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資料2-2 風力発電所に係る地方公共団体の環境影響評価の実施状況

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資料2-2 風力発電所に係る地方公共団体の環境影響評価の実施状況
資料2-2
風力発電所に係る地方公共団体の環境影響評価の実施状況
(動物、植物及び生態系関連)
1.条例に基づく動物、植物及び生態系に係る環境影響評価の項目等
風力発電所を環境影響評価条例の対象としている7団体のうち、条例に基づく技術指針に
おいて、事業者が評価項目を選定する際に参考とする項目を事業種毎に示している団体は、
福島県、長崎県及び新潟市の3団体であり、風力発電所に係る動物、植物及び生態系は表1
のとおり示されている。
なお、風力発電所による動物、植物及び生態系への影響に特化した環境影響評価の手法に
ついては、いずれの自治体も定めていない。
表1 福島県、長崎県及び新潟市における動物、植物及び生態系に係る評価項目
工事の実施
動物
土地又は工作物の存在及び供用
建設機械の稼働
資材及び機械の
運搬に用いる
車両の運行
造成等による
一時的な影響
地形改変及び
施設の存在
施設の稼働
福島県、新潟市
福島県、新潟市
福島県、新潟市
福島県、長崎県
新潟市
福島県、長崎県
新潟市
福島県、新潟市
福島県、長崎県
新潟市
福島県、新潟市
福島県、長崎県
新潟市
植物
生態系
福島県、新潟市
福島県、新潟市
福島県、長崎県
新潟市
2.条例に基づく動物、植物及び生態系に係る環境影響評価の実施状況
これまでに環境影響評価条例を風力発電所に適用し、準備書が公告された事例8件のうち、
環境省において準備書又は評価書が入手できた7件について、動物、植物及び生態系に係る
環境影響評価の実施状況を確認したところ、工事の実施に係る影響については7件すべてに
おいて、供用後の影響については植物を除き7件すべてにおいて評価項目として選定されて
いた。供用後の植物への影響については、6件において評価項目として選定されていた。
これらの事業における、環境影響評価の実施状況は以下のとおり1。
1
7件のうち、2件は手続中であり、今後、知事意見等を勘案して調査手法等が変更される可能性がある。
1
(1)動物(鳥類を除く)、植物及び生態系
①調査手法
 7件すべての事例において、動植物の現地調査が実施されていた。
 動物のうち、哺乳類では1年間通年又は1年以上調査が行われたものが多かったが
(6件)、その他の分類群2においては、1年間のうち複数の季節に調査を実施して
いる事例が多かった。
 植物は、7件すべてにおいて、1年間のうち春~秋にかけて調査を行っていた。
②予測・評価手法
 予測では、土地改変による動植物の生息・生育地への影響や工事に伴う濁水の発生
による水生生物への影響、工事中の騒音・振動による動物への影響、夜間照明によ
る動物への影響等について、定性的に予測していた。
 7件中4件においては、現存植生と改変後の植生面積の変化など、定量的な指標も
記載していた。
 附帯施設については、7件すべてにおいて取付道路等を、7件中6件において送電
線を含めた予測・評価を行っていた。
 評価は、7件すべてにおいて回避・低減に係る検討により行われていた。
③環境保全措置
 主な環境保全措置としては、次のようなものがあった。
表2 動物(鳥類を除く)
、植物及び生態系に係る主な環境保全措置※
環境保全措置
動物
植物
件数
土地改変面積(樹林伐採範囲面積も含む)の最小化
5件
濁水の流入防止対策
4件
植生回復・緑化
3件
夜間照明の抑制・低照度の指向性照明の採用
4件
生息環境の保全(代替巣の設置・生息環境の整備等)
3件
樹林伐採範囲・改変面積の最小化
4件
重要な種の保全、群落の育成
4件
濁水の流出防止対策
4件
重要種の移植、移植後の適正管理
4件
植生回復・緑化・植栽
2件
※「生態系」の項において検討された環境保全措置は、措置の対象により、動物・植物
のどちらかに分類して整理した。
2
ここでは、ほ乳類、両生類・は虫類、魚類、昆虫類、魚類等の分類群を指す。
2
④事後調査
 動物については、7件中5件において、事後調査を実施するとされていた。事後調
査の対象としては、コウモリ類の衝突への影響について、死骸調査を行うとしたも
のが最も多かった(4件)。死骸調査の調査期間は6ヶ月~3年間とされており、調
査頻度は週1回又は週1回以上としているものが最も多かった(3件)。
 植物については、7件中6件において、事後調査を実施するとされていた。事後調
査の対象としては、移植を行う植物の生育状況等の調査が最も多かった(4件)。移
植に関する事後調査の期間は1~5年間とされており、調査頻度は生活史サイクル
を考慮して年2回としているものが2件、移植後1年間は4回行い、その後は年1
回等としているものが2件であった。
(2)鳥類
①調査手法
 7件すべての事例において、鳥類の現地調査が実施されていた。
 調査項目としては、鳥類相の他、7件すべてにおいて猛禽類の詳細な調査を行って
おり、7件中4件において渡り鳥に特化した調査が行われていた。
 鳥類相は7件すべてにおいて四季の調査が行われており、調査期間は1年間が多か
った(6件)。猛禽類は営巣期を中心とした時期に調査が行われており、1年以上調
査を行った事例が多かった(5件)。渡り鳥は春・秋の渡りの時期に1シーズンずつ
調査を行っている事例が多かった(3件)。
 7件中4件において、渡り鳥について飛翔高度の調査を行うとされていた。
②予測・評価手法
 予測では、7件すべての事例において「生息環境の改変」、「衝突の影響」について
予測していたほか、7件中6件では「工事中の騒音による影響」、7件中5件では風
力発電設備による「移動阻害の影響」を定性的に予測していた。
 鳥類の衝突については、7件中3件において、現地調査により確認した鳥類の飛翔
高度を踏まえ、衝突の可能性について予測を行っていた。
 7件中3件においては、次のような定量的指標による予測・評価を行っていた。
・猛禽類の採餌飛翔に要する水平距離と風力発電設備間の距離との比較
・鳥類の高度別の飛翔回数とブレードの高さとの比較
・猛禽類の行動圏の面積に対するブレード回転範囲の面積割合
・県内における渡り鳥の個体数と建設予定地における渡り個体数の比較
 評価は、7件すべてにおいて回避・低減に係る検討により行われていた。
3
③環境保全措置
 主な環境保全措置としては、次のようなものがあった。
表3 鳥類に係る主な環境保全措置※
環境保全措置
鳥類
件数
風力発電機の視認性向上(ブレードの着色、障害灯設置等)
5件
送電線の地下埋設化
4件
繁殖時期を考慮した施工計画
3件
その他
・ライトアップを行わない、モノポール型3の採用、風力発
電設備の基数・規模の変更、吹き流し等の追い払い対策など
④事後調査
 7件すべてにおいて、鳥類に関して事後調査を実施するとされていた。
 調査項目・内容としては、衝突に係る死骸調査(7件)、猛禽類の営巣状況や生息状
況(6件)、渡り鳥の飛翔状況(2件)等。死骸調査の調査期間は6ヶ月~5年間と
されており、調査頻度は週1回又は週1回以上としているものが最も多かった(6
件)
。
3.環境影響評価の審査における動物、植物及び生態系に関する知事意見
 7件すべてについて、方法書又は準備書に対する動物、植物及び生態系に係る知事
意見が述べられていた。
 意見としては、次のようなものがあった。
・調査項目や調査対象の追加を求める意見
・調査地点の追加や調査地域の拡大を求める意見
・適切な調査・予測・評価手法を求める意見
・環境保全措置の追加や適切な実施を求める意見
・事後調査の追加や適切な実施を求める意見
・専門家等への意見聴取を求める意見
3
等
風力発電設備にはタワー部分が格子状のトラス式と円柱状のモノポール式があるが、我が国の商用設備とし
てはモノポール型が用いられている。
4
表4 動物、植物及び生態系に関する知事意見の概要
段階
知事意見
方法書
適切な調査・予
【具体例】猛禽類を含む鳥類への影響を予測及び評価
段階
測・評価手法を求
するに当たっては、飛翔高度も考慮すること。
事業
件数
意見数
6
20
5
11
4
15
4
6
7
36
7
25
5
22
5
13
める意見
調査地点の追
【具体例】送電線ルートを踏まえて動物、植物及び生
加・調査地域の拡
態系の調査地点を選定すること。
大を求める意見
調査項目・調査対
【具体例】工事中の濁水による魚類及び水生生物への
象の追加を求め
影響についても調査、予測及び評価を行うこと。
る意見
専門家等への意
【具体例】生物調査について、専門家等からの意見を
見聴取を求める
十分に取り入れ、適切に対応すること。
意見
その他
【具体例】渡り鳥の予測評価に当たって、近接する既
存の風力発電施設からの影響の有無について考慮し、
評価を行うこと。 等
準備書
環境保全措置の
【具体例】改変区域等の芝付け緑化について、当該事
段階
追加や適切な実
業区域内は一般の人の立入が無く、森林公園的な利用
施を求める意見
はないため、できる限り自然を再生させるための緑化
や植樹を行うこと。
事後調査の追
【具体例】バードストライク等の発生について、現時
加・適切な実施を
点ではその実態は十分に把握されていないため、事業
求める意見
が行われている間は継続して発生状況のモニタリング
を実施すること。
適切な調査・予
【具体例】動物の現地調査については、調査時期に偏
測・評価を求める
りが見られるので、専門家の意見を踏まえて必要に応
意見
じて追加調査を実施すること。
専門家等への意
【具体例】希尐な動植物の生息及び生育が新たに確認
見聴取を求める
された場合は、専門家の指導及び助言を得ながら、事
意見
業の実施による影響が最小限となるよう、必要な環境
保全措置を講じること。
5
4.ガイドライン等における動物、植物及び生態系の取扱い
地方公共団体が作成している風力発電所の環境影響評価や環境調査等に関するガイドラ
イン等のうち、建設に当たっての動物、植物及び生態系に関わる基準や環境影響評価の手法
等を示しているのは、9団体(静岡県、鳥取県、浜松市、稚内市、酒田市、遊佐町、掛川市、
豊橋市、新城市)であった。
 9団体すべてにおいて、建設に当たっての定性的な基準が示されていた。(例:「影響
を可能な限り回避するよう十分配慮し、必要な措置を講じること」)
 環境影響評価の手法については、鳥取県のガイドラインにおいて、風力発電所の設置
に伴う環境影響要因の一覧表を示していた。(表5を参照)
 稚内市のガイドラインにおいては、調査・予測の対象として、天然記念物、渡り鳥コ
ース等の具体例を示していた。
 法令や環境保全上の観点から、建設が可能な区域、建設が好ましくない区域等のゾー
ニングを示しているものが4団体あった。例えば、長野県は、山地災害や自然・景観
などへの影響が想定される地域等をあらかじめ地図に示した影響想定地域マップを公
表している。(<参考>を参照)
表5「鳥取県風力発電施設建設ガイドライン」に示された風力発電所の設置に伴う環境要因
6
<参考
:中・大型風力発電施設に係る影響想定地域マップ(長野県)4>
1
作成の趣旨
信州の美しい自然や景観は、本県のみならず、日本全国、さらには世界中の人々にとっ
て共通の貴重な財産であることから、保全や育成を通して、将来の世代に引き継がれなけ
ればなりません。
風力発電は、二酸化炭素の排出抑制により地球温暖化対策に寄与する面などもあります
が、中・大型風力発電施設の建設・運転による山地災害や自然・景観などへの影響も懸念
されます。
そのため、中・大型風力発電施設の建設に関し、地域住民、市町村、事業者等が同じ情
報を持った上で、計画の早い段階から検討いただくため、山地災害や自然・景観などへの
影響が想定される地域等をあらかじめ地図に表すこととします。これが、「中・大型風力
発電施設に関し、災害や環境などの観点から影響が想定される地域のマップ」です。(以
下「影響想定地域マップ」といいます。)
2
影響想定地域マップの概要
○ 影響想定地域マップの要素
(1) 森林機能保全・災害防止
(2) 景観・自然景観保全
(3) 自然環境・生態系保全
(4) 希尐野生動植物保護
○ 影響想定地域マップの区分
慎重に検討すべき地域について、上記の要素ごとに、次の2つのレベルに区分
☆ レベルⅠ 要素 (1)~(3) 「原則として立地から除外すべき地域」
要素 (4)
「立地については特に慎重に検討すべき地域」
☆ レベルⅡ 要素 (1)~(4) 「立地については慎重に検討すべき地域」
3
4
主な経過
平成 18 年 10 月 25 日 影響想定地域マップ(入笠山周辺版)公表
平成 19 年 3月 29 日 影響想定地域マップ(峰の原周辺版)公表
平成 20 年 3月 18 日 影響想定地域マップ(桑沢山周辺版)公表
平成 19 年 12 月 18 日 影響想定地域マップ(全県版)公表
長野県ホームページ
http://www.pref.nagano.jp/kikaku/tochi/furyoku/map1.htm
7
4
影響想定地域マップの例
8
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