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堆肥・汚水の 簡易処理施設の事例
第Ⅱ章 堆肥・汚水の 簡易処理施設の事例 第 Ⅱ 章 堆 肥 ・ 汚 水 の 簡 易 処 理 施 設 の 事 例 1.簡易処理施設の事例の概要 堆肥化施設 施 設 名 実施機関名 概要 ページ 詳細 ページ 1 シートを利用した 簡易堆肥発酵施設 群馬県畜産試験場 17 24 2 通気性シートを用いた 簡易堆肥化施設 青森県農林総合研究 センター畜産試験場 18 30 3 シート利用ふん尿処理施設 北海道立畜産試験場 19 34 実施機関名 概要 ページ 詳細 ページ 汚水処理施設 施 設 名 4 おが屑ろ過装置と土壌浄化を (独)農業・生物系特 組合わせた畜産汚水浄化施設 定産業技術研究機構 20 47 5 土壌を利用した 尿汚水浄化処理施設 群馬県畜産試験場 21 54 6 シート利用スラリー・ 尿貯留施設 北海道立根釧農業 試験場 22 61 ふん尿処理一口メモ 「家畜排せつ物法」で定める家畜排せつ物の管理方法に関する基準 ア 家畜排せつ物は構造設備に関する基準に適合した管理施設において管理すること。 イ 管理施設の定期的な点検を行うこと。 ウ 管理施設の床、覆い、側壁または槽に破損があるときは 、 遅滞なく修繕を行うこと。 エ 送風装置等を設置している場合は、当該装置の維持管理を適切に行うこと オ 家畜排せつ物の年間の発生量、処理の方法及び処理の方法別の数量について記録する こと。 1 シートを利用した簡易堆肥発酵施設 施設の特徴 畜産農家で手作りが可能である。地面に防水シートを敷き、その上に土を乗せた簡易堆 肥盤を作り、堆肥には透湿性シートを上掛けし、送風装置を付けた堆積発酵施設である。 排汁溜がないため、原料水分は必ず 70%未満にする必要がある。 15 ㎝ 150 ㎝ 施設の構造 4m 地面に遮水シートを張る 簡易堆肥盤の完成 適応できる畜種・規模・設置可能地域 適 応 畜 種 牛ふん等(ただし、排汁が出ないように積み込み前に水分調整が必要) 規 模 小規模(乳牛 40 頭以下)に適している 設置可能地域 厳冬期の平均気温が 0℃以上の地域 処理方法等 排汁が出ないよう予め水分 70% 未満に調整した牛ふんを堆肥盤に積み込み、被覆シー トを掛けて堆肥化を進め、約 1 ヶ月で発熱発酵は終了する。切り返しは行わない。 処理経費 設 置 費 1,523 円 /m²、6,090 円 / 頭、乳牛 ランニングコスト 12 円 / 頭・日(乳牛) (シート、 電気代) (ブロア等の償却費は含まない) 群馬県畜産試験場 ➡詳細は 24 ページ 第 Ⅱ 章 堆 肥 ・ 汚 水 の 簡 易 処 理 施 設 の 事 例 の 概 要 2 通気性シートを用いた簡易堆肥化施設 施設の特徴 堆肥盤上に堆積した堆肥の中に通気用の暗きょ管を配し、通気性シートを覆うことによ り、切り返しを行わなくても3ヶ月程度で堆肥化が進む。 施設の構造 適応できる畜種・規模・設置可能地域 適 応 畜 種 牛ふん等 規 模 堆肥盤設置面積があれば規模の制限はないが、比較的小規模に適する 設置可能地域 積雪の少ない本州以南に適する 処理方法等 予め水分 70%程度に調整した堆肥原料をカマボコ状に堆積し、通気性シートで覆い、 その上に防鳥ネットを張って、土でシートを押さえる。堆積後は切り返しは行わず約3ヶ 月で堆肥化が進み、その間の作業はない。 処理経費 設 置 費 1,970 円/ m²、11,800 円/頭(肉用牛:繁殖牛) ランニングコスト 10 円/頭・日(肉用牛) (償却費のみ) 青森県農林総合研究センター畜産試験場 ➡詳細は 30 ページ 3 シート利用ふん尿処理施設 第Ⅱ章 施設の特徴 水分の多いふん尿を堆積して排汁が引き抜ける構造になっている。ふん尿の上部と底部 と集水管、床土、盛土、被覆シート、排汁槽からなっている。 施設の構造 適応できる畜種・規模・設置可能地域 適 応 畜 種 牛ふん 規 模 小規模に適している 設置可能地域 全地域 処理方法等 ふん尿を処理施設に堆積していき、排汁を引き抜く状態で長期の堆肥化処理を行う。夏 季は堆肥の切り返しを行うが、冬季は堆積するだけで切り返しを行わないこともある。堆 肥の貯蔵施設として利用する場合もある。 処理経費 設 置 費 1,206 円 /m²、20,100 円 / 頭、乳牛 ランニングコスト 9.3 円/頭・日(乳牛) (償却費のみ) ふん尿を 12 ヶ月堆積した場合で、6 ヶ月堆積ではこれより低コストになる。 北海道立畜産試験場 ➡詳細は 34 ページ 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の概要 をシートで覆うことで、雨水の浸入と排汁の地下浸透が防止できる。施設は、遮水シート 4 おが屑ろ過装置と土壌浄化を組合わせた畜産汚水浄化施設 施設の特徴 汚水をおが屑槽に散布して物理的、生物的にろ過を行って、BOD、SS を除去し、さら に土壌槽を通すことにより窒素はかなり低減できる。ただし排水基準にまで窒素を低減さ せるためには、脱窒槽等の設置が必要となる。 施設の構造 原水、ろ液、処理水の比較 おが屑ろ過装置の内部 適応できる畜種・規模・設置可能地域 適 応 畜 種 豚及び牛の固液分離した尿汚水 規 模 豚 1,000 頭(4,000 ℓ / 日)と牛 50 頭(750 ℓ / 日)程度 設置可能地域 豪雪、寒冷地及び台風常襲地を除く地域 処理方法等 おが屑槽は攪拌機により 1 日 1 回攪拌し、汚水をろ過する。そのろ液を土壌槽に通し浄 化処理する。おが屑や土壌は処理期間が長くなると目詰まりするので交換する必要がある。 処理経費 設 置 費 10,572 円 / 頭(飼養豚 1 頭当たり) (配管、電気工事含まず) ランニングコスト 258 ∼ 332 円 / 頭(出荷豚 1 頭当たり) (償却費は含んでいない) (独)農業・生物系特定産業技術研究機構・生物系特定産業技術研究支援センター ➡詳細は 47 ページ 5 土壌を利用した尿汚水浄化処理施設 汚水を沈降槽とおが屑ろ過槽で前処理を行い、その後、土壌槽とモミ殻槽で浄化と脱窒 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の概要 処理を行う。処理水は放流可能である。 施設の構造 沈降処理タンク・おが屑ろ過槽の模式図 土壌槽の模式図 適応できる畜種・規模・設置可能地域 適 応 畜 種 ふん尿分離した豚舎汚水等 規 模 肥育豚で 500 ∼ 700 頭程度 設置可能地域 第Ⅱ章 施設の特徴 関東より南の地域で標高が 300m 以下の平地(冬期間常に積雪がある地域 及び台風常襲地は不可) 。 処理方法等 毎日の管理として、各処理装置の運転管理や薬品等の注入、土壌槽への汚水散水、各処 理槽への汚水移送を 30 分∼ 1 時間程度行う。他に、毎週、沈降処理槽の沈降汚泥の処理、 消毒剤やメタノールの補充、2 ヶ月毎に土壌槽表面の耕耘作業が必要である。 処理経費 設 置 費 11,000 円 / 頭(飼養豚 1 頭当たり) (土地整地費等は含んでいない) ランニングコスト 552 円 / 頭(出荷豚 1 頭当たり) (償却費は含んでいない) 群馬県畜産試験場 ➡詳細は 54 ページ 6 シート利用スラリー・尿貯留施設 施設の特徴 遮水シートを利用したスラリー・尿貯留施設で、貯留したスラリー・尿の上に雨水分離 シートを覆い、雨水の流入と臭気やスカムの発生を防止する施設である。 施設の構造 (注)スラリー搬入・搬出用固定パイプは、図のようなスラリー搬入・搬出用ホースで代替 可能であるが、冬期間の凍結がひどい地域は固定パイプの方が良い。 適応できる畜種・規模・設置可能地域 適 応 畜 種 牛舎汚水等 規 模 中小規模に適する 設置可能地域 特に制限はない 処理方法等 遮水シートを設置したスラリー・尿貯留施設にはスラリーの投入と排出用のパイプを設 置し、十分に攪拌したスラリーを投入する。スラリーの上面には雨水分離シートを覆い、 風で飛ばないように水を張る。 処理経費 設 置 費 ランニングコスト 4,700 円/ m³、55,000 円/頭、乳牛(自力施工の場合) 37 円/頭・日(乳牛)(スラリー搬入、搬出のための施設機械等の償 却費、燃料費含む) 北海道立根釧農業試験場 ➡詳細は 61 ページ 2.簡易処理施設の事例の詳細 第Ⅱ章 (1)堆肥化施設 良い堆肥の条件 家畜ふん堆肥の品質基準 基準項目 1)取り扱いやすい性状であること 基準値 有機物 60% 以上* ①水分が適度で、臭気が強くない 炭素 / 窒素比 ②病原菌・寄生虫卵などを含まない 窒素(N) 1% 以上* りん酸(P2O5) 1% 以上* ①施用後、急激な分解をしない 加里(K2O) 1% 以上* ②窒素飢餓を生じさせない 銅 ③生育阻害物質や有害物質を含まない 亜鉛 1,800ppm 以下* 水分 70% 以下** 2)土壌・作物にとって安全であること ④塩類濃度が低い 5mS/cm 以下** 植物の生育に異常を認めないこと 3)土壌・作物にとって有効であること *乾物当たり ①植物に養分を供給する **現物当たり ②土壌の化学的及び物理的性質を改善 引用文献 する ③土壌中の生物活動を維持・増進する 600ppm 以下* 電気伝導率(EC) ⑤植物病原菌等や雑草の種子を含まない 30 以下 全中 「有機質肥料等品質保全研究会報告書 (平成 6 年 3 月)」 堆肥の品質表示の義務と成分の基準値 肥料取締法では、特殊肥料として届出した堆肥等には品質表示が義務付けられています。 品質表示を要する項目には、窒素、りん酸、加里、銅、亜鉛及び石灰の各全量、炭素 / 窒素 比があります。これらの基準値は設定されておらず、ヒ素、カドミウム及び水銀についての み上限値が定められており、堆肥乾物 1kg 当たり、それぞれ、50、5 及び 2mg 以下とな っています。ただ、家畜ふんの堆肥の場合には、これらの重金属が混入することは考えにく いです。 全国農業協同組合中央会(全中)により、公の基準ではありませんが推奨される堆肥の品 質基準が示されています。これには、上記の重金属等の規制に適合することの他に、表に示 したような基準が設定されていますが、鶏ふん堆肥はこの品質基準からは除かれます。 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 ふん尿処理一口メモ [事例 1(堆肥) ] 1.施設の名称 シートを利用した簡易堆肥発酵施設 2.施設の特徴 コンクリートを使わず数年間の使用に耐え、畜産農家が消耗品を購入して手作りできる。重労働 を要する切り返しを省略し、発酵済み堆肥を水分調整用として再利用できるまで乾燥させられるこ とを目標にした堆肥発酵施設である。 3.適用できる畜種及びふん尿の形態 ふん尿分離の繋ぎ飼い牛舎のふん処理を意識した方法である。ふん尿混合や他の畜種でも応用可 能と考えているが、未検討である。 4.適用できる規模、処理能力 設置する場所が農地の場合には作物不作付け地となる。農地法の仮転用(一時転用)の対象外と なる 200 平方メートル以下を目安とし、乳牛 40 頭以下を適用の規模としている。 5.適用可能地域 ふんの堆肥化が必要な地域。厳冬期の平均気温が 0℃程度、20 ∼ 30cm 程度の降雪には対応可能 であるが、豪雪地域の冬季条件下での適用は不明。 6.主な仕様または仕様書 乳牛 40 頭(ふん発生量 2t/ 日)の仕様書 仕様は、地面に巾 4m 程度の遮水性のあるシートを敷き、その上に礫が無い土をのせ厚さ 15cm 程度にトラクターやローダーで圧密する。ただし、圧密を過度に行うと遮水シートを破損させる恐 れがあるので、注意が必要である。圧密層の表面に径 48 ㎜の足場パイプをパイプジョイントでつ なぎ 4 列を埋め込む。中央の 2 列は堆肥に埋没する部分に穴をあけ、末端にキャップをしてブロア で送風する。送風量は堆積時の容積 1 立方メートル当たり毎分 30 ℓ程度で連続送風とする。送風 時の静圧は戻し堆肥で水分調整したときで 0.4kPa 程度であり、静圧と必要な送風量に合わせてブ ロアを選ぶ。この上に水分 70% 未満に調整したふんを高さ 150cm 程度に積み上げる。被覆シート (穴あきポリエチレンシート、 防水・透湿性不織布シート等)をかけて固定する。切り返しはしない。 70℃程度に発熱し、1 ヶ月強で発熱発酵が終了する。透湿性の高いシートを上掛けすると水分 50% 程度の堆肥ができる。40 頭の場合には図 1 のように 40 平方メートルの簡易堆肥盤を 4 組以上作り、 10 日目毎に次の積み込みをする。 この堆肥製造法は、 1 週間から 10 日程度のふんを貯留場所(既存施設またはパイプハウスで新設、 ここでは説明省略)に敷いた水分調整材上に貯めておき、混合後上記の簡易施設に積み込む方式を とる。 み込むことを想定したものである。 注意が必要である。 7.設計図 名 称:シートを利用した簡易堆肥発酵施設 処理量:乳牛 40 頭(ふん発生量 2t/ 日) 面 積:160m² 以上(10m × 4m の堆肥盤を 4 組以上) 図 1 シートを利用した簡易堆肥盤平面図 6 ∼ 10 ㎜ 約 100 ㎜ 図 2 通気用穴あき足場パイプの構造 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 このため、排汁が生じる可能性のある場合は、事例 2 のような排汁溜や集水管が必要になるので 第Ⅱ章 本事例では、堆肥化の過程で排汁が出ないように予め水分含有率を低く調整した上で、施設に積 被覆シート 遮水シート 足場パイプ 穴あき足場パイプ (送風用) 4m 図 3 堆肥製造時の断面図 8.写真 写真 1 地面に遮水シートを張る 写真 2 簡易堆肥盤の完成 写真 3 積み込み 写真 4 積み込み終了 (注)点検管理のため、遮水シートの敷設範囲が明確になるようシート縁部を地表に出す、または 目印を設置するなどの工夫が必要である。 9.イニシャルコスト 簡易堆肥盤 160m²(乳牛 40 頭)で自家施工の場合 160m² × 60 円 /m² = 被覆シート(穴あきポリエチレンシート) 240m² × 40 円 /m² = ブロア 9,600 円 9,600 円 50,000 円 足場パイプ(48 ㎜) 27,000 円 25m × 800 円 / m = 20,000 円 バルブ 4 ヶ× 3000 円 / ヶ= 12,000 円 Y 継ぎ手、ホースバンド等 5,000 円 合計 133,200 円 (133,200 円÷ 160/m² = 833 円 /m²) (133,200 円÷ 40 頭= 3,330 円 / 頭) 参考 : 防水・透湿性不織布被覆シートの場合 被覆シート(防水・透湿性不織布) 240m² × 500 円 /m² = 120,000 円 その他は同上 合計 243,600 円 (243,600 円÷ 160/m² = 1,523 円 /m²) (243,600 円÷ 40 頭= 6,090 円 / 頭) (参考) 設置は作業者 1 人で 10 日あれば行え、 自家施工が十分可能である。ローダーバケットが要る。 10.設計・施工上の留意点 ①簡易堆肥盤の面積に余裕を持たせると管理作業が楽になる。 ②堆肥盤の造成時は、シートには土を載せてから作業機が上がるようにする。 11.処理方法(運転方法) この堆肥製造法は、1 週間から 10 日分のふんを貯留場所(既存施設またはパイプハウスで新設、 説明省略)に敷いた水分調整材上に貯めておき、混合して水分 70% 程度とし、簡易堆肥盤に積み 込む。被覆シートをかけて固定する。発酵により 10 日程度で堆積高さは約 2/3 に減少するので、 被覆シートを固定し直す。1 ヶ月強で発熱発酵は終了する。切り返しはしない。 12.処理時(運転時)の留意点 ①汁がしみ出すと通気パイプを詰まらせるので、水分は 70% 未満で堆積する。水分 75% でも 60℃以上の発熱がみられるが、汁がしみ出す、発酵期間が長くなる、できあがり水分は 65% 程度と高くなる等の欠点が多い。 ②積み込みと搬出時の機械作業は、堆肥盤の長辺方向に行う。短辺方向から行うと堆肥盤の表面が壊れる。 ③小雨程度までは積み込み及び搬出作業は可能であるが、大雨の時は延期する。 ④送風系統のバルブの前後に小穴を開けビニルチューブを U 字に曲げて水を入れて作製した簡 易圧力計をつけると、バルブの開閉による送風量の制御や穴開け足場パイプの目詰まりの状況 把握が可能となり便利である。 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 27 本× 1000 円 / 本= ホース 第Ⅱ章 遮水シート(ポリエチレンシートの場合) ⑤足場パイプ等は繰り返し使用すると腐食するが、安価なので交換する。 ⑥被覆シートの使用回数は、穴あきポリエチレンシートでは再利用が難しい。防水・透湿性不織 布では数回は確実に再利用可能である。 13.ランニングコスト(処理経費) ①穴あきポリエチレンシートを被覆するとき 被覆シート代 電気代(0.4kW ブロアとして) 9,600 円× 365 ÷ 40 = 87,600 円 / 年 0.4 × 24 × 365 × 16 円= 56,064 円 / 年 合計 143,664 円 / 年 乳牛 1 日 1 頭あたり合計の処理経費 143,664 円÷ 365 日÷ 40 頭= 9.8 円 *注:できあがり堆肥をそのまま水分調整資材にするには水分が高く、乾燥するか水分調整資材を別途用 意する必要がある。 ②防水・透湿性不織布シートを被覆するとき 被覆シート代(耐用年数 1 年として) 電気代(0.4kW ブロアとして) 120,000 円 / 年 0.4 × 24 × 365 × 16 円= 合計 56,064 円 / 年 176,064 円 / 年 乳牛 1 日 1 頭あたり合計の処理経費 176,604 円÷ 365 日÷ 40 頭= 12 円 *注:できあがり堆肥は水分を 50% 程度まで落とせるので、 そのまま水分調整資材に利用する。水分調整資材費用は不要となる。 (注)①、②とも償却費は含んでいない。 14.作業時間 10 日に 1 回の攪拌混合と堆肥盤への積み込み、積み込み後 10 日目の被覆シートの張り直し、40 日後の搬出のみの作業である。切り返し作業はいらない。 15.処理物(できあがり製品)の品質 できあがり堆肥は切り返しをしないため 層状構造となり上層部ほど水分が高い。 全層平均で穴あきポリエチレンシートでは 60% 台に、透湿性の高い不織布シートで は 50% 程度となる。発酵温度も上層部 ほど高いが、下層部でも 60℃で 1 週間 以上は確保できる。有機物分解率は 35 ∼ 40% を確保できる。 成分組成は原料に依存する。できあが り堆肥を水分調整資材に再利用する方 向で堆肥作りを進めたい。それによって、 腐熟程度は高まる。 出来上がり堆肥の状況(用いた被覆シートの種類による違い) 不織布シート 地面から 色 地面から 色 の距離(cm) 水分 (%) 78 80 ∼ 100 暗褐色 67 55 ∼ 085 黒褐色 73 15 ∼ 080 淡褐色 47 20 ∼ 055 暗褐色 53 00 ∼ 015 茶褐色 57 00 ∼ 020 茶褐色 50 *全層平均水分 53% 全層平均分解率 36% *全層平均水分 63% 全層平均分解率 37% 17.問合せ先 担当者:山田正幸、松本尚子 機関名、所属、部署等:群馬県畜産試験場 畜産環境グループ 住 所:群馬県勢多郡富士見村小暮 2425 2222、FAX:027 288 2243 18.施設等の見学先 住 所:群馬県勢多郡富士見村小暮 2425 担当者:山田正幸、松本尚子 電 話:027 288 2222、FAX:027 288 2243 見 学:可(毎週水曜日のみ) 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 淡褐色 特許等はとらない。農家が自作してほしい。 288 (%) 85 ∼ 103 16.当該施設の設計施工法の利用の可否 電 話:027 の距離(cm) 水分 第Ⅱ章 穴あきポリエチレンシート [事例 2(堆肥) ] 1.施設の名称 通気性シートを用いた簡易堆肥化施設 2.施設の特徴 畜ふんと副資材を混合して発酵スタート水分とし、 通気性(透湿防水)シートで覆うことにより、 切返しを行わずに 3 ヶ月程度で堆肥化が進む。 特徴は、水は透さないが空気や水蒸気を透すシートで堆肥原料を覆うことにより、堆肥の発酵が 進み、温度が 70℃以上に上昇し水分は通気性シートを透り蒸散する。本シートは適度な厚みがあ るため保温性も有していると考えられ、3 ヶ月程度で完熟堆肥が生産される。 堆肥原料の水分含量が 70%以上になると排汁が出ることがあるため、排汁溜を設けているが、 堆肥原料の水分含量は 70%以下にすることが望ましい。 雨 水 発酵熱による水分蒸発 堆 肥 通気性シート 遮水シート 発酵温度の経時的変化 3.適用できる畜種及びふん尿の形態 畜産試験場では乳牛ふんで試験を行ったが、他家畜でも適応可能と思われる。ふん尿混合でも副 資材を十分混合し発酵スタート水分に調整すれば堆肥化は可能と考えられるが、ふん尿分離のふん が適している。 4.適用できる規模、処理能力 設置する敷地があれば頭数規模に限界はないが、肉用牛の繁殖農家等の比較的小規模な経営への 第Ⅱ章 適用を想定している。 冬期間は発酵温度がやや低下する傾向があるが、これは積雪による圧密で堆肥原料の間隙が狭ま り、通気性が低下することが原因と考えられる。このため、冬期間の処理については、積雪の少な い本州以南が適用可能地域と想定される。 6.主な仕様または仕様書 特になし 7.設計図 通気性シート 通気性シート 暗きょ管(底部から 1/2) 暗きょ管 暗きょ管(底部から 1/4) 盛土 遮水シート 遮水シート 排汁溜 砂 盛土 排汁溜 (注)盛土の圧密を十分に行った上で、遮水シートの敷設を行わないと、盛土が不等沈下し、 遮水シートが破損する場合が考えられるため、注意が必要である。 8.写真 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 5.適用可能地域 9.イニシャルコスト 〈1 基当たりの資材費(45m²) 〉 資 材 名 数 量 金額(円) 備 考 山砂(排汁回収用) 5m³ 09,450 通気性シート 1 枚(幅 7m × 19m) 51,870 肉用牛繁殖 15 頭規模では 遮水シート 1 枚(幅 5.4m × 17m) 10,030 冬期間(180 日)の堆肥化に 暗きょ管(通気用) 45m(直径 50 ㎜) 14,175 防鳥ネット(鳥害防止用) 1枚 03,150 土嚢(シートすそ押さえ用) 50 個程度 (手作り) 合 計 2 基必要である。 経産牛 50 頭、子牛・育成 牛 40 頭 の 経 営 で は 年 間 14 基必要である。 88,675 (参考)設置に要する作業人員は、実人員 3 人、作業時間は 1 日、必要な機材はホイルローダー、 トラクター(バケット付)である。 10.設計、施工時の留意点 (1)堆積場所 緩やかな勾配をつけた盛土面に防水シートを敷き、その先に排汁溜を設置する。この際、盛 土はローダー等で十分に圧密し、盛土面に礫などの突起物がないよう滑らかに成形することが 必要である。 (2)遮水シートの保護 排汁の回収と遮水シートを保護するため、山砂を敷く。 (3)通気用暗きょ管の埋設 発酵促進のため堆積高 50cm 毎に暗きょ管を長軸方向に埋め、両端を堆積層の外側に露出させる。 (4)原料ふんの堆積 水分を 70% 程度に調整した原料を下底幅 3m、 高さ 1.5m、 長さ 15m のカマボコ状に堆積する。 (5)通気性シートの被覆 通気性シートで被覆した後、防鳥ネットで覆い土嚢などでシートを押さえる。 11.処理方法(運転方法) 堆積後切返しを行わずに約 3ヶ月間放置するだけで堆肥化が進むため、堆肥化途中の作業は不要である。 12.処理時(運転時)の留意点 カラスによるシートの破損状況をチェックし、破損している場合は補修を行う。必要に応じカラ ス避けの対策を講ずる。 排汁は排汁溜めから溢れ出ないように定期的に汲み取り、圃場に還元する等適正に処理する。 13.ランニングコスト(処理経費) ※繁殖牛 15 頭規模試算(夏期放牧) 項 目(内訳) 通気性シート償却費(103,740 円÷ 3 年 =34,580 円) 遮 水 シ ー ト 償 却 費(020,060 円÷ 3 年 =06,686 円) 暗 き ょ 管 償 却 費(028,350 円÷ 3 年 =09,450 円) 防 鳥 ネ ッ ト 償 却 費(006,300 円÷ 2 年 =03,150 円) 合 計 繁殖牛 1 日 1 頭当たりの処理経費(53,866 円÷ 365 日÷ 15 頭≒ 10 円) 年経費 34,580 円 6,686 円 9,450 円 3,150 円 53,866 円 10 円 14.作業時間 1 基当たりの作業時間は、盛土の運搬から堆肥の運搬・副資材の混合・シートの設置まで約 5 人 色 :黒褐色 形 状:原物の形状をほとんど認めない 臭 気:堆肥臭 水 分:61% 最高温度:74.5℃ 評点法による評価:87 点 腐 熟 度:完熟 16.当該施設の設計施工法の利用の可否 資材は既製品を使っているため、特許等の取得はない。 17.問合せ先 担当者:藤田次男 機関名、所属、部署等: 青森県農林水産部 畜産課 飼料環境衛生グループ 住 所:030 8570 青森県青森市長島一丁目 1 1 電 話:017 722 1111 内線 3277 FAX:017 734 8144 E-mail:[email protected] ホームページ URL:http://www.net.pref.aomori.jp/chikusanshi/ 18.施設等の見学先 住 所:039 3156 青森県上北郡野辺地町枇杷野 51 担当者:青森県農林総合研究センター畜産試験場・家畜部 藤森康一郎 E-mail:[email protected] 電 話:0175 64 2231 FAX:0175 64 2230 見 学:可(ただし恒久施設ではないため要問合せ) 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 15.処理物(出来上がり製品)の品質 第Ⅱ章 で 1 日の作業となる。堆積中の切り返し作業はない。 [事例 3(堆肥) ] 1.施設の名称 シート利用ふん尿処理施設 2.施設の特徴 家畜ふん尿処理には、通常、堆肥舎や堆肥化施設といった高額な施設を必要とし、大きな負担が 伴うと考えられている。そこで、 「家畜排せつ物法」 の管理基準に適合し低コストな管理を行うため、 シートを利用したふん尿処理施設を提案する。 特徴は、ふん尿の底部を遮水シートで、上部を被覆シートで覆うことで、雨水の侵入とふん尿か ら排出される排汁の地下浸透を防止し、 悪臭や害虫の発生と雑草種子の混入を防止する構造である。 また、堆積したふん尿から発生した排汁は、シートを利用した排汁槽や既存の尿貯留槽に貯留し 草地等に散布する。 この簡易で低コストな施設は簡単に施工できるため、畜産農家は自力や共同作業で設置できる。 3.適用できる畜種及びふん尿の形態 乳牛やその他畜種のふん尿で、堆積可能な状態であれば利用が可能である。 敷料の使用量によりふん尿の性状は異なるが、中∼高水分のふん尿(水分 78 ∼ 84%)にも対応 が可能である。 搬入するふん尿の水分率によって堆積可能の高さが変わるため、この施設を設置する場合にはふ ん尿の性状を考慮する必要がある。 堆肥の簡易貯留施設としても利用が可能である。 4.適用できる規模、処理能力 ①施設の幅を 10m 以下にとどめると被覆シートの開閉作業が容易となる。 ②必要面積はふん尿の性状により大きく異なり、ふん尿の性状は使用する敷料の種類・量により 変わるため、必要面積を求めるためには自分の農場のふん尿がどのような性状かを把握する必 要がある。 ③ 1 施設あたりの大きさは、作業性から考えて 200 ∼ 300m² が適当である。 表 1.ふん尿の性状の違いによる必要面積 水分目安(%) 80 ∼ 84 75 ∼ 80 75 以下 平均積み高 1m 程度 1.5m 程度 2m ふん尿容積重(目安)(t/m³) 0.85 0.8 0.7 必要面積(搾乳牛 50 頭当たり) 100m²/ 月 70m²/ 月 60m²/ 月 《シート利用ふん尿処理施設の必要面積の計算》 ①農場の年間ふん尿排出量 搾乳牛 1 頭年間ふん尿量(20t)×搾乳牛換算頭数=年間ふん尿排出量(t) 年間排出量(t)÷ 12(月)÷ふん尿容積重(t/ m³)=ふん尿容量(m³/ 月) ふん尿容量(m³/ 月)÷平均積み高さ(m)=シート施設必要面積(m²/ 月) ④施設必要面積 施設必要面積(m²/ 月)×貯留月数(月)=シート施設必要面積(m²) 5.適用可能地域 特に制約はないが、設置するための施設用地が確保できること。 6.主な仕様または仕様書 ふん尿処理施設面積(250m²)の仕様 ふん尿処理施設 :寸法 10 × 25m(250m²) 底部の遮水シート :寸法 12 × 27m(324m²) (0.4 ㎜厚の EVA シート等を使用) 上部の被覆シート :寸法 15 × 30m(450m²) (サイレージ用白黒 3 層シート等を使用) 集 水 管 :暗渠管、塩ビ管、結合用のソケット 上部の被覆シートの固定:古タイヤ、土嚢等で固定 7.設計図 1)施設の概要 名 称:シート利用ふん尿処理施設 貯留面積:250m²(寸法、幅 10m ×奥行 25m) 資 材:底部の遮水シート EVA0.4 ㎜程度(寸法、幅 12m ×奥行 27m) 上部の被覆シート サイレージ用の白黒 3 層シート(寸法、幅 15m ×奥行 30m) 留 意 点: 勾配は集水管に向けて 2% 程度 床土の厚さは約 50cm 盛土の高さは床土面より高く設置 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 ③施設必要面積(1 ヵ月分) 第Ⅱ章 ②ふん尿容量(1 ヵ月分) 図 1 シート利用ふん尿処理施設(断面図) 8.シート利用ふん尿処理施設の造成法 1)整地・掘削作業 ポイント ●集水管の設置場所に向かって 2% の勾配をつけます。 ●集水管は、排汁槽に向かってゆるやかに勾配をつ けます。 ●掘削した土は盛土(床土)に使うので施設外周に 積みます。 草地の表土除去 整地完了 手 順 ①設置予定地を杭で区画し、測量して掘削の深さを決めます。 ②バックホーやホイルローダーで予定の深さまで掘削します。 ③排汁槽も掘削します。 ④石などは底部シートの破損につながるので、凹凸がある場合には火山灰などでめつぶしをしま す。 2)底部シートの設置 ポイント ●底部シートは破損しないように丁寧に設置します。 ●平らな広い場所があればあらかじめそこで貼り付けるときれいに貼れます。 手 順 ①勾配を考えて排汁が漏れないようにシートを貼り合わせていきます。 ②シートは施工現場で貼り合わせるか(接着資材 20 ∼ 100 円 /m²) 、工場で一枚物に加工しても らいます(加工費 200 ∼ 300 円 / m²) 。 底部シートのブチレンテープによる設置作業 底部シートの設置完了 【現場でのシートの接着法】 底部シートを現場で貼り合わせる場合はシートの接着面に付いた土砂などの汚れをふき取ってか ら接着する必要があります。また、糊しろ部分は白マジック等で印をつけておくときれいにシート を重ねることができます。 シート接着には以下の方法があります。 ①接着剤(塩ビ系シートに有効) 塗布する部分はベニヤで下敷きします。また、塗布には刷毛よりもローラーの方が適してい ます。塗布後、数分程度乾かしシート同士を貼り合わせます。 ②ブチレンテープ(EVA シートに有効) ブチレン製の両面テープでシートを接着します。テープを貼り付ける前に、接着面の汚れを 雑巾などで除去します。シートの端から 1cm 程度内側にテープを貼り付けます。その後、テ ープの紙を剥がさずにまずシートを合わせ、紙を引き抜くように剥がしながら接着すれば異物 の付着を防ぐことができます。接着はシートの中央部から端に向かって行えば、シートのよれ の発生をある程度抑えることが可能です。 簡易な接着方法であり、施工も比較的容易です。しかしブチレンは高温下で粘着力を失う性 質があるため、盛土部分のシートにも土をかぶせて接合部位を直射日光から保護する必要があ ります。 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 (1 枚物に加工して購入すると作業が楽です。 ) 第Ⅱ章 ●シートは排汁が漏れないように貼り合わせます。 ③熱溶着(すべてのシートに有効) 市販の工業用ドライヤーの使用により、シートを熱溶着することができます。熱溶着は他の 接着方法と異なり、シートを隙間のない完全な一枚物にすることが可能なので、信頼性の高い 方法といえます。しかし、施工にはある程度熱溶着作業に習熟していることが必要です。特に 現場で 0.4 ㎜程度の薄いシートの溶着は、経験が必要です。 3)集水管の設置 床土の泥ねい化を防ぐため浸透した排汁を集めて排汁槽に回収します。 ポイント ●埋め戻した床土で集水管が目詰まりしないよう にネット、不織布などで保護します。 ●集水管とシートは排汁が漏れないように接続し ます。 手 順 ①シートと集水管を接続する(余ったシートで接 続部を作ったり、ポリフィッティングを使う) 。 ②コーキングする。 ③集水管を設置します。 シートと集水管の接続 集水管の資材 ○暗渠管、塩ビ管、それらをつなぐソケット ○実証施設では 1 施設(200m² 程度)当り 1 ∼ 2 万円程度 ポリフィッティング部品 4)床土の覆土 ポイント ●底部シート保護と作業性確保のため床土の厚さ ●砕石のような資材を用いる場合には底部シート ●出入り口周辺などに砂などを敷設すると、作業 時に施設周辺の土壌の練り返しを予防すること ができます。 手 順 ①集水管は手作業で床土により埋めます。 ②床土を埋め戻す。 ③床土をてん圧する。 床土に利用する土 床土は、資材費のなかで大きな割合を占めるので、農場内(施設周辺)にある土を可能な限り利 用することが低コスト化につながります。また、施設内で作業機が作業することから支持力が必要 です。そのため、目的に応じた使い分けが必要となります。 土の搬入作業 床土のてん圧 【床土について】 ○低コスト化の工夫 自己所有地の土を積極的に利用することで施設費を低コスト化できます。 圃場土によっては透水性が悪くふん尿から出る排汁により泥ねい化を起こす場合があります が、現地設置事例の中にはこれら圃場土を工夫して積極的に用いている例があります。 ・床土の二重構造(事例:根室) 圃場土を床土下層 1/3 に利用して、上層 2/3 を購入した山砂を利用。床土表面は山砂の盤 であるため作業性は良好で、床土(山砂)購入費は 2/3 に低下しました。 ・床土表面からの排汁回収構造(事例:浜頓別) 床土には圃場土を全面的に利用。盤表面にも勾配を付け、盤縁から明きょにより排汁を回 収しました。床土表面に排汁が滞留しないようにして泥ねい化を防止し、作業性を確保して います。 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 を保護するために土や砂などを先に敷きます。 第Ⅱ章 は 50cm 程度確保します。 ○排汁促進の工夫 ふん尿からの排汁促進を図ることで性状改善や取扱い性向上が期待できます。現地事例に床土を 工夫して排汁促進を図ったものがあります。 ・砕石利用の排汁促進構造(事例:佐呂間) 床土として砕石のように大きな資材を使うことで、排汁の通りを良くして排汁促進を図っ てます。底部シートに直接砕石が触れると破損の恐れがあるため、シートとの接地面は圃場 土で保護します。ただし、将来、施設を圃場にもどすことが想定される場合は、床土として 利用する資材には注意が必要となります。 5)盛 土 ポイント ●底部シートを作業機から保護します。 ●雨水が入り込まないように、また、排汁が流れ出ないよ うに盛土します。 ●出入口は土でやや高くし、排汁の流出、雨水の流入を防 止します。 ●被覆シートの雨水を流す工夫をします。 盛土の成形作業 6)排汁槽の設置 ポイント ●シートを利用したラグーンの場合は排汁漏れのないように 1 枚物を用い、破損しないように設 置します。 ●ガス抜き管を設置します。 ●転落防止のため周囲には柵を設けます。 ●廃用品を槽に利用する場合は埋め戻しの際に破損しないように慎重に埋め戻します。 ●地下の集水管と接続部分は、排汁が漏れないように接続します 。 ●周囲から排汁槽に雨水が流入しないよう周囲に盛土するなどの工夫をします。 手 順 第 Ⅱ 章 ①掘削(排汁槽と集水管路) ②ガス抜き配管をします。 堆 肥 ・ 汚 水 の 簡 易 処 理 施 設 の 事 例 の 詳 細 ③シート設置(底部シート同様に作業) ④集水管との接続(底部シート同様に作業) ⑤周囲に盛土をします。 ⑥柵を設置します。 排汁槽の資材 ○シート ○廃用品の活用 雨水分離型シートラグーン ○接続管(無孔管) 7)シートでの被覆 堆積したふん尿に雨水が混入するのを防止するために使います。 ポイント 盛土を含めて全体を被覆するために施設の設置面積に較べて、縦横とも 5m 程度大きいもの が必要です。 必要な資材 ○シートは重さ、価格、耐久性を考慮して選択する。 資材例 単価(円)/m² 耐久性(耐用年数) サイレージシート 50 ∼ 60 弱い(短い:1 ∼ 2 年) ○シートの固定資材 古タイヤ等 ⑴ 堆 肥 化 施 設 9.イニシャルコスト 堆肥の堆積期間によってイニシャルコストは変わるため、ここでは、主に自己施用が可能な場合 の 6 ヶ月堆積と、外向けにより品質を高めた堆肥の生産が目的の 12 ヶ月堆肥について試算した。 1)6 ヵ月堆積の設置工事費(乳牛 60 頭分) (堆肥の自己施用が可能な場合) 施設面積 500m²(250m² × 2) 、排汁槽 50m³ 底部及び排汁槽:EVA0.4 ㎜、被覆シート:サイレージ用白黒 3 層 (農家施工)は、 底部シート及び加工費 389 千円 集水管その他 40 千円 被覆シート 54 千円 排汁槽(雨水分離シート付シートラグーン) 240 千円 合計 723 千円 (m² 当たり:723 千円÷ 500m² = 1,446 円 /m²) (頭当たり:723 千円÷ 60 頭= 12,050 円 / 頭) ※床土を購入した場合の加算額 合計 375 千円 1,098 千円 2)12 ヵ月堆積の設置工事費(乳牛 60 頭分) (堆肥の品質を高める対策が必要な場合) 施設面積 1,000m²(250m² × 4) 、排汁槽 50m³ 底部及び排汁槽:EVA0.4 ㎜、被覆シート:サイレージ用白黒 3 層 (農家施工)は、 底部シート及び加工費 778 千円 集水管その他 80 千円 被覆シート 108 千円 排汁槽(雨水分離シート付シートラグーン) 240 千円 合計 1,206 千円 (m² 当たり:1,206 千円÷ 1,000m² = 1,206 円 /m²) (頭当たり:1,206 千円÷ 60 頭= 20,100 円 / 頭) ※床土を購入した場合の加算額 合計 750 千円 1,956 千円 (参考)設置には下記のような作業人員、日数および機器が必要です。 作 業 人 員: 重機オペレーター 作業員 1名 (延) 5名 2名 10 名 計 12 名 作 業 日 数: 2 日程度 必要機器等: バックホー(法面バケット) 、ホイルローダー 注:シートをノリ付けする場合、10 人で 3 時間程度が必要です 10.設計、施工時の留意点 ①シート利用ふん尿処理施設は、浸透水、地下水の通り道や窪地、地下水位の高いところには設 置しない。 (波状地は掘削・整地作業が大変で適さない) ②傾斜地は傾斜を利用することが可能だが、急傾斜の場合はふん尿が流出しないよう注意する。 (集水管に向かって 2% 程度の勾配をつける。 ) ③万一の事故を考慮し、河川の周辺には設置しない。 ⑤必要面積を求めるためには、自農場のふん尿の性状を把握する。 要である。 ⑦遮水シートの損傷を防ぐために地盤の整地に注意し、凹凸がある場合には砂や黒ボク土等で十 分に整地してから遮水シートを設置すること。 ⑧透水性の悪い床土を利用した場合、床土の表面の排汁を抜く構造が必要である。 ⑨底部の遮水シートは、排汁が漏れないように平らな広い場所で貼り合わせる。1 枚物に加工し て購入すると作業が楽である。 ⑩集水管は埋め戻した床土で目詰まりしないよう、ネット、不織布などで保護する。 ⑪上部の被覆シートは、盛土を含めて全体を被覆するため、施設の面積に較べて縦横とも 5m 程 度大きいシートが必要である。 11.処理方法(運転方法) ふん尿の搬入にはマニュアスプレッダーやダンプを使用し、搬出にはホイルローダーやバックホ ーを使用する。 また、堆肥化と排汁の排出を促進させるためには、トラクターやバックホーで定期的に切り返し を行う。 12.処理時(運転時)の留意点 1)ふん尿の堆積時 ①高く積みすぎると流動性があるため、 横に広がり盛土を越えて流れ出ることも考えられるので、 周囲約 50cm 程度はスペースを空け余裕を持たせる。 ②ふん尿を堆積した上部は、被覆後に雨水が溜まらないように、出来るだけ山形に成形する。 ③高水分ふん尿を堆積すると、排汁の床土への浸透が間に合わず、排汁があふれ出たり床土が泥 ねい化する恐れがあるため、床土表面からの排汁を抜く工夫を行う。 (例:縦配管、上部集水 管の設置等) 2)被覆シートの開閉、管理 ①施設は基本的にふん尿が堆積されていない部分も含めてシートで被覆する。 ②天気の良い日はシートを剥がし、ふん尿が堆積されていない部分の床土を乾燥させる。 ③雨水は流路を確保し、盛土を部分的に低くするなどして施設の外へ排水する。 ④シートに穴があいた時には、すみやかに補修する。 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 ⑥漏水を防ぐために底部に敷く遮水シートは、施設面積に較べ縦横とも 2m 程度大きいものが必 第Ⅱ章 ④施設の幅は被覆シートの開閉作業を容易にするため、10m 以下とする。 13.ランニングコスト(処理経費) 1)6 ヵ月堆積の施設 項 目 (内 訳) 年経費 施設償却費 (429,000 円÷ 15 年= 28,600 円) 28,600 円 被覆シート償却費 (054,000 円÷ 01 年= 54,000 円) 54,000 円 排汁槽償却費 (120,000 円÷ 15 年= 08,000 円) 8,000 円 雨水分離シート償却費 (120,000 円÷ 04 年= 30,000 円) 30,000 円 合 計 120,600 円 乳牛 1 日 1 頭当たり合計の処理経費(120,600 円÷ 365 日÷ 60 頭) 5.5 円 2)12 ヵ月堆積の施設 項 目 (内 訳) 年経費 施設償却費 (858,000 円÷ 15 年= 057,200 円) 57,200 円 被覆シート償却費 (108,000 円÷ 01 年= 108,000 円) 108,000 円 排汁槽償却費 (120,000 円÷ 15 年= 008,000 円) 8,000 円 雨水分離シート償却費 (120,000 円÷ 04 年= 030,000 円) 30,000 円 合 計 203,200 円 乳牛 1 日 1 頭当たり合計の処理経費(203,200 円÷ 365 日÷ 60 頭) 9.3 円 14.作業時間 ふん尿の搬入や堆肥の搬出作業は一般の堆肥生産と変わらないが、これにシートの脱着作業が加 わる。堆積中の切り返しの有無、及び回数によって作業時間は大きく異なる。また、半年間の貯留 で堆積重量の 10 ∼ 15% の排汁が排出される。60 頭規模では年間 120 ∼ 180t の排汁を草地に還元 する作業が必要である。 15.処理物(出来上がり製品)の品質 中∼高水分のふん尿(水分 78 ∼ 84%)を堆積した場合、排汁の排出による水分低下、取扱い性 の改善、汚物感の低減が認められた。 また、切り返しや水分調整を行っていない場合は、温度上昇を伴う積極的な堆肥化は進行しない。 16.当該施設の設計施工法の利用の可否 自由に設置可能 17.問合せ先 所属・担当: 環境草地部 畜産環境科 研究職員 渡部 敢 技術普及部 次 長 宮崎 元 機 関 名: 北海道立畜産試験場 住 所: 北海道上川郡新得町西 5 線 39 番地 電 話: 01566 4 5321 F A X: 01566 4 6151 E-mail: (渡部) [email protected] E-mail: (宮崎) [email protected] ホームページ URL:http://www.agri.pref.hokkaido.jp/sintoku/ 所在地:北海道山越郡八雲町春日 担当者:北海道渡島支庁 渡島北部地区農業改良普及センター 電 話:01376 2 2496 見学②:増田牧場 所在地:北海道足寄郡陸別町字北トマム 担当者:北海道十勝支庁 十勝東北部地区農業改良普及センター 電 話:01562 5 4326 見学③:木村牧場 所在地:北海道川上郡標茶町字御卒別 担当者:北海道釧路支庁 釧路北部地区農業改良普及センター 電 話:01548 5 2514 見学④:杉本牧場 所在地:北海道枝幸郡浜頓別町字宇曽丹 担当者:北海道争宗谷支庁 宗谷南部地区農業改良普及センター 電 話:01634 6 1414 見学⑤:竹内牧場 所在地:北海道常呂郡佐呂間町字知来 担当者:北海道網走支庁 湧別地区農業改良普及センター 電 話:01586 5 2225 見学⑥:高橋牧場 所在地:北海道静内郡静内町字東静内 担当者:北海道日高支庁 日高中部地区農業改良普及センター 電 話:01564 2 1489 見学⑦:市橋牧場 所在地:北海道根室市東和田 担当者:北海道根室支庁 南根室地区農業改良普及センター 電 話:01537 5 2301 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑴堆肥化施設 見学①:石田牧場 第Ⅱ章 18.施設等の見学先(次のいづれの施設も見学は可能です。 ) (2)汚水処理施設 ふん尿処理一口メモ 排水基準について 処理水を河川など、公共水域に排出する場合には、水質汚濁防止法に基づき排水基準(生 活環境項目及び健康項目)が適用されます。全国の基準は下記のとおりですが、都道府県や 河川によって、適用地域や上乗せ規制が設けられていることがありますので、市町村の担当 課によく相談してください。 畜産業に係る排水基準 1.生活環境項目 ①適用対象規模 豚房の総面積 050m² 以上 牛房の 〃 200m² 〃 1 日当たりの平均排水量 かつ 50m³ 以上 馬房の 〃 500m² 〃 ②排水基準 項 目 pH BOD COD SS 大腸菌群数 窒素含有量 燐含有量 許 容 限 度 5.8 以上 8.6 以下 (海域は 5.0 以上 9.0 以下) 160mg /ℓ (日間平均 120) 〃 ( 〃 〃 ) 200mg /ℓ ( 〃 150) 日間平均 3,000 個/ cm³ 120mg /ℓ (日間平均 060) 【190】 【150】 016mg /ℓ ( 〃 8) 【030】 【024】 注)窒素含有量及び燐含有量については、告示(昭和 60 年 5 月 30 日環境庁告示第 27 号、平 成 5 年 8 月 27 日環境庁告示第 66 号)により定められた湖沼及び海域の流入域に限って適用さ れ、このうち海域については、平成 20 年 9 月 30 日まで【 】内の暫定排水基準が適用される。 2.健康項目 ①適用対象規模 豚房の総面積 050m² 以上 牛房の 〃 200m² 〃 馬房の 〃 500m² 〃 ②排水基準 項 目 アンモニア、アンモニウム 化合物、亜硝酸化合物及び 硝酸性化合物 許容限度 100mg/ ℓ 【1,500】 注)1 日排水量 50m3 未満 注)健康項目は、上記の他、27 物質が定められており、 も適用対象となる。 アンモニア、アンモニウム化合物については、平成 16 年 6 月 30 日まで【 】内の暫定排水基準が適用される。 [事例 4(汚水) ] 1.施設の名称 「おが屑ろ床によるろ過装置」と「土壌浄化処理装置」とからなる。 おが屑をろ材とした撹拌機付のろ過装置の表面に豚尿汚水を散布してろ過し、そのろ液を土壌浄 化処理装置に通して窒素をかなり低減させることのできる中小養豚農家向けの簡易な浄化処理装置 である。 おが屑ろ材に捕集された豚尿汚水の固形物中の有機物は、撹拌機でおが屑と混合され、下部から の通気で好気性微生物等によりある程度分解され、ろ液となってろ液貯留槽に貯留される。そのろ 液を火山灰土壌を主体とした土壌層に通して浄化処理することを特徴とした浄化処理施設である。 (おが屑ろ床によるろ過装置は生研機構、土壌浄化処理装置は群馬県畜産試験場で開発した。 ) 3.適用できる畜種及びふん尿の形態 固液分離型の豚舎で分離された尿汚水を貯留槽に貯留した上澄み水を使用し、汚濁濃度で SS: 1,000 ㎎ / ℓ以下、BOD:10,000 ㎎ / ℓ以下とした汚水を浄化処理する。 (注)水質汚濁防止法に基づく排水基準の適用を受ける場合(46 ページ参照)は、本処理施設に よる処理水の窒素をさらに脱窒槽等で低減させる必要がある。 4.適用できる規模、処理能力 処理量と処理能力によって装置の規模が決まる。 1)おが屑ろ床によるろ過装置 処理能力: おが屑ろ床の面積 1m²、1 日当たり 150 ℓ散布可能 想定規模: 処理量が 1 日当たり 1,800 ℓ(肥育豚約 500 頭)とすると 12m² が必要 (1,800 ℓ÷ 150 ℓ /m² = 12m²) 例えば 2m(幅)× 6m(長さ)のろ床規模が想定できる。 2)土壌浄化処理装置 処理能力: 土壌槽面積 1m²、1 日当たり 15 ℓ散布可能 想定規模: 処理量が 1 日当たり 1,800 ℓとすると 120m² が必要 (1,800 ℓ÷ 15 ℓ /m² = 120m²) 5.適用可能地域 豪雪地帯、寒冷地及び台風常襲地を除く。 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑵汚水処理施設 2.施設の特徴 第Ⅱ章 おが屑ろ過装置と土壌浄化を組合わせた畜産汚水浄化施設 6.主な仕様または仕様書 1)おが屑ろ床によるろ過装置 原水槽、おが屑ろ過装置(撹拌装置付) 、ろ液貯留槽、ポンプ類からなる。 原水槽:3 日以上貯留可能 おが屑ろ過装置:標準的な構成(処理量 1,800 ℓ / 日)では お が 屑 ろ 床:幅 2m、長さ 6m、深さ 1.5m 撹 拌 機:撹拌モータ 0.75kW、走行移動モータ 0.1kW(2 台) 通気用送風機:0.1kW ろ液貯留槽:3 日以上貯留可能 ポ ン プ:散水ポンプ 0.2kW 2)土壌浄化処理装置 土壌槽は防水シートで仕切られ、土壌槽表面からろ液を散布し、土壌槽を通過した液を集水 して放流する。土壌槽はビニールハウス内に入れる。 土壌堆積高さ:100cm(火山灰土壌心土が適当) 通気用送風機:120m² 当たり 1m²/ 分(0.3kW 程度) 7.設計図 おが屑ろ床によるろ過装置の概要 土壌浄化処理装置の概要 8.写真 第 Ⅱ 章 写真 1 豚尿汚水浄化処理施設の全景、手前はおが 写真 2 おが屑ろ過装置の内部 屑ろ過装置、奥は土壌浄化処理装置 堆 肥 ・ 汚 水 の 簡 易 処 理 施 設 の 事 例 の 詳 細 ⑵ 汚 水 処 理 施 設 写真 3 おが屑ろ床表面、奥は撹拌装置 写真 5 土壌浄化処理装置の表面 写真 4 おが屑取り出し口(板をはずしショベルローダ でおが屑を交換) 写真 6 原水、おが屑ろ液、土壌処理水の比較 9.イニシャルコスト 1)おが屑ろ床によるろ過装置(処理量 1,800 ℓ / 日、肥育豚 500 頭規模) 撹拌装置 1 式 :0.180 万円 通気送風機 :000.7 万円 尿汚水散水ポンプ : 00.12 万円(2 台) おが屑ろ床 1 式 :0.190 万円(概算) ビニールハウス :00.75 万円(概算) おが屑代 :004.6 万円(1 回交換分) 小 計 :468.6 万円 (設計費、配管工事、電気工事等は別途) 2)土壌浄化処理装置(処理量 1,800 ℓ / 日規模) 土壌浄化処理装置 1 式 :0.060 万円(概算) 合 計 :528.6 万円 豚 1 頭当たり :528.6 万円÷ 500 頭= 10,572 円 / 頭 (参考) 設置には下記のような作業人員、日数および機器が必要です。 作業人員:コンクリート工事 30 人(実延) 機械据付 03 人( 〃 ) 試運転 02 人( 〃 ) 合計 40 人 屋根取付 05 人( 〃 ) 作業日数:約 2 週間 必要機器:ユニット車 10.設計、施工時の留意点 1)おが屑ろ床によるろ過装置 ①おが屑ろ床によるろ過装置は、地上式としてコンクリート床の上に構築し、おが屑ろ床のお が屑の出し入れができるようおが屑ろ床槽の一端を開放できるようにする。 ②原水槽は 3 日分以上を貯留できるようにし、おが屑ろ床へは上澄み液を散布する。 ③おが屑ろ床槽の床面は、ろ液がろ液貯留槽へ流出するように溝を配設するとともに、溝に通 気管を埋設しておが屑層を通気できるようにする。ろ液流出部はコーキングと水封で通気が ろ床の外へ漏れないようにする。 ④おが屑をろ床に投入するときにおが屑ろ床槽の側壁や角を踏み固め、原水や通気がろ材を素 通り(短絡)しないようにする。 ⑤設計時には、処理すべき豚尿汚水の原水量を把握するとともに、あらかじめ原水の SS、 BOD、T-N、T-P などを測定しておく。 2)土壌浄化処理装置 ①地下水位の高いところは避ける。 ②土壌槽は防水シートで覆い、地下へ汚水(処理水)が流出しないようにする。 ④土壌槽へ雨水が入らないようビニールハウス等で覆いをする。 11.処理方法(運転方法) 1)おが屑ろ床によるろ過装置 ①原水槽で豚尿汚水を静置したのちその上澄み液をおが屑ろ床の表面に 1m²1 日当たり 150 ℓ (0.15m³)散布する。 ②おが屑表面に汚水溜まりがなくなってから撹拌機でおが屑層を撹拌する。汚水散布時と撹拌 中は通気をしない。 ③撹拌終了 1 ∼ 2 時間後、通気(通気量約 20 ℓ /min/m³)をする。 2)土壌浄化処理装置 ①土壌槽表面に灌水チューブを配置し、 ろ液を灌水チューブで土壌槽表面にムラなく散布する。 ②ろ液の散布量は 1m² 当たり 15 ℓである。 ③土壌浸透し浄化された処理水は、土壌槽底部に埋設された暗渠用パイプにより集水され、排 水口から排出される。 12.処理時(運転時)の留意点 1)おが屑ろ床によるろ過装置 ①おが屑は、4 ∼ 6 ヶ月間で新たなおが屑と交換する。ろ過機能が低下してくるとおが屑槽の 表面に原水の滞水がみられるようになる。また、汚濁濃度が高くなるとろ過機能の低下が早 くなる。 ②撹拌機は 1 日 1 回おが屑層を撹拌するが、おが屑がろ床内で片寄りを生じることがあり、そ のときはおが屑表面をスコップ等でならす作業を行う。 ③おが屑ろ床の側壁が乾いて隙間が生じ原水が素通りして十分にろ過されず流れ出ることがあ るときは、おが屑表面の様子をみながら側壁や角を踏み固めて素通りを防ぐ。 ④おが屑ろ床のろ過機能が低下してきたときには、撹拌爪を少し下げて撹拌爪先端のおが屑硬 盤を破砕する。 2)土壌浄化処理装置 ①土壌槽をビニールハウスで覆うが、冬期は特に土壌槽を冷やさないように心がける。 ②ろ液の土壌槽への散布は、できるだけ均一になるようにする。 ③土壌表面に滞水し始めたときは、土壌表面を管理機等で耕うんする。 ④土壌は条件によるが 5 年程度は浄化機能がある。 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑵汚水処理施設 ⑤土壌は火山灰土壌(心土)が望ましい。粘土質土壌は不可。 第Ⅱ章 ③ろ液を土壌表面に均一に散布できるようにする。 13.ランニングコスト(処理経費) 電気代:1 ∼ 2 万円 / 月(処理量 1,800 ℓ / 日規模) おが屑代:約 46,000 円 / 回(4 ∼ 6 ヶ月に 1 回交換) 処理経費の合計:258,000 ∼ 332,000 円 / 年 出荷豚 1 頭当たり:258 ∼ 332 円 / 頭 (注)償却費は含んでいない 14.作業時間 基本的には運転は自動化されているため、管理作業として 10 分程度、おが屑の片寄りを直す作 業などは別途行う。 15.処理性能 おが屑ろ床でろ過されたろ液は、濃い茶褐色を呈しているが臭気はほとんど無く、粘性も低い。 原水と比較して SS、BOD 及び窒素の平均除去率はそれぞれ 87.1%、78.7% 及び 34.3% となっ た。また、土壌浄化処理装置を通過した処理水は、平均で SS:13mg/ ℓ、BOD:22mg/ ℓ、T-N: 447mg/ ℓまで処理された(表) 。 表 おが屑ろ床によるろ過装置と土壌浄化処理装置の性能 測定項目 原 水 ろ 液 除去率(%) 土壌処理水 pH 7.1 ∼ 8.9 (8.0 ) 8.0 ∼ 9.5 (8.8) − 6.0 ∼ 7.5 (6.8) SS (mg/ ℓ) 217 ∼ 3940 (744) 20 ∼ 430 (115) 73.5 ∼ 96.0 (87.1) 0 ∼ 80 (13) BOD(mg/ ℓ) 3580 ∼ 11200 (7500) 420 ∼ 2870 (2040) 45.1 ∼ 94.3 (78.7) 3 ∼ 83 (22) T-N(mg/ ℓ) 1470 ∼ 4340 (2800) 1420 ∼ 2980 (2080) 3.3 ∼ 42.9 (34.3) 18 ∼ 1055 (447) ( )内は平均値 (注 1)水質汚濁防止法に基づく排水 基準の適用を受ける場合(46 ページ参照)は、本処理装置 による処理水の窒素をさらに低 減させる必要がある。 (注 2)土壌処理水の窒素等をさらに 排水基準以下にまで低減させ る必要がある場合には、土壌 処理槽への送風、冬期の加 温、脱窒槽の設置が必要とな る(事例「5 土壌を利用し た尿汚水浄化処理施設」を 参照) 。 原水、ろ液、処理水の比較 16.当該施設の設計施工法の利用の可否 おが屑ろ床によるろ過装置は(株)セキネが施工。農家施工もできるが、その場合は群馬県畜産 1)(株)セキネ 担当者:小林 亨、丸山英雄、宮本文雄 所 属:営業部、環境部 住 所:〒 366 電 話:048 8567 埼玉県深谷市田所町 15 1 572 5111、FAX:048 573 1116 2)JA 甘楽富岡 担当者:野口宣之 所 属:営農事業本部 畜産課 住 所:〒 370 電 話:0274 2333 群馬県富岡市中高瀬 660 番地 63 7045、FAX:0274 64 3357 3)群馬県畜産試験場 担当者:鈴木睦美、浦野義雄 所 属:畜産環境グループ 住 所:〒 371 電 話:027 0103 群馬県勢多郡富士見村小暮 2425 228 2222、FAX:027 288 2243 4)生物系特定産業技術研究支援センター 担当者:道宗直昭、原田泰弘 所 属:畜産工学研究部 住 所:〒 331 電 話:027 8537 埼玉県さいたま市北区日進町 1 40 2 228 2222、FAX:027 288 2243 18.施設等の見学先 浦野養豚場 住 所:〒 370 電 話:0274 2465 群馬県富岡市中沢 452 67 2118、FAX 0274 67 4660 見 学:可(施設の見学はできますが、防疫上、かならず養豚場の許可を得てください。 ) 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑵汚水処理施設 17.問合せ先 第Ⅱ章 試験場や生物系特定産業技術研究支援センターの指導を受けることが望ましい。 [事例 5(汚水) ] 1.施設の名称 土壌を利用した尿汚水浄化処理施設 2.施設の特徴 汚水の前処理としては沈降処理とおが屑ろ過を行い、それを土壌槽、脱窒槽で処理する。得られ た処理水は消毒を行うことで公共用水域へ放流が可能となる。 施設にはビニールハウスをかけ、特に厳冬期には土壌槽を園芸用暖房機で加温する(15℃以上を 目安とする) 。土壌内部にはもみ殻層を設け、そこに送風機でハウス内の空気を送り込む。 3.適用できる畜種及びふん尿の形態 基本的にはふん尿分離がきちんと行われている豚尿汚水が対象である。一部ふん尿混合やその他 の畜種の場合は前処理で BOD 3000mg/ ℓ以下の水質が得られれば、処理が可能である。 4.適用できる規模、処理能力 1 日当たり処理対象汚水量 3.0m³(肥育豚 500 頭前後)の施設面積:約 550m² 1 日当たり処理対象汚水量 4.2m³(肥育豚 700 頭前後)の施設面積:約 770m² 5.適用可能地域 関東より南の地域で標高が 300m 以下の平地であれば運転可能であるが、台風常襲地域は除く。 冬期の積雪は少ない方がよい(冬期間常に積雪がある地域は不可) 。また、施設から処理水を放流 できる排水路等があることが条件となる。 6.主な仕様または仕様書 仕様の概要(耐用年数、予算により材質や仕様の変更有り) 沈 降 タ ン ク:FRP 製の飼料タンクを汚水用に強化したもの(下部に分離物を抜き取るた めのバルブを付属) おが屑ろ過槽:穴を掘りビニールシート(0.2 ㎜)を敷き、抜き取り用に暗渠排水管、散布 用に塩ビ管に穴を開けたものを設置する。 土 壌 槽:穴を掘りビニールシート(0.2 ㎜)を敷き、処理水抜き取り用に暗渠排水管、 汚水散布用に塩ビ管に穴を開けたもの、土壌内送風用にコルゲート管を設置 する。土壌槽の基本幅は 4.2m とし 5.4m 間口のハウス内に入れる。 脱 窒 槽:穴を掘りビニールシート(0.2 ㎜)を敷き、抜き取り用にコルゲート管、散 布用に塩ビ管に穴を開けたものを設置する。コルゲート管の出口は水位まで 持ち上げておき、散布したときの水位差で槽から流出するようにする。 7.設計図 1)全体平面図 第Ⅱ章 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑵汚水処理施設 2)沈降処理タンク・おが屑ろ過槽 材質:沈降処理タンク(FRP 製) 遮水シート(0.2 ㎜ビニールシート) ビニールハウス 集水層(もみ殻) 図 1 沈降処理タンク・おが屑ろ過槽の模式図 3)土壌槽 材質:遮水シート(0.2 ㎜ビニールシート) 散水パイプ(有孔塩ビパイプ VU40) 送風パイプ(有孔排水管〔高密度ポリエチレン製〕 ・外径 60 ㎜、内径 50 ㎜) 抜き取りパイプ(有孔排水管〔網状〕 ) 送風機 散水パイプ 暖房機 送風パイプ 土壌層 もみ殻層 集水層 (礫) 切り抜きパイプ 遮水シート 図 2 土壌槽の模式図 4)脱窒槽 材質:遮水シート(0.2 ㎜ビニールシート) 散水パイプ(有孔塩ビパイプ VU40) 抜き取りパイプ(有孔排水管〔高密度ポリエチレン製〕 ・外径 60 ㎜、内径 50 ㎜) 第 Ⅱ 章 消毒槽(PE 製薬筒) ビニールハウス 消毒槽 堆 肥 ・ 汚 水 の 簡 易 処 理 施 設 の 事 例 の 詳 細 ⑵ 汚 水 処 理 施 設 遮水シート 図 3 脱窒槽の模式図 8.写真 土壌を利用した尿汚水処理施設の造成・運転 土壌槽内部作業 (遮水シートを敷いた上に集水層、土壌層及びもみ殻層を設ける) 土壌槽散水配管散布状況 FRP 製沈降処理タンク 施設全体 9.イニシャルコスト 設置予定地が畜舎に隣接した平地であり、その土地の土壌状態が良好である場合処理対象汚水量 4.2m³(肥育豚 700 頭前後)の設置工事費は、7,700 千円 + 消費税 (700 頭× 11 千円 / 頭= 7,700 千円) 農地転用、土地の整地、電気の引き込み、道路開削工事などにかかる費用は除く。 (参考) 施設の設置作業は規模や地形などにより異なるが、建設会社などによる作業で約 2 ヶ月間を要す る。地下配管に勾配をつけたりタンクの基礎打ちが必要なため、個人で設置するのは難しい。 10.設計施工時の留意点 ① 2m 以上掘る場合があるので、地下水位が高い地域では盛り土をする必要がある。 ②沈降処理タンクは既存の尿槽から近いところに設置する。 ③長い土壌槽は平らにするのが困難なため、一槽を 30m 以内にする。 ④土壌槽と脱窒槽は同じハウス内には入れない(冬期の湿気対策のため) 。 ⑤土壌槽のハウスは小型管理機の出入りと強風対策として出入口の位置を考慮する。 ⑥粘質土壌は利用不可で、火山灰芯土が望ましい。 11.処理方法 ①毎日の管理 ・各装置や薬品等の稼働・残量確認 ・土壌槽への汚水散水 ・各タンクへの汚水移送 ②毎週の管理 ・沈降処理タンクの沈降分離物の処理 ・消毒剤・メタノールの補充 ③ 2 ヶ月毎の管理 ・土壌槽表面の耕耘作業 12.処理時(運転時)の留意点 冬期は各ハウスの裾部分を二重張りにし、暖房機を 15℃を目安に運転する。但し、裾部分は完 全に密閉せず、わずかにハウス内の空気が入れ替わるように工夫をする(湿気対策) 。脱窒槽には 処理水の窒素濃度に応じて水で希釈したメタノールを液肥混入機で添加する。 13.ランニングコスト(処理経費) 肥育豚 500 頭規模の処理施設の場合 項 目 年間経費 電気代 備 考 78 千円 薬品(メタノール)代 174 千円 おが屑代 120 千円 燃料(灯油・重油)代 180 千円 合 計 552 千円 堆 肥 ・ 汚 水 の 簡 易 処 理 施 設 の 事 例 の 詳 細 ⑵ 汚 水 処 理 施 設 552 円 / 出荷豚 (注)償却費は含んでいない 14.作業時間 毎日の作業は、処理水量にもよるが約 30 分∼ 1 時間程度である。土壌槽表層の耕耘作業は土壌 表面の目詰まりの様子により行うが、目安として 2 ∼ 3 ヶ月に一度行う。毎日の管理を前提として おり、1 日おきの管理や数日分の汚水の一括処理などはできない。 15.処理水の品質 土壌槽で処理された水は BOD、SS、リ ンなどは排水基準をクリアし、無色透明 なものが得られる。窒素については土壌 槽でアンモニアが硝酸になるので、脱窒 槽にメタノールを適量添加することで除 去される。処理水は公共用水域への放流 が可能である。 尿汚水 前処理後 放流水 第 Ⅱ 章 汚泥水及び処理水の水質測定値 測定項目 泥汚水 前処理後 放流水 BOD(mg/ ℓ) 3000 ∼ 5000 1500 ∼ 2500 <0040 SS (mg/ ℓ) 3000 ∼ 6000 0500 ∼ 2000 <0060 T-N(mg/ ℓ) 0500 ∼ 2500 0400 ∼ 2000 <0150 T-P(mg/ ℓ) 0050 ∼ 0200 0030 ∼ 0100 <0008 大腸菌群数 <3000 ※数値は複数の施設の平均値 16.当該施設の設計施工法の利用の可否 特許申請中のため、群馬県の許諾を受けての設計・施工となる。 17.問合せ先 担当者:鈴木睦美、浦野義雄 機関名、所属、部署等:群馬県畜産試験場 畜産環境グループ 住 所:群馬県勢多郡富士見村小暮 2425 電 話:027 288 2222、FAX:027 288 2243 ホームページ URL:http://www.pref.gunma.jp 18.施設等の見学先 住 所:群馬県畜産試験場内 担当者:鈴木睦美、浦野義雄 電 話:027 288 2222 FAX:027 288 2243 見 学:可(場内施設のみ) [事例 6(汚水) ] 1.施設の名称 第Ⅱ章 シート利用スラリー・尿貯留施設 これまでの簡易スラリー・尿貯留施設のラグーンは、雨水の流入等により貯留量の増大や、スカ ムの発生による搬出作業の困難さを招いている。そこで、ラグーンに雨水分離シートを設置するこ とで、雨水と貯留スラリーを分離し、雨水による貯留量の増量とスカムの発生を防止するとともに、 臭気の拡散防止を図る。 特徴は、 遮水シートを底部に敷いたラグーンに、 スラリー水面の上部に防水のための雨水分離シー トを設置するとともに、そのシート上に雨水を貯めることでシートのバタツキを押さえ、スラリー への雨水の流入及び臭気の拡散を防止する構造になっていることにある。 3.適用できる畜種及びふん尿の形態 フリーストール飼養の乳牛ふん尿スラリーの処理施設であるが、その他の畜種のスラリーや堆肥 舎のれき汁溜め、尿溜めなど汚水の簡易貯留施設として利用可能である。 ふん尿の混合またはふん尿分離のスラリーでも処理はできるが、ふん尿混合の場合はふん尿分離 スラリーに比較して処理頭数は少なくなる。 4.適用できる規模、処理能力 貯留すべきスラリーの量は、(65 ℓ)×(飼養頭数)×(貯留期間、日)で計算する。ただし、 これはふん尿混合の場合で、ふん尿分離ではこれより少なくてよい(下表参照) 。 ※ 半年間貯留できるラグーン容量と頭数及びふん尿分離の区分 乳牛 80 頭分(ふん尿分離スラリー) ラグーンの有効貯留容量: 700m³ 乳牛 60 頭分(ふん尿混合スラリー) (参考:乳牛 10 頭分の場合のラグーン規模) 乳牛 10 頭分(ふん尿分離スラリー) ラグーンの有効貯留容量:088m³ 乳牛 10 頭分(ふん尿混合スラリー) ラグーンの有効貯留容量: 117m³ (ふん尿分離は固液分離機により固:液が 25:75 に分離されるとした場合の値) 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑵汚水処理施設 2.施設の特徴 5.適用可能地域 スラリー散布が可能で土地利用の制約の少ない地帯であれば適応できる。特に、年間当たりのス ラリー排出量と施用面積の関係により適応が決まる。 なお、スラリーの搬入、搬出のためのスラリースプレッダ等の機械が必要である。 6.主な仕様または仕様書 ラグーンの貯留槽容量 700m³ の仕様 ラグーン :底部寸法 11m × 11m(121m²) :上部寸法 23m × 23m(529m²) 、有効水深 3m のすり鉢状 底部の遮水シート :2.0 ㎜厚のプラスチック系シートを使用 上部の雨水分離シート:0.4 ㎜厚の EVA シート、30 × 30m(350kg)を使用 遮水シートの下 :ガス抜きの配管を設置 雨水分離シートの固定:シートの上部に清水を入れて固定 7.設計図 1)施設の概要 名 称:シート利用スラリー・尿貯留施設 貯留容量:700m³ 寸 法:深さ 3m、のり面長さ 4.5m、底面寸法 11m × 11m、 上部開口寸法 23m × 23m 材 質:遮水シート (プラスチック系:ジオシール(タキロン)等) 、 雨水分離シート (PE ラミネートクロスシート等) 図 1 シート利用スラリー・尿貯留施設(断面図) (注)スラリー搬入・搬出用固定パイプは、図のようなスラリー搬入・搬出用ホースでも代替 可能であるが、冬期間の凍結がひどい地域は固定パイプの方が良い。 第Ⅱ章 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑵汚水処理施設 固定パイプの替わりにホースでも可能 (前ページ参照) 雨水分離型ラグーン(根釧農試、単位 cm) 図 2 平面図及び断面構造図 8.シート利用スラリー・尿貯留施設の造成法 1)整地・掘削 ●周囲の作業場所を締め固めます。 ●地面を掘り、その土を周囲に盛ります。 ● の り 面 は 1:1.5 ∼ 1:2.0( 深 さ: 幅 ) の範囲で傾斜を付けます。 ●スラリー搬入・搬出用の固定パイプを利 用する場合は、この時点で設置します。 直径 12 ∼ 15cm の硬質プラスチックパ イプなどを利用して配管し、末端はスラ リースプレッダに合わせたカプラーを取 り付けます。 ●土中から湧き出るガスを除去するために、底面には暗渠用パイプ(直径約 5cm)などを使っ て必ずガス抜き配管を設置します。 ●石などの突起物はシート破損の原因となるので、除去するか砂などで保護します。 掘削作業 ガス抜き配管の設置状況 2)遮水シート、搬入・搬出用ホース等の設置 ●遮水シートの設置は水漏れさせないために現 場での張り合わせ(溶着)が必要となります ので専門の業者に依頼します。 ●遮水シートは堤頂部分の保護のために、盛土 部分も覆うように設置します。 ●遮水シートの大きさは、盛土の外側まで覆う ため、2m 程度の余裕を持たせます。 ●スラリー搬入・搬出用のホースは、遮水シー トを破損しないようにコンクリートブロック 等を用いてしっかりと設置します。 第 Ⅱ 章 堆 肥 ・ 汚 水 の 簡 易 処 理 施 設 の 事 例 の 詳 細 ⑵ 汚 水 処 理 施 設 遮水シートの敷設状況 3)雨水分離シートの設置 ●雨水分離シートは貯留槽の盛土部分も含 めて全体を覆うようにして設置します。 この時、固定用配管で雨水分離シートが 傷つかないように保護をします。 ●シートを設置したら風にあおられないよ うに水 6 ∼ 10t をシートの上に入れます。 ●貯留槽の周囲には安全のために柵の設置 が必要です。 雨水分離シートの設置 写真は、雨水分離シートと雨水です。 シートの下のスラリーから発生するガ スが溜って島状になっています スラリー搬入後 4)必要な資材 遮水シート、雨水分離シート、ガス抜き配管(暗渠用パイプなど) 、安全柵、スラリー搬入・ 搬出用ホースが必要です。スラリー攪拌・搬出ポンプを設置する場合には、コンクリート工事が 必要となる場合があります。 9.イニシャルコスト ラグーンの貯留槽容量 700m³(乳牛 60 ∼ 80 頭分)の設置工事費 5,880 千円 (5,880 千円÷ 700m³ = 8.4 千円 /m³) (5,880 千円÷ 060 頭= 98 千円 / 頭) 土木工事費 1,100 千円 EVA シート代及び施工費 1,740 千円 管理費等 460 千円 合計 3,300 千円 (3,300 千円÷ 700m³ = 4.7 千円 /m³) (3,300 千円÷ 060 頭= 55 千円 / 頭) (参考) 業者施行での作業人員は 5 名、作業日数は 2 ∼ 3 日、必要機器はバックホー(法面バケット) です。 10.設計、施工時の留意点 ①防水シート利用によるラグーン処理施設の設置は、 地下水位の高いところには設置しないこと。 ②漏水を防ぐために底部に敷く遮水シートの設置作業は専門家に委託すること。 ③遮水シートの損傷を防ぐために地盤の整地に注意し、凹凸がある場合には砂や黒ボク土等で十 分に整地してから遮水シートを設置すること。 ④雨水分離シートの設置は、30m × 30m の EVA シート約 350kg の重さのものをトラクタでラ グーン堤頂部に運搬し広げた後、ラグーンの中央部にロープを渡してシート両端を人力で引っ 張って設置する。 ⑤シートを設置後に雨水分離シート上部に 36m³ の清水をスラリースプレッダで投入しシートの バタツキをなくする。 ⑥台風等の影響でシートが剥がれないようにシートの両端は固定する。 ⑦雨水分離シートは、ラグーン内部のスラリーのスカム発生状況等が確認できるように透明シー トにする。 11.処理方法(運転方法) スラリーの投入及び搬出はスラリースプレッダーで行い、貯留中の運転作業を特に行う必要はない。 12.処理時(運転時)の留意点 雨水分離シート上には 50 ∼ 70cm の深さで雨水が滞留しているが、その雨水の汚れ具合等から シートの破損等の確認を行う。スラリー搬出の際、スラリーの貯留深が約 1m となった時点で搬出 用ホースでスラリーを吸引すると雨水分離シートも吸引されるようになるため搬出を中止する。 堆肥・汚水の簡易処理施設の事例の詳細 ⑵汚水処理施設 (農家施工)は、 第Ⅱ章 (業者施工)は、 13.ランニングコスト(処理経費) 項 目 (内 訳) 年経費 ラグーン建設償却費(1,100 千円× 0.9 ÷ 15 年= 66 千円) 066 千円 雨水分離 EVA シート償却費等(320 千円÷ 4 年= 80 千円) 080 千円 燃料費(ガソリン代)(5 ℓ / 回× 10 回× 100 円 / ℓ= 5 千円) 005 千円 小 計 151 千円 スラリースプレッダ償却費(5,000 千円× 0.9 ÷ 7 年= 643 千円) 643 千円 合 計 794 千円 乳牛 1 日 1 頭当たり合計の処理経費(794 千円÷ 365 日÷ 60 頭= 37 円)37 円 14.作業時間 スラリーのラグーンへの投入と搬出作業以外殆ど管理作業は必要ない。搬出は平成 14 年 5 月上 旬から下旬にかけて延べ 7 日間で 6m³ のスラリースプレッダー 113 台で運び出した。 15. 処理物(出来上がり製品)の品質 ふん尿混合スラリーの場合は、無攪拌であるためラグーン貯留中に固液の分離が大きく、固形物 の沈殿とスカム発生が多くなるので、均一な濃度の腐熟スラリーの引き抜きが困難になる。また、 嫌気状態で貯留されているため、散布時には悪臭が発生するので、スラリーインジェクション(土 中注入式)か散布後速やかに耕起するなどの対策が必要である。 16.当該施設の設計施工法の利用の可否 特許取得済みであるが、無償で使用権の許諾を行う予定である。 17.問合せ先 担当者:高橋 圭二 機関名:北海道立根釧農業試験場 所 属:酪農施設科 住 所:標津郡中標津町字中標津 1659 電 話:01537 2 2154 FAX:01537 3 5329 E-mail:[email protected] ホームページ URL:http://www.agri.pref.hokkaido.jp/konsen/konsen1.html 18.施設等の見学先 見学先:北海道立根釧農業試験場 所在地:標津郡中標津町字中標津 1659 電 話:01537 2 2154 FAX:01537 3 担当者:高橋圭二 見 学:可 5329