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番外編 6. ランボー 『Départ』解説 Départ Assez vu . La vision s`est

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番外編 6. ランボー 『Départ』解説 Départ Assez vu . La vision s`est
番外編
6.
ランボー
『Départ』解説
Départ
Assez
vu .
La
vision
s’est
rencontrée
a
tous
les
air .
Assez eu . Rumeur des villes , le soir , et au soleil , et toujours .
Assez connu . Les arrêt de la vie . ― O Rumeurs et Visions !
Départ dans l’affection et le bruit neufs !
《
拙訳
》
出発
十分にみた。幻影はどんな風にもある。
十分に得た。街のざわめき、夜と陽の下に、そしていつでも。
十分に知った。幾度かの人生の休止。― おお ざわめきと幻影!
出発だ。新しい愛情と物音に向って!
この詩を、ヴェルレーヌとの関係を清算し、新しい生活(ジェルマン・ヌーボーとの)のためにロンドンへ旅立つ期待と昂揚感を謳ったも
のだとする論者もいます。その正否は別として、失意のうちに終わった何らかの過去を清算し、新しい世界へと『出発』す
る詩人の内面を語ったものには違いありません。いずれにせよ、無用な穿鑿の必要のない見事な詩です。
あまりに簡潔すぎて解釈するどころではありませんが、いくつか、この詩の技法に触れておきましょう。
(1)各パラグラフの冒頭に、省略法を繰り返し用いた大胆な手法(J’ai assez vu. → Assez
音が力強い語感を生み出しています。
(2)二行目の La vision ~ 以外は名詞と名詞句だけからなる簡潔な構文。
(3)音節数の少ない単語(殆んどが二音節以下)の多用。
(4)殆んどの名詞に定冠詞を付し、あいまいさを排除した、自信と肯定感に満ちたトーン。
vu.)。三つの過去分詞の u
この詩を小林秀雄は次のように訳しています。いまから 80 年近くも前のものなのに、少しも古びていないのに驚かされま
す。彼もまた天才ですね。
出発
見飽きた。夢は、どんな風にでも在る。
持ち飽きた。明けても暮れても、いつみても、街々の喧騒だ。
知り飽きた。差押えをくらった命。 ― ああ、『たわ言』と『まぼろし』の群れ。
出発だ、新しい情と響きへと。
(岩波文庫「地獄の季節」所収)
2013.10.31
F. M.
@ネッシー
2013
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