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『第六章 所得、貯蓄および投資の定義

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『第六章 所得、貯蓄および投資の定義
藤原ゼミナール 2013 年 6 月 4 日
J.M.ケインズ著 塩野谷祐一訳『雇用・利子および貨幣の一般理論』まとめ
文責:寒川達也
『第六章 所得、貯蓄および投資の定義』
報告:経済政策学科 2 年 塩川悠希
司会:経済学科 2 年 平間友梨
まとめ:会計ファイナンス学科 3 年 寒川達也
第1節
所得
A + G − A1
※A:企業者が完成産出物を消費者または他の企業者に売却した一定額
※A1:企業者が他の企業者から完成産出物を購入した一定額
※G:期末における資本設備
当期の所得という時、A + G − A1 から、前期から引き継いだ設備が貢献した額を差し引く
⇒その額を計算する原理として、(1)生産に関連した原理と、(2)消費に関連した原理がある
(1) 生産に関連した原理
・Gは当期中に維持改善 or 産出を生産するため摩耗・償却された純結果額
⇒生産せずとも維持管理や改善のための最適額がある
・このB′という費用を支出したため、資本設備が期末にG′となる仮定をすると、
(G′ − B′)は資本設備が生産する為に使用されなかったと仮定した場合の前期から保持さ
れてきた極大純価値を示す
(G′ − B ′ ) − (G − A1 ) … Aの生産に伴う価値犠牲 = Aの使用者費用 = U
~コラム①~
※藤原ゼミでは、なぜUが(G′ − B′ ) − (G − A1 )で表されるのかを考察した。
・(G′ − B′ ) … 期首にあったG0 という資本設備を使用しなかった場合に残った価値
・G … 上記のG0 を使用した場合に残った価値
・A1 … 上記のG0 を使用した際に投入された原材料費
とすると、与式は
(G + A1 ) − (G′ − B′ )
と表すこともでき、こちらの方が理解しやすいという結果を得た。
※使用者費用U + 要素費用F = 主要費用
⇒従って、企業者の所得は、AのうちAの使用者費用を上回る部分=粗利潤
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藤原ゼミナール 2013 年 6 月 4 日
J.M.ケインズ著 塩野谷祐一訳『雇用・利子および貨幣の一般理論』まとめ
文責:寒川達也
⇒社会全体の総所得はA − Uに等しくなる
⇒企業者が、他の生産要素に対してどの程度の雇用を提供するか決める時に最大化し
ようとするのは、この所得が他の生産要素に対する支出をどれだけ上回るかという期待額
※Uはマイナスになりうるが、Aの増加に伴う限界使用者費用
∆U
∆A
は主にプラス
☆社会全体として…
当期総消費C = ∑(A − A1 )
当期総投資I = ∑(A1 − U)
⇒完全に統合された経済系(A1 = 0)では、C = Aであり、I = −U = G − (G′ − B ′ )
※以上の定義より、限界売上金額を限界要素費用と同一視することが可能
また、使用者費用を 0 と仮定する場合、供給価格 = 限界要素費用となる
供給価格:Uから供給価格を除外することは総供給価格の場合適当だが、
一企業についての産出物一単位の供給価格の問題にとっては不適当
限界要素費用:Zw = φ(N)を総供給関数とする
次に、限界生産物の売上金額は限界要素費用に等しい
従って、
∆N = ∆Aw − ∆Uw = ∆Zw = ∆φ(N)
∆N = ∆φ(N)
N = φ(N)
すなわち
1 = φ′(N)
ここの企業者に妥当する上記の方程式の各項は企業者全体について集計しうる想定
仮に賃金が一定、その他要素費用が賃金支払総額の一定割合ならば、Zwは貨幣賃金の逆数の直線
ただし、訳者は「理由は詮索しない」としながらも、このケインズの想定を誤りであるとした。
(2) 消費に関連した原理
企業者の自発的決意とは無関係に起こる資本設備の価値の非自発的な損失(or 利得)
この非自発的な損失は、以下の 2 つに分けることができる。
(i) 補足費用(= V)
・予想される減価償却のうち、使用者費用を越える分
・どれだけ消費し貯蓄することができるかを考えている企業者にとって、Vの持つ心理的
効果は事実上、粗利潤から差し引かれたものである。よって、所得勘定に計上する。
・同様の人間が消費者であった場合、補足費用は主要費用の一部であるかのよう作用する
⇒ A − U − V = 総純所得(消費の大きさに関連する1つの概念)
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藤原ゼミナール 2013 年 6 月 4 日
J.M.ケインズ著 塩野谷祐一訳『雇用・利子および貨幣の一般理論』まとめ
文責:寒川達也
(ii)意外の損失(or 利得)
・非自発的で予想不可能なもの(市場価格の予想外の変動、異常な陳腐化 etc…)
⇒この費目下の損失は、純所得を計算する際も考慮されず、資本勘定に計上する。
・純所得のもつ因果的な重要性は、Vの大きさが当期の消費量に及ぼす心理的影響
⇒純所得は一般の人が消費にどれだけ支出するかを決める時、自分の使える所得として
認識する額であるから
⇒よって一定の意外の損失はそれと同額の補足費用と同じ効果を持たない
●補足費用と意外の損失とを区別する線
⇒ある程度慣習的・心理的
⇒会計方法の選択に依存
国税庁当局では、設備入手時、VとUの合計値を算出し、変化の有無に関係なく、耐用
期間、補足費用を不変維持させるなど
ケインズの提案 ①基礎的補足費用 ②当座的補足費用
かくして補足費用とは、典型的企業が配当を行う目的、あるいは彼の消費の大きさを決定
する目的で、純所得とみなすものを計算する際、彼の所得から差し引く額の合計
~コラム②~
※藤原ゼミでは、非自発的損失、および意外の損失について次のように考察した。
資本の価値が損なわれる原因
使用者費用
補足費用
非自発的損失
意外の損失
・補足費用……非自発的損失のうち、期首に費用として予想できるもの。具体例としては、経常的減価
償却費、設備の故障、地震・台風・火災・洪水などの自然災害による故障のうち、期首
に保険をかけるなど、ある程度は予想可能なもの。所得勘定で計算する。
また、本文中の「粗利潤の変化とまったく同じ仕方で影響を及ぼしやすい」とは、絶対
値が同じだけ変化するという意味であって、その変化の割合は異なる。
・意外の損失…非自発的損失のうち、期首に費用として予想できないもの。具体例としては、隕石の落
下による故障や、戦争による故障・停止、大震災に誘発された火災による故障など、期
首に予測不可能なうえ、現在では起こる確率がかなり低く、保険がきかないもの。厳密
に計算できないため所得勘定に入れるべきでなく、期末に資本勘定として計算する。
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藤原ゼミナール 2013 年 6 月 4 日
J.M.ケインズ著 塩野谷祐一訳『雇用・利子および貨幣の一般理論』まとめ
文責:寒川達也
~コラム③~
※p62「訳者注 p38」~『貨幣論』と『一般理論』における貯蓄および投資の比較~
J.M.ケインズの 1930 年の著書『貨幣論』においては利潤は所得に含まれていない。
𝓍′ …『貨幣論』における利潤=現実の利潤-正常利潤(ただし現実には、正常利潤 ≒ 0)
Y′ …『貨幣論』における国民所得
S′ …『貨幣論』における貯蓄
Y …『一般理論』における国民所得
S …『一般理論』における貯蓄
C …『貨幣論』および『一般理論』における消費
I …『貨幣論』および『一般理論』における投資
また
Y − 𝓍′ = Y′ = C + S
…①
Y′
…②
+ 𝓍′
=Y=C+I
Y − Y ′ = 𝓍 ′ = I − S′ = S − S′
①,②より
I=
③より
S′
+ 𝓍′
…③
=S
I ≠ S′
つまり
以上より、
『貨幣論』においては貯蓄と投資が等しくなっていなかった。
第 2 節:貯蓄と投資
貯蓄:所得のうち消費支出を超過する額(この定義に対して誰もが意見一致する)
・
「所得」の定義は上記で定義済み
・
「消費」の定義を行う場合、消費者としての購入者なのか投資者としての購入者なの
かを区別する必要がある(消費者と企業者との間に線をひく)
A1を一企業者が他から買い入れたものの価値として定義した際、問題は解決している
⇒ 消費支出は∑(A − A1 ) ※∑Aは一定期間内に行われた全販売額
※∑A1は一企業者から他の企業者へ行われた全販売額
以下Σを省略し、A、A1、Uでそれぞれの総額を表す
所得:A − U
消費:A − A1
⇒ 貯蓄:A1 − U
※同様、純所得の超過、A1 − U − V = 純貯蓄である
上記内容より、当期の投資も導くことが可能 ⇒投資は貯蓄と定義したものに等しい
なぜなら、その期間の所得のうち消費に振り向けられなかった部分であるから
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藤原ゼミナール 2013 年 6 月 4 日
J.M.ケインズ著 塩野谷祐一訳『雇用・利子および貨幣の一般理論』まとめ
文責:寒川達也
A − UがA − A1 を超過する部分、A1 − Uはその期間の生産活動の結果として資本設備に
付加されたもの ⇒ その期間の投資
※同様、A1 − U − Vがその期間の純投資となる
貯蓄:A1 − U 個々の消費者の集合的行動の結果
投資:A1 − U 個々の企業者の集合的行動の結果
所得 = 産出物の価値* = 消費+投資
貯蓄 = 所得-消費
ゆえに 貯蓄 = 投資
*使用者費用は差し引いてある
貯蓄の額と投資の額との間の均衡関係 = 生産者と購入者の取引による双方的性質
所得:生産者が産出物を売り得る価値のうち使用者費用を超える部分によるもの
⇒この産出物の全体は消費者あるいは他の企業者のどちらかに売られたもの
当期の投資:彼が他の企業者から購入した設備が彼自身の使用者費用を超える額
⇒所得のうち貯蓄と呼ぶ消費を超過する額 = 投資と呼ぶ資本設備に付加される額
※同様のことが純貯蓄および純投資にもいえる
_____________________________________________________________________________
参考文献
『岩波現代経済学辞典』伊藤光晴、岩波書店、2004 年
『ケインズ一般理論』宮崎義一、伊東光晴、日本評論社、1974 年
『雇用、利子および貨幣の一般理論(上)』ケインズ著、間宮洋介訳、岩波書店、2008 年
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