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第5回勉強会 講演資料(ページ23~45)
2016/8/26 高額な薬剤の例 市場拡大再算定 【市場拡大再算定】 年間販売額が予想販売額の一定倍数を超えた場合等には、 薬価改定時に価格を更に引き下げる。 原価計算方式で算定された新薬※の例 薬価改定 100円 年間販売額 1000~1500億円 予想の1.5倍以上 ※ 薬価収載後10年を経過して 最初の薬価改定を経ていない場合 薬価改定 98円 市場拡大再算定 98円 95円 250 260 予想年間販売額の2倍以上 かつ 年間販売額が150億円超 最大25% 90 79円 80 薬 価 ( 円 ) 予想年間販売額の10倍以上 かつ 年間販売額が100億円超 140 年間販売額 1500億円超 予想の1.3倍以上 薬価を最大25%引き下げ 100 95円 または 200 年 間 販 売 額 150 ( 億 円 ) 100 【市場拡大再算定の特例】 年間販売額が極めて大きい品目の取扱いに 係る特例。 薬価を最大50%引き下げ 1600 1500 1300 年 間 販 売 額 1000 ( 億 円 ) 年間販売額 1200 年間販売額 800 100 70 65 80 50 40 30 予想年間販売額 25 初年度 2年度 3年度 500 年間販売額 60 4年度 5年度 予想年間 販売額 X年度 予想年間 販売額 X年度 24 1 2016/8/26 市場拡大再算定の特例の対象品目 (年間販売額が1000億円超 かつ 販売額が予想を一定以上を超えているもの) ○年間販売額が1,500億円を超えたもの 品名 企業 市場規模予測※1 改定前薬価※2 改定後薬価※2 ソバルディ錠 ギリアド・ サイエンシズ 987億円 (1.9万人) 約62,000円 約42,000円 ギリアド・ サイエンシズ 1,190億円 (1.8万人) 約80,000円 約55,000円 (C型肝炎治療薬) ハーボニー配合錠 (C型肝炎治療薬) (注)ハーボニー配合錠はソバルディ錠と同一有効成分を含むため、類似品として再算定の対象となっている。 ○年間販売額が1,000億円を超えたもの 品名 アバスチン点滴静注用 (抗がん剤) プラビックス錠 (抗血小板剤) 企業 市場規模予測※1 改定前薬価※2 改定後薬価※2 中外製薬 301億円 (1.8万人) 約180,000円 約160,000円 サノフィ 534億円 (67万人) 約280円 約200円 (注)上記の2品目は、薬価収載時より対象となる疾患の範囲が拡大されているため、市場規模も拡大している。 なお、プラビックス錠については後発品が上市されており、再算定の対象には後発品も含まれている。 (参考)市場拡大再算定の特例の対象要件 ①年間販売額が1,000億円を超え1,500億円以下、かつ予想販売額の1.5倍以上 ②年間販売額が1,500億円を超え、かつ予想販売額の1.3倍以上 ※1:薬価収載時に企業が予測した患者数及び販売額である。 ※2:薬価は汎用されているものを記載している。 25 ソバルディ錠、ハーボニー配合錠の概要 品目 ソバルディ錠 ハーボニー配合錠 一般名 ソホスブビル レジパスビル アセトン付加物/ソホスブビル ギリアド・サイエンシズ株式会社 ギリアド・サイエンシズ株式会社 承認日/ 薬価収載日 H27.3.26/H27.5.20 H27.7.3/H27.8.31 効能・効果 セログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性 セログループ1(ジェノタイプ1)のC型慢性肝 肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス 炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血 血症の改善 症の改善 製造販売業者 算定方式/ 加算の有無 類似薬効比較方式(Ⅰ) 比較薬:①テラビック錠 ②ペグイントロン皮下注用 ③レベトールカプセル 補正加算:画期性加算(A=100%) 薬価 400mg1錠 42,239.60円 収載時市場規模予測 約1.9万人、987億円/年 治療に必要な薬剤費 類似薬効比較方式(Ⅰ) 比較薬:①ダクルインザ錠 ②ソバルディ錠 補正加算:なし 1錠 54,796.90円 約1.8万人、1,190億円/年 1日1回1錠12週間投与した場合、約355 1日1回1錠12週間投与した場合、約460 万円 万円 26 2 2016/8/26 C型肝炎について 疾病の概要 C型肝炎ウイルスキャリア 世界:1億7000万人 概要 HCV感染後、約70%が慢性肝炎へ移行。治療を行わない場合には、緩徐に肝臓の線維化が進行し、 肝硬変に進展。肝硬変は肝不全の原因となる他、肝細胞癌を発症するリスクが高く、C型慢性肝炎患者 における肝細胞癌の発生率は10年間で12.4%、C型肝硬変患者における肝細胞癌の発生率は平均 観察期間9.2年で53.9%と報告されている。 日本:150万~200万人 薬物療法の概要 特徴 薬剤 ジェノタイプ1 ジェノタイプ2 IFN療法 Peg-IFN+リバビリン 著効率40~50% 著効率80% IFN療法 テラプレビル+Peg-IFN+リバビリン 初回治療の著効率約70% Peg-IFN+リバビリンでの非著効 例に使用可能 IFN療法 シメプレビル+Peg-IFN+リバビリン 初回治療の著効率約90% IFNフリー ダクラタスビル(ダクルインザ) +アスナプレビル(スンベプラ) 著効率80~90% IFNフリー ソホスブビル(ソバルディ) +リバビリン IFNフリー ソホスブビル/レジパスビル(ハーボニー) 著効率97% 著効率99% ※IFN療法では、投与のため毎週通院が必要、副作用により治療困難な患者が多く存在といったデメリットがある。27 IMSジャパン トップライン市場データ (ソバルディ、ハーボニー) ソバルディ (億円) ハーボニー 1500 1000 500 0 H27.7~9 H27.10~12 H28.1~3 H28.4~6 ※上位10製品として公開されている売上金額(薬価ベース) 出典:IMSジャパン ホームページ 28 3 2016/8/26 高額療養費制度の概要 ○ 高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療機関の窓口において医 療費の自己負担を支払っていただいた後、月ごとの自己負担限度額を超える部分について、事後的に保険者から 償還払い(※)される制度。 (※1)入院の場合、医療機関の窓口での支払いを自己負担限度額までにとどめる現物給付化の仕組みを導入 (※2)外来でも、平成24年4月から、同一医療機関で自己負担限度額を超える場合に現物給付化を導入 ○ 自己負担限度額は、被保険者の所得に応じて設定される。 (例)70歳未満・年収約370万円~約770万円の場合(3割負担) 医療費 100万円 窓口負担 30万円 高額療養費として支給 自己負担限度額 30万円-87,430円 = 212,570円 80,100円+(1,000,000円-267,000円※)×1% = 87,430円 ※80,100÷0.3=267,000 (注)同一の医療機関における一部負担金では限度額を超えない場合であっても、同じ月の複数の医 療機関における一部負担金(70歳未満の場合は2万1千円以上であることが必要)を合算する ことができる。この合算額が限度額を超えれば、高額療養費の支給対象となる。 29 高額療養費制度の見直し (平成27年1月施行) 1.見直しの趣旨 ○ 高額療養費制度は、家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないよう、医療費の自己負担に一定の歯止めを設ける仕組み。今般、 負担能力に応じた負担とする観点から、70歳未満の所得区分を細分化し、自己負担限度額をきめ細かく設定する。 2.見直しの内容 (見直し前) (見直し後) 月単位の上限額(円) 70 歳 未 満 70 ~ 74 歳 上位所得者 (年収約770万円~) 健保:標報53万円以上 国保:旧ただし書き所得600万円超 150,000+ (医療費-500,000)×1% <多数回該当:83,400> 一般所得者 (上位所得者・低所得者以外) 3人世帯(給与所得者/夫婦子1人の場合: 年収約210万~約770万円) 80,100+ (医療費-267,000)×1% <多数回該当:44,400> 住民税非課税 35,400 <多数回該当:24,600> 現役並み所得者 (年収約370万円~) 健保:標報28万円以上 国保:課税所得145万以上 一般(~年収約370万円) 健保:標報26万円以下(※1) 国保:課税所得145万円未満(※1) 住民税非課税 窓口負担割 合 3割 75 歳 ~ 現役並み所得者 (年収約370万円~) 課税所得145万以上 3割 一般(~年収約370万円) 課税所得145万円未満(※1) ~年収約370万円 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 一般(~年収約370万円) 健保:標報26万円以下(※1) 国保:課税所得145万円未満(※1)(※2) 44,400 24,600 住民税非課税 15,000 住民税非課税 (所得が一定以下) 80,100+ 外来 (総医療費-267,000)×1% <多数回該当:44,400> 44,400 現役並み所得者 (年収約370万円~) 課税所得145万以上 12,000 一般(~年収約370万円) 課税所得145万円未満(※1) 44,400 約1,330万人 約4,060万人 35,400 <多数回該当:24,600> 窓口負担割 合 外来 3割 44,400 12,000 2割 (※3) 80,100+ (総医療費-267,000) ×1% <多数回該当:44,400> 44,400 24,600 8,000 窓口負担割 合 外来 3割 44,400 12,000 15,000 80,100+ (総医療費-267,000) ×1% <多数回該当:44,400> 44,400 1割 1割 住民税非課税 住民税非課税 (所得が一定以下) 57,600 <多数回該当:44,400> 住民税非課税 12,000 8,000 窓口負担割 合 年収約370~約770万円 健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円 現役並み所得者 (年収約370万円~) 健保:標報28万円以上 国保:課税所得145万以上 2割 (※3) 住民税非課税 (所得が一定以下) 年収約770~約1,160万円 健保:標報53万~79万円 国保:旧ただし書き所得600万~901万円 80,100+ (総医療費-267,000)×1% 44,400 <多数回該当:44,400> 外来 月単位の上限額(円) 252,600+ (医療費-842,000)×1% <多数回該当:140,100> 167,400+ (医療費-558,000)×1% <多数回該当:93,000> 80,100+ (医療費-267,000)×1% <多数回該当:44,400> 年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 8,000 24,600 住民税非課税 15,000 住民税非課税 (所得が一定以下) ※1 収入の合計額が520万円未満(1人世帯の場合は383万円未満)の場合も含む。 ※2 旧ただし書所得の合計額が210万円以下の場合も含む。 24,600 8,000 ※3 平成26年3月末日までに70歳に達している者は1割。 15,000 (注)75歳以上の所得区分、限度額に変更はない。 30 4 2016/8/26 自己負担割合及び高額療養費自己負担限度額(現行) (平成27年1月~) 負担割合 月単位の上限額(円) 252,600+ (医療費-842,000)×1% <多数回該当:140,100> 167,400+ (医療費-558,000)×1% <多数回該当:93,000> 80,100+ (医療費-267,000)×1% <多数回該当:44,400> 年収約1,160万円~ 健保:標報83万円以上 国保:旧ただし書き所得901万円超 70 歳 未 満 年収約770~約1,160万円 健保:標報53万~79万円 国保:旧ただし書き所得600万~901万円 年収約370~約770万円 3割 健保:標報28万~50万円 国保:旧ただし書き所得210万~600万円 ~年収約370万円 57,600 <多数回該当:44,400> 健保:標報26万円以下 国保:旧ただし書き所得210万円以下 35,400 <多数回該当:24,600> 住民税非課税 現役並み所得者 (年収約370万円~) 70 ~ 74 歳 負担割合 外来(個人ごと) 3割 44,400 健保:標報28万円以上 国保:課税所得145万以上 一般(~年収約370万円) 12,000 健保:標報26万円以下(※1) 国保:課税所得145万円未満(※1)(※2) 8,000 (所得が一定以下) 15,000 負担割合 外来(個人ごと) 3割 44,400 80,100+(総医療費- 267,000)×1% <多数回:44,400> 12,000 44,400 課税所得145万以上 一般(~年収約370万円) 課税所得145万円未満(※1) 1割 住民税非課税 24,600 8,000 住民税非課税 (所得が一定以下) ※1 収入の合計額が520万円未満(1人世帯の場合は383万円未満)の場合も含む。 ※2 旧ただし書所得の合計額が210万円以下の場合も含む。 (※4) 24,600 (※3) 住民税非課税 75 歳 44,400 (※4) 2割 住民税非課税 現役並み所得者 (年収約370万円~) 80,100+(総医療費- 267,000)×1% <多数回:44,400> 15,000 ※3 平成26年4月1日までに70歳に達している者は1割。 ※4 2割負担の場合は62,100円(外来24,600円)とされていたが、平成26年4月より 1割負担だった際の限度額に据え置き。 31 レパーサ皮下注の概要 品目 一般名 製造販売業者 承認日/薬価収載日 効能・効果 算定方式/加算の有無 薬価 レパーサ皮下注 エボロクマブ(遺伝子組換え) アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社 H28.1.22/H28.4.20 家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症 ただし、心血管イベントの発現リスクが高く、HMG-CoA還元酵 素阻害剤で効果不十分な場合に限る。 原価計算/営業利益率における補正+10% 140mg1mL1筒 22,948円 140mg1mL1キット 22,948円 収載時市場規模予測 約6.9万人、493億円/年 治療に必要な薬剤費 2週に1回140mg投与する場合、約60万円/年 32 5 2016/8/26 レパーサ皮下注に係る中医協での審議の概要 <H28.4.13中医協総会の議論の概要(レパーサ皮下注関係)> ○ 臨床でこの薬を使ったときに、非常に効果があれば、どうしても患者さんのこ とを考えれば使ってしまうということになろうかと思う。この(効能・効果の)た だし書きは厳格に守られるのか。添付文書だけでは守られないというようなこと も懸念される。(診療側委員) ○ (ただし書きにある)心血管イベントの発現リスクが高いかどうかは、医師 の判断によるため、支払基金でも査定の際は判断しかねると思われる。このた だし書きの厳格化のみならず、保険収載時の条件設定等も含めて対応する 必要があるのではないか。(支払側委員) ○ ただし書きの記載は、 「発現リスクが高く」、「効果不十分」など、定性的な 表現。できる限り数値化を検討されたい。(診療側委員) 33 レパーサ皮下注の薬価収載に伴う留意事項 ○使用薬剤の薬価(薬価基準)の一部改正等について(平成28年4月19日付け厚生労働省保険局医療課長通知)(抜粋) (2) レパーサ皮下注140mgシリンジ及び同ペン ① 本製剤の効能・効果は「家族性高コレステロール血症、高コレステロール血症。ただし、心血管イベントの発現 リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤で効果不十分な場合に限る」であることから、心血管イベントの発現 リスクが高く、HMG-CoA還元酵素阻害剤の最大耐用量を服用しているが、十分な治療効果が得られていない 患者に限り使用すること。 また、本製剤の使用上の注意において、「本剤投与にあたっては、あらかじめ高コレステロール血症治療の基 本である食事療法を行い、更に運動療法、禁煙、他の虚血性心疾患のリスクファクター(糖尿病、高血圧症等)の 軽減等も十分考慮すること」とされているので、患者に対して必要な治療及び指導を十分に行った上で、本製剤 の使用を考慮すること。 ② 本製剤の使用に当たっては、次の事項を診療報酬明細書の摘要欄に記入すること。 ア 本製剤の使用が必要と判断するに当たって参照したLDL-コレステロールの検査値及び当該検査の実施年 月日 イ 食事療法を行っている旨、及び患者の状況に応じて、運動、喫煙等に関する指導又は糖尿病、高血圧症等の 虚血性心疾患の危険因子に対する治療若しくは指導を行っている旨 ウ 投与中のHMG-CoA還元酵素阻害剤の成分名及び1日投与量。なお、1日投与量が最大用量でない場合 は、最大耐用量である旨もあわせて記載すること。 エ 家族性高コレステロール血症以外の患者では、心血管イベントの発現リスクが高いと判断した理由(冠動脈 疾患、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患、糖尿病若しくは慢性腎臓病に罹患していること若しくはそのいずれか の既往歴を有すること、又は複数の危険因子が認められること)。 ③ 家族性高コレステロール血症ヘテロ接合体及び高コレステロール血症の患者における本製剤の使用に当たっ ては、原則として140mgを2週間に1回投与すること。 34 6 2016/8/26 オプジーボ点滴静注の概要 品目 オプジーボ点滴静注 一般名 ニボルマブ(遺伝子組換え) 製造販売業者 小野薬品工業株式会社 承認日/薬価収載日 H26.7.4/H26.9.2 承認時:根治切除不能な悪性黒色腫(希少疾病) H27.12:切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌の適応追加 効能・効果 算定方式/加算の有無 原価計算/営業利益率における補正+60% 100mg10mL1瓶:729,849円 20mg 2mL1瓶:150,200円 薬価 収載時市場規模予測 約470人、31億円/年 効能追加後の売上予測 約15,000人、1,260億円/年(H29.3期予想) (H28.4.11企業発表) ※出荷価格ベースでの売上高 治療に必要な薬剤費 (個人によって用量が大きく異なるので参考値) 体重50kgの場合(150mg投与) 2週に1回投与で約118万円 4週で約236万円 ⇒3割負担で約70万円 ※ただし、高額療養費制度により自己負担の上限がある。 35 オプジーボの開発の経緯 1992年 京都大学医学部医化学教室第一講座(代表者:本庶佑教授)において PD-1遺伝子を発見 1998年 同講座において、PD-1が生体内において免疫反応を負に制御していることを 解明 小野薬品工業株式会社と米国メダレックス社(現ブリストル・マイヤーズ スクイブ社)が共同開発 小野薬品がPD-1の知的財産を保有し、メダレックス社の抗体開発システムを活用 2009年2月 国内第Ⅰ相試験開始(進行固形癌患者) 2011年12月 国内第Ⅱ相試験開始(悪性黒色腫) 2014年7月 世界初 薬事承認 36 7 2016/8/26 オプジーボ(抗PD-1抗体)の抗がん作用のメカニズム 通常の免疫機構 (がんの増殖を防ぐ) ヒトが持つ免疫機能において、T細胞ががん細胞を「異物」を認識し、攻撃する。 攻撃 T細胞:ヒトの免疫細胞 がん細胞 がんの免疫逃避 (がんが増殖する) がん細胞の表面に発現するPD-L1が、T細胞のPD-1に作用し、免疫反応を抑制する。 PD-L1 免疫反応を抑制 PD-1 オプジーボの作用 (オプジーボによりがんの増殖を防ぐ) オプジーボがPD-1に結合して、PD-L1との結合を阻止し、T細胞が攻撃する力を高める。 攻撃 オプジーボ (抗PD-1抗体) オプジーボ オプジーボは、様々ながん腫に有効であることが期待されている 37 財政制度等審議会における高額薬剤に関する議論 <資料中の推計の概要> ・体重60kgの成人に対し、1年間継続し て投与が行われた場合、約3500万円 の医療費が必要 ・日本の肺癌は2015年推定13万人、 非小細胞肺癌は10万人強、少なく見 積もっても5万人が対象。1年間使うと すると、 3500万円×5万人=1兆7500億円 平成28年4月4日 財務省 財政制度等審議会 財政制度分科会 38 8 2016/8/26 小野薬品工業によるオプジーボの売上予想 <抗悪性腫瘍剤「オプジーボ」の売上高予想> 平成27年度の売上高 実績 212億円 平成28年度の売上高 予想 1,260億円 平成28年4~6月の売上高 実績 252億円 ※仕切価格(出荷価格)ベースでの売上高 <平成28年度における推定新規使用患者数> 推定新規使用患者数 (平成28年度) 悪性黒色腫 非小細胞肺がん 450名 15,000名 39 平成28年4月11日小野薬品工業株式会社公表資料、 平成29年3月期第1四半期決算短信から作成 小野薬品工業によるオプジーボの適正使用の推進 平成27年12月17日にオプジーボに対して「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の効能追加が承認さ れ、同日、小野薬品工業から適正使用に係る留意事項を公開 オプジーボ点滴静注投与時の留意事項 1. 投与対象患者について 非小細胞肺がんを対象とした国内第II相臨床試験において、間質性肺疾患での死亡例が1例報告されております。このことから、特に間質性肺疾患に対しては慎重な対応が必要 と考えます。治療前の評価にて以下のリスク因子を有する患者に対しては、一定の使用経験が集積されるまでの間、オプジーボの投与は、原則として避けて頂きますようお願い致しま す。 • ECOG Performance Status 3-4の患者(治験時登録基準はPerformance Status 0-1の患者でした) • 間質性肺疾患の合併又は既往のある患者 • 胸部画像検査で間質影を認める患者および活動性の放射線肺臓炎や感染性肺炎など肺に炎症性変化がみられる患者 • 自己免疫疾患の合併又は慢性的な若しくは再発性の自己免疫疾患の既往歴のある患者 2. 間質性肺疾患のマネジメントについて 一定の使用経験が集積されるまでの間、以下のように慎重に対処頂きますようお願い致します。 • 投与早期にはできるだけ頻回に胸部X線を撮影し、間質性肺疾患の早期発見、早期対処に努める • Gradeを問わず、間質性肺疾患が疑われた時点で速やかに投薬を中止する • Grade1の間質性肺疾患であっても慎重に観察し、回復しなければステロイドを投与する • オプジーボによるGrade2の間質性肺疾患から回復した場合の再投与は、本邦では有効性、安全性のデータが限られていることから行わない • オプジーボによるGrade3以上の間質性肺疾患が生じた場合、オプジーボの再投与は行わない 3. 免疫反応に関連した副作用のマネジメントについて 悪性黒色腫(市販後)において、2015年12月時点で間質性肺疾患、重症筋無力症、大腸炎で各1例の死亡例が報告されております。上記以外に、免疫に関連した副作用 として筋炎、1型糖尿病、肝機能障害、甲状腺機能障害などが報告されております。 以下の点にご注意のうえ、症状毎に添付文書および適正使用ガイドを参照し、対処頂きますようお願い致します。 • ステロイド治療により症状の改善が認められない場合には、副作用に応じて他の免疫抑制剤(インフリキシマブ、ミコフェノール酸モフェチル、免疫グロブリン等)の追加を考慮する • 投与終了後、数週間から数ヵ月経過してから発現することもあるため、治療期間中以外でも十分に注意する • 膠原病内科、消化器内科、代謝・内分泌内科、神経内科などの専門医との協力体制を準備する 4. 病勢進行後の治療継続について 国内第II相臨床試験においては、1回目のPD確認後にリスク・ベネフィットを考慮して、投与継続・中止の判断をしておりました。リスク・ベネフィットを慎重に評価して治療を継続した 場合であっても、必ず6週間以内に画像評価を行い、2回目のPDと判定された場合は以降のオプジーボの投与は行っておりませんでした。 40 9 2016/8/26 小野薬品工業によるオプジーボの適正使用の推進(続き) 医師要件、施設要件について 1)施設要件 以下の(1)~(5)の要件を全て満たす施設とする。 (1)次に示す①~③のいずれかの要件を満たす施設 ①日本呼吸器学会の専門医が当該診療科に在籍している施設 ②日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医が当該診療科に在籍している施設 ③がん診療連携拠点病院注1)又は特定機能病院、もしくは外来化学療法室注2)を設置している施設 (2)副作用の診断や対応が当該施設の関連診療科もしくは近隣の提携施設との連携に基づいて適切に行うこと ができる施設 (3)当該施設でCT画像検査を直ちに実施できる施設 (4)緊急時に十分な対応ができる施設(入院設備が完備しているかつ24 時間の診療が可能な施設) (5)全例調査(使用成績調査)に協力・契約が可能な施設 2)医師要件(全例調査における責任医師) 以下の(1)~(5)の要件を全て満たす常勤医師とする。 (1)次に示す①~③のいずれかに該当する医師 ①日本呼吸器学会の専門医で、肺がんの診断・治療に十分な知識・経験を有する医師 ②日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医 ③5 年以上のがん化学療法の経験があり、肺がんの診断・治療に十分な知識・経験を有する医師 (2)副作用発現に対して他科と連携して適切な処置が可能な医師 (3)全例調査に理解が得られ、事前患者登録に協力可能な医師 (4)医薬情報担当者が定期的に訪問可能な医師 (5)E-Learningの受講を終えている医師 注1) 厚生労働省が認可する「がん診療連携拠点病院」に加えて、各都道府県の知事が指定する「がん診療連携指定病院」を含む。 注2) 外来化学療法室を設置している施設とは、特掲診療料の「外来化学療法加算1」もしくは「外来化学療法加算2」を取得している施設とする。 41 世界売上上位15品目(2001年・2014年) ○ 2001年と2014年の世界売上げ上位品目を比較すると、近年は、1品目の売上高が大きく増加している。また、バ イオ医薬品の占める割合が増加している。 2014年 2001年 製品名 一般名 主な薬効等 メーカー名 売上高 前年比 (百万ドル) 伸び率 製品名 1 ゾコール(リポバス) シンバスタチン 高脂血症薬 メルク 6,670 26% 1 ヒュミラ 2 リピトール アトルバスタチン 高脂血症薬 ファイザー 6,449 28% 2 オメプラゾール 抗潰瘍剤PPI アストラゼネカ 5,684 ▲7% 3 レミケード アムロジピン 降圧剤Ca拮抗 ファイザー 剤 3,582 7% 4 エンブレル 5 リツキサン 3 オメプラール/ プリロゼック 4 ノルバスク メバロチン/ 5 プラバコール プロクリット/ 6 エプレックス 7 タケプロン 8 クラリチン/D プラバスタチン 高脂血症薬 三共/BMS 3,509 5% エポエチンアルファ 腎性貧血 J&J 3,430 27% ランソプラゾール 武田薬品/ 抗潰瘍剤PPI TAP ロラタジン 抗ヒスタミン剤 シェリング・プラウ 3,212 3,159 25% 5% ソバルディ /ハーボニ 6 ランタス 7 アバスチン 8 ハーセプチン 9 セレブレックス セレコキシブ Cox2阻害剤 ファルマシア 3,114 19% アドエア 9 /セレタイド 10 ジプレキサ オランザピン 精神分裂病薬 イーライ・リリー 3,087 31% 10 クレストール 11 グルコファージ メトフォルミン 糖尿病薬 独メルク/BMS 2,682 55% 11 ジャヌビア セロクサット/ パキシル パロキセチン 抗うつ剤SSRI グラクソ・スミスクラ イン 2,674 16% 12 エビリファイ 13 バイオックス ロフェコキシブ Cox2阻害剤 メルク 2,555 18% 13 リリカ 12 14 ゾロフト 15 エボジェン(エス ポー) セルトラリン 抗うつ剤SSRI ファイザー 2,366 11% エポエチンアルファ 腎性貧血 2,150 10% アムジェン レブリミッド 14 /レブラミド ノボラピッド 15 /ノボミックス 一般名 主な薬効等 アダリムマブ 関節リウマチ /クローン病 ソフォスブビル/レ ディパスビル 慢性C型肝炎 メーカー名 アッヴィ/エーザイ ギリアド・サイエン シズ J&J/メルク /田辺三菱 アムジェン /ファイザー/武田 関節リウマチ /クローン病 関節リウマチ エタネルセプト /クローン病 抗がん剤 リツキシマブ ロシュ/バイオジェン /抗リウマチ 糖尿/インスリンア インスリングラルギン サノフィ ナログ 転移性結腸が ロシュ ベバシズマブ ん /中外製薬 ロシュ HER2乳がん トラスツズマブ /中外製薬 サルメテロール 抗喘息 GSK/アルミラル /COPD /フルチカゾン ロスバスタチン インフリキシマブ シタグリプチン /配合剤 アリピプラゾール (経口) 高脂血症 /スタチン 2型糖尿病 /DPP4 総合失調症 塩野義 /アストラゼネカ メルク/小野薬品 /アルミラル 大塚製薬 /BMS ファイザー /エーザイ プレガバリン 神経疼痛 /てんかん レナリドミド 多発性骨髄腫 セルジーン インスリンアスパルト/ 糖尿/インスリンア ノボ・ノルディスク 混合 ナログ 売上高 前年比 (百万ドル) 伸び率 12,902 17% 12,410 NEW 9,909 2% 8,927 2% 8,744 ▲2% 8,432 12% 7,021 6% 6,865 7% 6,620 ▲24% 6,372 ▲5% 6,355 1% 5,928 17% 5,389 12% 4,980 16% 4,871 3% ※ 網掛けはバイオ医薬品。下線は抗体医薬品。 出所:ユートブレーン(ファルマ・フューチャー2002 NO.136)、ゼジデム・ストラテジックデータ(株)ユート・ブレーン事業部刊「Pharma Future(2015年5月号)」をもとに厚生労働 省が作成した資料から引用。 42 10 2016/8/26 バイオ医薬品について ○ バイオ医薬品とは、遺伝子組換え技術や細胞培養技術等を応用して、微生物や細胞が 持つタンパク質(ホルモン、酵素、抗体等)等を作る力を利用して製造される医薬品。 (例:インスリン(糖尿病治療薬)、インターフェロン(C型肝炎治療薬)、リツキシマブ(抗がん剤等)) ○ バイオ医薬品は、微生物や培養細胞を用いて生産されるタンパク質等を構成成分とする ものであるが、タンパク質のアミノ酸配列が同じであっても、生体内での活性が異なる場合 があり、そのため医薬品としての有効性・安全性が同一とは限らない。 一般的な医薬品 大きさ バイオ医薬品 100~ (分子量) 約10万~(抗体) 約1万~(ホルモン等) 大きさ・複雑さ (イメージ) 製造法 (イメージ) 微生物や細胞の中で合成 化学合成 微生物や細胞 安定 生産 抗体等の遺伝子 不安定(微生物や細胞の状態で生産物が変わり得る。) 43 バイオ医薬品の製造プロセスのイメージ(タンパク質製剤の一例) 発現プラスミド構築 前培養 細胞への導入 目的のヒトのタンパク質を造る 遺伝子をプラスミド(核外遺伝子) に組み込む (大腸菌・酵母・細胞など) マスターとなる細胞から 生産用の細胞を作成(凍結保存) 目的の遺伝子 プラスミド 細胞 培養・増殖 生産用の細胞を大量に培養 ↓ 培養された細胞が目的タンパク質を合成 ( ( 目的タンパク質) 精製・濃縮 培養液から細胞・不純物を 濾過・除去し、 目的タンパク質を濃縮 製剤化 * バイオ医薬品は、低分子医薬品の製造に用いられる単純な化学合成工程とは異なり、環境変化に敏感な微生物に依存す る製造工程で作られている。このため、最終産物は、製造工程における様々な因子の影響を受ける。 44 11 2016/8/26 オプジーボの薬事承認と薬価改定の流れ オ プ ジ ー ボ 保 険 適 用 9/2 ● 医 療 保 険 関 係 H26 7月 ● 7/4 薬 事 関 係 オ (プ 悪ジ 性ー 黒ボ 色薬 腫事 )承 認 2mg/kg 3週に1回 8月 9月 (中 再 算医 定協 対 象 品 目 決 定 ) 薬 価 調 査 H27 8月 9月 (中 診 療医 報協 酬 改 定 答 申 ) 薬 価 改 定 公 示 1/20 2/10 ● ● 10月 11月 12月 H28 1月 ● 12/17 3/4 ● 2月 3月 ● 2/29 オ (プ 非ジ 小ー 細ボ 胞効 肺能 が・ ん効 )果 追 加 オ プ (ジ 悪ー 性ボ 黒用 色法 腫・ )用 量 3mg/kg 2週に1回 3mg/kg 2週に1回 追 加 45 12