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次世代シークエンシング検査の認証評価

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次世代シークエンシング検査の認証評価
『CAP TODAY』は米国病理学会(CAP)が月 1 回発行している臨床検査医学の専門誌で、70 ヵ国以上において約
40,000 人の臨床検査にかかわる専門家に愛読されています。ここでは『CAP TODAY』に掲載された記事の中から
厳選した記事を要約・翻訳して提供していきます。
◆ 一部、日本国内の薬剤・試薬・機器等の承認状況と異なる内容もありますことをご了承ください。
◆ 本文中に掲載されている写真・イラストはイメージです。
次世代シークエンシング検査の認証評価
米国病理学会がリード
Anne Paxton(summarized by staff writer)
[CAP TODAY August 2012]
次世代シークエンシングの
認証評価基準が、ついに誕生
加わった作業部会では、① あらゆるシークエ
ンシング法に適用可能な妥当性を持たせる、②
単一データを扱う検査よりも複数データが関
少なくとも数年間は基準としての使用に耐える
わる検査は複雑になる。しかし、DNA シーク
ものにする、③ NGS 関連技術を取り入れる際
エンシングの複雑さはその比ではない。
「次世
の妨げとならないよう規定を厳しくしすぎな
代シークエンシング(以下、NGS)
」を行う臨
い、の 3 つの目標を掲げてチェックリスト策
床検査室が増え続ける今、検査室認定担当者は
定に取り組んだという。
NGS の品質管理という課題にどう取り組めば良
米国病理学会(以下、CAP)は昨年、この問
ウェット解析に関する
認定評価のチェック項目
いに答えるべく作業部会を発足させ、CAP 検査
NGS のための認証評価チェック項目には、
室認定プログラム・分子病理学チェックリスト
独特のものがいくつかある。
において、NGS に特化した新セクションを加え
例えば、通常の認定評価でも不可欠とされる
るための議論を続けてきた。そして 2012 年 7
妥当性確認。NGS 認証評価では、この重要度
月 31 日、国内初の NGS 臨床検査室向け認証評
がさらに高くなっている。
「ソフトウェアのアッ
価基準が制定、発効されたのである。
プデート、修正モジュールのダウンロード、新
今回の CAP の動きの背景には、臨床診断に
しいソフトウェアの導入などで、パラメータを
NGS が使われるケースが増えてきている。
変更した時には、偽陽性率が上がるということ
「NGS は研究用ツールから臨床検査用のツー
のないよう検査工程の妥当性確認を行わなくて
ルへと変化を遂げました。専門機関による基準
はなりません」とアジズ博士は指摘する。
やガイダンスが求められていたのです」と話す
また、シークエンサー、シークエンシング・
カール・V・ヴォルカーディング博士。博士も
ケミストリー、試薬、キットのアップグレード
いのだろうか。
026
とモニタリングについての指針策定も求められ
(MOL.34960)
。これらはエラーの原因となり
ている(MOL.34948)。アジズ博士はアップグ
得るからだ。
「特定の疾患を診断するために抽
レードの重要性を指摘し、
「採用している方法
出した遺伝子の中に含まれる偽遺伝子を見逃さ
が陳腐化していないかを常に確認しておく必要
ず、しっかりと除外しなくてはなりません。見
があります。更新、進化は月単位。NGS を行
落としたまま分析を行うと、誤った判断に繋が
う検査室には、常にアップデートに目を光らせ
ります」とアジズ博士は指摘する。
ておく義務があると言ってもいいでしょう」と
データ量が膨大となる NGS では、データ保
言う。
管も課題の一つだ。
「保管期間、保管形態、廃
さらに、遺伝子の変異検出にあたり、別法で
棄可能とする時期など、私たちが直接規定する
シークエンシングエラー率を測定することも求
ことはありませんが、それぞれの検査室でしっ
められる(MOL.34936)
。
「イオントレント社、
かりとした方針を定める必要があります」とア
イルミナ社、コンプリート・ゲノミクス社、ど
ジズ博士。データ記憶容量の不足に悩み、クラ
の次世代シークエンサーにも特定の偽陽性バイ
ウドコンピューティングサービスの使用を検討
アスがあります。シークエンサーが違うと結果
する検査室も多いが、クラウドサービスを使っ
も違ってくる可能性があります」とアジズ博士
たデータ保管は機密性の面で問題がある。解決
は説明する。
「ですから、次世代シークエンサー
の待たれる問題ではあるが、チェックリストで
を使うならサンガー法でも解析をする、イルミ
は、シークエンスデータの転送と保管に際して
ナとイオントレント等 2 種類の次世代シークエ
の機密性保持に関する方針を明確化するよう求
ンサーを併用するなどして、確認をしなくては
めるのみに留めている。
なりません」
。
NGS による臨床検査の
認証評価、今後の見通しは
バイオインフォマティックス
解析の認証評価チェック項目は
NGS を行う検査室の正確な数は明らかになっ
NGS 認証評価においてはバイオインフォマ
ていないが、アジズ博士は、臨床検査として
ティックス解析工程も非常に重要であり、また
NGS を実施している検査室は 40 ∼ 50 程度で
そこに NGS 特有の難しさもある。
はないかとし、「今後、診断医学の大きな一角
今回発効したチェックリストでは、バイオイ
を占めるようになるでしょう」と指摘する。
ンフォマティクス解析工程およびパイプライン
「NGS は急速に進化していますし、認証審査
の記録を義務づける(MOL.34958)。対象とな
官や検査室からは実際にチェックリストを運用
るのは、全てのアルゴリズム、ソフトウェア、
してみての修正や追加の希望が次第に上がって
スクリプト、データベースパッケージ、リファ
くるでしょう」と話すアジズ博士。CAP の NGS
レンスシークエンス、データベースだ。
作業部会は今後も議論を継続、年 1 回程度の
さらに、ターゲットとする遺伝子と高い類
ペースでチェックリストの更新をしていくこと
似性を持つ偽遺伝子や他シークエンシングに
になりそうだ。
よる干渉の測定・記録も義務づけられている
027
検体受付け不可基準
検査プロセスや患者に与える影響
Anne Paxton(summarized by staff writer)
[CAP TODAY July 2012]
検体受付け不可の実態
した。評価項目として、以下のデータをとった。
検査室に不適切あるいは不十分な検体が届い
1.
検体処理の遅延時間の中央値
た場合、どのように処理されているのだろうか。
2.
検体が除外された割合
実際には、検査室が不適切な検体を受付け不可
3.
検査室が受付けなかった検体の除外率
にした場合、最終的に検査が実施されないこと
4.
検査室での除外後に検査依頼者が中止した率
があるという。検体が除外された場合、患者に
どのような影響が及ぶのか? 最近実施された
結果として、2,054,702 個の検体のうち 4,783
CAP の Q-PROBE 調査「除外検体による臨床的
個の除外検体が確認された。除外された理由の
影響」でこの問題を取り上げている。
92.4%は「検体が不適切/不十分」で、残りの
この調査では、参加施設 78 カ所において血
7.6%は「ラベリングが不適切」だった。そして
液検体および尿検体の 0.2%が除外され、それ
検体が除外されたことにより、検体処理に 65
により検査結果が報告されるまでに平均約 1
分(中央値)の遅延が生じたという。
時間の遅れが生じたことが判明した。また、病
院や検査室による検体受付け不可の方法にも
様々あることがわかった。
「私たちは日常的に
028
患者に及ぶ「臨床的影響」
除外検体を目にしているので、それが臨床的に
この調査の焦点のひとつは除外検体の臨床的
影響を及ぼすことはもちろん知っている、
また、
影響だった。「患者にとって、再度採血を受け
結果が得られるまでにかなりの遅延が生じてし
ることは気持ちのよいことではありません。ま
まうことも理解しています。ただ、この調査に
た血腫のような合併症を起こすことや、全身状
よって過去にはできなかった実態の定量化が可
態が悪い患者では採血後に輸血が必要になるこ
能になり、また予想していなかった新たな知見
ともあります」とカーチャー博士は指摘する。
も得られました」とカーチャー博士(ジョージ・
同様に、尿検体の再採取もリスクを伴う。理由
ワシントン大学医療センター病理学教授、臨床
のひとつは、患者が再採取用の尿をすぐに提出
検査部長)は言う。
できないことで、またカテーテル挿入の必要な
この調査では、よく知られている Q-PROBE
患者にとっては、カテーテルが挿入されるたび
調査の研究デザインを利用した。参加者は生化
に、細菌が侵入する可能性があるという。
学的検査室または血液学的検査室に提出された
検体の再採取を行えば、検査結果が遅れるこ
血液検体および尿検体を 6 週間または 80 個の
とは明らかだ。この調査では、非緊急検査の遅
除外検体が確認されるまでの期間に渡って観察
延中央値は約 90 分で、緊急検査の遅延中央値
が約 60 分であることがわかったという。緊急
査の中止に至ることもあるそうだ。
検査の結果報告の遅延は臨床的判断が遅れるこ
とを意味し、場合によっては、ヘマトクリット
値が下がって輸血が必要になることもあるだろ
検体再採取か、
ラベルの貼り替えか
研究者がさらに驚いたことは、多数の検査室
う。
で日常的にラベルが不適切な検体のラベル貼
除外された検体が
再提出されない?
り替えを許容していることだった。参加施設
の 45%が血液検体について、37%が尿検体に
ひとつの問題が研究者たちを驚かせた。それ
ついて、ラベル貼り替えをしていたという。ま
は検査が中止された検体の数である。検査室が
た全体の 59%が不適切なラベルの血液検体の
適正な検体やラベルを張り替えた検体を要請し
ラベル張り替えを許容し、35%がラベルのな
なかったことや、臨床スタッフが検査室の要請
い血液検体へのラベル貼りを許容していた。ラ
に従わなかったことにより、除外された検体の
ベル貼り替えはこれまでもずっと非難されてき
うち 21%の検査が中止されていたという。
たのだが、この調査は、それがいまだに慣習と
カーチャー博士によれば、この中止率は非緊
して残っていることを証明している。さらに驚
急検査のほうが高く、検査室から臨床スタッフ
くべきことにラベルの貼り替えのあった検体の
に検体が除外されたことを伝えても、検体が再
39%が検体取り違えにつながっていたことが
提出されないことが少なくないそうだ。臨床医
わかったという
は、血液検体であれば、次回の採血日まで待と
カーチャー博士によれば、実際には医療従事
うと考えるのかもしれず、尿検体についても患
者は特定の状況下では検査室でのラベルの貼り
者がすぐには尿検体を提供することはできない
替えも許容されるべきだと考えており、ラベル
と判断したのか、あるいは臨床医が患者へのカ
貼り替えを全面的に禁止することには抵抗があ
テーテル再挿入を望まなかったのだろうと考え
るようだ。例えば脳脊髄液や脳生検の検体採取
ているという。
は合併症のリスクもあるため、再採取は簡単に
ユタ大学医学部病理学教授のクリスト
はいかないだろう。検査室も臨床医に時間を割
ファー・レーマン医師によると、形通りの検査
いてもらい患者へのリスクもある再採取を要求
オーダーの仕方が検査の中止につながっている
することに抵抗があるかもしれない。そのよう
可能性があるという。患者が入院した際に、臨
なラベル貼り替えのリスク・ベネフィットを比
床医は毎朝血液検査をするようにオーダーする
較検討している検査室もあるが、採取日時の間
ことが多く、翌日も同じ患者の検査オーダーを
違いや名前のスペル・ミスの訂正は良しとする
しなければならないとは考えないだろう。そし
べきか、あるいはその場合でも臨床スタッフに
て、それらの検査は必須のものではないことも
再採取させるか、どちらにするかは施設によっ
多いため、臨床医は「すぐに再採取しなくても
てまちまちのようだ。
よい」というような判断を下して、結果的に検
029
新ガイドライン
ヒト・パピローマ・ウイルス検査が活性化へ
William Check, PhD(summarized by staff writer)
[CAP Feature Story July 2012]
新ガイドラインがもたらす変化
ガイドラインによって検診間隔や検診の仕方
が変わる。ワクチンを接種し、類型別 HPV 検
90%以上の子宮頸がんの原因は、持続的高
査を多用することで、検診間隔が長くなる。検
リスク遺伝子型 hrHPV 感染である。子宮頸部
診のやり過ぎという問題も出てくる。逆説的な
検体に、このウイルスの検出感度の高い臨床検
ことだが、従来の検査が良すぎたために検診技
査が開発されており、米国では既に4つの市販
術の向上が必要になっている。
hrHPV 検査が承認されている。公衆衛生当局
次に、新ガイドラインによる検診の重要点は
者や細胞病理学者やがんの専門医は、子宮頸が
以下の4点である。
ん検診に hrHPV 検査を併用するように臨床医
に情報を与えてきた。
1.
毎年検診が必要な年齢層はない。
米国がん協会、米国臨床病理学会(CAP)
、
2.
21 歳未満は検診を受けるべきではない。
米国コルポスコピー子宮頸部病理学会後援の下
3.
21 歳∼ 29 歳では、細胞診のみによる3
年間隔の検診。
の委員会が今年3月に新ガイドラインを発表し
た。これによって状況が大きく変わることにな
4.
66 歳以上は、過去の検診で陰性の根拠が
るだろう。
あったか、最近 20 年以内に CIN2 以上の
ヴァージニア大学病理学・臨床産婦人科教授
既往がない人は検診を受けるべきではな
で細胞病理学者のストーラー氏によると、以下
い。
4つの要因によって、子宮頸がん検診に hrHPV
検査を併用しようとする動きが大きくなって
新ガイドラインが従来のものと決定的に異な
いったという。
るのは 30 歳∼ 65 歳の年齢層であり、初めて、
細胞診と HPV 検査の併用が「望ましい」と判
1.
2.
2002 年の前ガイドライン公表後、hrHPV
断され、さらに細胞診だけも「容認」された。
検査と細胞学を比較した大規模な無作為化
また、検診間隔は細胞診だけの3年に比べて、
臨床試験が実施。
併用の場合は 5 年と長くなった。
米国食品医薬品局(FDA)の承認後、hrHPV
検査が実施。
欧州諸国のイニシアティブ
3.
2006 年に HPV ワクチンが導入。
4.
hrHPV 検査の有効性を理解する人が医師
ストーラー委員によると、大規模なヨーロッ
へ検査採用を促す。
パの無作為化試験がこれらの変化の引き金と
なった。委員会が「重要」と判断した3つの試
030
験のデータでは、細胞診だけの場合と比較して、
は細胞診よりも特異度が低くなり、偽陽性率が
併用すると初回検診で CIN3 の検出が 20%∼
高くなるため、多数の女性が膣鏡診に照会され
30%上がった。併用検診では、2回目の検診
てしまうという弊害が生じる。その弊害を乗り
で検出される浸潤性のがんが減った。
越える方法として、hrHPV 遺伝子型の持続性
子宮がん検診を受ける女性の 4%∼ 5%は
検査や子宮頸がん発症に不可欠の E6/E7 HPV
hrHPV ポジティブだが細胞診ネガティブであ
遺伝子発現を測定する検査が検討されている。
り、新ガイドラインは膣鏡診ではなく次のいず
現時点で、hrHPV を初期診療検査にすべき
れかの重症度判定検査を推奨する。
ではないという意見もある。欧州と異なり、米
国の検診は場当たり的で、中央集権的な経過観
1.
2.
12 か月後に再度併用検査を受け、その時点
察登録制度もない。しかし、hrHPV には潜在
でポジティブであれば膣鏡診を推奨する。
性があり、特異度を上げる方法を考える必要が
16 型と 18 型の HPV 遺伝子型決定検査を
ある。
行い、どちらかでポジティブとなれば膣鏡
臨床医に新ガイドラインを採用してもらうこ
診を推奨する。
とは最初のステップに過ぎない。ワクチン接種
率を高め、hrHPV を初期診療検査にするのが
併用検査を用いると初回検診で膣鏡診に回さ
次のステップだ。だが、子宮頸がん患者の大部
れる数が多くなるが、5 年の間隔をあけること
分を占める最近検査をしていない女性はどうな
で、理想的な 2%程度の照会に下がる。欧州諸
るのか。アフリカと南アメリカの多くの国やロ
国は、細胞診と hrHPV 検査併用の評価と実践
シアでは子宮頸がん発症率が非常に高い。今後、
でイニシアティブをとっているように、次のス
取り組むべき課題は多い。
テップとして hrHPV 検査を単独で子宮頸がん
検診の初期診療検査にしようとしている。
米国と hrHPV 検査
米国新ガイドラインでは、hrHPV 検査単独で
の検診は推奨されていない。しかし、hrHPV 検
査は偽陰性率が非常に低いので、初期診療検査
に適している。さらに、この検査は細胞診より
も標準化しやすいので、開発途上国で特に有益
だ。
しかし、hrHPV を初期診療検査にするといっ
ても、それだけでよいというのではなく、他の
適切な重症度判定検査と併用すべきだ。hrHPV
医療と検査機器試薬 34(2),2011 より引用
031
検体のラベリング・エラー
エラーを減少させるためには?
Mariann Stephens(summarized by staff writer)
[CAP TODAY July 2012]
州単位での協同の取り組み
ることを模索していた。
「その狙いは様々な異
なる施設の共同フォーラムを提供することであ
ペンシルベニア州にある、ヘルス・システム
り、それぞれ所属する施設を改善するツールを
の臨床検査部副部長ウィルカーソン氏は、デト
持ち帰れるようにすることでした。また、相互
ロイトのヘルス・システムで 4 月にコンパスグ
協力ができるような体制づくりも視野に入れて
ループ(20 の非営利統合であるデリバリー・
いました」とウィルカーソン氏は話す。
ネットワーク・ヘルスケアシステムの検査室リー
は、ガイシンガー・ワイオミングバレー(以下、
様々な部署のスタッフを
巻き込む
GWV)
・メディカルセンターが、患者の安全協
各医療施設は、検査、患者安全、採血、リス
同活動に参加して学んだことを報告し、メンバー
クマネジメント、コンプライアンスなど様々な
はそのベストプラクティスを共有したという。
部署から選抜したメンバーでチームを結成し
ペンシルベニアは、医療施設に対して有害事
た。そして、報告可能なエラーを構成すると考
象やインシデントの報告を要求した米国で最初
えられる事象(ラベルがない、不完全なラベル、
の州であり、報告の受け入れ先として、またシ
患者名がない、不正確な ID、スペルミス)を個々
ステム改善の研究・教育機関として、ペンシル
に洗い出した。
ベニア患者安全局を設立した。患者安全局で
2011 年 6 月に発表された「ペンシルベニア
は、集計されたデータを分析し、検体ラベリン
患者安全報告」は、血液検体のラベリング・エ
グと患者識別に関連した様々な知見を見出し
ラーに関連した要因を分析している。エラーに
た。2009 年 4 月、患者安全局は医療施設に対
関連する要因のうち頻度が最も高かったのは
して、血液検体のラベリング・エラーの数を減
「手順に従っていないこと」で、
群を抜いていた。
らすための「18 ヶ月戦略」への参加を呼びか
2位は「注意散漫と中断」
、3位は「想定外の
けた。GWV・メディカルセンターは参加した
仕事量の増加」だった。全体で 485 の事象が
9 施設のひとつで、その ICU でのラベリング・
報告され、介入前のエラー発生率は 1,000 の機
エラーは参加期間中に従来の 81%まで低下し
会に対して 0.1 ∼ 4.1 だった一方で、介入後の
た。参加施設全体では、エラーの平均減少率は
発生率は 0.0 ∼ 1.3 に減少したという。
ダーの団体)による会合を開いた。そこで同氏
37%に達した。
患者安全局は、様々な環境で「何が役に立ち、
何が役に立たないか」の理解を深めるために、
種々の医療施設を巻き込んだグループを構築す
032
エラーの原因を把握するために
GWV のサービス改善コーディネーターの
ブース技師は、チームに検査室、看護師に加え、
きたそうだ。
「検査室に何らかの影響を与える
呼吸器ケアチームのスタッフを参加させようと
かどうかにかかわらず、患者に影響を与えるこ
したそうだ。同技師によれば、第一線のスタッ
とになるため、何らかの是正をすることが必要
フをチームに加えることが大事で、彼らからの
でした。私たちは今、他の部署とコミュニケー
インプットが非常に重要だという。
ションを交わしていくことが患者にとってベス
「モデルケースとして小規模でのスタートが
トであることを知っています。ある問題が検査
狙いだった」と同技師は話す。そのため彼らは
室のサービスに影響を与えるなら、私たちには
25 床の ICU を選んだ。時と場合により検査技
問題解決の一翼を担う義務があるのです」と同
師、看護師、呼吸器ケアチームのスタッフが血
技師は話している。
液検体を採取していた。つまり、エラーの数で
現在では、看護師長、医務部長、業務責任者
はなく検体採取者の多様性を基準に ICU が選
は、ベッドサイドで使用する携帯スキャナーや
ばれたということだ。
印刷装置の価値と、適切な検体ラベリングや患
なんらかの事象が起こったとき、1 人または
者安全との関係を理解している。ブース技師は、
2 人からなるチームは、ひな型を利用してエ
今後は血液検体だけでなくすべての検体採取で
ラー後の聞き取り調査を速やかに行い、起こっ
の標準化が課題になると見通している。
たこと、起こると想定されることの過程を継続
して行うようにしたそうだ。そして、起こらな
かったのはなぜか、いつ中断されたか、何が変
わったか、手順を知っていたか、いつも手順に
従っていたか、手順に従うことを妨げたものは
help...
何か、などを詳細に聴き取るようにしたという。
検査室の文化と職務の変革
協同活動は終わったが、検査スタッフと看護
スタッフは、常に各スタッフが解決の一翼を担
うということを念頭に、ラベリングや ID エラー
のための聞き取り調査ツールを使い続けてい
る。
「私たちスタッフは多くのことを学びました」
とブース技師は言う。かつては検査室外で生じ
たエラーに対して「私たちはそのことに対して
何もできません」と言っていた部分もあったが、
検査室としての文化と職務を変えるようにして
033
遺伝子特許
プロメテウス判決から考える
Anne Paxton(summarized by staff writer)
[CAP TODAY June 2012]
プロメテウス社の特許権、
却下される
2012 年 3 月 20 日、最高裁は「プロメテウ
ス社 VS メイヨー・メディカル・ラボラトリー
た初めてのケースと言えるでしょう。」と語る。
「遺伝子特許」係争への影響
事件」の上告審で、医療現場にとっては福音に、
患者の状態を診察し薬剤の至適な投与量を決
特許法関係者やバイオテクノロジー産業界に
定するという、個別化医療にも関わるべき「プ
とっては大きな衝撃となりうる判決を下したの
ロメテウス判決」は、今後、遺伝子特許に関す
だった。
る司法判断にも影響を及ぼしそうだ。分子病理
この裁判は、消化器疾患患者におけるチオプ
学協会のロジャー・D・クレイン法学・医学博
リン薬代謝物の検出手法に関する特許を 2 件
士は、
遺伝子特許の中でも特に「診断法特許」
(遺
有するプロメテウスラボラトリーズ社が、同代
伝的変異と診断、予後、治療への反応等の臨床
謝物の検査法を独自に開発・運用したメイヨー・
表現の相関関係に関する所有権についての特許)
メディカル・ラボラトリーズを特許権侵害で訴
の見直しが進むのではないかと指摘する。急性
えたもの。最高裁は、「自然法則および自然法
骨髄性白血病と FLT3/ITD 変異、JAK2V617F 突
則を明らかにし利用するその工程は特許対象と
然変異と骨髄増殖性新生物、肺がんに対する抗
ならない」とし、プロメテウス社の訴えを却下
EGFR 療法への反応性を予測するための EGFR 遺
した。この判決は、複数回にわたってプロメテ
伝子の変異に関する特許などである。
ウス社の特許を認めてきた連邦巡回控訴裁判所
「診断法特許の問題は、細胞レベルでのがん
(注:知的財産権を専門に扱う裁判所)の決定
診断における重要度を増しています。プロメテ
を覆すものとなった。
ウス判決は、おそらくこうした特許をも無効とす
「最高裁が、『検体と特定の内科的疾患との相
るのではないでしょうか」とクレイン博士は言う。
関関係を見るに過ぎない検査は特許不適格』と
ちなみにこの判決の 6 日後、最高裁は、乳
の判断を初めて示したことは、病理学にとって
がんのカギとなる BRCA 遺伝子の特許について
大きな意味があります」と指摘するのは、シ
争われた「ミリアッド事件」について、特許権
カゴのシドリー・オースティン法律事務所の
を持つミリアッドジェネティクス社の勝訴とし
ジャック・ビエリグ法学博士である。「特許裁
た控訴裁判所に判決の見直しを勧告している。
判では、特許不適格な自然法則と特許適格な自
然法則の応用、この 2 つの間での線引きが最
も問題となりえます。今回のような判決は、最
高裁自らが臨床検査の文脈でこの問題をとらえ
034
「遺伝子特許」の抱える
問題点は何か?
遺伝子特許の問題点について、カリフォルニ
ア大学ロサンゼルス校医学部病理学、臨床検査
るなど、遺伝子特許が数多く認められた時代と
学のウェイン・W・グロディ教授は、乳がんの
は状況が大きくかけ離れてきているのが現状で
カギを握る BRCA 遺伝子特許の例を挙げて次の
ある。
ように指摘する。「BRCA 遺伝子のような例を
今後の遺伝子特許のあり方として、特許法を
見つけるたびに特許が認められれば、遺伝子検
専門とするニューヨーク大学法学部ロッシェ
査をする検査室の経費は跳ね上がります。
また、
ル・ドレフュス教授は、「例外的な使用許可条
後続研究をするにも費用がかさみ、研究が進ま
項を伴った特許権が望ましい。」と話す。「特許
なくなってしまうでしょう」
。
権を持つ企業にとって、例外を認めることは
さらに、BRCA 遺伝子のように、特許を持つ
マーケットの一部を手放すことを意味します。
企業が唯一の検査機関となってしまうと、検査
しかしこのマーケットは巨大です。いくら大学
の精確性を客観的に確認する手段がないという
の研究を認めても、いくら患者がセカンドオピ
問題も発生するからだ。
「システム的なエラー
ニオンを求めることを認めても、なお余りある
があっても見過ごされてしまう可能性がありま
大きなマーケットだからです。」
す。診断・治療過程で何度も行われる血中ナト
また、ワイルコーネル医科大学の臨床検査医
リウム値やインスリン値測定とは違い、遺伝子
学部副学長のデボラ・G.B. レオナルド教授は、
検査は一度きり。その検査にもし間違いがあっ
遺伝子特許の全面廃止は非現実的だと指摘し、
たとしたら?」とグロディ教授は懸念する。
見直すべきは遺伝子特許の認可審査プロセスだ
とみなしている。「とはいえ、ただプロセスが
望ましい「遺伝子特許」の
あり方とは
変わるのを待っているわけにはいきません。プ
レシジョンメディスンを目指すのなら、私たち
遺伝子特許の必要性を主張する業界団体・バ
は患者の治療に必要な情報を必要な時に使用で
イオテクノロジー産業協会は、
「個別化医療/
きるようにするため、変化を起こさなくてはな
テイラーメイド医療の重要性や、難病の新しい
らないのです。」と主張する。
治療法開発に対する研究開発投資インセンティ
ブの重要性への認識に欠ける判決だ」として、
プロメテウス判決を批判している。
しかし、いかにバイオ業界や特許法関係者ら
が反発しようとも、遺伝子特許を制限する動き
は止まらないとの予測は優勢だ。その背景にあ
るのは、遺伝子シークエンシング技術の進歩と、
次世代シークエンシングの登場だ。昔は革新的
だった技術が現在では陳腐化したり、さらには、
単離された特定の遺伝子ではなく全ゲノムを対
象とするシークエンシングが行われるようにな
035
インフルエンザ、ヘルペスウイルス
「抗ウイルス抵抗性検査」実施に
William Check, PhD(summarized by staff writer)
[CAP TODAY June 2012]
注目を集めない
「抗ウイルス抵抗性検査」
ルスは急激に増殖し続けた。同時に、季節性イ
抗ウイルス抵抗性検査は、分子診断学研究所
オセルタミビルに対して徐々に耐性になりつつ
では既に実施されており、特定の対象者の間で
あったという。
ンフルエンザワクチン H1N1 分離株の 98.6%は、
は高い評価も受けていたが、実際のところ、抗
「抗ウイルス抵抗性」と
疑われる 5 つの状況
ウイルス抵抗性検査は今まで注目視されること
もなく、細菌の抗菌薬耐性検査のように世間に
広まっているということもなかった。抗菌薬よ
ミネソタ大学のハンク・バルフォア教授は、
り抗ウイルス物質の方が歴史の浅いことが主な
抗ウイルス抵抗性が疑われる 5 つの状況を挙
理由なのか。
げている。
1970 年代以降、ヘルペスウイルスへの対処
法はあまり進展されず、治療法のオプションも
1.
免疫不全宿主。
少なかった。そのため、抗ヘルペスウイルス検
2.
間欠治療、もしくは低用量治療。
査はヒト免疫不全ウイルス(HIV)や C 型肝炎
3.
外来治療で治療が行われない週末。
ウイルス(HCV)ほど実施されてこなかった。
4.
ヘルペスウイルス(HSV)か、水痘帯状疱
抗ヘルペス研究の権威である、アラバマ大学
疹ウイルス(VZV)による皮膚病変、もし
バーミンガム校、メディカルスクールのリチャー
くはサイトメガロウイルス(CMV)によっ
ド・ホワイトレー教授によると、
「ヘルペスウイ
て引き起こされる全身性疾患が、7 日間の
ルス感染はごく一般的に起こるものだが、HIV
適量治療を経ても症状が回復も悪化もしな
やインフルエンザほど抵抗性はない」という。
い時。
懸念するのは免疫不全宿主、つまり、臓器移植
5.
ウイルス量が増えたときなど。
や幹細胞移植を受けた人や、HIV/AIDS 感染者、
036
免疫抑制薬治療を受けている人たちである。
ヘルペスウイルス治療には、通常、静脈注射
インフルエンザAウイルスに対する薬物療法
か経口投与可能なプロドラッグが使われる。抵
や抗ウイルス検査の研究は、ヘルペスウイルス
抗性が現れるのは、ポリメラーゼ遺伝子かウイ
研究よりも遅れていた。また、2005 ∼ 2006 年
ルスキナーゼ遺伝子、または両遺伝子の変異に
のインフルエンザの流行時には、季節性インフ
よるものである。その結果、多くの薬はあるが、
ルエンザワクチン H1N1 株に対するオセルタミ
抵抗性をもったウイルスへの有効な治療とはな
ビル(抗ウイルス治療薬)の抵抗性が発見され、
らない。
その後、抗オセルタミビル・インフルエンザウィ
異なる作用機序をもった薬の開発のメリット
は大きいが、次の 3 つの理由により、実施さ
め、より精度の高い検査が必要となる。アラバ
れていない。
マ大学バーミンガム校の新表現型抵抗性検査で
は、患者サンプルの遺伝子変化を 0.1%のレベ
ヘルペスウィルスファミリーによって発症
ルまで発見できるため、患者に抵抗性ある遺伝
する疾病が、急性であることが多い。
的変異が備えられていれば、早期に発見できる。
2.
現存する抗ヘルペス剤の効能がよい。
この表現型検査の精度が上がったのは、ポリメ
3.
大部分のヘルペスウイルス薬の安全性プロ
ラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して、血小板に
フィールが大変よい。
よって作られたウイルスの数を計算できるよう
1.
になったからだという。
表現型検査と遺伝子型検査
2009 年にインフルエンザが大流行したとき
の抵抗性頻度はウイルスの 0.001%と非常に低
抵抗性検査の方法として、表現型検査と遺伝
く、配列変異から自然と出てくるほんのわずか
子型検査がある。前者では、ウイルスを細胞培
なレベルだった。その後、抵抗性ウイルスが
養で増殖させる必要があるため時間がかかり、
10%と検出された患者もいたが、この検査は大
標準化できない。
流行の H1N1 にしか作用せず、季節性の H1N1
それに比べ、遺伝子型検査は人気が高い。変
や H3N2 には作用しない。また、ウイルスによ
異の正確な識別をすることができ、データベー
り配列の多様性があるため、すべての抵抗性ウ
スと組み合わせれば抵抗性を明確にできる。こ
イルスを見つけるのは非常に困難に等しい。
の方法は信頼度が高く、早く、自動化できると
管理運営が大変なため、ごく少数の検査室し
「抗ウイルス抵抗性検査」の
今後の課題とは
かヘルペスウイルス抵抗性検査をしていないこ
微生物病原体における臨床的に重要な要因と
ともあるが、真の問題は誰が抵抗性検査を行う
して抵抗性の歴史を考えると、抗ウイルス抵抗
のかということだ。分析試料は標準化されてお
性検査はますます重要になってくるといえる。
らず、米国中のメディカルセンターに必ずしも
新しい分子テクノロジーのおかげで抵抗性検
あるとは限らない。
査の使い勝手がよくなり、自動化もできるよう
アラバマ大学バーミンガム校では、ヘルペス
になった。だが、量的不足という問題がつきま
ウイルスのゲノムの配列を行い、発見した変異
とう。今後、シークエンシングが大きな役割を
と抵抗性の関連がわかるという。うまくいく場
果たすことにはなるだろうが、インフルエンザ
合もあれば、そうでない場合もある。分離株が
のウイルス耐性検査に向けて、いくつか疑問が
あれば、表現型検査を行う。ウイルスの 25%
残る。それは、中央と地方の検査のどちらが相
以上が抵抗性を備えている場合のみ、抵抗性が
応しいのか。検査結果を早く知ることで、臨床
発見されるという。
上の価値が上がったり、コストを下げたりでき
ヘルペスウイルスには遺伝的多様性があるた
るのか。臨床業務の実態を把握する必要がある。
いう利点がある。
037
前立腺がん
前立腺がんの分子サブタイプ、発見へ
(summarized by staff writer)
[CAP TODAY June 2012]
SPOP 遺伝子が検出された
は、たんぱく質をコード化するゲノムのうち1
∼2%の DNA に着目したものであり、今まで
ワイル・コーネル医科大学、ブロード研究所 *、
発表されてきた前立腺がんの全ゲノムや全エク
ダナ・ファーバーがん研究所により「前立腺が
ソームのシーケンシング(塩基配列解読)研究
んサブタイプ」が発見された。このタイプは、
の中では最大級です。」
全症例の 15%を占めるものとされている。
その最大級と言われる研究発表とは、ギャラ
5 月 20 日付「ネイチャー・ジェネティクス」
ウェイ博士とシルヴァン・バカ医学博士率いる
のオンライン版に発表された記事によると、研
ブロード研究所が、前立腺腫瘍組織と正常組織
究者らは「これは前立腺がんのうち、極めて特
の組み合わせ 112 組について、エクソーム・
異な分子クラスだ」と述べ、いかにしておび
シークエンシングを完了したことである。その
ただしい数の腫瘍を持つ患者の 突然変異的な
研究結果は、他の医療機関から寄せられた別の
SPOP 遺伝子(Speckle-type POZ protein gene)
400 組による前立腺がん患者の検体で検証さ
を検出したかが説明されている。 れている。 この研究成果に加え、マーク・A・ルービン
研究者チームは、前立腺がん組織で3つの
医学博士、ホーマー・T・ハースト実験病理学
遺伝子が有意に変化したのを発見したが、非
者(ワイル・コーネル医科大学、病理・腫瘍学
がん性組織では変化はみられなかった。また、
教授)、レビー・ギャラウェイ医学博士(ブロー
SPOP 遺伝子の変異(複数の独立したコホート
ド研究所上級研究員、ダナ・ファーバーがん研
にみられる腫瘍の 6 ∼ 15%に発生する)に加
究所、ハーバード・メディカル・スクール准教
え、FOXA1 遺伝子(Forkhead box protein A1
授)ら率いる研究者チームは、前立腺がんに関
gene)及び MED12 遺伝子(Mediator complex
連性の強い次の遺伝子を発見したことを発表し
subunit 12 gene)と共に、それぞれ約 4%の
ている。
患者に遺伝的変異がみられた。
* ブロード研究所:MIT(Massachusetts Institute
研 究 者 チ ー ム が 発 見 し た 変 異 は す べ て、
of Technology:マサチューセッツ工科大学)
SPOP たんぱく質が別のたんぱく質と結びつく
とハーバード大学医学部の共同施設。
箇所で発生している。
「このことは、細胞中のたんぱく質が排出さ
038
エクソーム・シークエンシング
の完了
れずに蓄積され、それが結果としてがんにつな
今回発表された研究について、レビー・ギャ
が、がん細胞の成長を阻むたんぱく質を除去し
ラウェイ博士は次のように語っている。
「これ
ていると考えられます。我々は何が起きている
がる可能性を示しています。つまり遺伝子変異
のかを解明するためも、懸命に研究に取り組ん
でいます。」とルービン博士は語る。
スマートフォン・アプリで
解剖病理レポートを配信
研究者らは、SPOP 遺伝子の変異が初期の
その他、NovoPath 社では、アンドロイドと
がんに発生するのではないかと考えているが、
アップルユーザー向けとして、解剖病理レポー
SPOP 遺伝子の変異がアグレッシブな前立腺が
トにアクセスできるスマートフォン・アプリを
んを発現するリスクが高いことを意味するかど
提供している。
うかはまだ明らかにされていない。
このアプリを使えば、病理検査室で働く臨床
医は、病理学研究室内から NovoPath 社の解剖
スライド全体のイメージ化に、
クラウドの新サービス
病理学ソフトウェア(ver 8.0)を使って、患
者の解剖病理レポートに安全かつ確実にアクセ
Microscan Technologies 社 の「 マ イ ク ロ ス
スできるようになるという。
キャン・キュムラス」が、インターネットを通
しかも、新規レポートが再検査待ちなどの場
じて、ユーザー同士のスライド画像の保存や管
合には、自動配信システムより、アラームが担
理、閲覧、そして、リアルタイムに共有化させ
当臨床医のスマートフォンに送られる仕組みに
ることを実現させた。
なっている。さらに、レポートを閲覧した臨床
このクラウドベースのサービスとは、全体ス
医は、そのファイルを検査室のウェブサイト上
ライド・スキャナであるマイクロスキャン D2
に保存、もしくは削除をして、それ以後はその
デスクトップと Q スキャン画像取得ソフトウェ
ウェブサイト上で管理することが可能になる。
アが連動しているものであり、この Q スキャ
このようにして、NovoNotifier モバイルに表示
ン画像取得ソフトウェアで、病理医がどこにい
された病理学検査室の解剖病理レポートはカス
てもほぼ瞬時にリモートアクセスできるよう画
タマイズ化されていく。
像を保存し、スキャンしたイメージをキュムラ
ス・ユーザーのアカウントに自動的にアップ
ロードさせることである。
「キュムラスは、即時的な遠隔共有機能を使
うことで、コンサルティングや研究に、そして
また、腫瘍ボードや教育用アプリケーションと
しても非常に有効です。
」とマイクロスキャン
社の CTO(chief technical officer:最高技術責
任者)兼アプリケーション専門家のビクター・
カサス氏は抱負を語る。
現在、マイクロスキャン社ではこの無料トラ
イアルを 90 日間実施中とのこと。
039
微生物検査
IT の普及で効率化を促す
Anne Paxton(summarized by staff writer)
[CAP TODAY May 2012]
「感染症抑制」に対する
要求が高まる
18 歳未満の患者に危険な薬品がある場合、ア
ラームが鳴るように設定しておけば、患者を危
「最初に IT 化が普及されたのは臨床化学と血
険な目に合わせずに済む。
液学部門だけで、微生物学はいつも後回しにさ
「我々の今後、手掛けようとしているのは、
れがちでした。
」と語るのはビオメリュー社のコ
抗生剤管理プログラムです。患者の年齢や症状
マーシャル・オペレーション兼 IT 副部長のドー
など、今まで使用された抗生剤の量を制御し
ディン氏である。また、LIS 社(臨床検査情報
て、患者ごとにデータ管理を見直していくこと
システム)でも、最近まで微生物学用のソフト
が今、最も重要と言われています。」とビック
ウエア開発はされてこなかったという。おそら
ス氏は抱負を語る。
く、その理由は微生物学用デバイスをインター
フェースで接続するということが困難で費用も
かかるとされていたからではないだろうか。し
IT ソリューションの導入で
手作業をなくす
かし、現在では IT 業界の専門家と検査室内ユー
テキサス州オースティンにある臨床病理学研
ザーとの間で「感染症抑制」に対する意識や要
究所は、IT ソリューション化により、手作業を
求が高まりつつある。これにより、微生物検査
なくすことに成功した。同研究所では 2 年前に
室の自動化はプレートの画線培養の域を超えて
シーメンス社の「ラブプロ・コネクト」を微生
さらに拡大され、IT 化への展望は急上昇してい
物検査室に導入した。以前は、一日 800 件の
くことになるであろう。研究者も検査室内の今
検体を扱うのに、シーメンス社の「マイクロス
後の効率化に大いに期待を寄せる。
キャン」を8台も使用していたそうだ。
「以前
はシステム同士が互いに接続されていませんで
040
「抗生剤管理プログラム」が
効率化を促す
した。そのため、1 台の機器の許容量が限界に
微生物学者のビックス氏(チェスターカウン
別の機器に、手動で移さなければなりませんで
ティ・ホスピタル & ヘルスシステム)は、ベク
した。
」と微生物学者のブラウン氏は言う。現
トン・ディッキンソン(以下 BD)
・エピセンター
在は「ラブプロ・コネクト」というソフトウエ
微生物データ管理システムのことを強力なツー
アとデータベース・コンピュータの2面性を備
ルという。
えた機器を使用することになり、検査技師が
そのシステムには、検査結果と人口統計的属
ワークステーションで ID/AST(同定/感受性
性情報とを組み合わせて、アラートメッセージ
検査)のデータを扱うことができるようになっ
を飛ばす設定機能が搭載されている。例えば、
た。
「我々の検査室では大量の検体を扱うため、
なると手を止めて、その時使用していた標本を
動き回る労力がなくなれば、かなり時間が省け
ます。
」と微生物学医長のハーディ氏は語る。
ダッシュボードの利用で
モニターが容易に
プロフェショナル・クリニカル・ラボラトリー
完全なペーパーレス化を達成
が、ビオメリュー社の Myla を導入した。「こ
のソフトウエアは、独自のアドバンス・エキス
SCC ソフトコンピュータ社の Softmic(測定
パート・システムでプログラム化されています。
基準を搭載)は、クリーブランドの大学病院総
サルモネラ菌や抗生剤のレポートの仕方など、
合医療センターで、微生物学・測定基準システ
自分たちでプログラムしています」と微生物部
ムとして使用されている。その Softmic システ
長のフォルクス氏は言う。Myla の重要な役割
ムは 1999 年以来、微生物検査室のペーパーレ
は、検査室の生産性向上のために収集した主要
ス化に貢献してきた。
「検体が検査室に届いて
業績評価・指標情報の利用だという。
から結果が出るまで、システムが作業工程を案
「ダッシュボードを使えば、検査室で起きて
内します。」とロマン主席研究員は言う。
「もう
いることをすべてモニターできます。私がパラ
紙は必要ありません。Softmic がパネルや検査
メーターを1つ変える、あるいは、ここでの働
を選択し、情報をアナライザーにダウンロード
き方を変えるなど、検査室でのパフォーマンス
します」。アナライザーは該当バーコードを出
はすべてリアルタイムで評価されます。検査室
力し、結果は Softmic にアップロードされる。
をより効率的に運営するためには IT は欠かせ
Softmic の全領域疫学レポートで、ロマン氏は
ません。
」とビオメリュー社のボーディン氏は
効率的に仕事をする。
言う。また、
「微生物検査室で、リアルタイム
「わずか数分で1年分相当のデータが引き出
に臨床医をサポートすることは必要に迫られて
され、エクセルにエクスポートして簡単に報告
きています。また、感染管理、薬局、政府報告
書が作成できます。」
などに関しても同様に、今後いかに迅速に情報
を提示するかが重要なキーとなるでしょう。」
現場が働きやすいように
カスタマイズする
2005 年、ポートランドにあるレガシー・ヘル
スシステム(5 病院からなる総合医療保健機関)
の微生物学者でありシステム・マネージャーで
もあるアサートン氏は、精密検査の簡易プログ
ラム設定を始め、
多くの新設定は自ら作る。
「サー
ナー社のシステムを使えば、パネルや感受性検
査、解説などを設定できます。
」と満足そうに話
す。微生物検査室の精密検査簡易プログラム利
用は、かなり生産性が高いと評価される。
041
前立腺特異抗原検査
バイオマーカーへの期待高まる
Deborah V. Spencer, MD(summarized by staff writer)
[CAP TODAY September 2010]
前立腺特異抗原(PSA)とは
遊離型 PSA の総量および割合は、検査によって
10%以上の相違が出てしまうので、異なる検査
前立腺特異抗原(PSA)はアンドロゲン受容
法で得られた結果を組み合わせて使うことはで
体調節下の前立腺上皮細胞によって合成される
きない。さらに、当初の検査では、4.0 ng/mL
酵素である。前立腺の細胞が壊れると、PSA が
というカットオフ値を算出していたが、現在は、
血流に漏れ、血中濃度が高まってしまう。血清
25%低い PSA 値の参考基準を使っている。従っ
前立腺特異抗原は、機能面では組織特異性だが、
て、健康な人の上限を 4.0 ng/mL にするのは必
がん発見の特異度には課題がある。血清前立腺
ずしも妥当だとは言えない。前立腺がんに罹患
特異抗原の濃度は、良性の前立腺肥大(BPH)
している多くの男性の PSA 値は 4.0 ng/mL よ
や慢性前立腺炎でも高値になることもある。
りも低いのが実態である。こうした状況を踏ま
PSA は、1980 年代に前立腺がん検診を目的と
え、濃度が上昇してゆく速度、倍加時間、実測
して臨床現場に導入された。その結果、末期に
された濃度といった PSA 測定値の変動因子を
なるまで前立腺がんが見つからないということ
分析して、PSA 値が 2.5 ng/mL ∼ 4.0 ng/mL の
は少なくなり、早期発見も増加し、治療できる
患者から、生体検査を行う患者を選択するよう
ようになった。
になった。
PSA はアンチキモトリプシン(ACT)等、さ
米国がん協会(ACS)は 1990 年以来、通常
まざまな内因的プロテアーゼ抑制物質と結合し
の PSA 検査を推奨していなかった。ACS は最
て複合体を形成する。血清中の PSA の 90%は
近、前立腺がん検査に関するガイドラインを改
PSA-ACT 複合物として存在している。前立腺が
正した。その改正ガイドラインには、PSA テ
んでは、一般的に結合した PSA の血清濃度が高
ストの限界と警告が含まれている。さらに改正
まり、遊離型 PSA は減少する。遊離型 PSA の割
ガイドラインは、PSA 測定の不確かさ、リス
合 は 総 PSA 濃 度 が 4.0 ng/mL か ら 10.0 ng/mL
ク、検査の潜在的メリットに関する情報を認識
の患者のうち、どの患者に生体検査を行う必要
し、状況を良く理解している患者に対し PSA
があるかを決める際、非常に便利な基準となる。
検査を行うべきだと付け加えている。ACS の改
しかし、通常は、総 PSA の測定値によって最終
正ガイドラインは、欧州前立腺がんランダム化
的な決定が下される。
(ERSPC)と前立腺、肺、大腸、卵巣(PLCO)
検査という 2 つの大規模な臨床研究の結果に
前立腺特異抗原(PSA)検査
PSA 測定検査法はかなり多くの種類がある。
042
対する直接的な反論である。PLCO は、前立腺
がん検診では、特定のがんによる死亡率を減ら
すことはできないということを示している。一
This article is funded by unrestricted educational grant from Siemens Healthcare Diagnostics K.K..
方、ERSCP は、死亡率が 20%減少しているこ
ていった。また、当初の病理検査の際にがん患
とを示している。しかし、これは、多数の男性
者も含まれていたということもあり、特異度
に検診を実施し治療を行うことで死亡を食い止
も 50%を超えた。PSA 測定のがん検出感度は
めた結果である。これらの検診によって判明し
十分ではないので、前立腺がんに特化したバイ
たことは、年齢に基づく検診は、過剰診断や過
オマーカーを見つけることに重点が置かれる
剰治療を招く可能性があるのではないか、とい
ようになった。この用途に合致しそうなバイ
う懸念が助長されたことだ。米国泌尿器科学会
オマーカーとして、前立腺がん抗原(Prostate
は、現在も、たとえ毎年でなくても構わないの
Cancer Antigen)、初期前立腺がん抗原(Early
で通常の PSA 検診と直腸指診を行うべきだと
Prostate Cancer Antigen)、および遊離型 PSA
提起している。
のイソ型である proPSA 等が挙げられる。これ
らのバイオマーカーは、全て前立腺がんの場合
特定したバイオマーカーを
見つけることの重要性
には数値が上昇したり、過剰に発現したりする
ようになっている。これらのバイオマーカーへ
PSA は 4.0 ng/mL で、検出感度> 80%、特
の期待は高まっているが、どの患者により積極
異度∼ 50%となっている。しかし、3年経過
的な治療を施す必要があるのかを見極めるため
すると、当初病理検査によって陰性という結果
には、悪性度の高いがんを選択するバイオマー
が出た人の約 20%が陽性という結果に変わっ
カーをきっちりと見つけ出す必要がある。
043
新しい前立腺がん生体指標
FDA の承認を待つ (*2012 年 2 月には FDA から承認を得ています。)
William Check, PhD(summarized by staff writer)
[CAP TODAY June 2009]
前立腺がん抗原遺伝子の発見
が容易になり、前立腺がん診断に重要な貢献を
してきたと言える。この検査の対象は、生体検
10 年程前、マリオン・J.G. ブッセメイカーズ博
査で陰性、PSA 値が上昇(= 4.0 ng/mL)して
士により、前立腺がん抗原遺伝子 3(PCA3)検
いる人で、米国では約 1,000 万人もいる。PCA3
査が発見された。その結果、PCA3 は前立腺腫
値が高ければ再度生体検査を行う方がよく、低
瘍の約 95%で 66 倍に上方制御されることが判
ければ、非侵襲性経過観察の方が良いようだ。
明した。PCA3 遺伝子はタンパク質に変化しない
PCA3 検査が浸透している欧州では、PCA3 値
ため、この検査で PCA3 mRNA を測定できる。こ
が低ければ、生体検査を先延ばしする泌尿器科
の検査を使用して、前立腺がん患者と、そうでな
医もいる。前立腺がんの進行は遅く、6 か月∼
い患者から採取した尿沈渣の生体検査を行った
1 年程遅らせても、乳がんほどの危険性はない。
ところ、感度 67%、特異度 83%であったという。
当 時、Gen-Probe 社 は カ ナ ダ の DiagnoCure
社から PCA3 の諸権利を使用する許諾を得てい
た。PCA3 検査は転写媒介増幅に基づいている。
PCA3 mRNA 検査
Gen-Probe 社 の PCA3 mRNA 検 査 の 分 析 特
性は、感度 69%、特異度 79%として公表さ
PCA 3検査
れている。欧州ではプロゲンサという検査名
で CE マークを得て市販されている。また、米
その Gen-Probe 社が支援した研究で、PCA3
国では Analyte Specific Reagents(ASRS)とい
陽性特質が発見された。また、前立腺切除前
う試薬名で販売され、そのほとんどが検査室で
に採取されたサンプルでは、PCA3 検査値は腫
PCA3mRNA の Lab-developed test 用に使用さ
瘍容積、嚢外拡張、病理学的悪性度と相関し
れている。FDA 高官の記者会見後、Gen-Probe
た。大きく、侵襲的な腫瘍の方が、尿中に細胞
社が発表したことによると、今年後半にプロゲ
が混じりやすいようだ。また、別の研究では、
ンサ PCA3(試薬)を米国の臨床試験に展開し
PCA3 検査値を使用した生体検査の結果、1 ∼
ていくという。
2 回陰性になった人の生体検査だけではなく、
1 回目の前立腺生体検査の結果だけで既に予測
できるようになったという。PCA3 検査値は遊
044
尿中の RNA 量を測定
離型 PSA(%)より診断精度は高く、生体検査
また、Gen-Probe 社は、TMPRSS2: ETS 遺伝
の有無、年齢、前立腺容量、PSA の総量レベル
子融合の諸権利を使用する許諾も得ている。尿
に無関係であることが分かった。
中の TMPRSS2: ERG(ETS related gene)mRNA
PCA3 検査によって、経過観察すべき人の選別
の量を測定する研究検査をプロゲンサ PCA3 と
This article is funded by unrestricted educational grant from GEN-PROBE lnc..
同じ様式で開発した。融合した mRNA を測定し、
の開発を目指している。PCA3 と 2 つの生体指
積極的に治療すべきがんと非侵襲性経過観察で
標(GOLPH2 と SPINK1)をこの融合と組み合
も可能ながんとを区別するのが目標だ。すでに、
わせれば、前立腺がんに対する感度が高まる。
尿中の TMPRSS2: ERG mRNA と、生体検査の
生体検査や前立腺全摘出術により、チンナ
時点でのがんの悪性度の指標が相関しているこ
イヤン博士研究グループは、GOLPH2, SPINK1,
とを示す初期段階のデータを取得している。
PCA3 の転写産物発現と TMPRSS2: ERG 融合状
況は前立腺がんの重要な前兆だと結論づけた。
遺伝子融合用、FISH 検査
さらに Gen-Probe 社はヴェンタナ・メディカル・
多変量回帰分析によると、このような生体指標
を含む多重モデルは、前立腺がん診断で血清
PSA や PCA3 より優れていた。
システムズ社と協力し、遺伝子融合用の FISH 検
査を開発していた。ヴェンタナ社の目標は生体
検査組織にある融合 DNA を見つけることである。
血清生体指標の前立腺がん
抗原 2 が発見された
その共同開発により、融合陽性の潰瘍を放置
また最近では、血清生体指標の前立腺がん抗
すると、悪性表現型になることがわかった。
原 2(EPCA2)が発見された。健康な人と良性
前立腺肥大症(BPH)者への特異度が 92%で、
高悪性度の前立腺上皮内腫瘍
とは
前立腺がん全体に対しての感度は 94%だ。対
アラル・チンナイヤン博士は遺伝子融合が前
65%だ。さらに、EPCA2 は臓器限定疾患とそ
立腺がんの初期段階で、遺伝子融合のある高悪
うでない疾患を正確に区別できる。
性度の前立腺上皮内腫瘍は、遺伝子融合のない
EPCA2 検査は前立腺がん患者と、BPH、他
高悪性度前立腺上皮内腫瘍が進行したものとい
の良性疾患や他のがん患者を区別できる。さら
う仮説をたてている。高悪性度前立腺上皮内腫
に、EPCA2 は臓器限定疾患と、手術の際にす
瘍組織を分析すれば検証できるという。高悪性
でに嚢外拡張していた疾患の区別もできる。 度前立腺上皮内腫瘍内の細胞は、前立腺がんの
EPCA2 は前立腺がんに特異性があり、不必要
前駆細胞だと考えられているようだ。高悪性
な生体検査を受けている約 80%の人から、本当
度前立腺上皮内腫瘍病変のある部分母集団は
に前立腺がん生体検査が必要な人を選別できる。
15%∼ 20%程度だが、前立腺がん組織に接近
EPCA2 の対象者は PSA レベルが上昇した人だ。
したり触れたりした場合には、前立腺がんの遺
最も重要なことは前立腺がんの「悪性」と
伝子融合と同じものが含まれる。
照的に、同グループに対する PSA の特異度は
「良性」(遅発性亜種)を区別することである。
チンナイヤン博士は、前立腺がん初期診断に
PSA 検査は前立腺がん検診より優れているが、
適した尿沈渣に反応する第一世代の多重検査を
最良の方法かどうかはわからない。将来的には、
開発中である。TMPRSS2:ERG という遺伝子融
多重テストと PSA と臨床的指標を組み合わせ、
合は、前立腺がん患者の約 50%の尿から検出
誰を治療し、誰を経過観察にするかを決めるこ
された。他の生体指標と多重化させ、多重検査
とが可能になるようだ。
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