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長大橋の耐風安定化に関する研究業務

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長大橋の耐風安定化に関する研究業務
長大橋の耐風安定化に関する研究業務
Study on Aerodynamic Stabilization of Long Span Bridges
松本
1.
勝*
研究の目的
湾岸線西伸部橋梁の耐風安定化に関連した構造物の空力特性に関する研究を行う。
2.
研究の方法
(1) 構造体の空力特性に及ぼすカルマン渦の役割に関する検討
構造物の耐風安定化を図ることを目的として、斜張橋ケーブルの空力振動の発生機構を解明す
るために不可欠であり、また構造物(Bluff Body aerodynamics)の渦励振、ギャロッピング、ね
じれフラッターなどの耐風性状、空力性状にカルマン渦がどのような影響を与えるのかを考
究・検討する。
(2)マルチモードフラッター解析と2自由度フラッター解析の比較検討
対フラッター評価の精緻化および合理化を図ることを目的として、2自由度(鉛直たわみ・ね
じれ)フラッター解析と3自由度(鉛直たわみ・ねじれ・水平たわみ)フラッター解析のそれ
ぞれの特性について比較検討を行い、どのような場合に、マルチモード解析が必要となるかを
検討する。
(3)
長大橋の耐風設計に関する講習会の実施
長大橋の耐風性、特に構造物の渦励振
およびフラッターに関しフラッターモードとマルチモ
ードフラッターに関して、数値構造計算並びに多くの関連基礎知識、最新の関連研究の情報収
集、文献調査を通じて検討を加え、今後の長大橋の耐風安定設計に新しい知見を得ようとする
ものである。
3.
得られた成果
構造物の渦励振に関しては得られた成果は次のようである。
1. 片寄流れ、(Bias
Flow)、双安定流れ(bi-stable
flow)、流れの分枝(bifurcation)、渦励振
(VIV)、断面振動に伴う渦(MIV)準定常ギャロッピング(Quasi-steady galloping)、非定常ギ
ャロッピング(Unsteady-galloping)はすべてカルマン渦に関連して生じることが明らかとな
った。
2. 流れの再付着による up-stream
effect により剥離せん断層の不安定性が安定化されて生じる
渦(IMPV)も本質的にはかカルマン渦といえる。なぜなら IMPV は断面後流では本来の交番渦で
あるカルマン渦と同じ交番渦を発生させる。
3. MIV は換算風速(reduced
velocity
Vr=V/(f0D))が Vr=1/St(St:ストロハル数)以下の低風
速域において生じ、Vr=1/St 付近で最も増幅されることにより VIV が発生する。VIV はMIVに
よって生じるフラッターといえる。
4. VIV が発生しているとき、ある特定に風速域および振幅域においてカルマン渦(KV)が存在す
る。つまり、VIV は物体振動に巻き込まれた状態(lock-in)で生じる渦により発生されるもので
*
京都大学・名誉教授
なく、KV とは異なる MIV による励振であることが明らかとなった。
Lock-in という現象は起
こらないといえる。
5. 断面後流にスプリッター板を挿入することにより生じる非定常ギャロッピングでは、揚力係数
勾配が 0 または小さな正の状態でも発生することがあり、準定常ギャロッピングで成立する den
Hartog
の条件に無関係に生じることが明らかとなった。
6. カルマン渦が抑制されたときに生じる強力な偏り流れは、断面振動に伴う流れの変化の効果(渦
の生成も含めて)が、偏り流れにより抑制されるために渦励振、ギャロッピングを安定化させ
る効果がある。
また、フラッターに関連して得られた成果は、
1. マルチモードフラッターは、基本的に leading
mode
としての基本曲げ・ねじれ 2 自由
度フラッターに他の高次モードが影響してフラッター限界風速が 2 自由度フラッターの場
合に比べ変化する。この時、断面形状並びに構造物の振動特性に応じて大きくなる場合と
小さくなる場合が合うことを明らかにした。
2. マルチモードフラッターの限界風速に対して、2 自由度基本モードによるフラッターがね
じれ分枝で生じる場合には、撓みの高次モードモードが、またたわみ分枝で生じる場合に
は、ねじれの高次モードが影響することを明らかにした。
3. ねじれ分枝から撓み分枝へのフラッター分枝の switching
は曲げ・ねじれの位相差が4
5度付近において生じることを明らかにした。
4. 曲げ・ねじれ連成フラッターのフラッターモードを位相差に応じて 4 つのモード(T0
モ
ード 、H-90 モード、T180 モード、H90 モード)のうち、2 つのモードの組み合わせ(T0、
H-90)および(T180、H90)で表せることを明らかにした。
講習会に関しては、阪神高速道路管理技術センターの橋梁技術者を対象に「長大橋の耐風設計」お
よび「斜張橋のケーブル空力振動」について行いこれらの課題についてその現状の技術状況と今後
の課題について説明し、知識の普及に努めた。
4.
謝
辞
各種の資料収集、吊橋、斜張橋の動的解析、multi-mode
flutter解析において、宮花邦宏氏(綜合技
術コンサルタント)、伊藤靖晃氏(清水建設技術研究所)、松宮央登氏(電力中央研究所)、井上浩男
氏(三井造船)、松田一俊氏(IHI)、村上琢哉氏(JFEスチール)、大窪一俊氏(鹿島建設技術研究所)、渡
邊裕規氏(綜合技術コンサルタント)より協力を得たことを記し、各氏に謝意を表します。
参 考 文 献
C.H.K. Williamson, A. Roshko (1988): “Vortex formation in the wake of an oscillating cylinder”, Journal of Fluids
and Structures 2, pp.355-381
D. Brika, A. Laneville (1993): “Vortex-induced vibrations of a long flexible circular cylinder”, Journal of Fluid
Mechanics 250, pp.481-508
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of Fluid Mech., vol.163, pp 149-169
M.Matsumoto, M.Hashimoto, T.Yagi, T.Nakase,T.Maeta, (2008), “Study on the role of Karman Vortex
th
Galloping of Bluff bodies”, Proc. of the 9 FIV, Prague
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M.Matsumoto, T.Yagi, J.H.Lee, K,Hori, Y.Kawashima(2006),” Karman vortex effect on aerodynamic forces to
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Y.J.Ge, L.S.Xu, W.MZhang, Z.Y.Zhou, ”Dynamic and Aerodynamic Characteristics of New Suspension Bridges with
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M.Matsumoto, H.Matsumiya,”New Consideration on Flutter Properties based on Step-by-Step Analysis”, Journal of Wind
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松本 勝, 松宮 央登 “明石海峡大橋のフラッター特性に関する検討”,土木学会論文集A, Vol. 65 (2009) No.
3,pp.630-644
松本 勝, 松宮 央登, 藤原 慎也, 加藤 嘉昭, “step-by-step解析による連成フラッターの発生機構に関する
研究”土木学会論文集A, Vol. 65 (2009) No. 4,pp.859-872
阿部和浩、“超長大橋分離箱桁断面のフラッター安定性に関する研究”、京都大学大学院工学研究科環境地球
工学専攻修士論文、平成11年、3月
水野恵介、“連成フラッターにおける分枝のスイッチング特性及びその応用に関する考察”、京都大学大学院
工学研究科社会基盤工学専攻修士論文、平成17年、3月
松宮 央登、“橋梁基本断面の連成フラッターに関する研究、”京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻修
士論文、平成20年、3月
京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻構造工学講座橋梁工学分野、(財)防災研究協会、“床組構造に着
目した長大橋の耐風安定性に関する調査研究業務”、阪神高速道路株式会社受託研究成果報告書、平成20年3月
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