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博士(栄養学)学位論文 栄養教育へのジェンダー視点導入の有効性

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博士(栄養学)学位論文 栄養教育へのジェンダー視点導入の有効性
博士(栄養学)学位論文
栄養教育へのジェンダー視点導入の有効性に関する研究
パナマ共和国ノベ族農村女性の事例
The Effectiveness of Integrating
Gender Perspective into Nutrition Education Program:
A Case Study of Rural Women of Ngobe Tribe, the Republic of Panama
2002 年
指導教員
足 立 己 幸
氏
石
名
川
ISHIKAWA,
教授
みどり
Midori
女 子 栄 養 大 学
目 次
頁
序 論
1.国際協力における栄養教育の課題
1
2.栄養教育へのジェンダー視点導入の必要性
5
目 的
8
方 法
9
1.研究の手順
9
2.栄養教育にジェンダー視点導入の可能性
9
1)栄養教育のアセスメントと評価指標としての 9
The Transtheoretical Model
2)ジェンダー視点を取り入れた活動の評価指標としての
12
The Reversed Reality Framework
3)栄養教育の評価にジェンダー構造の変化の測定項目の導入
13
(The Trans theoretical ModelとThe Reversed Reality Framework
との組み合わせ)の可能性
2.ノベ族への栄養教育にジェンダー視点導入の可能性
14
1)対象者および対象地域について
14
(1)歴史・居住環境
14
(2)家族制度・儀礼
16
(3)社会・経済状態
18
(4)食生活・栄養状態
18
(5)ジェンダー視点からみた社会・経済、食生活・栄養状況
21
2)ノベ族への栄養教育にジェンダー視点導入の可能性
24
(1)栄養教育の評価にジェンダー構造の変化の測定項目を
24
導入した枠組みの作成
(2)栄養教育プログラムの作成
25
(3)調査枠組みの作成とその妥当性の検討
30
ⅰ
3.栄養教育プログラムの実施
31
4.栄養教育プログラムの評価
31
結果
32
1.学習目標への達成度による評価(栄養教育の結果評価)
32
1)共同作業場での学習への参加人数とその特徴
32
2)学習目標への達成度
33
3)課題の系時的な質的変化
34
2.食態度・行動とその共有行動による評価(結果に至る
35
プロセスの評価)
1)参加者の発言による食態度・行動の変化および共有行動
35
の広がり
2)食態度・行動の系時的な変化と共有行動の系時的な
37
広がりとの関連
(1)学習による個人別食態度・行動の系時的な変化
37
(2)学習による個人別共有行動の系時的な広がりの変化
37
(3)学習による個人別食態度・行動と共有行動の系時的な変化
38
(4)食態度・行動の変化量と共有行動の変化量との関係
39
3)食態度・行動の変化と共有行動の広がりとの関係
39
(1)自宅学習4回目時点での食態度・行動ステージと食生活に
39
おける作業・意思決定との関連
(2)自宅学習4回目時点での食態度・行動ステージと学習効果
40
との関連
(3)食態度・行動の変化と共有行動の広がりとの関係
41
(4)役割態度の変化と課題の明確化との質的関連
43
4)参加者の学習による食態度・行動の変化と共有行動の広がり
44
の変化との関連についての事例検討
(1)課題の実行まで至ったEの事例
44
(2)課題の明確化かつ役割態度の変化まで至ったLの事例
45
(3)課題の気づきまで至ったSの事例
46
ⅱ
考察
48
1.ジェンダー視点を導入した栄養教育の有効性と課題
48
1)食態度・行動とその共有行動による評価(枠組み)の有効性
と課題
48
2)ジェンダー視点を導入した栄養教育プログラムの有効性
と課題
51
2.栄養教育へのジェンダー視点導入の意義
54
要約
58
謝辞
62
あとがき
62
引 用 文 献
64
ⅲ
図 表 目 次
図1
栄養教育の評価、ジェンダー視点を考慮した活動の評価に使われているモデル
図2
パナマ共和国とノベ自治区の対象集落の位置
図3
対象世帯の軒並み図と民芸品づくり共同作業場
図4
女性にとっての栄養情報と食物の流れ
図5
ジェンダー視点を導入した栄養教育の評価の枠組み
図6
共同作業場での学習への参加者と参加回数
図7
学習による食態度・行動の変化
図8
学習による共有行動の広がりの変化
図9
食態度・行動の変化量と共有行動の変化量との関係
図10
栄養学習による食態度・行動、共有行動、食事づくり計画力への効果
図11-1 課題の実行まで至ったEの事例
図11-2 課題の明確化かつ役割態度の変化まで至ったLの事例
図11-3 課題への気づきまで至ったSの事例
表1 研究の手順
表2 パナマ共和国におけるノベ自治区の社会・経済状態と食生活・栄養状態
表3 栄養教育にジェンダー視点を導入する必要性に関する調査の枠組み
表4 ジェンダー視点からみた社会・経済および食生活における女性の作業と
意思決定
表5 女性にとっての食・栄養問題に関する意識
表6 介入の目的、学習目標、学習ステップ、戦略、学習内容、学習者の活動、
ピアエデュケータの役割
表7 栄養学習の場における学習者の食・栄養に関する発言の分類
表8 ジェンダー構造の変化の測定項目を導入した栄養教育の評価の枠組みの
検討プロセス
表9 調査の枠組み
表10 参加者の特徴
表11 学習目標への達成度
ⅳ
表12 課題の系時的な質的変化
表13 参加者の発言による食態度・行動の変化と共有行動の広がり
表14 学習による食態度・行動ステージ別人数の変化
表15 学習による共有行動ステージ別人数の変化
表16 個人別食態度・行動、共有行動の変化
表17-a 食態度・行動ステージと食生活における作業・意思決定との関連
表17-b 食態度・行動ステージと学習効果との関連
表18 食態度・行動の変化と共有行動の広がりの変化・食事づくり計画力の相関
表19 食態度・行動、共有行動、食事づくり計画力の総合効果
表20 役割態度の質的変化
表21 役割態度の質的変化と明確化との関係
写真1 共同作業場での学習に参加した女性たちの活動
付表1 パス解析のモデル
付表2 ジェンダー視点を導入した栄養教育の評価の枠組み
ⅴ
1.目
的
近 年 、発 展 途 上 国 の 人 々 の 食 物 へ の ア ク セ ス の 差 が 広 が り 、特 に
女 性 が そ の 劣 悪 な 状 態 に 多 く お か れ て い る こ と が 報 告 さ れ 、国 際 協
力においてジェンダー視点を入れた活動の必要性が強調されるよ
う に な っ た 。本 研 究 の 目 的 は ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 の
有効性をパナマ共和国ノベ族を事例とした介入により明らかにし、
そ の た め の 評 価 の 枠 組 み を 作 成 す る こ と で あ る 。な お 本 研 究 で の ジ
ェ ン ダ ー と は 国 連 開 発 計 画 ( UNDP ) の 定 義 ( 1996 年 )“ Refer to
women’ s
and
men’ s
role
and
res ponsibilities
that
are
s o c i a lly determined. ” と し た 。
2.方
法
1 )ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 の 評 価 の 枠 組 み を 作 成 し た 。
栄養教育の評価ならびにジェンダ-視点を導入した活動評価につ
い て の 先 行 研 究 レ ビ ュ ー を ふ ま え 、 Prochaska ら の
T r a n s theoretical
Model
と
Kabe er
の
Reversed
The
Realities
F r a m e work を 採 用 し た 。著 者 が 1996 年 に 実 施 し た パ ナ マ 共 和 国 ノ
ベ族の人々への参加型栄養学習プログラムにおける学習者の発言
を上記の2つのモデルに基づいて分類し、抽出した項目の妥当性
をノベ族の人々へのヒアリングにより検討した。これらをふまえ
た食態度・行動とその共有行動による評価の枠組みを作成した。
すなわち①食態度・行動の変化、ステージ1「役割内・外の食行
動 の 確 認 」、 ス テ ー ジ 2 「 課 題 に 関 す る 気 づ き 」、 ス テ ー ジ 3 「 役
割 態 度 の 変 化 」、 ス テ ー ジ 4 「 課 題 の 明 確 化 」、 ス テ ー ジ 5 「 課 題
の 実 行 」と 、② 共 有 行 動 の 広 が り 、S tage1「 家 族 と の 共 有 」、Stage
2 「 近 所 の 友 人 と の 共 有 」、 Stage 3 「 組 織 へ の 関 係 づ く り 」 の 2
1
側面から成る。
2 )ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム を 作 成 し た 。学
習目標を「栄養問題を改善するための自分の課題に気づくこと」
とし女性が地域で主体的に活動する民芸品づくり組織の共同作業
場での学習と自宅での学習を交互に4回ずつ計8回行う。民芸品
づくり組織リーダーとその三女をピア・エデュケータとする。ジ
ェンダー視点に①食生活での自分や家族の役割と近所の友人との
協力関係(特に男性)についての参加者同士の共有②家族・近所
の 友 人( 特 に 男 性 )を 巻 き こ み や す い 自 宅 学 習 課 題 の 提 供 を 行 う 。
学習目標への達成度の評価に①学んだことを生かしたワチョ(伝
統的・日常的料理)をつくったか②学習中作成した教材を活用し
たか③入手可能な食材料種類数の増加④献立中の食品群の増加が
みられたかの4項目を設定した。評価は学習目標への達成度(栄
養 教 育 に よ る 結 果 評 価 )、食 態 度 ・ 行 動 と そ の 共 有 行 動( 結 果 に 至
るプロセスの評価)の両方から検討することとした。
3 ) 対 象 者 は B 集 落 の 39 世 帯 全 世 帯 の 女 性 で あ る 。 女 性 た ち に 学
習 へ の 参 加 を 呼 び か け 2001 年 6 月 か ら 8 月 に 介 入 を 実 施 し た 結
果 、 民 芸 品 づ く り 共 同 作 業 場 で の 学 習 に 32 世 帯 、 41 名 の 女 性 の
参 加 が 得 ら れ た 。 こ の 41 名 を 解 析 対 象 と し た 。
4 )解 析 方 法 は 学 習 目 標 へ の 達 成 度 に よ る 評 価 に χ 2 検 定 、食 態 度 ・
行動とその共有行動による評価に①系時的検討に反復測定による
一 元 配 置 分 散 分 析 お よ び 多 重 比 較( ボ ン フ ェ ロ ー ニ 法 )、相 関 分 析 、
② 介 入 終 了 時 点 で の 横 断 的 検 討 に は χ 2 検 定 、t 検 定 、一 元 配 置 分
散 分 析 お よ び 多 重 比 較 ( ボ ン フ ェ ロ ー ニ 法 )、 パ ス 解 析 を 用 い た 。
2
3.結
果
1)学習目標への達成度による評価(栄養教育の結果評価)
参 加 者 41 名 中 36 名( 87.8 % )に 栄 養 問 題 を 改 善 す る た め の 課 題
へ の 気 づ き が み ら れ 、そ の 内 10 名( 2 4.4% )は 課 題 の 実 行 に 至 っ た 。
課 題 が わ か ら な い 、何 も で き な い と い う 発 言 を す る 人 が 学 習 前 に 比
べ 学 習 後 に 有 意 に 減 少 し た ( p<0.01 )。
2 )食 態 度 ・ 行 動 と そ の 共 有 行 動 に よ る 評 価( 結 果 に 至 る プ ロ セ ス
の評価)
( 1 )食 態 度・行 動 の 変 化 と 共 有 行 動 の 広 が り の 変 化 の 系 時 的 検 討
学 習 に よ り 参 加 者 36 名( 8 7.8 % )に 食 態 度 の 変 化 が 、41 名( 100 % )
に共有行動がみられた。個人別変化をみると学習が進む度に食態
度・行動および共有行動のステージが上昇することが確認された。
そこで食態度・行動のステージ5を5点、以下、4、3、2、1、
0 点 と し て 学 習 に よ る 変 化 を み た 結 果 、 自 宅 学 習 1 回 時 1.0± 0.0
点 か ら 自 宅 学 習 4 回 時 3.5 ±1.3 点 へ と 学 習 が 進 む 度 に 得 点 の 有 意
な 増 加 が み ら れ た ( p<0.01 )。 共 有 行 動 に つ い て も Stag e3 を 3 点 、
以 下 、2 、1 、0 点 と し 変 化 を み た 結 果 、1.3 ±0.5 点 か ら 2.2 ±0.8
点 へ と 得 点 の 有 意 な 増 加 が み ら れ た ( p<0.01) 。ま た 、学 習 1 回 目 か
ら 4 回 目 の 食 態 度・行 動 の 変 化 量 と 共 有 行 動 の 変 化 量 は 有 意 に 相 関
し て い た ( r=0.454 , p<0.01 )。
(2)食態度・行動の変化と共有行動の広がりとの関係
食 態 度・行 動 の 変 化 と 共 有 行 動 の 広 が り と の 関 係 を 明 ら か に す る
た め に 、系 時 的 変 化 な ら び に 項 目 間 の 関 連 の 結 果 に 基 づ き モ デ ル を
作 成 し パ ス 解 析 を 行 っ た 。食 態 度 ・ 行 動 の「 課 題 の 実 行 」を 従 属 変
数 と し て パ ス ダ イ ア グ ラ ム を 求 め た 結 果 、「 役 割 内 ・ 外 の 食 行 動 の
3
確 認 」 か ら 「 家 族 と の 共 有 」 へ 行 く 経 路 ( 因 果 係 数 0. 707 )、「 近 所
の 友 人 と の 共 有 」か ら「 課 題 へ の 気 づ き 」へ 行 く 経 路 ( 0.113) 、「 課
題 の 明 確 化 」か ら「 組 織 へ の 関 係 づ く り 」を 経 て( 0.5 74 )「 役 割 態
度 の 変 化 」 へ 行 く 経 路 ( 0.446 ) が 確 認 さ れ ( RMSEA=0.023 )、 食 態
度・行 動 の ス テ ー ジ の 変 化 と 共 有 行 動 の ス テ ー ジ の 変 化 は 相 互 に 関
連 し 合 う 構 造 で あ る こ と が 検 証 さ れ た 。栄 養 問 題 を 改 善 す る た め の
課題の実行に至るプロセスが明らかになった。
( 3 )参 加 者 の 学 習 に よ る 食 態 度・行 動 と そ の 共 有 行 動 の 変 化 の 事
例検討
以 上 を ふ ま え た 事 例 検 討 を 行 っ た 結 果 、参 加 者 の 学 習 内 容 を 男 性
と共有する際に自分の課題の質を深める共有とそうでない共有が
み ら れ た 。家 族 だ け で な く 友 人 と の 共 有 を 行 う こ と 、視 野 を 地 域 へ
広げることが課題の質を深めることに重要であることが示唆され
た。
4.結
語
ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 に よ り 88 % の 参 加 者 に 栄 養
問題を改善するための自分の課題への気づきがみられた。また、
ジェンダー視点を導入した栄養教育の評価の枠組みにより課題の
実行には家族との共有,近所の友人との共有、組織への関係づく
り、役割への態度の変化が重要であることが明らかになり、その
有効性が検証された。
4
序
論
1.国際協力における栄養教育の課題
1 9 8 0 年 代 以 降 、発 展 途 上 国 に 食 物 へ の ア ク セ ス 、保 健 へ の ア ク
セ ス の 劣 悪 な 状 態 に お か れ て い る 人 が 多 い こ と 、特 に 食 物 へ の ア
クセスの劣悪な状態に女性が多くおかれていることが明らかに
され
1 ) ~ 3)
、それらの問題を改善するためには、女性の参加
(participation) を 支 援 す る こ と が 必 要 で あ る と い う 理 念 が 強 調
されるようになった
4)
。こ こ で の 参 加 と は 、他 者 が 企 画 し た 事 業
に加わることではなく企画あるいはプランニングの意思決定
( decision-making) に 参 加 す る こ と
5)
をいう。地域の健康・栄
養 教 育 で の 住 民 参 加 に つ い て WHO は Participation に つ い て 手 法
と し て の 参 加 と 結 果 と し て の 参 加 が あ る と し て い る 。手 法 と し て
の参加とは効果的なプロジェクトを開発するときの人々の協力、
協同の確認をより確実にするプロセスである
6)
。 Participatory
r u r a l a p p r a i s a l 、 P a r t i c i p a t o r y l e a r n i n g a p p r a i s a l 7 ) 、P r o j e c t
cycle management8)、 等 の 参 加 型 ア プ ロ ー チ が そ の 手 法 で あ り 、
こ れ ら は 活 動 プ ラ ン ニ ン グ 時 に お け る 参 加 を 重 視 し て い る 。一 方 、
結 果 と し て の 参 加 と は 知 識・技 術・実 習 の 獲 得 に よ る 人 々 の エ ン
パワーメントの表現であり参加そのものが目標とされる
9)
。参 加
型開発の国際的リーダーの一人であるロバートチェンバースは、
参 加 は リ ア リ テ ィ を 映 す も の で あ り 、ト ッ プ ダ ウ ン に よ る 誰 か の
押し付けのリアリティを住民一人一人の価値観の入るリアリテ
ィに転移することが参加の意義であるとする
10)
。す な わ ち 国 際 協
力において地域住民以外の外部者によって地域の栄養問題を明
1
らかにされその外部者によって改善計画が行われ活動の作業の
み を 住 民 が 行 う プ ロ グ ラ ム か ら 、住 民 が 自 ら の 力 で 地 域 の 栄 養 問
題を明らかにし改善の計画を行い活動するプログラムに変える
必要があるということである。このような考え方が地域の健康・
栄 養 教 育 の 現 場 で の 住 民 参 加 に コ ミ ュ ニ テ ィ・オ ー ガ ニ ゼ ー シ ョ
ンが重要視されてきた
11)
理由であるが、コミュニティ・オーガ
ニゼーションにはコミュニティの住民が何か問題を解決しその
コ ミ ュ ニ テ ィ の 目 標 を 達 成 し て い く こ と と 同 時 に 、そ れ に よ っ て 、
いわゆるコミュニティ意識がつくられていくこととの両方が含
まれている
12)
。住 民 参 加 の 形 式 に は 直 接 的 参 加 と 間 接 的 参 加 と が
あ り 、健 康 ・ 栄 養 教 育 に 不 可 欠 で あ る の は 地 元 の 保 健 ・ 医 療 の 専
門 家 や 専 門 家 組 織・機 関 の 参 加 で あ り
13)
、専 門 家 の 間 接 的 な 参 加
が よ り 効 果 的 で あ る こ と が 、P e e r e d u c a t i o n 等 の 参 加 型 ア プ ロ ー
チを取り入れた介入研究によって確認されてきた
14) 15)
。
女 性 の 食 物 へ の ア ク セ ス の 劣 悪 さ を 改 善 す る た め に 、上 記 の 理
念 や 手 法 を 取 り 入 れ た 活 動 、す な わ ち 、栄 養 問 題 を 抱 え る 女 性 を
組織化し彼女たちの食物へのアクセスへの意思決定能力の向上
をねらいとした活動プログラムが増加した
16)
性の参加が促進されたことが報告されてきた
。そ の 効 果 と し て 女
17) 18)
。
し か し 、 1990 年 代 後 半 に 入 り 、 そ れ ら の 活 動 に も か か わ ら ず 、
人 々 の 食 物 へ の ア ク セ ス 、保 健 へ の ア ク セ ス の 差 は さ ら に 広 が り 、
その劣悪な状態におかれているのは依然として女性が多いこと
が確認された
19~ 22)
。その背景には、活動によって女性同士、女
性 グ ル ー プ 内 で の 意 思 決 定 能 力 は 向 上 し た も の の 、男 性 が 意 思 決
定 過 程 の 主 流 に な っ て い る 家 庭 で の 食 物 分 配 、コ ミ ュ ニ テ ィ へ の
2
女性の参加が低いために依然として栄養問題が残っていること
が明らかになった
23)
。女 性 が 参 画 し て い る の は 女 性 組 合 の み で は
な い か と い う 懸 念 、農 村 で 女 性 組 合 が 結 成 さ れ た も の の 栄 養 状 態
を 決 定 す る 農 村 組 合 の 農 業 生 産 、水 組 合 、食 物 流 通 へ の 主 要 決 定
過 程( メ イ ン ス ト リ ー ム )か ら は ず れ て い る
24)
等が報告された。
女性だけに焦点をあてた活動が必ずしも女性の利益に結びつ
か な い と い う こ れ ら の 結 果 を ふ ま え 、女 性 の 参 加 に は 男 女 の 家 庭
内関係やコミュニティの社会的関係を改善することを含めるこ
と の 重 要 性 、ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 考 慮 し た 人 間 開 発 の た め の 支 援 の
重要性が謳われた
25~ 27)
。
ジェンダーの解釈、概念は広く多様である
28)
。 1960 年 代 か ら
1 9 8 0 年 代 ま で 、 “ ジ ェ ン ダ ー と は 生 物 的 な 性 差( s e x )と は 区 別
さ れ る 社 会 的・文 化 的 に 形 成 さ れ た 性 差 で あ る ”
29) 30)
とした定
義 が 多 く み ら れ た 。1 9 9 0 年 代 に 入 り 、国 際 協 力 分 野 に お い て 女 性
の 食 物 ・ 保 健 へ の ア ク セ ス が 劣 悪 な 状 況 で あ る こ と 、貧 困 ラ イ ン
以 下 お か れ た 人 々 に 女 性 が 多 い こ と が 明 ら か に な っ た 。そ れ ら の
問題と男性・女性間の関係構造とに関連があることが確認され、
その内容を含んだ定義がみられるようになった。国連開発計画
(UNDP) で は ”
Refer
to
women’ s
and
men’ s
roles
and
responsibilities that are socially determined. Gender is
related to how we are perceived and expected to think and act
as women and men because of the way society is organised, not
because of our biological differences”
31 )
とし、スコット
は“ 男 性 ・ 女 性 間 に 認 知 さ れ た 差 異 に も と づ く 社 会 関 係 の 構 成 要
素 で あ り 、 権 力 関 係 を 表 す 第 一 主 義 的 な 方 法 で あ る ” 32)と し た 。
3
ス ウ ェ ー デ ン 統 計 局 で は“ 社 会 的 関 係 の 歴 史 を 通 じ て 形 成 さ れ た 、
可変的なその役割は時代によって異なる女性と男性の社会的関
係 で あ る ” 3 3 ) と し た 。ど の 定 義 も 男 女 間 の 関 係 に つ い て 明 記 し て
いる。
1995 年 に Beijing declaration for the platform for action 34)
が 謳 わ れ て 以 来 、 国 連 開 発 計 画 ( UNDP) で は 、 貧 困 構 造 を 改 善 す
る た め の ジ ェ ン ダ ー 視 点 と し て ” Gender and Development” に つ
い て 定 義 し た 。“ T a k i n g a c c o u n t o f g e n d e r c o n c e r n s i n a l l
policy, program, administrative and financial activities,
and in organizational procedures, thereby contributing to a
profound
organizational
transformation.
Specifically,
bringing the outcome of socio - economic and policy analysis
into all decision-making processes of the organization, and
tracking the outcome. This includes both he core policy
decisions
of
the
organization,
and
the
small
every-day
decisions of implementation. ” と し 、 意 思 決 定 へ の 参 加 の 重 要
35)
性を述べた
poverty
。 ま た 、 ” Gendered dimensions of structural
are
based,
in
many
instances,
on
the
institutional-specifically legal and cultural-denial of land
and other productive resources, including vocational and
educational training, to women. ” と し 特 に 女 性 に つ い て 明 記
している
36)
。 本 研 究 に お け る ジ ェ ン ダ ー 視 点 と は 、 こ の Gender
and Development の 定 義 を 採 用 し た 。 ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 考 慮 し た
活 動 に は 、男 女 差 を 視 野 に お い た ① 生 産 の た め の 作 業 、② 生 産 を
決 定 す る 機 会 へ の 参 加 、の ア セ ス メ ン ト 、そ の 結 果 に 基 づ い た 戦
4
略 に よ る 介 入 、ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変 化 の 測 定 項 目 を 導 入 し た 評 価
の設定が必要である
37)~ 39)
。 国 連 人 口 基 金 ( UNFPA) で は 、 そ の
指 標 と し て 個 人 の 身 体 の 自 律 性 、家 庭 レ ベ ル で の 自 律 性 、地 域 レ
ベルでの政治力、社会的資源(保健、教育、等)へのアクセス、
物質的資源(土地、食物、現金、等)へのアクセス、時間、ジェ
ンダーアイデンティティを挙げている
40)
。上 記 に 基 づ い た ア セ ス
メ ン ト で は 、女 性 は 栄 養 に 関 す る 作 業 に 多 く の 時 間 を 費 や し て い
る も の の 、そ の 作 業 を 決 定 す る 機 会 へ の 参 加 が 非 常 に 尐 な い こ と
41) 42)
、また、女性は男性の意思決定が主流となる場に参加する
ための力を育成する機会も尐ないことが明らかになってきた
43)
44)
。
2.栄養教育へのジェンダー視点導入の必要性
栄 養 教 育 の ア セ ス メ ン ト 、介 入 、評 価 に お い て ジ ェ ン ダ ー が ど
の よ う に 扱 わ れ て き た か 、 を 知 る こ と を 目 的 に 、 Journal of
nutrition education, Health promotion international, Health
education research, Ecology of Food and Nutrition, Appetite,
Journal
of
community
health,
Bulletin
of
World
Health
Organization, Gender and Education, 栄 養 学 雑 誌 、 日 本 公 衆 衛
生 学 雑 誌 、農 村 生 活 研 究 、国 際 協 力 研 究 、教 育 心 理 学 、等 の 学 術
雑 誌 の タ イ ト ル 、 要 旨 、 キ ー ワ ー ド に “ 栄 養 教 育 ( Nutrition
e d u c a t i o n )”、“ 栄 養 問 題( N u t r i t i o n a l p r o b l e m s )”、“ 問 題 解 決 、
ま た は 改 善 ( P r o b l e m s o l v i n g )”、“ 参 加 ( P a r t i c i p a t i o n )”、“ 意
思 決 定 ( D e c i s i o n m a k i n g )”、“ ジ ェ ン ダ ー ( G e n d e r )”、“ 女 性
5
( W o m a n )”、“ 男 女 差 ( G e n d e r d i f f e r e n c e / G e n d e r b i a s )” の あ る
も の に つ い て 、 過 去 20 年 間 の レ ビ ュ ー を 行 っ た 。
こ こ で い う 栄 養 教 育 と は 何 か 。定 義 に は 以 下 の よ う な も の が あ
る 。 A m e r i c a n D i e t e t i c A s s o c i a t i o n( ア メ リ カ 栄 養 士 会 ) で は 、
“ Nutrition
education;
information
and
beliefs,
about
food
influences
scientifically
sound,
the
process
by
attitudes,
lead
to
practi cal
which
and
environmental
practices
and
nutrition
that
consistent
are
with
individual needs and available food resources. ” 45) と し 、
G i l l e s p i e , A . H . , B r u n , J . K . は 、“ N u t r i t i o n e d u c a t i o n ; a
process, which assists the public in applying knowledge form
nutrition science and the relationship between diet and
health to their food practices. It is a deliberate effort to
improve the nutritional well -being of people by assessing the
multiple
factors
educational
that
affect
methodologies
and
food
choices
results.
It
tailoring
can
help
individuals develop a diets and develo p decision-making
s k i l l s . ”4 6 ) と す る 。ま た 、L . K . G u y e r は 、“ N u t r i t i o n e d u c a t i o n
is an instructional method that promotes healthy behaviors
by imparting information that individuals can use to make
informed decisions about food, dietary habits, and health. ”
47)
という。いずれの定義も栄養教育が個人の食行動に影響を与
え る プ ロ セ ス で あ る こ と を 明 記 し て い る 。一 方 、足 立 は“ 人 々 に
対 し 、 人 々 が そ れ ぞ れ の 生 活 の 質 ( Quality of life ) の 向 上 に
つ な が る よ う な 、望 ま し い 食 生 活 を 営 む 力 と ラ イ フ ス タ イ ル を 形
6
成 す る た め の 学 習 の 機 会 を 提 供 す る こ と 、並 び に 、そ う し た 食 生
活 を 実 践 し や す い 食 環 境 づ く り の 両 方 か ら の ア プ ロ ー チ を 、栄 養
学 や 関 連 す る 学 問 等 の 成 果 を 活 用 し つ つ す す め る プ ロ セ ス ” 48)
とし、食環境づくりも広義の栄養教育に含めることを明記した。
本研究では学習の機会を提供することと食環境づくりの両面か
らのアプローチとする足立の定義を採用した。
1990 年 こ ろ か ら 栄 養 教 育 と ジ ェ ン ダ ー と の 関 連 に つ い て の 研
究 が 公 表 さ れ て い る 。 Robert B. Schafer, Elisabeth Schafer
は 、よ り 高 齢 の 男 性 が 世 帯 主 の 家 庭 で は そ の 男 性 が 食 物 の 購 入 や
食費の決定により強い影響力をもつこと
49)
を 確 認 し 、E l i s a b e t h
Schafer, Robert B. Chafer ら は 女 性 は 男 性 よ り 食 事 指 針 に 従 う
こ と が 多 く 、果 物 ・ 野 菜 選 択 行 動 へ の セ ル フ ・ エ ス テ ィ ー ム が 高
50)
くなる
こ と を 明 ら か に し た 。 Lisa Roff, Debra Palmer ら は
父 親 の た め の 栄 養 教 育 の ニ ー ズ 調 査 を 行 っ た 結 果 、調 理 に 興 味 を
も つ 男 性 が 多 か っ た が 、調 理 が 女 性 の 縄 張 り で あ る 意 識 が 学 習 意
欲 の 障 害 と な っ て お り 、男 女 関 係 を ふ ま え た 教 育 の 重 要 性 を 考 察
した
51)
。足 立 ら は 、ス ー パ ー マ ー ケ ッ ト 店 長 で あ る 中 高 年 男 性 へ
の学習型栄養教育プログラムを行い食生活に関する積極性の変
化 に つ い て 評 価 し た が 、食 事 を 食 べ る 項 目 に つ い て は 積 極 性 が 高
まったものの女性の役割とされる食事づくりへの参加態度に変
化はみられなかった
52)
。そ の 後 、松 下 ら は 料 理 カ ー ド を 使 っ た 栄
養教育プログラムによって高齢男性の食事づくりへの積極性が
高まることを明らかにした
53)
。
天野は、戦後日本の農村における生活改良普及事業の現場で、
ジェンダー視点を考慮した食生活改善活動があったことを明ら
7
かにした
54)
。食 生 活 改 善 が 進 ま ぬ 要 因 と し て 若 い 嫁 が 料 理 講 習 を
受講しても調理者であっても献立決定者ではないために直接に
は 食 生 活 改 善 に は 役 立 た な い 、家 庭 内 部 の 力 関 係 が 食 生 活 改 善 に
関 係 し て い た 。し か し 、高 度 経 済 成 長 期 に 近 代 的 農 業 経 営 に 関 す
る 学 習 の 場 づ く り 、調 理 環 境 改 善 へ の 支 援 が 実 を 結 び 、若 い 嫁 た
ちの農業労働に対する評価の高まりが家事労働への評価の高ま
り に つ な が り 、か ま ど の 改 善 の 普 及 が 炊 事 に 携 わ る 嫁 へ の 家 族 内
の 力 関 係 の 向 上 に つ な が っ た 。彼 女 た ち は 家 庭 や 地 域 で の 自 分 の
存 在 価 値 が 相 対 的 に 向 上 す る 喜 び を 得 た と い う 報 告 が あ る 。当 時 、
事 業 を 推 進 し た 山 本 は 改 善 に 生 活 の 哲 学 、知 識 ・ 技 術 、新 し い 暮
らしへの創造、人間生活の基地が必要であると述べた
55)
。
以上の先行研究では、国際協力における栄養教育で、男女差を
視 野 に お い た ア セ ス メ ン ト 、ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 取 り 入 れ た 戦 略 に
よ る 教 育 介 入 は み ら れ る も の の 、ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 取 り 入 れ た 評
価の可能性や有効性に関する研究はみられなかった。
目
的
ジェンダー視点を導入した栄養教育の有効性を明らかにする。
具 体 的 に は 、パ ナ マ 共 和 国 ノ ベ 族 を 事 例 に し て ジ ェ ン ダ ー 視 点 を
導入した栄養教育の有効性を介入によって有効性を明らかにす
る こ と で あ る 。そ の た め に ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 の
評 価 枠 組 み を 作 成 し 、そ の 評 価 枠 組 み が 有 効 で あ る こ と を 検 証 す
る。
8
方
法
1.研究の手順(表1)
栄 養 教 育 へ の ジ ェ ン ダ ー 視 点 導 入 の 可 能 性 を 確 認 し た 後 、パ ナ
マ共和国ノベ族を事例とした栄養教育へのジェンダー視点導入
の 有 効 性 に つ い て 、① 栄 養 教 育 の 評 価 に ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変 化 の
測 定 項 目 を 導 入 し た 枠 組 み( 以 下 、枠 組 み )の 作 成 、② ジ ェ ン ダ
ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム の 作 成 、③ 栄 養 教 育 プ ロ グ
ラ ム の 実 施 ( 以 下 、 介 入 )、 ④ 枠 組 み に よ る 栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム
の評価、の手順で検討した。
2.栄養教育にジェンダー視点導入の可能性(図1)
1 ) 栄 養 教 育 の ア セ ス メ ン ト と 評 価 指 標 と し て の
The
Transtheoretical Model
栄養教育のアセスメントおよび評価はどのように行われるの
か 。 そ の 概 念 に つ い て 多 数 の 定 義 が な さ れ て い る 。 ” Nutrition
education research is determination of the influence of
income, attitudes, and knowledge on dietary practices and
delineation of the most effective mechanisms for reaching
c o n s u m e r s w i t h n u t r i t i o n i n f o r m a t i o n ” 5 6 )、 や ” t o d e t e r m i n e
the most effective means of conveying information abo ut the
health impact of various dietary practices and advances in
human nutrition science to the general public and to health
professionals.” 57 ) な ど 、 特 に 強 調 さ れ て い る 点 は 食 態 度 ・ 行
動の変容に影響を与える栄養情報の提供の効果的な方法やメカ
9
ニ ズ ム を 明 ら か に す る 必 要 性 で あ る 。実 際 の 栄 養 教 育 の ア セ ス メ
ン ト や 評 価 に お い て は 学 習 者 自 身 の 態 度・行 動 変 容 に 注 目 し た モ
デ ル を 使 用 し た 事 例 が 多 い 。 モ デ ル の 主 な も の と し て Proceed
Health Locus of control( Wallston & Wallston, 1978), Health
Belief Model(Janz & Becker, 1984; Rosenstock, 1975), Theory
of Reasoned Action(Fishbein & Ajzen, 1975), Social Cognitive
Theory (Bandura, 1986; 1997), The Transtheoritical Model
(Prochaska, Norcross, & DiClemente, 1994; Prochaska & Velicer,
1997)な ど が あ げ ら れ る 。
著 者 は そ の 中 で 、栄 養 ・ 健 康 教 育 の た め に 、人 の 行 動 変 容 を 1
つ の プ ロ セ ス と と ら え て い る Prochaska の The Transtheoretical
Model
に 注 目 し た 。 そ の 変 容 過 程 を 5 つ の ス テ ー ジ
Precontemption( 行 動 す る 意 志 が な い 期 ), Contemption ( 行 動 す
る 意 志 が あ る が 今 や る 予 定 は な い 期 ) , Preparation ( 具 体 的 に
実 行 す る 意 志 が あ る 期 ) , Action ( 実 行 す る 期 ) , Maintenance
( 実 行 が 持 続 し て い る 期 )に 分 類 し て い る
58)
。こ の モ デ ル は 直 線
の変容でなくらせんを描くようなダイナミックな変容プロセス
で あ り 、 対 象 者 の 行 動 変 容 の 準 備 性 ( readiness) に あ っ た 働 き
かけが可能となるとされ
59)
、栄 養 教 育 の プ ロ グ ラ ム の ア セ ス メ ン
トと評価に多く使われその妥当性・信頼性が示されている
60)
。
Mary Ann S. Van Duyn ら は 、 5 a Day プ ロ グ ラ ム に よ る 果 物 と 野
菜の摂取行動への効果を測定するために
61)
による食物摂取状況と意識変容への効果に
、L o r A . ら は 肥 満 療 法
62)
、武 見 ら は 若 年 成 人
へ の 参 加 型 栄 養・食 教 育 の 診 断・評 価 指 標 と し て モ デ ル を 使 用 し
た
63)
。P r o c h a s k a ら 自 身 も 、教 育 の 評 価 と し て こ の モ デ ル が 有 効
10
で あ る こ と を 示 し て い る 。す な わ ち 、各 ス テ ー ジ へ の 支 援 に つ い
て Precontemption に は 気 づ き 体 験 、 気 づ く た め の 環 境 の 評 価 、
劇 的 な 救 済 、 Contemption に は 自 己 の 再 評 価 、 Preparation に は
社 会 的 な 場 に お け る 信 念 の 形 成 、 Action・ Maintenance に は 、 問
題 行 動 を 変 え る た め の 代 替 物 の 設 定 、障 害 を 緩 和 さ せ る よ う な 刺
激 の 提 供 、偶 発 事 態 へ の 対 忚 、手 助 け へ の 関 係 づ く り 、が 効 果 的
で 、 介 入 戦 略 と し て interactive intervention が 有 効 で あ る こ
と 、他 者 と の 関 わ り が 行 動 改 善 の た め の 意 思 決 定 バ ラ ン ス を 決 定
し維持すると報告した
64)
。武 見 は 食 べ る 行 動 と と も に そ れ 以 外 の
食 行 動 、す な わ ち 、食 事 を 準 備 し た り 作 る 行 動 や 、食 情 報 の 入 手
や交換行動
65)
、に関してもその妥当性を検証した
66)
。
一方、栄養教育により教育内容が学習者個人を介して、家族、
地域へ広がるであろうことはすでに推測されていた
67) 68)
が 、近
年 、国 際 的 に 栄 養 教 育 の 評 価 に つ い て 、家 庭 レ ベ ル 、地 域 レ ベ ル 、
政 府 レ ベ ル で の 評 価 を 行 う こ と の 重 要 性 が 示 さ れ た 。例 え ば 、乳
児 の 離 乳 に 関 す る 教 育 効 果 に つ い て“ 離 乳 へ の 権 利 ”を 示 す 、家
庭レベル、地域レベル、政府レベルでの評価を要請している
69)
。
ヘルスプロモーションにおける栄養活動において、武見は個人、
家 族 、帰 属 集 団 、地 域 等 の 階 層 構 造 で 評 価 指 標 を 捉 え る こ と の 重
要性を示している
70)
。 Karen Glanz, Michael P. Eriksen は 、 職
場 で の 栄 養 教 育 に よ る 個 人 、 他 者 、 地 域 へ の 効 果 を
Transtheoretical model で 評 価 可 能 で あ る こ と を 確 認 し た
11
The
71)
。
2 ) ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 取 り 入 れ た 活 動 の 評 価 指 標 と し て の The
Reversed Reality Framework
一 方 、ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 取 り 入 れ た 活 動 の 評 価 は ど の よ う に 行
われているのか。
ジェンダー構造を測定する指標として非常に多く使われてい
る の は 性 役 割 態 度 で あ り 、 Sandra L. Bem72)、 鈴 木
73)
、伊藤
74)
らにより、その尺度開発が進んでいる。
ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 考 慮 し た 活 動 の 評 価 に 関 す る 研 究 で は 、性 役
割態度の評価を基礎におきながら社会関係全体の中での男女の
相互関係を反映するために分析するジェンダー分析
75)
があり、
1 9 8 0 年 半 ば 以 降 、対 象 社 会 の 特 徴 を ジ ェ ン ダ ー に 基 づ い て 分 析 す
る 手 法 と し て 開 発 さ れ て き た も の で あ り 、ジ ェ ン ダ ー プ ラ ン ニ ン
グ 、社 会 / ジ ェ ン ダ ー 分 析 が あ る
76)
。U N D P の ジ ェ ン ダ ー に 関 す る
理 念 形 成 や ジ ェ ン ダ ー プ ラ ン ニ ン グ の 設 計 に 貢 献 し た Naila
Kabeer は 、 practical needs を 充 た す こ と に よ っ て strategic
interests が 導 き 出 さ れ る The Reversed Reality Framework を 構
想した
77)
。 practical needs と は 、 食 料 、 住 居 、 収 入 、 身 体 的 安
全 と い っ た 具 体 的 な 生 存 に 関 わ る 人 々 の 基 本 的 ニ ー ズ を さ す 。こ
れ に 対 し て strategic interests は 、 女 性 の 地 位 や 社 会 的 な 役 割
を積極的に変革していくことのニーズである
78)
。参 加 者 と の 対 話
と 討 議 に よ っ て 学 習 課 題 が 設 定 さ れ 、 strategic interests が 取
り 出 さ れ る こ と が 重 要 で あ る と い う 。そ れ に よ れ ば 変 化 の 過 程 の
中 で ① 新 し い 経 済 的 資 源 の 獲 得 、② 承 認 さ れ る た め の シ ス テ ム へ
の 参 加 、③ ニ ー ズ と 機 会 の 優 先 順 位 づ け 、④ 新 し い 分 析 力 と 気 づ
き、⑤新しい集団的な関係づくり、⑥自分たちで定義した
12
interests に 優 先 順 位 を つ け そ の 充 足 に む け て の 動 員 が 要 素 と し
てあるとしている
79)
。
個人の態度・行動の変化と他者・組織との関わりが意思決定行
動 の プ ロ セ ス に あ る こ と を 示 し 、栄 養 教 育 に 必 要 と さ れ る 評 価 項
目と類似する視点がみられた。
3 )栄 養 教 育 の 評 価 に ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変 化 の 測 定 項 目 の 導 入
( The
Transtheoretical
Model
と
The
Reversed
Reality
Framework と の 組 み 合 わ せ ) の 可 能 性
栄養教育の評価にジェンダー視点導入の可能性について前述
の 先 行 研 究 レ ビ ュ ー で 注 目 し た The Transtheoretical model と
Reversed reality framework と の 組 み 合 わ せ を 検 討 し た 。
多 く の 先 行 研 究 が 示 す The Transtheoretical Model の 特 徴 は 、
栄 養 教 育 の 目 標 を“ 肥 満 に つ な が る 高 脂 肪 食 の 減 尐 ”と い っ た よ
うな栄養状態に障害を及ぼす具体的な問題行動を減尐させるた
めの評価
80) 81)
に多く活用されてきたことにある。しかし、発展
途上国の栄養教育において人々の問題行動を減尐させるために
は 、女 性 が 自 ら の 意 思 決 定 能 力 を 向 上 さ せ 、ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変
化 の 促 進 を す す め な け れ ば 、人 々 の 栄 養 問 題 行 動 の 減 尐 、栄 養 状
態 の 改 善 は 難 し い 。そ こ で 、著 者 は 、栄 養 教 育 の 評 価 に 使 わ れ て
い る The Transtheoretical Model に ジ ェ ン ダ ー の 変 化 を ね ら っ
た 活 動 評 価 と し て 提 案 さ れ て い る Naila Kabeer の The Reversed
Reality Framework の 視 点 を 導 入 す る 可 能 性 に つ い て 検 討 す る こ
とにした。
The Reversed Reality Framework の 特 徴 は 、 ジ ェ ン ダ ー 視 点 を
13
取り入れる活動評価として個別の枠組みをつくりだそうとして
い る わ け で は な く 、既 存 の 概 念 、政 策 、ア プ ロ ー チ 、ツ ー ル 、を
ジェンダーの視点で総合的に再検討してつくりあげたものであ
る 。そ れ は 、彼 女 の あ ら た な 枠 組 み を 構 築 す る こ と が 啓 蒙 的 な ト
ップダウンアプローチを促進するだけである
82)
とする理念に基
づ い て い る 。 著 者 は そ の よ う な 特 徴 を も つ The Reversed Reality
Framework の The Transtheoretical Model へ の 導 入 を 検 討 し た 。
両 者 の 項 目 内 容 を 比 較 ・ 検 討 し た 結 果 、そ の 態 度 ・ 行 動 変 容 の プ
ロ セ ス は 、よ く 似 た 視 点 が 含 ま れ て い る こ と が 考 察 さ れ 、両 項 目
を組み合わせる可能性が示唆された。
以 上 に よ り 、健 康 に 関 す る 問 題 行 動 変 容 の プ ロ セ ス を 開 発 し た
The Transtheoretical Model と 既 存 の 概 念 を 忚 用 し て の ジ ェ ン ダ
ー 構 造 の 変 革 を ね ら う The Reversed Reality Framework を 組 み
合わせた枠組みの可能性があると考えられた。
2.ノベ族への栄養教育にジェンダー視点導入の可能性
1)対象者および対象地域について(図2.表2)
(1)歴史・住居環境
パ ナ マ 共 和 国 は 北 米 と 南 米 を 結 ぶ 地 峡 部 に 位 置 し 、東 は コ ロ ン
ビ ア 共 和 国 、西 は コ ス タ ・ リ カ 共 和 国 に 接 す る 。人 口 は 283 万 人
83)
でその半数が首都パナマシティのあるパナマ県に集中してい
る 。 一 人 あ た り の GNP は 2370 米 ド ル
84)
、ラテンアメリカ諸国の
中でも一人あたりの所得が非常に高い国となっている。しかし、
最 富 裕 層 約 2 0 % の 所 得 は 最 貧 困 層 2 0 % の 所 得 の 4 5 倍 、ラ テ ン ア
メリカの中ではブラジルに次いで所得格差が大きく最貧困層
14
20% を 占 め て い る 人 口 の 95% 以 上 は 先 住 民 族 で あ る
85)
。
先 住 民 族 の 一 つ ノ ベ 族 は 国 西 部 の ノ ベ 自 治 区 、 標 高 400~ 2000
m の 山 岳 地 域 、 約 10,000km2 に か け て 約 11 万 人 が 居 住 す る
86)
。
ノ ベ 族 は 尐 な く と も 紀 元 前 6500 年 に は パ ナ マ 共 和 国 か ら コ ス
タ ・ リ カ 共 和 国 の 海 岸 か ら 山 岳 地 域 に 居 住 し て い た と い わ れ 、食
生活の食物入手を狩猟採集と焼畑農業との両方に依存する民族
で あ っ た 。1 7 0 0 年 代 に 現 在 の パ ナ マ 共 和 国 地 域 は ス ペ イ ン 人 に よ
るラテンアメリカ探検の拠点とされ交易流通の拠点とされたが、
あ く ま で 拠 点 で あ り 、そ の あ た り の 地 域 民 族 や 人 々 の 生 活 に 関 心
は 示 さ れ な か っ た の で 経 済 開 発 は 行 わ れ な か っ た 。1 8 2 1 年 に パ ナ
マ 共 和 国 と し て 独 立 、1 9 1 4 年 に ア メ リ カ 合 衆 国 に よ っ て パ ナ マ 運
河 が 完 成 さ れ た 後 、 徹 底 し た 経 済 優 先 策 が と ら れ た た め 、 1970
年 代 に 、ノ ベ 族 居 住 地 域 に 外 国 資 本 の 大 規 模 な バ ナ ナ 農 園 ・ コ ー
ヒ ー 農 園 、鉱 山 開 発 が す す め ら れ た 。こ の と き 、約 1 万 人 の ノ ベ
族の人々が移住を余儀なくされた
87)
。
ノベ自治区の集落への交通手段はほとんど徒歩であり、アメリ
カ ン ・ ハ イ ウ ェ イ か ら 伸 び る 細 い 林 道 を 徒 歩 で 2 時 間 か ら 15 時
間 に 、2 0 ~ 4 0 世 帯 ほ ど の 集 落 が 点 在 し て い る 。鉱 山 、農 園 開 発 が
行 わ れ た 時 代 に 、舗 装 さ れ て い な い が ア メ リ カ ン ・ ハ イ ウ ェ イ か
ら 鉱 山 へ の 大 き な 集 落 間 を つ な ぐ 車 道 が つ く ら れ た 。現 在 、そ の
車 道 は ト ラ ッ ク が 1 日 1~ 3 往 復 す る 重 要 な 交 通 機 関 と な っ て い
る 。し か し 、人 々 が 利 用 す る た め に は 乗 車 運 賃 が 必 要 で あ る の で 、
通 常 人 々 は 徒 歩 で 移 動 す る こ と が 多 い 。隣 集 落 間 は 徒 歩 で 1 ~ 2
時間ほどかかる。
気 候 は 熱 帯 気 候 で 雤 季( 5 月 ~ 1 1 月 )、乾 季( 1 2 月 ~ 4 月 )に 分
15
か れ 、雤 季 に は 連 日 ス コ ー ル が 降 る 。8 月 か ら 9 月 に は 川 の 水 量
が 増 し 、他 の 集 落 と 完 全 に 孤 立 す る 集 落 が あ る
88)
。気 温 は 1 年 中 、
日 中 は 3 0 度 を 越 え る が 、雤 季 の 夜 は 2 0 度 を き る こ と が 多 く 、ま
た 、強 い 風 が 吹 く 。こ の 時 期 に 呼 吸 器 系 疾 患 に か か る 人 が 急 増 し 、
雤 に よ り 衛 生 状 況 が 悪 化 し 、下 痢 、感 染 症 で 入 院 ・ 死 亡 す る 人 が
増加する
89)
。
(2)家族制度・儀礼
ノ ベ 族 社 会 で は 伝 統 的 に 一 夫 多 妻 が 多 い 。伝 統 的 な 婚 姻 制 度 は
必 ず し も 男 女 の 結 び つ き で は な く 、“ 親 族 集 団 を 決 定 す る 儀 式 で
あ る ”と い う 観 念 が 土 台 と な っ て い る 。伝 統 的 に 最 も 好 ま し い と
さ れ る 婚 姻 は 2 家 族 の 中 で 娘 姉 妹 の 交 換 を す る こ と で あ る 。父 親
同 士 で 、ど の 息 子 と ど の 娘 を 結 婚 さ せ る か を 決 定 す る 。合 意 さ れ
る と 両 父 親 は 互 い の 家 を 2 度 ず つ 計 4 度 訪 問 す る 。妻 た ち の 間 に
序列はないが子供全員の責任は一番目の妻にある。
夫 が 死 亡 す る と 夫 の 兄 弟 が 子 供 た ち を 引 き 取 り 、未 亡 人 を 自 分
の 妻 に す る 。こ の と き 、元 か ら い た 妻 と 差 別 す る よ う な こ と は な
い 。近 年 、以 上 の よ う な 慣 習 は 減 尐 し つ つ あ る も の の 今 も 残 っ て
いる
90)
。
ノ ベ 族 男 性 は 皆 、妻 や 母 が 木 や 植 物 の 繊 維 を 染 め た 糸 で 編 ん だ
か ば ん を 持 ち 歩 い て い る 。そ の 編 み か ば ん に は 蛇 の 模 様 が 描 い て
あ る が 、人 々 を し ば し ば 死 に 至 ら せ る 蛇 を 身 に つ け る こ と に よ っ
て 守 ら れ る と い う ノ ベ 族 の 神 話 に 基 づ い て い る 。ノ ベ 族 女 性 は 初
潮 を 迎 え た 日 か ら 4 日 間 、母 親 に 編 み か ば ん を 編 む 技 術 を 教 わ る 。
娘は4日間殆ど食事をとることもせずに編みつづけ技術を習得
16
し 、そ の 儀 式 が 終 わ る と 親 族 や 地 域 の 友 人 に カ カ オ ジ ュ ー ス を ふ
る ま い 、成 人 と し て の 祝 い を す る 。そ れ が 結 婚 可 能 に な っ た と い
う 報 告 で あ り 、そ の 後 、女 性 は 結 婚 す る 男 性 や 息 子 に 編 み か ば ん
を 生 涯 作 り 続 け る 。ノ ベ 族 男 性 た ち は 、こ の 編 み か ば ん を 常 に 持
ち歩くのである。
宗 教 は 、人 々 は 世 界 の 悲 し み や 憂 鬱 を 追 い 払 い 太 陽 と 月 を 創 造
す る 神 “ Noncolama” を 信 仰 し て い た 。 自 治 区 の 多 く の 山 の 名 に
こ の 神 を 表 す ” N g o b o“ が つ い て お り 、 ま た 、 ノ ベ 族 の ” N g o b e ”
の 語 源 も こ こ か ら き て い る 。 宗 教 的 観 念 の 姿 と し て “ sukia” と
呼 ば れ る も の が い る 。現 在 も 人 々 は 子 供 が 病 気 に な る と そ こ へ 連
れ て 行 き 、 悪 霊 か ら 守 ら れ る よ う “ Noncolama” に 願 う 慣 習 が
ある
91)
。
ま た 、民 族 儀 礼 と し て 、集 落 間 の 関 係 を 実 体 化 す る ” K r u n ” と
い う 4 日 間 の 戦 い の 祭 り が あ る 。多 く の 集 落 の 人 々 が 集 ま り 、最
も 強 い 集 落 を 決 定 す る 戦 い の 儀 式 を 行 う 。こ の 戦 い に は 男 女 と も
参 加 し 、何 人 倒 し た か が そ の 人 の 勲 章 と な る 。こ の 儀 式 で は ノ ベ
族における調和の理想と避けることのできない不和の関係が一
度 に 表 現 さ れ る 。し か し 、こ の 儀 式 は 、1 9 8 0 年 代 に 、外 国 人 か ら
野 蛮 で あ る 、危 険 が 大 き い 、と 言 わ れ 、学 校 教 育 等 で も 、中 止 を
促 す 教 育 が な さ れ た こ と 、 Krun を 行 う 集 落 は 、 Krun 実 施 期 間 中
の全参加者への食事を準備しなければならずそのような食物入
手 は 昔 に 比 べ 非 常 に 困 難 に な っ た 、等 の 理 由 に よ り 、近 年 、ほ と
んど行われなくなった
92)
。
17
(3)社会・経済状態
現 在 、パ ナ マ 共 和 国 国 民 の 1 1 . 8 % が 農 業 に 、 7 8 . 9 % が パ ナ マ 運
河 に 関 係 す る サ ー ビ ス 業 に 従 事 す る の に 対 し 、ノ ベ 族 は 9 0 % 以 上
が農業に従事する
93)
。 基 本 的 に 自 給 自 足 で あ る が 1990 年 代 前 半
に 続 い た 旱 魃 に よ る 食 料 購 入 、子 供 の 学 校 教 育 、出 産 の た め の 検
診 、等 に よ る 現 金 の 必 要 性 か ら バ ナ ナ 園 、コ ー ヒ ー 園 の 農 繁 期 に
出 稼 ぎ に で る 男 性 が 増 加 し て い る 。出 稼 ぎ 先 で は 1 日 の 労 働 で 4
~ 5 ド ル を 稼 ぐ こ と が で き る 。し か し 、コ ー ヒ ー の 世 界 価 格 が 暴
落 し た た め に 、労 働 場 所 の 確 保 は 以 前 よ り 困 難 な 状 況 に あ る 。ノ
ベ 族 の 人 々 の 1 年 間 の 平 均 現 金 収 入 は 157 米 ド ル
94)
で、塩、砂
糖 、米 、等 の 食 料 、ろ う そ く 、灯 油 ( ラ ン プ 用 )、石 鹸 、た わ し 、
子 供 の 学 校 の 為 の ノ ー ト 、ペ ン 、子 供 の 病 院 治 療( 1 度 病 院 に か
か る 為 に 1 0 米 ド ル 程 必 要 )、 等 に 使 わ れ る 。 ノ ベ 族 の 人 々 の
95.4% が パ ナ マ 政 府 の 定 め る 貧 困 ラ イ ン 以 下 に 属 す る
95)
。
生 活 環 境 で は 、電 気 普 及 率 7 . 7 %( 国 レ ベ ル 7 9 . 0 % )、水 道 普 及
率 4 2 . 2 % ( 国 レ ベ ル 8 8 . 9 % )、 ト イ レ 普 及 率 4 0 . 0 % ( 国 レ ベ ル
9 3 . 0 % )で あ る
96)
。人 々 の 日 常 会 話 は ノ ベ 語 で あ る が 、学 校 教 育
は公用語であるスペイン語で行われている。小学校就学率は
83.0% で あ る が 、 小 学 校 卒 業 率 40.0% 、 中 学 校 就 学 率 は 16.0%
で あ り 国 平 均 値 が 9 2 . 0 % 、9 6 . 0 % 、6 2 . 0 % で あ る の に 比 べ て 非 常
に低い
97)
。
(4)食生活・栄養状態
鉱 山 ・ 農 園 開 発 に よ り ノ ベ 族 居 住 地 域 で 、そ れ ま で の 人 々 の 食
生活を支えてきた野生動物の減尐
18
98)
が確認されたため、パナマ
政府はノベ族への食料確保のために食生活の基盤の農業への転
換政策をとってきた
99)
。ノ ベ 族 の 人 々 は 現 在 も 基 本 的 に 自 給 自 足
の 生 活 を し て い る 。主 食 と し て 米 、キ ャ ッ サ バ 、バ ナ ナ 、と う も
ろこし、ヤム芋、等を、他に豆、かぼちゃ、マンゴ、みかん、グ
アバ、コーヒー、カカオ等を栽培している
100)
。狩猟採集の習慣
も 尐 な く な っ た と は い え 残 っ て お り 、イ グ ア ナ 、ウ サ ギ 、鳥 、川
魚 、食 用 植 物 も 貴 重 な た ん ぱ く 源 、ビ タ ミ ン 源 に な っ て い る 。伝
統的に人々の生活は相互扶助が土台になっている、ノベ語には
“ あ り が と う ”と い う 言 葉 が な い の で あ る が 、そ れ は 他 人 へ の 礼
が 必 要 な い か ら で あ る 。収 穫 し た も の は 栽 培 ・ 収 穫 に 関 わ っ た 全
て の 人 に 分 配 す る の が 伝 統 的 な 慣 習 で あ っ た 。例 え ば 、他 人 か ら
“ あ な た の 土 地 の 作 物 が 収 穫 期 を む か え て い ま す よ ”と 教 え ら れ
た ら 、そ れ は 同 時 に“ そ の 作 物 の 収 穫 を 手 伝 う よ ”と い う 意 味 で
あ り 、そ の 作 物 を 入 手 す る 権 利 を 得 る と い う こ と に な る 。こ の よ
う な 習 慣 は Cooperation と し て 現 在 も 残 っ て い る 。
現 在 の 1 日 の 平 均 食 事 回 数 は 2 . 1 ± 0 . 3 回 で あ る が 、伝 統 的 に は
1 日 2 回 の 食 生 活 を 行 っ て き た 。そ れ が 学 校 教 育 、出 稼 ぎ 、等 の
影 響 で 1 日 3 回 食 事 を と る 世 帯 が 現 れ て き た 。1 日 2 回 の 食 事 を
と る 人 の 生 活 行 動 ス タ イ ル は 、朝 5 時 ご ろ 起 床 後 、す ぐ に 畑 に 農
作 業 に 出 か け る 、2 、3 時 間 の 労 働 の 後 、帰 宅 し 1 度 目 の 食 事 を
と る 。そ の 後 、再 び 農 作 業 に 出 か け 、3 時 か ら 4 時 に 帰 宅 、2 度
目 の 食 事 を と る 。そ の 後 、家 族 ・ 友 人 と の だ ん ら ん の 時 間 を 過 ご
し 、 9 時 ~ 10 時 ご ろ 就 寝 す る
101)
。1日3回の食事をとる人の生
活 行 動 ス タ イ ル は 、朝 5 時 ご ろ に 起 床 し す ぐ に 1 度 目 の 食 事 を と
る 。そ の 後 、農 作 業 を 行 い 、1 2 時 か ら 1 時 に 2 度 目 の 食 事 を と り 、
19
再 び 、農 作 業 の 後 に 5 時 ご ろ 帰 宅 し 、3 度 目 の 食 事 を と る 。そ の
後 、 家 族 ・ 友 人 と の だ ん ら ん の 時 間 を 過 ご し 、 9 時 か ら 10 時 頃
就 寝 す る 。 1 日 の 出 現 料 理 数 は 3.4±1.7 種 類 で 、 使 用 す る 食 材
料 種 類 数 は 4.8±1.8 種 類 で あ る
102) 103)
。料理は、午前の食事に
は ゆ で バ ナ ナ 、ゆ で キ ャ ッ サ バ が 多 く 出 現 し 、午 後 の 食 事 に は 米 、
豆、
キャッサバの葉等を一つの鍋で煮込んだ日本のおじやに似
て い る“ ワ チ ョ ”が 多 く 出 現 す る 。ワ チ ョ は 人 々 の 摂 食 頻 度 が 大
変 高 い 料 理 で あ り 、人 々 が 最 も 好 む 料 理 で あ る 。
ま た 、入 手 可
能な材料でさまざまな忚用料理が可能となる日本の鍋料理のよ
う な 側 面 を 持 つ 。し か し 、一 つ の 鍋 か ら 個 人 が 直 接 に 食 べ る の で
な く 母 親 も し く は 母 親 代 わ り の 女 性 が 家 族 全 員 に 分 配 す る 。母 親
はどの程度の量を家族全員に盛り付けるかを考え、父親、祖父、
祖 母 、長 男 、そ れ 以 後 は 年 齢 順 に 分 配 す る 。調 理 法 と し て 、ゆ で
る 、焼 く と い う 調 理 法 を 用 い 、調 味 料 は 塩 の み を 使 用 す る こ と が
多い。香辛料として唐辛子を添えることがある。
人 々 の 嗜 好 品 は コ ー ヒ ー で あ る 。1 9 7 0 年 代 か ら 多 く の 世 帯 で 現
金 収 入 を 得 る 為 に コ ー ヒ ー を 栽 培 し て き た 。し か し 、コ ー ヒ ー 価
格 の 下 落 に よ り 、換 金 で き な い コ ー ヒ ー を 飲 む 世 帯 が 増 え 、現 在 、
食 事 調 査 に よ る と コ ー ヒ ー を 一 人 1 日 1 杯 程 度 飲 ん で い る 。コ ー
ヒ ー が な い 時 期 も 現 金 で 購 入 す る こ と が 多 い 。自 分 の 家 が 貧 し い 、
現金が不足していることを “うちはコーヒーも飲んでいない”
という言葉で表現することが多い。
1 年 間 の 全 食 費 は 162.3 米 ド ル( 国 レ ベ ル 523.1)で
104)
、主 に
塩 、砂 糖 、コ ー ヒ ー 、米( 保 存 の 米 が な く な る 5 月 か ら 7 月 )を
購 入 す る 。 エ ン ゲ ル 係 数 は 6 7 . 1 、( 国 レ ベ ル 4 6 . 5 ) で あ る 。 栄 養
20
所 要 量 に 対 す る 栄 養 素 等 摂 取 充 足 率 は 10 栄 養 素 中 7 栄 養 素 が 不
足している
ている
105)
。特にたんぱく質、ビタミン A の不足が深刻化し
106)
。
健 康・栄 養 状 態 は 乳 児 死 亡 率( 出 生 千 対 )2 9 . 5( 国 レ ベ ル 2 1 . 0 )、
5 歳 未 満 死 亡 率 ( 出 生 千 対 ) 8 4 . 1 ( 国 レ ベ ル 2 9 . 0 )、 5 歳 未 満 栄
養 不 良 率 52.2% ( 国 レ ベ ル 16.1% ) で あ る
107)
。
(5)ジェンダー視点からみた社会・経済、食生活・栄養状況
( 図 3, 4、 表 3, 4, 5)
ノベ族の人々の栄養問題とジェンダーとの関連についての報
告 が み ら れ な い た め 、著 者 は 、ジ ェ ン ダ ー 視 点 か ら み た 社 会 ・ 経
済 状 況 、食 生 活 ・ 栄 養 状 態 と 栄 養 教 育 に ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 す
る 必 要 性 の 把 握 を パ ナ マ 保 健 省 栄 養 部 と と も に 計 画 し 、ノ ベ 自 治
区で女性主体で運営が行われている民芸品づくり組織
108)
の本
部スタッフと検討した。
著 者 は 、1 9 9 2 年 か ら ノ ベ 族 の 人 々 の 栄 養 改 善 へ の 活 動 に 関 わ っ
て き た 。そ の 活 動 の 一 つ 、女 性 の 食 の 自 立 を 目 的 に し た 栄 養 活 動
を 行 う プ ロ セ ス に お い て 、女 性 が 伝 統 的 に つ く っ て き た 編 み か ば
ん を 商 品 化 し 、民 芸 品 と し て 販 売 し 収 入 向 上 を め ざ し た 民 芸 品 づ
く り 組 織 の 創 立 、お よ び 主 体 的 な 活 動 へ の 企 画 、実 施 、評 価 に 関
わ っ た 。そ の 後 、組 織 の 本 部 ス タ ッ フ と 共 に 、女 性 た ち へ 栄 養 学
習の機会を提供することを目的とした民芸品づくりの共同作業
場を活用した参加型栄養学習プログラムの開発を行ってきた
109)
民 芸 品 づ く り 組 織 の 本 部 は 、 創 立 以 来 、 国 連 開 発 計 画 ( U N D P )、
カ ナ ダ 政 府 、 ド イ ツ 国 際 技 術 協 力 事 業 団 ( G T Z )、 日 本 国 際 協 力 事
21
。
業 団 ( J I C A )、 パ ナ マ 政 府 、 カ ト リ ッ ク 教 会 、 等 、 に よ る 資 金 援
助 と 、組 織 経 営 、女 性 へ の 活 動 普 及 、組 織 の 集 会 で の フ ァ シ リ テ
ー ト 、等 の 技 術 に 関 す る 訓 練 を 受 講 し た
110)
実践経験の豊富なス
タ ッ フ( 以 下 、本 部 ス タ ッ フ )を 数 名 抱 え て い る 。そ の 本 部 ス タ
ッフと検討した結果、ジェンダー視点からみた社会・経済状況、
食 生 活 ・ 栄 養 状 態 に つ い て の 把 握 の 必 要 性 が 確 認 さ れ 、民 芸 品 づ
くり組織の集落リーダー会議での討議ののち、B 集落で調査を実
施することに決定した。
著 者 が 国 連 人 口 基 金 ( UNFPA) の 提 唱 す る 項 目
40)
を基礎におい
た 枠 組 み を 作 成 し 、B 集 落 3 9 世 帯 の 世 帯 主 妻 、ま た は 世 帯 女 主 を
対象に訪問面接調査を行った。
女 性 が 世 帯 主 で あ る 世 帯 は 1 世 帯 で 、そ の 他 の 世 帯 は 世 帯 主 が
男性であった。教育レベルは、男性が女性よりも小学校就学率、
卒業率が高かった。
地 域 に お け る 活 動 組 織 に 民 芸 品 づ く り 、小 学 校 P T A 、共 同 組 合 、
養 鶏 プ ロ ジ ェ ク ト 、水 道 委 員 会 、が 存 在 し た 。そ れ ら 組 織 へ の 世
帯 参 加 率 は 小 学 校 P T A に 7 9 . 5 % 、水 道 委 員 会 に 3 8 . 5 % で あ っ た 。
し か し 、共 同 組 合 、民 芸 品 づ く り 、養 鶏 プ ロ ジ ェ ク ト に は 全 世 帯
の 1 / 3 以 下 し か 参 加 し て い な か っ た 。組 織 の 運 営 委 員 の 男 女 比 は
小 学 校 PTA に つ い て は パ ナ マ 教 育 省 の 要 請 で 男 女 2 名 ず つ が 選 出
さ れ て い た が 、民 芸 品 づ く り に つ い て は 作 業 も 運 営 委 員 も 女 性 の
み で あ っ た 。そ の 他 の 組 織 で は 男 性 ・ 女 性 と も 作 業 を 行 う も の の
運 営 委 員 は 男 性 の み で あ っ た 。養 鶏 プ ロ ジ ェ ク ト は 、男 性 が 決 定
し た“ 女 性 の た め の プ ロ ジ ェ ク ト ”で あ り 、女 性 が 全 作 業 を 行 っ
て い る が 女 性 は 計 算・読 み 書 き が で き な い と い う 理 由 で 男 性 が 運
22
営委員に選出されていた。
家 庭 お け る 、女 性 の 栄 養 状 態 に 関 係 す る 作 業 へ の 関 わ り は 、調
理 に 1 0 0 . 0 % 、農 作 業 に 4 3 . 6 % 、鶏 の 世 話 に 6 4 . 1 % 、食 物 の 交 換
に 4 1 . 0 % 携 わ っ て い た 。し か し 、食 物 摂 取 を 左 右 す る 意 思 決 定 へ
の 女 性 の 参 加 は 、栽 培 作 物 の 入 手 に 1 6 . 1 % 、現 金 の 管 理 に 2 3 . 1 % 、
食 料 の 購 入 に 2 0 . 5 % に 留 ま っ た 。女 性 の 作 業 へ の 関 わ り 率 に 比 べ 、
意 思 決 定 へ の 関 わ り 率 が 低 い こ と が 明 ら か に な っ た 。パ ナ マ 栄 養
所 要 量 に 対 す る 栄 養 素 等 充 足 率 は 、糖 質 、ビ タ ミ ン C 以 外 の 8 栄
養 素 が 不 足 し て お り 、た ん ぱ く 質 、ビ タ ミ ン A の 不 足 が 深 刻 で あ
ることが示唆された。
ま た 、女 性 た ち に と っ て の 栄 養 問 題 に 関 す る 意 識 は 、家 庭 に“ 栄
養 問 題 が い つ も 、ま た は 時 々 あ る ”と 考 え る 女 性 が 9 4 . 9 % で あ っ
た 。そ の 内 容 に は 、入 手 食 物 の 不 足 、現 金 収 入 の 不 足 、労 働 場 所
の 不 足 が あ が っ た 。し か し 、そ の 栄 養 問 題 を ど の よ う に 改 善 す る
か に つ い て は 、 2 0 . 5 % が “ わ か ら な い ”、 7 . 7 % が “ 私 に は 何 も で
き な い ” と 考 え て い た 。 ま た 、“ 地 域 に 栄 養 問 題 が 集 落 全 体 に あ
る 、 ま た は 一 部 に あ る ” と 考 え る 女 性 は 7 1 . 7 % で あ っ た が 、“ 地
域 に 栄 養 問 題 が あ る の か ど う か 知 ら な い ”と 考 え る 女 性 も 2 8 . 2 %
い た 。栄 養 問 題 の 内 容 に は 入 手 食 物 の 不 足 、現 金 収 入 の 不 足 、労
働 場 所 の 不 足 、水 不 足 、栄 養 プ ロ ジ ェ ク ト が な い こ と 、土 地 分 配
の 不 平 等 が あ が っ た 。そ の 栄 養 問 題 を ど の よ う に 改 善 す る か に は 、
4 1 . 0 % が “ わ か ら な い ”、 1 5 . 4 % が “ 私 に は 何 も で き な い ” と 考
えていた。
以 上 の 結 果 よ り 、女 性 の 栄 養 素 摂 取 量 の 不 足 が 問 題 で あ る こ と 、
女性の栄養に関する作業への関わり率に比べ意思決定への関わ
23
り 率 が 非 常 に 低 い こ と 、ま た 、女 性 た ち は 、栄 養 問 題 が あ る と 考
え て い る も の の 、自 分 に は 何 も で き な い 、わ か ら な い 、と 考 え て
い る 人 が 多 い こ と 、が 明 ら か に な っ た 。ノ ベ 自 治 区 の B 集 落 で 栄
養教育にジェンダー視点を導入することの必要性が明らかにな
った。
3)ノベ族への栄養教育にジェンダー視点導入の可能性
( 1 )栄 養 教 育 の 評 価 に ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変 化 の 測 定 項 目 を 導 入
した枠組み(以下、枠組み)の作成
A. 先 行 研 究 で 注 目 し た 項 目 に 基 づ い た 栄 養 教 育 で の 学 習 者 の
発言の分類(表7)
栄養教育プログラムを評価するための枠組みを作成した。
先 行 研 究 レ ビ ュ ー に よ り 注 目 し た The Transtheoretical Model
並 び に The Reversed Realities Framework の 項 目 を 基 礎 に お い
て 、ジ ェ ン ダ ー 視 点( ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変 化 の 測 定 項 目 )を 導 入
し た 栄 養 教 育 の 評 価 枠 組 み を 作 成 す る た め に 、1 9 9 8 年 に ノ ベ 族 農
村地域の女性を対象に行われた参加型栄養学習プログラム
109)
の
場 に お い て 、参 加 女 性 た ち が 発 言 し た 言 葉 を 分 類 し た 。分 類 し 抽
出 し た 項 目 を 系 時 的 に 位 置 づ け た 結 果 、「 問 題 に 無 関 心 」「 問 題
に 気 が つ い て い る が 何 を し て よ い か 不 明 」「 役 割 内 ・ 外 の 食 行 動
の 確 認 」「 家 族 と の 情 報 の 共 有 」「 近 所 の 友 人 と の 情 報 の 共 有 」
「 課 題 へ の 気 づ き 」「 役 割 態 度 の 変 化 」「 組 織 へ の 関 係 づ く り 」
「 課 題 の 明 確 化 」「 課 題 の 実 行 」 の 各 段 階 が 実 行 さ れ て い る こ と
が確認された。
24
B. ノ ベ 族 住 民 と の 検 討 に 基 づ い た 食 態 度 ・ 行 動 と そ の 共 有 行 動
による評価の枠組みの作成(図5、表8)
A で選定された項目についてノベ自治区の住民の理解度と学習
提 供 者 に よ る 項 目 の 妥 当 性 、使 用 可 能 性 を 民 芸 品 づ く り 組 織 の 本
部スタッフ、B 集落リーダー、著者で検討した結果、態度・行動
の 変 化 と 他 者・組 織 へ の 関 わ り 行 動 を 分 け る 方 が デ ー タ 収 集 の 際
により使いやすいという意見が多数を占めた。よって、食態度・
行動とその共有行動による評価の枠組みを作成した。すなわち、
食 態 度 ・ 行 動 の 変 化 と し て ス テ ー ジ 1「 役 割 内 ・ 外 の 食 行 動 の 確
認 」、 ス テ ー ジ 2 「 課 題 へ の 気 づ き 」、 ス テ ー ジ 3 「 役 割 態 度 の 変
化 」、 ス テ ー ジ 4 「 課 題 の 明 確 化 」、 ス テ ー ジ 5 「 課 題 の 実 行 」 の
側 面 と 、共 有 行 動 の 広 が り S t a g e 1 「 家 族 と の 共 有 」、S t a g e 2「 近
所 の 友 人 と の 共 有 」、 S t a g e 3 「 組 織 へ の 関 係 づ く り 」 の 側 面 の 2
側面から成る。
(2)栄養教育プログラムの作成(表6)
A. 学 習 目 標 、 学 習 ス テ ッ プ 、 戦 略 、 学 習 目 標 達 成 度 を 測 定 す
る評価項目の設定
著 者 は 1998 年 よ り ノ ベ 族 居 住 地 域 で 民 芸 品 づ く り 組 織 と 共 同
作 業 場 を 活 用 し た 栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム の 開 発 を 行 っ て き た 。人 々
の 栄 養 学 習 に 関 す る ニ ー ズ ア セ ス メ ン ト の 結 果 、ノ ベ 族 女 性 の 学
習 の 機 会 が 男 性 に 比 べ 非 常 に 尐 な く 、た と え 学 習 会 に 行 っ て み て
も 女 性 た ち は い き い き と 発 言 で き な い 、学 習 内 容 を 理 解 で き な い
人 が 多 い 、現 金 収 入 が な い と 栄 養 問 題 は 改 善 で き な い と 考 え て い
る 人 が 多 い 、等 の 問 題 が あ る こ と が 確 認 さ れ た 。そ こ で 、ノ ベ 地
25
域 の 唯 一 の 女 性 主 体 の 組 織 を 活 用 し 、集 落 で 定 期 的 に 女 性 た ち が
自 分 の 編 ん だ 民 芸 品 を 持 っ て 集 ま り 、デ ザ イ ン や 編 み 方 や に つ い
ていきいきと議論している共同作業場を活用した栄養教育なら
ば 、女 性 も 気 軽 に 来 や す い 場 所 で あ り 議 論 に も 参 加 し や す い 雰 囲
気 が あ る の で は な い か と 考 え 、共 同 作 業 場 を 活 用 し た 栄 養 教 育 を
試 み て き た 。プ ロ グ ラ ム 内 容 に は 地 域 で 現 金 を 使 わ ず に 入 手 可 能
な 食 物 を 増 や す こ と 、そ の た め の 自 分 の 課 題 を み つ け る こ と を ね
ら い と し た プ ロ グ ラ ム を 開 発 し て き た 。そ の 結 果 、共 同 作 業 場 で
の 栄 養 学 習 は 女 性 の 参 加 を 得 る こ と が で き る 、女 性 た ち が 自 分 の
課題をみつけることができることに効果があることが示唆され
た
109)
。同プログラムをたたき台に、本研究の目的であるジェン
ダ ー の 視 点 を 導 入 し た 介 入 プ ロ グ ラ ム を 設 計 、本 部 ス タ ッ フ と 検
討、修正し、実施した。
介入目的は栄養教育へのジェンダー視点導入の有効性を検証
す る こ と で あ る 。栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム お よ び そ の 効 果 を 測 定 す る
評 価 枠 組 み の 両 方 に ジ ェ ン ダ ー 視 点 を と り い れ た 。栄 養 教 育 プ ロ
グ ラ ム に は 、女 性 た ち の 食 ・ 栄 養 問 題 に 関 す る 意 識 に つ い て の ア
セスメント結果から女性が栄養問題を改善するための自分の課
題 に 気 づ く こ と を ね ら い 、そ れ が 家 族 意 識 、 コ ミ ュ ニ テ ィ 意 識 の
向 上 に つ な が り 、家 族 ・ 地 域 へ の 栄 養 問 題 の 改 善 課 題 の 実 行 に つ
なげていくことを予想した。
参 加 者 の 学 習 目 標 は 、“ 栄 養 問 題 を 改 善 す る た め の 自 分 の 課 題
に 気 づ く こ と ” と し た 。 地 域 の 伝 統 的 ・ 日 常 的 料 理 、“ ワ チ ョ ”
は、地域の人々の摂食する料理の中で摂食率が最も高く
材が多様に交換でき
112)
111)
、人々が最も好んでいる料理である
26
、食
113)
ことから、入手可能な食材料を活用しながら忚用できる料理
114)
に 適 し て い る と 考 え ら れ た た め 、学 習 プ ロ グ ラ ム の 教 材 と し て 選
択 し 、食 物 を ベ ー ス と し た ア プ ロ ー チ を 行 う こ と に よ る 栄 養 改 善
をねらった
115) 116)
。
学 習 目 標 に 向 け て の 学 習 ス テ ッ プ と し て 、① 自 分 や 家 族 の 食 生
活 や 栄 養 問 題 を 振 り 返 る 、② 栄 養 問 題 を 改 善 す る た め の 情 報 を 入
手 し た り 技 術 を 習 得 す る 、③ 入 手 し た 情 報 や 習 得 し た 技 術 を 生 か
し た ワ チ ョ を 調 理 す る 。④ 栄 養 問 題 を 改 善 す る た め の 課 題 に 気 づ
く、とした。
女 性 の 学 習 へ の 参 加 を す す め る 戦 略 に 、集 落 で 唯 一 の 女 性 主 体
で企画から評価まで行っている民芸品づくり組織と共同作業場
の 活 用 、 Participatory Learning Appraisal 7) 手 法 を 忚 用 し た ワ
チ ョ の 入 手 か ら 摂 食 ま で の 食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ の 作 成 、民 芸 品
づ く り 組 織 の 参 加 者 の ピ ア ・ エ デ ュ ケ ー タ ( peer educator) と
しての参加を採用した
14) 15)
。民芸品づくり組織と共同作業場の
活 用 に つ い て は 、こ れ ま で 著 者 ら が ノ ベ 自 治 区 に お け る 女 性 た ち
の食の自立をすすめるための手段として有効である
109)
ことが確
認されており、本研究においても同手段を用いた。
ジ ェ ン ダ ー 視 点 の 戦 略 と し て 、① 食 生 活 で の 自 分 ・ 家 族( 特 に
父 親 ・ 夫 等 の 男 性 )の 役 割 を 確 認 し 、家 族 や 近 所 の 友 人 と の 協 力
関係についての学習者同士の共有
117)
、②家族や近所の友人(特
に 男 性 )を 巻 き こ み や す い 課 題( 自 分 や 家 族 の 食 生 活 を 絵 や 写 真
に描く
118)
、ワチョづくり実習を学習者の持ち寄り材料で行う、
共同作業場での学習中に作成する食生活チェックマップの自宅
や地域での活用を提案する)を提供すること
27
119) 120)
にした。
学 習 目 標 へ の 達 成 度 を 測 定 す る 項 目 に 、① 自 宅 学 習 中 に 学 ん だ
こ と を 生 か し た ワ チ ョ を 調 理 し た か 、② 自 宅 学 習 中 に 食 生 活 チ ェ
ッ ク マ ッ プ を 活 用 し た か 、③ 入 手 可 能 な 食 材 料 の 種 類 数 は 増 え た
か 、④ 献 立 中 の 食 品 群 数 は 増 え た か 、の 4 項 目 を 食 事 づ く り 計 画
力 と し て 設 定 し た 。評 価 は 上 記 の 学 習 目 標 へ の 達 成 度 に よ る 評 価
と 、作 成 し た 枠 組 み つ ま り 食 態 度 ・ 行 動 と そ の 共 有 行 動 に よ る 評
価の両方から検討することとした。
B. 学 習 に お け る 参 加 者 の 活 動 、 ピ ア ・ エ デ ュ ケ ー タ の 役 割
学 習 準 備 と し て 、民 芸 品 づ く り 組 織 本 部 の 集 落 リ ー ダ ー 集 会 を
通して教育への参加の呼びかけを行い、B 集落に介入することに
した。本部スタッフ、B 集落リーダー、著者が相談し、ピア・エ
デ ュ ケ ー タ を 集 落 リ ー ダ ー 本 人 ( 45 歳 ) と そ の 三 女 ( 17 歳 ) に
決 定 し た 。ピ ア ・ エ デ ュ ケ ー タ と し て 彼 女 た ち が 選 出 さ れ た 理 由
には、B 集落のリーダーが民芸品づくり組織の持続的活動にとて
も 熱 心 で あ る こ と 、彼 女 の 三 女 は よ く 母 親 を 手 伝 っ て お り 学 び た
いという姿勢もあり将来のリーダーとしての素質をもっている
と本部スタッフが考えていること、B 集落ではリーダーが望むほ
どに民芸品づくり活動人数が増加していないので栄養教育を通
し て 支 援 し て ほ し い と い う 本 部 の 希 望 が あ る こ と 、集 落 で ほ と ん
ど セ ミ ナ ー が 行 わ れ て い な い こ と 、 ODA や NGO プ ロ ジ ェ ク ト が 入
っ て お ら ず 、栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム の 効 果 が 確 認 し や す い こ と 、の
理 由 か ら で あ っ た 。決 定 の 後 、本 部 ス タ ッ フ と 著 者 が 、彼 女 た ち
に ピ ア ・ エ デ ュ ケ ー タ の 役 割 に つ い て の 研 修 を 行 っ た 。ピ ア ・ エ
デュケータの役割
15)
は、①学習者同士の共有を勧める、②学習
28
者 と し て の モ デ リ ン グ( 参 加 し に く い 学 習 者 を 支 援 す る 。地 域 性
や栄養的特徴を考慮したワチョづくり演習の持ち寄り材料を持
参 す る 。学 習 中 に 作 成 す る 食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ の 自 宅 学 習 中 の
活 用 を 勧 め る 、 等 )、 ③ 評 価 の た め の デ ー タ 収 集 、 ④ 収 集 デ ー タ
の 一 部 の 集 計 、で あ っ た 。評 価 の た め の デ ー タ の 収 集 に 関 し て は 、
あらかじめ質問表現を決め著者と三女が全世帯を訪問し面接法
で 、三 女 が 対 象 者 に 質 問 し 著 者 が 回 答 の 書 き 取 り を 行 っ た( 集 落
リ ー ダ ー は デ ー タ 収 集 作 業 を 行 わ な か っ た )。 訪 問 は 全 て 徒 歩 で
行 っ た 。面 接 時 に 、三 女 が 聞 き 忘 れ た 質 問 項 目 、回 答 内 容 に よ っ
てさらに深く聞きたい質問項目について著者が対象者に質問し
た 。1 回 の 面 接 時 間 は 平 均 3 0 分 か ら 4 0 分 で ノ ベ 語 と ス ペ イ ン 語
の 両 方 で 行 わ れ た 。そ れ ら の 結 果 を 基 に 、ピ ア ・ エ デ ュ ケ ー タ と
著者は著者がたたき台として作成した栄養教育プログラムの B集
落 へ の 忚 用 に つ い て の 検 討 を 行 っ た 。こ れ と 同 時 に 学 習 に つ い て
の情報を民芸品づくり活動の作業場に集まった女性たちを通し
て地域の全世帯の女性たちに発信した。
B 集落では、毎週土曜日に女性たちが共同作業場での活動を行
っ て い た の で 、そ の 日 に 民 芸 品 づ く り 活 動 の 一 部 と し て 、女 性 た
ちが編みかばんを作成しつつ栄養について議論したり学んだり
す る と い う ス タ イ ル で 栄 養 学 習 を 行 っ た 。学 習 回 数 は 、民 芸 品 づ
く り の 共 同 作 業 場 で の 学 習 と 自 宅 学 習 を 交 互 に 4 回 ず つ 、計 8 回
行 っ た 。過 去 の 実 践 的 経 験 か ら ス タ ッ フ の 活 動 能 力 と 精 神 的 負 担
が 、そ の 程 度 の 期 間 が 限 界 で あ る こ と 、共 同 作 業 場 で の 学 習 が 3
~ 4 回 な ら ば 学 習 者 は 気 楽 に 参 加 で き る こ と 、等 の 意 見 を 参 考 に
した。
29
学習者の共同作業場での学習と自宅学習の両方を視野におい
た プ ロ グ ラ ム を 作 成 し た 。共 同 作 業 場 で の 学 習 1 回 目 に 、学 習 者
は 自 身 や 家 族 の 栄 養 問 題 と 改 善 の た め の 課 題 を 考 え る 。そ の 後 の
自 宅 学 習 1 回 目 で 、自 分 の 食 生 活 を 絵 や 写 真 に 描 き 、共 同 作 業 場
で の 学 習 2 回 目 で 、そ れ を 発 表 し 、他 人 と 共 有・比 較 す る 。共 同
作 業 場 で の 学 習 3 回 目 で は 、学 習 者 全 員 の 絵 と 写 真 を 使 い 、ワ チ
ョ を つ く る た め の 食 材 料 入 手 、調 理 、摂 食 、栄 養 的 特 徴 が 表 現 さ
れ る 1 枚 の 大 き な 食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ を 作 成 す る 。自 宅 学 習 3
回 目 に 、学 習 者 が 食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ を 活 用 し た 後 、共 同 作 業
場 で の 学 習 4 回 目 に 、栄 養 問 題 の 改 善 の た め の 課 題 を 改 め て 考 え
た り 、食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ の 修 正 を 行 う 。ま た 、共 同 作 業 場 の
学 習 で は 、4 回 と も 学 習 者 の 持 ち 寄 り 材 料 に よ る ワ チ ョ づ く り 実
習 を 行 っ た 。 参 加 者 の 共 同 作 業 場 で の 学 習 時 間 は 午 前 10 時 頃 か
ら午後3時頃であった。
な お 、参 加 者 の 学 習 作 業 で ワ チ ョ づ く り と 食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ
プ 作 成 が 同 時 に 行 わ れ て い く ケ ー ス を 考 え 、フ ァ シ リ テ ー タ 2 人
の 主 な 担 当 を 決 め る こ と に し た 。母 娘 の 間 の 話 し 合 い で 、母 が 主
に ワ チ ョ づ く り 、娘 が 主 に 食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ 作 成 の フ ァ シ リ
テ ー ト を 担 当 す る こ と を 決 定 し た 。こ の 担 当 の 理 由 は 、母 は 言 葉
の読み書きが出来ないが娘はできるこという理由からであった。
(3)調査枠組みの作成とその妥当性の検討(表9)
栄養教育プログラムおよび枠組みの評価を行うための調査
枠 組 み を 表 9 に 示 す 通 り 作 成 し た 。各 項 目 に つ い て 、対 象 者 が
理 解 で き る 質 問 表 現 に つ い て 本 部 ス タ ッ フ 、ピ ア ・ エ デ ュ ケ ー
30
タ 、著 者 で 検 討 し た 。そ の 結 果 、過 去 の 実 践 的 経 験 か ら 判 断 す
る と 、学 歴 の 低 い 対 象 者 は 、読 み 書 き が 不 可 能 で あ る 、数 字 や
頻 度 を 使 用 す る 回 答 の 信 頼 性 が 極 め て 薄 い 、対 象 者 に と っ て 質
問が難しいと感じると学歴のより高い家族や世帯主男性が代
わ っ て 回 答 し て し ま う こ と が 多 く な る 、質 問 に つ い て 考 え る 時
間 は 30 分 程 度 が 限 度 で あ る 等 の 事 項 か ら 、 1 回 の 面 接 調 査 で
の 質 問 数 は 10~ 15 問 程 度 で す べ て 自 由 回 答 に す る こ と が 好 ま
し い と い う こ と に な っ た 。観 察 に よ っ て デ ー タ 収 集 で き る 項 目
は 可 能 な 限 り そ の 方 法 を 用 い 、そ の 他 の 項 目 に つ い て ノ ベ 語 で
可 能 な 表 現 に し た 。調 査 時 期 は 観 察 に つ い て は 共 同 作 業 場 で の
学 習 に お い て 、面 接 聞 き 取 り に つ い て は 次 回 の 共 同 作 業 場 で の
学習の前4日間(自宅学習中)に行った。
3.栄養教育プログラムの実施(写真1)
2001 年 6 月 か ら 8 月 に B 集 落 に お い て 栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム
を実施し、事前のアセスメントと評価には表9に示す項目を用
いた。
4.栄養教育プログラムの評価
評 価 は 学 習 目 標 へ の 達 成 度 に よ る 評 価( 栄 養 教 育 に よ る 結 果
評 価 )お よ び 食 態 度・行 動 と そ の 共 有 行 動 に よ る 評 価( 結 果 に
至 る プ ロ セ ス の 評 価;枠 組 み を 使 用 )の 両 方 で 行 っ た 。枠 組 み
の 有 効 性 の 検 証 に つ い て は ① 介 入 に よ る 系 時 的 変 化 の 検 討 、②
自宅学習4回目時におけるステージ間の関係の検討を行った。
解 析 に は SPSS .Version10.0J、 Amos Version4.0 を 使 用 し 、 ①
31
に は 反 復 測 定 に よ る 一 元 配 置 分 散 分 析 お よ び 多 重 比 較( ボ ン フ
ェ ロ ー ニ 法 )、 相 関 分 析 、 ② に は χ 2 検 定 、 t 検 定 、 一 元 配 置 分
散 分 析 お よ び 多 重 比 較 ( ボ ン フ ェ ロ ー ニ 法 )、 パ ス 解 析 を 用 い
た。
結果
1.学習目標への達成度による評価(栄養教育の結果評価)
1 ) 共 同 作 業 場 で の 学 習 へ の 参 加 人 数 と そ の 特 徴 ( 図 6 、 表 10)
共 同 作 業 場 で の 学 習 に 、 B 集 落 全 39 世 帯 中 32 世 帯 、 41 名 と
非常に多くの女性の参加が得られた。共同作業場での学習の全
4 回 と も 参 加 し た 人 は 8 名 ( 19.5% ) で あ っ た 。 参 加 世 帯 が 集
落 地 域 の 一 部 に 偏 っ て い る こ と は な か っ た ( 図 6 )。
共 同 作 業 場 で の 学 習 へ の 参 加 者 ( 以 下 、 参 加 者 ) の 年 齢 は 10
代 か ら 70 代 ま で お り 、 そ の 平 均 は 34.5±14.9 歳 で あ っ た 。 教
育 は 学 校 教 育 を 全 く う け な か っ た 人 が 2 4 名 ( 5 8 . 5 % )、 小 学 校
中 退 し た 人 が 13 名 ( 31.7% ) だ っ た 。 セ ミ ナ ー 等 の 研 修 へ の
参 加 経 験 の あ っ た 人 が 2 名 ( 4.9% ) で あ っ た 。
参 加 者 世 帯 の 社 会 参 加 状 況 は 、 民 芸 品 づ く り に 17 世 帯
( 4 1 . 5 % )、P T A に 3 2 世 帯( 1 0 0 % )、共 同 組 合 に 7 世 帯( 1 7 . 1 % )、
養 鶏 委 員 会 に 8 世 帯( 1 9 . 5 % )、水 道 委 員 会 に 1 5 世 帯( 3 6 . 6 % )
であった。
家 庭 で 行 う 作 業 へ の 関 わ り に は 農 作 業 に 2 3 名 ( 5 6 . 1 % )、 鶏
の 世 話 に 2 7 名 ( 6 5 . 9 % )、 薪 の 入 手 に 1 名 ( 2 . 4 % )、 食 物 の 購
入 に 9 名 ( 2 2 . 0 % )、 食 物 の 交 換 に 1 6 名 ( 3 9 . 0 % )、 調 理 に 3 3
32
名 ( 80.5% ) が 携 わ っ て い た 。 一 方 、 家 庭 で の 意 思 決 定 へ の 関
わ り に つ い て は 、 子 供 の 教 育 ・ 進 学 に 14 名 ( 40.0% ) が 参 加
し て い た も の の 、 現 金 の 管 理 に 7 名 ( 1 7 . 1 % )、 出 稼 ぎ の 決 定
に 3 名 ( 7 . 3 % )、 栽 培 作 物 の 決 定 に 5 名 ( 1 5 . 2 % )、 食 料 の 購
入 に 9 名 ( 22.0% ) し か 参 加 し て い な か っ た 。 食 物 摂 取 状 況 は
1 日 の 平 均 食 事 回 数 は 2 . 1 ± 0 . 4 回 、摂 食 す る 平 均 食 材 料 種 類 数
は 3.6±1.1、 平 均 食 品 群 数 は 2.6±0.7 で あ っ た 。 ま た 、 39 名
( 95.1% ) が 自 分 は 健 康 で あ る と 感 じ て い た 。
参 加 者 4 1 名 と 不 参 加 世 帯 の 女 性( 以 下 、不 参 加 者 )7 名 を 比
較 し た 。 参 加 者 は 民 芸 品 づ く り 、 小 学 校 PTA 集 会 に 有 意 に 多 く
出席していたが、集落にあるその他の組織への参加率、財産の
有無、女性自身の教育レベル、家庭での作業への関わり率、意
思 決 定 率 、食 物 摂 取 状 況 に 有 意 な 差 は み ら れ な か っ た( 表 1 0 )。
2 ) 学 習 目 標 へ の 達 成 度 ( 表 11)
学 習 目 標 で あ る 課 題 へ の 気 づ き が あ っ た 人 は 3 6 名( 8 7 . 8 . % )
であった。課題に気づいた人で、その課題がより明確になった
人 が 2 3 名 ( 5 6 . 1 % )、 課 題 が 実 行 に ま で 至 っ た 人 が 1 0 名
( 24.4% ) で あ っ た 。
また、食事づくり計画力については、共同作業場で学んだこ
と を 生 か し た ワ チ ョ を つ く っ た 人 が 3 1 名 ( 7 5 . 6 % )、 入 手 可 能
な 食 材 料 種 類 数 が 増 加 し た 人 が 2 3 名 ( 5 6 . 1 % )、 食 生 活 チ ェ ッ
ク マ ッ プ を 活 用 し た 人 が 1 6 名 ( 3 9 . 0 % )、 献 立 の 食 品 群 数 が 増
加 し た 人 が 13 名 ( 31.7% ) で あ っ た 。 な お 、 共 同 作 業 場 で 学
んだことを生かしたワチョをつくった人は、食生活チェックマ
33
ップを活用した人は、全員が自分の意思で行った行動であると
回答した。学習前には、参加者のうち入手食物の決定に 5 名
( 1 5 . 2 % )、 食 料 の 購 入 の 決 定 に 9 名 ( 2 2 . 0 % ) し か 関 わ っ て
いなかったことと比較すると、女性の意思決定を促進すること
ができた。
3 ) 課 題 の 系 時 的 な 質 的 変 化 ( 表 12)
参加者によって挙げられた課題の質的内容を学習前後で比
較 し た 結 果 を 表 12 に 示 し た 。 家 族 の 栄 養 問 題 の 改 善 へ の 課 題
に つ い て は 、学 習 前 は 、“ わ か ら な い ”、“ 何 も で き な い ”、が 1 3
名 ( 31.7% ) で あ っ た の に 対 し 、 学 習 後 は 7 名 ( 17.0% ) に 有
意 に 減 尐 し た 。 課 題 を 挙 げ た 人 に つ い て も 、 学 習 前 は 、“ 作 物
を 栽 培 す る ”“ 食 物 購 入 の た め に 収 入 を 得 る ”“ 近 所 の 人 に 助
け を 求 め る ”の 3 項 目 し か 回 答 が な か っ た の に 対 し 、上 記 の 他
に 、“ 献 立 を 立 て る ”“ 鶏 の 世 話 を 積 極 的 に す る ”“ 子 供 の 健 康
を 考 慮 し て 行 動 を 決 定 す る ”“ 家 族 と 一 緒 に 食 事 を す る ” の 7
項目の回答があり、より多くの具体的な課題があがった。
地 域 の 栄 養 問 題 の 改 善 へ の 課 題 に つ い て は 、 学 習 前 は 、“ 栄
養 問 題 を 知 ら な い ”、“ わ か ら な い ”、“ 何 も で き な い ” が 3 5 名
( 85.4% ) で あ っ た が 、 学 習 後 は 17 名 ( 41.5% ) に 有 意 に 減
尐した。課題を挙げた人についても “何かのプロジェクトに
参 加 す る ”“ 地 域 に 新 し い プ ロ ジ ェ ク ト を 計 画 す る ” の 2 項 目
しか回答がなかったが、学習後は上記の他に “地域にあるプ
ロ ジ ェ ク ト に 積 極 的 に 参 加 す る ” が 挙 が っ た 。 な お 、“ 何 も し
たくない”と回答した人が2名いた。この参加者たちは、学習
34
前に栄養問題を知らなかったが、学習後“栄養問題はわかった
が 自 分 は 忙 し い ”“ 高 齢 の た め も う 何 も や ら な く て も い い と 考
えている”という内容であった。
2 .食 態 度 ・ 行 動 と そ の 共 有 行 動 に よ る 評 価( 結 果 に 至 る プ ロ セ
スの評価)
1 ) 参 加 者 の 発 言 に よ る 食 態 度・行 動 の 変 化・共 有 行 動 の 広 が り
( 表 13)
次に作成した枠組み、食態度・行動とその共有行動による評
価を行った。参加者の発言による食態度・行動の変化のステー
ジ、共有行動の広がりのステージを確認した。網掛けになって
いる部分はジェンダー視点として位置づけた項目である。
食 態 度・行 動 の 変 化 の ス テ ー ジ 1「 役 割 内・外 の 食 行 動 の 確
認 」 で は 、“ 材 料 が ど う や っ て 料 理 に な る の か わ か っ た ” と い
うような栄養情報の入手についての発言が、ステージ2「課題
へ の 気 づ き 」 に は 、“ お い し い ワ チ ョ を つ く る こ と は 重 要 で あ
る ”“ ど ん な 料 理 を つ く る こ と が 考 え る こ と が 重 要 だ ”“ 今 ま
で自分には何もできないと思っていたが、何かできそうであ
る”等の栄養情報と自分の食行動を重ね合わせて考察した発言
が 多 く み ら れ た 。 ス テ ー ジ 3 「 役 割 態 度 の 変 化 」 に は 、“ 私 に
も 夫 や 子 供 や 友 人 の た め に で き る こ と が あ る ”“ 家 族 の 健 康 に
役 立 つ ”“ 食 べ る シ ー ン を イ メ ー ジ し て か ら 調 理 す る ” 等 の 食
事づくり計画に関する発言があり、学習前には役割について
“ わ か ら な い ”“ 何 も で き な い ” と 発 言 し て い た 女 性 が 自 分 の
役割態度を表現することができるようになった。ステージ4
35
「課題の明確化」には、それをすすめて“学習会で学んだワチ
ョ は 健 康 に よ い の で つ く り た い ”“ 子 供 の 健 康 を 守 る よ う な 労
働にしたい”という具体的希望、意図の発言がみられた。ステ
ージ5「課題の実行」には“米、キャッサバ、オトエの栽培を
夫 に 提 案 し 増 や し た ”“ 鶏 の 数 を 増 や す た め に 養 鶏 プ ロ ジ ェ ク
トに参加する”等の自分が意思決定した行動に父や夫を巻き込
む発言、地域組織への参加につながる発言があがり、ジェンダ
ー構造の変化の視点がみられた。
一 方 、共 有 行 動 の 広 が り の S t a g e 1「 家 族 と の 共 有 」で は“ 夫
に学習会でやったことを話すと良かった”と言ってくれた”
“ ワ チ ョ に 入 れ る 材 料 に つ い て 夫 に 話 し た ”と い う よ う に 共 同
作 業 場 で 学 ん だ 内 容 を 家 族 に 報 告 し た 発 言 が 、 S t a g e 2「 近 所 の
友 人 と の 共 有 」 で は 、“ 学 習 後 に 、 友 人 の 家 庭 で の 食 行 動 の 家
族 の 分 担 や 夫・弟 の 役 割 を ど の よ う に し て い る の に つ い て 聞 い
た 。 大 変 興 味 深 か っ た ”“ 健 康 的 な ワ チ ョ を つ く る た め に 夫 と
ど の よ う な 協 力 が 必 要 か に つ い て 友 人 と 話 し た ”“ 今 集 落 に ど
ん な プ ロ ジ ェ ク ト が 必 要 か に つ い て 友 人 と 話 し た ”等 が あ が っ
た 。家 族 や 集 落 に お け る ジ ェ ン ダ ー 構 造 を 視 野 に い れ た 発 言 を
し て い た 。 Stage 3 「 組 織 へ の 関 係 づ く り 」 で は “ 家 庭 で の 入
手 が 難 し い 食 物 に つ い て の プ ロ ジ ェ ク ト が あ れ ば い い ”等 の 食
物不足の改善に地域プロジェクトが有効なのではないかとい
う意見があがり女性の意思決定による組織化を考えている発
言がみられた。
36
2 )食 態 度 ・ 行 動 の 系 時 的 な 変 化 と 共 有 行 動 の 系 時 的 な 広 が り と
の関連
(1)
学習による個人別食態度・行動の系時的な変化
( 図 7、 表 14)
学 習 に よ り 41 名 中 36 名 ( 87.8% ) の 参 加 者 の 態 度 が 変 化 し
た。個人別に食態度・行動の変化のステージが上昇するかどう
かを確認した。その結果、変化のプロセスはステージ1「役割
内・外の食行動の確認」からステージ5「課題の実行」まで枠
組みのステージ通りに進む者もいたが、ステージ2「課題への
気づき」のあとにステージ3「役割態度の変化」とステージ4
「課題の明確化」の両方の状態が一度にあったと回答した者が
16 名 ( 39.0% ) み ら れ た 。 当 初 の 枠 組 み に な か っ た 3 & 4 ス テ
ージを加えた。
ステージ別人数の変化は学習が進むにつれてより低いステ
ージにいる人数が減尐し、より高いステージにいる人数が増加
した。食態度・行動の変化は3&4ステージを加えたときの系
時的変化が確認された。
(2)
学習による個人別共有行動の系時的な広がりの変化
( 図 8、 表 15)
学習により全参加者が共有行動を行っていた。個人別に共有
行動の広がりのステージが、上昇するかどうかを確認した。そ
の 結 果 、 ま た 全 員 が Stage1 「 家 族 と の 共 有 」 か ら Stage3「 組
織への関係」づくりまで枠組みのステージ通りに進んだ。
ステージ別人数の変化は学習が進むにつれてより低いステ
37
ージにいる人数が減尐し、より高いステージにいる人数が増加
した。共有行動の広がりの系時的変化が確認された。
( 3 )学 習 に よ る 個 人 別 食 態 度 ・ 行 動 と 共 有 行 動 の 系 時 的 な 変 化
( 表 16)
1)の結果をふまえ、食態度・行動の変化のステージ5課
題の実行を5点、ステージ3&4およびステージ4「課題の
明確化」を4点、ステージ3「役割態度の変化」を3点、ス
テージ2「課題への気づき」を2点、ステージ1「役割内・
外 の 食 行 動 の 確 認 」を 1 点 、上 記 の こ と を 何 も し な い を 0 点 、
としたときの学習による系時的変化をみた。その結果、自宅
学 習 1 回 目 1.0±0.0 点 、 2 回 目 1.7±0.5 点 、 3 回 目 2.9±
1 . 0 点 、4 回 目 3 . 5 ± 1 . 3 点 へ と 学 習 が 進 む 度 に 有 意 な 増 加 が
み ら れ た ( p < 0 . 0 1 )。 共 有 行 動 に つ い て も 、 S t a g e 3 「 組 織 へ
の 関 係 づ く り 」 を 3 点 、 Stage2 「 友 人 と の 共 有 」 を 2 点 、
S t a g e 1 「 家 族 と の 共 有 」 を 1 点 、「 誰 と も 共 有 し な い 」 を 0
点、としたときの学習による系時的変化をみた。その結果、
自 宅 学 習 1 回 目 1 . 3 ± 0 . 5 点 、2 回 目 1 . 3 ± 0 . 5 点 、3 回 目 1 . 5
± 0 . 5 点 、4 回 目 2 . 2 ± 0 . 8 点 へ と 4 回 目 に 有 意 な 増 加 が み ら
れ た (p<0.01)。
不参加者についても同様に解析を行った。食態度・行動の
変化については自宅学習1回目と自宅学習4回目との比較
で 有 意 な 増 加 が み ら れ た ( p<0.05) が 、 そ れ 以 外 は 有 意 な 増
加がみられな かっ た。共有行動の 変 化については 有意 な増加
がみられなかった。
38
( 4 )食 態 度・行 動 の 変 化 量 と 共 有 行 動 の 変 化 量 と の 関 係( 図 9 )
食態度・行動の変化と共有行動の変化との関連をみるために、
縦軸に食態度・行動の変化量、横軸に共有行動の広がり量を示
したグラフに自宅学習1回目から自宅学習4回目への変化量
を プ ロ ッ ト し た 。 相 関 係 数 は 0.454 で 、 両 者 は 有 意 に 相 関 し て
い た ( p < 0 . 0 1 )。 食 態 度 ・ 行 動 の 変 化 と 共 有 行 動 の 広 が り の 変
化は有意に関連していることが確認された。
3)食態度・行動の変化と共有行動の広がりとの関係
(1) 自宅学習4回目時点での食態度・行動ステージと食生
活 に お け る 作 業 ・ 意 思 決 定 と の 関 連 ( 表 17-a)
参 加 者 4 1 名 に つ い て 、自 宅 学 習 4 回 目 時 に 到 達 し た 参 加 者
の食態度・行動のステージと年齢、財産、教育レベル、世帯
の社会参加、世帯での女性の作業関わり率、意思決定への参
加率、食物摂取の関連をみた。その結果、ステージ1「役割
内・外 の 食 行 動 の 確 認 」の 人 は ス テ ー ジ 3「 役 割 態 度 の 変 化 」
の人に比べ養鶏プロジェクトへの参加している世帯が有意に
多 か っ た ( p < 0 . 0 5 )。 ま た 、 ス テ ー ジ 2 「 課 題 へ の 気 づ き 」、
ス テ ー ジ 3「 役 割 態 度 の 変 化 」,ス テ ー ジ 4「 課 題 の 明 確 化 」,
ステージ5「課題の実行」の人はステージ1(役割内・外の
食行動の確認)の人に比べ、子供の教育進学に関する意思決
定 に 関 わ っ て い る 人 が 有 意 に 多 か っ た ( p < 0 . 0 5 )。 ス テ ー ジ と
その他の項目との関連はみられなかった。
39
(2)自宅学習4回目時点での食態度・行動ステージと学習
効 果 と の 関 連 ( 表 17-b)
参 加 者 41 名 に つ い て 、 自 宅 学 習 4 回 目 時 に 到 達 し た 食 態
度・行動のステージと共同作業場での学習への参加回数、共
有 行 動 の 広 が り の 3 ス テ ー ジ S t a g e 3 「 組 織 へ の 関 係 づ く り 」、
S t a g e 2 「 近 所 の 友 人 と の 共 有 」、 S t a g e 1 「 家 族 と の 共 有 」、 学
習目標への達成度評価の項目「入手可能な食材料種類数の増
加 」、「 献 立 中 の 食 品 群 の 増 加 」、「 学 ん だ こ と を 生 か し た ワ チ
ョ づ く り 」、「 食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ の 活 用 」、と の 関 連 を み た 。
そ の 結 果 、 ス テ ー ジ 4 「 課 題 の 明 確 化 」、 ス テ ー ジ 5 「 課 題 の
実 行 」 の 人 は 、 ス テ ー ジ 1 「 役 割 内 ・ 外 の 食 行 動 の 確 認 」、 ス
テージ3「役割態度の変化」の人に比べ、組織への関係づく
り を 有 意 に 多 く 行 っ て い た ( p < 0 . 0 5 )。 ま た 、 ス テ ー ジ 4 「 課
題の明確化」の人はステージ2「課題への気づき」の人に比
べ 、 近 所 の 友 人 と の 共 有 を 有 意 に 多 く 行 っ て い た ( p < 0 . 0 5 )。
ステージ3&4の人はステージ4「課題の実行」の人に比
べ、学んだことを生かしたワチョを作った人が有意に多かっ
た ( p < 0 . 0 5 )。 ス テ ー ジ 3 & 4 の 人 は 、 ス テ ー ジ 1 「 役 割 内 ・
外 の 食 行 動 の 確 認 」、 ス テ ー ジ 3 「 役 割 態 度 の 変 化 」、 ス テ ー
ジ4「課題の明確化」の人と比べ食生活チェックマップを活
用 し た 人 が 有 意 に 多 か っ た (p<0.05)。 ま た 、 ス テ ー ジ 5 「 課
題の実行」の人はステージ3「役割態度の変化」の人に比べ
食生活 チェ ック マップ を活 用し た人が 有意 に多 かった
(p<0.05)。
以上より、枠組みによる評価は属性や食生活における作業
40
への関わり、意思決定の関わりにほとんど左右されることな
く、学習効果を測定できることが確認された。枠組みが参加
者の学習効果の評価に妥当であることがほぼ示された。
(3)食態度・行動の変化と共有行動の広がりとの関係
( 図 10,表 18,19,付 表 1)
食態度・行動の変化の項目と共有行動の広がりの項目との
関係を明らか にす るために、系時 的 な検討の結果 と項 目間の
総関係数の結果に基づき食態度・行動の変化のステージと共
有行動の広が りの ステージを位 置づ け、パス解析の モ デルを
作 成 し た ( 付 表 1 )。 し か し 、 食 態 度 ・ 行 動 の 変 化 の ス テ ー ジ
1 「 役 割 内 ・ 外 の 食 行 動 の 確 認 」 に つ い て 全 参 加 者 41 名
( 100.0 % ) が 実 行 し て い た た め に 成 り 立 た な い こ と が 確 認
さ れ た た め 、不 参 加 者( 7 名 )を 加 え 、全 48 名 に つ い て の パ
ス解析を行った。食態度・行動の変化ステージ5「課題の実
行」を従属変数としてパスダイアグラムを求めた結果、
N F I 0 . 9 4 0 、R F I 0 . 8 9 8 、I F I 0 . 9 9 8 、T L I 0 . 9 9 7 、C F I 0 . 9 9 8 で あ り 、
RMSEA は 0.023 で あ っ た こ と か ら 、 モ デ ル と し て の 当 て は ま
り の 良 さ が 確 認 さ れ た ( 図 1 0 、 表 1 9 )。
枠組みの食態度・行動の変化と共有行動の広がりは以下の
ようにつながることが確認された。役割内・外の食行動の確
認 ( ス テ ー ジ 1 ) か ら 家 族 と の 共 有 ( Stage 1 ) へ 行 く 経 路
( 因 果 係 数 0 . 7 0 7: 以 下 、 か っ こ 内 は 因 果 係 数 を さ す )、 近 所
の 友 人 と の 共 有 ( Stage 3 ) か ら 課 題 へ の 気 づ き ( ス テ ー ジ
2 ) へ 行 く 経 路 ( 0 . 1 1 3 )、 課 題 の 明 確 化 ( ス テ ー ジ 1 ) か ら
41
組 織 へ の 関 係 づ く り ( S t a g e 3 ) へ 行 く 経 路 ( 0 . 5 7 4 )、 組 織
へ の 関 係 づ く り ( Stage3) か ら 食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ の 活 用
を 経 て ( 0 . 4 4 6 )、 役 割 態 度 の 変 化 へ 行 く 経 路 ( 0 . 3 9 3 )、 そ し
て 役 割 態 度 の 変 化 か ら へ 課 題 の 実 行 へ 行 く 経 路 ( 0.457) が
確認された。また、学習目標への達成度を測定する評価項目
である学んだワチョつくり、食品群数の増加、食生活チェッ
クマップの活用は、食態度・行動の変化の食行動の役割の確
認(ステージ1)から、役割態度の変化(ステージ3)をつ
な げ る 経 路 と し て 位 置 づ い た 。近 所 の 友 人 と の 共 有( S t a g e 3 )
から課題への気づき(ステージ2)へ行く経路については有
意な関連はみられなかったものの、他の項目との関連比較す
ると最も因果係数が高かった。また、近所の友人との共有か
ら 組 織 へ の 関 係 づ く り へ 至 る 経 路 ( - 0 . 1 2 3 )、 課 題 の 気 づ き
から役割態度 の変 化かつ課題の 明確 化へ至る経路( 課 題の明
確 化 か ら 課 題 の 実 行 へ 至 る 経 路 ( - 0 . 1 6 6 )、 課 題 の 明 確 化 か
ら 課 題 の 実 行 へ 至 る 経 路( - 0 . 0 3 0 )の 関 連 は み ら れ な か っ た 。
最も因果係数の高い経路は役割内・外の食行動の確認、家族
との共有、近所の友人との共有、課題への気づき、課題の明
確化、組織への関係づくり、食生活チェックマップの活用、
役割態度の変化、課題の実行へいく経路であった。
上記より、食態度・行動の変化ステージ1「役割内・外の
食 行 動 の 確 認 」か ら 共 有 行 動 の S t a g e 1「 家 族 と の 共 有 」へ 、
共 有 行 動 の Stage2 「 近 所 の 友 人 と の 共 有 」か ら 食 態 度 ・ 行
動の変化ステージ2「課題への気づき」へ、食態度・行動の
変 化 ス テ ー ジ 4 「 課 題 の 明 確 化 」 か ら 共 有 行 動 Stage3 「 組
42
織 へ の 関 係 づ く り 」、 食 態 度 ・ 行 動 の 変 化 ス テ ー ジ 3 「 役 割
態 度 の 変 化 」、 そ し て ス テ ー ジ 5 「 課 題 の 実 行 」 へ の 経 路 が
確認され、食態度・行動のステージの変化と共有行動のステ
ージの変化は相互に関連し合う構造であることが検証され
た。
( 4 ) 役 割 態 度 の 変 化 と 明 確 化 と の 質 的 関 連 ( 表 20, 21)
食 態 度・行 動 の 変 化 に「 役 割 態 度 の 変 化 」を 位 置 づ け た こ と
により、女性たちにとって「役割態度の変化」が「課題の明確
化 」 と 関 連 が あ る こ と 、「 課 題 の 実 行 」 に 重 要 な チ ェ ッ ク 項 目
となることが明らかになった。
「 役 割 態 度 の 変 化 」と「 課 題 の 明 確 化 」と の 関 連 は 女 性 た ち
の 発 言 の 質 的 分 析 を 行 う こ と に よ っ て よ り 明 ら か に な る 。学 習
に 参 加 し た 女 性 た ち は 、学 習 前 に は 自 分 の 役 割 に つ い て“ 何 も
考 え な い ” と い う 人 が 34.1% だ っ た が 、 学 習 後 に は 19.5% に
減 尐 し た ( 表 2 0 )。 自 分 の 役 割 に つ い て 考 え て い る 人 は 、 学 習
前 に “ 調 理 す る の が 私 の 役 割 で あ る ”“ 献 立 を 考 え る の が 私 の
役 割 で あ る ”“ 必 要 な 材 料 を 入 手 し て い る ” と い う 作 業 に つ い
て の 説 明 や 、“ 私 は 重 要 な 仕 事 を し て い る と 思 う ” と い う 抽 象
的 な 表 現 が 多 か っ た 。し か し 、学 習 後 に は“ 家 族 の た め に お い
し い 料 理 を つ く る ”“ 入 手 可 能 な 食 物 の 種 類 を 増 や す ”“ 3 つ
の 食 品 群 を そ ろ え ら れ る 材 料 を 考 え る ”等 、自 分 の 意 思 を 伝 え
る 内 容 、そ れ に 伴 っ た 具 体 的 な 行 動 を 表 現 す る 人 が 増 え た( 表
2 1 )。
43
4 )参 加 者 の 学 習 に よ る 食 態 度・行 動 の 変 化 と 共 有 行 動 の 広 が
りの変化との関連についての事例検討
( 1 ) 課 題 の 実 行 ま で 至 っ た E( 45 歳 ) の 事 例 ( 図 11-1 )
課 題 の 実 行 ま で 至 っ た 参 加 者 10 名 ( 24.4% ) の う ち E の 事 例
を 追 う 。 E は 45 歳 、 夫 は 50 歳 で 、 9 人 の 子 供 が い る 。 小 学 校 教
育 を 受 け な い ま ま 14 歳 の 時 に 結 婚 し B 集 落 に 来 た 。 ス ペ イ ン 語
は 理 解 で き る が 自 分 で 話 す の は 難 し い と い う 。彼 女 は 、学 習 前 に
“ 夫 が 持 っ て く る 食 材 料 を 毎 日 調 理 し て い る だ け だ 。調 理 す る 材
料 が な い と き は 空 腹 で も 我 慢 す る し か な い 。子 供 た ち の 健 康 に つ
いていつも心配をしているが、私には何もすることができない”
と 発 言 し た 。そ の E は 学 習 が 進 む に つ れ て 食 態 度 が 変 化 し た 。1
回 目 の 学 習 時 に“ 食 事 の 絵 を 描 け て 参 加 仲 間 に 自 分 の 食 生 活 に つ
い て 発 表 で き て よ か っ た ”と 思 い 、自 宅 で 絵 が 描 け た こ と を 夫 に
報 告 し 共 有 し た 。そ の 時 夫 が“ そ れ は よ か っ た ”と 言 っ た 。そ し
て 、隣 の 友 人 に“ 絵 を 描 い た り し て 楽 し い の で 一 緒 に 学 習 会 に 行
こ う ”と 誘 っ た 。2 回 目 の 学 習 時 に は“ 夫 と 協 力 し て 食 材 料 を 集
めれば入手できる食材料が増えるかもしれない”と考えはじめ、
“ 健 康 な 食 事 の た め に 夫 と 食 材 料 の 相 談 を し よ う ”と い う 課 題 を
もつに至った。学習を重ね参加者仲間と課題を共有するうちに、
“地域のプロジェクトに参加すれば家庭で栽培困難な食物を入
手 で き る か も し れ な い ”と 思 い 、食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ を み て“ 地
域でどんな食材料が入手できるか”を考えた。そのような中で
徐 々 に“ 調 理 だ け し て い れ ば い い の で は な く 、食 材 料 の 入 手 を 考
え る こ と も 私 の 役 割 で あ る ”と 感 じ る よ う に な っ た 。学 習 後 は“ 入
手食材料を考えてから夫や友人とも相談しながら食事づくりを
44
行う”ようになった。すなわち、E は夫や友人と学習内容につい
て 報 告 し た 時 に 、自 分 の 意 思 の 共 有 を 行 い そ の 質 を 深 め る こ と に
よ っ て 自 分 の 課 題 に 気 が つ き 、そ の 後 、地 域 プ ロ ジ ェ ジ ェ ク ト に
つ い て 考 え た こ と で 課 題 を よ り 具 体 的 に し た 。課 題 を 明 確 に す る
ためには家族や友人との関わりが必要であることが覗えた。
( 2 ) 課 題 の 明 確 化 ま で 至 っ た L( 15 歳 ) の 事 例 ( 図 11-2 )
次に、課題の明確化かつ役割態度の変化までに至った 7 名
( 17.1% ) の う ち L( 15 歳 ) の 事 例 で あ る 。 L は 両 親 と 兄 弟 姉 妹
3 名 の 6 人 家 族 で あ る 。3 年 生 ま で 小 学 校 に 通 っ た が 4 年 生 か ら
他集落の小学校に行かなくてはならなかったのでそのまま行か
な く な っ た 。学 習 前 、で き る こ と な ら 都 市 に 出 稼 ぎ に 行 き 現 金 収
入を得たいと思っていた。彼女にとっての食生活は父が畑仕事、
母 が 調 理 を 行 い 、彼 女 の 役 割 は 食 事 後 の 後 片 付 け で あ り そ れ 以 外
は し た こ と が な か っ た 。現 金 収 入 を 得 る こ と が 健 康 に つ な が る と
考えていた。
そ の よ う な L は 1 回 目 の 学 習 で“ 父 の 畑 で の 仕 事 ぶ り と 母 が 調
理 し て い る 姿 を 写 真 で 発 表 で き て 嬉 し か っ た ”。 そ の 後 、 自 宅 で
父 と 一 緒 に 学 習 に つ い て 報 告 し 、“ 次 回 の ワ チ ョ づ く り 演 習 に 持
参 す る 食 材 料 を 一 緒 に 収 穫 し に い っ た ”。そ の 際 、“ 祖 父 の 目 が 悪
い の は 食 事 に 関 係 す る の で は な い か ”と い う 意 見 を 言 っ た 。学 習
で 学 ん だ こ と を 友 人 に も 説 明 し た が“ そ ん な こ と は も う 知 っ て い
る よ ”と 言 わ れ た の で 、そ れ き り 誰 に も 話 し た く な か っ た 。2 回
目 の 学 習 で“ い ろ ん な 人 が 関 わ っ て 食 事 が で き る こ と 、ま た 食 材
料 の 栄 養 的 特 徴 に 興 味 を も っ た 。そ う い う こ と を 考 え た 食 事 づ く
45
り が 大 切 だ と 思 っ た ”。学 習 終 了 時 点 で 、“ 私 の 役 割 は 父 や 母 を 助
け る こ と だ ” と 思 っ た 。“ 祖 父 の 目 が こ れ 以 上 悪 く な ら な い よ う
な献立を作ってあげよう”という課題をもつに至った。
し か し 、そ れ ま で 家 庭 の 食 生 活 で の L の 役 割 は 食 事 の 後 片 付 け
だ け で 、作 物 栽 培 や 調 理 等 の 作 業 に 関 わ っ た 経 験 が ほ と ん ど な か
っ た 。今 回 の 学 習 を 通 し て 食 事 づ く り 作 業 に も 初 め て 携 わ っ た の
で あ る が 、課 題 の 実 行 ま で に は 至 ら な か っ た 。今 後 、彼 女 が み え
た 食 生 活 の 全 体 像 、健 康 と 食 事 と の 関 係 へ の 理 解 を 家 族 や 近 所 の
友人と共有し、自分の課題をより明確にする必要がある。また、
L は同世代の友人との学習内容の共有を試みたが、友人から L に
とって否定的だと感じる意見しか受け取ることができなかった。
今回の研究において若年者と高齢者との共有が相互の課題の質
を深める効果があることが示唆されており、L も異世代の人との
共有が必要であったのではないかと考えられる。
( 3 )課 題 へ の 気 づ き ま で 至 っ た S( 3 8 歳 )の 事 例( 図 1 1 - 3 )
課 題 の 気 づ き ま で に し か 至 ら な か っ た 4 名 ( 9.8% ) の う ち S
の事例を追う。S は夫の勧めで学習会に参加した。彼女の夫は共
同 組 合 員 、小 学 校 P T A の 役 員 も し て お り 妻 の 社 会 参 加 に 協 力 し た
いと考えており夫自身も興味があったので2人で参加した。S は
学習前に子供の健康を考えて料理をつくりたいと思うがお金が
な い の で 無 理 で あ る 。や は り 現 金 収 入 を 得 る こ と が 健 康 に つ な が
る と 考 え て い た 。1 回 目 の 学 習 で は“ 夫 も 参 加 し た の で 彼 が 絵 の
描 き 方 を 教 え て く れ て 描 く こ と が で き た ”。 自 宅 に 帰 っ た 後 、 娘
に 学 習 内 容 を 報 告 し 、“ 一 緒 に 参 加 す る と い い ”と 言 っ た 。ま た 、
46
ワチョづくり演習に使う食材料や調理方法について近所の友人
と 話 し た 。そ の 後 、共 同 作 業 場 で の 学 習 で“ ワ チ ョ に 入 れ る こ と
が可能な地域の様々な食材料について学んだ夫が小学校給食に
ワ チ ョ を つ く っ て は ど う か ” と 言 っ た の で 、“ な る ほ ど ” と 思 っ
た 。“ 夫 と 一 緒 に 小 学 校 給 食 に つ い て 考 え よ う ” と 思 っ た 。 し か
し 、 そ の 後 、“ そ れ は む ず か し い の で は な い か と 思 え た 。 何 故 な
ら 夫 が 今 の 学 校 給 食 の 配 給 材 料( 米 ・ 豆 ・ 油 )は 重 要 だ と 言 っ た ”
からであった。学習終了時、S は“私に何ができるのかよくわか
らない”と発言した。
本プログラムにおいて Sのように夫婦で参加した人が4人いた。
い ず れ の 男 性 も 集 落 の 社 会 活 動 へ の 参 加 に 熱 心 で あ っ た り 、女 性
の 社 会 参 加 に 積 極 的 な 支 援 を し て い た 男 性 で あ っ た 。し か し 、必
ずしもその状況が参加女性にとって良い効果をもたらさなかっ
た 。女 性 よ り 男 性 の 教 育 レ ベ ル が 高 く 、男 性 は 女 性 よ り 学 習 内 容
やディスカッション内容についての理解度が速いために女性が
主 体 的 に 考 え た り 行 動 し た り す る 前 に 、男 性 が 意 思 決 定 を 行 い 行
動 し て し ま う 、女 性 は 男 性 の 意 思 決 定 を 追 従 す る と い う 結 果 に な
ることが多かった。
上記の3事例を比較すると3名ともに家族との学習内容の共
有 を 行 っ て い た 。し か し 、共 有 行 動 の 質 的 な 違 い が み ら れ た 。つ
まり自分の課題の質を深めることができる共有とそうでない共
有 で あ る 。ま た 、課 題 の 質 を 深 め る た め に は 家 族 だ け で な く 、友
人 と の 学 習 内 容 の 共 有 が 非 常 に 重 要 で あ り 、自 分 の 課 題 と 地 域 の
課題との関連まで視野を広げることの必要性が示唆された。
47
以 上 、ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 に よ っ て 8 8 % の 参 加
女 性 に 自 分 の 課 題 へ の 気 づ き が み ら れ た 。そ の 課 題 が よ り 具 体 化
し 課 題 の 実 行 ま で に 至 っ た 人 は 2 4 % で あ っ た が 、食 態 度 変 容 の プ
ロ セ ス に ① 役 割 内・外 の 食 行 動 の 確 認 、② 役 割 態 度 の 変 化 が あ り 、
③ 食 態 度・行 動 の 変 化 に 家 族 と の 関 わ り・近 所 の 友 人 と の 関 わ り 、
組 織 へ の 関 係 づ く り の 関 連 が あ る こ と が 、ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変 化
の測定項目を導入した栄養教育の評価によって明らかになった。
考
察
1.ジェンダー視点を導入した栄養教育の有効性と課題
1)食態度・行動とその共有行動による評価(枠組み)の有効
性と課題
共 同 作 業 場 の 学 習 に 、3 9 世 帯 中 3 2 世 帯 、4 1 名 の 女 性 が 参 加 し
た。この参加人数は予想をはるかに越えた大きな成果であった。
何 故 な ら B 集 落 で 民 芸 品 づ く り 組 織 に 所 属 す る 世 帯 は 13 世 帯 、
毎週1回共同作業場での民芸品づくり活動を行う女性の人数は
約 10 名 、 そ れ ま で 研 修 や セ ミ ナ ー に い っ た 経 験 の あ る 女 性 は 集
落で2名しかいなかったことと比較すると非常に高い参加率で
あ っ た と 考 え ら れ る か ら で あ る 。ま た 、参 加 女 性 の 学 習 前 に 課 題
に つ い て “ わ か ら な い ”“ で き な い ” と い っ た 発 言 が 学 習 後 に 有
意 に 減 尐 し た こ と は 、ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 に よ り
女性の食生活を営むためのエンパワーメントを促進させたと考
え ら れ る 。そ の エ ン パ ワ ー メ ン ト の プ ロ セ ス を 食 態 度 ・ 行 動 と そ
48
の共有行動による評価枠組みをつかうことによって明らかにで
き 、と く に 女 性 た ち が 他 者 と く に 男 性 と 学 習 内 容 を 共 有 す る こ と
によっての自らの食態度を変化させることを検証したことによ
り 、栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム に 男 性 と の 学 習 内 容 の 共 有 行 動 を 広 げ る
戦 略 を い れ る こ と の 重 要 性 が 示 さ れ た 。そ の 共 有 行 動 と は 男 性 と
一 緒 に 学 習 の 場 に 行 け ば よ い と い う も の で は な く 、一 緒 に 学 習 の
場にいなくとも学習後に自宅で女性自らの課題の質を深めるこ
と が で き る 共 有 を 行 う こ と が 重 要 で あ り 、か つ 家 族 男 性 と の 共 有
だけでなく友人や地域組織との関わりが課題を実行に至らせる
た め に 大 変 重 要 で あ る こ と が 示 さ れ た 。国 際 協 力 の 活 動 現 場 に お
いてジェンダー視点を取り入れた学習の場づくりを行うために、
男 女 一 緒 の 場 が よ い の か 、女 性 中 心 の 場 が よ い の か と い う 議 論 が
交 わ さ れ る こ と が あ る 。ノ ベ 族 女 性 の よ う に 学 習 経 験 、教 育 レ ベ
ル が 男 性 に 比 べ 非 常 に 低 い 場 合 、課 題 の 気 づ き に ま で し か 到 達 で
きなかった Sの事例のように男性と一緒に学習の場に参加するこ
と が 自 ら の 意 思 決 定 を し に く く す る 可 能 性 が あ る 。女 性 を 学 習 の
直 接 的 な 対 象 者 と し 、自 宅 に い る 男 性 と の 関 係 改 善 を は か り な が
ら 、そ の 男 性 に 間 接 的 な 影 響 を 与 え つ つ 栄 養 問 題 に つ い て の 女 性
自 身 の 課 題 を 深 め て い く こ と が 効 果 的 で あ っ た と 考 え ら れ た 。つ
ま り 、地 域 で 唯 一 の 女 性 主 体 で 運 営 さ れ て い る 民 芸 品 づ く り 組 織
と共同作業場を活用しながらジェンダー視点をとりいれた学習
内容を行ったことは効果的であり写真1(左下)に示すように、
共同作業場での学習に来る男性の人数が学習の進む度に増加し
た。
ま た 、枠 組 み に よ る 評 価 は 共 同 作 業 場 で の 学 習 へ の 参 加 者 の 効
49
果 を は か る た め に 有 効 で あ る こ と が 示 さ れ た が 、不 参 加 女 性 の 評
価 に つ い て は 課 題 が 残 さ れ た 。結 果 に 示 し た と お り 、共 同 作 業 場
での学習に参加しなかった不参加者 7 名のうちの 3 名に介入によ
る 影 響 が あ っ た こ と が 確 認 さ れ た ( 図 9 )。 3 名 中 2 名 は 、 友 人
を通して学習内容について聞いていた。一人は、B 集落にある共
同組合長の妻で共同作業場での学習に参加しなかった理由とし
て 、民 芸 品 づ く り 組 織 の 集 落 リ ー ダ ー に 対 す る 不 満 を 強 く も っ て
い る た め で あ る と 言 っ た 。も う 一 人 は 、夫 が 集 落 外 に 出 稼 ぎ に い
っているので家と子供たちを守らなければならないと考える女
性 で あ っ た 。し か し 、一 方 で 共 同 作 業 場 の 学 習 に 参 加 で き な い こ
と を 常 に 気 に し て お り 、隣 に 住 む 友 人 に 学 習 内 容 に つ い て 聞 い て
い た 。今 後 、他 集 落 で 栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム を 実 施 し 本 研 究 で の 結
果 の 追 認 を 行 う と と も に 、共 同 作 業 場 で の 学 習 へ の 参 加 女 性 を 通
し た 家 族 レ ベ ル 、近 所 の 友 人 レ ベ ル 、地 域 レ ベ ル で の 不 参 加 男 性 、
不参加女性への効果について検討を重ねる必要がある。
一方、食態度・行動とその共有行動による評価において近所
の友人との共有から課題への気づきへの経路についてパス解析
の 結 果 、有 意 な 関 連 が み ら れ な か っ た 。学 習 4 回 目 時 点 で 課 題 へ
の気づきまで至った人と土地の所有、子供の教育への意思決定、
と の 関 連 は み ら れ た が 、パ ス 解 析 の モ デ ル を 作 成 す る 際 に そ れ ら
の項目間の相関係数は低かったためモデルに位置づけることが
で き な か っ た 。近 所 の 友 人 と の 共 有 か ら 課 題 へ の 気 づ き へ の 経 路
は 、パ ス 解 析 に よ り 共 有 行 動 の 他 の 項 目 と 比 べ て も 因 果 係 数 が 高
い こ と が 確 認 さ れ た 。よ っ て 、近 所 の 友 人 と の 共 有 の 後 に 、本 研
究では扱われなかった何らかの条件を経て課題の気づきへ至る
50
と考えられ、その項目の検討が必要である。
2)栄養教育プログラムの有効性と課題
多数の女性の参加が得られた理由として挙げられるもう一
点 は 栄 養 教 育 プ ロ グ ラ ム に お け る「 参 加 」の 重 視 が あ げ ら れ る 。
著者はパナマ共和国保健省から地域住民への教育活動ととも
に 女 性 リ ー ダ ー の 育 成 を 要 請 さ れ た 。近 年 、国 際 協 力 に お い て
住 民 へ の 栄 養 教 育 と と も に ヘ ル ス プ ロ モ ー タ や ピ ア・エ デ ュ ケ
ー タ な ど の 半 専 門 家 ( paraprofessionals ) の 育 成 が 必 要 と さ
れ て お り 、そ の 重 要 性 が 高 ま っ て い る
として住民参加への効果
121) 122)
123)
。ま た 、そ の 結 果
、学 習 効 果 の 向 上
124) 125)
が明らか
に さ れ て き た 。著 者 も 同 様 に 、女 性 リ ー ダ ー の 育 成 と 地 域 女 性
へ の 栄 養 教 育 と い う 二 層 構 造 に よ っ て プ ロ グ ラ ム を 作 成 、実 施 、
評 価 を 行 っ た 。そ の 際 、両 者 の 参 加 を 重 視 し た 。参 加 に は 手 法
としての参加
6)
と、結果としての参加がある
9)
ことを最初に述
べ た が 、結 果 と し て の 参 加 を 得 る た め に は そ の 手 法 が 重 要 な 役
割を果たすといわれている
126)
。つまり、参加を得るためには
参加型手法がかかせない。
女 性 リ ー ダ ー 育 成 に は 、① 栄 養 学 習 プ ロ グ ラ ム の 作 成 を 計 画
段 階 か ら 民 芸 品 づ く り 組 織 の 集 落 リ ー ダ ー た ち と 内 容・方 法 の
検 討 を 重 ね ② ピ ア ・ エ デ ュ ケ ー タ と し て 母 ( 45 歳 ) 娘 ( 17 歳 )
の2人を採用した。
民芸品づくり組織の集落リーダーたちと栄養教育プログラ
ム の 作 成 プ ロ セ ス を 共 有 し た 結 果 、民 芸 品 づ く り 組 織 本 部 に よ
る B 集落での栄養教育プログラム実施へのサポート体制がつく
51
られたことは大きな成果であった。B 集落ファシリテータへの
研修の実施、B 集落への巡回視察、活動へのカウンセリング、
等 の 配 慮 が 行 わ れ た 。 ま た 、 ピ ア ・ エ デ ュ ケ ー タ と し て 母 ( 45
歳 )娘( 1 7 歳 )の 2 人 を 採 用 し た こ と が 幅 広 い 年 齢 層 の 女 性 の
参 加 を 得 る こ と に つ な が っ た と 考 え ら れ る 。母 娘 な の で 、プ ロ
グ ラ ム 中 に フ ァ シ リ テ ー タ 同 士 の 諍 い 、喧 嘩 、互 い の 批 判 、等
も な か っ た 。母 娘 コ ン ビ の フ ァ シ リ テ ー タ は 効 果 が あ る こ と が
観察された。
地 域 女 性 へ の 栄 養 教 育 に は ① 地 域 の 伝 統 的・日 常 的 料 理 で あ
るワチョを教材にすること②民芸品づくり共同作業場と自宅
両 方 の 場 の 学 習 へ の 活 用 ③ Participatory learning appraisal
を忚用した食生活チェックマップの作成を行った。
そ の 結 果 、ワ チ ョ は そ の 食 材 料 の 忚 用 性 と 家 庭 の 状 況 に あ わ
せた適忚が可能である料理であることが参加者によって確認
さ れ た 。最 初 の 民 芸 品 づ く り 本 部 ス タ ッ フ と 著 者 と の 検 討 の 際
に 、多 数 の 参 加 者 が 得 ら れ る セ ミ ナ ー の 内 容 に は 援 助 物 資 が 配
布されることが多く貰えるどころか食材料を持参しなければ
な ら な い セ ミ ナ ー に く る の だ ろ う か 、第 一 、各 世 帯 に 持 参 で き
る よ う な 食 材 料 が あ る の だ ろ う か( 実 施 時 期 は 1 年 の う ち 最 も
食料の入手が困難な季節であった)ということが討議された。
し か し 、学 習 が 始 ま っ て み る と 持 ち 寄 り 材 料 を 持 参 し な い 、で
き な い と い う 参 加 者 は 一 人 も い な か っ た 。食 材 料 を 持 参 す る こ
とに対する不満もなかった。また “せっかくセミナーに来た
の だ か ら ワ チ ョ で な く 新 し い 料 理 を 覚 え た い の で は な い か ”と
い う 意 見 も あ っ た が 、学 習 が 始 ま る と“ 毎 日 、家 庭 で の 忚 用 が
52
可 能 で あ る こ と が わ か り 、共 同 作 業 場 で の 学 習 で 学 ん だ こ と を
す ぐ に 家 庭 で 実 践 で き る の で 良 か っ た ”い う 意 見 に 変 わ っ て い
た 。参 加 者 の 持 ち 寄 っ た 食 材 料 、調 理 法 に よ る ワ チ ョ が“ 夫 と
ワ チ ョ の 材 料 に つ い て 話 す 機 会 に な っ た ”“ 父 に 入 手 し て ほ し
い 材 料 を 頼 ん だ ”等 、家 族 や 近 所 の 友 人 と の 共 有 を 促 進 さ せ た
ことが確認された。
民 芸 品 づ く り 共 同 作 業 場 の 活 用 は 、女 性 の 参 加 を 促 す こ と に
効 果 が あ っ た と 考 え ら れ る 。女 性 た ち が 学 習 に 参 加 し た 理 由 に
“ い つ も 行 く 場 所 な の で 気 が ね せ ず に 行 け た ”、“ 女 性 同 士 が
自 由 に 話 せ る 場 所 な の で 参 加 し や す か っ た ”と い う 意 見 が 多 く
挙 が っ た 。 ま た 、 Participatory learning appraisal7)を 忚 用
した食生活チェックマップの作成・利用・評価の体験実習は、
参 加 者 同 士 、家 族 、地 域 の 友 人 と の 共 有 行 動 の 促 進 に 有 効 で あ
ることが確認されていた
109)
が 、今 回 も 同 様 の 結 果 が 得 ら れ た 。
一 方 、ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変 化 の 視 点 と し て 2 要 素 を 組 み 入 れ
た 。① 学 習 目 標 で あ る 課 題 内 容 に つ い て 参 加 者 個 人 が 決 定 す る
②自宅学習における宿題の設定である。
そ の 結 果 、① 学 習 内 容 の 学 習 目 標 に「 栄 養 問 題 の 改 善 の た め
の 自 分 の 課 題 へ の 気 づ き 」と い う 抽 象 的 な 内 容 に し た こ と は 効
果 が あ っ た と 考 え ら れ る 。栄 養 問 題 や そ の 改 善 の た め の 行 動 の
具 体 的 内 容 に つ い て は 参 加 者 本 人 が 決 定 し そ れ を 実 行 す る 、と
い う 方 法 を と っ た 。そ れ は 栄 養 教 育 の 目 的 に 、家 庭 や 地 域 に お
け る 女 性 の 意 思 決 定 力 の 向 上 が 含 ま れ て い た か ら で あ る が 、そ
の 結 果 、3 6 名( 8 7 . 8 % )の 女 性 た ち に 自 分 の 家 庭 状 況 に 合 わ せ
た 自 分 の 課 題 へ 気 づ き が み ら れ た 。な お 課 題 へ の 気 づ き が み ら
53
れ な か っ た 5 名 に つ い て も 、“ 他 人 と 話 す こ と が こ ん な に 楽 し
いとは思わなかった” “自分の食生活を他人の前で発表する
こ と が 楽 し か っ た ”等 の 意 見 が あ が り 、参 加 者 全 員 か ら 参 加 し
てよかったという意見があがった。
一 方 、② 自 宅 学 習 時 に 行 う 宿 題 の 提 案 に つ い て は 、参 加 者 の
多 く が 学 校 教 育 を 受 け て い な い 、受 け て い て も ほ と ん ど 行 か な
い ま ま に 中 退 し て い る の で 、“ 言 わ れ た か ら や っ た ” と い う 態
度 が ほ と ん ど な い こ と が 調 査 時 に 確 認 さ れ た 。自 宅 で 学 ん だ こ
と を 生 か し た ワ チ ョ を つ く っ た 、食 生 活 チ ェ ッ ク マ ッ プ を 活 用
し た 人 は 、 宿 題 だ っ た か ら で は な く 、“ 自 分 が や り た か っ た か
ら で あ る ”と 発 言 し て お り 、女 性 た ち の 意 思 決 定 に よ る 行 動 で
あった。
2.栄養教育へのジェンダー視点導入の意義
著 者 は 1992 年 か ら 10 年 間 に わ た り ノ ベ 族 居 住 地 域 の 栄 養 問 題
の 改 善 に 効 果 的 な 栄 養 教 育 の 方 法 に 関 す る 研 究 、研 究 結 果 を 踏 ま
え た 実 践 、実 践 に よ る 研 究 課 題 の 発 見 と い う プ ロ セ ス を 重 ね て き
た 。そ の プ ロ セ ス で ノ ベ 族 女 性 た ち は 栄 養 問 題 を 常 に 意 識 し て い
る も の の 、栄 養 問 題 の 改 善 に 対 す る 意 欲 が 非 常 に 低 く 、栄 養 問 題
の 改 善 に つ い て 考 え た こ と が な い 、改 善 方 法 を 考 え る の は 夫 の 役
割 で あ り 自 分 の 役 割 で は な い 、考 え て も 自 分 に は 改 善 で き な い に
決 ま っ て い る 、と い う 態 度 の 人 が 多 い こ と が 明 ら か に な っ た 。そ
こ で 著 者 は 1998 年 に 参 加 型 手 法 や 戦 略 を 取 り 入 れ て 女 性 た ち の
態 度 変 容 を ね ら っ た 栄 養 教 育 を 行 い 、そ の 効 果 、参 加 者 の 態 度 が
変 容 す る こ と を 確 認 し た 。と 同 時 に 、学 習 者 仲 間 、家 族 、近 所 の
54
友人との共有行動が女性自身の態度変容に関連があることが示
唆 さ れ 、女 性 の エ ン パ ワ ー メ ン ト に は 他 者 と の 関 わ り が 必 要 で あ
ることが予想された
109)
。 一 方 、 1990 年 代 国 際 的 な 動 向 と し て 、
女性の食物へのアクセスの改善にジェンダー視点を導入する必
要性があるという声が高まり、それらを踏まえた国際的政策が
次々と打ち出された
3)25)26)27)
。そ れ ら の 内 容 は 、私 自 身 が こ れ ま
で抱えてきた課題と類似しており、これまで “女性の参加”と
よ ん で き た 課 題 が“ ジ ェ ン ダ ー 視 点 の 導 入 ”と い う 言 葉 で 置 き 換
え ら れ る こ と が 考 察 さ れ た 。そ こ で 、本 研 究 で は ジ ェ ン ダ ー 視 点
を 導 入 し た 栄 養 教 育 に よ っ て 、 “ 栄 養 問 題 を 知 ら な い ”か ら“ 知
っ て い る ”へ 、栄 養 問 題 の 改 善 は“ 自 分 の 役 割 で は な い ”か ら“ 自
分 の 役 割 で も あ る ” へ 、“ 家 族 が 入 手 し た 食 材 料 で 調 理 さ え し て
い れ ば い い ”か ら“ 健 康 的 な 食 事 づ く り を 計 画 す る ”へ の 発 言 の
質的変化をねらった栄養教育プログラムとそれを評価するため
の 枠 組 み を 作 成 し た 。そ の 結 果 、そ れ ら は 栄 養 教 育 に 有 効 で あ る
ことが確認された。
栄 養 教 育 は 、一 日 に 2 か ら 3 回 と い う 高 頻 度 で 食 事 づ く り を 行
い 、か つ 生 存 し て い る 限 り 長 期 に わ た っ て 深 く か か わ る 問 題 を そ
の 教 育 内 容 と す る こ と か ら 、対 象 者 が 栄 養 に 関 す る 知 識 を 多 く 得
た と し て も 、そ れ が 日 常 生 活 に お い て 実 行 さ れ る の な け れ ば 栄 養
教育の目的は達成されない
127)
。だからこそ、学習者が主体的に
参 加 で き る 教 育 内 容 ・ 方 法 を 確 立 し て い く 必 要 が あ る 。宮 坂 は 参
加 に つ い て 動 機 づ け と し て の ego-involvement( 自 我 の 関 与 ) の
重要性を記している
128)
。本研究の評価の枠組みは自我の関与へ
のプロセスと捉えることができるのではないだろうか。
55
ま た 、役 割 態 度 の 変 化 が 食 態 度 変 容 に 重 要 で あ る こ と が 明 ら か
に さ れ た 。課 題 探 求 時 に 、自 己 の ア イ デ ン テ ィ テ ィ が 刺 激 さ れ 変
容 し 、課 題 探 求 の 経 験 が 増 え る に 従 い 、そ れ ま で 形 成 さ れ て き た
アイデンティティが成熟し、自己の理解が深まっていく
129)
。し
か し 、同 じ 課 題 の 探 求 を 経 験 し て い て も 、個 人 に よ っ て ア イ デ ン
テ ィ テ ィ が 変 容 す る 人 と し な い 人 が い る の は 、課 題 探 求 時 に 課 題
探求とアイデンティティ探求の相互のやりとりを実行するかど
うかに関係する、という
130)
。アルマティア・センは、ジェンダ
ーに関する理論において「貢献の認知(知覚)が交渉力を強め、
エ ン タ イ ト ル( 権 利 )の 配 分 を 変 え 、ウ ェ ル・ビ ー イ ン グ( 選 択
の 幅 の 拡 大 )を 向 上 さ せ る 」と す る
131) 132)
。本 研 究 で は 、女 性 た
ち が 栄 養 学 習 の 場 へ の 参 加 を 通 し て 家 族 と の 共 有 、近 所 の 友 人 と
の 共 有 、組 織 と の 関 わ り を 持 つ こ と 、そ の プ ロ セ ス で 栄 養 問 題 を
改善するための自分の課題に気づき日常の食生活での役割の家
族や地域への貢献について知ることにより課題の質を深め具体
化 し 実 行 す る こ と 、す な わ ち 食 生 活 を 営 む 力 の エ ン パ ワ ー メ ン ト
に な る こ と を 示 し た 。こ れ は 栄 養 ・ 食 行 動 の 特 徴 と し て 、毎 日 高
頻度で関わり、多種多様な行動からなりたつからであり
133)
、そ
の特徴は地域における女性の組織化や社会参加活動に関心のな
い人々をも巻き込める可能性が高い
134)
。
1995 年 の 第 4 回 世 界 女 性 会 議 で 採 択 さ れ た 北 京 行 動 綱 領
32)
の
1 2 節 の う ち 6 節 に“ f o o d ”あ る い は“ h u n g e r ”の 言 葉 が 使 わ れ た 。
そ の 内 容 は“ 女 性 の 食 物 へ の ア ク セ ス の 改 善 ”、“ 家 庭 内 分 配 不 平
等 の 改 善 を 通 し た 食 物 不 足 の 改 善 ”“ 女 性 の 食 物 生 産 に 関 す る 視
点 を 取 り 入 れ た 食 環 境 づ く り ”等 で あ る 。綱 領 は 、ジ ェ ン ダ ー 平
56
等を謳うことが目的である。北京行動綱領を栄養教育に関わる
人々へのメッセージでもある
135)
と 捉 え る な ら ば 、本 研 究 に よ り
ジェンダー平等を栄養教育によって行える可能性があることが
示唆されたのではないだろうか。
これまで著者は発展途上国での栄養活動の現場において栄養
専門家の共通認識として栄養問題の改善にジェンダー視点を取
り 入 れ た 栄 養 教 育 の 必 要 性 を 確 認 し て き た 。本 研 究 の 結 果 に よ り
栄 養 教 育 に ジ ェ ン ダ ー 視 点 導 入 の 有 効 性 が 示 さ れ た が 、そ の こ と
が栄養教育の質をどのように変えるのかについての検討を今後
さらにおこなう必要がある。
本 研 究 で は 、栄 養 教 育 へ の ジ ェ ン ダ ー 視 点 導 入 の 有 効 性 を 明 ら
か に す る た め に 、ジ ェ ン ダ ー 構 造 の 変 化 の 測 定 項 目 を 導 入 し た 枠
組 み( 食 態 度・ 行 動 と そ の 共 有 行 動 に よ る 評 価 )を 作 成 し 、ジ ェ
ンダー構造の変化をねらった栄養教育介入により有効性を検証
し た 。枠 組 み に は 、食 態 度 ・ 行 動 の 変 化 の 項 目「 課 題 へ の 気 づ き 」
「 課 題 の 明 確 化 」「 課 題 の 実 行 」に 加 え 、「 役 割 内 ・ 外 の 食 行 動 の
確 認 」、「 役 割 態 度 の 変 化 」と 、共 有 行 動 の 広 が り「 家 族 と の 共 有 」
「 近 所 の 友 人 と の 共 有 」、「 組 織 へ の 関 係 づ く り 」を 評 価 項 目 と し
て 導 入 し た 。そ の 結 果 、参 加 者 の 8 8 % に 栄 養 問 題 を 改 善 す る た め
の 自 分 の 課 題 へ の 気 づ き が み ら れ 、そ の 課 題 の 実 行 に 至 る プ ロ セ
ス に ① 家 族 と の 共 有 、近 所 の 友 人 と の 共 有 、組 織 へ の 関 係 づ く り
を行う②食生活での自分の役割態度を変えることが重要である
こ と が 構 造 的 に 確 認 さ れ 、栄 養 教 育 へ の ジ ェ ン ダ ー 視 点 導 入 の 有
効性が明らかになった。
57
要
約
1.目
的
近 年 、発 展 途 上 国 の 人 々 の 食 物 へ の ア ク セ ス の 差 が 広 が り 、特
に 女 性 が そ の 劣 悪 な 状 態 に 多 く お か れ て い る こ と が 報 告 さ れ 、国
際協力においてジェンダー視点を入れた活動の必要性が強調さ
れ る よ う に な っ た 。本 研 究 の 目 的 は ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄
養教育の有効性をパナマ共和国ノベ族を事例とした介入により
明 ら か に し 、そ の た め の 評 価 の 枠 組 み を 作 成 す る こ と で あ る 。な
お 本 研 究 で の ジ ェ ン ダ ー と は 国 連 開 発 計 画( U N D P )の 定 義( 1 9 9 6
年 ) “ Refer
to
women’ s
and
men’ s
role
and
responsibilities that are socially determined. ” と し た 。
2.方
法
1 )ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 の 評 価 の 枠 組 み を 作 成 し
た。栄養教育の評価ならびにジェンダ-視点を導入した活動評
価 に つ い て の 先 行 研 究 レ ビ ュ ー を ふ ま え 、 Prochaska ら の The
Transtheoretical Model と
Kabeer の
Reversed Realities
Framework を 採 用 し た 。 著 者 が 1996 年 に 実 施 し た パ ナ マ 共 和 国
ノベ族の人々への参加型栄養学習プログラムにおける学習者の
発言を上記の2つのモデルに基づいて分類し、抽出した項目の
妥当性をノベ族の人々へのヒアリングにより検討した。これら
をふまえた食態度・行動とその共有行動による評価の枠組みを
作成した。すなわち①食態度・行動の変化、ステージ1「役割
内 ・ 外 の 食 行 動 の 確 認 」、 ス テ ー ジ 2 「 課 題 に 関 す る 気 づ き 」、
ス テ ー ジ 3 「 役 割 態 度 の 変 化 」、 ス テ ー ジ 4 「 課 題 の 明 確 化 」、
58
ス テ ー ジ 5「 課 題 の 実 行 」と 、② 共 有 行 動 の 広 が り 、 S t a g e 1「 家
族 と の 共 有 」、 S t a g e 2 「 近 所 の 友 人 と の 共 有 」、 S t a g e 3 「 組 織
への関係づくり」の2側面から成る。
2)ジェンダー視点を導入した栄養教育プログラムを作成した。
学習目標を「栄養問題を改善するための自分の課題に気づくこ
と」とし女性が地域で主体的に活動する民芸品づくり組織の共
同作業場での学習と自宅での学習を交互に4回ずつ計8回行う。
民芸品づくり組織リーダーとその三女をピア・エデュケータと
する。ジェンダー視点に①食生活での自分や家族の役割と近所
の友人との協力関係(特に男性)についての参加者同士の共有
②家族・近所の友人(特に男性)を巻きこみやすい自宅学習課
題の提供を行う。学習目標への達成度の評価に①学んだことを
生かしたワチョ(伝統的・日常的料理)をつくったか②学習中
作成した教材を活用したか③入手可能な食材料種類数の増加④
献立中の食品群の増加がみられたかの4項目を設定した。評価
は 学 習 目 標 へ の 達 成 度 ( 栄 養 教 育 に よ る 結 果 評 価 )、 食 態 度 ・ 行
動とその共有行動(結果に至るプロセスの評価)の両方から検
討することとした。
3 ) 対 象 者 は B 集 落 の 39 世 帯 全 世 帯 の 女 性 で あ る 。 女 性 た ち に
学 習 へ の 参 加 を 呼 び か け 2001 年 6 月 か ら 8 月 に 介 入 を 実 施 し た
結 果 、民 芸 品 づ く り 共 同 作 業 場 で の 学 習 に 3 2 世 帯 、4 1 名 の 女 性
の 参 加 が 得 ら れ た 。 こ の 41 名 を 解 析 対 象 と し た 。
4)解析方法は学習目標への達成度による評価にχ2 検定、食態
度・行動とその共有行動による評価に①系時的検討に反復測定
に よ る 一 元 配 置 分 散 分 析 お よ び 多 重 比 較 ( ボ ン フ ェ ロ ー ニ 法 )、
59
相 関 分 析 、② 介 入 終 了 時 点 で の 横 断 的 検 討 に は χ 2 検 定 、t 検 定 、
一 元 配 置 分 散 分 析 お よ び 多 重 比 較 ( ボ ン フ ェ ロ ー ニ 法 )、 パ ス 解
析を用いた。
3.結
果
1)学習目標への達成度による評価(栄養教育の結果評価)
参 加 者 41 名 中 36 名 ( 87.8% ) に 栄 養 問 題 を 改 善 す る た め の 課
題 へ の 気 づ き が み ら れ 、そ の 内 10 名( 24.4%)は 課 題 の 実 行 に 至
っ た 。課 題 が わ か ら な い 、何 も で き な い と い う 発 言 を す る 人 が 学
習 前 に 比 べ 学 習 後 に 有 意 に 減 尐 し た ( p < 0 . 0 1 )。
2 )食 態 度 ・ 行 動 と そ の 共 有 行 動 に よ る 評 価( 結 果 に 至 る プ ロ セ
スの評価)
( 1 )食 態 度 ・ 行 動 の 変 化 と 共 有 行 動 の 広 が り の 変 化 の 系 時 的 検
討
学 習 に よ り 参 加 者 36 名 ( 87.8 % ) に 食 態 度 の 変 化 が 、 41 名
( 100% ) に 共 有 行 動 が み ら れ た 。 個 人 別 変 化 を み る と 学 習 が 進
む 度 に 食 態 度・行 動 お よ び 共 有 行 動 の ス テ ー ジ が 上 昇 す る こ と が
確 認 さ れ た 。そ こ で 食 態 度・行 動 の ス テ ー ジ 5 を 5 点 、以 下 、4 、
3 、2 、1 、0 点 と し て 学 習 に よ る 変 化 を み た 結 果 、自 宅 学 習 1
回 時 1.0±0.0 点 か ら 自 宅 学 習 4 回 時 3.5±1.3 点 へ と 学 習 が 進 む
度 に 得 点 の 有 意 な 増 加 が み ら れ た ( p < 0 . 0 1 )。 共 有 行 動 に つ い て
も Stage3 を 3 点 、 以 下 、 2 、 1 、 0 点 と し 変 化 を み た 結 果 、 1.3
± 0.5 点 か ら 2.2 ± 0.8 点 へ と 得 点 の 有 意 な 増 加 が み ら れ た
(p<0.01)。ま た 、学 習 1 回 目 か ら 4 回 目 の 食 態 度 ・ 行 動 の 変 化 量
と 共 有 行 動 の 変 化 量 は 有 意 に 相 関 し て い た ( r = 0 . 4 5 4 , p < 0 . 0 1 )。
(2)食態度・行動の変化と共有行動の広がりとの関係
60
食 態 度・行 動 の 変 化 と 共 有 行 動 の 広 が り と の 関 係 を 明 ら か に す
る た め に 、系 時 的 変 化 な ら び に 項 目 間 の 関 連 の 結 果 に 基 づ き モ デ
ル を 作 成 し パ ス 解 析 を 行 っ た 。食 態 度・行 動 の「 課 題 の 実 行 」を
従 属 変 数 と し て パ ス ダ イ ア グ ラ ム を 求 め た 結 果 、「 役 割 内 ・ 外 の
食 行 動 の 確 認 」か ら「 家 族 と の 共 有 」へ 行 く 経 路( 因 果 係 数 0 . 7 0 7 )、
「近所の友人との共有」から「課題への気づき」へ行く経路
( 0 . 1 1 3 ) 、「 課 題 の 明 確 化 」 か ら 「 組 織 へ の 関 係 づ く り 」 を 経 て
( 0 . 5 7 4 )「 役 割 態 度 の 変 化 」 へ 行 く 経 路 ( 0 . 4 4 6 ) が 確 認 さ れ
( R M S E A = 0 . 0 2 3 )、食 態 度 ・ 行 動 の ス テ ー ジ の 変 化 と 共 有 行 動 の ス
テージの変化は相互に関連し合う構造であることが検証された。
栄養問題を改善するための課題の実行に至るプロセスが明らか
になった。
( 3 )参 加 者 の 学 習 に よ る 食 態 度 ・ 行 動 と そ の 共 有 行 動 の 変 化 の
事例検討
以 上 を ふ ま え た 事 例 検 討 を 行 っ た 結 果 、参 加 者 の 学 習 内 容 を 男
性と共有する際に自分の課題の質を深める共有とそうでない共
有 が み ら れ た 。家 族 だ け で な く 友 人 と の 共 有 を 行 う こ と 、視 野 を
地域へ広げることが課題の質を深めることに重要であることが
示唆された。
4.結
語
ジ ェ ン ダ ー 視 点 を 導 入 し た 栄 養 教 育 に よ り 88% の 参 加 者 に 栄
養問題を改善するための自分の課題への気づきがみられた。ま
た、ジェンダー視点を導入した栄養教育の評価の枠組みにより
課題の実行には家族との共有,近所の友人との共有、組織への
関係づくり、役割への態度の変化が重要であることが明らかに
61
なり、その有効性が検証された。
謝
辞
稿 を 終 え る に あ た り 、本 研 究 に ご 協 力 い た だ き ま し た パ ナ マ 共
和 国 ノ ベ 自 治 区 の B 集 落 の 皆 様 、民 芸 品 づ く り 組 織 A s o c i a c i o n d e
mujeres Ngobe 、 パ ナ マ 保 健 省 、 経 済 企 画 庁 、 国 際 協 力 事 業 団 青
年 海 外 協 力 隊 事 務 局 、 パ ナ マ JICA 事 務 所 、 NGO プ ロ ジ ェ ク ト ノ
ベ ・ ブ グ レ 、 の 皆 様 に 深 謝 致 し ま す 。 特 に 1996 年 か ら 続 け ら れ
ている本研究についてパナマ共和国においていつも励まし支援
し て く だ さ っ た パ ナ マ 保 健 省 Gloria Rivera さ ん , パ ナ マ JICA
事 務 所 Elys Onodera さ ん に 心 よ り 感 謝 申 し 上 げ ま す 。
女 子 栄 養 大 学 栄 養 学 部 文 化 栄 養 学 科 在 籍 以 来 、長 年 に わ た り ご
親切にご指導いただきました女子栄養大学足立己幸教授に深く
感 謝 い た し ま す 。ま た 、生 活 と 環 境 と の 関 わ り の 原 点 を 教 え て い
た だ き ま し た 小 原 秀 雄 教 授 、住 民 参 加 の 視 点 を ご 指 導 い た だ き ま
し た 宮 坂 忠 夫 副 学 長 に 深 謝 い た し ま す 。最 後 に 、暖 か い 励 ま し と
ご 指 導 を い た だ き ま し た 食 生 態 学 研 究 室 の 武 見 ゆ か り 助 教 授 、吉
岡有紀子助手、研究室の皆様に感謝いたします。
あ と が き
青 年 海 外 協 力 隊 、栄 養 士 隊 員 と し て 活 動 の 後 、女 子 栄 養 大 学 栄
養 学 部 文 化 栄 養 学 科 に 社 会 人 入 学 し た 。ま ず 、協 力 隊 員 活 動 を 振
り 返 る こ と か ら 始 ま り 一 歩 ず つ 研 究 ・ 実 践 を 重 ね て き た 。楽 し い
62
ことも苦しいこともあったがここまでこられたのは大勢の方々
の 支 援 が あ っ た か ら だ 。私 の 研 究 活 動 に 期 待 し 自 分 の 家 を 長 期 間
に わ た り 無 料 で 提 供 し て く れ た 方 、問 題 が 生 じ る と す ぐ に 駆 け つ
け て く れ 忚 援 し て く れ た 方 、常 に 行 政 側 か ら の 支 援 を し て く れ た
方 々 の 協 力 を 考 え る と 、く じ け そ う に な っ て も 途 中 で や め る わ け
に い か な い と い う 思 い だ け は 強 か っ た 。な か で も 私 に と っ て パ ナ
マ 保 健 省 チ リ キ 県 支 部 栄 養 課 長 Gloria Rivera の 存 在 が 大 き い 。
彼 女 は 私 の 協 力 隊 員 時 代 の カ ウ ン タ ー パ ー ト で あ る 。1 9 9 1 年 当 時 、
ノベ族地域の栄養改善プロジェクトの住民代表には男性しかお
ら ず 、い く ら 呼 び か け て も 集 落 の 女 性 代 表 は 来 な か っ た 。地 域 の
栄養改善に女性の社会参加が不可欠であるというスタッフの強
い 思 い で 、栄 養 士 、医 師 、看 護 婦 、教 師 、カ ウ ン セ ラ ー 等 で チ ー
ムを組み何日もノベ山岳地域を歩いて集落をまわり女性の代表
に な れ る 人 材 を 探 し 出 し 組 織 化 を 図 っ た 。山 歩 き で つ か れ は て る
毎 日 で あ っ た が 、女 性 の 組 織 化 の 支 援 の た め に キ リ ス ト 教 会 、国
連 、 NGO 団 体 ス タ ッ フ 等 と の 協 力 体 制 を つ く り つ つ 、 集 落 の 女 性
代表が一人ずつ増えて栄養改善活動に興味をもつ女性の輪が広
が っ て い く の を み る 感 動 は 、そ れ ま で 私 が 経 験 し た こ と の な い も
の で あ っ た 。プ ラ イ マ リ ヘ ル ス ケ ア や ヘ ル ス プ ロ モ ー シ ョ ン の 意
義 を 肌 で 感 じ さ せ て く れ 、地 域 栄 養 活 動 の 原 点 を 教 え て く れ た の
が G l o r i a で あ っ た 。私 が パ ナ マ か ら 帰 国 す る 日 G l o r i a に「 こ こ
で の 経 験 を い つ か ど こ か に 必 ず フ ィ ー ド バ ッ ク し て ほ し い 。」 と
いわれた。
あ れ か ら 10 年 が た っ た 。 彼 女 は そ の 後 も ず っ と 私 の 研 究 の 支
援 を 続 け て く れ て い る 。今 、や っ と フ ィ ー ド バ ッ ク で き る 力 が 私
63
に つ い て き た よ う に 感 じ て い る 。今 後 の 私 の 課 題 は 、 ノ ベ 族 に 留
まらず食物へのアクセスが劣悪な状態にある人々への支援にこ
れまで開発してきたジェンダー視点導入した参加型栄養教育の
方 法 論 を 生 か し て い く こ と 、ま た 、集 落 レ ベ ル で 十 分 に 生 か す こ
と が で き る よ う な 県 レ ベ ル 、国 レ ベ ル 、国 際 協 力 レ ベ ル で の シ ス
テムや方法をみつけていくことであると感じている。
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77
自分の家族のことで
友人(男性)は良い
友人(男性)と協力
自分の家族のことで精一杯。
友人に聞けばよい材料
友人(女性)にワチョ
国連・海外国際
友人(男性)にワチョに必要な
プロジェクトで必要な材料を入手できるかもしれない。
地域には入手可能なワ
地域で入手できる食物は
参加者(女性、男性)に話を聞いてみよう。
農業プロジェクトに
3色そろったワチョをつくることがで
何をしてよいかわからない。
3色ワチョを家族、友人と
1度参加してみよう。
ワチョに必要な材料
食材料や料理に関する
食に関するプログラムはうまくいか
女性たちは食生活のことをいろい
家族(男性)にワチョに
私の仕事は調理である。
家族に健康な・おいしい
町の教会
教会組織
<友人(男性)>
<友人(女性)>
学校PTA
<参加者(女性)>
栄養教育
<家族(男性)>
<民芸品づくり組織>
Stage of Change
Precontemplation
Processes
Contemplation
Action
Preparation
Maintenance
Consciousness raising
Dramatic relief
Self-reevaluation
Self-liberation
Contingency management
Helping relationship
Counterconditioning
The Transtheoretical Model64)
James O. Prochasca : The transtheoretical modal of health behavior change.
American Journal of Health Promtion, 12, 38~48(1997)
Evaluating Change
Transformed awareness
Building new and
collective relationships
New economic resources
Mobilzing around self-identified needs
Participation in needs identification
strategic interests
practical needs
Welfarism
Transformatory potential
Empowerment
Analysing Interventions77)
Naila Kabeer: Reversed realities-Gender Hierarchies in Development Thoutht, Verso, pp.311(1994)
図1 栄養教育の評価(上)、ジェンダー視点を考慮した活動の評価(下)に使われているモデル
食べる
つくる
パナマ共和国
N
コスタ・リカ
共和国
首都パナマシティ
コロンビア
共和国
コスタ・リカ
共和国
ボカス・デル・トロ県
ノベ自治区
べラグアス県
B集落
サン・
フェリックス川
チリキ県
至サン・ホセ
至パナマシティ
アメリカン・ハイウェイ
パナマ湾
図2 パナマ共和国とノベ自治区の対象集落の位置
N
b
a
f
500m
c
e
アトチャミ
f
世帯(小学校敷地内の世帯は教員住宅)
民芸品づくり集落リーダー宅,
民芸品づくり共同作業場
a : 養鶏プロジェクト
b : 小学校
c : 小学校菜園
d : 組合店
e : 組合菜園
f : 小売店
サン・フェリックス川
d
図3 対象世帯の軒並み図と民芸品づくり共同作業場
サン・フェリックス
集落外の市場
省庁チリキ県支部
国際協力機関.
NGO,NPO団体
米 パン
マカロニ 油 塩
水道委員会
自然的条件
文化的条件
社会経済的条件
森林・川
鳥 イグアナ
魚 エビ かに
レモン
カシュ-ナッツ
食用植物 等
小学校 PTA
∧
栄
養
情
報
の
流
れ
∨
雑貨店
共同組合
米 パン マカロニ
油 塩等
養鶏プロジェクト委員会
民芸品づくり組織
近所の友人
つくる
料理
女性
食べる
オトエ
ニャメ レモン
みかん
等
∧
食
物
の
流
れ
∨
米
キャッサバ
オトエ ニャメ
とうもろこし
豆 鶏肉
かぼちゃ,
さやえんどう
パイナップル
バナナ
畑
家族
(両親、夫、子供、等)
社会
歴
史
人間の食生活・地域の食活動・環境とのかかわり 40)(足立
1992)に基き著者が加筆
意思決定の機会への参加者
の多くが男性の組織
意思決定の機会への参加者
の多くが女性の組織
食物の流れ
図4 女性にとっての栄養情報と食物の流れ
栄養情報の流れ
太い線は女性が直接に
情報をえることができる経路。
栄養
食事づくり計画力
の向上
栄養状態
ステージ 1
食態度・行動
の変化
共有行動の
広がり
役割内・外の
食行動の確認
ステージ 3
ステージ 2
課題への
気づき
役割態度の変化
stage 1
stage 2
家族との共有
近所の友人
との共有
ステージ 4
ステージ 5
課題の明確化
stage 3
組織への
関係づくり
の改善
課題の実行
社会参加への
積極性の向上
ジェンダー構造の変化の測定項目
図5
ジェンダー視点を導入した栄養教育の評価の枠組み
N
小学校
小学校菜園
養鶏
プロジェクト
500m
アトチャミ
民芸品づくり
共同作業場
組合菜園
サン・フェリックス川
参
加
回
数
4回
3回
2回
1回
組合店
学習に不参加の世帯
(小学校敷地内の世帯は教員住宅)
パンアメリカン
ハイウェイへ
図6 共同作業場での学習への参加者と参加回数
ステージ 5
課題の実行
ステージ 3
と
ステージ 4
の両方
食
態
度
・
行
動
の
変
化
ステージ 4
課題の
明確化
ステージ 3
役割態度の
変化
ステージ 2
課題への
気づき
ステージ 1
役割内・外
の食行動の
確認
ステージ 0
参加者(n=41)
不参加者(n=7)
自宅1
自宅2
時期
自宅3
自宅4
自宅1;自宅学習1回目で共同作業場での学習2回目の前4日間、
自宅2;自宅学習2回目で共同作業場での学習3回目の前4日間、
自宅3;自宅学習3回目で共同作業場での学習4回目の前4日間、
自宅4;自宅学習4回目
図7 学習による食態度・行動の変化
Stage3
組織への
関係づくり
共
有
行
動
の
広
が
り
Stage2
近所の友人
との共有
Stage1
家族との
共有
Stage0
参加者(n=41)
不参加者(n=7)
自宅1
自宅2
自宅3
自宅4
時期
自宅1;自宅学習1回目で共同作業場での学習2回目の前4日間、
自宅2;自宅学習2回目で共同作業場での学習3回目の前4日間、
自宅3;自宅学習3回目で共同作業場での学習4回目の前4日間、
自宅4;自宅学習4回目
図8 学習による共有行動の広がりの変化
食態度・行動の
変化量
5
4
3
2
1
-3
-2
-1
0
1
2
3
共有行動の
変化量
-1
-2
-3
-4
参加者(n=41) 相関係数.454**
不参加者(n=7) 相関係数.617
(**:p<0.01)
-5
変化量:自宅学習1回目の時点のステージと
4回目の時点のステージとの差
図9 食態度・行動の変化量と共有行動の変化量との関係
35
35
4⑬
5⑭
⑩
26
26
32
38
324.472
3⑱
34
3
24
36
39
25
36
25
39
25
32
40
3529
35
⑬
39
⑩
⑩
33⑳
3②
39家族との共有
38
22
23
23
21
.507
新ネットワー
.496⑬⑮
⑮.456
.387
.422
.579
①
.387
.409
.342
①
⑤
.387
⑬
②
⑨
.346
.358
④
役割内・外の
⑲
⑩
⑭
.437
.440
.441
③
.469
④
.344
⑩
課題への
⑭
⑦
⑨
⑪
⑪
⑫
.698
⑫
家族との共有
.344
.743
③
①
⑨
⑮⑫
⑱⑭
明確化(21)
⑬
.567
⑦23
⑳
⑲40
.516
.543
.344
.528
.328
家族・近所
.288
学んだ
ワチョづくり
食品群数
の増加
.410
R2=0.221
.316
R2=0.181
.327 家族・近所
.3
.348
役割意識変化
. .355
.345
.481
.365
既存ネット
.611
.414
.586
課題実行
既存ネット
.356
.460チェック表
.478
ワチョつくり
食品群増(13)
新ネットワー
.553
.343
食生活チェック
マップの活用
R2=0.287
.748
.393
役割内・外
の食行動
.812
課題への
気づき
R2=0.450
役割態度
の変化
R2=0.323
.422
.707
.457
-.166
.624
.605
.113
課題の明確化
R2=0.239
役割態度の変化
かつ
課題の明確化
.428
R2=0.796
.103
.574
-.030
課題の実行
家族と
の共有
R2=0.336
.675
近所の友人
R2=0.257
-.123
組織への
関係づくり
R2=0.333
.446
NFI=0.940
RFI=0.898
IFI =0.998
TLI=0.997
CFI=0.998
R2 重相関係数の平方
R2=0.341
-.028
RMSEA=0.023
因果係数,意味のある関連あり
因果係数,意味のある関連なし
( n=48; 参加者41,不参加者7)
図10 栄養学習による食態度・行動,共有行動,食事づくり計画力への効果
時期
学習前
35
35
4⑬
5⑭
⑩
26
26
32
38
324.472
3⑱
34
3
24
36
39
25
36
25
39
25
32
40
3529
35
⑬
39
⑩
⑩
33⑳
3②
39家族との共有
38
22
23
23
21
.507
新ネットワー
.496⑬⑮
⑮.456
.387
.422
.579
①
.387
.409
.342
①
⑤
.387
⑬
②
⑨
.346
.358
④
役割内・外の
⑲
⑩
⑭
.437
.440
.441
③
.469
④
.344
⑩
課題への
⑭
⑦
⑨
⑪
⑪
⑫
.698
⑫
家族との共有
.344
.743
③
①
⑨
⑮⑫
⑱⑭
明確化(21)
⑬
.567
⑦23
⑳
⑲40
.516
.543
.344
.528
.328
家族・近所
.288
.327 家族・近所
.3
.348
役割意識変化
. .355
.345
.481
.365
既存ネット
.611
.414
.586
課題実行
既存ネット
.356
.460チェック表
.478チェック表
学習後
栄養学習
食生活チェックマップの活用
発言
内容
・夫がもってくる食材
料を毎日調理してい
るだけである。
・調理する材料がない
ときは、空腹でも我慢
するしかない。
・子供の健康について
いつも心配しているが、
私には何もできない。
学んだ
ワチョづくり
・食生活チェック
マップをみて地域で
どんな食材料が入
手できるか考えた。
食品群数
の増加
役割内・外の食行動の確認
・食事の絵が描け
て参加仲間に自
分の食生活につ
いて発表できた。
課題への気づき
役割態度の変化
・夫と協力して食材
料を集めれば入手
できる食材料が増
えるかも しれないと
・調理だけしていれ
ばいいのではなく、
食材料の入手を考
えることも私の役割
課題の明確化
・健康的な食事の
ために夫と食材
料の相談をしよう
と思った。
役割態度の変化
かつ
課題の明確化
課題の実行
家族との共有
近所の友人との共有
・食事の絵が描け
たことを夫に報告
した。夫はそれは
よかったと言った。
・絵を描いたりし
て楽しいので一
緒に学習会に行
こうと隣の友人を
組織への関係づくり
・地域のプロジェク
トに参加すれば家
庭で栽培困難な食
物を入手できるか
・入手食材料を
考えて夫や友人
と相談しながら食
事づくりを行うよ
次のステージへの経路
事例になかった経路
事例にあったステージ
図11-1 課題の実行まで至ったE(45歳)の事例
事例になかったステージ
時期
発言
内容
学習前
・父が畑仕事、母が調
理をするので私の役
割は食事の後片付け
である。それ以外はし
35
35
4⑬
5⑭
⑩
26
26
32
38
324.472
3⑱
34
3
24
36
39
25
36
25
39
25
32
40
3529
35
⑬
39
⑩
⑩
33⑳
3②
39家族との共有
38
22
23
23
21
.507
新ネットワー
.496⑬⑮
⑮.456
.387
.422
.579
①
.387
.409
.342
①
⑤
.387
⑬
②
⑨
.346
.358
④
役割内・外の
⑲
⑩
⑭
.437
.440
.441
③
.469
④
.344
⑩
課題への
⑭
⑦
⑨
⑪
⑪
⑫
.698
⑫
家族との共有
.344
.743
③
①
⑨
⑮⑫
⑱⑭
明確化(21)
⑬
.567
⑦23
⑳
⑲40
.516
.543
.344
.528
.328
家族・近所
.288
.327 家族・近所
.3
.348
役割意識変化
. .355
.345
.481
.365
既存ネット
.611
.414
.586
課題実行
既存ネット
.356
.460チェック表
.478チェック表
学習後
栄養学習
学んだ
ワチョづくり
食品群数
の増加
食生活チェック
マップの活用
役割内・外の食行動の確認
・現金収入がないと健
康的な食生活はできな
いと思うの出稼ぎに行
・父の畑での仕事
ぶりと母が調理し
ている姿を写真で
発表できて嬉し
課題への気づき
・いろんな人が関わって
食事ができること、食材
料の栄養的特徴に興味
をもった。そういうことを
考えた食事づくりが大切
役割態度
の変化
役割態度の変化かつ課題の明確化
課題の明確化
家族との共有
・父と一緒にワチョづ
くり演習に持参する
食材料を収穫しに
いった。そのとき祖父
の目が悪いのは食事
に関係するのではな
・私の役割は父や母
を助けることだと思う。
祖父の目が悪くなら
ないような献立を立
ててあげたい。
課題の実行
近所の友人との共有
・学んだことを友
人に説明したが、
友人からそんなこ
ともう知っている
と言われたのでも
う話したくない。
組織への
次のステージへの経路
事例になかった経路
事例にあったステージ
図11-2 課題の明確化まで至ったL(15歳)の事例
事例になかったステージ
時期
学習前
発言
内容
・子供の健康を考えて
料理をつくりたいと思
うがお金がないので
・現金収入がないと健
康的な食生活はでき
ないと思う。
35
35
4⑬
5⑭
⑩
26
26
32
38
324.472
3⑱
34
3
24
36
39
25
36
25
39
25
32
40
3529
35
⑬
39
⑩
⑩
33⑳
3②
39家族との共有
38
22
23
23
21
.507
新ネットワー
.496⑬⑮
⑮.456
.387
.422
.579
①
.387
.409
.342
①
⑤
.387
⑬
②
⑨
.346
.358
④
役割内・外の
⑲
⑩
⑭
.437
.440
.441
③
.469
④
.344
⑩
課題への
⑭
⑦
⑨
⑪
⑪
⑫
.698
⑫
家族との共有
.344
.743
③
①
⑨
⑮⑫
⑱⑭
明確化(21)
⑬
.567
⑦23
⑳
⑲40
.516
.543
.344
.528
.328
家族・近所
.288
.327 家族・近所
.3
.348
役割意識変化
. .355
.345
.481
.365
既存ネット
.611
.414
.586
課題実行
既存ネット
.356
.460
.478
学習後
栄養学習
学んだ
ワチョづくり
食品群数
の増加
食生活チェック
マップの活用
役割内・外の食行動の確認
・夫も学習に参加
したので夫が絵の
描き方を教えてく
れた。
課題への気づき
・学習に参加した夫が小
学校給食にワチョを入れ
たらどうかといったので、
なるほどと思った。夫と一
緒に小学校給食について
考えようと思う。
課題の明確化
家族との共有
・娘に学習内容
を報告し、一緒
に参加するとい
いよと誘った。
役割態度
の変化
役割態度の変化
かつ
課題の明確化
課題の実行
近所の友人との共有
・ワチョづくり演習
に使う食材料や
調理方法につい
て近所の友人と
組織への
次のステージへの経路
事例になかった経路
事例にあったステージ
事例になかったステージ
図11-3 課題への気づきまで至ったS(38歳)の事例
表1 研究の手順
関わった組織、人
方法
目的
1) 栄養教育へのジェンダー視
点導入の必要性の検討
先行研究の検討
パナマ共和国ノベ自治区での検討
栄養教育にジェンダー視点を導入す その視点によるパナマ共和国ノベ
ることの必要性
自治区におけるアセスメント
2) ジェンダー構造の変化の測
定項目を導入した枠組みの
可能性
栄養教育の評価についての先行研
究レビュー
研究プロセス
1 計画
国際レベル
日本国際協力事業団
国レベル
経済企画庁
保健省
社会福祉省
パナマ大学
国連人口基金
経済企画庁
ノベ・ブグレプロジェクト 保健省
社会福祉省
県レベル
民芸品づくり組織
保健省の
県栄養部
保健省の
県栄養部
ジェンダー視点を重視した活動の評
価についての先行研究レビュー
3) 栄養教育プログラムの作成
介入目的、学習者の学習目標、学
習ステップ、目標達成度を測定す
る評価項目、戦略、学習者の活
動、スタッフの役割の設定
4) ジェンダー視点を導入した
栄養教育の評価枠組みの
作成
(1)と(2)を合わせた項目の選定
と参加型栄養学習プログラムの実
践の場における項目の使用可能
性の検討と枠組みの作成
2 実施
栄養教育プログラムの実施
3 評価
栄養教育プログラムの評価
栄養教育へのジェンダ-視点導入の意義
本部スタッフ
集落リーダー
集落リーダーの三女
本部スタッフ
集落リーダー
本部スタッフ
集落リーダー
集落リーダーの三女
栄養教育プログラムの学習目標
達成度による評価
枠組みによる評価
4 考察
保健省の
県栄養部
本部スタッフ
集落リーダー
表2 パナマ共和国におけるノベ自治区の社会・経済状態と食生活・栄養状態
ノベ自治区
位置
人口
1)
構成 (%)
主要産業
2,3)
言語3)
宗教
3)
15歳未満
5歳未満
農業 (%)
サービス業 (%)
鉱工業 (%)
公用語
日常語
パナマ共和国全体
パナマ共和国
西部山岳地域
11万人
54.0
20.9
90.0
0.3
0.0
スペイン語
ノベ語
カトリック教
中央アメリカと南
アメリカをつなぐ位置
283万人
37.5
12.5
11.8
78.9
9.0
スペイン語
-
85.0
現金収入(Balboas /年)
157
2370
貧困層の
5)b
割合 (%)
95.4
86.4
37.3
18.8
小学校就学率 (%)
83.0
92.0
小学校卒業率 (%)
40.0
96.0
中学校就学率 (%)
識字率 (%)
16.0
56.7
62.0
86.8
健康/
乳児死亡率 (出生千対)
29.5
21.0
栄養7)
5歳未満死亡率 (出生千対)
84.1
29.0
5歳未満栄養不良率 (%)
52.2
16.1
平均余命(年)
電気普及率 (%)
水道普及率 (%)
トイレ普及率 (%)
食費
エンゲル係数
60.0
7.7
42.2
40.0
67.1
71.8
79.0
88.9
93.0
46.5
a
経済
教育6)
生活環境8)
食生活9)
4)
貧困
最貧困
全食費(Balboas/年)
穀類(Balboas/年)
肉魚類(Balboas/年)
豆類(Balboas/年)
乳・乳製品類(Balboas/年)
野菜類(Balboas/年)
果物類(Balboas/年)
砂糖類(Balboas/年)
脂質類(Balboas/年)
嗜好品類(Balboas/年)
その他(調味料、等)
栄養
食事回数(回/日)
状態10)
出現料理種類数(日)
(栄養所要量c)に 出現食材料種類数(日)
対する充足率:%)
栄養素摂取量(日)
エネルギー(Kcal)
たんぱく質(g)
脂質(g)
糖質(g)
カルシウム(mg)
鉄(mg)
ビタミンA(IU)
ビタミンB1(mg)
ビタミンB2(mg)
( )は全食費中
の割合
ビタミンC(mg)
162.3
38.5
35.4
5.9
5.8
20.3
20.3
12.7
4.6
10.2
8.6
2.1± 0.3
3.4± 1.7
4.8± 1.8
(23.7)
(21.8)
(3.6)
(3.6)
(12.5)
(12.5)
(7.8)
(2.8)
(6.3)
(5.3)
1828±465
43.3±11.2
20.7±16.8
402±113
344±130
16.0±3.4
626±1112
0.76±0.28
0.59±0.31
(57.3)
(133.3)
(34.8)
(95.0)
(59.0)
134±75
(134.0)
523.1
99.8
169.2
17.3
56.5
59.1
25.7
13.6
23.6
33.4
24.9
(19.1)
(32.3)
(3.3)
(10.8)
(11.3)
(4.9)
(2.6)
(4.5)
(6.4)
(4.8)
(83.1)
(56.2)
(41.4)
a:1 balboa=1USドル
b:貧困層:貧困ライン以下にいる人、貧困ライン:908Balboas/年/人, 75.69B/月/人, エンゲル係数 0.574、最貧困ライン:43.48B/月/人;
Ministerio de Economia y Financias, Direccion de politicas sociales, Distribucion del ingreso en Panama, Ministerio de Economia y Financias, pp.18 (2000)
c:エネルギー、たんぱく質、脂質についてはパナマ共和国保健省が提唱する栄養所要量に対する充足率、それ以外の栄養素については
Institute of Nutrition for Central America and Panamaが提唱する栄養所要量に対する充足率 数値:平均±標準偏差
1)
2)
3)
4)
5)
Contraloria general de la republica, Direccion de estadistica y censo: Censos Nacionales de Panama, Direccion de estadistica y censo, p.1(2000)
Sistema integrado de Chiriqui: Lines base de Salud rural, Ministerio de salud, p.17 (1994)
国際協力事業団、国際協力総合研修所:パナマ任国情報 (2000)
Ministerio de Economia y Financias, Direccion de politicas sociales, Distribucion del ingreso en Panama, Ministerio de Economia y Financias, p.86 (2000)
Banco internacional de reconstruccion y fomento Banco internacional, Panama estado sobre pobreza, Banco internacional de reconstruccion
y fomento Banco internacional, p.4(2000)
6) Gobierno nacional: Politica y estrategia de desarrollo social 2000-2004, Gobierno nacional, p.41(2000)
7) 4) 同掲書, Annexo 9
8) Ministerio de Salud, Direccion Nacional de promocion de la salud, Seccion de salud de pueblos Indigenas:
Salud de Pueblos indigenas, un analisis de las condiciones de salud a las poblaciones indigenas de Panama, Ministerio de Salud (2000)
9) 4) 同掲書, Annexo 4
10) 石川みどり:農村女性の社会的自立を支援する参加型栄養学習プログラムの開発,修士課程報告書,女子栄養大学大学院 , p.17 (1996)
国連・海外国際
承認されるためのシステムへの参加
新しい集団的な関係づくり
町の教会
その充足に向けての動員
教会組織
<友人>
<地域> <家族>
<参加者(女性)>
新しい分析力と気づき
ニーズと機会の優先順位づけ
自分たちで定義した
新しい経済資源の獲得
栄養教育
<民芸品づくり組織>
表3 栄養教育にジェンダー視点を導入する必要性に関する調査の枠組み
大項目
中項目
小項目
方法
対象
パナマ
ノベ族への
ノベ族人口、居住地区
共和国
政策
社会・経済的状況
文献収集
保健省本部
パナマ共和国全体の栄養政策と状況
ジェンダーに関する政策
及び
聞き取り
保健省県支部
文献収集
ノベ
自治区
B集落
全体
つくる
食べる
調査者
経済企画庁
著者
福祉省県支部
ノベ族地域への栄養政策と状況
ノベ
自治区
人口構成
栄養・健康
人口
世帯数、1世帯の人数
男女の年代別人数
栄養
1日の食事内容
食事レベル、食材料レベル、食品群レベル、栄養素レベル
食行動
つくる・伝承する行動の役割
献立作成、農作業、食品購入、食物交換、料理交換、調理
子供の教育
土地の管理
出稼ぎ
現金管理
購入食物
食生活に関する行動の
意思決定への参加
食・栄養
環境
存在する
サービスと
プログラム
フードシステム
ヘルスシステム
健康
社会・経済
社会
健康状態
文化
教育
財産
組織と
民芸品づくり組織
参加
集落にあるその他の組織
属性
属性
家族状況
食料援助プログラム
農作物栽培プログラム
栄養・保健レッスンプログラム
食物入手地図
流通政策・プログラム状況
ヘルスセンタ-、最寄の病院
水道普及世帯数
主観的健康感
職業
使用言語
教育レベル
土地、テレビ、ラジオ 等
活動内容
他組織への影響力(集落全体との関係)
食に関するプログラム企画行動
参加・不参加と参加度合い
民芸品販売経験・収入
組織
活動内容
キーパーソン
男女の参加人数と参加度合い
性別
年齢
同居家族
及び
聞き取り
著者
および
民芸品
づくり組織
本部スタッフ
集落リーダー
ワチョ
雑貨
表4 ジェンダー視点からみた社会・経済および食生活における女性の作業と意思決定
社会・経済 人口構成
人口(人)
世帯数(世帯)
性別人口構成(人)
年齢
0-9
10-19
20-29
30-39
40-49
50-59
60-69
70-79
合計
平均
320
39
男
%
女
% 合計
47
32.4
62
35.4
109
35
24.1
45
25.7
80
23
15.9
34
19.4
57
13
9.0
9
5.1
22
14
9.7
13
7.4
27
5
3.4
4
2.3
9
5
3.4
5
2.9
10
3
2.1
3
1.7
6
145 100.0
175 100.0
320
20.9±17.9
19.4±16.6
20.1±17.2
あり
あり
8.0±3.3
世帯数
%
31
79.5
20
51.3
家族人数/世帯(人)
財産
教育
ラジオの所有 (n=39)
土地の所有 (n=39)
学歴(人, n=39)
(在学中、乳幼児除く)
食生活
地域での
女性の
作業と
意思決定
集落に存在する
組織と参加世帯
状況 (n=39)
%
36.7
36.7
26.6
100.0
世帯数
13
31
%
33.3
79.5
作業者
女性
男性・ 女性
意思決定者
男性・ 女性
男性・ 女性
8
7
15
20.5
17.9
38.5
男性・ 女性
女性
男性・ 女性
男性
男性
男性
する
する
する
する
する
する
する
世帯数
17
25
1
5
16
39
(n=31) 5
%
43.6
64.1
2.6
12.8
41.0
100.0
16.1
する
する
する
する
(n=39) 2
(n=39) 9
(n=39) 8
(n=32) 17
5.1
23.1
20.5
53.1
民芸品づくり
小学校PTA
家庭での
農作業
女性の作業 鶏の世話
(n=39)
薪の入手
食物の購入
食物の交換
調理
家庭での
土地管理・栽培・入手作物
(土地のない世帯除く)
女性の
意思決定
出稼ぎ
現金の管理
食料の購入
子供の教育・進学
(学童のいない世帯除く)
(n=39)
2.029
0.122
1.825
1.012
(学童児いる世帯)
共同組合
養鶏委員会
水道委員会
栄養摂取
状態
%
22.6
37.6
39.8
100.0
χ 2値
男
29
29
21
79
小学校卒業
小学校中退
全く行かなかった
全体
女
21
35
37
93
食事数/日
食材料数/日
食品群数(4群)/日
栄養素等摂取量/日
(栄養所要量1)に
対する充足率:%)
%
34.1
25.0
17.8
6.9
8.4
2.8
3.1
1.9
100.0
食事重量
エネルギー
たんぱく質
脂肪
糖質
カルシウム
リン
鉄
ビタミンA
ビタミンB1
ビタミンB2
(g)
(Kcal)
(g)
(g)
(g)
(mg)
(mg)
(mg)
(IU)
(mg)
(mg)
ビタミンC
(mg)
2.2±0.4
3.5±1.1
2.6±0.6
1065 ±463
1563 ±522
26.5 ±12.6
4.6 ±5
375.4 ±127
197 ±146
521.9 ±215
11.9 ±5.2
714 ±778
0.69 ±0.41
0.32 ±0.14
(32.8)
(74.6)
(99.2)
(39.6)
(85.9)
(31.6)
225 ±122
(224.6)
(71.0)
(34.4)
(9.2)
1) エネルギー、たんぱく質、脂質についてはパナマ共和国保健省が提唱する所要量に対する充足率、それ以外の栄養素については
Institute of Nutrition for Central America and Panamaが提唱する所要量に対する充足率 数値:平均±標準偏差
P値
0.021
0.452
0.034
0.315
表5 女性にとっての食・栄養問題に関する意識
(n=39)
栄養問題
あるか
いつもある
時々ある
問題なし
知らない
合計
家族に関すること
29
74.4
8
20.5
2
5.1
0
0.0
39
100.0
地域に関すること
全体にある
ある家とない家あり
問題なし
知らない
合計
21
7
0
11
39
53.8
17.9
0.0
28.2
100.0
それは
入手食物の不足
36
92.3
入手食物の不足
23
59.0
何か
現金収入の不足
1
2.6
現金収入の不足
1
2.6
労働場所の不足
1
2.6
水不足
1
2.6
栄養改善プロジェクトがない
1
2.6
土地を平等に分配しない
1
2.6
11
39
28.2
100.0
16
41.0
何もできない
6
15.4
何かのプロジェクトに参加する
5
12.8
地域に新しいプロジェクトを計画する
1
2.6
労働場所の不足
家族に問題なし
2
5.1
39
100.0
問題を知らない
地域に問題なし
問題を知らない
合計
合計
改善の
わからない
8
20.5
わからない
ために
何もできない
3
7.7
何を
農作業を行う
21
53.8
するか
食物購入の為に収入を得る
2
5.1
近所の人に助けを求める
1
2.6
無回答
1
2.6
問題ない
3
7.7
問題ない
0
0.0
知らない
0
0.0
知らない
11
28.2
39
100.0
39
100.0
表6 介入の目的、学習目標、学習ステップ、戦略、学習内容、学習者の活動、ピアエデュケータの役割
介入目的
栄養教育へのジェンダー視点導入に関する有効性の検証
学習目標
栄養問題を改善するための自分の課題への気づき
学習ステップ
1 自分や家族の食生活や栄養問題を振り返る。
2 栄養問題を改善するための情報を入手したり技術を習得する。
3 入手した情報や習得した技術を生かしたワチョを調理する。
4 栄養問題を改善するための課題に気づく。
戦略
女性の参加:
1.地域に存在するネットワーク: 民芸品づくり組織と共同作業場の活用
2.Participatory learning appraisalの活用:参加者のもつ情報・技術の共有(食物入手から摂取までの食生活チェックマップの作成)によって栄養改善
のためのワチョづくりを自分で企画、実行、評価する。
3.ピアエデュケータ: 役割;学習会でのファシリテータ、学習者としてのモデリング、調査データ収集
ジェンダー構造の変化
1. 食生活での自分・家族の役割を確認し、家族や近所の友人との協力関係について学習者同士で共有する。
の視点:
2. 自宅学習中に家族、近所の友人を巻き込みやすい課題を共同作業場での学習時に提供する。
1) 自分・家族の食生活を絵に描いたり、写真に撮影する。
2) ワチョづくり実習を学習者の持ち寄り材料で行う。
3) 食生活チェックマップの活用を提案する。
栄養教育の
学習目標への
評価
達成度評価
食事づくり計画力
学習の
ための
準備
課題への気づきがあったか。
1.
2.
3.
4.
自宅学習中に共同作業場での学習で学んだことを生かしたワチョをつくったか。
自宅学習中に食生活チェックマップを活用したか。
入手可能な食材料の種類は増えたか。
献立中の食品群数は増えたか
民芸品づくり組織本部を通した参加集落の呼びかけ
ピアエデュケータ・スタッフは
・参加集落で民芸品づくりの場を通した
学習についての情報提供
・学習内容について
・ファシリテータの役割
集落への応用の検討 に関する研修
・集落の民芸品づくりリーダーと相談して
ファシリテータの決定
学習
内容
学習者
ステップ
学習時期
演習
ピアエデュケータ・スタッフの役割
実習
演習
実習
0 学習前
1 自分や家族の
食生活や栄養問題
を考える。
共同作業場
学習
1回目
4 栄養問題を改善
するための
課題に気づく。
(学習目標)
教材
・自分・家族・地域の
栄養問題を学習者
で共有する。
・持ち寄り材料で
ワチョづくり
・学習者同士の共有
を勧める。
・地域性の高い
食材料を持ち寄る。
・調査データ収集 ・持ち寄り材料
・ワチョ
・自分の食生活を
写真や絵にする。
・ワチョづくりのための
持ち寄り材料を選択
する。
・写真のとり方に
関する支援を行う。
・学習会に関する
質問を受け付ける。
・調査データ収集
共同作業場
学習
2回目
・絵や写真にした自分・
家族の食行動、役割、
協力、食事内容、等を
他人と共有・比較する。
・持ち寄り材料で
ワチョづくりを行う。
・発表モデルを行う。
・学習者同士の共有
を勧める。
・地域性の高い
食材料を持ち寄る。
・調査データ収集 ・描かれた絵や写真
・持ち寄り材料
・ワチョ
自宅学習
2回目
・共有によって得た新しい ・学習者仲間の食・栄養
栄養情報を生かして
改善を考慮した持ちより
家族・友人にワチョを
材料を選択する。
つくる。
・学習会に関する
質問を受け付ける。
・調査データ収集
共同作業場
学習
3回目
・食物の入手から健康的
なワチョになるまでの
食生活チェックマップを
作成する。
・持ち寄り材料で
ワチョづくりを行う。
・食物の栄養に
関する情報の提供
・学習会の進行を
勧める。
・地域性の高く地域の
不足栄養素を含んだ
食材料を持ち寄る。
・調査データ収集 ・食生活チェックマップ
・持ち寄り材料
・ワチョ
自宅学習
3回目
・食生活チェックマップを
活用した食卓づくりを
行う。
・学習者仲間の食・栄養
改善を考慮した持ちより
材料を選択する。
・食生活チェックマップ ・学習会に関する
を活用した食卓づくり 質問を受け付ける
を行う。
・調査データ収集
共同作業場
学習
4回目
・学習会の振り返りと
食生活チェックマップの
修正を行う。
・持ち寄り材料で
ワチョづくりを行う。
・食物の栄養に
関する情報の提供
・学習会の進行を
勧める。
・調査データ収集 ・食生活チェックマップ
・持ち寄り材料
・ワチョ
2 栄養問題を改善する 自宅学習
ための情報を入手
1回目
したり技術を習得する
3 入手した情報や
習得した技術を
生かしたワチョを
調理する。
学習の評価
・調査データ収集
自宅学習
4回目
・学習会に関する
質問を受け付ける
・調査データ収集
表7 栄養学習の場における学習者の食・栄養に関する発言の分類
Transtheoretica
無関心期(行動する意志がない)
l model
Consciousness raising
Dramatic relief
Environmental reevaluation
Reversed
realities
関心期(行動する意志があるが今やる予定はない.)
Self-reevaluation
ニーズの決定とプロジェクトの計画への参加
新しい経済的資源の獲得
Self-liberation
承認されるためのシステ
ムへの参加
ニーズと機会の
優先順位づけ
新しい分析力と
気づき
新しい集団的な
関係づくり
発言
内容
問題に無関心
食行動の課題への気づき
食行動の役割態度
の変化
新しい集団的な
関係づくり
学習者自身の ・問題はとくにない。
食スキル能力
自分達で定義した関心事
への優先順位づけ
その充足にむけての動
員
エンパワーメント
strategic interests
問題に気がついているが何 役割内・外行動の確認
をしてよいか不明
・いろんなところが痛いが自分
どうにもならない。
自
・購入だけでは、入手しにくい
材料がある。
について
維持期
(実行が持続している)
Contingency management
Help management
Counterconditioning
Stimulus control
practical needs
ステー
ジ
実行期
(実行する)
準備期(具体的に実行する意志がある)
情報の他者との共有
・材料がどうやって料理になる
のかわかった。
課題(need)の明確化
・材料を入手できたら料理は ・今までにつくったことの ・材料をいろいろ知りた
楽しくなる。
ないワチョをつくってみた い。
い。
・料理をつくることは楽しい。
・材料の栄養的特徴がわかっ
た。
・野菜が入手できなくて困って
いる。
・自分が表現できた。
課題の実行
・地域の食物についてもっ
と知りたい。
・調理法についてもっと知り
たい。
・農業について学ぶこと
は重要だ。
・農業について学びた
い。
・農業について学びたい。
・料理をするのは楽し
い。
・調理についてもっと ・農業についてもっとよく知り
たい。
学びたい。
・農業について学びたい。
・私の作る料理はいつも同じで
ある。
栄養問題改善
・私は料理についてあまり知ら
ない。
・材料のないときに料理をする
のが嫌になる。
・根本的に料理はすきではな
い。
・私は隠居しているので何もで
きない。
・料理は好きだが材料がないと
嫌だ。
家族について ・私の仕事は家族に料理をつく ・肉をほとんど食べられない。
ることだけである。
・食物入手のためには農作業 ・娘にワチョの話をすること ・料理をするのは楽しい。
への参加も重要だ。
ができた。
・私の仕事は作物を植えること ・調理は好きではないがしかた ・私は果物の実をひろう役割
だけである。
がない。
がある。
・私の役割は夫のもってくる材
料で子供の食事を調理ことで
ある。
・私には夫が持ってくる食べ物
を待つだけである。
・昔の地域の食物について
子供たちと話すことができ
た。
・うちには土地がないから食物 ・料理の内容は夫の行動に影 ・息子に学習会で食べたワ
は全て買うしかない。
響されているようだ。
チョについて報告した。
・家族の病気がずっとよくならな
い。
・子供たちと楽しく食事を
したい。
・毎年、収穫量が減っている。
・夫もセミナーに参加したい
といった。
・子供も学習会に参加さ
せたい。
・私に食物の入手は無理であ
る。
・夫と料理の話ができたの
が嬉しい。
・食物を入手するのも母
親の役割である。
・家族全員分の量が不足してい
るがどうしてよいかわからな
い。
・昔はその日暮らしでも良かっ
・ワチョについて夫と話せ
た。
・家にある在庫材料を確
認する。
・料理をつくるためにメ
ニューを考えるようになっ
た。
・子供のことを考えてワチョを
つくってあげたい。
・農業に興味がわいて
きた。
・誰も地域の人は助けてくれな ・川でとれる魚が少なくなっ
い。
た。
・友人たちと一緒に話すこと ・いろんな人と助け合うのは ・作物の交換をするのは ・自分のことも大切だが ・自分のことも大切だが他人
が楽しい。
重要だ。
よいことだ。
他人のことも時々考え のことも時々考えたい。
たい。
・土地をもっていない友人は大 ・皆で協力すればいろいろな
変だ。
材料があつまると思う。
・一緒に食生活について考
えた。
・他人の生活がわかって
よかった。
・普段あまり話さない人と話 ・地域にも入手可能な食物
せてよかった。
が多い。
・一人より地域の方が助 ・地域の役にたちたい。 ・地域の役にたちたい。
けになるときがある。
・地域の食材料について
もっと知りたい。
・地域の人と一緒に作業
するのがこんなに楽しい
と思わなかった。
・うちの土地を作物栽培の
プロジェクトに提供してもよ
い。
・困っている友人に何もしてあ
げられないのが辛い。
・自分で入手できる材料を
自分で調達するように
なった。
・祖父に学習会で覚えたこ
とを話した。
・家族が調理について学ぶ
のはよいことだと言った。
たが、今はそうはいかなくなっ
た。
・夫がいないので自分一人でい
ろいろ大変である。
・夫は私のいろいろいうことを好
まないので、あまり話ができな
い。
・夫が好きなものは入手しやす
いが嫌いなものは入手しにく
い。
近所の友人に ・他人のことに興味はない。
ついて
・おいしい料理をつくりたいと ・おいしい料理をつくりた ・子供のことを考えてワ ・料理が辛すぎたりしないよう ・娘にワチョのつくり方を教
思う。
いと思う。
チョをつくってあげた
においしくつくるようにしたい。 えたい。
い。
・子供たちと楽しく食事を ・子供たちにワチョのこと ・夫もセミナーに参加す ・娘に料理を教えたい。
を教えたい。
ればいい。
したい。
・家族と料理の話をするの ・夫も調理について興味を
は重要なことであると思っ もっている。
た。
・夫が料理のことなら勉強し
た方がいいといった。
・食事づくりは母の仕事で食物 ・現金さえあれば食生活はよく
入手は父の仕事なのでよくわ なる。
からない。
・なぜうちの収穫量がへっ
ているのか調べたい。
・町より近所の人から材料
を入手しようと思う。
・友人の食生活はうちとは違う
・友人はうちでは入手できない
材料を現金なしで入手できて
いた。
・ムロは食べられる植物だった
ということを知った。
・イグアナを上手にとれる名人
がいる。
・キャッサバは町までいかなく
ても交換で入手できる。
・友人の肉の保存の仕方が興
味深かった。
組織への関係 ・地域の問題はとくにない。
づくりについて
・土地が限られているので、食
物生産不足になる。
・地域にも体によくておいしい
ものがある。
・地域のことに興味がない。
・地域に栽培用の土地が少な
い。
・地域で入手した食物でつくっ ・地域のもの(食生活チェッ ・地域の食物はおいしい。
た料理はおいしい。
ク表作成)に自分を表現で
きた。
・地域のことはよくわからない。 ・昔に比べ皆で一緒に働くこと
が減った。
・地域の人たちも同じような問
題をもっている。
・地域で入手できる食物が少な
い。
・地域のために何かしたく
なった。
・以前より土地がやせている。
・参加したことがない。
・地域のプロジェクトは最後ま
でいったことがない。
・食生活チェック表の作成に
貢献できた。
・小学校では畑づくり実習をし
ている。
・地域のセミナーには参
加していきたい。
・どんなプロジェクトもうまくいか ・養鶏プロジェクトはまずまず
ない。
成功している。
・一人よりグループの方
が何かできると思う。
・女性グループでもっと ・養鶏プロジェクトをもっと大き ・入手しにくい食物が手に
何かできる。
くしたらいいと思う。
入るようなプロジェクトに参
加したい。
・養鶏プロジェクトをもっと
大きくしたらいいと提案して
みたい。
・組織は皆いつも一緒にやらせ
ようとするので嫌だ。
・女性組織のコミュニケーション ・女性組織でも以前に畑をつ
がうまくいってない。
くったことがあった。
・地域の友人たちと仲良く働く
のは難しい。
・リーダーたちの経営の仕方に
問題がある。
・いつも知っているメンバー ・女性同士だと気兼ねせず
で食事について改めて話し に参加できるのでいい。
たのは初めてである。
・女性たちは食生活や料理
についてよく知っている。
・食プログラムなら女性
組織に参加してもよい。
・女性たちで農業プロ
ジェクトをやればどう
か。
・家庭も大切だが、女性組
織活動もがんばりたい。
・伝統料理講習会をしたら
どうか。
ジェンダー関係構造に関する項目
表8 ジェンダー構造の変化の測定項目を導入した栄養教育の評価の枠組みの検討プロセス Transtheoretical model
無関心期(行動する意志がない) 関心期(行動する意志があるが今やる予定はない.)
Reveresed realities
practical needs
(福祉政策)
準備期
(具体的に実行する意志がある)
食態度・行動
の変化
共有行動の
広がり
(実行する)
strategic needs
(ニーズの決定 新しい経済的資 承認されるた ニーズと機会 新しい分析力と気 新しい集団的な 自分で優先順位をつけ エンパワーメント
とプロジェクト計 源の獲得
めのシステム の優先順位づ づき
関係づくり
たニーズ充足のための
画への参加)
への参加
け
動員
参加型栄養学習
問題に気がつい
プログラムの学習者の
役割内・外の食 情報の他者と 食行動の課題 食行動の役割態 新しい集団的な
問題に無関心 ているが何をし
発言についての
行動の確認
の共有
への気づき
度の変化
関係づくり
てよいか不明
分類カテゴリー
枠組み
実行期
課題の明確化
課題の実行
ステージ1
ステージ2
ステージ3
ステージ4
ステージ5
役割内・外の
食行動の確認
課題への
気づき
役割態度の変化
課題の明確化
課題の実行
stage 1
家族との共有
stage 2
近所の友人との共有
stage 3
組織への関係づくり
維持期
(実行が
持続している)
表9 調査の枠組み
調査目的
大項目
中項目
学習会への参加
学習目標
への達成度
小項目
参加か不参加か。 不参加の場合、その理由は何か
学習ステップ
(食事づくり計画力)
自分や家族の栄養問題への振り返
り
家族・地域にある栄養問題は何か。
それを改善するための課題は何か。
栄養問題を改善するための情報の
入手と、技術の習得
学習者自身、家族、地域の食生活、役割、栄養状況に
ついて他者に発表できたか。
他の学習者の食生活や栄養問題を共有・比較したか。
入手した情報や習得した技術を
生かしたワチョの調理
課題への気づき
枠組みの
評価
食態度・ ステージ1 役割内・外の食行動の確認
食行動
ステージ2 課題への気づき
行動
観察
自宅3,4
食材料の栄養的特徴と健康の関係を理解できたか。
聞き取り
自宅3,4 (学習会中の献立作成の際の使用
食品群数の変化)
入手可能な食材料を増やしたり、新しい調理法を
学ぶことができたか。
聞き取り
自宅2~4 (学習会中の献立作成の際の
使用食材料数の変化)
食生活チェックマップを活用したか。
聞き取り
自宅3,4 食生活チェック表を活用したか。
した場合、どのように使ったか。
栄養問題の改善のための課題への気づきがあったか。
聞き取り
自宅1~4 学習で学んだワチョを家庭でつくったか。
自分の食行動の役割について発表したか。
観察
共同2~4
自分の食行動の課題への気づきがあったか。
観察
共同2~4
自由回答
ステージ3 食行動の役割態度の変化
自分の役割の食行動についてどう思うか。
観察・
聞き取り
聞き取り
ステージ4 課題の明確化
学習会の前に比べ自分の課題がより明確になったか。
聞き取り
自宅3,4 学習会の前に比べ自分の課題がより明確になったか。
ステージ5 課題の実行
課題について行動を起こしたか。
聞き取り
自宅2~4 課題について行動を起こしたか。
Stage1
家族との共有
家族と学習会の内容について共有したか。
聞き取り
自宅1~4 家族と学習会の内容について共有したか。
Stage2
近所の友人との共有
近所の友人と学習内容について共有したか。
聞き取り
自宅1~4
Stage3
組織への関係づくり
地域の既存組織、または新しい組織への関係づくりに
ついて意見があるか。また、働きかけをしたか。
聞き取り
自宅1~4 地域の既存組織、または新しい組織への関係づくりに
ついて意見があるか。また、働きかけをしたか。
a: 観察; 学習会中における参加者の行動の観察を行う 聞き取り; 介入集落全世帯の世帯主の妻、または世帯主女性、学習会への参加者全員への聞き取りを行う
b: 共同1;共同作業場での学習1回目 自宅1;自宅での学習1回目、以下数字は学習が何回目をさす。
回答方法
共同1~4
食材料の入手、保存、調理、摂食の流れを理解できたか。 聞き取り
その課題は何か。
共有
調査方法a 調査時期b
質問表現方法
観察・
自宅1~4 参加・不参加の理由は何か。
聞き取り
家族の食生活の状況はどうか。
聞き取り
自宅1,4
問題あるならば、それは何か。
地域の人々の食生活状況はどうか。
問題あるならば、それは何か。
観察
共同1
共同2~4
家族・地域の栄養改善のために何をしたいか。
自宅1,4 自分の行っている食卓づくりについてどう思うか。
近所の友人と学習会の内容について共有したか。
表10 参加者の特徴
参加者(n=41)
不参加者(n=7)
人数
%
人数
%
人数 (n=175)
41
23.4
7
4.0
世帯 (n=39)
32
82.1
7
17.9
10-19
20-29
30-39
40-49
50-59
60-69
70-79
8
13
6
7
3
3
1
19.5
31.7
14.6
17.1
7.3
7.3
2.4
2
2
1
1
1
28.6
28.6
14.3
14.3
14.3
合計
41
100.0
7
100.0
平均
34.5±14.9
属性
年齢
群間差
t・χ 2値
P値
7.415
0.284
0.148
0.984
0.653
0.429
2.036
0.565
50.0±13.6
財産
土地
ラジオ
あり
あり
32
21
78.0
51.2
5
5
71.4
71.4
教育
学歴
全くいっていない
小学校中退
小学校卒業
在学中
合計
24
13
3
1
41
58.5
31.7
7.3
2.4
100.0
3
4
42.9
57.1
7
100.0
2
4.9
1
14.3
0.619
0.734
研修経験
あり
参加者
民芸品づくり
参加する
17
41.5
0
0.0
4.494
0.041
世帯の
PTA (n=33,7)
参加する
33
100.0
6
85.7
0.027
0.027
参加する
7
17.1
2
28.6
0.519
0.601
養鶏委員会
参加する
8
19.5
0
0.0
1.639
0.583
水道委員会
参加する
15
36.6
3
42.9
0.100
1.000
23
27
1
9
16
33
56.1
65.9
2.4
22.0
39.0
80.5
4
6
1
2
1
7
57.1
85.7
14.3
28.6
14.3
100.0
0.049
1.044
1.461
0.384
1.263
1.280
0.480
0.148
0.072
0.351
0.103
0.100
14
40.0
4
57.1
2.082
0.353
7
3
5
17.1
7.3
15.2
3
0
1
42.9
0.0
14.3
2.410
0.546
0.206
0.147
1.000
0.902
9
22.0
2
28.6
0.148
0.700
-0.129
0.294
0.778
0.898
0.770
0.441
6.255
0.044
社会参加 共同組合
家庭での
行う作業
への
関わり
家庭での
農作業
鶏の世話
薪の入手
食料の購入
食物の交換
調理
する
する
する
する
する
する
子供の教育・進学 参加する
(学童のいない人除く: n=35, 7)
意思決定 現金の管理 参加する
への関わり 出稼ぎ 参加する
栽培作物 参加する
(土地所有しない人除く: n=33, 7)
食料の購入 参加する
食物摂取 食事回数/日
食材料種類数/日
食品群数/日
主観的健康感
2.1±0.4
3.6±1.1
2.6±0.7
2.1± 0.4
3.4± 1.0
2.4± 0.5
健康である
39
95.1
6
85.7
病気である
2
4.9
1
14.3
表11 学習目標への達成度
(n=41)
項目
人数
%
学習目標
課題への気づきがあった
36
87.8
目標達成後
課題が明確になった
23
56.1
の行動
課題を実行した
10
24.4
食事づくり
共同作業場で学んだことを生かしたワチョをつくった
31
75.6
計画力
入手可能な食材料種類数が増加した
23
56.1
食生活チェックマップを活用した
16
39.0
献立の食品群数が増加した
13
31.7
表12 課題の系時的な質的変化
(n=41)
調査時期 学習前(共同作業場1回目前) 学習後(自宅学習4回目)
自分の課題
家族の
栄養問題
の改善
への課題
人数
(%)
人数
13
(31.7)
28
(68.3)
4
3
12
1
わからない
何もできない
作物を栽培する
食物購入の為に収入を得る
近所の人に助けを求める
献立を立てる
鶏の世話を積極的にする
子供の健康を考慮して行動を決定する
家族と一緒に食事をする
地域のプロジェクトに参加する
栄養問題はない
無回答
10
3
21
2
1
地域の
栄養問題
の改善
栄養問題を知らない
わからない
何もできない
11
18
6
35
への課題
何かのプロジェクトに参加する
地域に新しいプロジェクトを計画する
地域にあるプロジェクトに積極的に参加する
何もしたくない
無回答
5
1
6
7
(17.1)
34
(82.9)
0
15
2
17
(41.5)
3
10
6
2
3
24
**
2
5
5
1
2
0
6
41
3
1
41
41
χ 2検定 **: p<0.01
(%) 前後比較
(85.4)
(14.6)
41
**
(58.5)
・描かれた絵や写真
・セルフチェック表
・持ち寄り材料
・描かれた絵や写真
・調査員
3週
2週
第1回
第3回
第4回学
第2回学
ホーム
ホーム
ホー 自
学
自持ち寄り
食学習仲間の
食持ち寄り材料で
栄演習
学習仲間の食・栄養問題の
ワチョに合う
持ち寄り
<教材>
ホームワーク群
・調査員
・調査員のフォロー
<スタッフの支援><ピア・エデュケータ>
第3回学習会
第1回学習会
第2回学習会
第4回学習会
2週
3週
2週
栄養問題と
自分の食生活
学習会の
食態度・行動の変化
枠組みの
ステージ1
項目 役割内・外行動の確認
持ち寄り
持
食
持ち寄り材料で
演習
持ち寄り
ち寄り材料で
表13 参加者の発言による食態度・行動の変化と共有行動の広がり
ステージ2
課題への気づき
ステージ3
役割態度の変化
(変化後の発言)
共有行動の広がり
ステージ4
課題の明確化
ステージ5
課題の実行
Stage 1
Stage 2
Stage 3
家族との共有
近所の友人との共有
組織への関係づくり
発言内容 ・材料がどうやって料理にな ・おいしいワチョをつくること ・私にも家族や友人のために ・子供の健康を守るような労 ・常に子供の健康状態を気 ・夫に学習会でやったことを話した。 ・学習後に友人の家庭での食 ・農作業の伝統的共同作業に
るのかわかった。
は重要である。
できることがある。
・材料の栄養的特徴がわ
かった。
・バナナの栽培と鶏の世話 ・私の役割は重要である。
は家族の健康とつながって
いる。
・自分の食行動を他人に発 ・どんな料理をつくるかを考 ・家族の健康に役立つ。
表した。
えることが大切だ。
働をしたい。
遣うような行動にでるように 「行って良かったね」と言ってくれ
なった。
た。
・バナナとコーヒーの栽培を ・米、キャッサバ、オトエの
始めたい。
栽培を夫に提案し増やし
た。
・学習会に持参する写真の撮影を
夫が手伝ってくれた。
・米、とうもろこしの栽培を増 ・民芸品づくり活動に農業プ ・学習会に持参する写真の撮影を
やした方がいいと思う。
ログラムを取り入れることを 息子が手伝ってくれた。
提案し、計画した。
行動の家族の分担、夫や弟
の役割をどのようにしている
のかを聞いた。大変興味深
かった。
積極的に参加すれば入手食
物の種類は増えると思う。
・健康的なワチョをつくるため ・人手の必要な食物栽培プロ
に夫とどのような協力が必要 ジェクトにすれば参加者は多く
かについて話した。
なるのではないか?
・学習会に来ていない友人男 ・地域のニーズを把握するプ
性にどのように食材料を入手 ロジェクトがあればいい。
して料理になるのかを話し
た。
・今まで自分には何もできな ・献立を考えようと思う。
いと思っていたが、何かでき
そうである。
・鶏の世話をもっと積極的に ・鶏の数をふやすために養 ・夜、家族全員に学習会の内容を ・今、集落にどんなプロジェク ・家族での入手が難しい食物
したい。
鶏プロジェクトに参加してい 話した。家族が「そんなに楽しそう トが必要なのかについて話し についてのプロジェクトがあれ
る。
に話すなんてきっと本当におもしろ た。
ばいい。
いに違いない」と言ってくれた。
・鶏の世話をすることは大切 ・おいしい料理をつくろうと思
である。
う。
・健康に良いワチョづくりを
計画する。
・子供の健康を考えた食事
づくりをする。
・できるだけ家族皆で一緒 ・ワチョのための材料の入手につい ・学習会に持っていく絵の書き ・集落のプロジェクトの計画に
に食事をすることにすれば て夫に相談した。
方について友人に相談した。 ついて話した。
いろんな話ができるのでそ
うした。
・食べるシーンをイメージして ・養鶏プロジェクトは家族の ・毎日、献立をたてるように ・学習会に持参する材料を家族
から調理する。
ためになる。
なった。
(夫)と相談した。
・トマト、冬瓜の種を購入す ・入手できる材料について考
ることで入手食物の種類は える。
増やすことができる。
・民芸品づくりが結果的に子 ・コーヒーの栽培をするため ・学習会で学んだワチョをつくって
供の健康につながる。
に夫と相談し種を増やした。 家族(夫)に説明した。
・コーヒー栽培は収入につな ・3食品群そろえられる材料を ・学習会で学んだワチョをつ
がる。
考える。
くりたい。
・学習会中におこったハプニング
(強風でワチョがこぼれそうになっ
たとき皆で鍋を押さえたこと)につい
て父や弟に話した。
入手可能な食物について考
える。
・息子と一緒に学習会で学んだこと
を生かしたワチョをつくってみた。
・まずは自分が健康になる
ようにしたい。
・ワチョの材料について話して
いるうちに喧嘩になった。
・学習会に一緒に行こうと誘っ
た。
・家の在庫の材料に何がある ・農作業の手伝いをすること
かを考えることが大切だ。
は入手食物の種類を増や
すことにつながる。
・私は家族のための食事づく ・今日何を料理するか考え
りをする必要がある。
てから仕事をはじめたい。
・生のまま調理しないようにす ・子供の健康を考慮した食
る。
事づくりがしたい。
ジェンダー視点として導入した項目の発言者の内容
表14 学習による食態度・行動ステージ別人数の変化
全体 (n=48)
a
調査時期 自宅1
ステージ
5
3&4
4
人数
%
自宅2
人数
自宅3
%
%
人数
自宅1
%
人数
参加者 (n=41)
自宅2
%
人数
不参加者(n=7)
自宅3
%
人数
自宅4
%
12 25.0
人数
自宅1
%
人数
自宅2
%
人数
自宅3
%
人数
自宅4
%
10 24.4
人数
%
2 28.6
ステージ3と
ステージ4の両方
9 18.8
7 14.6
8
19.5
7 17.1
1 14.3
課題の明確化
6 12.5
7 14.6
5
12.2
6 14.6
1 14.3
1 14.3
15 31.3
9 18.8
15
36.6
9 22.0
28 68.3
8
19.5
4
13 31.7
5
12.2
5 12.2
2 課題への気づき
0
人数
自宅4
課題の実行
3 役割態度の変化
1
28 58.3
8 16.7
4
8.3
役割内・外の
食行動の確認
41 85.4
15 31.3
5 10.4
5 10.4
上記の
どれもない
7 14.6
5 10.4
5 10.4
4
合計
48 100.0
48 100.0
48 100.0
41 100.0
9.8
8.3
48 100.0
41 100.0
41 100.0
41 100.0
41 100.0
2 28.6
7 100.0
5 71.4
5 71.4
4 57.1
7 100.0
7 100.0
7 100.0
7
a: 自宅1;自宅学習1回目で共同作業場での学習2回目の前4日間、自宅2;自宅学習2回目で共同作業場での学習3回目の前4日間、自宅3;自宅学習3回目で共同作業場での学習4回目の前4日間、自宅4;自宅学習4回目
100
表15 学習による共有行動ステージ別人数の変化
全体(n=48)
a
調査時期 自宅1 自宅2
Stage
人数
% 人数
参加者(n=41)
自宅3
% 人数
%
自宅4
人数
自宅1
%
人数
自宅2
%
人数
不参加者(n=7)
自宅3
%
人数
自宅4
%
人数
自宅1
%
3
組織への
関係づくり
2
近所の友人
との共有
14 29.2
14 29.2 24 50.0
12 25.0
14
34.1
14 34.1
22
53.7
12 29.3
家族との共有
27 56.3
27 56.3 19 39.6
10 20.8
27
65.9
27 65.9
19
46.3
10 24.4
1
0 誰とも共有しない
合計
22 45.8
7 14.6
7 14.6
5 10.4
48 100.0
48 100.0
48 100.0
4
%
人数
自宅3
%
人数
自宅4
%
19 46.3
8.3
48 100.0
人数
自宅2
41 100.0
41 100.0
41
100.0
41 100.0
人数
%
3 42.9
2 28.6
7 100.0
7 100.0
5 71.4
4 57.1
7 100.0
7 100.0
7 100.0
7 100.0
a: 自宅1;自宅学習1回目で共同作業場での学習2回目の前4日間、自宅2;自宅学習2回目で共同作業場での学習3回目の前4日間、自宅3;自宅学習3回目で共同作業場での学習4回目の前4日間、自宅4;自宅学習4回目
表16 個人別 食態度・行動、共有行動の変化
調査時期
枠組み
参加者
不参加者
一元配置分散分析
多重比較c
1回目
2回目
3回目
4回目
F値
1.0±0.0
1.7±0.5
2.9±1.0
3.5±1.3
117.80**
1<<2 1,2<<3 1,2,3<4
共有行動b
1.3±0.5
1.3±0.5
1.5±0.5
2.2±0.8
32.70**
1,2,3<<4
食態度・行動a
0.0±0.0
0.3±0.5
1.3±1.9
2.0±2.5
3.70*
共有行動b
0.0±0.0
0.0±0.0
0.6±1.0
0.9±1.5
1.83
(n=41) 食態度・行動a
(n=7)
自宅学習
a:食態度・行動については「課題の実行」を5点、「役割態度が変化し、かつ課題が明確になった」を4点、
「課題の明確化」を4点、 「役割態度の変化」を3点、「課題への気づき」を
2点、「食行動の役割の確認」を1点、「上記のことを何もしない」0点として算出した。
b:共有行動については「組織への関係づくり」を3点、「友人との共有」を2点、
「家族との共有」を1点、 「誰とも共有しない」0点として算出した。
c: 1;自宅学習1回目、2;自宅学習2回目、3;自宅学習3回目、4;自宅学習4回目
**:反復測定による一元配置分散分析によりP<0.01で有意な関連あり,*同様にp<0.05で有意な関連あり
<<:bonfferoni多重比較によりP<0.01で有意な関連あり,<:同様にP<0.05で有意な関連あり
表17- a 食態度・行動ステージと食生活における作業・意思決定との関連
ステージ 1
食態度・行動ステ-ジ 食行動の
ステージ 2
ステージ 3
ステージ 4
ステージ
気づき
役割態度
明確に
3&4
役割を確認 があった の変化あり
(n=41)
ステージ間差
課題を
複数ステージ
2ステージ
実行した
比較
大項目
中項目
小項目
した(n=5)
(n=4)
(n=9)
(n=6)
(n=7)
(n=10)
比較
2 a
F値・χ 値
属性
年齢
10-19
20-29
30-39
40-49
50-59
60-69
70-79
合計
2
1
1
0
1
0
0
5
1
2
0
1
0
0
0
4
3
3
1
1
1
0
0
9
1
1
0
2
0
2
0
6
0
2
3
0
0
1
1
7
1
4
1
3
1
0
0
10
35.287
平均
世帯人数
財産
教育
なった
ステージ 5
28.0±14.1 29.0±11.9 30.0±11.8 45.5±16.3 40.7±20.0 33.0±13.0
(人/世帯)
土地
ラジオ
学歴
あり
あり
全くいっていない
小学校中退
小学校卒業
在学中
合計
セミナー、等の研修経験あり
9.6±2.6
11.3±4.3
8.7±4.7
9.2±1.3
7.4±3.0
7.9±3.8
1.463
f
0.755
f
4
2
1
3
0
1
5
0
3
3
2
2
0
0
4
0
5
5
6
2
1
0
9
0
4
3
6
1
0
0
7
0
7
2
3
4
0
0
7
1
9
6
6
2
2
0
10
1
2
4
1
0
1
3
2
0
2
2
3
3
4
6
2
0
2
6
6
0
1
5
8
2
1
5
1
1
2
2
4
0
3
2
4
3
4
5
1
2
4
2
7
1
2
5
7
3
4
8
1
3
3
6
6
1
1
4
8
3
2.395
3.675
0.769
5.585
3.703
16.343
8.783
4.979
7.628
15.335
4.246
5.947
2.974
20.368
3.131
民芸品づくり
世帯の
PTA
社会参加 組合
養鶏プロジェクト
水道委員会
世帯で
農作業
担当する 鶏の世話
作業への 薪の入手
関わり
食物の購入
食物の交換
調理
する
する
する
する
する
する
する
する
する
する
する
世帯での 子供の教育・進学
意思決定 (学童のいない人除く)
への関わり 現金の管理
出稼ぎ
土地管理・栽培作物
する
2
5
1
2
3
4
2
0
0
1
3
0
する
する
する
0
0
1
0
1
1
2
1
0
2
0
1
2
0
2
1
1
0
4.149
3.563
10.855
する
0
2
1
3
2
2
7.628
1>3
12.776
1<2,4,3&4,5
(土地所有しない人除く)
食料の購入
食物摂取 食事回数
食材料種類数
食品群数
(数値/日)
(数値/日)
(数値/日)
主観的健康感
健康である
病気である
2.0±0.0
3.8±1.9
2.8±0.8
5
0
a:fのついている数値は一元配置分散分析によるF値,それ以外はχ 2値
*:χ 2検定(複数ステージ比較)によりp<0.05で有意な関連あり
<:χ 2検定(2ステージ比較)によりp<0.05で有意な関連あり
2.0±0.0
3.0±0.8
2.5±0.6
4
0
2.1±0.3
3.8±1.2
2.8±0.8
9
0
2.2±0.4
3.5±1.1
2.3±0.8
4
2
2.0±0.6
3.0±1.0
2.3±0.5
7
0
2.2±0.4
3.9±0.7
2.9±0.3
10
0
0.355
0.836
1.163
12.265*
f
f
f
表17-b 食態度・行動ステージと学習効果との関連
(n=41)
ステージ 1
食態度・行動ステ-ジ 食行動の
ステージ 2
ステージ 3
ステージ 4
ステージ
ステージ 5
気づき
役割態度
明確に
3&4
課題を
複数ステージ
2ステージ
実行した
比較
F値・χ 2値a
比較
役割を確認 があった の変化あり
大項目
中項目
小項目
学習会参加回数
共有
行動
食事
づくり
Stage3 組織への関係づくり
Stage2 近所の友人と共有
Stage1 家族と共有
学んだことを生かしてワチョをつくった
食生活チェックマップを活用した
した(n=5)
2.2±1.3
0
2
5
3
1
なった
(n=4)
(n=9)
(n=6)
(n=7)
(n=10)
2.0±1.2
2.7±0.7
2.8±1.0
2.4±1.0
2.6±1.0
1
1
3
3
0
1
5
8
6
1
4
6
5
3
2
5
5
7
7
6
5
8
10
9
6
ステージ間差
1.400
*
11.999
6.371
f
1<4,5 3<4,5
2<4
4.546
6.567
*
16.611
計画力
4<3&4
1<4 3<3&4,
3<<5 4<3&4
食材料種類数が増加
食品群数が増加
3
2
a:fのついている数値は一元配置分散分析によるF値,それ以外はχ 2値
*:χ 2検定(複数ステージ比較)によりp<0.05で有意な関連あり
<:χ 2検定(2ステージ比較)によりp<0.05で有意な関連あり
<<:χ 2検定(2ステージ比較)によりp<0.01で有意な関連あり
3
1
6
3
2
1
6
4
3
2
7.540
3&4>5
3.604
3<5
表18 食態度・行動の変化と共有行動の広がりの変化と食事づくり計画力との相関
(n=41)
食態度・行動の変化 ステージ 1
ステージ 2
食行動の役割 気づきが
項 目
を確認した
あった
ステージ 3
役割態度
が変化した
ステージ 4
明確に
なった
数値:単相関係数
ステージ 3かつ
ステージ 4
ステージ 5
実行した
共有
組織への関係づくり
0.438**
0.259
0.481**
0.327*
0.128
行動
近所の友人との共有
0.244
0.198
0.272
0.156
0.196
家族との共有
0.211
0.261
0.101
0.213
0.160
の変化
食事
入手食物種類数の増加
-0.180
-0.163
-0.175
-0.042
-0.299
づくり
献立の食品群数の増加
0.014
-0.003
0.036
0.135
-0.143
学んだワチョをつくった
0.345*
0.414**
0.313*
0.190
食生活チェックマップの活用
0.330*
0.460**
0.534**
0.244
計画力
0.414
0.481**
表19 食態度・行動、共有行動、食事づくり計画力の総合効果
(n=48) 数値:因果係数
食態度・行動の変化
(1)
食態度・
行動の
変化
(1) 課題を実行した
(2) 課題が明確に、かつ役割態度が変化した
食事づくり計画力
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
(8)
(9)
(10)
(11)
(12)
0.110
0.103
0.491
0.521
0.624
0.218
0.359
0.525
0.447
0.866
0.063
0.109
0.019
0.031
0.069
0.033
0.113
0.013
0.021
0.046
0.022
0.077
0.205
0.245
0.065
0.078
0.027
0.032
0.101
0.233
0.394
0.605
0.483
0.393
0.124
0.051
0.574
0.347
0.242
0.477
0.707
-0.057 -0.084
0.675
0.256
0.155
0.205
0.307
0.748
0.446 -0.025 -0.037
0.317
0.130
0.410
(3) 課題が明確になった
(4) 役割態度が変化した
共有行動の広がり
(5) 課題への気づきがあった
0.175
(6) 役割内・外の食行動を確認した
共有
行動の
広がり
(7) 組織への関係づくり
(8) 近所の友人との共有
(9) 家族との共有
食事づくり (10) 食生活チェックマップの活用
計画力 (11) 食品群数の増加
の向上 (12) 学んだワチョづくり
表20 役割態度の質的変化
(n=41)
発言内容の
カテゴリー
学習前
態度
学習後
前後比較
人数
%
人数
%
役割について
何も考えない
14
34.1
8
19.5
考えるか
考える
27
65.9
33
80.5
何を考えるか
何もできない
0
0.0
2
4.9
27
65.9
31
75.6
2
4.9
1
2.4
25
61.0
30
73.2
1
2.4
2
4.9
24
58.5
28
68.3
できることがある
何をするか
わからない
わかる
どんな気持ちで
しかたない
するか
する
2
χ 値
p値
1.492
0.068
0.965
0.167
1.176
0.120
0.921
0.178
表21 役割態度の質的変化と明確化との関係
発言内容
学習前
(n=24)
学習後
(n=28)
抽象的 より具体的 抽象的 より具体的
概念
献立作成
材料入手
私は重要な仕事をしている
2
4
家族の健康に役立つ
1
家族の食事管理をする
献立を考える
おいしい料理にする
食べるシーンをイメージする
入手できる材料について考える
家にある在庫材料を確認する
5
必要な材料を入手する
1
3
1
1
1
2
3
1
3
入手可能な食物の種類を増やす
1
食物のコンビネーションを考える
調理
摂食
その他
3食品群そろえられる材料を考える
3
3食品群に不足している材料の栽培を考える
調理する
生煮えでないように調理することを考える
家族人数の適量の材料を調理する
短時間で調理できるようにする
皆で一緒に食事することを心がける
合計
1
17
神に感謝している
1
5
3
1
2
発言内容について,網掛けのあるものはより明確であること,ないものは抽象的であることを示す
11
1
1
13
写真1 共同作業場での学習に参加した女性たちの活動
学習ステップ
共同作業場での学習
自宅での学習
1. 自分や家族の
食生活や栄養
問題を振り返
る。
2. 栄養問題を
改善するための
情報を入手したり
技術を習得する。
民芸品をつくりながら食生活や栄養問題について考える。
自宅から持ち寄った食材料でワチョづくり実習を行う。
ワチョづくり実習に持参する食材料(上)を選択する。
自分や家族の食生活の絵や写真を仲間と共有、比較する。
3. 入手した情報や
習得した技術を
生かしたワチョを
調理する。
4. 栄養問題を
改善するための
自分の課題に
気づく。
参加者全員の絵や写真で食生活チェックマップを作成する。
食生活チェックマップを自宅や地域で活用する。
食生活チェックマップを修正し、栄養問題の改善のための自分
の課題について考え、共有する。
35
35
4⑬
5⑭
⑩
26
26
32
38
32.472
4.441
3⑱
34
3
24
36
39
25
36
25
39
25
32
40
3529
35
⑬
39
⑩
⑩
33⑳
3②
39家族との共有
38
22
23
23
21
.507
新ネットワー
.496⑬⑮
⑮.456
.387
.422
.579
①
.387
.409
.342
①
⑤
.387
⑬
②
⑨
.346
.358
④
役割内・外の
⑲
⑩
⑭
.437
.440
③
.469
④
.344
⑩
課題への
⑭
⑦
⑨
⑪
⑪
⑫
.698
⑫
家族との共有
.344
.743
③
①
⑨
⑮⑫
⑱⑭
明確化(21)
⑬
.567
⑦23
⑳
⑲40
.516
.543
.344
.528
.328
家族・近所
.288
.327 家族・近所
.3
.348
役割意識変化
. .355
.345
.481
.365
既存ネット
.611
.414
.586
課題実行
既存ネット
.356
.460
.478
学んだ
ワチョづくり
食品群数
の増加
食生活チェック
マップの活用
役割内・外
の食行動
課題への
気づき
役割態度
の変化
課題の明確化
役割態度の変化
かつ
課題の明確化
課題の実行
家族と
の共有
近所の友人
組織への
付表1 パス解析のモデル
学んだことを
生かした
ワチョづくり
食事づくり計画力
食品群種類数
の増加
栄養
学習
食態度・行動の
変化
食生活チェック
マップの活用
ステージ 3
ステージ 1
ステージ 2
役割内・外の
食行動の確認
課題への気づき
役割態度の変化
ステージ 5
課題の実行
ステージ 4
課題の明確化
共有行動の
広がり
stage 1
家族との
共有
stage 2
近所の友人
との共有
stage 3
組織への
関係づくり
ジェンダー構造の変化の測定項目
明らかになった経路
線の太さはパスダイアグラム
の因果係数の大きさに基づく
検討必要のある経路
付表2
ジェンダ-視点を導入した栄養教育の評価の枠組み
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