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日産追浜工場見学会記録 作成者 高林純一 1.日時: 平成 18 年 7 月7

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日産追浜工場見学会記録 作成者 高林純一 1.日時: 平成 18 年 7 月7
日産追浜工場見学会記録
作成者
1.日時:
高林純一
平成 18 年 7 月7日(金) 13:30∼17:00
2.見学先:
日産自動車株式会社追浜工場
3.参加者:
48 名
会員: 永易 憲三,市川 英彦,山内 尚隆,千田 成之,高瀬 昭三,石井 陽一郎,稲垣 秀夫,
内田 潤一,尾島 正男,日下田 九十九,寺田 哲朗,外山 咊之,廣川 一男,荒牧 國弘,田中 満
生,渡辺 秀也,山岸 千丈,青山 祐造,前田 知久,遠藤 信明,吉田 康夫,高橋 洋之介,横堀
仁,宇高 克己,植木 正憲,中島 正明,原 眞一, 根木 茂人(以上卒年順),高林 純一
会員外: 石原 幸正,金古 次雄,江上 浩二,石黒 隆,遠藤 卓朗(蔵前工業会相談役,元日
産(株)副社長・元追浜工場長),初谷 照夫,松村 秀雄,野村 脩,村口 昌之,富岡 啓太郎,
山形 隆康,小池 敏正,今岡 保郎,増田 稔,高橋 邦芳,宮田 友広,石橋 良信,田中 實(蔵
前工業会理事長),日下部 勝(以上申込順)
4.配布資料
追浜工場のご案内
New Line Up−総合パンフレット 2006 Vol.2
環境報告書 2005 ダイジェスト版
5.見学前説明概要と質疑応答
瀧口雅人 圧造課長
スケジュール説明
木村昌平 工場長
会社概要
設立 1933 年 12 月 26 日,資本金 6058 億円(05 年),売上げ9兆4千億円(05 年連結),従業
員数:単独 32000 人,連結 184000 人(05 年 3 月),09 年に横浜に 2000 人常駐
国内拠点:車両生産工場3,組立工場2,総合研究所
海外拠点:15 カ国 23 拠点,100%出資:アメリカ,メキシコ,イギリス,スペイン,南アフリ
カ
05 年販売台数 356.9 万台
生産工場
車両組立:追浜,栃木,九州
ユニット工場:いわき,横浜
関連会社:日産車体,日産ディーゼル
関連会社:日産工機,愛知機械ほか
追浜工場概要
生産エリア,総研エリア,テストコース,物流エリアよりなり,
生産エリアは第 1∼第 3 工場,生産技術本部(圧型),車両保管倉庫(1 万台)よりなる。
車両組立は第 1・第 2 工場。
第 1 工場:マーチ,ノート,キューブ,キューブキュービック。1 ヶ月 360 時間で 2 万
台
(1 分に 1 台)。第 2 工場:マーチ,ティーダ,ティーダラティオ,ブルーバードシルフィ。1
ヶ月 360 時間で 2 万台(1 分に 1 台)。
沿革:1962 年ブルーバード生産開始。中研・テストコース備える。
1978 年 500 万台達成。92 年デミング賞。1000 万台達成。00 年座間・村山工場閉鎖に
伴いマーチ・キューブ立上げ。06 年 3 月累計 1465 万台。来年 1500 万台見込み。
敷地面積 171 万㎡
勤務
生産能力 1 ヶ月 4 万台
基準 8:00-17:00
2 交代 6:30-15:00,16:00-6:30
約 2900 人在籍,平均 42.6 歳,平均勤続 23.4 年
直接生産 70%2000 人,派遣(物流)3%,準直(検査・保全)20%,間接部門 7%
組織:総務部,工務部,品質保証部,製造部
主要工程:
エンジン等↴
樹脂成形→樹脂塗装↴
プレス→車体→塗装→車両組立→完成検査
00 年から国内向け 90%。国内景気動向に左右される。06 年は販売台数減り,製造台数も抑え
気味。第 1 工場のみは 2 交代中の1直のみ。
日産生産方式(NPW, Nissan Product Way)ビデオ上映
「同期生産」というべき方式で,販売店全国 3200 店舗で受注した顧客注文内容を本社コンピュ
ータにて受け,生産計画工程進捗等を一括管理し,受注後 4 日で完成。
部品納入業者からの納品も毎日計画的に納期厳守で納品。プレスは翌日生産分のみ実施。車両
メインライン(溶接,塗装,組立)はフレキシブルな生産ラインとなっており,同一ライン上
で異なるモデルを 1 台ずつ生産。高さ可変コンベア使用。運転席の計器類もモジュール(コッ
クピット・モジュール)として車両メインラインすぐ脇のサプライヤー(関連会社担当)で生
産し,モジュールとして一度に組込む(部品輸送費等,削減)。完成車両も計画的に一括輸送。
最終的に販売店は納期どおりに納車できる。
木村工場長からの補足:この方式の基礎部分は 80 年代前半から準備してきた。3 年かけてつくり,
94 年から開始。97 年からは海外でも始まった。世界規模で統一している。
木村工場長との質疑応答
NPW はゴーン氏以前からか?
①
そのとおり。ゴーン氏来社は 98 年。社長就任は 99 年。
②
NPW の完成度は?
第 1 領域:工場内同期。第 2 領域:他工場との同期。第 3 領域:サプライヤーとの部品提供の
同期。第 4 領域:販社の同期。第 5 領域:納車の同期。この順で完成させており,現在は第 3 領域
で努力中。追浜工場は第 3 領域中で日産内では進んでいる方である。
NPW 導入により生産車種はどう変わったか?
③
ふえた。ブルーバード,セドリック,スカイラインのほかはすべて名前が変わった。
④
同期の評価検討は?
時間どおりの進捗と受注順番どおりの進捗で検討する。毎月集計し工場間で比較競争する。海
外拠点も同列に比較する。
⑤
NPW は狙いどおりにできているのか?
生産の同期で問題となるのは,人手が関係する,塗装の手作業と組立作業の習熟であり,さら
に設計変更の発生時も問題となる。前者の習熟については,シミュレーション画面での練習で手
順を習得する。人手が関係する部分は,いかに短縮するか課題はまだ残っている。
⑥
世界中の工場で同じレベルか?
同じではない。不十分なところには支援を行なっている。中国での立上げでは,準備を充分に
行なって,一気にレベルを日本と同じレベルにそろえ,賞をもらった。同じにやれば同じに結果
が得られるのは実験済みと考える。
NPW に対する地震等のリスク対策は?
⑦
場所による地震の発生予測にしたがって,耐震対策への投資や在庫量の調整で備える。完全に
倒壊しても,1 ヶ月で復旧できる。なお,同期であるから,止まった分はその分だけ,うしろに
しわ寄せされるにとどまるのみ。
⑧
昔はモデルチェンジがあった場合は,ラインのスピードを初めは落とし,徐々に上げていく
が,NPW ではどうか?
昔は 6 週間かかった。NPW では,2 週間から 1 週間で定常化する。試作については,特別スケ
ジュールやライン外で実施する。
⑨ 女性や高齢者の使い方は?
組立ラインは,作業位置ごとに高さを変えることができ,作業しやすさはよくなっている(し
ゃがみ,背伸びは不要)ことで対応している。すでに新入社員の 20%は女性である。なお,人の
使い方では他社も同様と思うが,技能伝承が一番頭が痛い。基本技能や,現場での改善力の訓練
は,海外人も含め,グローバル・トレーニング・センターで現場のベテランが指導している。
⑩
最近の景気動向と販売台数の変遷が対応していないがどういうことか?
エレクトロニクス産業などとは必ずしも対応しない。国内全メーカーの自動車の全受注数は現
在,前年比 5∼7%減少している。なお,軽自動車の比率がふえつつある。維持費が安く,税金も
6 万円安い。ガソリン代高騰や若年層のフリーター・ニートの増加も影響している。
⑪
サプライヤーとしての部品発注先は,数年前には,特に決めないで競争させたと聞いたがど
うしているか?
部品発注先は現行生産車では決めている。モデルチェンジ時に変えることがある。
⑫
海外でも生産拠点周辺にサプライヤーは備えているのか?
全部は抱えていない。遠隔地から運ぶ部品もある。
⑬
欧米メーカーとの生産状況の比較はどうなっているか?
欧米では,販売会社に車をならべてそれから買わせる方式。同列に比較できない。ただし,そ
のような売り方であるから完成車の在庫が必要であり,在庫は 6 倍。
⑭ 部品の受入れ検査はどうしているか?
受入れ検査はせず,メーカー保証による。ただし,メーカーへの監査はしている。なお,設計
変更があった場合は,初物の入荷時のみ受入れ検査をする。
1 ヶ月 3 万台生産,部品点数 1000 点として,全部を検査することはできない。品質保証は,組
立後の機能検査で行なっており,数 ppm の不良が出るが,ロットアウトにしている(主にキズ)。
完成車は,機能については,顧客がいじる部分 1500 ステップを確認項目としてテスターライン
で 1 台ずつチェックする。コンピュータ部分は,模擬データでチェックする。
⑮
客からの受注仕様をすべて本社に回すのはなぜか?
共通部品や,ルノーからの取寄せ部品もある。本社で一括管理しないと同期はできないから。
改善可能部分はこれから検討する。
⑯
IC タグによる管理は?
エンジン,ミッションなどの 10 年保証の大物のロケーション管理のみに使っている。
5.見学時説明概要
圧造工場を徒歩で見学:−
5 メイン・ラインがあり,型は約 500 ある。7∼10 トンの鋼板コイルから裁断→プレス成形な
ど。ほとんど機械が行ない,人は主に監視のみ。(見学者の遠藤卓朗氏は初代圧造課長)
バスにより追浜地区内移動,国内外向け部品・完成車積出し受入れ埠頭を巡回:−
工場内に部品供給センター4 箇所(購入部品の集積所)。自動車 1 台あたり 3 万点の部品を使用。
そのうち 70%を部品会社から購入。追浜地区に協力部品会社が 10 数社ある。
専用埠頭(国内用と国外用あり。本牧,九州にも専用埠頭あり)。追浜からは栃木工場製・日産
車体社製も含め,主に米・欧に輸出。国内向けは九州工場製完成車は追浜でおろす。船積みは,1
台ごとに運転手が行ない,1 時間で 100 台,10cm 間隔で積込む。完成車の正面には,酸性雨によ
る塗装変色を防ぐためのペイントガードフィルムのテープが貼られる。
多数のキャリーカーは販売店への国内陸送用。
旧海軍航空隊格納庫はプレス型倉庫として使用。
第 1 組立工場を徒歩で見学:−
1 ラインの長さ 850m。
スポット溶接のラインは,1 本のラインで 3 車種混流。ロボット 320 台使用。車体 1 台あたり
溶接 3000 箇所(92%がロボットによる自動化工程)。各所にラインの流れの状況を示すモニター
(事務室にも同様のものあり。社内のイントラネットで情報共有)があり,赤色表示部分は標準
の流れ時間より一定時間以上の遅れの発生を示す。見学時は頻繁に赤色表示が出たが,数秒で消
えていた。
トリムラインはコンベヤー床材は鉄板ではなく木材。ここで車種の異なる 1 台ごとの仕様書に
従い,車種混流の 1 台ごとに人が主に手作業で部品の組付けを行なっていき,その下流では点検
員が組付け状況点検を行なっている。各作業ごとに作業員が作業高さを設定できるようにライン
ができている。トラブル発生時は作業員が紐を引くとベルが鳴り交代要員が来る。一定時間以上
ベルが鳴るとラインの流れは止まる。部品仕様書の 6 割は客からの注文仕様。ラインと作業員は
2 時間動く。休憩 10 分後再開。作業員 1 人あたり 3 ポジションを受持ち,2∼4 時間でローテー
ションする。1 台ごとに異なる部品仕様書に従った部品の揃えは,ラインのすぐ近くにあるピッ
キング作業場で 1 台ごとの仕様書に従いピッキング作業員が部品を揃えていき,定期的に無人部
品供給車が各作業位置へ配給していく。コックピット・モジュールなどはラインのすぐ脇でサプ
ライヤー(関連会社)が仕様の異なる 1 台ごとに組立て,数m離れた,車体への組付け場所へ送
られ,らくらくハンドという器具により作業員は不自然な姿勢を取らずにラインの流れの中で組
付け作業を行なう。
完成車の検査は,フリーローラーテストという,車輪の下にローラーが設置された場所で,1
台ごとに作業員が運転席に座り,模擬的な走行状態で法的項目やブレーキなど機能検査を実施。
このようなラインにより 16 時間で 1 台ができあがる。
6.見学後説明と質疑応答
牧野寛幸 車両生産技術本部主管
車両生産準備におけるデジタルエンジニアリング
モデルが固まってから量産開始(新車発表)までの開発期間の短縮(従来 20.75 ヶ月→当手法
10.5 ヶ月)が目的。従来(2000 年以前)は図面等,紙による情報伝達であったので,不具合のフ
ィードバックのため,4 台も試作する必要があった。これをスタイル・デザイン,設計,生産技
術,サプライヤーの各段階ともデジタル(IT)での情報共有,デジタル上での検討により,1 回
の試作のみで検証することで済ませる一連の手法(コンセプト V-3P)を確立した。いわば現物が
ないままでデータのみで品質を保証するデジタルエンジニアリングであり,試作の一部を現物が
ないままでデータ上のみでデジタル(IT)的に評価検証するものである。以下に具体的に紹介が
あった。
デザイン面での検討は,ビデオ画面との合成で高速道路走行状態などを CG 合成し,デザイン
を実走状態模擬で柔軟に多面的に検討する。
設計では,紙ベースの技術標準をやめ,設計手順フローを作成し,設計手順のナビゲート化,
設計標準のテンプレート作成を充分に行なっておく。衝突安全性能の検討ならば,デジタル上で
車体変形量の±10%以内で予測できるようにしてある。実車を使わないのでコスト削減にも寄与
している。
生産準備でも,従来実車で行なっていたものをすべての検討をデジタル化し行なっている。サ
プライヤーからのデータも揃える。
プレスでは型設計も,たとえば A 車から B 車への切換えでは,
代表箇所のデータ群を扱うことで,板を絞っても割れないことを検証する。成形シミュレーショ
ンでの皺無発生の検証,プレス金型の自動設計,プレス工程中の搬送の干渉点検,型加工用 NC
データ作成の自動化などを行なっており,高精度加工による一発良品化を目指している。現状は,
従来プレス精度は 5 回で目標達成だったところを 3 回で達成しており,ばらつきも改善されてい
る。ロボットによる自動化ラインにおいても干渉やサイクルタイム内終了の検証をする。工場内
の機器配置もシミュレーションで点検し,シミュレーションからのデータと合っていない工場改
造はおかしいと言えるまでになっている。組立て作業性についても,作業中に必要な場所が作業
員に見えるかなどの検証,組付け作業手順習得訓練(ことばによる手順説明よりも模擬画面の方
が理解しやすい)などもデジタル模擬で実施している。
当手法により,試作前にデータ段階で 60%が前倒しになり,設計変更も 90%低減された。部
品寸法合格率も向上している。
従来は各モデル,各生産拠点ごとに生産準備を実施していたが,現在は,座間の生産技術セン
ターで集中的に検討準備した結果を海外拠点を含め直接持ち込み,立上げている。
牧野主管との主な質疑応答(講演内容と無関係のものは省略)
V-3P は何の略語か?
①
Value-up, Process, Product, Performance を意味する。
スタイルの検討のための市販 CG ソフトとの違いは?
②
基本的には同様のものであるが,市販ソフトそのままでは役に立たないので,それに手を加え
たものを使っている。
③
発表資料の入手は?
対外的に公表している資料はお渡しできる。
④
生産技術センターの人員数は?
全世界で 3000 人。3 次元 CAD 担当はその中の一部。デジタルエンジニアリング担当は 1000
人強。
⑤
設計における素材や材質面でのリサイクルや廃棄への配慮は?
現在の車両は,安全性の点から車体骨格部の重量は重くなっており燃費改善のために車体薄板
部の高張力鋼使用による板厚低減のために高張力鋼を使っているがリサイクルの点に問題はない。
プラスチック部品は 95%リサイクルできている。壊しやすく分別しやすくしてある。バンパーに
鋼を使わないのは,スタイル上,コスト面を含めて鋼では作りにくいためで,プラスチックやア
ルミ製になっている。
⑥
組付け作業員の負担への配慮は?
エルゴノミックスの点から,作業員の体に対する負担についても評価している。腰に負担がか
かりにくいよう,高さ可変の搬送ラインとなっている。ただ,自動化の点でのロボット使用より
人による組付けの方が速い。昔はラインの横に山ほどの部品を置いて組付けを置いていたが,モ
ジュール化して組付けるようにして作業効率等を改善している。
7.内田会長挨拶
見学に対する工場側へのお礼。
以上
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