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ゴルフボールのディンプルの役割について
ゴルフボールのディンプルの役割について 1 班 池澤 雄己 1.はじめに ゴルフボールの形を見たことはあるだろうか.ゴ ルフボールには小さなくぼみがたくさん存在する. 表 面 に 凸 凹 が つ い て い る 理 由 は ,19 世 紀 ま で 遡 る.19 世紀のイギリスではゴルフが大流行していて 皆がゴルフに取り組んでいた.その際、何故かゴルフ ボールは使い込んでいくうちに飛ぶようになってい った.このため,ゴルフボールの表面に何か傷があっ たほうが,飛距離が伸びると考えられた.一説にはデ ィンプルのあるものと無いものでは飛距離が 2 倍以 上違うといわれている.ディンプルの有無の差には 空気抵抗と揚力の 2 つが関係していると考えられて いる.そこで,本研究では,ディンプルの有る,無し で飛距離にどのように差が出てくるのかを実験的に 明らかにすることを目的とする. 2.ディンプルの役割 ディンプルの有無で飛距離に差が出てくる理由に はゴルフボールの周りの流れが大きくかかわってい る.ゴルフボールが受ける空気抵抗は圧力抵抗と粘 性抵抗に分けられる.ゴルフボールが空気中を飛ぶ とき,空気はゴルフボールにそって流れるが,後方 では境界層はく離という現象がおきて、流れがボー ルから離れる(3).流れが剥離すると,ホール後方の 圧力は低くなる. 場合,流れはボール表面を層流のままで流れ,真ん 中に付近で剥離する.そうすると,ボールの前方部分 は圧力が高いのに対して,ボールの後方部分は圧力 が低くなり前から後ろへ圧力がかかる.これにより, 飛距離は半減する.図 2 のようにボールにディンプ ル有る場合,流れは乱流となり,はく離位置がディン プル無と比べて後ろにずれる.このためボールの前 方部分と後方部分の圧力差は,ディンプルのない場 合に比べて小さくなり,飛距離は伸びる. また,揚力も影響する. 図 3 に揚力が発生を模式 的に示す.球が回転しながら,流体中を一定速度で移 動した場合,球表面に接する流体が粘性によって回 転運動に引きずられ,回転速度及び粘性に相応する 循環一様流に対して垂直の力が発生する(4).ゴルフ ボールがバックスピン回転している場合,ボールの 下側の方はバックスピンと空気の流れが速度を相殺 し合って,圧力が高くなる.逆にボールの上側はボー ルの回転と空気の流れが合わさって速くなり,圧力 が低くなる.ボールにディンプルがあると臨界レイ ノルズ数が低下し,ボール表面の空気が乱流になる (2) .そのため上で述べたマグヌス効果を維持するこ とができ(4),より大きな揚力を発生する. 図 1 ディンプル無しの場合の抵抗力 図 3 揚力が発生するメカニズム 図 2 ディンプル有りの場合の抵抗力 図 1 と図 2 にディンプル無と有の時の流れを模式 的に示す.図 1 のようにディンプルの無いボールの 3.実験 図 4 に実験装置を示す.ディンプルの有無で飛距 離の差を調べるために,実際にディンプルの有るゴ ルフボールとゴルフボールの表面を削って作成した ディンプルの無いボールを準備し,図 4 に示す振り 子装置で打つ. 図 4 実験装置 ンプルを削った影響は無視できるほど小さい. プ ロ ゴ ル フ ァ ー の 打 つ ボ ー ル の 速 度 は お よ そ 70m/s であるのに対して,今回の実験では,ディンプ ル有では 1.82m/s,ディンプル無では 1.33m/s 程度で あり,きわめて小さい.ディンプルは,物体のレイノ ルズ数を下げる.よって,低い速度で乱流が発生する. 上で述べた通り乱流は気流の物体表面からの剥離を 防ぎ,マグヌス効果を維持する. 𝑈×𝐿 (1) 𝜈 Re レイノルズ数,U 代表速さ(m/s),L 代表長さ(m) ν : 動 粘 性 係 数 ‥ 空 気 ( 1 気 圧 、 20 ℃ ) : 1.51x10-5(m2/s) (1) 式 (1) よ り , ゴ ル フ ァ ー の レ イ ノ ル ズ 数 は 約 200000 程度であるが,本実験では,約 5000 程度で あった.このことは,ゴルファーのボールの周りの流 れはより乱流になっていると思われる.したがっ て,2 章で述べたようにゴルファーのボールの剥離 点はより後方に移り,空気抵抗が減少して,飛距離の 差が本実験よりも大きくなると思われる. 次の理由として,今回の実験では実際と同じよう にボールにバックスピンをかけるため,打つ部分に 角度をつけたが,打つ部分の表面が滑らかだったた めにうまくボールが引っかからずにバックスピンが かからなかったのではないかと考えられる. 5.結論 ディンプル有のボールはディンプル無のボールよ りも飛距離が伸びる.この原因はディンプルがある ことにより,空気抵抗が減少し,揚力が増加するため だと思われる. 参考文献 1) レイノルズ数 経済産業省 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyou jun_gijutsu/golf_ball/page137.htm (2014/12/20 アクセス) 2) 揚力係数 経済産業省 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyou jun_gijutsu/golf_ball/page135.htm (2014/12/20 アクセス) 3) ディンプルの効用 経済産業 http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyou jun_gijutsu/golf_ball/page127.htm (2014/12/20 アクセス) 4) マグヌス効果 Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3% 82%B0%E3%83%8C%E3%82%B9%E5%8A%B9%E6%9E%9C (2014/12/20 アクセス) Re= 図 5 実験装置(写真) ボールにバックスピンの回転が加わるように打つ 部分に図 4 に示すように,垂線から約 8 度の角度を つけた打つ力が一定に保たれるように,振り子を地 面と平行になるように持ち上げてから,自由落下で 振り下ろした.この時自由落下するので,振り子の材 質は重いものにするために,アルミを使用した. ボールは同じ種類のボールを 2 個用意し,ひとつ のボールの表面を削ってディンプルを無くした.使 用したボールの寸法,重量等を表 1 に示す.直径, 重要は,ディンプルのあるなしでほとんど違わない ことがわかる. 表 1 ディンプル有無のデータ ディンプル有 ディンプル無 直径(㎝) 4.30 4.28 重量(g) 48.9 48.5 ディンプル数 341 0 4.結果と考察 表 2 に,実験結果を示す. 表 2 ディンプル有無による飛距離の違い ディンプル有 ディンプル無 飛距離(m) 3.64 2.40 表 2 により明らかなように,ディンプル有の場合, とディンプル無の場合と比べると,飛距離が 1.5 倍 程度大きくなった.人がドライバーで打つ場合,ディ ンプル有のボールを打つと,ディンプル無のボール より 2 倍以上距離が出るが本研究では,1.5 倍程度 にとどまった. まず,ボールを削ったことにより影響があったか どうかについて考えると,表 1 に示すように,ディ