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Title Author(s) 「1988年の障害をもつアメリカ人法」について 定藤, 丈弘 Editor(s) Citation Issue Date URL 社會問題研究. 1989, 38(2), p.85-114 1989-03-31 http://hdl.handle.net/10466/7104 Rights http://repository.osakafu-u.ac.jp/dspace/ <資料紹介> f 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」 について 定 藤 丈 弘 I はじめに 周知のように、 1 9 7 0年代以降アメリカにおける重度障害者の社会参加は一定 程度促進されるようになった。例えばその状況を端的に示す指標のーっとして、 障害者が地域での自立生活形成のために利用する自立生活センターの設置数が 最近の 1 0 数年で大きく増加していることをあげることができる。障害者自立生 9 8 0年の 4 5カ所を最高に 1 9 7 0 活問題研究会の最近の調査では、図 1のように、 1 年代以降順調にその設置は増加しており、州聞の格差はあるとはいえ、ほとん どの州にセンターの設置が認められるとのことである九 図 1 米国の年次別障害者自立生活センターの設置数の推移 5 0 4 5 4 0 3 0 3 0 2 0 1 4 1 0 年 年 年 年 年 設立年不明 年 回年i M年 n l何年 制 j例年 7 6 7 7 7 8 79 80 8 1 8 2 年 障害者自立生活問題研究会編 『自立生活へのチャレンジ~ 1 9 8 6年 、 5頁 1) 障 害 者 自 立 生 活 問 題 研 究 会 編 『 自 立 生 活 へ の チ ャ レ ン ジ j 1 9 8 6年、 4-5頁 。 -85- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) その主なる直接的原因は、 1 9 7 0年代以降急成長した重度障害者主体の自立生 活運動の展開や、 1 9 7 8年のリハビリテーション法の修正により第 7章に「自立 生活のための総合的サービス」が設けられ、 1 9 7 9年より連邦政府が州を通じて センターに補助金を交付するに至ったことなどをあげることができる。しかし 9 7 8年修正法の成立の背景には、障害者の公民権法と言われる 1 9 7 3年 ながら、 1 のリハビリテーション法の制定があったことを見逃すことはできない。 このようにアメリカの障害者福祉、社会福祉にとって画期的な意義をもっ「重 度障害者の自立生活思想・運動」の発展の背景には、 リハビリテーション法の 9 8 8年になってアメリカ連 展開が大きく影響を及ぼしているのである。そして 1 邦議会に提出きれた 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」は、 1 9 7 3年のリハビ リテーション法以来の障害者の公民権や機会均等にかかわる画期的な内容をも った法案であると言われている。その法案内容の進歩性のゆえに、その制定が 実現するか否か、実現するとしても、何時、その内容がどのように修正された 形でなされるかはもちろん定かで、ないが、ここでは現時点でのその法案の骨子 を紹介しておきたいと思う。それは同法案が、アメリカの障害者の社会参加促 進の根源となった 1 9 7 3年リハビリテーション法の改正、すなわち障害者の公民 権の一層の保障、拡大をテーマとしているからである。 1 1 アメリカにおけるリハビリテーション関係法の変遷の概要 そこで同法案の骨子を紹介するに先立つて、同法案提出の背景要因ともなる それまでのリハビリテーション関係法の変遷過程の概要を、まず簡単に検討し ておきたいと思う。 (一) 1 9 7 3年以前の動向 米国のリハビリテーション法は一般の障害者の職業訓練をはじめて法制化し た1 9 2 0年のスミス・フェイス法に始まり、 1 9 7 3年の大改正まで数回の修正がな 9 4 3年の改正では医療給付関係が追加され、障害者の範囲も身体障害 された。 1 9 5 4年の修正では連邦補助金の 者から精神発達遅滞者、精神病者へと拡大し、 1 比率も増大し、 1 9 6 7 年・ 1 9 6 8年の修正では、盲・ろうの重複障害の取り扱いの 9 7 0年代までには、関係給付も障害者の対象範囲も拡 研究も開始きれるなど、 1 -86- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) 大化された 2)。しかしながら、 1 9 7 0年代までのリハビリテーション法は職業 1 )、 ノ ビリテーション法の名称で呼ばれていたように、心身障害者の職業訓練と就職 にウエイトを置き、その能力開発には大きな力を注いで、障害者の社会参加の 促進に一定寄与してきたとはいえ、「職業的自立が困難」とみなされた重度│牢存 者は、職業ゴールやリハビリテーション対策から排除される傾向があった。 9 6 0 とはいえ、重度者も含む障害者の人権や社会的参加を重視する方向も、 1 年代の黒人層その他のマイノリティの公民権運動の台頭、公民権法の施行など の影響も受けて、次第に高まり、例えば、 1 9 6 8年には連邦政府の事業などに関 連するすべての建物のアクセス化を規定した「建築物障害除去法 J(公法90- 4 8 0 ) の制定や、公共交通機関の利用可能化を目指す「都市公共交通法 J(公法 91-453) の成立などにより、障害者のための環境条件整備も課題化され始め、 重度障害者のリハビリテーション対策のプログラム化も話題となっていったの である。 (二) 1 9 7 0年代の動向 (1 )1 9 7 3 年のリハビリテーション法改正 9 7 2年には重度者の自立生 重度障害者の軽視に対する反省の気運も高まり、 1 活サービス案が提出されて、大統領ニクソンの拒否権によってその成立はきれ なかったが、 1年後の 1 9 7 3年にはついに、重度障害者対策も重視しつつ、職業 の文字を取り去り、リハビリテーション法の大改正がなされるに至った。すな わち、同改正法のポイントの一つはより重度な障害者に優先して職業リノ、ビリ テーションを提供するとともに、職業生活に含まれない生活の充実も尊重する ことであった。そして同法の対象範囲には、脳性マヒ、進行性筋萎縮症、てん かんなどの発達障害も加えられた。 第二の主要な点は障害者の権利を法的にはじめて明確にして、障害者差別の 撤廃を広く明示したことである O 新たに加えられた 5 0 1条項以降では、まず 5 0 1 条項と 5 0 3条項において、連邦政府と契約を結ぶ民間企業に、障害者の雇用、訓 0 2条は 練、昇進などについて、積極的行動をとることが義務づけられた。また 5 2)国際社会福祉協議会日本国委員会編『欧米の障害者対策法制の概要一諸外国の障害者の 現状と課題一一j 1 9 8 2年、 1 4 3頁 。 < -87- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) 障害者の使用が可能となるように、建築物や交通機関の障壁の除去にかかわる 委員会を政府内に設置することを義務づけた。 0 4条項は連邦政府補助金と施策に関しての障害者差別を禁止した。す さらに 5 なわち、“適格な障害者は、何人たりとも障害をもっという理由のみをもって、 連邦政府から補助金や契約をもらっているいかなる事業においても、参加を阻 まれたり、受けるべき利益を損なわれたり、差別を受けることがあってはなら ない"とするものであり、そのために連邦政府の各省に対して実施の規則を制定 することが義務づけられているへこれにより大学を含めた教育機関、病院、地 方自治体、公共交通機関などにおける障害を理由とした差別が禁止され、社会 の種々の領域で障害者の参加や人権の保障が一定進展するに至ったのである。 そして障害者の全国的な圧力行動の広範な展開などにより、 1 9 7 7年に同法がよ うやく施行されるに至ったのは周知のとおりである。 (2 )1 9 7 8 年の法改正 1 9 7 3年法では重度者の優先的取り扱いは規定きれたが、自立生活サービスは 3 0条項に重度障害者のニーズ、に関する総合的調査が義務づ 含まれず、代わって 1 けられた。そしてこの調査の結果、多くの重度者の基本的ニーズが未充足であ ったこと、及ぴ、いくつかの自立生活センターのサービス利用をしている重度 者を対象にした新たな調査の結果、利用障害者の身体的機能の向上、就労機会 の拡大、施設から地域生活への移行機会の増大、及ぴ、移動ニーズの充足とい 9 7 8年の法改正の直接要因のー った状況が明らかにされた 4)。この調査結果は 1 っとなったが、小島蓉子氏によれば、自立生活援助方策に先駆的に取り組んで いたニュージャージー州によって、障害者一人当たりの施設収容経費に比べて 在宅自立生活援助費がより低いコストで職業機会などの社会参加度の効果性が 3)国際社会福祉協議会日本国委員会編『欧米の障害者対策法制の概要一諸外国の障害者の 現状と課題- j1 9 8 2年、 1 4 4 1 4 8頁 。 4)高嶺豊「アメリカにおける自立生活運動と行政の関わり」日米障害者自立生活セミナー中 9 8 3 年 、 3 0-31頁 。 央実行委員会編『日米障害者自立生活セミナー・報告書j 1 -88- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) 高いことが公表されたことへきらにはすでに 1 9 7 3年に創設されたパークレー 自立生活センターの運動などに代表されるように、重度者の自立生活運動側か らの自立生活制度化要求運動の展開などによって、 1 9 7 8年の法改正が実現する に至るのである。 この法改正は、第 7章を設けて、「自立生活の総合的サービス」を規定したも のであり、就労者はもちろんのこと、「就労の見込みのない」重度障害者が、地 域の自立生活・統合生活に向かっためのリハビリテーション・サービスを保障 する法的根拠をはじめてうちたてたのである 6)。 同法は具体的には、(1)重度障害者に就労というゴールも含め、自立して生 活し得るための総合的な自立生活サービスを行うこと、(2)サービスの運営機 関として自立生活センターの設立と運営に際して連邦補助金を交付すること、 (3)センターの管理と運営については、障害者自身の実質的な参加を前提と すること、(4)自立生活援助のためのサービスとして、センターは、ニーズ認 定のためのカウンセリング、障害者の法的及ぴ経済的な権利に関するアドボカ シ一、自立生活技術訓練、住宅照会、介助者の照会と訓練、等々のサービスを 提供すること、(5)その他、盲老人のための自立生活サービスを行うこと、な どを規定した 7)。 こうして、自立生活センターへの公費補助は一応確立し、そのことは各地に 多くのセンター設立を促し、これまで施設・病院や家庭で管理的保護下に置か れていた重度障害者が、地域での自立生活を形成しうる社会的基盤が一定確立 するに至ったのである。 (3)その他の主要なリハビリテーション関係法 その他、障害者、特に重度障害者の人権保障や自立生活形成に直接、間接的 に影響をもった重要な法律として、一つは著名な 1 9 7 5年の全障害児教育法(公 法7 4 1 4 2 )があげられる。同法は適切な公教育に対する障害をもった子供達の 5)小島蓉子『国際障害者福祉J誠信書房、 1 9 8 1年 、 1 1 7 1 1 8頁 。 6)向上書、 2 3 8頁 7)障害者自立生活セミナ一実行委員会編『障害者の自立生活 j 1 9 8 3年、 2 1 6 2 2 3頁 。 -89- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) 諸権利を法的に明らかにしたものである。 同法は、.①すべての障害をもっ子供達が特別な教育と彼らの独特な諸ニーズ を満たすように企画された関連サービスを重視する、自由で適切な公教育を利 用できることを保障すること、②障害を持つ子供達や彼らの両親及ぴ保護者達 の諸権利が守られることを保障すること、③州、!と地方にすべての障害をもった 子供達の教育が提供されるように援助すること、及び、④障害を持った子供達 を教育するための諸努力の有効性を評価し、保障すること、などを目的に制定 されたものである。 こうして同法は、リハビリテーション法5 0 4条D項の規定とともに、それまで 障害者専用のスペシベミル・スクールでの教育に依存していた障害児に、統合教 育を中心に一層充実した教育機会を提供するのに寄与しており、自立生活サー ビスそのものを提供するのではないが、障害者の自立生活を促す基礎的な条件 整備の役割も果たしているのである。 また同じ 1 9 7 5年には、発達障害者援助及ぴ人権法(公法9 4 1 0 3 )が制定され た。同法は精神発達遅帯、脳性マヒ、自閉症などの発達上の障害をもっ人々が 最も制限を受けない状況の中で、彼らの発達上の可能性を最大限にするように 企画されている処置、サービス及ぴリハビリテーションを利用する権利をもっ ていることを明らかに示したものであり 8)、障害者の公民権を発達障害者にま でひろげることを意図したものである。 このようにして 1 9 7 0年代には、重度者も含むいろいろな種別の障害者の人権、 公民権、社会参加権を法的に認める様々なリハビリテーション関係法が制定さ れ、障害者の人権保障の基盤確立に一定寄与したのである。 (三) 1 9 8 0 年代の動向 もちろん法的な権利が認められるだけでは具体的な障害者の人権は守られな い。それが実際に守られるためには、法を実現するために必要な連邦や州、あ るいは法の遵守を義務づけられる諸機関の予算的裏づけや、担当省の条例の施 8 ) WorldI n s t i t u t eonD i s a b i l i t y .,A V e r yB r i e lSummary0 1D i s a b i l i t yL e g i s l a t i o ni nt h e U n i t e dS t a t e s0 1America , pp.2-3。 -90- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) 行とそれを各州、地方が遂行していく態勢などが確立されなければならない。 1 9 7 0年代に成立したこれらの進歩的な法律はその後必ずしも順調に条例化され、 その理念がすべて具体化されたわけではない。その遵守を義務づけられる関係 9 8 0年代に入り新保守主義の立場にたって「小さな政 機関の強い反対や、また 1 府」を推進するレーガン政権下において、障害者の公民権は発展と制約のシー ソーゲーム的状況に置かれていると言ってよい。 (1 )1 9 8 0年代における公民権の後退傾向 9 7 0年の都市 障害者の公民権制約の例は一つには交通手段政策にみられる。 1 公共交通法や 1 9 7 3年の 5 0 4条を受けて、米運輸省は 1 9 7 9年に 5 0 4条項に基ずいた 条例を制定した。同条例は、障害者に利用できる交通機関を明確に定義づけ、 金画への障害者自身の参加を要請し、各地域に対し基幹交通網も障害者にも利 用可能にするための猶予を 1 0年間と定めたのである。 しかし、全米公共交通協会 ( A P T A )、その他多くの交通関連機関の同条例へ の反発、特にパスのアクセス化への反対は強く、 1 9 8 1年連邦控訴裁判所は運輸 9 7 9年条例は 5 0 4条項に規定された権限を越えており、障害者のための交通 省の 1 機関に関しては、各地方自治体に任せよ、という判決を下した。そこで運輸省 は1 9 8 1年 7月暫定的な条例を制定し、各自治体当局に障害者の交通機関対策の 自主的選択をゆだねるとともに、障害者用の特別な輸送手段対策の必要性も認 めたのである 9)。この結果、一般の公共交通機関の障害者のためのアクセス化の 促進は制約されることになったのである。また 1 9 8 6年の規則では、例えばノ〈ス の障害者利用対策に関しては、一般パスのアクセス化(リフト化)か、 ドアツ ードアという特別輸送サービスか、あるいは両者の組み合わせという三方式の いずれかをパス機関は採用すべきことが要請された。これは障害者の交通対策 として一歩前進とはいえ、一般パスのアクセス化をしなくてもよいこともはっ きり肯定したという意味では、制約を大きく残したのである。 また、 1 9 8 4年には障害者の公民権全体が制約される裁判所判決がなされてい 9)全米障害者評議会編『第 1回日米障害者協議会 資料 I I 自立に向かつて J国際障害者 9 8 3年 、 7-8頁 。 年日本推進協議会、 1 -91- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) る 。 1 9 8 4年 2月2 8日、最高裁判所は G r o v eC i t yのケースで少数派や婦人、障害 者および、老人の公民権保護を大胆に制限するという判決を下した。これらの集 団を保護する公民権法令はすべて、“連邦の財務援助を受けるいかなる事業ない r o v eC i t yケース以前で、は、これらの しは活動"における差別を禁止している。 G 法令は連邦の財務的援助を受けている施設、機関の一部分である各々の事業及 ぴすべての事業における差別を禁止するものと解釈されてきた。しかしながら G r o v eC i t yのケースでは、最高裁判所はこの永く確立されていた解釈を修正 し、連邦基金を直接に受けている施設、機関内部の事業だけが差別禁止法令で カバーされるだけであるという判決を行ったのである。この判決の結果、ある 施設、機関の内部で公民権に対して異なった対応を導いた。すなわち、ある施 設、機関内でも、連邦基金を直接受けている部局は差別を禁じられ、一方直接 に基金を受けていない部局は差別禁止の義務から解放されたのである。 0 4条項という障害者の公民権法のもとで、の訴訟請求は G r o v eC i t yケ また、 5 ースを根拠に、裁判所から却下された。例えば、ある飛行機会社から差別を受 けて訴訟をおこした障害者は、彼が旅行していたその飛行ルートが連邦の補助 を受けていなかったという理由で、裁判所から請求に対する却下の判決を受け たのである。また別のケースでは、一人の教師がてんかん発作にかかった後に その教育上の仕事から解雇されて、不当解雇の訴訟をおこしたが、彼の所属す る機構が全体として実質的な連邦の援助をたとえ受けていたとしても、彼が教 えていたその教育部門では連邦補助を直接受けていなかったという理由のため に、自らの訴訟を継続することができなくなったという状況も発生した 10)。 9 8 0年代ではレ一方、ンの福祉抑制、福祉財政削減政策の影響を受け その他、 1 て、障害者の人権を促す諸政策、事業の進展もたびたび制約されたのである。 (2 )1 9 8 0年代の障害者対策立法の動向 一方、レーか、ン政府の小さな政府の推進や社会の保守化傾向にもかかわらず、 障害者運動の力量と障害者の人権を守る社会的勢力の成長や、社会的弱者に対 1 0 )D i s a b i l i t yR i g h t sE d u c a t i o nandF u n d ., C i v i lR i g h t sR e s t o r e d -D ψa tf o rR e a g a n , 1 9 8 8, p p . 1 2, A d m i n i s t r a t i o n -92- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) する公民権法のもつ社会的意義に関する世論の支持の強さなどにより、 1 9 8 0年 代においても、 1 9 7 0年代の進歩的な法制の理念も継承され、それらの一定の具 体化も着実に図られている。 9 7 8年の公民権委員会修正法(公法95-444)では公民権委員会の権 例えば、 1 限を障害に基づく差別に対する保護を含むように拡大させた。 1 9 8 0年には施設 に入所している人々に関する公民権法(公法96-247)の制定により、施設に入 所している障害者にも公民権の適用がなされるに至った。そして 1 9 8 2年の投票 権修正法(公法97-205)では、投票権を行使するために援助を必要とするいか なる障害者も、そのような援助を与えられることが法的に定められた。さらに 1 9 8 4 年には老人および障害者のための投票アクセシビリティー法(公法984 3 5 ) が成立し、投票場所のアクセス化が要請されるに至った 11)。 一方、リハビリテーション法は 1 9 8 4年の改正に続く 1 9 8 6 年の改正(公法79- 5 0 6 ) では一定の法修正、 リハビリテーション施策の追加が行われた。 そこでは、第 6章において、州、│が重度障害者のための雇用維持サービスを始 めたり、進めたりするための補助金を交付すること、職業リハビリテーション・ サービスのーっとしてリハビリテーション工学を導入すること、障害をもっア メリカ・インディアン対策を強化すること、全米障害者評議会の権限や役割を 強化すること、及ぴ、州リハビリテーション機関に助言を行うことを目的とし た自立生活委員会を各州は新たに設置すること 12)、などが定められた。また周 年、精神病をもっ人々のための保護及び権利擁護法(公法99-319)が成立して、 保健社会福祉長官に対して精神病をもっ人々の諸権利を保護し、擁護するよう に企画された公的システムを確立し、管理運営するための手配を行うことが指 示された。 さらに 1 9 8 8年には、公民権法の適用を制限した 1 9 8 4年の最高裁判所の判決結 果を覆す法案が成立した。 1 9 8 8年 1月にまず上院を通過して、レーガン大統領 の拒否権発動の脅しにもかかわらず、同年 3月下院でも多数議員の支持のもと o p . c i , . tp 3 . 1 1 ) WorldI n s t i t u t eo nD i s a b i l i t y ., 1 2 ) 久保耕造訳「米国リハビリテーション法の 1 9 8 6年改正について JHYDP 情 報j第 7巻第 6号、 1 9 8 7年 、 6 5頁 。 -93- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) 表│ 年次 広法番号 法 アメリ力における障害者対策立法の変遷 律 1 9 6 8 9 0 4 8 0 建築物障害除去 1 9 7 0 9 1 4 5 3 都市公共交通法 名 王 要 規 干 呈 連邦資金によって建てられたか、連邦政府から借りているす べての建物を利用可能なものとすること 地方行政機関が、利用可能な公共交通のための設備とサービ スを計画しなければならないこと。 法律の規定によって連邦政府から助成を受けててる交通設備 が利用からなものでなければならないこと。公道資金を横断 歩道の改善のために利用することを認めること。 1 9 7 3 9 3 8 7 連邦補助による公道に関 する法律 1 9 7 3 9 3 1 1 2 リハビリテーション法 1 9 7 5 9 3 3 9 1 運輸省歳出法 老人や障害者の利用不可能な公共輸送設備の購入と施設の建 築の禁止。 1 9 7 5 9 4 1 0 3 発達障害援助及ぴ人権法 発達障害者に対する保護と権利擁護制度の設立。発達障害者│ のための審議会の各外│の設置。 1 9 7 5 9 4 1 4 2 全障害児教育法 障害児に対して可能なかぎり制約の少ない場所での無料の適 切な教育保障。 1 9 7 5 9 4 1 7 3 全国住宅法修正法 連邦資金による住宅の障壁の除去。住宅・都市開発省の中に 障害者のための自立生活局を設けること。 リハビリテーション、総 州のリハビリテーション事業の中に自立生活を最優先課題と 1 9 7 8 9 5 6 0 2 合的サービスおよび発達 して位置づけること。自立生活センターに連邦資金を支出す ること。 連邦政府の補助金を受ける各種事業について有資格の障害者 障害修正法 に対する差別を行ってはならないこと。建築と交通の障害除 去委員会の設立。 1 9 7 8 9 5 4 4 4 公民権委員会修正法 同委員会の権限を障害に基づく差別に対する保護にまで拡大 すること。 1 9 8 0 9 6 2 6 5 社会保障障害修正法 所得保障給付の計算において自立生活に必要な費用を控除す ることによって労働阻害をとりのぞくこと。 1 9 8 0 9 6 2 4 7 1 9 8 2 9 7 2 0 5 施設入所者に関する公民 権法 投票権修正法 老人及び障害者のための 施設に入所している障害者にも公民権の適用がなされること。 障害者が投票権を行使するために必要な援助を行うこと。 1 9 8 4 9 8 4 3 5 1 9 8 6 9 9 5 0 6 リハビリテーション法 重度障害者の雇用維持サービスへの補助金の交付、全国障害 者評議会の役割の強化、自立生活委員会の設置など。 1 9 8 6 9 9 3 1 9 精神病をもっ人々のため の保護及び権利擁護法 精神病をもっ人々の諸権利を保護し、擁護するように企画さ れた公的システムを確立し、管理運営すること。 投票アクセシビリティ法 投票所のアクセス化を義務づけたこと。 連邦政府が財政的援助や契約を結んで、いる機関、施設などの 1 9 8 8 公民権回復法修正廻章 あらゆるプログラムや活動における障害による差別の禁止を 再確認し、それらのプログラムや活動における障害者の公民 権を回復させること。 本表は G .DejongandR .L i f c h e z .,P h y s i c a lD is a b i l i t yandP u b l i cP o l i c y,S c i e n t i f i cAmericanVol2 4 8 No6,June 1 9 8 3,P42 に掲載された障害者対策立法の変遷の要約(佐藤久夫訳)をベースに、最近の動向を若干加筆したもの である。 -94- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) で、公民権回復法(修正I X 章)が制定された。 リハビリテーション法5 0 4条項も含む同公民権回復法は、連邦政府からの補助 を受けているすべての施設、機関に、人種、皮膚の色、出身国、性、障害、あ るいは年令に基づいた差別を禁じた公民権が広範な適用範囲に及ぶことを再び 確立させたのである 13)。これにより連邦政府の財政的援助を受ける施設、機関 は、“そのいかなるプログラムあるいは活動においても"障害などを理由とした 差別が許きれないことが再確認され、障害者の公民権回復に寄与したのである。 そして同法成立の背景には、公民権運動関係者や障害者運動のインパクトがあ ったことも看過されてはならない。 1 1 1f 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について (ー)同法案の連邦議会提出までの経過 きて、リハビリテーション法5 0 4条項以来、障害者の公民権の強化、拡大を目 指す 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法J(TheAmericansw i t hD i s a b i l i t i e s t i o n n a lC o u n c i lont h e Acto f1988=ADA)案は、全米障害者評議会 (TheNa 9 8 8年春の連邦議会に法案として提出 Handicapped=NCH)により策定され、 1 されたものである。 NCHは1 9 7 3年のリハビリテーション法第 4章の 1 9 7 8年修正法によって設定 され、教育省内部の一助言委員会として始まり、 1 9 8 4年のリハビリテーション 法修正(公法9 8-221) によって、連邦政府内部の独立機関となったものであ る 。 NCHの委員は、大統領によって任命され、アメリカ合衆国の障害者コミュ 5名から構成される。そして NCHは、障害者に関するすべて ニティを代表する 1 の法律、事業、政策を調査し、必要に応じて、大統領や議会などに提言するこ とや、障害者を社会統合するための促進要因を強めたり、その疎外要因を除去 したり、あるいは障害者の独立や尊厳に寄与することを目的とした障害者の立 法上の事柄を大統領や議会に勧告することをその使命として任命されている。 そしてその任務の一環として NCHは、アメリカにおける障害者の生活の生産 性と質の向上を狙いとした連邦事業を分析して、立法上の勧告をまとめた報告 1 3 ) TheNewYorkTimes, T h u r s d a y, March3,1 9 8 8 0 ‘ -95- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 31 ) を1 9 8 6年 2月までに大統領と議会に提出するよう指示され、同年同月「自立へ 向かつて-障害者に関する政府の法律・事業の評価及び立法上の勧告 Jの報 告書を策定したのである 14)。 同報告書は具体的には、機会均等法、雇用、交通、住宅、個別的援助など障 害者の人権保障に関する主要な 1 0の分野の現状と課題を分析し、これからの方 9 7 3年のリハビリテーション法 向性を勧告したのである o 特に機会均等法は、 1 5 0 4条項を中心とした従来の障害者公民権法の問題点は、「人種、皮ふの色、性、 宗教、あるいは出身国を理由にした差別を禁止する他の法律に較べ、その適用 範囲が狭いことであり、州間商業活動、大衆宿泊設備及び住宅事業に従事する 企業による雇用など多種の活用は……障害による差別禁止法からは除かれてい て、人権保護法としての中心的目的を実現していない」がゆえに、「適用範囲が 広く、障害を理由にした差別を禁止する明瞭で、、一貫した、執行可能な基準を l 5 ) とし もっ、障害者の機会の均等を求める総合的な法律を設定すべきである j て提起されたのである。 このように障害者に対する差別禁止の強化と適用範囲の拡大などを目指す機 会均等法は当時の連邦議会からは無視され、翌年の 1 9 8 7年 2月 、 NCHは再び機 会均等法をベースとした障害者差別禁止法案づくりに着手して、 1 9 8 8年 3月 1 1 9 8 8年の ADA法」を作成し、大統領と議会に提出して、法案として審議対象 とされるに至るのである。そして同法案の実現に向けて、 1 9 8 8年 5月の全米自 立生活センター協議会 ( N a t i o n a lC o u n c i lf o rI n d e p e n d e n tL iv ing=NCIL) でもその支援が検討され、各議員への支持のとりつけや広範な同盟者づくりの 運動も展開きれている。 1 4 ) 全米障害者評議会『自立へ向かつて一障害者に関する政府の法律・事業の評価および立 1 9 8 6 年 2月)国際障害者年日本推進協議会、 1 9 8 8年 。 法上の勧告一j ( 1 5 ) 向上報告書、 2 0頁 。 -96- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法Jについて(定藤) (二) 1 9 8 8年の ADA 案の概要 16) ( A )1 9 8 8年の ADA 案に関するフェイス・シート 9 8 6年の NCHの報告書の中の基調勧告の ①同法は「自立へ向かつて」という 1 一つであった。 ①同法は雇用、住宅、公共宿泊施設、交通、コミュニケーション関係、及び、 州と地方行政の諸活動といったような領域で障害を理由とした差別を禁止する。 5名以上の従業員をもっ商業活動を行う雇用者、連邦公平住宅 ①この法律は 1 法でカバーきれる住宅供給者、公共宿泊施設、交通会社、放送あるいはコミュ ニケーション関係に携わるすべての個人や会社、及び、、州、│や地方行政などに適 用きれる。 ①同法は差別を明確に定義づけており、そこには、様々な形で故意に除外す ること及ぴ故意でなく除外すること、隔離すること、劣等なあるいは効果の劣 るサービス・利益ないしは活動、建築物や交通及び、コミュニケーション上の障 壁、正当な設備をつくらないことや、差別的な資格基準と実施基準、などが含 まれている。 ①この法律は差別とはならない行動内容も明記しており、これらの行動には、 全部が全部障害に関係しているとは限らない不平等な待遇、等々が含まれる。 ①建築・移動の障壁基準委員会 (ATBCB) は建築、移動などのアクセシビリ ティの最低限拘束されるガイドラインを策定するであろう。この最低限の基準 に準じた諸規則が、司法長官、アメリカ合衆国雇用機会均等委員会、住宅・都 市開発省長官、運輸省長官、連邦コミュニケーション委員会、及び、商務長官 によって刊行きれるであろう。 9 7 3年のリハビリテーション法5 0 3条項及び5 0 4条項を無効にしない ①同法は 1 だろうし、これらの条項のもとで発せられたすべての規則は十分な効果と効力 を持続しつづけるであろう。行政的実行手段には、行政上の救済、連邦裁判所 の中での活動の私的な権利、金銭上の損失、法的救済、及び、連邦基金の停止、 1 6 ) TheN a t i o n a lC o u n c i lo nt h eH a n d i c a p p e d ., TheA m e r i c a n sωi t hDi s a b i l i t i e sActo f 1 9 8 8 AD r a f tB i l l . 門 i ny 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) などが含まれる。 ( B )1 9 8 8年の ADA 案の条項ごとの要約 第 1条一ショート‘タイトル この法律は 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法と呼ばれる。 第 2条一調査結果と目的 小条項 ( a )は、障害をもった人々についての国会の調査結果の見解、社会の 中での彼らの不利な地位、彼らに対する差別の重大き、及び、アメリカにとっ てそのような差別の犠牲が大きいことを提示している。 小条項 ( b )は、障害者に対する差別の除去を目指した明確で、包括的な国の法 令を制定することに焦点を置いた同法の全体的な目的についての声明を行う。 第 3条一定義 同法の中で、使われた重要用語の定義を行っており、そこには、“障害に基づい 9 7 3年のリハビ た"“身体的あるいは精神的障害"及ぴ“正当な設備"が含まれる。 1 リテーション法5 0 4条項のもとで存在している規則の中での定義に調和する形 で規定されている。“正当な設備"の定義は、アメリカ公民権委員会によって刊 行きれた「個々の能力の範囲を調整させること」という報告書から引用きれて いる。 第 4条-差別禁止の範閤 いかなる個人や機関も障害者を差別することは禁止されている。その差別禁 止の範囲は他の様々な公民権法と同様に広い規模に及ぶ。それには、商業活動 に携わり、かつ 1 5名以上の従業員をもっ雇用者や、連邦公平住宅法によってカ ノくーされた住宅供給者。公共宿泊施設、交通会社、放送やコミュニケーション 関係に携わる会社、州と地方政府、などが含まれる。 第 5条-差別禁止の形態 a )はどんな行動が法によって禁止された差別の内容にあたるのかを 小条項 ( 述べている。これらには、様々なタイプの故意に除外することや故意でなく除 外すること、隔離すること、劣等なあるいは効果の劣るサービス・利益・ある いは活動、建築物や交通及びコミュニケーション上の障壁、正当な設備をつく らないこと、さらに差別的な資格基準と実行基準、が含まれる。 小条項 ( b )は差別にはならない行動について明記している。これらには全部 -98- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) が全部障害に関係しているとは限らない不平等な待遇、等々が含まれる。 第 6条→主宅における差別 この条項は住宅における非差別要件の適用に関する基準を定めている。その 基準は上院司法委員会の中で連邦公平住宅修正法案の障害者の部分に関する最 近の改正から引用きれている。それらの主要な焦点は将来の住宅の設計と建設 におけるアクセシビリティにおカ通れている。 第 7条一設備のとりつけと障壁除去の義務に関する制限 小条項 ( a )は、障壁の除去や正当な設備のとりつけが、もしそうすることが プログラム、仕事、活動、あるいは今問題になっている施設・設備の存在を根 本的に変えたり、脅かしたりする場合には実施されることを要求きれることは ない、ということを規定している。 小条項 ( b ) は、障壁を取り除くために既存の建物や施設を改造する際には、 2年以内に行うという道理にあった期間を認めている。この期間は特別な建物 と施設を管理している規則によっては 5年まで拡げられ得る。 小条項(c)は、今ある大量交通システムのプラットホームや駅を実質的に改 造する際には、 1 0年以内に行うという道理にあった期間を認めている。 第 8条一規則 a )は、建物、施設、自動車、及び鉄道車両のアクセシビリティのた 小条項 ( めの最低限のガイドラインを出すように、建築・移動の障壁基準委員会に指示 している。 その条項の残りの部分は、次のものを含んだ法の要件を実施し、励行するよ うに連邦機関に指示している。 雇用 雇用機会均等委員会 住宅 住宅・都市開発省長官 交通 運輸省長官 公共宿泊施設 商務省長官 コミュニケーション 州と地方政府及び調整 連邦コミュニケーション委員会 司法長官(司法局) 第 9条一施行 同法の資格要件のための行政的実行手段を確立する。これらは行政上の救済、 可 ハ U 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 31 ) 活動の私的な権利、金銭上の損失、法的救済、弁護料及び連邦基金の停止を含 む 。 第1 0条一実施日 同法はその制定がなされた日に効力を発するであろう。 ( C )1 9 8 8年の ADA 案の草案 障害に基づいた差別に関する明確かっ包括的な禁止を確立することを目的と する。同法は連邦議会が召集された中で、アメリカ合衆国の上下両院によって 制定きれる。 第 1条 ショート・タイトル この法律は“ 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法"として引用されるだろう。 第 2条 調 査 結 果 と 目 的 ( a ) 調査結果の所見一議会は次の事柄を見出す- (1)3,6 0 0万人ものアメリカ人が一つ以上の身体的あるいは精神的な障害 をもっており、この数は全体としての人口が老齢化するにつれて増加してい る 。 (2)歴史的にみて、社会は障害者を孤立させ、隔離させようとしてきた 傾向があり、いくつかの改良にもかかわらず、障害者に対するそのような差 別が深刻かつ一層広がりをもった社会問題として存続している。 (3)障害者に対する差別は、雇用、住宅、公共宿泊施設、教育、交通、 コミュニケーション、リクリエーション、施設収容、保健サービス、投票、 そして公共サービスへのアクセス、といったような重要な領域で存続してい る 。 (4)障害者は、毎日、公然とした故意に除外すること、建築面や交通機 関及び、コミュニケーション上の障壁といった差別的な行為、過剰防衛な規則 と政策、既存の設備や実践活動を改善することの拒絶、排他的な資格基準と 実行基準、隔離、そして、効果の劣ったサービス、プログラム、活動、給付、 仕事及びその他の機会、などを含んだ様々な形態の差別に出くわす。 -100- i 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) (5)国勢調査のデータ一、国の世論調査、及び、他の調査は、障害者が 一つの集団としてわれわれの社会で劣等な地位を占めており、社会的、職業 的、経済的、教育的にひどく不利益を被っているということを証明してきた。 (6)障害者は制約と制限を負わされ、意図的に不平等な待遇の歴史に服 従させられ、われわれの社会の中で政治的に無力な地位に追いやられている 社会的に分離させられた少数派である。 (7)障害者に関する国家の適切な目標は、機会の平等、完全参加、自立 生活、及び、出来る限り市民としての経済的な充足性を保障することである。 (8)不公平で、不必要な差別と偏見が引き続いて起きることは、障害者が 平等の基準で競争する機会を与えないし、われわれの自由な社会が当然に保 障している平等な機会を追求するための機会も十分に与えない。そして合衆 国は、それらの差別と偏見が継続きれるために、依存と非生産性に起因する 何十億ドルもの不必要な出費がかかることになるのである。 ( b ) 目的一一同法の目的一一 (1)障害者に対する差別の撤廃のための明確で包括的な国の基準を示す こと。 (2)人種、性別、出身国及び宗教を基準として人々に保障されている差 別禁止の適用範囲に匹敵するような障害者に対する差別の禁止を行うこと。 (3)障害者に対する差別に取り組む明確で強力かつ首尾一貫した、実行 可能な基準を作り出すこと。 (4)障害者が日々直面する主要な領域の差別に取り組むために、議会の 4条の修正を励行し、商業を統 権限の広がりを可能にすること。そこには第 1 制し、州問の交通を規制する権限が含まれる。 第 3条 定 義 (1)ハンディキャップを基準として一一“ハンディキャップを基準として" という言葉は、身体的あるいは精神的な障害、認定された障害、あるいはこれ までの障害の履歴という理由によって意味づけられる。 (2)身体的あるいは精神的な障害一一“身体的あるいは精神的障害"という 概念は次のことを意味する一一 ハ υ 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 31 ) ( A )身体的障害あるいは病気、外見上の損傷、あるいは次にあげるものを 含んだ身体的の一つ以上の器官に影響を及ぼす解剖上の損傷。 (1)神経系 器官も含む ( I I)筋肉系 ( I X) 心臓器系統 ( V I I ) リンパ器系 ( I I I ) 特殊な感覚器と呼吸器また発声 (V) 生殖器 (V I)消化器系など ( V I I I ) 皮膚、及び(I X) 内分泌系 ( B )精神遅滞あるいは心理的遅滞、例えば精神発達遅滞、気質的な脳症候 群、情緒的あるいは精神的疾病、及び、、特殊な学習障害。 (3)認定された障害一一“認定きれた障害"という概念は、(2)の項目で定 義されたような身体的ないしは精神的な障害をもっているという意味ではなく て、身体的ないしは精神的な障害をもっているのと同様にみなされたり、ある いはそのように取り扱われていることを意味している。 (4)障害の履歴一一“障害の履歴"という概念は、身体的あるいは精神的障 害としての歴史をもっていたり、それらの障害をもっているとして間違って分 類されたことがあることを意味している。 (5)正当な設備一一“正当な設備"という概念は、身体的または精神的障害、 認定された障害あるいは障害の履歴をもった個々の人々に、特別なプログラム、 活動、仕事あるいは他の機会に有効に参加するための平等の機会を保障すると いう目的のために、装置やサービスまたは施設設備を供給したり、改造したり することや、または標準、基準、実践活動あるいは手続きを改変することを意 味している。 第 4条 禁 止 さ れ る 差 別 の 範 囲 (a) 概闘争一一いかなる人も次にあげるものに関してハンテV キャップに基 づく差別を受けるべきではない。一一 (1 )1 9 6 4年の公民権法 7章によって保護された雇用者の業務、職業紹介 所の業務、労働組合の業務、及ぴ訓練プログラム、 (2) 1 9 6 8年の公民権法 8章によって保護された分譲あるいは賃貸住宅、 (3 )1 9 6 4年の公民権法2 章によって保護されたすべての公共宿泊施設、 (4)人、品物、文書または情報の輸送業といった主要な事業に従事する 個人、会社及び機関、 -102- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) (5)ある州の活動、実践及び運営、あるいはある州の機関ないしは政治 的な支部機構、 (6)1 9 3 4年のコミュニケーション法の 1 5 3条に規定されたように、電線に よる放送あるいはコミュニケーションの主要な産業に従事する個人、会社あ るいは機関によって与えられた放送、コミュニケーションあるいは電気通信 事業。 ( b ) 解釈 (1) リハビリテーション法一この法律の中のすべては、 1 9 7 3年のリハビ リテーション法 5章に含まれている非差別規定を侵害したり、変えたりする ことはないし、あるいは同法の 5章に準じて連邦機関によって出された規則 を侵害したり、変えたりすることはないであろう。 (2)その他の法律一一この法律のすべては、身体的または精神的障害、 認定された障害、あるいは障害の履歴をもっ人達のための権利を、この法律 に与えられるよりももっと多く守ろうとするいかなる連邦法もいかなる州の 法律もあるいは州の政治的支部なども、無効にしたり、制限したりするよう に解釈することはないであろう。 第 5条 禁 止 さ れ る 差 別 の 形 態 (a)概自任一一この法律の 6条から 9条の中で制定した基準と手続きに従え ば、この部門の中で述べられた行動などはハンディキャップに基づく差別とな る 。 (1)サービス、プログラム、活動、利益、仕事あるいはその他の機会 (A) 概略一人を、障害に基づいて直接的にもあるいは契約や資格付与 または他の調整を通して次のいかなることにも服従きせることは差別的と なるであろう。 (i)サービス、プログラム、活動、給付、仕事あるいはその他の機 会に参加したり、それらから,恩恵をこうむる機会を否定すること、 (i)他の者に与えられるのに比べて平等で、はないサービス、プログ ラム、活動、給付、仕事、あるいはその他の機会に参加したり、それら から利益を受ける機会を個人に与えること、 AU 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) ( i i i ) 個人に対して、他の者に供給したよりも効果の劣ったサービス、 プログラム、活動、給付、仕事、あるいはその他の機会を提供すること、 ( i v ) そのような行動が他の者に与えたのと同じように効果のあるサ ービス、プログラム、活動、給付、仕事、あるいはその他の機会を人に 与える必要があるにもかかわらず、一般とは異なった、分離的なサービ ス、プログラム、活動、給付、仕事あるいはその他の機会を個人に与え ること、 (v) 差別をしている機関、組織あるいは個人に対して一定の援助を 与えることによって、差別を助長したり、永続させること、 ( vi)計画や助言委員のメンバーとして参加する機会を個人に与えな いこと、 ( v ii)他方、他者によって享受されたいかなる権利も特権も利益もあ るいは機会も楽しむことを個人に制限すること、 ( B )達成水準-この条項の目的のために、平等に効果のあるべきサービ ス、プログラム、活動、利益、仕事、あるいはその他の機会は、身体的な いし精神的障害、認定された障害、あるいは障害の履歴をもっ人達とその ような障害を持たない人達に対して同ーの結果あるいは同ーの達成水準を つくりだすことを要求されるのではないが、しかしそのようなサービス、 プログラム、活動、利益、仕事、あるいはその他の機会は、そのような障 害をもっ人々に対して、その人々のニーズに最もふさわしい統合化された 環境の中で、同じ結果を得、同じ利益を取得し、あるいは同ーの達成水準 に到達するために平等の機会を与えなければならない。 ( C )参加のための機会一この条項に従って与えられた分離的ないしは一 般とは異なったプログラムや活動の存在にもかかわらず、身体的あるいは 精神的障害や認定された障害を、さらに障害の履歴をもっ人は、分離的で はない、一般とは異なるものではないプログラムや活動に参加する機会を 否定きれるべきではない。 ( D )管理方法一一個人や会社や機関は、直接的に、あるいは契約上のない しは他の調整を通して、次のょっな管理の基準のあるいは管理方法を利用 することはない。 -104- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) (i)障害に基づいた差別に影響を与える管理方法 (i)身体的あるいは精神的障害、あるいは障害の履歴をもっ人達に 対して与えられたサービス、プログラム、活動、利益、仕事、あるいは その他の機会の目標の達成を覆したり、実質的に損なうという目的ある いは影響をもっ管理方法 ( i i i ) 共通の管理的統制を受けたり、あるいは同じ州の機関である他 者の差別を永続させるような管理方法。 (2)障壁一一それは差別的である一一 ( A ) 次のものを確立したり、あるいは押しつけたりすること。 ( B ) 次のものを除去できなかったり、除去することを拒否すること。 障害を理由として人々のアクセスを妨げたり、人々の参加を制限するす べての建築物や交通あるいはコミュニケーション上の障壁。 (3)設備一身体的ないしは精神的障害、認定された障害あるいは障害の 履歴をもっ個人に、プログラム、活動、仕事あるいはその他の機会を適用き せたり、利用させたりまたはそれらに参加させるためにふきわしい設備をつ くることを失敗したり、あるいはつくることを拒否することは差別である。 (4)標準と基準一次のようないかなる資格標準や選択基準ないしは受給 資格基準も押しつけたり、あるいは適用したりすることは差別である。 ( A )身体的あるいは精神的障害、認定された障害、あるいは障害の履歴 という理由で個人を排除したり、不利な立場に追い込むような基準。 ( B )特別なタイプの身体的あるいは精神的障害、認定きれた障害あるい は障害の履歴をもっ人々を排除したり、不利な立場に追い込むような基準。 但し、そのような基準や標準が、特別なサービス、プログラム、活動、 給付、仕事あるいはその他の機会の非常に重要な構成部分を形成したり、 それらに参加したりする能力にとって必要で、あり、かつ実質的にその能力 に関連しているといつことが明らかである場合には、差別とはいえない。 (5)関係あるいは提携一身体的あるいは精神的障害、認定された障害あ るいは障害の履歴をもっ他の人と、ある人とが関係や提携があるという理由 で、ある人に平等のサービス、プログラム、活動、給付、仕事、その他の機 会を排除したり、別な方法でそれらを否定することは差別である。 FD ハU 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) (b) 差別とはならない行動一次のようなことで個人に対して平等なサービ ス、プログラム、活動、給付、仕事、あるいはその他の機会を排除したり、別 な方法で否定することは障害を理由とした差別とはみなされないであろう。 (1)全部が全部身体的あるいは精神的障害、認定きれた障害、ないしは 障害の履歴の存在やまたは結果に関連していないという理由のために。 (2)特別な仕事、プログラム、活動ないしは機会の非常に重要な構成部 分を形成したり、それらに参加する能力に必要で、もあり、かつ実質的に関係 していたり、さらにはそのような形成や参加が正当な設備の取り付けによっ ても達成することができないような資格標準、選択基準、作業標準あるいは 受給資格基準を合法的に適用していることに基づいた理由の場合。 第 6条 住 宅 に お け る 差 別 (a)概田佳一 5条項 ( a ) の資格にもかかわらず、次のことは住宅に関する差 別行為である。 (1)次のような人を、身体的あるいは精神的障害、認定された障害ある いは障害の履歴という理由で、売ったり、賃貸したりする際に差別すること、 あるいは他方、同じ理由で買い手や借り手に住宅を利用できなくしたり、拒 否すること。 ( A ) その買い手、借り手 ( B )住宅が売れたり、賃貸されたり、ある いは利用できるようになる後に、そのような住宅に住んだり、ないしは住 む意志のある人、 ( C ) そのような買い手や借り手と提携したすべての個 人 。 (2)次のような人を、身体的ある精神的障害、認定された障害、あるい は障害の履歴の理由で、住宅の販売、賃貸の期間や状態や権利において、あ るいはそのような住宅に関連した諸サービスや施設設備の供給において、す べての人に対して差別すること。 ( A ) そのような個人 ( B )住宅が販売されたり、賃貸されたり、利用 可能になる後に、そのような住宅に住んだり、あるいは住みたいと,思って いる個人 ( C ) そのような個人と提携したすべての個人 a ) には差別として次のようなもの (b)住宅における障壁の除去一小項目 ( 106- r 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) が含まれる。 (1)もしも身体的あるいは精神的障害、認定された障害、障害の履歴を もっ人がその家屋で快適に住むためにふさわしい改造が必要とされる場合に、 彼らが占有している現在の家屋をふさわしく改造することを許可することを、 彼らを犠牲にして拒否すること。 (2)一つの住宅を使ったり、享受するための平等な機会をそれらの人に 与えるために、ある種の設備が必要とされるとき、規則、政策、実践あるい はサービスにおいてふさわしい設備を作ることを拒否すること。 (3)この法律の施行の日から 3 0ヶ月の後、認定された複数家族が最初に 所有する住宅を次のような方法において設計し損なったり、建築し損なうこ と 。 ( A )そのような住宅の公共的かつ共通の使用部分は、身体的あるいは精 神的障害をもっ人々に容易に利用可能て、あり、便利であること。 ( B )そのような住宅の中の全ての建物における全入口のドアは車イス利 用者が通るのを可能にする十分な広さがあること。 ( C )そのような住宅の中の全ての建物は基本的に普遍的な適応性のある 設計を含んでいること O (c)定義一この節の中で使われだ“認定された複数家族の住宅"という言葉 の意味について (1) 2つ以上のユニットを持っている建物で、 1つ以上のエレベーター を持っていること。 (2) 2つ以上のユニットが一階にある別の建物に入っているユニット。 第 7条 設備の取り付けと障壁除去の義務に関する制限。 ( a ) 改造への脅かし (1)概略ー 5条項 ( a ) の中で要求された建築物、交通及び、コミュニケー ション上の障壁を除去することを失敗したり、拒否すること、あるいはふさ わしい設備を作らなったり、拒んだりすることは、もしそのような障壁の除 去や設備の取り付けがその本質的に重要な性質を根本的に変えたり、当のプ ログラム、活動、事業、あるいは施設の存在そのものを脅かすような場合に -107- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 31 ) は、障害に基く差別の不法な行為とはならないであろう。 (2)その他の活動-障壁の除去がプログラム、活動、事業、あるいは施 設の根本的な変更という結果になったり、それらの存在を脅すという理由で 要求きれないという場合には、身体的あるいは精神的障害や、認定きれた障 害、あるいは障害の履歴を持つ人々に容易に利用可能で、便利で、あるというこ とが絶えずみられる時、この法律の他の要件に従ったり、プログラム、活動、 あるいはサービスをする必要があるような他の行動をとる義務を持ち続ける べきである。 ( b ) 改造のための時間 (1)概略ーもし現存する建築物と施設の実質的な改造が、 5条 ( a ) で要 求されたように、建築物、交通、あるいはコミュニケーション上の障壁を除 去するために必要ならば、そのような改造がもし他の法律や規則によってよ り早く要求きれていないのであれば、この法律の施行の日から 2年以内の適 当な時期になされるべきである。 (2)例外-この法律の 8条に従って刊行きれた規則は、建築物や施設の 特別な形の改造を完了きせるために正当に必要とされる場合に、この法律の 施行の日から 5年以内までが認められる。 (c)大量交通システム (1)概略ーもし現存する大量交通のプラットホ?ムや駅の実質的な改造 がこの法律の 5条( a )で要求されているように、建築物、交通及び、コミュニケ ーション上の障壁を除去するために必要で、あるならば、この法律や規則によ ってより早く要求きれているのでなければ、そ乃ょっな改造のために、この 法律の施行の日から 1 0年を越えない範聞の適切な時期での実施を認めている。 (2)効力一上述の(1)は、他の型の建築物、交通及びコミュニケーショ ン上の障壁を除去する要求と自動車や鉄道車輔の要求の申請とを含んだこの 法律の他の要求に従うべきという交通サービス提供者の義務に影響を及ぼす ものではない。 第 8条 規 則 ( a ) 建築物及ぴ移動障壁基準委員会 -108- 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) この法律の施行の日から 6ヶ月以内に、建築物及ぴ移動障壁基準委員会は、 この法律の要件に従って、建築物、施設、自動車及び鉄道車輔に関する建築、 交通、及ぴコミュニケーションのアクセスビリティのための要求を確立するた めに、現存する利用可能なデザインのための最低限のカγ ドラインを刊行しな ければならない。 ( b ) 司法長官 (1)概略ーこの法律の施行の日から 1年以内に、司法長官は、同法が州 や諸機関及ぴ州の政治的な部局に適用されるに際して、この法律の要求の実 行と施行のための諸規則を公布しなければならない。 (2)最低限のカゃイドラインーアメリカ合衆国の司法長官はこの条項のも とで要求きれた規則の時宣を得た発展を調整すべきであるし、この法の施行 から 6ヶ月以内に、そのょっな規則の発展のための最低限のガイドラインを 刊行しなければならない。 (c)雇用機会均等委員会 (1)雇用者の実践 ( A ) 概略ーこの法律の施行の日から 1年以内に、雇用機会均等委員会 は、同法が雇用者、職業紹介所、労働組織及び職業訓練プログラムに適用 されるに際して、この法律の実施と施行のための規則を公布しなければな らない。 ( B )禁止-上述の ( A )で公布された規則では職業申請手続、被用者の雇 用、被用者の奉給と権利に関する差別を禁止しなければならない。 (2)要求ー上述の (A)で公布きれた規則は、身体的あるいは精神的障害、 または障害の履歴を持つ人々のうちで働いている人達全ての代表力を増やす ために新規採用などの努力の要求を含むべきであるし、そのような新規採用 などの努力の発展、励行、及び周期的な修正のためのプロセスなどを確立し なければならない。 (3)雇用前の調査 ( A ) 概略ー(1)の ( A )で公布きれた規則では、雇用者は雇用前の身体検 査を行ってはいけないし、雇用の志願者が身体的あるいは障害の履歴を持 っているかどうかについて、あるいは障害の特質や厳しさについて、志願 一 109- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) 者の雇用前の調査をしてはいけないという要件が含まれなければならない。 ( B ) 許可される調査一雇用者側一 (i)雇用者は 5条 ( b )( 2 )のもとで許されている合法的な資格基準、 選考基準、実施基準あるいは適格基準を満たすために、志願者の能力に ついての雇用前の調査を行ってもよい。 (i)雇用者は、もし次の (I)(II)の条件で、志願者の就業より先に 行われた身体検査の結果で雇用の申し込みに条件を設けてもよい。 (1)全ての入社している被用者が身体的あるいは精神的障害、認 定された障害、または障害の履歴にかかわらず、そのような試験に従 わなければならない場合、 ( I I)そのような試験の結果がこの条項の要件に従うときにのみ用 いられる場合、 ( i i i ) 雇用者が次の (I)(II)の要件で、過去の差別の影響を正すため の改善的な行動をとること、あるいは身体的または精神的障害を持つ人 達の参加を増やすために、新規採用などの努力に従事することは、雇用 志願者に対してそのような志願者が身体的あるいは精神的障害を持って いるかどうか、あるいはそれらの障害がどの程度なのかを示すように求 めるかもしれない。 (1)もし雇用者が、要求されている情報がただそのような改善的 活動や新規採用活動などに関連して使われだどんな質問書類にもはっ きりと述べるか、質問書類がない場合は口頭で明確にする場合、 ( I I)もし雇用者が、その情報は自発的なものに基くという点で要 求されているということ、そのような情報が上述の(c)で規定されてい るように秘密を保たれるであろうということ、そのような情報を提供 することを拒むことによってどんな不利な待遇にも志願者や雇用きれ る者が従わなくてもよいであろっということ、そのような情報がこの 条項の要件と関連してだけ使われるであろうということを明確に述べ る場合、 ( C )秘密保持-この章に関連して含まれている志願者の健康状態や履歴 についての情報は、次の(i)(i)( ii i )を除いて、医療記録と同じように秘 ハU 1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) 密保持がなされるように、分離された方式で集められ、保管きれなければ ならない。 (i)スーパーパイザーやマネージャーは身体的あるいは精神的障害 を持つ人達の仕事や職務の制限を、そしてそのような人のための必要な 設備を知らせられるだろう。 (i)もしそのような状態が緊急治療を必要とするならば、救助の職員 などはそのために適切な場所を知らせられるだろう。 ( ii)同法に従って調査している行政官は要求に関する適切な 情報を s 提供されるであろう。 ( d )住宅都市開発長官一この法令の制定の日から 1年以内に、住宅都市開発 長官は、同法が売り手、地主、その他の住宅の供給者に適用きれるに際して、 この法律の要件の実施、施行のための規則を公布しなければならない。 ( e ) 運輸長官 (1)概略ーこの法令の制定の日から 1年以内に、運輸長官は、同法が州 と地方の交通組織に、そして輸送業務に従事している組織に適用されるに際 して、この法令の要件の実施、施行のための規則を公布しなければならない。 (2)基準-(1 )項で公布された規則は、(3)項の要件と矛盾しない自動 車と鉄道車輔のアクセスビリティに関する基準を含まなくてはならない。 (3)要求-州及び地方交通組織、自動車及び鉄道車輔、パス会社につい ては、(2)項で刊行された基準では以下の通りである。 ( A )同基準は、この法令の制定の日から 1年後に購入されたり、貸し出 されたり、修復される自動車や鉄道車輔が車イス使用者を含む身体的ある いは精神的障害を持つ人にとって利用可能で、あり、使用できることを保証 する。 ( B ) 同基準は、そのような経営者が十分な自動車や鉄道を購入したり、 獲得したり、あるいは改造する際には、 7年以内に、そのような経営者所 有の最高車輔数が車イス利用者を含む身体的あるいは精神的障害を持つ人 達にとって利用可能で、、使用し得るような自動車や鉄道車輔を少なくとも 50%は持つように認める。 ( C )同基準は、身体的あるいは精神的障害を持つ人のための保護的交通 '-111- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 3 1 ) や特別な交通サービスの使用が他の交通形態に対する補足として利用され ることを保証するが、しかし同時にそのことが、一般の人達に利用されて いる交通形態やサービスが車イス使用者を含む身体的あるいは精神的障害 を持つ人達にとって利用可能で、、使用できるという要件に影響を与えない ということも保証する。 (f)商務長官-この法令の制定の日から 1年以内に、商務長官は、同法が 公共宿泊施設の場所に適用きれるに際して、この法律の要求の実施、施行のた めの規則を公布しなければならない。 (g) 連邦コミュニケーション委員会一この法令の制定の日から 1年以内に、 連邦コミュニケーション委員会は、同法が放送や電信によるコミュニケーショ ン業務に携わっている者に適用きれるに際して、この法律の実施や施行のため の規則を公布しなければならない。テレビの放送局に関しては、そのような規 則には、表題をつけられたプログラムや広告及び声明の割合を進歩的に増加さ せるための要件が含まれなければならない。 ( h ) 有効なコミュニケーションーこの条項で公布された規則は、次に述べ るようなコミュニケーションの障壁の禁止と除去のための要件や、身体的ある いは精神的障害を持つ人々との有効なコミュニケーションを保証するためにふ きわしい設備をつくるための要件を含むであろう。 (1)コミュニケーションの障壁一“コミュニケーションの障壁"という概 念は次のことを意味する。サービス、プログラム、活動、給付、仕事あるい はその他の機会に関して身体的ないしは精神的障害を持つ人達との有効なコ ミュニケーションを獲得するのに必要な装置、サービス、機構あるいは表示 と情報媒体がないこと、あるいは装置、サービス、機構あるいは表示と情報 媒体の修正がないこと。 (2)要件の例ー適切な状況の中でコミュニケーションの障壁を禁じたり、 除去すること、あるいはふさわしい設備を作ることは、次のことを要求する。 ( A )聴覚障害者用電話のような視覚教材、言語標識やアルファベット文 字盤のような音声を出せない人達のためのコミュニケーション拡大装置を 提供したり、維持すること。 ( B )資格のある職員スタッフによる通訳、読書、音声ないしはビデオテ "1 1 9 8 8年の障害をもっアメリカ人法」について(定藤) ープ、及ぴ、ノートとりのようなサービスを供給すること。 ( C )説明をつけるような装置、すなわち音声誘導ループと赤外線の FM. A Mコミュニケーションを含んだ、聞き取り援助装置や電話自動中継サービ ス装置を開発したり、効果的に運用すること。 ( D )点字や音声情報のような選択的な表示と情報媒体、及び、音声アナ ウンスやその他の情報のための目に見える警報機を開発したり、効果的に 運用すること。 ( E ) コンビュータ一端末の音声入力と出力、採用されたソフトウェア、 電話の付属品としての点滅ランプ及ぴ電話の送受話機の増幅機といったよ うな装置、サービス、機構及び表示と情報媒体を改良すること。 第 9条 施 行 (a)行政活動 (1)彼や彼女、あるいはどんな階層の個々人もこの法律が侵害きれ、障 害に基く差別を受けていたり、受けさせられようとしていると,思っている人 は誰でも、この法律の 8条項に従って発せられた規則に関連して有効でかある として、そのような行政的実行手段や改善策を、彼や彼女自身、あるいは代 理人によって追及する権利を持つべきである。 (2)改善策ーそのような規則を施行する機関は、命令に従うこと、連邦 基金の削減、連邦許可の取り消し、金銭上の損害などを含んだ全ての適切な 改善的な救済措置を命ずる権限を持たなければならない。 ( b ) 市民行動 (1)申し立ての権利一彼や彼女、あるいはどんな階層の個々人もこの法 律が侵害きれて、障害に基く差別を受けていたり、受けさせられようとして いると,思っている人は誰でも、彼や彼女自身あるいは代理人によって、合衆 国の地方裁判所の中で法的救済や金銭上の損実、あるいはその両方のために 市民行動を申し立てる権利を持たなければならない。 ( 2)行政的施行-9条項 ( a )で期待されたように、行政的実行手段と改善 a )(1)によってカバーさ 策を徹底して追求することは、この法律の 4条項 ( れる雇用者、職業紹介所、労働者組織及び訓練フ。ログラムに関するものを除 一 113- 社会問題研究・第 3 8巻第 2号 ( ' 8 9 . 3 . 31 ) いて、この小条項のもとでの市民行動を申し立てるための前提条件とはなら ないであろう O そのような徹底追求は次のことがなければ要求きれなければ ならない。 ( A ) 9条項 ( a )で期待されているような行政的実行手段と改善策が役立 たない場合。 ( B )そのような実行手段がこの法律のもとで禁止された差別への告訴の 申し立てから 1 8 0日以内に決定を下きれなかった場合。 (c)追加的な証言一この条項のもとでもたらされたいかなる行為において も、法廷は行政的訴訟手続の記録を受けとらなければならないし、当事者の依 頼などにより追加的な証言を聞くべきであるし、また法廷の決定が適切で、ある ような救済を行わなければならない。 (d) 権限ーアメリカ合衆国の地方裁判所はこの法律のもとでもたらきれた 行動の権限を持たなければならない。 (e)免除一川はアメリカ合衆国憲法修正 1 1条のもとで、この法律を侵害し た場合に連邦裁判所の訴訟から免れられないであろう。 (f)弁護士費用-この条項に従って開始された行動や行政的手配の中で、 法廷や機関はその裁量において、合衆国以外の有力な当事者に対して裁判費用 や妥当な弁護士料を保証するし、また合衆国は個人と同じ費用を負う責任があ る 。 (g) 立証責イ壬ーこの法のもとでもたされた行政的手続きや市民行動におい ては、あるケースの問題で資格基準や選択基準あるいは適格基準の合法性を立 証する責任や、個別的で妥当な設備の取りつけ、あるいは建築、交通またはコ ミュニケーション上の障壁を除去することが、プログラム、活動、事業、ある いは当の設備の存在を根本的に変えたり、脅かすであろうという弁護論を立証 する責任は、差別に関する法律を侵したと申し立てられた個人や機関などにあ るのであり、原告側にあるのではない。 第1 0条 実 施 日 同法はその制定がなされた日に効力を発しなければならない。 d斗 A