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P47~P73
 大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
市教育委員会
一般会計
歳出決算及び予算
(単位:千円)
区
平成 21 年度決算
分(款)
第
1
部
63,339,666
60,900,741
62,305,217
63,274,575
60,860,963
62,283,647
教育総務費
12,003,938
11,875,449
12,016,650
小学校費
22,767,163
22,071,908
22,534,007
中学校費
8,339,544
7,832,799
8,323,044
15,222,816
14,803,026
14,970,059
特別支援学校費
1,639,960
1,623,874
1,682,422
社会教育費
3,033,389
2,398,128
2,465,692
保健体育費
267,765
255,779
291,773
65,035
28,365
21,570
56
11,413
0
22,835,730
13,406,053
21,429,468
17,887,913
13,403,916
14,280,438
17,887,913
13,403,916
14,280,438
4,947,817
2,137
7,149,030
86,175,396
74,306,794
83,734,685
教育費
高等学校費
総務費
諸支出金
第
平成 22 年度決算 平成 23 年度予算
2
部
教育事業費
教育施設設備事
業費
諸支出金
合計
(市教育委員会より提供データを外部監査人が加工)
6.外郭団体の概要
市では、限られた組織・人員と財源のなか、複雑・多様化する市民ニーズ
に的確に対応するため、市が直接事業を実施するよりも一層事業効果が高め
られる場合や、民間資金の導入や民間との共同経営によって、より経済的に
事業が実施できる場合に、公益法人や株式会社等を設立して活用してきた。
これらの団体は、良質な市民サービスの提供とまちづくりの推進に重要な役
割を果たしている。
市はこれらの団体のうち、出資・出えんの比率や財政支援の有無などを考
慮し、特に市が監理すべき団体を「監理団体」、監理団体以外で本市が20%以
上を出資・出えんしている団体を「報告団体」、その他の本市の関与が大き
い団体を「事業関連団体」とし、これらを「外郭団体」として位置づけ、必
要な指導・調整に努めている。
市教委事務局では、財団法人大阪市教育振興公社、財団法人大阪市国際平
和センター、及び財団法人大阪市学校給食協会を所管団体としている。各財
団の概要は以下のとおりである。
(1)
財団法人大阪市教育振興公社
1)法人の概要
47
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
名称
財団法人大阪市教育振興公社
所在地
大阪市中央区船場中央4‐1‐10‐203
(船場センタービル 10 号館2階)
設立目的 財団法人大阪市教育振興公社(以下「市教育振興公社」という。)
の事業の目的は、市の幼児教育・学校教育の充実向上、生涯学習の
円滑な実施とその発展、及び人権教育に寄与することにより、市の
教育・文化・体育の向上と振興に協力することである。
設立年月 昭和 51 年7月
2)組織図
(出典:市教育振興公社ホームページ)
48
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
3)事業の概要
実施事業の内容 平成 22 年度の主な事業内容は以下のとおりである。
①校園小補修等整備事業
市立学校園の施設・設備小破補修工事、貯水槽等清掃委託事業など
延べ 7,862 件を実施した。
②学校施設・設備補修等事業
学校施設・設備緊急補修等や、学校ガスヒートポンプ空調機管理・
技術指導等を実施した。
③生涯学習等推進事業
学習ルームの運営や大阪市音楽団演奏事業運営、生涯学習自主事
業、クラフトパーク自主事業、こども文化センター自主事業、中央
公会堂運営事業(管理代行)を実施した。
④生涯学習センター事業
総合生涯学習センター、弁天町市民学習センター、阿倍野市民学習
センター、難波市民学習センター、城北市民学習センターの管理代
行を実施した。
⑤出版事業
「教育大阪」の刊行、その他「教育便覧」「新一年生の手引」「の
びのび」の販売、「大阪市 PTA だより」の刊行を実施した。
⑥キッズプラザ事業
⑦クラフトパーク事業(管理代行)
⑧児童いきいき放課後事業
実施校数は 297 校1分校、登録児童数は 63,828 人(1校平均 214
人)であった。
⑨青少年教育事業
こども文化センターの管理運営代行、体験プログラム等の提供や研
修・啓発事業等の地域こども体験学習事業を実施した。
事業計算書
平成 22 年度
(一部抜粋、
事業活動収支の部
単位:千円)
事業活動収入
基本財産運用収入
1,855
特定資産運用収入
1,145
事業収入
5,766,271
校園小補修等整備事業収入
692,989
学校施設・設備補修等事業収入
353,578
生涯学習等推進事業収入
180,055
生涯学習センター事業収入
427,655
出版事業収入
49,159
キッズプラザ事業収入
49
242,442
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
クラフトパーク事業収入
児童いきいき放課後事業収入
青少年教育事業収入
205,760
3,473,147
141,481
補助金収入
139,235
雑収入
31,561
事業活動収入計
5,940,068
事業活動支出
校園小補修等整備事業費
658,997
学校施設・設備補修等事業費
335,751
生涯学習等推進事業費
163,762
生涯学習センター事業費
366,141
出版事業費
37,809
キッズプラザ事業費
373,339
クラフトパーク事業費
192,362
児童いきいき放課後事業費
青少年教育事業費
3,462,382
128,288
管理費支出
204,361
事業活動支出計
5,923,195
事業活動収支差額
16,872
投資活動収支の部
投資活動収入
敷金返還収入
6,634
特定資産取崩収入
30,000
投資活動収入計
36,634
投資活動支出
特定資産取得支出
50,522
固定資産取得支出
52,011
投資活動支出計
102,533
投資活動収支差額
(2)
△65,898
財団法人大阪市国際平和センター
1)法人の概要
50
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
名称
財団法人大阪国際平和センター(ピースおおさか)
所在地
大阪市中央区大阪城2-1
設立目的
財団法人大阪市国際平和センターは、戦争と平和に関する情報・資
料の収集・保存・展示等の事業を基礎に、平和問題に関する調査研
究・学習・普及等の事業を行うことにより、戦争の悲惨さを次の世
代に伝え、平和の尊さを訴え、平和の首都大阪の実現をめざし、世
界平和に貢献することを目的として、平成元年7月に、大阪府・大
阪市の共同出資(各出えん比率 50%)により設立された。
設立年月
平成元年7月
2)組織図
理事会
会長
常務理事
理事長
事務局
(館長)
評議員会
(出典:財団法人大阪国際平和センターホームページ)
3)事業の概要
実施事業の内 平成 22 年度の主な事業内容は以下のとおりである。
容
①展示事業
②企画事業
③その他の事業
④資料の収集・提供
⑤広報・啓発
⑥大阪空襲死没者を追悼し平和を祈念する場の運営
⑦日本平和博物館会議
⑧「ピースおおさか友の会」
事業計算書
平成 22 年度
(一部抜粋、
単位:千円)
一般会計
平和基金
特別会計
グッズ等
販売
合計
特別会計
事業活動収入
基本財産運用収入
2,609
0
0
81,827
0
0 81,827
会費収入
868
0
0
868
事業収入
2,885
0
0
2,885
132
0
0
132
繰入金収入
0
0
0
0
平和基金収入
0
403
0
403
平和基金取崩収入
0
0
0
0
補助金収入
雑収入
51
2,609
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
グッズ等販売事業収入
0
0
88,323
403
1,669 90,396
事業費支出
23,225
0
0 23,225
人件費
13,271
0
0 13,271
240
0
0
240
資料収集・制作費
1,585
0
0
1,585
常設展示等充実費
8,127
0
0
8,127
管理費支出
65,098
0
0 65,098
人件費
22,341
0
0 22,341
事務費
42,756
0
0 42,756
平和基金積立金支出
0
0
0
0
繰入金支出
0
0
0
0
企画事業支出
0
1,051
0
1,051
グッズ等販売事業費
0
0
1,349
1,349
基本金繰入支出
0
0
0
0
事業活動支出計
88,323
1,051
0
△648
事業活動収入計
1,668
1,668
事業活動支出
印刷・出版費
事業活動収支差額
(3)
1,349 90,724
319
△328
財団法人大阪市学校給食協会
1)法人の概要
名称
財団法人大阪市学校給食協会
所在地
本部事務所
大阪市西区江戸堀3丁目6番 45 号
東部事務所
大阪市東住吉区今林2丁目8番 10 号
設立目的 市の学校給食は昭和7年に開始し、昭和 16 年 12 月に大阪市国民学
校給食組合が発足され、昭和 24 年4月に大阪市学校給食協会と改称
した後、昭和 29 年5月財団法人大阪市学校給食協会(以下「市給食
協会」という。)が設立された。
市給食協会では、安全安心で質のよい学校給食用食材を安定的に調
達し、学校給食の充実発展に貢献するため、納品業者の選定、食材
の調達、食材の配送、食材代金の請求・支払い及び食材に関する情
報の収集・発信から構成されており、一連の業務を通じて、「食」
の安全の確保や「食」を選択する力の習得など、食育の推進に取り
組んでいる。
設立年月 昭和 29 年5月
2)組織図
52
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
(出典:市給食協会ホームページ)
3)事業の内容
実施事業の内容 平成 22 年度の主な事業内容は以下のとおりである。
①納入業者の選定
学校給食食材納入業者選定委員会において、別に定められた登録基準に従
い、立地条件・営業状態・信用状況・衛生状態・供給能力について書類審
査及び実地調査を経て適格業者を選定登録している。
工場の実地調査は、新規申請、工場施設設備の改修工事を行った場合、品
目を追加した場合、異物混入などの事故がたびたび起こっている場合を対
象とするほか、前回調査から5年以上経過した工場についても抽出し、調
査を実施している。工場調査の結果を受け、平成 23 年度登録業者数は、納
入業者 103 社、製造工場 332 社となった。
申請
調査
調査
調査
合格
納入
製造
対象
実施
保留
納入
製造
業者
工場
工場
工場
工場
業者
工場
新規
1
13
13
13
0
0
12
継続
103
320
38
36
2
103
320
計
104
51
49
2
103
332
333
納入業者1社、製造工場1社が、食品表示偽装事案が発生したため申請
を辞退した。
②給食用食材の調達
現在、学校給食協会では2ヶ月に1回、翌月及び翌々月使用の給食用食
材購入審査会を開催し、品質・価格等の審査を行い、生鮮野菜について
は、概ね2週間に1回、生鮮果実については1回分ずつ登録業者による
入札を行っている。なお、牛乳については、国の定める学校給食用牛乳
供給対策要綱に則り決定された業者から購入している。
平成 22 年度は 335 品目について調達を実施した。
③給食用食材の品質管理
a.日常的検品
53
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
業者ごとに納入された給食用食材を、毎日抜き取り、品質・鮮度・量
目・産地の検品を行っている。
生鮮食品は(冷凍食品は解凍のうえ)におい・味・形状等を慎重に検品
している。
b.定期検査
細菌等微生物及び栄養成分・食品添加物・容器包装資材等について、大阪
市立環境科学研究所等の検査機関に、定期的に分析検査を依頼し、事故の
防止に万全を期している。
食材に係る問題については、随時、業者に対して指導を行っている。特に
対策を講じる必要がある事案については、文書での報告を求めている。
④給食用食材の配送
平成22年度は、市立小学校300校、市立特別支援学校9校、国私立小学校
2校、市立幼稚園3園計311校園を対象として、年間でのべ25,061,170人
分の給食用食材を調達した。
給食用食材は、原則として、いったん給食協会(本部事務所または東部事
務所)に納品され、協会職員が抜き取りで検品を行い、安全性や品質を確
認したのち、搬送コースごとに積み替え、各学校園に配送している。
本部事務所は16区13コース、東部事務所は8区9コースを配送担当して
いる。
事業計算書
平成 22 年度
(一部抜粋、
単位:千円)
一般会計
物資会計
合計
事業活動収支の部
事業活動収入
基本財産運用収入
2
0
2
特定資産運用収入
111
13
125
0
5,129,541
5,129,541
交付金収入
302,483
0
302,483
負担金収入
7,064
0
7,064
27,773
0
27,773
337,435
5,129,555
5,466,990
69,257
0
69,257
0
5,548,896
5,548,896
128,144
0
128,144
26,611
0
26,611
224,013
5,548,896
5,772,910
44,920
0
44,920
事業収入
雑収入
事業活動収入計
事業活動支出
事業費支出
人件費
給食材料費支出
配送費支出
その他
事業費支出計
管理費支出
人件費
54
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
その他
5,171
0
5,171
管理費支出計
50,091
0
50,091
事業活動支出計
274,105
5,548,896
5,823,001
63,329
△419,340
△356,011
7,554
0
7,554
0
411,786
411,786
0
0
0
7,554
411,786
419,340
運営準備預金繰入支出
18,411
0
18,411
退職給付引当預金繰入支出
44,503
0
44,503
固定資産支出
414
0
414
投資活動支出計
63,329
0
63,329
△55,775
411,786
356,001
事業活動収支差額
投資活動収支の部
投資活動収入
特定資産取崩収入
運営準備預金取崩収入
価格変動準備預金取崩収入
固定資産売却収入
投資活動収入計
投資活動支出
特定資産繰入支出
投資活動収支差額
(4)
所管外外郭団体との役割分担
市教育委員会は所管外外郭団体に業務を委託しているが、当該業務に係
る委託料を支払っているのみであり、補助金・交付金の交付はない。
なお、年間契約額が 1,000 万円以上の委託業務契約を結んでいる所管外
外郭団体は以下のとおりである。
55
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
委託名称
委託先
支出金額(千円)
平成 22 年度教職員定期・採用時健康診断業務委託
(財)大阪市環境保健協会
39,704
埋蔵文化財調査・収蔵施設移転業務
(財)大阪市博物館協会
12,978
(財)大阪市博物館協会
13,346
(財)大阪市博物館協会
97,091
(財)大阪市博物館協会
27,731
(財)大阪市博物館協会
40,120
(財)大阪市博物館協会
20,295
(財)大阪市博物館協会
17,991
北区曽根崎2丁目における埋蔵文化財発掘調査業務
契約
北区中之島五丁目における中之島蔵屋敷跡発掘調査
業務契約
平野区長吉長原東3丁目における長原遺跡発掘調査
業務契約
浪速区恵比須西3丁目における埋蔵文化財発掘調査
業務契約
北区茶屋町における茶屋町遺跡発掘調査業務契約
天王寺烏ヶ辻2丁目における難波京朱雀大路跡発掘
調査業務契約
学校施設消防用設備(自動火災報知機)等点検業務 (財)大阪市建築技術協会
120,976
自家用電気工作物保守点検業務
(財)大阪市建築技術協会
24,557
エレベーター保守点検業務
(財)大阪市建築技術協会
175,046
エレベーター保守点検業務
(財)大阪市建築技術協会
82,468
消防設備点検業務
(財)大阪市建築技術協会
61,861
自家用電気工作物保守点検業務
(財)大阪市建築技術協会
11,143
消防設備点検業務
(財)大阪市建築技術協会
17,188
通信設備保守点検業務
(財)大阪市建築技術協会
11,107
大淀小学校他7校教室改造工事委託
(財)大阪市建築技術協会
33,237
校舎補修等整備事業
(財)大阪市建築技術協会
1,545,442
(財)大阪市建築技術協会
25,876
(財)大阪市建築技術協会
12,827
校舎補修等整備事業
(特別支援学級教室改造等)
埋蔵文化財発掘調査・収蔵施設事務室等改修工事業
務
第3.監査の結果及び意見
1.総括
憲法第26条は、国民の教育を受ける権利及び教育の義務を定めており、国
は教育条件を整備すべき義務を負っている。
これを受け、教育基本法は、「学校教育」については公立学校・私立学校
を問わず「公の性質」を有するものと定めているが(第6条第1項)、中で
も「義務教育」については、国及び地方公共団体がその実施責任を負うもの
とし(第5条第3項)、社会において自立的に生きる「基礎」を培い、国家
及び社会の形成者として必要とされる「基本的な資質」を養うことを目的と
しており(第5条第2項)、地方公共団体は教育条件の整備の側面における
56
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
セーフティーネットとして極めて重要な役割を担っている。
このような役割の下、市は学校教育の目標として「未来に向けてたくまし
く生きる
なにわっ子
の育成」を掲げ、学校教育の質を高め、子どもの生
きる力をはぐくむ教育活動の充実と、教育コミュニティを支えるしくみづく
りを推進するとしている。
具体的な取組みとしては、子どもの生きる力をはぐくむ教育活動の推進と
して、①確かな学力の確立、②豊かな心とすこやかな体の育成、③一人ひと
りの個性を伸ばす教育の充実を掲げ、その基礎となす質の高い学校教育の推
進として、①学校力の向上、②教職員の資質・能力の向上を掲げている。
確かな学力の確立について、市教育委員会では学力向上を図る指標として
用いている全国学力・学習状況調査の結果では、改善の兆しは見られるもの
の、多くの項目で全国平均を下回る状況であり、原因の分析と取組みの絶え
ざる見直しが求められるとともに、学校力や教職員の資質・能力の向上が必
要不可欠である。
学校力の向上に係る取組みについては、校長のマネジメント力が問われる
ことから、校長の裁量権を見直し、学校からの提案を考慮した予算のあり方
や地域住民の意見をより反映するよう学校評価制度の充実が求められる。ま
た、管理職育成については、魅力が薄れている現状の改善と若い年齢層から
のリーダー育成の方策が重要である。
教職員の資質・能力の向上に係る取組みについては、教員が教育現場で子
どもに向き合う時間を確保できるよう業務負担の軽減が求められ、教員への
パソコン配置の充実や市教育委員会がより現場をサポートする体制づくりの
見直しが必要である。また、その他にも、教職員人事考課のあり方、若手教
員の育成、教職員不祥事の根絶に向けての取組みが課題としてあげられる。
子どもの安心・安全の観点からは、学校は国民の教育を受ける権利を保障
するための「公の性質」を有する場所であるから、教育現場では子どもが安
心・安全に、そして快適な環境下で学べる学校づくり、地域連携が重要であ
る。特に施設に係るところは、厳しい財源事情の中、教室におけるエアコン
の設置は緒についたところであり、また、耐震化工事については一部未実施
となっている。この耐震化工事が未実施となっている校舎等の改修・改築工
事は安心・安全のためにも優先されるべきである。
なお、財源確保の観点からは、市の公立小学校の約3割が11学級以下とな
っており、小規模化が進んでいる中学校と共に、学校適正配置の取組強化が
求められる。また、処分検討地については、平成22年度予算では、売却予定
11件、売却収入12,333百万円を見込んでいたが、そのうち売却が実現した物
件は、2件841百万となっており、一層の進捗管理が求められるほか、市の
直営となっている大阪市音楽団やクラフトパークのあり方についての検討が
必要である。
具体的な課題については下記に記載している。
(1)
数値から見る大阪市教育行政の実態
57
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
下記それぞれの資料からも分かるとおり、この10年間における市の教育
に係る歳出は市全体の予算縮減に合わせて大幅な減少となっている。特に
教育費における生涯教育関連などの社会教育費、教育施策関連などの教育
総務費、教職員人件費が大きく削減されている。また、教育事業費が削減
され、設備の充実化が遅れていると想定される。
一方、教育の充実度に視点をあてると、例えば生徒1人当たり教育費は
435千円と他の政令指定都市と比較して高額となっており、また1学級あ
たりの生徒数並びに先生1人当たりの生徒数も他の政令指定都市に比べて
少なく、これらの数値からは他市に比べ、教育施策に力を入れていること
が分かる。
しかし、教育施策の成果という点では、例えば一般に比較される全国学
力・学習状況調査の結果を見ると、習熟度別少人数授業や、放課後ステッ
プアップ事業の充実などの施策により、僅かに改善の兆候は見えるものの、
ほとんどの項目でまだ全国平均以下となっている。
1)10年間の歳出並びに児童・生徒数の推移
過去10年の教育費と教育事業費の推移は下図のとおりである。教育費
とは、主に教職員の給料等、学校の維持運営に関する経費等、教育委
員の報酬及び事務局職員の給料等である。教育事業費とは、施設の建
設・改修等及び学校用地の買収に関する経費等である。以下の表をみ
ると、教育費、教育事業費ともに、10年前に比べて大幅に減少してい
ることがわかる。
特に、教育費の減少が著しくなっているのは、人件費や社会教育費、
指導研修費が減少しているのが主たる要因である。
合計
144,935
127,628
116,289
114,815
109,683
98,109
96,036
77,748
86,175
74,307
※市教育委員会提出データを外部監査人が加工した。
過去10年間の小学校の児童数はほぼ横ばい、中学校、高等学校は年々
58
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
減少、特別支援学校は年々増加している。
合計
199,308 197,301 196,287 195,384 195,985 196,224 195,543 195,525 195,173 193,614
※市教育委員会提出データを外部監査人が加工した。
2)他の政令指定都市比較
ⅰ) 児童・生徒1人当たり教育費
政令指定都市の公立学校における1人あたりの教育費は、以下のグ
ラフのとおりである。市の1人あたり教育費は平均に比べて高いこと
がわかる。
※教育委員会事務局作成資料による。
※数値は学校基本調査に準じる。
※対象は、教育委員会所管の市立学校・市立幼稚園(私立、県立は
含まない)である。
※千葉市、川崎市、横浜市、大阪市は幼稚園を含んでいない。
ⅱ) 1学級あたり児童・生徒数
小学校・中学校文部科学省の「公立義務教育諸学校の学級編成及び
59
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
教職員定数の標準に関する法律及び地方教育行政の組織及び運営に関
する法律の一部を改正する法律の概要」によると学校編制の標準は、
小学校1年生35人、小学校2年生∼中学校3年生40人とされている。
下図をみると、小学校、中学校ともに市の1学級当りの児童・生徒数
は文部科学省の標準を下回っており、また、他の政令指定都市に比べ
て少ないことが分かる。
平成23年5月1日(単位:人)
※平均は政令指定都市(資料提出のない仙台市を除く)平均である。
ⅲ) 先生1人当たり児童・生徒数
市の先生1人あたりの児童・生徒数は、平均を下回っており、他の
政令指定都市と比較して少ないことが分かる。
平成23年5月1日(単位:人)
※平均は政令指定都市(資料提出のない仙台市を除く)平均である。
ⅳ) 児童・生徒の学力
第3.2.(2)1)全国学力・学習状況調査で述べるように、全
国的に実施されている学力・学習状況調査における市の小学生、中学生
の国語、算数・数学の平均正答率を見ると、算数B(小学生の算数の
知識技能を実生活に活用する力などを見るもの)は全国平均を上回る
が、その他については全国(公立)平均より低い。
公表されている都道府県別の平均正答率データから求めた平均正答
率より、市の全国的な位置付けを見ると、全国平均を上回る算数Bを除
き、正答率が低い下位得点層に位置している。
(2)
市の教育施策における主な課題(まとめ)
今回の監査の実施により判明した、市の教育施策における主な課題は以
60
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
下のとおりである。
1)学校力の向上施策
ⅰ) 学力向上に向けた原因分析と取組みの絶えざる見直し
全国学力・学習状況調査の結果によると、改善の傾向は見られるもの
の、ほとんどの項目でまだ全国平均以下となっており、徹底的な原因
分析と取組みの絶えざる見直しが求められる。
ⅱ) 学校評価制度の充実
学校評価の目的は、学校運営の改善を目的に取組むものであるとと
もに、学校の取組みを保護者・地域に周知し、また、保護者等の意見
を教育に反映するなど、開かれた学校づくりを推進していくためのも
ので、学校評価制度の定着・充実は学校力向上に欠くことが出来ない。
①
学校評価における教職員の意識改革の必要性
学校評価をより効果的なものとするには、教職員全員が学校力向
上に取組み、協力体制を構築していくことが必要である。
②
具体的な指標設定の必要性
学校評価の目標設定において、学校によっては、抽象的な表現で
の目標にとどまり、達成状況が測定困難な例が見受けられたので、
測定可能で客観的に評価できる指標を用いた目標設定が必要である。
③
学校評価の公表方法の改善
大阪市立学校管理規則第4条の2において、「校長は、教育活動
その他の学校運営の状況について、自ら評価を行い、その結果を公
表するものとする」としているが、具体的な公表方法は定めていな
い。外部監査アンケートによると、公表していない学校が25校、PTA
総会にて口頭による説明のみの学校が59校となっている。適切に広
く地域住民等に公表することが重要であり、学校ホームページなど
により広く地域に示す必要がある。
④
アンケートの実施
保護者や児童・生徒のニーズを把握する方法としてアンケート方
式がある。より実態に応じた学校運営の取組みがなされ、児童・生
徒や保護者の満足度も向上するものと思われる。
アンケートを積極的に学校評価に取り入れていく必要がある。
⑤
学校関係者評価の更なる充実
学校関係者評価は、自己評価の客観性・透明性を高めるとともに、
学校・家庭・地域が学校の現状と課題について共通理解を深めて相
互の連携を促し、学校運営の改善への協力を促進するために行われ
るものであり、非常に重要である。平成22年度では、学校関係者評
価は努力目標であり70.2%の学校で実施し、平成23年度に全学校実
施を目標としている。評価をより充実したものにするため、日常か
ら学校の取組みを知らせるなど普段からの努力や工夫が必要である。
ⅲ) 校長の裁量権の見直し
61
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
校長の裁量権を拡大し、学校力を高める必要がある。
小中学校の校長には、特色ある学校運営のためのリーダーシップが
期待されている。しかし、特に予算面では、各学校へは機械的に算出
された一般管理経費の学校維持運営費予算と「多様な体験活動推進事
業」等の予算が配当されるのみで、校長は、その範囲内で物品などの
購入を決定している。
特色ある学校運営のためにも、校長の裁量予算を認め、例えば、予
算枠を設定した上で、各校長に特色ある学校運営のための取組みにつ
いて提案を求め、その内容を選考することにより優先的に予算配分を
行うなど特色ある学校運営を実現するための仕組み作りが求められる。
ⅳ) 学校ホームページの充実
ホームページは情報提供手段として非常に重要な役割を果たしてお
り、特に学校においては、生徒や保護者だけでなく、地域住民への学
校行事等の情報提供や双方のコミュニケーション手段としても有効で
あり、開かれた学校づくりのために欠かせないものである。
しかし、ホームページの更新頻度が低く、十分に活用できていない
学校があり、学校サポート体制を強化し、学校ホームページの情報提
供能力や質の向上を図る必要がある。
2)教員の資質・指導力向上の取組み
学校における教員の資質・指導力の向上は、重要課題であり、具体的
には以下の取組みが必要である。
ⅰ) 若手教員の資質・指導力向上の施策
教員の指導技術は、個々の教員の不断の努力によって培われるもの
であるが、一方で、ベテラン教員から若手教員に「知」の財産が受け
継がれることも重要である。特に若手教員の割合が増えてきている今
日において、若手教員の指導技術を向上させ、市全体としての教員の
資質・指導力を保つことが急務である。
現在市で実施している、初任者研修、2年次研修に加えて、5年次
研修につながる3年次、4年次の教員に対しても継続した研修の実施
や校内研修支援「OJT事業」の充実等、研修の更なる強化を図る必要
がある。
ⅱ) 教員が教育に専念できる業務改善の取組み
教員が教育現場で児童・生徒と少しでも多くの時間を接することが
重要である。
教員は教育以外の業務に追われて、教員の資質・指導力向上の取組
みへの時間や労力が十分確保できていない現状がある。学校現場の負
担をできるだけ減らすよう、学校と市教育委員会事務局の役割分担の
見直しが求められる。
例えば、①教員の研修実施場所及び実施方法の工夫②パソコンの各
教員への配置による業務効率化③指導案のデータベースや教材の共通
62
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
利用の推進④学校徴収金事務(未納管理)の負担の軽減などがある。
他の業務改善についても、教員や教育委員会職員をメンバーとする
業務改善プロジェクトを立ち上げ、実施することが効果的であると考
える。
ⅲ) 教員の評価方法及び制度運用の見直し
①
評価結果分布の偏り
市教員の総合評価結果はいずれの年度も標準以上の評価に集中
(全体の99%以上)しているが、このことは教員の評価が絶対評価
であることから、大部分の評価対象者が標準以上の業績と能力を有
していることになる。このような評価結果が、現場での目標設定の
甘さ、あるいは現場教員の日常活動を厳しく評価しにくい風潮があ
ることから来ているとすれば、現場教員の資質向上には繋がらない
と思われる。
評価者に対する研修を徹底するとともに、評価結果を検証するな
ど、適正な運用を図るように努める必要がある。
②
中間管理職層の育成と人事評価制度の運用
評価・育成システムは、教職員の意欲・資質能力の一層の向上と
学校園の活性化を目的としたものであり、将来のマネジメント層を
育成するためのシステムとしては十分に機能していない。その評価
結果は勤勉手当に影響を与えるだけで、その後の教員としてのキャ
リアパスに活用されていない。
市におけるマネジメント層育成の取り組みは、一定実施されてい
るが、人材育成を目的とする人事評価制度においても、マネジメン
ト層の育成を意識した運用が必要である。
ⅳ) 教職員不祥事に対する取組みの強化
①
教職員不祥事の根絶に向けた取組みの強化
教育現場は、児童・生徒が生活する場であり、児童・生徒が接す
る教育現場の教職員には他の一般の公務員に求められる職業倫理以
上の倫理規範が課せられていると考えるべきである。とりわけ、教
員は、児童・生徒を教え育む担い手であり、児童・生徒の学習はも
とより人間形成にも重要な役割を担っている。平成21年度及び平成
22年度の教職員不祥事による処分状況を見ると、一部教職員に倫理
意識が欠如していることは明らかであり、処分件数・処分内容とも
に変化が見られない。
継続的に発生原因の分析を行うとともに、制度改善に努め、教職
員不祥事の減少・根絶の実績を残していくことが求められる。
②
児童・生徒、保護者に対する相談体制の充実と積極的な公表(体
罰等)
学校現場での教員による体罰・いじめその他の児童生徒の問題行
動等の児童生徒被害事案については、その事実がすべて学校園で把
63
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
握され、また適時に市教委事務局に報告されているわけではない。
学校現場での児童・生徒被害事案から児童・生徒を可及的速やか
に保護して必要な対策を取るためには、学校現場を管轄する市教育
委員会としての相談窓口の創設、あるいは市が行っている様々な相
談窓口の周知徹底など、既存の制度が十分に活用されるような方策
の検討が必要である。
③
迅速な事故対応と公表(個人情報の漏えい)
学校園における個人情報の取扱いについて、事故が発生した場合
には、当該教職員は速やかに状況を校園長に報告し、校園長は被害
の被害拡大防止又は復旧のために必要な措置を講ずるとともに、そ
の状況を市教育委員会に報告することとなっているが、拡大防止の
ための警察への遺失物届の提出及び保護者への報告が遅れている事
例がある。
児童・生徒及びその保護者のプライバシーが侵害される事態や、
個人情報が悪用されることによる不測の被害を未然に防止する観点か
ら、紛失時は遺失物届、盗難時は被害届を最優先に行い、該当する
児童・生徒の保護者への速やかな報告が求められる。
市教育委員会においては、事案発生時の報告基準や手順について、
明確化を図る必要がある。
④
USBメモリーに代わる個人情報管理の仕組みの構築
個人情報の入ったUSBメモリーの紛失事故が多発し、防止のため、
USBメモリー管理を強化することは当然であるが、これを未然に防
ぐための仕組みづくりが重要である。各教員へパソコンを配置し、
ウェブ上で個人情報管理を完結し、USBメモリーへの保存が不要と
なる仕組みとすべきである。
3)安心・安全への取組みの課題
ⅰ) 耐震化工事未了校舎等の工事促進
平成22年度末における耐震化割合は小学校98.0%、中学校97.1%、
高等学校54.9%、特別支援学校98.2%となっており、特に高等学校が
低い。
市における学校園の校舎等耐震化施策は平成27年度に完了すること
となっており、一定の評価が出来るところであるが、平成23年3月の
東日本大震災発生以後、比較的規模の大きい地震が続発しており、ま
た東南海地震の発生の可能性が指摘される今日、地震対策に対する安
全対応の考えは一変している。「地震の振動及び衝撃に対して倒壊し、
または崩壊する危険が高い」とされているIs値(第2次評価法)が
0.3未満の校舎等がまだ存在するが、安心・安全の観点から特に優先
して取組むべきである。
ⅱ) 老朽化した校舎の長期計画策定の必要性
大阪市の学校校舎は老朽化が進んでおり、今後10年間で耐用年数を
64
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
迎える築50年から築59年の校舎が219棟、さらに10年後の10年間で耐
用年数を迎える築40年から築49年の校舎が555棟と、今後大量の更新
需要が発生することが予想される。市は耐用年数60年を経過した校舎
を改築するとした場合、今後20年間の改築費を約1,178億円と見込ん
でいる。
市は校舎の耐震化施策と合わせて、平成27年度までの改築計画を策
定しているが、平成27年度以降も多額の改修・改築費が見込まれるこ
とから、長期の改修・改築計画を早急に策定する必要がある。
4)財源確保の課題
ⅰ) 学校適正配置の取組み
平成22年5月1日現在、市の公立小学校の約3割にあたる89校が大
阪市学校適正配置審議会答申での適正規模を満たさない11学級以下の
小学校であり、そのうち42学校が全学年単学級の規模の小学校となっ
ている。
適正規模化による効果を再確認し、対策チームの設置など統廃合に
向けた取組みを早急に進めていく必要がある。なお、中学校について
は適正規模についての議論が出来ていない状況にある。
ⅱ) 廃校管理業務の必要性の再検討
平成元年と平成7年に廃校となった3小学校については、地元住民
との協議の結果を受け、生涯学習ルームなどの有効活用にあたり、廃
校管理業務として市教育振興公社と特名随意契約を継続している(平
成22年度契約金額21,299千円)。
業務の必要性と契約の方法についての再検討が必要である。
ⅲ) 処分検討地売却に向けての進捗管理の強化
平成23年6月30日現在の大阪市未利用地活用方針に基づく、市教育
委員会所管の処分検討地の価格の合計は55,098百万円である。平成22
年度売却予定の土地の当初歳入予算額は、12,333百万円(11件)に対し、
実現したのは売却価格で841百万円(2件)であった。
未利用地の売却収入は厳しい財政状況下での貴重な財源であるため、
その売却にあたっては、中長期的な計画のもと、一層の進捗管理を行
い、確実かつ円滑な売却の促進に努められたい。
ⅳ) 継続保有地分類の妥当性検討
未利用地のうち、11件(26,779㎡、5,386百万円)を継続保有地と
して分類しているが、処分検討地に分類し、早期売却を図るべきと考
えられ
るものがあり、分類の妥当性を再検討する必要がある。
例 え ば 、 東 住 吉 区 矢 田 3 丁 目 の 昭 和 56 年 取 得 の 教 育 管 理 用 地
(7,539㎡、739百万円)は、スポーツ広場として地元区役所を通じて
貸し出されているため、継続保有地としているが、近隣に同程度の広
さがある公園があることから、地元区役所と連携しながら住民ヘの説
明を十分に行い処分検討地に分類し、売却に向けた商品化を進めるべき
65
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
である。
ⅴ) 賃料減免の妥当性
北恩加島幼稚園に対して昭和28年以来、市の土地を貸し付けている
が、大正区の幼児教育の一端を担っているとして、当初より賃貸料の
減免を実施してきた。平成15年以降は93%の減免を適用し、平成22年
度は年間貸付料1,341千円を徴収している。市は平成19年に公有財産
の貸付料の減免基準を策定しており、当該基準によれば、50%減免率
(平成22年まで経過措置として75%まで可)が適用され、減免基準によ
る減免率によらない場合は、市長の決裁とその理由の公表を求めてい
る。市教委事務局は減免基準による減免率を適用していないが、市長
決裁と公表を行っていない。
適正な減免率を適用するか、減免基準によらない減免率を適用する
場合には、適切な決裁を受けるとともに、その理由について公表すべ
きである。
ⅵ) 特別支援学校の建築費補助金の未交付
学校教育法では特別支援学校の設置義務を都道府県に課しており、
大阪府は昭和51年に「市町村立養護学校建築費補助金交付要綱」を制
定している。市はこの要綱に従って市が設置してきた特別支援学校の
建築費など702百万円の補助金を府に要望しているが認められていな
い状況となっている。
府に対して働きかけを継続していく必要がある。
ⅶ) 大阪市音楽団のあり方検討
大阪市音楽団は音楽を通じて市民の情操を豊かにするなどの目的を
もって市直営で運営してきた。
年間400百万円を超える市の負担となっており、財政負担の軽減に
向け、民間から寄付の募り易い運営形態とするなど、大阪市音楽団の
あり方について検討する必要がある。
ⅷ) クラフトパークのあり方検討
クラフトパークは市民の工芸に関する創作活動を支援するとともに、
市民の文化向上及び生涯学習の振興に寄与することを目的として設立
したが、平成22年度大阪市事業仕分けの結果、「民営化」の判定を受
け、平成24年度には方針を決定するとしている。平成18年度からの指
定管理者制度導入(平成22年度より利用料金制)により市税投入額は
減少しているが、平成22年度においても市負担は78百万円となってい
る。
設立趣旨を踏まえた行政の役割を精査し、そのあり方について検討
する必要がある。
ⅸ) キッズプラザ大阪
子どものための遊体験型学習施設として扇町キッズパークに開館し、
平成22年度は約41万人の入館者数となっている。当該施設が土地信託
66
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
事業であった経緯から、事業主体は市教育振興公社とし、市は市教育
振興公社に補助金として運営費を交付している。
運営主体は市教育振興公社であるが、年間492百万円の公費を負担
する立場として、最新かつ魅力的な展示となるよう、展示更新計画策
定にあたり、積極的に関与していくとともに、常に事業成果を厳しく
検証することが必要である。
5)学校事務執行上の課題
ⅰ) 学校における契約等事務手続きの相互けん制の確立
学校では、教育関係事務に関する学校長専決規程第2条に基づく契
約案件(1件10万円以下の不動産以外の物品の買入契約など)について
は、校長の権限と責任において契約・発注と検査を行うことになってお
り、相互牽制が働きにくい。
複数の者で履行確認を行うなどの牽制機能を持って確実に実行して
いくことが必要である。
ⅱ) 学校給食費の取扱い
①
繰越金の目的外使用(未納補てん)の廃止
保護者から徴収した学校給食費と市給食協会に支払う実際に食し
た給食費との差額が累積し、小学校全体で平成22年度末現在、371
百万円の繰越金が存在する。各小学校では、通常の献立に加え、特
別対応物資の配給(例えば発酵乳など)で削減を図っているが、その
解消は進んでおらず、結果として学校の事務負担となっているだけ
でなく、食材料費の支払いにあたり、未納給食費の補てんをするた
めに、一部立て替えられているケースがあるなど、管理上のリスク
の問題も生じている。
本来は負担者に返金すべきものであるが、必要な手続を経た上で、
市の歳入とし、学校が学校運営上必要な経費として使用することが
できる方策等を検討すべきである。
②
未納者対策の強化
学校徴収金未納対策マニュアルでは、6ヶ月分未満の未納者管理
は学校長が行うことになっているが、規範意識の希薄な短期未納者
については、学校経営管理センターが学校とより一層連携して関与
を深め、マニュアルの改定を含む法的手続の前倒し等、個別事案に
応じて対策を取ることが効率的である。
一方、長期未納者に対する法的手続は、学校長からの依頼を受け、
学校経営管理センターが行うことになっているが、平成22年度から
法的措置を開始したとはいえ、未納者延べ2,447名のうち、長期未
納者延べ約1,400名に対し法的手続を実施したのは70件となってい
る。
長期未納者に対する法的手続を強化するとともに、その実施状況
を広く公表することが必要である。
67
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
③
学校給食費の公会計方式の導入
学校給食費は市の歳入とする公会計方式への移行を検討する必要
がある。学校給食の実施は義務教育諸学校の設置者の責任であるの
に対し、学校給食会計を市の歳入・歳出外において校園長の責任下
で処理するという、徴収する責任と権限が曖昧な状況となっている。
公会計方式に移行することにより、当該状況を回避し、市長の責
任と権限の下、集約的に学校給食費を管理することができ、学校現
場の効率化にもつながることが期待される。
④
市給食協会への交付金の算定方法
大阪市学校給食交付金の算定方法については、交付要綱第5条第
1項で、第1条の目的に従って効率的に事業を行うために、必要な
金額を市が算出するとして、市の予算編成時に市給食協会の次年度
予算案や積算調書を精査した上で市の予算額を算定し、市の予算確
定後、あらためて市給食協会の事業計画書及び収支計画書により交付
申請させ、交付決定しているが、予算単価に食数を乗じて市が算出
するとした交付要綱第5条第2項とは異なる取扱いになっている。
実態に合った交付要綱に改定するとともに、新要綱による厳格な
検証手続の策定とその運用が求められる。
なお、平成22年度の市給食協会における交付金の支出内訳には過
年度積立不足分の退職給付引当預金相当額が含まれている。過年度
の退職給付引当預金の積立不足分を当期の交付金から充当すること
は適切とはいえず、交付金は当該年度の事業実施に必要な範囲で算
定するべきである。
⑤
学校給食の民間委託における提案型総合評価方式による業者選定
の検討
平成23年度では、37小学校で学校給食の民間委託が実施されてい
るが、公募型指名競争入札制度が継続して採用されている。
安値落札による質の低下を防ぐためにも、民間業者のノウハウや
提案を評価することにより価格以外の競争原理を取り入れた提案型
総合評価方式の採用を検討すべきである。
ⅲ) 児童費・生徒費及び積立金の公会計方式への移行を含めた徴収のあ
り方の検討
児童費・生徒費及び積立金は公会計ではないために、市の歳入・歳
出にはならず、校長等学校園で徴収、未納者管理が行われている。未
納徴収金については、PTA会費による補てんや、教職員の負担などで対
処しているケースがある。
適正な管理及び未納対策を講じるため公会計導入の検討を行うなど
の必要がある。
ⅳ) 高等学校奨学費の支給停止及び減額事由の明確化及び周知
教育の機会均等を得させるため、能力があるにもかかわらず経済的
68
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
理由のために、修学が困難な者に対し支給することを目的とし、対象
者を学業優良で性行の善良なものなど要件を決めている。奨学条例第
7条に支給停止・減額事由が規定されているが、「学業成績が著しく不
良」「性行が不良」など記載が抽象的である。
具体事例を明確にして関係者への周知徹底が重要である。なお、今
回追跡調査の結果、停学処分者が9人いることが判明している。奨学
条例の制度の目的及び規定の趣旨にさかのぼり、支給停止及び減額事
由の該当要件を見直すとともに、学校園に対して支給後の支給対象者
の状況報告をさせる仕組みが必要である。
ⅴ) 大阪市高等学校等奨学金の今後の計画的な貸付金の回収への取組
み
市は平成13年まで、奨学金返還時における償還補助的な措置(実質
的に返還を要しない)として人材養成奨励事業を創設し、貸付制度を
運用してきた。市は当該貸付に対し、平成22年に返還免除要件を緩和
するとともに、条例で一定の要件を満たすものについては「申請」を
条件として奨学金の一部または全部を免除することとした。平成23年
3月末現在の残高は231,948千円あるが、「申請」がない限り、回収
への対応が必要となる。
平成23年10月から貸付金の消滅時効期間である10年を迎え始めるこ
とになり、時効中断の措置を講ずるとともに、返還請求の措置を講ず
る必要がある。
ⅵ) その他
①
事務指導監察の強化
学校では、学校維持運営費、学校徴収金、給与、現金等出納保管
事務について事務指導監察が実施されているが、実施校数が少ない。
指導監察の結果を周知徹底する研修会の実施回数を増やし、事務
指導監察の実施校数を増やすなどし、さらなる指導機能の強化をは
かられたい。
②
資金・物品管理
公金等及び物品に関する事故・事件を未然に防ぐためには、その
管理の徹底が必要不可欠である。公金等については、学校経営管理
センターが作成した「公金の安全保管に関する自主点検表」を用い
た管理が行われてなかった学校園があったので、当該点検表を用い
た管理の徹底を図る必要がある。
また、物品については、毎年学校経営管理センターから定期的な
現有物品と帳簿記録との照合(棚卸)の事務連絡を行っているもの
の、学校園によっては、棚卸を行っておらず、また、棚卸の方法・
頻度が異なっていたため、棚卸ルールの明確化や学校経営管理セン
ター指導監察・研修グループの監察により確認するといった仕組み
作りが必要である。
69
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
2.教育施策
(1) 学力向上
1) 全国学力・学習状況調査
ⅰ) 全国学力・学習状況調査の概要
市の小学生、中学生は、平成19年度より文部科学省が実施する、
「全国学力・学習状況調査を受け、結果を公表している。
平成22年度調査の概要は以下のとおりである。
【調査目的】
・義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児
童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を
検証し、その改善を図る。
・検証結果をもとに、教育に関する継続的な検証改善サイクルを確立
する。
・学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等に役立て
る。
【調査対象学年】
小学校6学年、特別支援学校小学部第6学年
中学校3学年、特別支援学校中学部第3学年
【調査の内容】
①
教科に関する調査
主として「知識」に関する問題
主として「活用」に関する問題
【国語A、算数・数学A】
【国語B、算数・数学B】
・身につけておかなければ後の学年等の
・知識・技能を実生活の様々な場面に活
学習内容に影響を及ぼす内容
・実生活において不可欠であり、常に活
用する力
・様々な課題解決のための構想を立て、
用できるようになっていることが望ま
実践し評価・改善する力
など
しい知識・技能など
②
生活習慣や学習環境に関する質問紙調査
児童生徒に対する調査
主として「活用」に関する問題
【児童生徒質問紙】
【国語B、算数・数学B】
・学習意欲、学習方法、学習環境、生活
・指導方法に関する取組や人的・物的な
の諸側面等に関する調査
教育条件の整備の状況等に関する調査
【調査日時】
平成22年4月20日
【調査を実施した学校・児童生徒数及び調査方式】
抽出方式(無作為に抽出対象候補校を決定)と希望利用方式による
調査
70
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
参加校
小学校(特別
302
抽出
希望利用
児童生徒数
(33)
(269)
20,271
※抽出校参加対象人数約
支援学校含)
2,300人(11%)
中学校(特別
133
(44)
(89)
17,095
※抽出校参加対象人数約
支援学校含)
6,200人(36%)
ⅱ) 全国学力・学習状況調査の結果(教科に関する調査結果)
【結果の概要】
平成22年度の教科に関する調査結果の概要は以下のとおりである。
(平成22年度大阪市「全国学力・学習状況調査」の結果についてより)
・算数B(主として「活用」に関する問題)において、平均正答率が
全国平均を1.4ポイント上回る。
・算数B、数学Bで得点高位層の割合が全国平均を若干上回る。
・国語では、小学校・中学校ともに、全国平均と比べて得点高位層の
割合が低く、特にBでの差が顕著である。
・平均無解答率(調査問題の解答欄が空白である割合)の全国との差
は、年度毎の調査問題の難易度や教科によって多少の違いはみられ
るが、縮まってきている。
【正答率の推移】
市及び全国(公立)の正答率(平成19年度∼平成22年度)は以下の
とおりである。平成22年度の小学校算数Bを除き、どの教科、年度に
おいても全国(公立)平均正答率を下回っている。推移でみると、算
数Bは年々全国(公立)平均との点数差が縮まり、平成22年度に平均
を超えており、取組みの成果が表れていることがうかがえる。
【市及び全国(公立)の平均正答率(平成19年度∼平成22年度)】
(単位:%)
平成19年度
平成20年度
全国
大阪市
平成21年度
全国
大阪市
(公立)
平成22年度
全国
大阪市
(公立)
全国
大阪市
(公立)
(公立)
小学校
中学校
国語A
78.3
81.7
60.0
65.4
66.3
69.9
79.4
83.3
国語B
57.0
62.0
46.1
50.5
47.8
50.5
69.9
77.8
算数A
79.5
82.1
69.4
72.2
77.2
78.7
71.5
74.2
算数B
60.0
63.6
48.0
51.6
52.5
54.8
50.7
49.3
国語A
78.6
81.6
69.2
73.6
71.9
77.0
70.8
75.1
国語B
65.0
72.0
53.4
60.8
67.9
74.5
57.8
65.3
数学A
67.2
71.9
57.8
63.1
57.8
62.7
60.5
64.6
数学B
54.1
60.6
43.4
49.2
50.9
56.9
39.7
43.3
※大阪市「全国学力・学習状況調査」の結果をもとに集計した。
【市の位置付け】
都道府県別に公表されている平均正答数より平均正答率を求め、道
71
大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
府県と市の正答率の位置づけをグラフで表したものは以下のとおりで
ある。
全国平均を上回る算数Bを除き、正答率が低い下位得点層に位置して
いる。
国語B正答率(小学校)
国語A正答率(小学校)
25
19
20
21
18
20
16
平均77.8%
平均83.3%
13
14
18
15
12
10
8
10
大阪市79.4%
6
3
4
2
5
4
0
1
0
1
1
87%
88%
1
0
80%
81%
82%
83%
84%
85%
86%
89%
1
0
0
79%
7
大阪市69.9%
5
90%
0
0
72%
73%
1
0
0
69%
71%
算数A正答率(小学校)
77%
79%
81%
83%
85%
算数B正答率(小学校)
25
25
20
21
平均49.3%
20
20
大阪市50.7%
15
15
平均74.2%
15
12
大阪市71.5%
10
10
8
6
5
2
2
5
2
0
3
2
1
0
1
0
0
1
0
0
68%
70%
72%
74%
76%
78%
80%
82%
84%
44%
46%
48%
50%
52%
54%
56%
58%
60%
国語B正答率(中学校)
国語A正答率(中学校)
17
18
25
16
16
21
20
平均65.3%
14
12
14
15
10
8
10
大阪市70.8%
5
1
2
1
69%
71%
73%
75%
77%
79%
2
81%
2
0
0
57%
59%
61%
63%
65%
67%
69%
71%
73%
数学B正答率(中学校)
数学A正答率(中学校)
16
4
2
1
2
0
67%
4
4
3
0
大阪市57.8%
6
6
15
17
18
14
14
平均43.3%
16
14
平均64.6%
12
14
12
10
8
10
7
6
6
8
大阪市60.5%
4
6
3
2
1
0
1
0
0
1
0
53%
55%
57%
59%
61%
4
3
2
1
2
0
0
51%
5
大阪市39.7%
4
63%
※平成22年度
65%
67%
69%
71%
73%
1
0
0
0
32%
34%
36%
1
0
0
28%
30%
38%
40%
42%
44%
46%
48%
50%
52%
54%
全国学力・学習状況調査の結果資料(文部科学省)実施
概況資料を用いて、外部監査人が独自に試算した。
※都道府県と大阪市の正答率を同等に扱い分析しており、母集団は48
団体となっている。(平均は団体数には含んでいない)
※グラフの縦軸は、都道府県数(大阪市を含む)を表している。
ⅲ) 全国学力・学習状況調査の結果(児童生徒質問紙の回答状況)
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大 阪 市 公 報 号外 第2 号 平成24年3月19日
平成22年度の「児童生徒質問紙」のうち、特徴的なものは以下のと
おりである。(平成22年度大阪市「全国学力・学習状況調査」の結果
についてより)
【家庭での生活】
・毎日朝ごはんを食べている児童・生徒の割合は、改善傾向にあるも
のの全国平均を下回っている。
・毎日同じくらいの時刻に寝ている児童・生徒の割合は、改善傾向に
あるものの全国平均を下回っている。
・テレビ、ビデオ・DVDを見る時間が長い、携帯電話で通話やメール
をすることが多い児童・生徒の割合は、全国平均より多い。
【家庭での学習状況】
73
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