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研究会推薦博士論文速報
★ ★ ★ ★ ★ 学位論文題目 研究会推薦博士論文速報 ★ ★ ★ ★ ★ 組込みリアルタイムアプリケーション統合のための 階層型スケジューリング ★ 基 応 専 般 特集 Quick Report on Doctoral Theses Recommended by IPSJ SIGs EMB ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 松原 豊:名古屋大学大学院情報科学研究科附属組込みシステム研究センター 研究員 ★キーフレーズ [背景]自動車に搭載される制御コンピュータ(ECU)の増加 [問題]複数の ECU の安全な統合 [貢献]ECU 統合のためのスケジューリングアルゴリズムの提案 ■自動車制御システムにおける ECU 統合の課題:ハードリア ルタイム性を要求される自動車制御システムは,低燃費化,走 行性能向上などの目的から,大規模化,複雑化が進んでいる. 現在のシステムでは,エンジン,ステアリング,ブレーキなどの 制御対象ごとに ECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる制 御コンピュータが用いられている.ECU の数は,多い車種で 100 個程度まで増加しており,コスト増加や ECU 搭載スペー ス不足が問題となっている.ECU 数を減らすためには,複数 は,アプリケーションごとに固定優先度ベーススケジューリン の ECU を 1 つに統合する必要があるが,ECU で動作するソ グでタスクをスケジュールするスケジューラと,EDF(Earliest フトウェア (アプリケーションと呼ぶ) も大規模化,複雑化して Deadline First)でアプリケーションをスケジュールするスケジ おり,統合するのは容易ではない. ューラを階層的に持つ.アルゴリズム 1 には,すべてのタスク 技 術 的 な 問 題 の 1 つ に,ECU に 搭 載 さ れ る リアルタイ の起動時刻が分かるという前提があるが,実際にはこの前提 ム OS(RTOS と呼ぶ)が保護機能を持っていないことがあ に合わないアプリケーションも存在するため,この前提を取 る.RTOS に保護機能がないと,複数のアプリケーションを り除いたアルゴリズム 2 も提案した.最後に,提案アルゴリズ 1 つの ECU に統合した場合に,あるアプリケーションの不具 ムの動作性能と実現可能性を明らかにするため,RTOS に階 合が,他のアプリケーションの障害を引き起こす可能性があ 層型スケジューラを実装するためのフレームワークを開発し, る.その結果,動作検証において障害要因の特定が困難にな 実機でオーバヘッドやメモリ消費量を評価した. る.RTOS の保護機能には,メモリ保護に代表される,資源へ ■結論:本研究では,ECU 統合を実現するためのスケジュ のアクセス保護と,時間多重される資源に対する時間保護が ーリングアルゴリズムとその実装技術を開発し,実用的な性能 ある.従来の時間保護機能は,統合後のアプリケーションの で実現可能であることを明らかにした.本研究の成果が組込 リアルタイム性を保証しないものが多く,ECU 統合の検証負 みリアルタイムアプリケーション統合の実現に貢献するとと 荷を低減する標準技術にはなっていない. もに,RTOS 技術の発展に寄与することを期待する. ■本研究の成果:最初に,アプリケーション統合における問 題を指摘し,時間保護の要件を 3 つに整理した.次に,それら の要件を満たすアルゴリズム 1 を提案した.このアルゴリズム 推薦研究会:組込みシステム 推薦文:本論文は,組込みリアルタイムアプリケーションのため の,アプリケーション単位でプロセッサ時間を保護する階層型スケ ジューリングアルゴリズムを提案している.本研究会では,今後ま すます大規模,複雑化する組込みシステムに重要となる保護機能付 き RTOS のための先進的な研究として評価し,推薦論文として選定 した. 16 情報処理 Vol.53 No.3 Mar. 2012 (2011 年 12 月 1 日受付) 取得年月:2011 年 3 月 学位種別:博士(情報科学) 大学:名古屋 大学 著者からの一言 本研究を進める中で,学術的な研究 成果を基盤として,数多く の産学連携共同研究,および産学官 連携プロジェクトに携わる ことができました.今後も,研究成果 の実用性を意識しながら, 組込みシステム分野の技術的な発展 に貢献できるよう,研究開 発活動を継続してまいりたいと思い ます. ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★