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小型軽量・高減速比・低コスト ロボットの駆動機構として期待 mRNAの
企業紹介 産総研技術移転ベンチャー 小型軽量・高減速比・低コスト ロボットの駆動機構として期待 mRNAの働きを自在に制御 新しい治療法が実現可能に 新産業技術開発センター株式会社(NIT) 株式会社 Galaxy Pharma http://www.nit-dc.com/ http://www.galaxy-pharma.com/ NI Tは昨年 6 月、産総研知能システム 現在のギア市場は飽和していますが、 研究部門の前川仁さんを顧問技術士に ロボット用では今後の需要増大が見込ま 迎え、同部門の成果である高減速複合 れ、新規ニーズの開拓が可能です。また 遊星歯車機構(HPG)を技術移転して この分野は、ユーザーごとに最適設計し 設立されました。 たカスタム品が求められ、必然的に多品 HPGは、従来の遊星歯車機構の6〜 種少量生産になるため、ベンチャーの参 14 倍の高減速比を実現し、減速比の選 入にも適しています。 択自由度も大幅に拡大。 少ない段数で 基本技術の優位性に甘えず、製造技 高減速比を得るシンプルな構造のため小 術、コスト競争力、品質保証技術、販 型かつ軽量、部品数や工程数も少なく、 売力など、ものづくりに求められる各要素 低コストで製造できます。 産業機械、自 に磨きをかけ、今後1年間で1億円の売 動車、家電製品など幅広い応用が可能 上を目指しています。また、HPGの技術 ですが、その中でも小型・高減速比とい を使った自社製品の開発や、ECD素子 う特性から、ロボットの関節部分への利 など他の技術シーズの事業化にも取り組 用が特に有望視され、すでに数社から設 んでいきます。 計・試作の依頼が届いています。 代表取締役社長 石川 桂 HPGの構成例。150分の1という従来設計の6倍の 減速比を実現 を見つけて結合します。その部分に、相 mRNAの情報を基に発現し、一般的に 補的な配列を持つ核酸を結合させてしまえ はmRNAの量が多いほど、作られるタン ば、RPBがmRNAを分解するのを防げ、 パク質の量も増えます。夏目さんらは、あ その結果、LDL受容体が増えて高脂血 る種のタンパク質 (RBP) がmRNAに結合 症を改善できます。 し、mRNAの安定性やタンパク質への翻 こうした、核酸を使って体内の仕組み 訳を制御していることを発見。これを新し を制御する手法は「核酸医薬」と呼ばれ、 い薬の開発に結び付けようとしています。 従来のように化合物を探索する必要がな たとえば、LDL受容体を作るmRNAに く、迅速に薬を設計できるため、次世代 RBPが結合すると、そのmRNAは分解 の製薬技術として注目されています。すで されます。LDL受容体には、血中コレ に夏目さんらは、がん、アルツハイマー、 ステロールを細胞内に取り込む機能があ 糖尿病、アレルギー、自己免疫疾患など り、高脂血症にも重要なかかわりを持っ への応用を視野に入れており、これまで ています。 克服困難だった難病にも、有効な治療法 RBPは、mRNA上の特定の塩基配列 が生まれることが期待されます。 薄膜計測の国家標準に基づく、 高精度な熱物性データを提供 クリーンエネルギーとして 期待高まる燃料電池開発に貢献 株式会社ピコサーム 株式会社つくば燃料電池研究所 今日、電子機器や電子デバイスの高速 析事業を通じ、先端産業における熱問題 化・高集積化に伴い、 その熱設計および熱 解決のための総合的ソリューションを提供 対策が重要視されています。 たとえば半導 することを目的として設立されました。 体集積回路やブルーレイディスク等の光加 同社が開発したNanoTRおよびPicoTR 熱相変化記録メディア、 フラットパネルディ は、 ナノ秒やピコ秒という極めて発光時間の スプレイなどには、 ナノレベルの厚さの多層 短いパルスレーザーを用い、 厚さ数10ナノ〜 薄膜が形成され、 そこでの熱制御がキーテ 数10ミクロンレベルの薄膜の熱物性値を高 クノロジーとなっています。内部で発生する 精度に測定できる、 世界初の装置です。薄膜 熱の流れや広がり、温度分布などを知って の熱拡散率や熱伝導率、 また多層膜の薄膜 合理的な設計をすれば、 デバイスの信頼 間の界面熱抵抗について、 国家標準とのト 性・安定性の向上、 長寿命化、 消費エネル レーサビリティがある信頼性の高いデータが ギーの低減などが実現できます。 得られます。金属薄膜、 半導体薄膜、 酸化物 株式会社ピコサームは、薄膜、厚膜から 薄膜のほか、 有機ELを構成する有機系薄膜 バルク材料に至るまで熱物性にかかわる計 やTIMなどの樹脂膜の測定にも適しており、 測機器の開発・製造・販売および受託分 デバイスの高度な熱設計を可能にします。 HIGH- TECH STARTUPS vol.9 ゼネラルマネージャー 吉田 正順 技術顧問 夏目 徹 産総研バイオメディシナル 情報研究センター 細胞システム制御解析チーム チームリーダー mRNA上の結合領域を核酸で塞ぐことにより、 RBPの結合を阻害する http://www.tsukuba-fcl.jp/ http://www.pico-therm.com/ 16 タンパク質は、遺伝子から転写された 代表取締役社長 石川 佳寿子 燃料電池の実用化は、昨今の重点課 ブ電解質を用いた標準電極」等、安価 題になっており、2020 年には定置用燃 で提供できる試験装置の開発にも力を入 料電池 10 ギガワット、燃料電池自動車 れます。岡田氏が、 長年材料開発に携わっ 500 万台の普及という目標もあります。し てきた経験から、役に立つ試験法を通して 馬場 哲也 かし、燃料電池が商品として普及するに 安価な試験装置を開発・販売することは、 産総研計測標準研究部門 上席研究員 物性統計科研究科長 は価格、耐久性、安全性等、消費者に 燃料電池産業の発展に寄与するものと期 受け入れられる条件が必要です。特に価 待されます。 格の問題は大きく、資源的な制約を受け 「現在、中小の燃料電池測定装置メー ない材料の開発が急務になっています。 カーや電気化学計測器メーカーとお付き合 アドバイザー 薄膜熱物性測定装置NanoTR。 信号処理の高速化により1分以内で測定が可能 つくば燃料電池研究所は、昨年 7 月 いし、燃料電池材料試験機の構想を話し に設立された新しい会社ですが、所長の 合ったり、別のベンチャー企業との共同研 岡田達弘氏は、産総研で 15 年近く、燃 究で、発想を 180 度転換した新機軸の 料電池の材料開発等に取り組んできまし 燃料電池の構想などを話し合っています」。 た。電極触媒に使われる白金は高価なた 企業や大学との積極的な共同研究を進 め、それに代わる新規材料の開発が最近 め、お互いの長所を生かした製品づくりに の主なテーマです。また、「マイクロチュー 夢を託します。 代表取締役 所長 岡田 達弘 燃料電池に関連した計測・評価・周辺計測の 装置を開発 HIGH- TECH STARTUPS vol.9 17 企業紹介 産総研技術移転ベンチャー 水素ガス漏れを即座にキャッチ 新方式の高性能センサ ダイヤモンド基板の量産化へ いち早くサンプル供給を開始 株式会社 NAST 株式会社イーディーピー http://www.d-edp.jp/ 名 古 屋 市に拠 点を構える株 式 会 社 長期安定性や耐久性の面でも懸念される NAST は、熱エネルギーを電気エネルギー 点がありました。開発したセンサは、 高濃度 に変える熱電変換原理を利用した新しい から低濃度まで幅広い濃度の水素ガスを 検知方式の熱電式水素ガスセンサを開発。 検知が可能で、 安定性・耐久性についても 「今年の9月に念願の製品が完成しまし 代表取締役 中島 久美子 今後は、 耐久性のさらなる向上とコストダ きたい」 と、 この研究に10 年を費やしてき ウンに向け、 「マーケッ トからニーズをフィード た申ウソク氏は製品販売への自信をのぞ バックしてもらい、改良を重ねてより良い製 かせます。 品を社会に供給していきたい。開発した水 水素センサは、燃料電池自動車が普及 素ガスセンサは水素ステーションの他にも、 した将来、水素ステーション等でガス漏れ 燃料電池自動車、家庭用燃料電池等に に対する安全装置が必要となります。現状 も適用できるので他用途への事業化も目 のセンサは、用途に合わせて3種類のガス 指していきたい」。 また、 申氏の研究を二人 センサが実用化されていますが、 いずれも 三脚で支えてきた代表の中島久美子さんも 狭い濃度範囲の水素ガスしか検知できず、 「広く普及してほしい」 と笑顔をみせます。 申 ウソク 産総研先進製造プロセス研 究 部 門 セ ン サ イ ン テ グ レーション研究グループ 主任研究員 優れていることが実証されています。 た。 これからは生産と販売に力を注いでい 取締役 10年に亘る研究の成果が4mm四方の水素ガスセンサ に集約 化しました。 現在は限定的なサンプル販 れた物性を有しており、これらの利用に 売を開始していますが、12月には本格的 対して多様な素材が欠かせない状況と な販売を行う予定です。 来年には1イン なっています。 特に省エネルギーに貢献 チウエハを実用化する計画であり、数年 できると考えられている半導体デバイスと 以内の2インチウエハの実用化を目指し しては、現在開発中のSiCの次の世代 ています。 を担って、電気自動車などで利用される ダイヤモンド単 結 晶は、 切 削 工 具、 事が期待されています。現在市販されて 耐摩耗工具や光学部品等でも利用され いるダイヤモンド単結晶基板は5mm角 ています。 既存の天然や人工合成単結 代表取締役 取締役CTO 産総研ベンチャー開発 センター スタートアップ・アドバイザー 産総研ダイヤモンド 研究センター センター長 冨士岡 芳樹 以下の小さいものがほとんどで、デバイ 晶では、大型結晶の入手は困難であり、 スの実用化に向けて大型の単結晶が必 不純物や欠陥などの品質面での問題も 須の素材となっています。 あります。イーディーピーのダイヤモンド 株式会社イーディーピーは気相合成法 単結晶は、形状ばかりでなく、品質の均 による単結晶量産技術をダイヤモンド研 一性や価格でもユーザーの皆様にご満 究センターから受け継ぎ、これまで容易 足を頂けると、自信をのぞかせています。 藤森 直治 ダイヤモンド単結晶薄板。研究用基板は1×1cm、 厚さ0.5mm。工具用素材は厚さ1.2mm に入手できなかった1cm角の結晶を実用 産総研発ベンチャーが累積で100社に — 中期計画目標を達成!— 検出限界の壁をブレークスルー、 赤外線応用市場の活性化へ 産総研は第2期中期計画における数値目標の一つとして「第2期中期目標期間終了までに、第1期中期目標期間 アイアールスペック株式会社 と通算して、産総研発ベンチャーを100社以上起業することを目指す。 」ことを掲げておりましたが、2009年10月1日 http://www.irspec.com/ 18 ダイヤモンドは硬い以外にも様々な優 付で(株)イーディーピー社に対し産総研技術移転ベンチャーの称号を付与し、当該付与をもちまして前述の目標を アイアールスペック株式会社は、産総 い分野で赤外センサーの新しいニーズが 達成することとなりました。 研ナノテクノロジー研究部門の研究成果 生まれると予想されています。また、この 2001年度の独立行政法人化以降、産総研では産総研が保有する技術シーズを活用し事業化を行うベンチャー を基に、高性能な光検出器とその応用製 センサーが搭載できる高分解能計測用の 企業に対し、その事業化を促進させるため、各種支援措置を講じるとともに、産総研技術移転ベンチャーの称号 品を開発しています。 信号処理器も用意しています。 その一つが表面電流ブロック(SCB) 赤外線計測は光通信、熱イメージング、 構造を搭載した化合物半導体フォトトラン リモートセンシング、生体認証、セキュリ ジスターです。ノイズ電流を低減すること ティ、環境計測、有毒ガス検出など多彩 で高い信号増幅率を実現し、従来の赤 な用途があります。医療分野では、生体 外センサーでは不可能だった極微弱光も を非侵襲に計測できる赤外光の特徴を 検出可能。また受光表面層の光吸収損 利用し、血糖値測定、光トポグラフィー、 失を低減し、一つの素子で可視光から近 光トモグラフィーなどの診断・分析技術が 赤外光までの広波長域を計測できるように 開発され、運動中の脳機能診断ができ なりました。しかも一般の半導体加工技 る携帯型光CTシステムも実現が待たれ 術で製造でき、量産性に優れているため、 ます。これらを足がかりとし、化合物半 高感度かつ安価な製品が供給可能になり 導体研究の活性化にも期待が寄せられて ます。これにより市場が刺激され、幅広 います。 HIGH- TECH STARTUPS vol.9 代表取締役社長 西田 克彦 技術担当取締役 小倉 睦郎 産総研ナノテクノロジー 研究部門 主任研究員 等を付与してまいりましたが、2002年8月1日付の1社目の認定以降、約7年間で中期目標を達成する運びとなりました。 ※2002年5月~2005年1月までは「AI ST認定ベンチャー」 として認定。 なお、これまで称号付与等を実施した産総研発ベンチャー 100社につきましては、解散等した社が7社、子会社化され たものが5社となっており、それ以外の88社につきましては引き 産総研技術移転ベンチャーの創出累計数の推移 続き活動中となっています。 120 ベンチャー開発センターにおいては、引き続き、「量より質」、 100 すなわち「より成功確率の高いベンチャーの創出」を目指し、さ 80 らに高度なベンチャー創出・支援のプラットフォーム形成を推進 60 してゆく所存であります。 40 これまでの皆様のご支援ご鞭撻に感謝いたしますとともに、 20 今後とも、産総研ベンチャー企業およびベンチャー開発セン 同社が開発した各種光センサーのサンプル(手前)と、 光検出モジュール (右) ターの発展にご協力をいただけますようお願い申し上げます。 98 92 84 100 69 50 27 16 0 度 2年 200 度 3年 200 度 4年 200 度 5年 200 度 6年 200 度 7年 200 度 8年 200 度 9年 200 10月) ( HIGH- TECH STARTUPS vol.9 19