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グリーンデバイス
The Front Line of Research 理工学部 勝俣 裕 する ( Electroluminescence )照 明、 EL ( Light Emitting Diode )や LED グリーンデバイスには、「創エネ」 環境配慮型半導体 が望まれます。 の放出を抑制した低炭素社会の実現 循環させることにより、二酸化炭素 セス技術などが、グリーンデバイス・ さらにはそれらを製造する装置・プロ 電 気 を 蓄 え る リ チ ウ ム イ オ ン 充 電 池、 有機 る太陽電池や熱電素子、省エネに貢献 びます。例えば、エネルギーを創出す 技術を総称してグリーンデバイスと呼 ネ 」な ど 環 境 維 持 に 役 立 つ デ バ イ ス・ れ て い ま す。「 創 エ ネ 」「 省 エ ネ 」「 畜 エ を 維 持( 保 護 )す る 」と い う 意 味 が 含 ま に は、 緑 色 の・ 新 鮮 な 等 の 他 に「 環 境 」の 意 味 グ リ ー ン デ バ イ ス の「 green グリーンデバイス( Greendevice )とは 理工学部電気電子生命学科准教授 「省エネ」「畜エネ」の効果だけでなく、 現在の環境汚染問題や将来の資源の 枯 渇 問 題 に 対 処 す る た め に「 環 境 配 慮 型 半 導 体 」材 料 を 用 い る こ と が 重 要です。環境配慮型半導体とは、地 球上に豊富に存在し、生体・環境に 対する毒性が軽微な材料より構成さ れる半導体材料のことです。当オプ トバイオエレクトロニクス研究室で は、シリコン、ガリウム、アルミニ ウム、鉄ならびに大気中に存在する 1992年 明治大学工学部電気工学科卒業 1997年 明治大学大学院理工学研究科 博士後期課程修了、博士 (工学) 京都大学工学部付属イオン工学実験施設講 師 (研究機関研究員) 循環型・低炭素社会 技術の範疇に含まれます。 1969年 神奈川県生まれ 株式会社東芝生産技術センター プロセス研究センター勤務 現職 半導体デバイス・プロセス工学 に示します。 時間の熱処 帯の発光強度 以下のシリコンナノ に 緑 色 で 発 光 さ せ る こ と が で き ま す。 コンをナノ結晶化することにより青 示します。可視領域で光らないシリ 溶液試料からの発光観測例を図 リコンナノ結晶を純水中に抽出した した試料の電子線回折パターンとシ 結晶をスパッタリング法により形成 中に粒径 できます。次に、シリコン酸化膜の シリコン太陽電池の効率向上が期待 サ イ ド 薄 膜 を 積 層 す る こ と に よ り、 コン基板の上に良質なベータ鉄シリ が増大することが分かります。シリ 晶性が改善し、 μ 理後、ベータ鉄シリサイド薄膜の結 性を図 シリサイド薄膜の光学的・構造的特 着することにより作製したベータ鉄 鉄をシリコン基板上に電子線加熱蒸 )な ど で す( 図 1)。 真 空 中 で ( LED ア ル ミ ニ ウ ム・ 窒 化 ガ リ ウ ム 等 電 素 子 )や ナ ノ 結 晶 シ リ コ ン・ 窒 化 ベ ー タ 鉄 シ リ サ イ ド( 太 陽 電 池・ 熱 開発に取り組んでおります。例えば、 慮型半導体の材料・プロセス技術の 窒素、酸素等の元素からなる環境配 れ、電力の安定供給が危惧されてお は再び「冬の時代」を迎えると予想さ 今年の福島原発の災害により、原発 再度、推進されてきました。そして、 」なエネルギーであるとして、 「 clean スを排出しない原子力発電こそが、 電時に二酸化炭素などの温室効果ガ が 問 題 視 さ れ 始 め、 そ の 結 果、 発 1990 年 代 初 頭 か ら 地 球 温 暖 化 時 代 」を 迎 え ま し た。 し か し、 発 事 故 以 降、 数 年 間、 原 発 は「 冬 の 1986 年 の チ ェ ル ノ ブ イ リ 原 2010年〜 3 “Fabrication of Heterostructure p- β -Fe0.95Mn0.05Si2/n-Si Diodes by Fe+ and Mn+ CoFilms, 381, 244-250 (2001). implantation in Si (100) Substrates” Thin Solid “The e f f ect o f Cr y st a l l ine St r uct ure on Target” Physics Procedia, 11, 158-162 (2011). by Pulsed Laser Deposition Using Two Types of 【主な所属学会】 応用物理学会、Materials Research Society、電気化 学会、日本希土類学会 照 明、 創 エ ネ の た め の 太 陽 LED 済を牽引していく産業分野として期 への応用などを含め、今後の世界経 からだけでなく、農業や自動車産業 ンデバイスは、地球環境という観点 が活かせる分野です。今後、グリー 的に付与してきた日本の技術の強み 製品に環境維持に役立つ機能を積極 イスや素材を改善することで、電気 グリーンデバイスは、個々のデバ 子が形成できます。 セスを用いて、シリコン可視発光素 して、低コストで環境に優しいプロ の毒性が軽微なシリコンを原材料と このように資源が豊富で生態環境へ 要であり、エネルギー資源を再生・ グリーンデバイス・技術の開発が必 動 な ど )を 効 率 的 に 活 用 す る た め の ど )や 未 利 用 エ ネ ル ギ ー( 排 熱、 振 太陽熱・水力・風力・バイオマスな 再生可能な新エネルギー(太陽光・ ラ 等 に 導 入 さ れ て い ま す。 今 後 は、 電池等が家電・自動車・社会インフ や あり、省エネのためのパワー半導体 グリーンデバイスの活用が不可欠で 次に照明です。電力不足の解消には、 はモータをはじめとした動力であり、 ります。電力需要の大半を占めるの 【主な論文】 待できます。 38 The Quarterly MEIJI vol.51 2011 Summer 39 2000年〜 2010年 20 m Photoluminescence of the β- FeSi2 Film Prepared 図3 (a)SiO2 膜中に埋め込まれたナノ結晶 Si 粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像。ナノ結晶 Si 粒子の形成を示す格子縞が観測された。(b) 純水溶液中に抽出したナノ結晶 Si 粒子からの 青緑色発光。He-Cd レーザー(325nm)により 光路に存在するナノ結晶 Si 粒子が励起され、 青緑色に光る様子を示す。 1997年〜 2000年 1.5 Hiroshi Katsumata 図2 β -FeSi2 薄膜の(a)PL 発光スペクトル の熱処理時間依存性(測定温度 25K)、(b)電子 線回折像 (as-depo)、(c)電子線回折像(20 時間 熱処理後) 。 (a)において、A バンド はβ -FeSi2 薄膜固有の発光、B バンド は積層欠陥からの 発光、C バンドはβ -FeSi2 の不純物準位に起因 する発光である。 2 10 n m 研究最前線 図1 環境配慮型半導体材料とそれらを構成す る元素の資源寿命 研 環境配慮型 「グリーンデバイス」で循環型・ 低炭素社会の実現に貢献する ! 理