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首を傾げると疑い深くなる - My Schedule

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首を傾げると疑い深くなる - My Schedule
首を傾げると疑い深くなる
頭部の角度が対人認知と意思決定及び論理的思考に及ぼす影響
○杉本絢奈 1・本元小百合1・菅村玄二2
(1 関西大学大学院心理学研究科・2関西大学文学部)
キーワード:非言語行動,身体化認知,姿勢
Tilting Your Head Could Make You Suspicious: The Effect of Head Angle on Social Cognition, Decision-Making, and Logical Thinking
Ayana SUGIMOTO1, Sayuri HONMOTO1, and Genji SUGAMURA 2
(1
Graduate School of Psychology, Kansai Univ., 2 Faculty of Letters, Kansai Univ.)
Key Words: nonverbal behaviors, embodied cognition, postures
目 的
「首を傾げる」というからだ言葉は,比喩的に疑問・不審
を表す。実際,疑問を感じたときに首を傾げることが多い。
その逆に,頭部の動きや位置によって認知的判断に影響を及
ぼすことも報告されてきた。Wells & Petty(1980)は,首を縦
に振るという頷きの動作を行うと,他者の意見を受け入れや
すくなることを明らかにした。頭部を前傾する姿勢は,否定
的感情を生起させたり,前頭前野の活動を低下させるという
研究もある(菅村・芝原,2002;Sugamura et al., 2007)
。
しかし,首を傾げることで疑問を抱いたり,不審に思った
りするかどうかについて検討した研究はほとんど見られない。
頭部の動作や位置に関する先行研究に基づけば,首を傾げる
姿勢も,認知判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる。
本研究では,頭部の右傾や左傾によって,文章の内容や他
者に対して,疑問や不審が生じるか検討する。仮説として,
首を傾げると疑問が強まり,他者の性格や能力,文章の論理
を厳しく評価するだろうと推測する。
方 法
大学生 82 名(男性 22 名, 女性 60 名)が実験に参加した。
視覚の実験という名目で,参加者には覗き窓から箱の中を見
てもらった。覗き窓には,右斜め,左斜め,水平の3通りが
あり,それぞれにより,頭部の右傾,左傾,無傾を操作した。
箱内には刺激提示のノート型 PC と質問紙があった。被験者
内計画で,刺激毎に頭部の角度がカウンターバランスされた。
提示した刺激は,(a) 対人認知(会社の人事採用の仕事をし
ている場面を想定し,3 名の人物の性格などに関する文章を
読み,
社会性や仕事への関心など 7 項目 7 件法で評定)
,(b) リ
クステイキング行動(信号無視,道路横断,駆け込み乗車に
ついて危険度と自分がその行動をとる確率を%で回答)
,(c)
論理的思考(非論理的な部分を含む 3 つの記事について,
「良
く書けているか」
「筋は通っているか」
「賛成できるか」
「納得
できるか」の 4 項目 4 件法で評価)であった。
その他,首を傾げた感覚の強さと刺激などの見えやすさを
4 件法で尋ねた。実験終了後,実験者は参加者にディブリー
フィングを行い,謝礼を渡した。
結 果
実験意図に気付いた 3 名を除いた 79 名を分析対象とした。
対人認知・リスクテイキング行動・論理的思考の項目ごとに,
頭部の角度(3:右・左・無)を要因にした反復測定(信頼区
間 Bonferroni)を行った。その結果,すべての項目で有意な差
は見られなかった。
頭部の角度(3:右・左・無)を要因とした 1 要因 3 水準の
分散分析を行った結果,対人認知において角度の効果が見ら
れた。非常に良い性格特性をもつ人物の「仕事への関心」を
評価する項目で有意差があり(F[2,76]=5.213, p=.008, η2=.12)
,
Bonferroni による多重比較の結果,右傾(M=4.4, SD=1.5)が
無傾(M=5.6, SD=1.1)よりも仕事への関心を低く評価した(p
=.006)。非常に悪い性格特性をもつ人物の「長所」の評価で
も有意傾向が示された(F[2,76]=2.944, p=.059, η2 = .07)
。多
重比較の結果,右傾(M=3.7, SD=1.3)では,左傾(M=2.9, SD=1.2)
より長所を高く評価する傾向が見られた(p=.070)
。リスクテ
イキング行動と論理的思考では,有意差は見られなかった。
性別(2:男・女)×頭部の角度(3:右・左・無)の 2 要因
6 水準の分散分析を行った。その結果,対人認知と論理的思
考では複数の箇所で性差が見られたが,条件の主効果と交互
作用は確認されなかった。リスクテイキング行動の「その行
動をとる確率」の評定では,頭部の角度の主効果(F[2, 154]=
3.866, p=.023, η 2=.08)と交互作用(F[2] = 3.447, p = .034, η2
=.07)が有意であった。多重比較の結果,左傾の時(M=53.7,
SD=3.5),無傾(M=40.7, SD=4.0)よりも行動する確率を高く
見積もることが示された(p=.033)
。また,左傾のときに男性
(M=63.5, SD=6.0)は女性(M=43.9, SD=3.6)よりも行動しや
すく(p=.007)
,男性は左傾(M=63.5, SD=6.0)の方が無傾(M=
38.6, SD=6.0)よりも行動する確率を高く見積もった(p=.014)。
考 察
対人認知に関しては,右傾時には,性格の良い人物の仕事
への関心を低く判断し,悪い人物の長所を高く評価する傾向
があった。性格の良い人の関心や悪い人の長所は文面にはな
かったため,参加者が文章全体から推測する必要があった。
ハロー効果(Thorndike, 1920)より,良い特性をもつ人物は
仕事への関心も高く,悪い特性をもつ人物は長所もないと推
測される可能性があると考えられるが,首を傾げることでそ
のような判断プロセスに疑念が生じ,バイアスが低減された
のかもしれない。
リスクテイキングに関しては,左傾時に,危険な行動をし
やすくなった。今回は,リスクテイキング行動を社会的に危
険とされ,禁止されているルールと捉えた。首を傾げること
でルールを疑問視し,危険な行為をしても問題はないと評価
しやすくなったのかもしれない。論理的思考に関して,首傾
げの効果が見られなかったのは,刺激として用いた文章の説
得力が非常に高かったため,疑問が生じる余地がなかったこ
とも要因の1つであろう。
本実験は,首を傾げる姿勢の対自効果に関する探索的な研
究であった。全体を通して,首を傾げると疑い深くなるとい
う仮説は,部分的に支持されたと言える。ただし,その効果
には,傾ける方向の左右差も見られたため,今後は,普段首
を傾げる方向や利き手など個人差の検討の他,頭位傾斜の症
状をもつ人の認知的特性の調査などが期待される。
引用文献
Wells, G. L., & Petty, R. E.(1980)
.The effects of overt head
movement on persuasion: Compatibility and incompatibility of
responses. Basic and Applied Social Psychology, 1, 219-230.
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