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1.85m電波望遠鏡による開発・観測進捗 - NRO

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1.85m電波望遠鏡による開発・観測進捗 - NRO
For Large Scale Molecular Cloud Survey 12CO, 13CO,
野辺山ユーザズミーティング 2013/7/24~25 C18O(J=2-1)
1.85m電波望遠鏡による開発・観測進捗
◯ 徳田一起、西村淳、田中智博、藤賀志央里、大崎茂樹、岡田望、上月雄人、原田遼平、松本貴雄、村岡和幸、前澤裕之、 大西利和、小川英夫 (大阪府立大)、木村公洋(名古屋大学/大阪府立大)、西村美紀、澤村将太郎、山日彬史、 落合哲、下井倉ともみ、 土橋一仁 (東京学芸大学)、久野成夫 (国立天文台野辺山)1.85m 鏡グループ
Sub Ref.
Abstract
Main Ref.
我々は口径1.85mのミリ波サブミリ波電波望遠鏡を野辺山宇宙電波観測所に設置し、2010年度より科
学運用を開始し、2012年度には両偏波受信方式改良、観測効率を2倍に高めることに成功した。さらに
我々は広帯域分光計の搭載を進め、科学運用に耐えうる事を確認した。本ポスターでは1.85m鏡の紹介
および、両偏波受信機システムへの改良、広帯域分光計の搭載を報告する。後半では1.85m鏡で得ら
れた観測結果の一部(Taurus領域)について紹介する。 Receiver
Dewar
1.85m mm-­‐submm telescope
約3分角で12CO, 13CO, C18O (J=2-­‐1) 同時観測による Hot load
IF回路に工夫を施すことにより、12CO, 13CO, C18O (J=2-­‐1) を同時に受
信できるようにしている。 PLM
Development Dual polarizaVon Receiver
Fig. 3 RPG社のXFFTS 分光計の写真 改良も行っている(Fig. 4)。 Table 2 XFFTS 分光計諸元 AD : 5 Gsps Band width : 2.5 GHz Channel number : 32768 Sync Vme : 100 msec Fig. 4 従来のIF回路構成(上)と現在開発
を行っているIF回路構成(下) Fig. 5 分光計XFFTSの線形性評価の結果 El axis
M1
Test observaVons with wide band spectrometer 我々は2013年5月上旬、1.85m鏡にXFFTS分光計を搭載し、分光計の評価および試
験観測を行った。その結果について述べる。尚、このときのIF回路は従来のもの(Fig. 4 上) を用いた。ポジションスイッチおよびOTF観測をおこなった結果を、Fig. 6, 7, 8 に示
す。従来の分光計と同様な結果が得られることがわかったため、天文観測に耐えうる
と判断した。 Beam switching
chopper wheel
1 x ー ー √2 K・km/s Gray scale : 12CO Blue contour : 13CO Red contour : C18O Fig. 5 積分時間とノイズレベルの関係 観測効率が2倍に向上したといえる。 Az axis
Integrated Intensity
我々は1.85m鏡を用いて太陽系近傍分子雲、および銀
河面サーベイを推進いている(See also 西村他 本ミー
ティングポスター)。ここでは、一例としてTaurus 領域の
観測を紹介する。 データ収得時期 ・ AC240 : 2012/12 ・ XFFTS : 2013/5
Fig. 8 S140における分光計AC240とXFFTS
で収得した結果を積分強度で比較したも
1m
1回の観測は20秒積分である。ノイズレベ
ルが積分時間に対して一定の割合で減少
していることがわかる。また、H偏波、V偏波
を足し合わせることにより、ノイズレベルは
√2倍低減できることを確認した。これにより
ObservaVons
受信機に常温黒体を見せた状態で、
分光計直前に可変Ahを取り付けて
評価を行った。その結果、-­‐ 40 ~ -­‐15 dBmの間で、± 5%の線形性が保た
れていることがわ分かった(Fig. 5)。 我々は、銀河中心などの速度幅が大きい観
測ターゲットに対応させるため、広帯域の分
光計を導入する計画を進めている。導入す
る分光計はRPG社のXFFTSである(Fig. 3, Table 2)。また分光計搭載に伴い、IF回路の
M3
銀河系全面にわたる12COマッピングや、 13CO, C18O の高感度無バイアスサーベイを行うためには、更なる高
感度化、高効率化が求められていた。そこで我々は、OMT(Ortho-­‐Mode Transducer) を搭載することにより、
従来の片偏波受信方式から、両偏波受信方式へアップグレードを行った(Fig. 1)。 Fig. 1 OMTを含めた両偏波コンポー
ネントを受信機に搭載した様子 linearity EvaluaVon M2
観測効率を倍増〜両偏波受信機の開発
・ 積分時間とノイズレベルの関係 長時間積分した際でのノイズレベルの変
化を調べた。評価用のデータとして、毎OTF
観測の直前に収得している標準天体の
データ(ポジションスイッチ)を用いた(Fig. 2)。
New Spectrometer
1850 mm
アンテナ口径 1.85 m
12CO, 13CO, C18O (J=2-­‐1) ターゲット輝線 空間分解能 2.7 arcmin(FWHM) 主ビーム能率 ~ 0.6(ドームあり) 受信機雑音温度 ~ 100 K (@SSB) システム雑音温度 200 ~ 400 K (大気込み) ビーム伝送系 カセグレン-­‐ナスミス 受信機 2SB 分光計 AC240 (Band width 1 GHz ) 分子雲の物理状態(温度、密度など)を詳細に議論するためには
COの高励起線、かつ複数の同位体での同時観測が非常に重要で
ある。そこで我々は、1.85 m望遠鏡(以下、1.85m鏡)を独自に開発
し (Onishi et al. 2013)、これをもって銀河系分子雲の探査を行って
いる。 望遠鏡諸元をTable 1. に示す。受信機は2SB方式を採用し、
Instruments
Beam
1.85m鏡には、1 GHz帯域の分光計(AC240)
を搭載し、2012年4月まで観測を行ってきた。
しかし、12CO, 13CO, C18O の各輝線を1 GHzに
分配(1輝線300 MHz程度) していたため、観
測速度幅に制限がかかっていた。そこで
Table 1. 望遠鏡諸元 銀河系分子雲広域高速サーベイ
※ 背景の図 1.85m鏡の図 : Onishi et al. 2013 より 1.85m鏡で得られた銀河面第1象限12CO(2-­‐1)積分強度図 Fig. 6 OriKLに対してポジションスイッチ観
測行った結果。分光計AC240(旧)と、
XFFTS(新)で顕著な差は見受けられない。 Fig. 7 新分光計(XFFTS)を搭載した状
態で収得したS140のマッピング結果 line raVo (a) 12CO (2-­‐1) の。強度はXFFTSで収得した時の最大値
で規格化している。 Future works このXFFTS分光計(帯域は2 GHzに変
更)を片偏波両サイドバンド毎に搭載
し(合計 8 GHz帯域)、2013 年10 月より
科学運用を開始する予定である。 (Ⅰ)13CO (2-­‐1) / 13CO (1-­‐0) (Ⅱ)13CO (2-­‐1) / 12CO (2-­‐1) LVG analysis
(d) 13CO (2-­‐1) / 12CO (2-­‐1) (g) n(H2)
LVG の図
Taurus Molecular Cloud Taurus(おうし座暗黒星雲)領域はd~140 pcに位置する小
質量星形成領域である。太陽系に最も近い分子雲の1つ
であり、1.85m鏡で観測を行った場合、~0.1 pcスケール(分
子雲コアスケール) まで詳細に観測することが可能である。
また、OB型星やSNRによる影響を現在受けていない領域の
cm-­‐3 K・km/s (b) 13CO (2-­‐1)
Fig. 11 LVG近似計算の例。コントア上の数
字はそれぞれのライン比の値を示す。(Ⅰ)
と(Ⅱ)のライン比が決まれば、2つのコントア
の交点を求めることにより、密度と温度が
(e) 13CO (2-­‐1) / 13CO (1-­‐0) (h) Tkin 一意に決定できる。 尚、dv/dr(線幅・大きさ関係)は2とした。 ため、分子雲自身の物理化学過程を探るために極めて適
している。 我々は、2011年より同領域の観測を開始し、CI輝線や減
光との比較などから、化学進化過程の傾向や若い分子雲
候補の探査を行ってきた(橋詰 他 2012 NROミーティング)。
この領域は2013年1月をもって、全域サーベイを完了した。
観測諸元をTable 3に示す。 K・km/s (c) C18O (2-­‐1) Table 3 観測諸元 望遠鏡 観測手法 ターゲット輝線 有効空間分解能 グリッドサイズ 速度分解能 観測期間 総観測時間 総観測点数 ノイズレベル (f) C18O (2-­‐1) / C18O (1-­‐0) 1.85 m OTF (On The Fly)
12CO, 13CO, C18O (J=2-­‐1) 3.35arcmin (FWHM) 1’ x 1’ ~ 0.08 km/s 2011/2~5, 2012/2~5, 2012/12 185 時間 208,800 0.63 K (@Tmb スケール, dv=0.08 km/s) Velocity Integrated Intensity Image Fig. 9 に1.85m鏡により得られたTaurus領域における積分
強度図を示す。(a)を見ると、12CO(2-­‐1)は領域全体に渡って
広がっていることがわかる。 (b)は(a)よりも局在して分布しており、(a)よりも内部の構造を
捉えていることが伺え、フィラメント構造になっている領域も
存在する。(c)は(b)よりもさらに局在的に分布し、より高密度
な領域をトレースしていると思われる。このように3つの同
位体を同時観測する事により、Taurus領域の拡散した領域
から高密度と思われる領域に渡って、分子雲の構造を連続
的に捉えることができた。 Fig. 13 Fig. 12におけるYSO候補天体が位置する
場所の密度と温度の関係。図中の黒縦線、赤横
線はそれぞれ領域全体の平均密度、および平
均温度である。 LVG analysis K・km/s ObservaVon results K Fig. 12 LVG近似計算により得られたTaurus領域にお
ける水素分子の密度(g), 運動温度(h)の分布。 丸印(gは赤、hはマゼンタ)はYSO(Gudel et al. 2007)
候補天体を示す。 Fig. 9 1.85 m鏡により得られたTaurus領域における
12CO, 13CO, C18O (J-­‐2-­‐1) の積分強度図( (a), (b), (c)) line raVo Fig. 10 Taurus領域における13CO(2-­‐1) / 12CO(2-­‐1), 13CO(2-­‐1) / 13CO(1-­‐0), C18O(2-­‐1) / C18O(1-­‐0) 比( (d), (e), (f) ) ※J = 1-­‐0 の結果はMizuno et al. 1995(13CO), Onishi et al. 1996 (C18O) を用いている。全て積
分強度の比である。 Fig. 10 にそれそれの同位体間および、準位間の積分強度比を示す。 (d)のライン比は主に密度をトレースする。これを見ると、(b)と大局的に似た構造
をしているのがわかる。 (e)のライン比は主に温度(・密度)をトレースする。(e)を見ると、全体に渡り値が0.7
を下回っている。これは他の分子雲(eg. Orion)よりも比較的小さな値である。 (f)のライン比は(e)よりもより高密度な領域の温度(・密度)をトレースする。値として
は1や2を超える領域が見られ、光学的に薄いことがわかる。またこれらの結果よ
り、周囲の環境よりも高温・高密度となっていることが予想される。 分子雲の物理状態を探る上で水素分子(H2)の個数密度と運動温度Tkが重要となる。 これらを導出するため、LVG(Large Velocity Gradient)近似計算を用いた。Fig. 11にその一
例を示す。(d), (e)により導出された2つのライン比の組み合わせにより、水素分子の密度
と温度を算出した。Fig. 12 にその結果を示す。(g),(h)ともにそれぞれ、大局的に(d), (e)の
傾向を反映した分布をしていることが見て取れる。密度は600~2000 個cm-­‐3程度(平均 ~ 1050個cm-­‐)であり、温度は8 ~ 25 K程度(平均~12K)となった。また、HCL2領域(l, b = 174°, -­‐15°) や B123領域(l, b = 170°, -­‐16°)フィラメントの構造のように温度と密度が反相関してい
る領域が存在することが示唆される。 さらに、星形成と関係を調べるため、YSOの分布との比較を行った(Fig. 13)。これを見る
と、平均温度よりも低く、平均密度よりも高い領域に数多くのYSOが分布している。 Summary ・ 1.85m鏡を用いてTaurus領域全域におけて12CO, 13CO, C18O (J=2-­‐1) の分布を明らかにした。 ・ Taurus領域全域にてLVG解析を行い、同領域の温度・密度の大局的な分布を明らかにした。 Future ・ Taurus 近傍に位置するAuriga領域(大崎他 本ミーティング)や、Perseus領域のサーベイも完了し
いるため、これらの領域を含め、さらに広域に渡る分子雲の物理状態を明らかにする。さらには、
銀河面サーベイ(澤村他 本ミーティング)においても詳細な温度・密度構造を明らかにしていく。 
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