットス
26
宇宙ロボットのモデル
知能機械学部門
人間機械学領域
(古荘研究室)
教 授 古荘 純次 ( furusho@ )
助 教 菊池 武士
( kikuchi@ )
教員室・研究室 M1-731, M1-732, M1-733・M3-112
HP http://www-dyna.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
■研究テーマ
リハビリテーションロボティクス,手術支援ロボット
メカトロシステムの機構・力学・制御
■研究内容
上肢リハビリ支援システム
インテリジェント義足・下肢装具
多重曲がり針デバイスを用いた手術支援システム
古荘研究室では、医工連携領
右上段の写真は制御型下肢
域(医学と工学の融合領域)に
装具である.足関節部にコンパ
おいてロボット技術の応用を
クトなブレーキを搭載するこ
目指し,様々なロボットの研究
とによって,歩行のタイミング
開発を行なっている.
上肢リハビリロボット
にあわせて適切にブレーキ力
右上段の写真は古荘研究室
を発揮し,スムーズな歩行をア
で開発された上肢(肩,肘,手
シストする.脳卒中片麻痺等の
首)リハビリロボットである.
患者を対象に考えている.
バーチャルリアリティ技術を
右下段の写真は手術支援シ
用いて,様々な力覚(仮想空間
ステムである.先端に多重曲が
における力感覚)を提示するこ
バーチャルホッケー
り針を装着し,その針先を制御
とが出来る.右中段のような
することによって穿刺(針を刺
様々なソフトを開発すること
す行為)の支援を行なう.制
で楽しくリハビリを行なうこ
御・計測・画像処理等の技術を
とが出来る.現在,右下段の写
用いて針先誤差を補正し,超音
真のように,リハビリ中の脳機
波画像上の目標に的確に針を
能計測も行なっている.
脳機能計測
穿刺することが可能である.
★ 文部科学省は,日本の大学院に世界最高水準の研究拠点をつくろうとし
て,グローバル COE をスタートさせました.その初年度にあたる平成19年
度に,
【学際・複合・新領域】で,大阪大学臨床医工学融合研究教育センター
を核とする「医・工・情報学融合による予測医学基盤創成」が採択されました.
ハイパーヒューマン工学領域(金子・東森研究室)
,人間機械学領域(古荘研
究室)は,そのメンバーとして研究を推進しています.
27
制御型下肢装具
知能機械学部門
ハイパーヒューマン工学領域(金子・東森研究室)
■ハイパーロボティクス:高速ビジョンと高速アクチュエ
教 授 金子 真
( mk@ )
■ハイパーセンシング:非接触プローブを利用した生体の
准教授 東森 充
( higashi@ )
ータを駆使したヒトの能力を超えたロボットの開発
教員室・研究室 M4-409,408, 407, 406
HP http://www-hh.mech.eng.osaka-u.ac.jp/home.html
動特性のセンシング及びそのモデリング
■ヒューマンミステリー:ヒトの感覚器の神秘を解明
■メディカル応用:硬さというキーワードでヒトの病巣診
断,再生医療に迫る
本研究室では,ヒトの能力を 診断,再生医療分野では欠かせ ダ)の非接触硬さセンシング法 診断にまで展開できるようなセ
超越した超高速センシング技術 ない.組織レベル(ミリオーダ) を確立することによって,臓器 ンシング技術の枠組みを構築し
と超高速アクチュエータ技術を から細胞レベル(ミクロンオー レベルの診断から細胞レベルの ていきたい.
ベースに,ヒトには到底できな
い作業が実行できるハイパーロ
ボティクス,ヒトの動体視力が
ネックになって肉眼で観察でき
ない現象にスポットを当てたハ
イパーセンシング,ヒトの感覚
器に潜むなぞを解き明かすヒュ
ーマンミステリー,ハイパーヒ
ューマンプローブを用いたメデ
ィカル応用に関する研究を行っ
ている.特に,硬さ情報は医療
28
Design
and
Integration
統合デザイン工学部門
設計や生産におけるさまざまなプロセスと統合化の方法論を構築します.
■設計工学領域
藤田研究室
■生産加工システム工学領域 竹内・石田研究室
■評価デザイン領域
久保研究室
■ライフサイクル工学領域
梅田研究室
■加工機構学領域
藤原研究室
■構造安全評価学領域
阪上研究室
■精密加工学領域
榎本研究室
注:メールアドレスの@以下は mech.eng.osaka-u.ac.jp を付けてください.
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統合デザイン工学部門
設計工学領域
■ 設計のための理論と体系的な方法論の構築
■ プロダクトアーキテクチャデザインのためのモデリン
グと設計支援手法
■ 製品開発プロセスのモデリングと計画評価法
■ 製品開発のためのナレッジマネージメント手法
■ 大規模で複雑な製品のための階層的な設計最適化法
■ 製品ファミリーにおける共通化・共有化・モジュール化
のための最適設計法
(藤田研究室)
教 授 藤田 喜久雄 ( fujita@ )
助 教 野間口 大
( noma@ )
教員室・研究室 M1-727∼730,125,115
HP http://syd.mech.eng.osaka-u.ac.jp/index-jp.html
本研究室では,優れたデザインを創出することを目指して,製品(プロダクト)の設計や開発を価値・コスト・時間などにつ
いての様々な要因を総合的かつ系統的に考えつつ合理的に進めていくための理論や方法論,コンピュータ援用技術に関する教
育と研究を行っています.
研究展開
の局面
事 例
方法・ツール
理 論
設計の
プロセス
実 践
企 画
設計工学の展開方法
処
理
・
能
知
法
計
画
技
解
析
ン
グ
術
理
数
価
・
学
テ
グ
ス
リ
評
・
出
ズ
ン
対
の
ウ
・
へ
・
性
創
の
化
能
モ
デ
向
機
値
シ
方
高
価
ダ
ト
ー
ニ
ス
・
・
・
・
応
・
・
基盤として用いる手法
・
化
な
コ
プ
ロ
能
性
い
ミ
ン
・・・
:
様
ラ
詳細設計
多
グ
配置設計
し
新
ム
工
人
工
知
認
・
経
済
学
科
学
情
報
・
・
知
識
営
学
機能設計
高
経
概念設計
・設計方法論
・設計支援システム
・製品企画/製品開発
・ナレッジマネージメント
・最適設計
・評価方法
・発想支援
:
具体的には,設計対象のモデリングや課題設定・課題解決プロセスについての考察を基盤として,知識情報処理などの人工知
能技術や数理計画法などのシステム工学の見地から,各種の高度な設計支援シ
共通化・カスタマイゼーション・ラインナップ
調整を総合的に考えた製品系列の設計法
ステムや設計自動化システムを構築する一方,社会や経済との関連のもとでの
製品の価値や多様性を向上させるための設計方法論について研究しています.
知識管理型概念設計支援手法
アーキテク
チャの設計
共通化部分
の先行設計
階層型最適配置設計法
自動的に生成された
試行錯誤のプロセス
受注の応じた
カスタマイゼーション
採用された案
密度
破棄された案
携帯電話の顧客ニーズに関して
議論された2つの案
到達度と協調構造に着目した
設計プロセスの計画評価
製品系列のための共通部品群の最適設計
エアコン室内機
熱交換器
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遺伝的アルゴリズムによる
最適化計算の履歴
性能の最悪値を最適化する
統合デザイン工学部門
生産加工システム工学領域(竹内・石田研究室)
教 授 竹内 芳美 ( takeuchi@ )
准教授 石田 徹
( ishidat@ )
助 教 中本 圭一 ( nakamoto@ )
教員室・研究室 M4-509,506,507,104
HP http://www-cape.mech.eng.osaka-u.ac.jp/index-jp.html
研究室の特徴
現代人の生活には人工物が
もはや不可欠である.現在,人
工物の設計は,3次元CAD
(Computer Aided Design)シ
ステムを利用して,コンピュー
タ内に構築された言わば仮想
の3次元空間で行われること
が主流になってきている.しか
し,設計したモノを実際に利用
できるようにするためには,そ
のモノを現実の3次元空間で
具体的なカタチにしなければ
ならない.本研究室では,この
バーチャルワールド
ような「 仮 想 世界にあるモノ
リ ア ル ワールド
を現実世界で具現化する技術」
について研究開発することを
目的としている.
研究開発の中心は,3次元C
ADの情報をもとに工作機械
を賢くかつ効率的に動かすた
めのCAM(Computer Aided
Manufacturing)システムの開
発である.したがって,ソフト
ウエアとハードウエアのどち
■超精密マイクロ切削加工
応用分野:マイクロマシン,マイクロバイオデバイス,微
小微細光学部品などの創成
■多軸制御切削加工
応用分野:インペラやタービンブレードなどの複雑形状を
有する部品の高精度高能率加工
■複雑穴形状放電加工
応用分野:油空圧機器などの複雑管路の形成
らにも携わりたいと考える意 めが可能な多軸(5軸/6軸) タやパラレルメカニズム型マ
欲的な諸君,あるいは,理論や 制御超精密切削加工機を自由 シニングセンタなどを利用し
頭脳だけでなく手や体を動か 自在に活用するためのCAM て,3次元CADで定義された
し,実際にモノをカタチにする システムを開発し,切削による 複雑形状を効率よく精密に加
ことすなわち作ることに感動 微小複雑形状の高品位加工を 工するためのCAMシステム
を覚える諸君の興味を刺激す 実現している.加工例として, を独自に開発し,研究を行って
5軸制御加工による微小弥勒 いる.例えば,ターボチャージ
る研究に従事している.
研究室の方針は「よく学び, 菩薩や6軸制御加工による高 ャに組み込まれるインペラな
どの複雑形状部品の加工を例
よく遊べ」であり,具体的には, 自由度微細溝などがある.
これらの技術は,バイオデバ 題として,提案した手法の評価
卒論では基礎を習得し,修士で
は我が国だけでなく世界の先 イスの形成,マイクロマシンを と機能拡張を行っている.
端に立ち,博士では世界をリー 構成するマイクロ機能部品や ③複雑穴形状放電加工分野
最も一般的な穴加工法であ
ドできる研究者・技術者を育て 次世代光学部品の創成などに
展開している.
ることが目標である.
るドリル加工では,直線状で断
研究内容(最近の研究成果) ②多軸制御切削加工分野
面が円形の穴が加工されるが,
日本の工作機械技術は世界 もっと複雑な穴形状の形成が
①超精密マイクロ切削加工分野
最近の傾向として,人工物も 最先端の水準にあり,さらに高 多方面で求められている.
小型化が要求されている.そこ 性能化,高機能化されつつある. そこで,放電加工を用いた曲
で,超精密工作機械を用いたマ しかし,このような工作機械を がり穴や断面変化穴の加工法
イクロ切削加工技術を適応し 使いこなすための汎用的で実 を開発してきた.曲がり穴/断
て,微小で微細かつ超高精度の 用可能なCAMシステムは開 面変化穴加工装置の考案,設計,
加工技術について研究開発を 発されていない.
製作を行い,実験により有効性
行っている.
そこで,多くの制御軸数をも の検証を行っている.加工例と
具体的には,並進軸 1.0nm, ち,工具の位置と姿勢を制御で して,U字形曲がり穴や半円形
回転軸 0.00001°単位で位置決 きる5軸制御マシニングセン 断面変化穴などがある.
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統合デザイン工学部門
評価デザイン領域
(久保研究室)
教 授 久保司郎 ( kubo@ )
助 教 辻 昌宏 ( mtsuji@ )
助 教 井岡 誠司 ( ioka@ )
教員室・研究室 M1-224,M1-226, M1-112, M1-114
HP http://www-saos.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
■破壊力学とナノ・メゾ解析・計測に基づいた材料・構造
物の強度評価
■逆問題解析を用いた情報シンセシス手法による境界値
・物性値・支配方程式の同定,および計測・評価・診
断の高精度化
■特異応力場に着目した異種接合材・複合材の安全性評価
と最適化
■マルチフィジックス逆問題の解析と設計
現代社会は多くの機械・構造
物によって支えられています.
その中で,発電プラントや工場
など大型構造物は社会的役割
が大きいのですが,当初の設計
寿命を過ぎてもそのまま使用
され続けているものが少なく
ありません.このような機械・
構造物を安全に使用していく
ためには,構造物に生じた欠陥
を精度よく検出すること,検出
された欠陥からその構造物の
余寿命を精度よく評価する必
要があり,モニタリングの重要
性が高くなっています.
本 研 究 室 で は ,「 大 切 な 人
命・財産を破壊事故から守る」
をキーワードに,(1)き裂の力 を推定する,いわゆる逆問題と の機能を実現することが求め パイプに流入した時の過渡的
学,進展挙動,新材料の力学に なっています.本研究室では世 られます.以上のことを実現す 熱応力の低減問題を対象とし
関する研究,(2)破壊の原因とな 界に先駆けて,逆問題解析を適 るために,異なる材料を接合し てマルチフィジックス逆問題
る構造物中の欠陥・損傷検出方 用した損傷状態等の推定,欠陥 て使用するということが多く の効率的な解析手法の開発に
法の開発,および(1)(2)に必要 検出に関する研究を行い,直接 なってきています.異なる材料 関する研究を行っています.
な逆問題解析手法の研究など, 見ることのできない構造物中 を接合すると,それぞれの材料 ④ 高温疲労き裂の下限界挙動
機械・構造物の健全性維持・安 の欠陥,直接測定できない材料 定数の違いから,接合界面の端 に関する実験および材料と構
全性確保に関する研究を行っ 定数分布,接触圧力分布を逆問 では理論上応力が無限大とな 造物の強度評価
ています.
構造物を長期にわたり安全
題解析手法を用いた測定・診断 る,応力特異性と呼ばれる現象
具体的な研究内容として,
するシステムの開発と高精度 が生じ,接合材の破壊の大きな に使用することを保障するた
① 逆問題解析を用いた構造物 化について研究を行っていま 原因となります.本研究室では,めには,き裂や欠陥が存在して
中の損傷・欠陥,材料物性値, す.さらに,自己損傷検出機能 この自由縁応力特異性に着目 も,疲労き裂が進展しない,い
接触圧力分布等の計測・評価・ をもつスマートストラクチャ して,異種接合材料の強度評価,わゆる下限界が重要となりま
診断手法の開発と高精度化
形状設計手法に関する研究を す.また,高温環境下では,室
の構築を目指しています.
私たちの健康診断と同じよ ② 異種接合材・複合材料の接 行っています.
温で使用した場合とは異なる
うに,機械・構造物の健康(健 合界面端に生じる特異応力場 ③ 熱伝達,熱伝導,熱変形な 現象が生じることがあります.
全性)を診断することは,構造 を対象とした力学解析および ど複雑な現象が絡み合ったマ 本研究室では,下限界に影響を
物の健康(健全性)を維持し, 強度評価に関する研究
寿命を延ばすことに非常に役
ルチフィジックス逆問題の解 与えると考えられている環境
現在使われている機械・構造 析手法の開発
に着目して,大気中と真空中に
立ちます.このため,観察結果 物では強度以外に耐熱性,耐摩
実際の問題では種々の現象 おいて高温疲労試験を行い,高
から構造物の健康状態を推定 耗性,さらには美観など異なる が複雑に絡み合っています.そ 温疲労き裂進展の下限界特性
することが必要になります.こ 特性を同時に求められること のため,複雑な現象が絡み合っ を調べています.
のように,観察結果からその原 が多くなってきています.一方,たマルチフィジックスの問題
因となる構造物の損傷状態を 携帯電話や携帯音響機器など を,効率的に解く必要がありま
推定することは,結果から原因 では限られた寸法の中に多く す.本研究室では,高温流体が
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統合デザイン工学部門
ライフサイクル工学領域 (梅田研究室)
教 授 梅田 靖
( umeda@ )
助 教 福重 真一 ( fukushige@ )
教員室・研究室 M1-521,M1-811A
HP http://www-lce.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
■製品ライフサイクル・シミュレーションに関する研究
■持続可能社会シナリオ・シミュレーションの研究
■ライフサイクル戦略決定支援手法の研究
■環境ビジネス構想支援システムの開発
■ 幾何モデルを用いた製品ライフサイクルモデリングの
研究
■ 使用済み製品のアジア循環モデルの構築
本研究室のテーマは,「環境 素社会の下での将来の製造業
問題を解決するものづくり」で の姿を探る「持続可能社会シナ
ある.地球環境問題の重大性が リオ・シミュレータ」の構築を
認識されつつあるが,その原因 試みている.
の多くは大量生産・大量廃棄型
このほか,製品の一生に渡る
のものづくりにある.そこで, 環境負荷やコストをシミュレ
この問題を解決するような循 ーションするための「ライフサ
環型のものづくりの方法論を イクル・シミュレーター」の開
図 2 試作したサービス指向製品
研究することが社会的に重要 発,環境に配慮したビジネス事
な課題となっている.
例の収集・分析を行い新規ビジ
本研究室では,環境負荷,資 ネス設計を支援する「環境ビジ
源・エネルギー消費,廃棄物量 ネス構想支援システム」の構築,
の大幅な削減と,市民生活・企 3 次元 CAD モデルを利用して
業の経済性の向上とを両立す 環境に配慮した製品構造の設
る製品ライフサイクル・システ 計 を 行 う 「 ラ イ フ サ イ ク ル
ムの実現のための設計理論,設 CAD システム」の開発(図 4
計方法論を研究している(図 1, 参照),使用済み製品のアジア
図 2 参照)
.
循環モデルの構築を行う「アジ
研究の方法としては,現実の ア資源循環シミュレーション」
循環型社会の問題,リサイクル などの研究に取り組んでいる.
問題などを分析し,これを理論 例えば、図 3 は、使用済み製品
図 3 使用済み製品を解体して分析
化,モデル化することを通じて,を解体し,リユースやリサイク
問題の解決方法を探り,計算機 ルを容易にするためにはどの
上でのシミュレーションや製 ようにすればよいか分析して
品の試作・解体などによって理 いるところであり,図 4 は,製
論の妥当性を検討している.
品に使用する資源の量や部品
主な研究課題としては,設計 の数を減らし環境への影響を
者のライフサイクル設計を支 最小限に抑える製品構造を検
援する「統合型ライフサイクル 討するためのシステムの例で
設計支援環境」,および,低炭 ある.
図 4 環境に配慮した製品設計を行う CAD システム
図 1 製品ライフサイクル設計の課題
33
統合デザイン工学部門
加工機構学領域
(藤原研究室)
准教授 藤原 順介 (fujiwara@)
教員室・研究室 M1-523,M3-111
HP http://www-mapro.mech.eng.osaka-u.ac.jp
■難削金属(ニッケル合金,チタン合金,超硬合金),先
進複合材料の切削機構の解析
■快削鋼の切削機構
■画像処理技術による切削機構の解明,先進複合材料の切
削加工のシミュレーション
■高能率穴あけ加工の研究
■繊維強化熱可塑性樹脂シートの成形加工
高強度・高機能材料が新しく 多く,高品位な加工を行うため 維強化プラスチック成形材料
開発されると,切削加工での現 には,切削機構の解明が必要で を用いて,成形加工特性を調べ
象が大きく変わる.これは加工 ある.そこで,画像処理を用い るとともに,生産コストを削減
能率だけでなく,加工精度にも て切削機構を解析する手法を できる新しい加工法を開発し
大きな影響を及ぼし,製品のコ 提案している.具体的には,走 ている.
スト増大へとつながる.そこで 査型電子顕微鏡(SEM)内に設
高精度・高能率で加工すること 置した微小切削装置より得ら
SEM 内切削装置
を目的として,その材料の加工 れた画像を解析し,切削過程に
現象(切削機構)を解明するた おける応力とひずみの分布を
めの研究を行っている.特に削 計算して,切削機構の解明を行
りにくい材料に対して,工具の っている.
摩耗が増加する要因について
も調べている.
金型加工の際には,多くの穴
数値制御工作機械
あけ加工がなされているが,高
また近年,環境に優しい材料 能率で穴明け加工ができる工
の開発が求められているが,そ 具や新しい加工法の開発を行
のような材料の切削では,仕上 っている.
げ面などに問題がある場合が
切削工具と工具磨耗
さらに新しく開発された繊
SEM 内切削における切りくず
★ 機械工学専攻では,文部科学省による「魅力ある大学院教育」イニシアティブと題した補助事業に採択さ
れた『統合デザイン力教育プログラム』のもと,2005 年度から 2006 年度に渡り,大学院教育の実質化に向け
た取り組みを進めました.写真はその一環として新たに導入した授業科目「プロダクトデザイン」でのプロジ
ェクト演習の実施風景です.各学生は,産業界から提供された実践的な設計開発課題にチーム活動として取り
組むことを通じて,課題設定や課題解決のための総合的な方法論や創造的な能力を獲得していきます.
34
統合デザイン工学部門
構造安全評価学領域
(阪上研究室)
准教授 阪上 隆英 (sakagami@)
教員室・研究室 M1-225, M1-226, M1-112
■赤外線計測に基づく新しい非破壊評価手法の開発
■赤外線サーモグラフィによる機械・構造物の非破壊試験
技術の開発
■赤外線応力測定法の高度化に関する研究
HP http://www-saos.mech.eng.osaka-u.ac.jp/
本研究室では,材料・構造物の非破壊評価手法の開発と構造健全性評価に関する研究を行って
いる.特に,赤外線計測および赤外線サーモグラフィによる温度分布計測に基づく非破壊評価
法の開発を中心課題としており,その応用は,機械構造物をはじめ,土木・建築構造物,航空
宇宙構造物から生体材料に至るまで幅広い分野に及んでいる.
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統合デザイン工学部門
精密加工学領域
(榎本研究室)
准教授 榎本 俊之 ( enomoto@ )
教員室・研究室 M4-508,M4-507,M3-111
■高平坦・高精度研磨加工技術の開発に関する研究:シリ
コンウェーハやガラスディスクなどを高平坦かつ高能率
に仕上げられる研磨パッドの開発
■固定砥粒研磨加工技術の開発に関する研究:研磨剤スラ
リーを用いずにガラスなどを高能率に仕上げられる工具
の開発
■高潤滑・長寿命切削工具の開発に関する研究:機能性表
面を有する切削工具の開発
本研究室では「究極のものづ ラスの基板)の実現,また加工
くり」・「新しい付加価値の創 における環境負荷を劇的に低
造」をキーワードに,超精密・ 減することを目的に,これまで
高平坦エッジ形状を実現する研磨
パッドの開発に関する研究
極微細・超平滑な表面を高能率 にはない 全く新しい加工技術
に創るための加工技術,またそ の研究開発を行っている.さら
通常の研磨パッドを使った場合 新たに開発した研磨パッド
を使った場合
工作物エッジ形状
れをコアにした生産システム には切削工具の寿命を飛躍的
の構築に取り組んでいる.研究 に延ばすことを目的に,フェム
分野としては,超精密加工,砥 ト秒レーザにより極微細溝を
粒加工(研磨加工・研削加工)
, 表面に形成した切削工具の開
切削加工そしてトライボケミ 発も実施している.
ストリとなる.
構造制御形固定砥粒
研磨パッドの開発に
関する研究
そしてこれら革新的加工技
砥粒(放出)層
研磨剤スラリーを使うことなく研磨
相当の高品位な加工面を高能率
に得ることのできる研磨工具
具体的には,次世代さらには 術を,本研究室を中心とし,
次々世代に必要とされる超高 様々な研究機関・民間企業と連
平坦なシリコンウェーハ(LSI 携をとりながらダイナミック
やメモリの基板)やガラスディ に研究を推進している.
スク(ハードディスクや液晶ガ
統合デザイン工学部門
36
砥粒保持層
固定砥粒研磨パッド
協
力
講
座
■コマツ共同研究講座 動力機械システム工学領域
竹田・吉田研究室
■コミュニケーションデザインセンター
川崎和男先端デザイン研究室
■フロンティア研究センター グローバル若手研究者
環境熱流体工学研究室
フロンティア研究拠点
■フロンティア研究センター グローバル若手研究者
ナノ構造工学研究室
フロンティア研究拠点
注:メールアドレスの@以下は mech.eng.osaka-u.ac.jp を付けてください.
37
協
力
講
動力機械システム工学領域
(竹田・吉田研究室)
座
■ 油圧システム最適化の研究
■
教 授
竹田太四郎 ([email protected]. )
准教授
吉田 憲司
([email protected].)
助 教
大嶋 健司
([email protected]. )
助 教
野村 和史
([email protected].)
教授(兼)片岡 勲
([email protected])
教員室・研究室 F1-203,M3-124
次世代ディーゼルエンジン燃焼の研究
■ ディーゼルエンジンの排ガス浄化技術の研究
■ ヒートパイプの熱流動力学的研究と性能評価
HP http://www.mech.eng.osaka-u.ac.jp/cooperative.php
研究室のめざすところ
ュレーションにより燃焼現
コマツ共同研究講座(動力
象の詳細な解析と最適燃焼
機械システム工学領域)は新
アームシリンダ
バケット
シリンダ
しい産学連携システムとし
て 2006 年に大阪大学とコマ
旋回モータ
ブーム
シリンダ
ツ((株)小松製作所)が共同
で作った研究室である.
条件を明らかにしている.
ヒートパイプの熱流動力
学的研究と性能評価
ヒートパイプは容器内に
封入された動作流体の蒸
建設機械や大型輸送機械
発・凝縮の相変化に伴う伝熱
は今後ますます全世界で需
流動現象利用して熱を輸送
要が拡大し,我が国の重要な
走行モータ(左・右)
産業として位置付けられて
いる.一方で地球温暖化や環
動力エネルギシステムとしての油圧ショベル
する装置である.わずかな温
度差で大量の熱を輸送する
ことができ,内圧を調節する
境汚染物質低減などの地球
ことにより動作温度が比較
環境保全や省エネルギ化は,
的容易に設定できる等の利
人類にとって早急に解決し
なければならない課題である.
このような背景のなか,本研究
室では伝熱・流動工学の観点か
ら建設機械に対する社会の具
体的なニーズを見据えた基礎
研究を行い,「産業の持続的発
展」と「地球環境保全」の両立
を実現するためのイノベーシ
ョンを目指している.
点があり,熱輸送システムの
油圧システム最適化の研究 次世代ディーゼルエンジン
高性能化や高効率化には有望
建設機械はディーゼルエン 燃焼の研究
ジンで油圧システムを動作さ
次世代ディーゼルエンジン
せることにより仕事を行って の燃焼方式として,従来のディ
いる.この油圧システムで発生 ー セ ル 燃 焼 方 式 と は 異 な り
するエネルギロスは多大で,油 NOx,PM を燃焼レベルで低減
圧システムの最適化は省燃費 でき高効率低公害を実現する
や高効率化には必要不可欠な 画期的な新しい燃焼方式が期
技術である.本研究では,油圧 待されているが,着火制御が困
システムの最適化を図り,高効 難など多くの課題がある.本研
率化を目指すための基礎研究 究では新しい燃焼の実用化の
および実証テストを行なって 可能性を探るため,素反応動力
いる.
学を考慮した燃焼の数値シミ
なデバイスとして注目されて
いる.しかしながら建設機械な
どの動力機械システムへの導
入に向けた問題点や課題点が
指摘されており,本研究ではヒ
ートパイプ内部の相変化を伴
う流動ならびに熱輸送現象を
明らかにすることにより,実用
化への問題点解決や設計指針
を得るために研究をおこなっ
ている.
入熱 (蒸発部)
Heat In
放熱 (凝縮部)
Heat Out
容器 Container
蒸気の流れ
凝縮液(動作液)の還流
Vapor Flow
Liquid Return
内部に蒸気と凝縮液に気液二相流が形成
ヒートパイプの構造と動作原理
ディーゼルエンジンの様々な技術(コマツ HP より)
38
協 協
力 力
講 講
座 座
コミュニケーションデザインセンター
川崎和男先端デザイン研究室
教 授 川崎 和男
准教授 金谷 一朗
教員室・研究室 U4
([email protected].)
■
■
■
■
デザイン理工学
デザイン医工学
デザイン文理学
デザイン政経学
([email protected].)
HP http:// www.kazuokawasaki.jp
デザインとは、もともと目印
ぞれにプロジェクトを掲げデザ
を付けて指示・表示するとい
イン業務を行っている。特に工
う意味のコトバ(designare)
学的側面が強いデザイン理工学、
を語源に持つ。そこから一般
医療との関わりの深いデザイン
に知られているカタチを扱
医工学の二つの領域においては、
う「意匠」と統合的な設計を
実践的なデザイン業務を実現し
担う「計画」という二つの複
ている。医学系研究科に属して
合的な意味を持つことにな
いる未来医療センターとの共同
った。現代では「策略」と訳さ
研究によって実現しているのは、
れ、極めて表現範囲の広いコ
人工心臓の開発から全く新しい
トバとなっている。実際の製
医療機器開発までと、これまで
品としては、自己の思いつき
幻想だった医工連携という言葉
から発想されたアイデアを、 を真の意味で実現したものにな
思いやりのある商品レベル
っている。工学研究科との協力
まで質を高めることそのも
体制によって実現しているもの
の、またはその高められたア
は、バイオメカニックスを運用
ウトプットそのものを指し
したロボティックス、新エネル
示すコトバである。
ギー開発、そしてデザイン手法
本研究室ではデザインを大
の導入による制度設計の企画実
きく 4 つの領域にわけ、それ
務を実践している。
39
協
力
グローバル若手研究者フロンティア研究拠点
講
座
■燃焼排ガスに含まれる粒子状物質の生成メカニズム解
明,粒子解析手法の開発
■燃焼器内部に見られる高圧下での燃焼現象の解明,高圧
燃焼場の数値シミュレーション手法の開発
■純酸素燃焼,燃料改質といったクリーンな燃焼技術に関
する研究
(環境熱流体工学研究室)
特任講師 中村 摩理子 ( m.nakamura@ )
教員室・研究室 M1-713,U6
HP http://www.wakate.frc.eng.osaka-u.ac.jp/nakamura/
近年,環境・エネルギー問題 動を捉えた新しい粒子解析手 連携させながら,高圧下におけ
に対応するため,エンジンなど 法の開発を行っており,将来的 る噴霧燃焼現象をシミュレー
の各種燃焼装置のエネルギー には,すすなどの粒子状物質の ションするための新たな解析
変換効率向上や温室効果ガス, 生成・排出挙動の予測を行うこ モデルの構築を進めている.こ
大気汚染物質の低減が求めら とを目標にしている.また,高 のほか,純酸素燃焼,燃料改質
れている.当研究室では,ミク 圧環境下で連続燃焼実験を行 といったクリーンな燃焼技術
ロな物理現象や化学反応に影 うことができる特殊な高圧燃 に関する研究も行っており,基
響を受ける熱や流体の流れを 焼実験炉を使用して,航空機エ 礎的研究・応用研究の両面から,
予測,あるいは制御し,燃焼装 ンジンなどで用いられる液体 環境負荷低減燃焼技術の確立
置の環境性能を向上させるこ 燃料噴霧の燃焼(噴霧燃焼)に に取り組んでいる.
とを目指している.現在は,ミ ついて研究を行っている.さら
クロな視点で粒子の凝集や運 に,実験とシミュレーションを
噴流噴霧の数値解析例
(左:燃料蒸気濃度分布,
右:噴霧の分布)
すすの顕微鏡写真
(「燃焼生成物の発生と抑制技術」より)
Flame length mm
光学計測システムの例
圧力による噴霧火炎形状の変化
高圧噴霧燃焼実験の様子
レーザーシート法による噴霧断面の可視化画像
40
協
グローバル若手研究者フロンティア研究拠点
(附属高度人材育成センター若手研究者育成部門)
(ナノ構造工学研究室)
講 師 平原 佳織 ( hirahara@ )
教員室・研究室 M1-716,GSE U1w-B112
力
講
座
■ 電子顕微鏡を用いた原子レベルダイナミクス評価技
術の開発
■ ナノ物質構造変化過程のその場観察
■ ナノ物質の電子顕微鏡内非破壊強度測定
■ カーボンナノチューブ強度の局所構造依存性
物質の特性は原子種とその ベルでの構造制御によるナノ 行うことで,それにともなう 気特性の制御が可能となる。
配列(結晶構造)によって決 物性制御を目指している。
まると言って過言ではないが、
構造変化,化学的反応,変形 これらを詳細に調べるために、
ナノ材料物質(特に単体) 挙動などを原子レベルで実時 (1)あらかじめ個々の CNT
ナ ノ メ ー ト ル サ イ ズ の 物 質 の構造を制御するためには、 間観察(その場観察)してい のらせん構造、欠陥量を同定
(ナノ物質)の場合、物質を 対 象 物 質 を 操 作 す る た め の
構成する原子数が少ないため 「手」とともに、その過程を
る。
CNT は、局所構造変調と物
する手法(2)非破壊で強度
が計測できる技術(3)単一
に、欠陥、転移などの局所的 観察するための「目」をどの 性の相関を調べる対象として 物質を精度良く操作する技術
な構造変調や二次構造、表面 ように配置するかが重要な鍵 興味深い材料である。CNT は
(4)通電加工、機械加工、
状態などが物質全体の特性に を握る。構造制御技術の精度 完全結晶であればきわめて優 昇 温 、 な ど に よ り 欠 陥 の 消
きわめて敏感に反映される。 向上のためだけでなく、対象 れた機械特性を示すが、実際 失・導入など任意の局所領域
したがって、ナノ物質では、 物質そのものの構造変化を詳 の材料には必ず欠陥が存在し、での構造制御技術(5)構造
原子レベルでの構造解析を行 細に追うことが重要だからで たった原子 1〜数個分の空孔
変化過程でのリアルタイム構
い、構造と特性の相関を解明 ある。透過電子顕微鏡(TEM) でも強度には敏感に反映され 造解析手法を、同一個体に対
することが重要である。当研 は局所領域の構造をとらえる る。また、電気特性は個々の して原子レベルの精度で行え
究室では、カーボンナノチュ にはきわめて威力を発揮する CNT のらせん構造によって決
ーブ(CNT)をはじめとする
ナノ物質について、構造と特
観察装置である。
る環境の確立に取り組んでい
まる。変形や加熱によって欠 る。
当研究室では、TEM 内で、 陥が発生・移動すると、らせ
性の相関の解明を主テーマと 温度を変化させたり、マニピ ん構造も変わりうる。すなわ
している。最終的には原子レ ュレータを使った物質操作を ち、構造制御により力学・電
41
在学生の声
■ガスタービン燃焼器における
低NOx化のための研究
博士前期課程2年
奥村 桂子さん
なかったり,それだけでは不十
分だったと分かることもあり
ます.しかし,答えのない問題
だからこそやりがいがあり,ま
わたしは,ガスタービンの燃
た,しんどい思いをして苦労し
焼器を対象に,燃焼によって生
た分,実験でよいデータが得ら
成される窒素酸化物(NOx)の
れたときの喜びは大きいもの
排出量を抑えるための研究を
です.
しています.みなさんご存知の
ことかと思いますが,NOx は,
1500℃級産業用ガスター
光化学スモッグ,酸性雨やオゾ
ビン(三菱重工業(株)提供)
燃焼実験で観察している
そして,この研究を進めるな
様子
かで,今自分の勉強しているこ
と,研究していることに対する
ンホールなどを引き起こすと います.これまでの研究で, 考え方も変わってきました.こ
されている大気汚染物質で,高 NOx の生成量を抑えるために の研究テーマを与えられたの
温・高圧で燃焼することにより は,燃料と空気の混合状態が重 は,わたしが本学の学部4回生
わりのある研究を行うことで,
初めて,今自分の勉強している
ことや研究していることが,社
会に役立つためにあるのだと
生成されます.近年,ガスター 要な要素となることが分かっ のときです.熱工学を研究して いうことに気付かされました.
ビンでは,省エネルギーの観点 ています.そこで,燃焼器内で いる研究室に入り,卒業テーマ 「工学」と調べると,「科学の
から高温化が進んでいますが, 燃料と空気が混合する様子を, として与えられました(院でも 蓄積を利用して,技術や製品を
それに伴って NOx の排出量が レーザを用いて可視化すると このテーマについて引き続き 生み出し,社会を豊かにする学
増加するため,それをいかに抑 いうことを行ってきました. 研究を行っています).わたし 問」と書いてあります.この自
えるかが問題となっているの
研究は,ある目的を達成する がもともと本学の工学部に入 分の仕事が社会に役立つとい
です.
ために,仮説を立てて,それを り,機械工学を専攻したのは, う思いも,モチベーションにつ
さて,具体的にどのようなこ 証明しく作業です.はじめから 単にモノづくりの仕事をした ながっていきます.
とをやっているのかというと, 答えは用意されていません.な いという思いからでした.しか
ガスタービン燃焼器を模擬し ので,時には,苦労して実験を し,昨年から,NOx 排出量を
た燃焼器を用いて実験をして 行った結果,その仮説が正しく 抑えるという環境問題にかか
■キャビテーション流れの数値解析
結果はデータ処理の後,グラフ,
図または動画にして現象を解
博士後期課程1年
岡林 希依さん
析します.図はキャビテーショ
ンと渦の相互作用現象を可視
キャビテーションと渦
私は機械工学の中でも特に キャビテーションは流体機械 化したものです.
としてはかなりのレベルにあ
流体力学を専門にしています. の性能低下、騒音、振動、壊食
実験も大変だと思いますが, ります.また,学生であっても,
これから私の研究テーマと研 などの悪影響を及ぼすことが シミュレーションにもそれな
国内外で開催される学会で発
究室での生活について紹介し あり,いくつかの重大事故の原 りの苦労があります.設定した
表する機会が与えられる他,学
たいと思います.
因であることも知られていま 条件が合わなかったり,プログ
術論文を発表することも可能
私の研究テーマはキャビテ す.そのため,液体を用いる機 ラムが正しくなかったりする
です.私も現在,イタリアとイ
ーション現象の数値解析です. 器の設計の際には,キャビテー と,計算が止まってしまいます.
ギリスの国際会議での発表(も
沸騰が温度変化によって液体 ションを考慮しなければなら 以前には2ヶ月間計算が動か
ちろん英語です)を控えており,
から気体に変化する現象であ ないことが多々あります.しか なかったこともあり,本当につ
忙しい毎日ですが,それだけや
るのに対し,キャビテーション し,多くの場合,実験での測定 らかったのですが,興味深い結
りがいのある研究生活を送っ
は圧力の低下によって気体が が技術・コストの両面で困難で 果が得られたときの感動は,他
ています.
発生する現象を指します.
あり,数値シミュレーションが ではなかなか味わうことので
このように,阪大の機械工学
有効な解析手段となります. きないものです.未知のことを
専攻は,やる気さえあれば,い
私はそのための新しい数値解 研究しているわけですから,
くらでも貴重な経験や知識を
析法の開発を目指しています.日々試行錯誤の連続ですが,そ
得ることができる環境だと思
研究している時間のほとん れが研究の醍醐味とも言える
います.
どは,パソコンに向かい,プ と思っています.
ログラムを書くことに費やさ
阪大には,大規模な計算に対
研究風景
れます.プログラムができた 応できる大型計算機があり,計
ら,計算機に投入して計算し, 算機資源は豊富です.研究環境
42
在学生の声
■人に優しいパワーアシストスーツの開発
博士前期課程2年
堀
素史さん
私は機械工学専攻で制御工 補助するという装置で,言わば
学という分野を勉強していま 「着るロボット」です(写真)
.
す.大学でどのような勉強をし
主に介護の現場での,人を抱
ているのか、どのような生活を き上げるという動作を補助す
しているのかについて簡単に る事を目的としていますが、他
紹介したいと思います.
にも脳卒中などによって麻痺
私の研究テーマは,「パワー してしまった手の動きを補助
アシストスーツの開発」です. するような,リハビリテーショ
ンの器具としても利用できる
ことが期待されています.
私たちのパワーアシストス
ーツの特徴は,「空気圧式ゴム
人工筋」と呼ばれるアクチュエ
ータを用いていることです.こ
れは空気の力で筋肉のように
収縮します.ゴムでできている
ため,軽量で柔らかいので,安
全であると考えられ,モーター
パワーアシストスーツ
や油圧のアクチュエータなど
よりも人間が装着するのに適
パワーアシストスーツとは, していると考えています.この
字のごとく装着した人の動を ようなアクチュエータを用い
■ 熱応力低減のための研究
て,人に優しいパワーアシスト
スーツの開発を目指していま
す.
研究では,様々なセンサを体
に取り付けて実験を行い,人間
がどのように動こうとしてい
るか,どのようにアクチュエー
タを取り付ければうまく運動
を補助できるかを考え,そして,
パワーアシストスーツを制御
研究室の BBQ の様子
するためのプログラムを作っ
たりしています.
研究は基本的に生徒の自主
性に任せられており,大学院で
の研究は,先生に言われたこと
をこなすのではなく,自分で考
えて行動することが大切です.
最後に,研究室での生活につ
いて紹介します.私が所属して
いる研究室は.先輩後輩のつな
がりが非常に強く,とても過ご
しやすい研究室です.研究など
の勉学に関しては先輩が後輩
をしっかりと指導して,時には
しに行ったり,スポーツをした
り,時にはバーベキューをした
りと非常に楽しいことが多い
です.外国から来られた先生や
留学生も在籍しており,英語が
必要な時もあります.このよう
に研究室は勉強するだけでは
なく,多くの人と出会い,生活
を共にする場でもあるので,人
間的にも大きく成長できると
感じています.皆さん,ぜひ一
緒に機械工学専攻で学びまし
ょう.
活発な議論もなされます.そし
て勉学以外でも,みんなで食事
いうものは,そのまま答えが教
科書に載っているというもの
博士前期課程1年
内田 賢治さん
私の研究テーマは,「パイプ
ではありませんので,失敗の連
続です.そこが大変でもありま
すし,やりがいでもあると思い
内を流れる流体の温度を最適
ます.
化し,パイプに生じる熱応力を
また,研究成果を発表する機
低減する」というものです.発
会も多くあります.私も,先日
電所などの高温の流体が流れ
フランスでの学会で発表する 学部での生活からは大きく変
る構造物の起動時には,配管内
機会がありました.国際学会と わります.それまでは,授業を
を流れる流体の温度が変化し,
いうことで,発表や資料等は全 受けて帰るといった生活だっ
配管内に不均一で非定常な熱
応力が発生します.この過渡的
な熱応力を低減することは,配
管の寿命を維持し,プラントを
研究でのモデル
と呼びます.これに対し,結果
から原因を推定する問題を逆
フランスにて
て英語でした.英語が得意では たのが,先輩や後輩,先生との
ない私は,準備に非常に苦労し 結びつきが非常に強くなりま
ましたが,良い経験となりまし す.一緒にスポーツをしたり,
た.英文を読むことは,まだで 飲み会をしたりといった研究
問題といいます.私の研究では,
きるのですが,英語を書いたり,室ならではの楽しみがありま
熱応力を最小化するという結
ですが,この問題は様々な物理
話したりしようと思うと簡単 す.また,ある程度,自主性に
果から最適な流体温度という
現象が混ざり合う非常に複雑
な表現さえでてこない自分に 任せられることが多くなるの
原因を求めるということをし
な問題となっています.そこで,
悔しい思いもしました.英語の で,時間を自由に作れます.工
ています.
私の研究では,この複雑な問題
必要さあらためて感じ,良い刺 夫しだいで,いろいろなものを
研究では,基本的にパソコン
を3つの単純な問題に分解し,
吸収できる貴重な期間とする
激となりました.
を用いた解析をしています.図
逆問題解析という手法を用い
最後に研究室での生活につ ことができます.
に示したようなモデルを考え,
て解析しています.通常の原因
みなさんも是非,有意義な学
いて述べたいと思います.研究
プログラムを作ったり,解析解
から結果を導く問題を順問題
室に配属されると,それまでの 生生活を送ってください.
を求めたりしています.研究と
管理する上で非常に重要なの
43
知能・機能創成工学専攻
44
知能・機能創成工学専攻長メッセージ
中谷 彰宏 教授
(知能・機能創成工学専攻)
研究者の自由な発想に基づく知的創造活動としての学術研究は,大学の持つ重要な使命です.古来,
人類は学術研究を通じて自然に対する畏敬と洞察から新しい原理や法則を見出して新しい学問体系を築
くとともに,自然観を拡大して文化を育んできました.また,学術研究は科学技術の発展と結びつき日
常生活を向上させ,社会を豊かにしてきました.このような発展は,研究分野の細分化と深化により実
現されたといえます.しかし,その一方で,人間と自然との共生の時代を向かえ,地球規模の複雑な課
題に直面している現在,真の豊かさを実現するためには,研究の深化とともに,深化した研究を融合さ
せ,新しい知を創造することが求められています.
知能・機能創成工学専攻は,このような融合研究を推進する役割を担う専攻として,平成9年に設立
されました.応用理工系における機械工学専攻,マテリアル生産科学専攻と連携しながら,工学研究の
未来を開拓する研究を行っています.教育面では,大学院教育の改革に取り組み,先導的研究教育融合
プログラムを実施しています.このプログラムでは,座学による知識の習得だけでなく,産業界とも連
携した実践型演習を通じて,国際的に活躍できる,高い研究能力を持った人材の育成を目指しています.
当専攻は,応用理工系の各分野に関連する12研究室で構成されており,それぞれの研究室が機械工
学科目ならびにマテリアル生産工学科目の学部教育にも携わっています.また,各学科目の4年生は,
当専攻の研究室にも配属され,卒業研究を熱心に行っています.
機械工学科目の教育を担当している研究室には,創発ロボティクス研究室,知能ロボット学研究室,
マイクロダイナミクス研究室,共生メディア学研究室,適応ロボティクス研究室,生体模倣ロボティク
ス研究室の6研究室があり,相互に連携しながら研究を進めています.この6研究室では,ミクロな現
象とマクロな特性を連成させるマルチスケール動力学の構築,知能的な行動を表出する身体設計と制御
を融合させたロボット工学,人間と豊かに関わる人間型ロボットによる知的システムの開発,ロボット
を通した知能の創発・発達メカニズムの解明,ユビキタス環境技術を用いた知的システムの構築,生体
システムの機能発現を取り入れたロボットシステムの開発など,先進的研究を進めています.これらの
研究成果は,マスメディアを通じても世界に紹介されています.
45
Adaptive
Machine
Systems
知能・機能創成工学専攻
先導的融合工学講座(機械系)
工学研究の未来を開拓する新しい融合領域分野を創出する。
知能・機能創成工学専攻は機械工学・マテリアル生産科学・生産科学を基盤とし、融合された工学領域
の創造を目指して研究・教育を行っています。専攻は各分野に関連する12研究室で構成されており、
それぞれの研究室が機械工学学科目・マテリアル生産工学科目の学部教育に携わっています。機械工学
科目の教育を担当しているのは下記の6研究室です。
■創発ロボティクス研究室
浅田研究室
■知能ロボット学研究室
石黒研究室
■マイクロダイナミクス研究室
中谷研究室
■共生メディア学研究室
中西研究室
■適応ロボティクス研究室
細田研究室
■生体模倣ロボティクス研究室
松本研究室
(スーパーCOE 生体ゆらぎプロジェクト)
注:メールアドレスの@以下は ams.eng.osaka-u.ac.jp を付けてください.
46
知能・機能創成工学専攻
■ 複数ロボットの協調行動の獲得
■ サッカーを通したロボットの運動知能.
■コミュニケーションを通じた発達的知能獲得モデルの
提案.
■ 音声模倣を通したロボットの言語獲得
■ ロボットと人の情動的コミュニケーション
■ 赤ちゃんロボットの共同注意の獲得
創発ロボティクス研究室(浅田研究室)
教 授 浅田 稔
( asada@ )
助 教 高橋 泰岳
( yasutake@ )
教員室・研究室 FRC1-4F, U1W-B112, M4-202
研究室 HP: http://www.er.ams.eng.osaka-u.ac.jp/
浅田研究室では,知能の創発・ 研究では,パスなどのチームプ (3)認知発達(音声ロボット) にも統合することで表現されて
発達のメカニズムをロボットを レー,集団での知能の創発を目 人間とロボット間のコミュニケ いると考えられます. 身体表現
使って明らかにすることを目的 指しています.最近では,どう ーションをより自然なものにす チーム では,障害物回避や道具
としています.知能には様々な すれば他のロボットの意図を理 る上で,音声言 語は欠かせませ 使用といったタスクの効率的な
定義がありますが,最も重要な 解してパスなどの協調行動,あ ん. 人間の幼児の場合,言語は 実現を可能とするため,ロボッ
ものの一つは環境への適応性で るいはフェイントなどの欺く行 養育者との相互作用を通して自 トに身体表現を獲得するメカニ
す.あらかじめ設計者がトップ 動が可能になるかについての研 然に獲得されていると考えられ ズムの提案と,それを通しての
ダウン的に環境をすべてモデル 究を行っています.
ます. 浅田研究室はこれまで, 人間の発達過程の理解を目標と
化してロボットの行動や反応を
幼児の言語獲得過程を参考にし,しています.
決定するのではなく,環境の変
ロボットには様々な無意味な音
化に対してロボット自身が柔軟
を発する機能を埋め込み,養育
に適切な行動を適応していくシ
者がロボットの発話に意味づけ
ステムを探ることは,従来とは
をしてオウム返しをするという
異なる工学的な視点が必要とな
モデルを用いて,人工喉頭ロボ
ります.
ットに発話を獲得させる研究
浅田研究室では,
「ロボカップ
を行なってきました.また,ロ
グループ」においてサッカーを (2)ロボカップ(ヒューマノイド) ボット側だけではなく養育者と
もども相互の発話を模倣しあう (5)認知発達(共同注意)
題材として複数のロボットの協
調行動の獲得,運動知能の創発, ロボカップのヒューマノイドリ やりとりが変化していくことを 共同注意とは「相手が見ている
「認知発達グループ」において ーグでは,歩行速度やキックの 通じて,より自然な発話をロボ ものを見ること」であり, 人同
コミュニケーションに関わる知 精度など個々のロボットの運動 ットに獲得させようとしている 士のコミュニケーションだけで
能発達の研究が行われています.能力が競われます.浅田研究室 研究も行っています.現在は, なく,人とロボットのコミュニ
ではロボカップにヒューマノイ ロボットの学習機構を検討する ケーション においても基礎と
ドリーグが設立された当初から とともに,人が他者の行動をど なる能力です.発達心理におい
参加してきました.研究として のように理解・模倣するのかに てこの能力は他者の 意図理解
は,人間ならあたりまえのよう ついて明らかにすることを目的 につながると言われていますが,
(1)ロボカップ(中型)
にできてしまう歩行やキックな として研究をしています.
乳児がこの能力自体をどのよう
どの基本動作をどのようにして
に獲得しているかや他の能力の
ヒューマノイドが学習できるの
発達にどのように関わるのかは
かについての研究をしています.
未解明です.そこで乳児の発達
例えば,キックするときの運動
メカニズムの理解と人と適切に
情報と,カメラで捉えたボール
かかわれるロボットの実現を目
ロボカップの中型機リーグでは の行方の関係を学習させること
指して,共同注意の獲得を可能
1チーム 4 台から 6 台のロボッ で,ロボットは好きな方向にボ
にする因果関係をロボット自身
トが前半・後半それぞれ 10 分 ールを蹴り分けることができる
が発見 する仕組みや,空間認知
の試合を行います.浅田研究室 ようになります.
(4)認知発達(身体表現)
では,一度に360度の視野を
複雑な身体を有するロボットが,と共同注意発達への影 響につ
得ることができる全方位視覚,
実環境において適応的な行動を いて研究を行っています.また,
キック機構,その場からどの方
実現するためには,自身の身体 共同注意を含めた視線でのやり
向にも移動することができる全
について理解しておく必要があ とりが人 にどのような影響を
方位移動機構を持つロボットを
ります.人間の身体表現は身体 与えるかを理解するために,人
製作し,ロボカップの世界大会
図式や身体像と呼ばれており, とロボットの視線でのやりとり
では常に上位に入賞する成績を
視覚・触覚・体性感覚などのあ についての心理実験も行ってい
修めてきました.
らゆる感覚を時間的にも空間的 ます.
47
が不正確な時期の母親の声かけ
知能・機能創成工学専攻
知能ロボット学研究室(石黒研究室)
教 授
石黒 浩
( ishiguro@ )
助 教
中村 泰
( nakamura@ )
特任助教 池田 徹志
( ikeda@ )
教員室・研究室 U1w-413, 412
研究室 HP: http://www.ed.ams.eng.osaka-u.ac.jp/
知能ロボット学研究室では, 実際の社会での実証実験を通し
■日常生活において人にサービスを提供する人間型ロボ
ットとセンサネットワークの研究
■人間と酷似したアンドロイドの開発と対人関係・社会
関係の原理探求
■人間型ロボットの開発と人間の認知プロセスの研究
■小型高性能の完全自律型ヒューマヒューマノイドの開
発と産官学連携チーム Team Osaka への参加
センサネットワーク
また研究室内におけるセンサ
未来の人間社会を支える知的シ て,ロボットの新たな可能性を
センサネットワークの研究で ネットワークだけでなく,実際
ステムの研究開発に取り組んで 探索しています.人間酷似型ロ は,全方位カメラや床センサ等 の街や公共施設にセンサネット
います.特に,人間と豊かに関 ボットは,現存するロボットの のセンサの研究開発,多数のセ ワークを張り巡らし,現実の場
わる人間型ロボット・アンドロ 中でも最も複雑な機構を有する ンサからの情報を処理し,人間 で人の行動を認識し,ロボット
イド・学習発達ロボット・生体 クラスのロボットで,見かけだ の行動を認識する分散視覚,分 の活動を支援する研究も行って
摸倣型ロボット(生体摸倣ロボ けでなく,動作も人間に近づけ 散聴覚,分散触覚の研究開発に います.
ティクス研究室)の研究開発と, るための研究を行っています. 取り組んでいます.
人間やロボットの活動をサポー
またこれらのロボットを開発
トする知的なセンサネットワー すると同時に,人がどのように
クの研究開発に力を注いでいま ロボットと関わるかという,認
す.
知の研究にも取り組んでいます.
先
人間と関わるための理想的な すなわち,ロボットは人間を理
機械が人間型ロボットです.人 解するテストベットになるわけ
間型ロボットを実現するには, です.
機械的な仕組みだけでなく,制
御や情報処理の仕組み,さらに
小型自律人間型ロボット
は人間そのものを研究する必要
ロボットの持つ可能性をロボ
があります.また,人間が知的 ット競技を通じて徹底的に追求
な情報システムの恩恵を受けて する研究活動です.ここでは,
生活しているように,ロボット コンピュータボードの設計・製
にもその行動を支援し,ロボッ 作から,ロボットの機構設計・
トの真に知的な動作をもたらす 製作,ソフトウェア開発の全て
ための,環境側の仕組み,すな に取り組み,ロボットの未知な
わち,人間やロボットの行動を る可能性を探究しています.
認識する多数のセンサからなる
特に今後は,飛んだりはねた
センサネットワークを研究する り,人間並みの運動能力を持つ
必要があります.
ロボットの研究開発や,人間の
ようにはいはいから歩行へと,
人間型ロボット
徐々に運動能力を発達させる赤
人間型ロボットの研究では, ちゃんロボットの開発に力を入
人間社会で人間のパートナーと れていきます.
して働く日常活動型ロボットの
人間型ロボットは環境に設置
研究,人間のような高感度で柔 されたセンサネットワークと連
らかい皮膚で全身を覆われたロ 動することによって,人間と関
ボットの研究,人間とは何か, わるために必要な情報を得るこ
人間とロボットの関わりにおけ とができます.またこのセンサ
る本質とは何かを探求するため ネットワークは,ロボットだけ
に開発した,人間酷似型ロボッ でなく,ユビキタス社会におけ
ト(アンドロイド)の研究を行っ る人間の活動支援にも大きな役
ています.
割をもちます.センサネットワ
日常活動型ロボットの研究は,ークと人間型ロボットはどちら
ロボットのハードウェア及びソ も,近未来の知能化社会を支え
フトウェアの開発だけでなく, る重要な技術です.
48
知能・機能創成工学専攻
マイクロダイナミクス研究室(中谷研究室)
教 授 中谷 彰宏
( nakatani@ )
助 教 土井 祐介
( doi@ )
教員室・研究室 M4-303,304,305,104
研究室 HP: http://www.md.ams.eng.osaka-u.ac.jp/
■ナノマシン設計の為のナノメカニズムの基礎的研究
■微細構造を有する変形体の力学理論の探究
■ソフトマテリアルの変形理論に関する研究.
■環境調和型システム設計のための開放系力学モデルの研
究
■形態と機能発現に関する力学モデルの構築とシミュレー
ション
マイクロダイナミクス研究室で うボトムアップ的手法が思い浮 見されることもあります.この ■生体力学におけるモデル化
は,物体の変形を取り扱う変形 かびますが,非常に多数の要素 ようなシミュレーション結果に 生体膜などの生物中に存在する
体の力学をベースとして,固体 のダイナミクスを解析すること 基づいて新しい力学現象や,こ 構造は非常に柔軟でり,また構
力学における変形理論の定式化,は数式を用いた理論解析はもち れらを応用した新しい機構やメ 成分子が保ちながらもその内部
シミュレーション技法の開発お ろん,コンピュータを用いた大 カニズム,デバイスを提案する における配置が刻一刻と変化す
よびこれらの理論・技法の現実 規模数値シミュレーションによ ことも目指しています.
の問題へ応用に関する研究を行 っても事実上不可能です.例え
っています.
る流動性をもつなど,従来の変
以下に,マイクロダイナミク 形体の理論では記述できない多
ば数グラムの固体の変形を原子 ス研究室で行われている具体的 様なダイナミクスを示すことが
私たちの周りに存在する様々な レベルでシミュレーションしよ な研究を示します.
知られています.このような生
物体は自然物・人工物を問わず, うとするとアボガドロ数のオー
体力学における変形の理論の定
様々なスケール・構造・機能を ダの原子の挙動を追跡する必要 ■変形体の力学モデルの開発
式化およびその応用として,赤
持った多様な要素で構成されて があることを考えるとその困難 物体を構成する原子・分子の動 血球などの微小膜小胞,人脳の
います.これらの物体のダイナ さが想像できるでしょう.
ミクスは,物体を構成する多様
きを直接追跡することによって 変形解析などを行っています.
したがって,すべての要素を 物体の原子スケールのダイナミ
な要素の個々の運動の集合と見 追跡するのではなく,ある種の クスを解析する分子動力学シミ ■応用力学・数学による解析
ることができます.しかしなが 情報の圧縮を行う必要がありま ュレーション,マクロな物体変 物体のダイナミクスに関して応
ら,これら要素の運動はそれぞ す.この作業を行う際に,でき 形のシミュレーション法として 用力学・数学に基づいた基礎的
れに独立ではなく,要素と要素 る限り自然な仮定を行い,元の 定式化されている有限要素法な な立場からの理論構築・モデル
の間の相互作用によりそれぞれ 物体の複雑なダイナミクスを記 どを用いて,物体の変形,破壊 解析を行っています.マクロ法
の運動が影響を受けたり,複数 述することができるようにする などのダイナミクスを解析して 則が明らかになっていない場合
の要素が協調的に運動したりす 必要があります.この工夫(モデ います.また,様々なスケール に,ミクロ法則からマクロなダ
ることによって,物体全体の運 ル化)について,数学・力学を駆 のダイナミクスが連成している イナミクスを記述する方法論で
動に大きな影響を与えることが 使して,より自然で効率のよい 力学現象の解析を行うためのマ ある Equation Free 法の変形体
考えられます.
理論およびモデル化手法を構築 ルチスケール解析手法である の力学への応用,非線形相互作
このような複雑なダイナミクス することが求められています. X-FEM やフェーズフィールド 用による格子の特異な振動現
を詳細に解析するためには,
一方,力学モデルによる解析 法を用いて,これまでにない新 象・局在現象の数値シミュレー
個々の要素の運動をすべて追跡 やシミュレーションによって, しいモデル化手法の開発を行っ ション,原子スケールのダイナ
して,これを集約することによ 現実の現象や実験では見出せな ています.
ミクスへの応用に関する研究が
って物体の振る舞いを知るとい かった特異なダイナミクスが発
行われています.
49
知能・機能創成工学専攻
共生メディア学研究室(中西研究室)
准教授
中西
教員室・研究室
英之
( nakanishi@ )
U1w-412
■物理環境で活動する不特定多数の携帯端末ユーザのコ
ラボレーションによって生成される地理的コンテンツの
研究
■センサ・ロボット・ネットワークカメラなどのデバイ
スを介して直感的に物理環境にアクセスするためのユー
ザインタフェースの研究
研究室 HP: http://smg.ams.eng.osaka-u.ac.jp/
本研究室では,センサ・ロボッ で,街中にいる不特定多数のコ タフェースとなる可能性
トなどのユビキタス環境技術の ラボレーションによる地理的コ もあります.そこでネット
発達を背景とし,部屋や街とい ンテンツの生成を促進するため ワークカメラと,本格的に
った物理環境と結びついたメデ に,GPS・カメラ付き携帯電話 量産が開始されつつある
ィアの創成に向けた,インター で撮影された道路沿いの風景を 家庭用ロボットや急速に
ネット上におけるインタラクシ ベクトル地図上でつなぎ合わせ 導入が進んでいる RFID
ョンやコラボレーションの研究 る写真地図構築システムを開発 とを組み合わせて,クリッ
を行っています.
しました.現在,このシステム クやメニュー選択などの
多数のユーザによって自発的 を用いて,地理的なコラボレー GUI 操作で部屋の中の人
に作られるコンテンツであるユ ションに特有の性質を明らかに に話しかけることが
ーザ生成コンテンツが注目を集 する実験を行っています.
めています.その一種である,
可能なシステムを開
監視や見守りの手段としてネ 発しました.現在,
地図上にコンテンツが貼り付け ットワークカメラが普及しつつ このシステムがコミ
られた地理的ユーザ生成コンテ あります.このカメラの映像は, ュニケーションやア
ンツは今後,街という物理環境 部屋の中を観察する手段という ウェアネスに及ぼす
への重要なアクセス手段となっ だけではなく,直感的に部屋に 影響を明らかにする
ていく可能性があります.そこ アクセスするためのユーザイン 実験を行っています.
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知能・機能創成工学専攻
適応ロボティクス研究室(細田研究室)
准教授
細田
耕
教員室・研究室
( hosoda@ )
M4-202
■ 拮抗型空気圧アクチュエータを持つ脚ロボットの設計
と制御
■ 二足歩行の創発
■ 人間型拮抗駆動ロボットアームの開発と制御
■ 人間型バイオニックハンドの開発と適応的マニピュレ
ーションの実現
研究室 HP: http://www.robot.ams.eng.osaka-u.ac.jp/
人間,あるいはもっと一般的に うな遅い伝達速度にもかかわら このような考え方に基づき,わ 骨格構造を模したロボットアー
生物の知能はどのように実現さ ず,人間はさまざまな適応的な れわれの研究室では,人間に類 ムを開発し,適応的な行動を生
れているのでしょうか?生物の ロコモーションを実現していま 似した柔軟な筋肉構造を模擬す み出す手法について研究を進め
知能は,その脳の機能を調べる す.ではこのギャップは,ロボ るために,空気圧で駆動される ています.
だけで理解できるのでしょう ットと人間を含めた生物のどの 人工筋肉を用い,これまでにな
最後に人間の手について考え
か?人間の知能はそっくりその 部分で埋められているのでしょ いタイプのロボットを開発する てみましょう.人間の手は非常
ままコンピュータにコピーする うか?
ことができるのでしょうか?わ
ことによって,生物が持つよう に柔らかく,さまざまな物体に
この疑問に単純に答えること な適応的なロコモーションを実 なじんで,適応的にこれらを持
れわれの研究室では,このよう は非常に難しいですが,われわ 現しようと考えています.
な知能に関するなぞを,ロボッ れの研究室では,その鍵が身体
つことができます.また,皮膚
人間の腕も,その構造はロボ の内部にはさまざまなセンサが
トを創ることによって解き明か の柔軟性にあるのではないかと ットのそれとは違い,非常に複 存在し,物体を握る・持ち上げ
すことを目的としています.
考えています.たとえば走行の 雑な筋肉と骨格の構造になって ることによってそれに関するさ
生物の歩行・走行といった移 場合を考えてみましょう.従来 います.これらの構造は,もち まざまな情報を得ることができ
動(一般的にロコモーションと 考えられてきた走行制御を用い ろん人間のさまざまな知能的な ます.
呼ばれます)は,われわれ生物 る場合,ロボットは着地の瞬間 動きを実現するために非常に重
一方で,これまで作られてき
にとっては何の苦労もないよう をセンサで捉え,その情報をも 要な役割をしていると考えられ たロボットハンドのほとんどは
に思われますが,これをロボッ とに,ロボット全体をうまく動 ますが,これまでのロボットは 金属でできており,しかもセン
トで実現しようとすると,そこ かすようにコンピュータが全て このような構造に関する考察を サはその表面に貼られているだ
に存在するさまざまな問題点が の関節を制御する必要がありま あまりしてきませんでした.わ けでした.このようなロボット
浮き彫りになってきます.たと した.しかし,人間の場合,先 れわれが持つ筋肉・骨格構造は, ハンドは人間に比べて物体に関
えば,これまでの研究では,ロ に述べたように神経伝達速度が 進化の末に獲得されたものであ する情報を得にくいということ
ボットで二足歩行を実現するた 遅いので,ロボットと同じよう り,これらの構造が持つ意味が がこれまでの研究でわかってい
めには,それを制御するコンピ な方法を取っていたとしたら, 理解できれば,たとえばわれわ ます.
ュータは千分の一秒という非常 適応的なロコモーションを実現 れが自然にコップを取るために
われわれの研究室では,人間
に速い速度で,しかも複雑な計 することはできません.しかし, 腕を伸ばす行動が,どうしてそ の実現する適応的な把握行動な
算を必要としてきました.それ 人間には柔軟な筋肉と腱からな のようであるかを理解できるこ どを実現するために,人間型バ
ゆえにロボットには大きなコン る構造があり,たとえば地面に とにつながるかもしれません. イオニックハンドを開発し,こ
ピュータを搭載する必要性があ 対する瞬時の応答は,このよう
人間の腕の構造が持つ知能的 れを用いた適応的マニピュレー
ったのです.一方で人間の場合, な筋肉の持つ柔軟性によって生 な意味を調べるために,われわ ションに関する研究をすすめて
神経の伝達速度はおよそ 0.1 秒 み出されていると考えられます.れの研究室では,人間の筋肉・ います.
程度にしか過ぎません.このよ
51
知能・機能創成工学専攻
生体模倣ロボティクス研究室(松本研究室)
特任教授
松本 吉央
( matsumoto@ )
特任准教授 小泉 智史
( satoshi@ )
教員室・研究室 ナノバイオロジー棟 D808
研究室 HP: //www.yuragi.osaka-u.ac.jp/index.html
■生体模倣型超多自由度腕型ロボットのゆらぎ探索に基
づく制御手法の研究
■生体ゆらぎに基づく細胞分化メカニズムを用いた複数
ロボットによる役割分化の研究
■その他,“ゆらぎ”に基づく“環境の変化にロバスト”
で“人に優しい”“自然な”生体模倣型ロボットシステム
の研究
近年,分子生物学などの分野に ィビティが上がりその行動を取 最終的には複数台のワカマルを た実現されたロボットの動きが
おける研究より,環境の変化に り続けるが,都合が悪くなった 用いた案内システムを実現する 人にどのように受け入れられる
頑強で,またエネルギー効率の らアクティビティが下がり行動 ことを目指しています.
かと調べるため,阪大病院の診
よい生体システムの機能発現に をノイズによりランダムに変化
察室での実証実験も行っており,
は「生体ゆらぎ」が重要な役割 させるという方法を取ります. 4.アンドロイドの自然なふる 診察に陪席するアンドロイドに
を果たしていることが分かって これは,まだ身体モデルを獲得 まいの生成
適切な動きをさせると,患者さ
きました.我々はその知見をロ できていない赤ちゃんが,試行 人間に酷似した外観を持つアン んを癒しコミュニケーションを
ボット工学へ取り入れ,これま 錯誤しながら目標に手を伸ばす ドロイドは,動作も人間に酷似 円滑にする効果があることが分
での“硬い制御”とは異なる新 のとも似ています.このような させないとより不気味な存在に かってきています.
たな仕組みで動くロボットシス 腕の構造モデルがない状態から なってしまうと考えられます.
テムを実現することを目指して スタートして,人間の腕と同様 そこで,人の身体のゆらぎ,視 (本研究室は文部科学省・科学
います.
な柔軟な動きを実現することを 線のゆらぎ,役割のゆらぎなど 技術振興調整費プロジェクト
具体的には,まず「生体ゆらぎ」 目標としています.
を調べ,ロボットに実装するこ (スーパーCOE)『生体ゆらぎ
を活かした適応・頑強システム
とで,従来よりも自然な存在感 に学ぶ知的人工物と情報システ
の原理を構成的に理解します. 2.超単純な1自由度移動ロボ を持つアンドロイドを実現する ム』の研究を推進するために設
そして,それをもとに「生体ゆ ット
ための研究を行っています.ま 置された研究室です)
らぎ」を模擬する材料やデバイ 大腸菌は1自由度の鞭毛アクチ
ス,制御アルゴリズム等を組み ュエータと1つのセンサという
込んだ知的なロボットシステム きわめて単純な構造でありなが
を構築することで,環境の変化 ら走化性(誘引物質へ近づく性
にロバストで,また人に優しい 質)を実現しています.その動
生体模倣・生体適応ロボットを きには直進と方向転換の2つの
実現する「生体ゆらぎ」技術を モードがあり,センサの値の増
開発します.現在の主な研究テ 減により行動選択の頻度を変化
ーマは以下の4つです.
させており,また方向転換には
環境のノイズ(水分子のブラウ
1.超多自由度の生体模倣型ロ ン運動)を利用していることが
ボティックアーム
分かっています.我々はその仕
人間の上肢を模倣した骨格構造 組みをヒントに,1自由度のア
と筋肉(マッキベン型空気アク クチュエータだけの単純な構造
チュエータ)配置を持つ 26 自 のロボットに目標(光源)へ近
由度のロボットアームは,冗長 づく機能を実現させる研究を行
で非線形な性質を持つためモデ っています.
ル化が困難です.このようなア
ームを,生体ゆらぎをモデル化 3.細胞分化モデルに基づく複
した“アトラクタ選択モデル” 数ロボットの役割分化
に基づき制御する研究を行って 万能細胞が生物の体の組織に分
います.アトラクタ選択モデル 化していく様子は,複数のロボ
とは,ロボットの行動に相当す ットが特定のタスクを自律的に
るアトラクタの集合で表現され 行うように変化することと似て
た解空間の中をノイズにより探 います.我々は細胞分化モデル
索するという探索手法で,ロボ に基づき,ロボットの役割を分
ットの状態がよい場合はアクテ 化させる研究を行っています.
52
在学生の声
■アンドロイドとの研究生活
イドに人間らしい反応をさせ 旅行はメンバーのほとんどが
るといったものがありました. 参加します.留学生も多いので,
博士前期課程2年
高野 枝里さん
私は人間の感情や表情といっ 歓迎・歓送会のたびにバーベキ
たものにとても興味があり,ア ューや飲み会があります.学生
私は大学院から本学の学生
ンドロイドが表情によって感 数人で小旅行に行ったり,誰か
となりました.もともとは関東
情表現をしたら人間らしさが の部屋でまったり過ごしたり
の大学に通っていたのですが,
増すのではないかと考え,今は ということもよくあります.同
大学院への進学を決める際,全
アンドロイドの表情を用いた 期だけでなく先輩後輩の仲が
国の大学院で行われている研
研究を進めています.
よく,研究のアドバイスはもち
究を調べ,現在所属している研
私の担当教授は「表情の研究 ろん,一緒にご飯に行ったり遊
究室の研究が最もおもしろそ
は難しいぞ,それでもいいの びに行ったりとても楽しい研
うで興味を惹かれました.
か」と言いながらも,私のやり 究室生活を送っています.
昔から,SF 小説などに出て
たいことを第一に考えてくだ
くる人間と見分けのつかない
さるので,自分の本当に興味の
アンドロイドという存在に興
アンドロイド
味があり,それが実在し大学生
あることを研究することがで
きます.その代わり責任も全て
でも研究対象にできると知っ そっくりですが動作はいわゆ 自分にかかっているので時に
たときは信じられない思いも るロボットらしいカクカクし はつらいこともありますが,と
しましたし,実際自分の目で見 たもので,人間に対する反応動 ても充実した研究生活である
たときはなんて人間そっくり 作も一遍通りでまだまだ人間 ことは胸を張って言えます.
なのだろうと驚き,感動しまし というには不自然な状況です. 最後に,研究以外の研究室生
これまでのアンドロイド研究 活についても少しだけ述べて
現在の私の研究テーマは,ア には,人間の動作をコピーして おきます.私の研究室は教授・
ンドロイドの動作を生成する 動作を生成するといったもの 准教授・助教・秘書の方,そし
た.
研究室旅行
ことです.研究室で開発された や,アンドロイドのまわりに多 て学生を含めかなりの大所帯
アンドロイドは,見かけは人間 数のセンサを使用し,アンドロ です.春のお花見や夏の研究室
■ロボットと私
した.4 年生の間に開発した 2 授業に出て午後から夜中まで
足ロボットを使って歩行と跳 研究室で研究に取り組むとい
博士前期課程1年
坂口 雄紀さん
躍を実現することはできまし う生活を送っています.研究ば
私の研究テーマは『空気圧人 が,まず初めにロボットを製作 たが,走行は未だ実現すること かりしているのではなく,休み
工筋を用いた 2 足ロボットの するところから研究は始まり ができていません.これからは の日には先輩後輩と一緒に出
開発』です.ホンダの ASIMO ました.新しい試みなので実験 走行の実現が研究の目標とな かけたりすることもしばしば
が 2 足ロボットとして有名で するロボットも全て自分で作 りました.
すが,一般に 2 足ロボットの多 らないといけません.今までに
です.また,スポーツも比較的
研究課題には定期試験のよ 盛んで野球やサッカーをして
くはモータの回転の力を使っ ロボットの設計をやったこと うに答えが用意されている訳 います.私の研究室はメンバー
て動作しています.それに対し はもちろんありませんので,始 ではありません.自ら答えを探 が多く,イベントには大勢が集
て私の研究室では「空気圧人工 めてのことだらけで大変な作 すための試行錯誤の連続です. まり非常に賑やかで楽しいで
筋」というものを使ってロボッ 業でした.元々ロボットが作り 正しい答えが用意されていな す.このように私は非常に充実
トを動かしています.「空気圧 たくて現在の研究室に入った い分,自分の立てた仮説がたと した研究生活を送っています.
人工筋」とはその名の通り,人 こともありこの大変さは全く え間違っていたとしても,その
工の筋肉で,空気を使って動物 苦になりませんでした.ロボッ 間違えた事すらも答えへの道
の筋肉のように伸縮すること トを自分で設計できるという 筋となり無駄にはなることは
ができます.この人工筋を使っ ことは自分の考えを直に反映 ありません.真剣に取り組めば
て 2 足ロボットによって歩行 させることができ,この研究の 取り組んだだけ返ってくるの
や跳躍さらには走行といった 醍醐味の一つとも言えます.そ で非常にやりがいを感じて研
運動を実現させようという研 して,設計だけでなく,この他 究をしています.
究を行っています.
にもロボットを制御するため
日々の生活の大半は研究室
学部 4 年生から現在の研究 の電子回路を作るために半田 で過ごしていますので研究室
室に所属しており最初から同 付けをしたり,プログラムを作 での生活についても触れなけ
じ研究テーマを扱っています ったりと様々な作業を行いま ればなりません.普段は午前中
53
開発したロボット
大阪大学 工学部 応用理工学科 機械工学科目
大阪大学大学院 工学研究科 機械工学専攻,知能・機能創成工学専攻
大阪大学 大学院工学研究科 機械工学専攻
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1 Tel. 06-6879-4486(事務室)
大阪大学 大学院工学研究科 知能・機能創成工学専攻
〒565-0871 大阪府吹田市山田丘2-1 Tel. 06-6879-7540(事務室)
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