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脈動する雲 - SAWADA LAB
脈動する雲 - 持続可能な熱狂空間の研究 BR12076 日内地 清一 指 導 教 員 澤 田 英 行 1 . はじ めに‐2020 年夏季東京五輪 - 3-2. 都市環境 2020 年に夏季東京五輪の開催が決定した . しかし , 五輪後の ビジョン が明確に示されないまま , 競技場 の建設場所や , 大会のコンセプトが決定している . 五輪 によって , 世界的な熱狂が東京にもたらされる . 五輪を 単なる一過性のイベントとして消費するのではなく , 舞 台となる港湾地域の ビジョン を示し , 五輪後の港湾 地域に残す新しい価値の創造が必要である . 二つの島は , 皇居 , 浜離宮恩賜公園 , 五輪の舞台として設定されている港湾地域は , 元は海 であった . 競技場建設予定地の多くは , 海上に人工的に 造られた埋め立て地である . 土地活用のビジョンが無いまま埋め立てだけが進行し たことによって , 東京の中でも広大な空き地が未だに多 く残っている場所である . かつてあった航路 隅田川 皇居 東京ビッグサイト , そして台場へと 続く観光動線上に位置している . 水 上には , 東西に東雲運河 , 東上空に は首都高速 10 号晴海線 , 西上空に は国道 2 号線 , 臨海新交通ゆりかも めが走っている . この場所は , 東京 2 . 港湾 地域 - 東京都臨海副都心北有明地区 - 東京メトロ有楽町線 月島 築地旧市場 , 晴海選手村 , 豊洲新市場 , という都市移動のダイナミズムを内 浜離宮 築地 選手村 新豊洲 対象敷地 ビッグサイト 台場 包した交通の要所である .(fig.2) 3-3. 湾岸の空間性 N fig.2 皇居 - ビッグサイトへの動線 対象敷地周辺には巨大化した人工環境が作り出す , 間 の抜けた都市空間が存在する . 海と陸の近さ , 遮蔽物の ない大きな空き地 , 巨大なインフラストラクチャー ... 都市のダイナミックなスケールとどこまでも広がる 海 , それらが隣り合う状況が , 湾岸の自然である .(fig.3,4) 環状二号線 新橋 水上バス航路 夢の島 fig.3 視線の抜ける空き地 , 奥に首都高速湾岸線を臨む fig.4 湾岸のインフラストラクチャー 4. 提案 4-1. 持続可能な熱狂空間 台場 りんかい線 東雲 首都高速道路湾岸線 日の出 対象敷地 N 台場 青梅 ゆりかもめ 東京湾 S=1/50000 fig.1 対象敷地と周辺の都市交通 3. 敷地情報 3-1. 敷地分析 1920 年代に防潮堤として設えられた (fig.1) の赤い部分 は , かつて隅田川から東京湾へ向かう航路上に位置して いたため , 二つの島に分かれている . 二つの島は周囲の 埋め立てが行われ貯木場として利用されたが , 現在は役 割を失ったまま残されている . 一般に社会現象としての熱狂は一過性の現象として考 えられ , 熱量はいずれ失われていくとされるが , ここで いう「熱狂」とは ヒトに備わった動物的な機能 とする . 「熱狂」には二つの性質がある . (1)「選択」- 個人の選択が可能なものである .(fig.5) (2)「伝播」- 他人へ伝播する .(fig.6) 「熱狂」は空間によってコントロールすることが可能 である .「選択」と「伝播」の性質を建築空間によって 仕掛けることで「熱狂」は持続可能である . 五輪後に港湾地域に残すべき新しい価値として「持続 可能な熱狂空間」を提案する . 引用:http://www.voyager47.com/report/index.html?place=38 fig.5 熱狂の選択 吹き抜けで行われるイベントでは縦方向の空間の繋 がりによって , 買い物客が広場の気配を感じ取り「熱 , 狂」を選択するきっかけを与えている . 引用:http://www.gakugei-pub.jp/judi/semina/s1002/zi007.htm fig.6 熱狂の伝播 新宿駅西口広場は都市交通のために設えられた . そ のスケールの逸脱が反戦ゲリラの集会を空間的に伝 播し ,7000 人ものヒトが「熱狂」した . 4-2. プログラム - 運動場 - 五輪をきっかけとした「熱狂」を持続させる湾岸の運 動場を設計した . この運動場は , プロやアマといった区 別なく , 全てのヒトに同様に開かれ , 全てのヒトが湾岸 の空間性を能動的に知覚し , ここでしかできない「熱狂」 を体験できる . そして身体と空間を通して , 人々が相互 に「熱狂」を伝播させあい , 五輪後も持続的に人々が「熱 狂」していく . 5-3. 場の構築 歩廊の交差する場所を起点に面をつくり , ヒトが活動 する場を構築した.検証を元に , そこで行われる活動を 設定した.歩廊間にユーティリティを備えたフォリーを 設置し , 環境の特徴に合わせて形態を変化させた. 5-4.「熱狂」を誘起する仕掛け 歩廊と場を視覚的につなぐための仕掛けを歩廊に設計 した.(fig.14) 5. 設計プロセス 5-1. 関係性を構築 都市移動の関係性の中に陸をつなぐ歩廊を設計した. スポーツ工学研究施設 クライミング 飛び込みプール 1 2 3 fig.8 bejie curves step パブリックビューイング 水上アクティビティ fig.13 視線をつなぐ歩廊の仕掛け 水上バス停車場 fig.9 Bejie curve grasshopper component Color Gradient legends edge Mobility&Monorail&Walker Mobility&Water-bus Mobility&Walker Mobility&Monorail Water-bus&Walker Mobility&Monorail&Water-bus Mobility fig.7 都市に点在する速度の交点をプロット ・敷地周辺に点在する都市移動のダイナミクスを 擁する交点をプロットした.(fig.7) ・交点を遠景 , 中景 , 近景に分けた. ・交点を始点とし , 都市のエッジを中点として , スケートパーク 体操 / モビリティプール 小型モビリティシステム BMX/ 陸上競技 フォリーシステム 速度を媒介するベジエ曲線でつないだ.(fig.8,9) fig.14 マスタープラン 6. シークエンスイメージ 遠景 中景 近景 fig.10 Bejie curve を用いてスピードを変換する曲線を引く 5-2. 環境の検証による歩廊の構築 環境解析を行い , 曲線によって新たに生まれる環境を読 み取った.敷地北側の市場との関係や高速道路 , ゆりかも めとの関係で高さを決定した.また視線のシークエンスを 検証し , 眺望を考慮した.歩廊の形態を決定した.(fig.11,12) 夏至の日影 冬至の日影 日照の解析 風の解析 シークエンスの検証 fig.15 歩廊から水上バス乗り場をみる fig.16 木遣り橋から奥に誘われる fig.17 クライミングと飛び込みプールの並存 fig.11 検証結果を曲線にフィードバックする fig.12 周辺環境のコンテクストを考慮し歩廊の形態を決定 fig.18 400mトラックからBMXの競技場をみる [ 参考文献 ] 1) 中井 豊 (2009)『熱狂するシステム』 2) 槇 文彦 (1989) 槇文彦 建築ドローイング集 Fragmentary Figures- 未完の形象 - 3)Michael Schumacher (2010)『move Architecture in Motion-Dynamic Components and Elements』