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第4回目授業資料はこちらのPDFファイルでご覧いただけます。 - G-SEC
シティグループ証券寄附講座「グローバル金融市場論」 世界のプルーデンス政策 の改革とIMFの役割 2011年10月13日 シティグループ証券株式会社 東京都千代田区丸の内1丁目5番1号 新丸の内ビルディング シティグループ証券株式会社取締役副会長 シティ資本市場研究所理事長 藤田 勉, Ph.D. +81+81-3-62706270-4885 [email protected] 本資料はシティグループ証券が情報提供を目的として作成したものであり、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘を意図したものではありません。 0818 IMFのサーベイランス機能 IMFは、世界銀行、FSBなどと提携し、国際金融危機を事前に察知し、経済、 金融リスクの早期是正政策を実行→不十分。大型国際金融危機頻発。 ①G20相互評価プロセス(MAP) G20諸国のマクロ政策を相互に監視、 IMFが が技術的な分析を提供。 G20諸国のマクロ政策を相互に監視、IMF 技術的な分析を提供。 ②早期警戒演習(Early Warning Exercises、EWE) システミック・リスクを生む 脆弱性、トリガーと とそれを緩和する政策を特定。 システミック・リスクを生む脆弱性、トリガー それを緩和する政策を特定。IMFと IMFとFSBが共同開発。 FSBが共同開発。 ③金融セクター評価プログラム(FSAP) 金融セクター全体の健全性を総合評価。システム上重要な金融セクターのある 25ヵ国の金融安定 ヵ国の金融安定 金融セクター全体の健全性を総合評価。システム上重要な金融セクターのある25 性の評価を義務付け。 ④脆弱性指標 FSAPの下での分析やストレステスト、 EWEへのインプットとして使用 へのインプットとして使用。 FSAPの下での分析やストレステスト、EWE ⑤経済健全性調査 IMF協定第 4条などに基づく国別コンサルテーション( 加盟国に対し、毎年実施。 IMF協定第4 条などに基づく国別コンサルテーション(4条協議)。 条協議)。加盟国に対し、毎年実施 2 IMFの融資機能 1. リーマンショック後、融資の質の改善と量の拡大を実施。 2. IMFの融資財源増加(7,500億ドルに3倍増)、SDR配分拡大(2,830億ドル相 当)、融資制度の柔軟化。 3. 2011年6月末の融資残高は、773億SDR(約1,240億ドル)。ルーマニア、ウク ライナなど東欧諸国への融資が大きい。 4. 融資対象上位5カ国は欧州の先進国と中進国。今後、合意済みのギリシャ 向けなどの融資が急増へ。 IMF融資残高の推移 IMF融資残高の推移 (10億SDR) 90 融資残高上位10 ヵ国 融資残高上位10ヵ国 国 SBA SBA SBA EEF EEF SBA SBA SBA SBA SBA ギリシャ ルーマニア ウクライナ アイルランド ポルトガル パキスタン スリランカ イラク ラトビア ドミニカ共和国 合意日 2010/5/9 2011/3/31 2010/7/28 2010/12/16 2011/5/20 2008/11/24 2009/7/24 2010/2/24 2008/12/23 2009/11/9 期限 2013/5/8 2013/3/30 2012/12/27 2013/12/15 2014/5/19 2011/9/30 2012/5/23 2012/7/23 2011/12/22 2012/3/8 合意金額 未引出金額 (百万SDR) (百万SDR) 26,433 10,814 3,091 3,091 10,000 7,750 19,466 13,043 23,742 18,131 7,236 2,300 1,654 551 2,377 1,307 1,522 539 1,095 328 80 融資残高 (百万SDR) 15,619 10,569 9,250 6,422 5,611 5,233 1,108 1,070 982 882 70 60 50 40 30 20 10 0 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 2005 2008 3 注:2011年8月末時点。出所: IMF、シティグループ証券 注:2011年8月末時点。出所: IMF、シティグループ証券 2011 IMFプログラムの功と罪 アジア危機、中南米危機に対するIMFプログラムへの批判 1. 過度に厳しい経済改革が、対象国の経済成長の落ち込みを増幅し、政 治・社会不安を生じさせた。例:インドネシアの政権交代。 2. 短期の資金繰りに対する融資に専念すべき。本筋でない構造改革を 迫った。 3. 未成熟な新興国に、資本市場の過度な自由化を求めた。 批判への反論 1. IMFの最後の貸し手機能は効果大。融資対象国の経済成長率は、短期 間で回復。経済、金融制度改革が成功し、融資対象国は、その後、深刻 な危機に陥ってはいない。 2. 厳格な融資条件は必要。安易な融資はモラルハザードを招く。 3. IMF以外に、危機対応融資はできなかった。対案なき、あるは事実誤認の 批判が多い(例:スティグリッツ)。 4 IMF介入とその後成長 1. 財政破綻、通貨危機などでIMFが金融支援した英国(1976年)、ロシア、韓国 (1998年)、ブラジル(1999年)、アルゼンチン(2002年)は、経済改革と通貨安 効果により、経済が急回復。 2. 危機は、1、2年で収束。危機が長引いた例はない。 3. IMFが介入したすべての国は、現在では高成長国として評価が高い。 韓国の経済成長率とウォン対ドル為替相場の推移 (%) -30 (%) 15 IMF主要支援対象国の経済成長率の推移 IMF主要支援対象国の経済成長率の推移 (%) 15 ウォン(左軸) -20 実質経済成長率(右軸) 10 -10 10 5 0 5 0 10 0 20 30 -5 -5 アルゼンチン インドネシア ロシア タイ -10 40 50 -10 1995 1996 1997 1998 1999 注: 四半期ベース、為替は前年同月比、3ヵ月移動平均。 出所: データストリーム、シティグループ証券 2000 2001 -15 1993 1996 1999 2002 2005 2008 5 出所: IMF、シティグループ証券 結論:IMF改革の提言 1. 融資機能の充実 融資額は最大7,500億ドル(約60兆円) 。融資合意額2,800億ドル*。日本の信 用金庫の貸出残高合計62.5兆円。三菱UFJフィナンシャル・グループは80.0 兆円(2011年3月末)。 前回の増資は承認まで約2年。加盟国187ヵ国、ガバナンス改革で新興国の 理事枠拡大予定→利害調整が複雑。各地域の融資機能の充実が必要。 IMFの増資の歴史 IMFの増資の歴史 レビュー 第1回 第2回 特別増資(1958/1959年) 第3回 第4回 第5回 第6回 第7回 第8回 第9回 第10回 第11回 第12回 第13回 特別増資 特別増資 第14回 採択日 増資提案なし 増資提案なし 1959年2月、4月 増資提案なし 1965年3月 1970年2月 1976年3月 1978年12月 1983年3月 1990年6月 増資提案なし 1998年1月 増資提案なし 増資提案なし 2006年9月 2008年4月 2013年(予定) クォータ増資率(%) − − 60.7 − 30.7 35.4 33.6 50.9 47.5 50.0 − 45.0 − − 1.8 9.55 100.0 注:一般クォータ見直しは、5年毎に行われる。出所: IMF、シティグループ証券 *2011年5月25日時点。 Moody’ Moody’ s 格付ソブリン債のデフォルト (1983年∼ 2010年 年) (1983年∼2010 デフォルト日 2001年11月 1998年8月 2010年2月 1999年8月 2003年5月 2000年9月 2008年12月 1999年7月 2005年4月 1998年9月 2000年1月 1998年7月 2006年12月 2002年6月 国 アルゼンチン ロシア ジャマイカ エクアドル ウルグアイ ペルー エクアドル パキスタン ドミニカ共和国 ウクライナ ウクライナ ベネズエラ ベリーズ モルドバ デフォルト債務(百万ドル) 82,268 72,709 7,900 6,604 5,744 4,870 3,210 1,627 1,622 1,271 1,064 720 242 145 6 出所: Moody’s, “Sovereign Default and Recovery Rate, 1983-2010” May 2011、シ ティグループ証券 結論:IMFの改革の提言 2. プルーデンス政策機能の強化 新興国経済、金融市場の急拡大の一方で、制度は未整備。国際金融危機 再発は不可避。 金融危機時のショック緩和を重要な戦略目標とすべき。予防は治療に勝る。 G20、FSB、BISなどと連携して、サーベイランス強化。 危機が発生しないと改革はできない歴史。平時から、新興国経済・金融制度 の近代化に注力。 3. 「最後の貸し手」の役割の限定 IMFは、新興国に対して比較的緩やかな条件で「最後の貸し手」となることは 許容されるが、先進国には、厳格な条件を課すべき。 ギリシャなど先進国の金融危機における融資は、ごく短期に限定。基本的に 先進国同士で処理。 IMFは、融資ではなく、経済・金融制度改革の助言、先進国による融資の仲 介、調整などに注力すべき。 7 本資料は当社内のシティ資本市場研究所が作成したものであり、他の第三者に過去に提供された他の資料の抜粋を含む可能性があります。本資 料は、当社又はその関係会社が作成配布したリサーチレポートに言及している可能性がありますが、本資料は調査部門が作成したものでなく、本資 料に記載された情報は、適用される規制当局により定義された「アナリストレポート」及び「リサーチレポート」に該当することを意図しているものでは ありません。本資料に記載された情報は、一般的に入手可能な情報であり、信頼に足ると思われる情報源から入手したものですが、正確性及び完 全性を保証するものではありません。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の利用者の投資目的、財務状況、資力を考慮しておりません。 本資料は、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘ではありません。先物、オプション、高利回り証券を含む特定の取引又は取引戦略は、相 当のリスクを内包しており全ての投資家に適したものではありません。直接、間接、派生的を問わず、本資料に記載された情報の使用により又は本 資料に起因する損失に対して、当社は一切の責任を負いません。当社は、税務及び法律の助言を行うものではありません。お客様におかれまして は、ご自身の税務及び法務アドバイザーより助言を受けた上で、ご自身の目的、経験、資力に基づく投資判断をなさるようお願いいたします。本資 料に含まれる資料、記述、情報は当社に帰属するものであり、著作権その他の知的財産に関する法律によって保護されます。いかなる目的におい ても他者への転送、再配布を行うことはできません。 Copyright © Citigroup Global Markets Japan Inc. 2011. All Rights Reserved. シティ(Citi)及びシティと弧のマーク(Citi with Arc Design)は、シティグループ・インク及びその関係会社の商号及びサービス・マークであり、世界中で 使用及び登録されています。 8