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HapticDesktop 仮想感触を付加したデスクトップの制作
平成 18 年度 公立はこだて未来大学卒業論文 HapticDesktop 仮想感触を付加したデスクトップの制作 中村 俊介 情報アーキテクチャ学科 指導教員 1203078 迎山 和司 提出日 2007 年 1 月 31 日 HapticDesktop Creation of desktop with haptic by Shunsuke NAKAMURA BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Advisor: Kazushi MUKAIYAMA Department of Media Architecture Future University - Hakodate 31, January 2006 Abstract– There is much information got from feeling. For example, we often take the favorite object to know in a supermarket. Like this, we often touch something by hands to know when you interested in the favorite object by your sight. However, can you get information about the favorite object that is on a visual space by touching? Of course, you can’t get information by touching on a visual space, such as something on desktop. So, many devices were developed to be able to feel some information by haptics. In these one, there is PHANToM [1]. The device has the one like the fingerstall. The wire is connected with the fingerstall, and the other side is connected with the control motor. And, you will be able to feel the reaction force, when you put on the fingerst all and you touch the object which is on the monitor. Because of it, you can feel the rarely experience. It is used to a handicapped person’s interface, and to rehearse a surgical operation. However, these devices are not widespread. Because, it has many problems on the cost side. It is the Information Riaraization [2] to feel haptics in a usual environment. The user moved the mouse cursor, and Information Riaraization enabled not only sense of touch information but also the spatial perception. For instance, you can feel ”Weight”, ”Quality”, and ”Appearance of solidity”, etc. to the sight by the Information Realization. This theory was thought from the book ”THE ECOLOGICAL APPROACH TO VISUAL PERCEPTION” by James Jerome Gibson. Gibson said the next in the book. ”When you manipulate thing or the tool, almost people use hands in daily life. And, when you grip something by the hand, our more concentration to the object than to the hands.” When the object that we can control like a freedom gets some power, we can feel just touch on a thing. And when the object and the thing are concentrated, we just ”looking”. Therefore, The Information Riaraization was proposed. It makes the user feel haptics, the movement not anticipated is made to be done the object (the mouse cursor). So, this research decided to use the Information Riaraization to be able to play on a usual environment. And, we made to be able to done our daily behavior also on the desktop, so we can more naturally, and more comprehensible manipulation on the desktop. As a result, the interest of the feeling was expressed in desktop. And, produced HapticDesktop became the following one. There are two folders on desktop and you can manipulate the file operation. Moreover, there are ”help” and ”wallpaper” in a right menubar. if you cannot understand how to manipulate, you push the help button, and you can see the explanation of HapticDesktop. Moreover, you can change the wallpaper, if you want to feel the haptics. There are three kinds of wallpapers, these are ” the paper”,” the hemp”,” the surface of water”. So you can feel different surface if you move the mouse cursor. And, HapticDesktop was exhibited in the exhibition. As a result, there were many voices that can feel the haptics. At the same time, there are the opinions ”Is the feeling necessary for desktop?” From now, it is necessary to develop to HapticDesktop that makes user think that the haptics is necessary for the desktop interfaces. Keywords: GUI, Information realization, Haptics, Desktop 概 要: 我々の普段の生活において感触から得る情報は非常に多い。例えば、スーパーマーケットなど で気になったものを手に取るということをよく行うだろう。このように私たちは目に入ったもので 気になった何かしらの対象物(以降モノと呼ぶ)を手にもって確かめるという動作を日常的に行っ ている。しかし仮想空間上ではどうだろうか。現在のコンピュータのデスクトップで感触から何か 情報を得るということはない。つまり、我々が日常的に行っている行為が、仮想空間上では行われ ていないのである。 このようなことから、現在までに感触が感じられるデバイスが多く開発されてきた。その一つと して PHANToM[1] がある。ワイヤーに指サックのようなものがついており、そのワイヤーは制御 モータにつながっている。そして、指サックに指を入れ画面上のオブジェクトをさわるとそれに対 応した反力が、制御モータによってかえってくる仕組みになっている。そしてこのデバイスによっ て、普段経験できないようなことを仮想的に経験できるようになっている。例えば、視覚障害者用 のインターフェースや外科手術のリハーサルなどに用いられている。 しかしこのようなデバイスはコスト面の問題を抱えており、普及していない。そこで、一般的な 環境において仮想空間上で感触が感じることはできないかと考え、提案されたのが情報リアライ ゼーション [2] である。 情報リアライゼーションとは、ユーザがマウスカーソルを動かすことで、触覚的な情報だけでは なく空間の表現も可能にした考えである。例えば「重量感」 「質感」 「立体感」などについて視覚的 で感じることができる。これは、James Jerome Gibson の著書「生態学的視覚論-ヒトの知覚世界 を探る」[3] を基に考えられた。 Gibson はこの著書の中で、 「我々の手は様々なモノや道具を操作する際に必ず利用する。そして 一般的に手で何かをつかもうとするとき、自分の手を意識することは少なく、その対象物への意識 が大きい」と述べている。例えば、箸でラーメンを食べるとき、手を意識して麺をつかむのではな く、箸の先端を意識している。つまり、我々は何かを使って操作する際、手と対象を意識するので はなく、手で自由に操作しているモノと対象物を意識しているのである。そしてこのとき、自由に 操作しているモノに対して何かしらの力が加わったとき、我々はあたかも手でその対象物を触った かのように感じるのである。そして、自由に操作しているモノと対象物を意識するときに我々は見 ているのである。ここから、情報リアライゼーションでは、視覚的に自由に動かせるモノ(マウス カーソル)に対して、ユーザが予期しない様々な動きをさせることで、仮想的に感触を感じること ができるのではないかと考えた。 そこで、本研究ではこの情報リアライゼーションを利用することで、特別なデバイスを使わ ず一般的な環境でも動作する Flash[4] を用いて開発することで、感触が感じられる作品である HapticDesktop を作ることとした。また、感触のおもしろさをデスクトップ上に表現するために、 我々が日常的に行っている動作をデスクトップ上に組み込むことで、より自然でわかりやすい操作 が可能な作品を制作した。 そして制作した HapticDesktop は次のようなものとなった。 デスクトップ上にフォルダが2つありこれらを操作することでファイル操作を行うことができ る。また、右のメニューバーには、help と wallpaper がある。操作する上で分からないことがある 場合は help のヘルプボタンを押すと本作品についての説明を見ることができる。また、本作品の 特徴である感触を感じるため wallpaper で壁紙を変更することができる。壁紙は3種類あり、紙、 麻、水面がある。それぞれに対応した演出がされており、マウスカーソルを動かすだけで、それぞ れの感触が感じることができる。 そして制作した作品を展覧会にて展示した。その結果、感触が感じられるという意見を得たが、 「デスクトップに感触が必要なのか」という声も多くあった。これからは、デスクトップに感触情 報が必要だと鑑賞者に思わせるような作品を制作する必要がある。 キーワード: GUI, 情報リアライゼーション, 感触, デスクトップ HapticDesktop 目次 第1章 1.1 1.2 1.3 背景 現実空間と仮想空間との違い . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 仮想感触について . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . Haptic デバイスについての研究 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 1 1 1 2 第 2 章 目的 4 第 3 章 関連研究 3.1 生態学的視覚論-ヒトの知覚世界を探る . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3.2 情報リアライゼーション . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5 5 5 第 4 章 提案する作品の説明 4.1 提案する作品の考え . . . . . . . 4.2 制作ツール . . . . . . . . . . . . 4.2.1 Flash について . . . . . . 4.2.2 開発環境 . . . . . . . . . . 4.3 実装手順 . . . . . . . . . . . . . . 4.4 操作方法 . . . . . . . . . . . . . . 4.4.1 画面説明 . . . . . . . . . . 4.4.2 ファイル操作で可能な動作 4.4.3 壁紙による演出 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 6 7 7 8 8 8 8 10 15 第 5 章 展示とレビュー 18 第 6 章 考察 20 第 7 章 まとめと今後の展望 21 i BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 第 1 章 背景 1.1 現実空間と仮想空間との違い 我々の生活において感触から得る情報は非常に多いが、コンピュータのデスクトップ上 で感じることができない。 例えば、スーパーマーケットなどで気になったものを手に取るということをよく行うだ ろう。このように私たちは目に入ったもので気になった対象物(以降モノと呼ぶ)を手に もって確かめるという動作を日常的に行っている。つまり、手から伝わる感触からそのモ ノの質感や重量感、反発感など様々な情報を得ることで、視覚情報からだけでなくより深 くそのモノを知るのである。しかし、我々が普段使うコンピュータのデスクトップはどう だろうか。特別なデバイスを使用しない限り感触を感じられないのが現状である。 感触をデスクトップ上に付加することができれば、普段私たちが日常的にやっている動 作をデスクトップ上で行えるようになり、気になったモノについてより深く知ることがで きるだろう。 1.2 仮想感触について 本研究は、平成 17 年 11 月 12-3 日に実施された公立はこだて未来大学で実施されたワー クショップ「Instants en s uspens: クロノ・インタラクティヴによる点と線」において、 インタラクティブシネマ(操作可能な映像)によって仮想感触を感じた経験をもとにはじ まっている。 インタラクティブシネマは、鑑賞者は映像を見ながらボリュームノブをまわすことで映 像を再生できるようになっていおり、まわすのをやめると逆再生されてしまう。そして、 ある特定のところまで再生してしまうと、鑑賞者の操作に関係なく再生されてしまうとい う仕様になっている。鑑賞者は、この特定のところ付近で映像を再生・逆再生することで サスペンス(緊張感)を感じ、仮想感触を感じることができる。 実際に操作していないものを、仮想空間上(画面上)で操作することで、あたかも実際 に操作しているように感じた経験を、デスクトップインターフェースに応用させると、新 しいインターフェースができるのではないかと考えた。 1 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 図 1.1: ワークショップの様子 1.3 Haptic デバイスについての研究 特別なデバイスを用いることで、仮想空間上でも感触が感じられるインターフェースは 多く研究されている。例えば 1993 年にマサチューセッツ工科大学の AI 研究所で Thomas Massi e と Kenneth Salisbury によって開発された PHANToM がある。この時のデバイ スは、ワイヤーに指サックのようなものがついており、そのワイヤーは制御モータにつな がっている。そして、指サックに指を入れ画面上のオブジェクトをさわるとそれに対応し た反力が、制御モータによってかえってくる仕組みになっている。このデバイスの大きな 利点として、感触を指先に実際に感じることができることである。例えば、視覚障害者の ためのユーザインターフェースや外科手術のリハーサル、トレーニングシステムなど様々 な応用先が考えられた。そして現在では製品化され実際にトレーニングシステムとして使 われている。 その他にも、米国の NIST(National Institute of Standards and Technology) と Deputy Secretary of Commerce Sam Bodman、NFB(National Federation of the Blind) によって 開発された、 「触覚式ディスプレイ」システム [6] がある。これは、ピンが立てて並べられ ており、デジタル画像のデータ部分を突起させたり、へこませたりすることで、文字や絵 を手で触って認識できるようにしたディスプレイである。これによって従来のコンピュー タのディスプレイを使えなかった視覚障害者でも画像や文字を知覚できるようになった。 下図は女性の画像を表示したときの様子である。 図 1.2: PHANToM([5] より転載) と触覚式ディスプレイ ([6] より転載) 2 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop しかし、今現在このようなデバイスは一般的に普及していない。普及しない理由の一つ はコストパフォーマンスの悪さである。ソフト制作者はそのハードに対応させたプログラ ムを作成しなければいけないし、ユーザもデバイスが動く環境をそろえなければいけない といった問題があり普及しなかったと考えられる。 3 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 第 2 章 目的 特別なデバイスを使わずに仮想感触をデスクトップ上に付加することで、より多くの情 報を獲得できる、新しいデスクトップを制作する。 なぜなら今まで特別なデバイスを用いることで感触を感じられるという製品は多く研究 されてきたが、一般に普及してはいない。それは、ソフトを制作する側もそのデバイスに 対応させたソフトを制作しなければいけないことや、ユーザ側もそのデバイスを購入し、 動作する環境を持たなければいけないといった手間があるからだと考えられる。そのため 特別なデバイスを使わない情報リアライゼーション(3.2 章)を基に制作する。 情報リアライゼーションによる感触提示の方法について実際に制作しながら、どのよう な感触提示ができるのか研究する。また、感触のおもしろさをデスクトップ上に表現する ために、我々が日常的に行っている動作をデスクトップ上に組み込むことで、より自然で わかりやすい操作が可能な作品にする。 図 2.1: HapticDesktop の概念図 4 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 第 3 章 関連研究 この章では、本研究を行ううえで基になった生態学的視覚論についてと情報リアライ ゼーションについて説明を行う。 3.1 生態学的視覚論-ヒトの知覚世界を探る J.J.Gibson の著書「生態学的視覚論-ヒトの知覚世界を探る」において、「知覚は操作に よって規制され、同時に操作もまた知覚によって規制される」と述べている。つまり我々 は知覚から得た情報をたよりに操作し、同時に操作することでそこからの知覚情報を得て いるということである。例えば、隣の部屋に移動するためにドアを操作するときに、視覚 健常者であれば可動する面と操作する取手を視知覚より得るだろう。そして、ドアを開け るためにドアの取手に手を取り動かす。その際、どの方向にも取手が動かないという触覚 情報を手から獲得し、次に押してみたり引いてみたりという操作をする。このように我々 は、どのような操作が可能か知覚によって導かれ、操作することでモノがどのような状態 なのか知覚するのである。 このように現実空間では、知覚と操作は常に同時に行われている。しかし仮想空間では どうだろう。我々がコンピュータを用いて何か作業を行うとき、まずモニタからどのよう な操作が可能か情報を獲得する。次に行いたい操作を行うが仮想空間の手のようなもので あるマウスカーソルから知覚できる情報はない。 そこで現実空間と同じように仮想空間、この場合デスクトップ上でマウスカーソルの大 きさを変化させることで遠近感を感じたり、細かく揺れることで質感を感じることができ るかもしれない。このような観点から作品制作を行った。 3.2 情報リアライゼーション 本研究では、情報リアライゼーションを利用し、ユーザがマウスカーソルを動かすこと で、触覚的な情報だけではなく空間の表現も可能にした。 我々がモノを操作する際は必ず手が関わってくる。我々は操作中に返ってくる手への質 感や重量感、反発感などを感じてモノがどのようなものなのか判断している。コンピュー タ上における手のような存在であるマウスカーソルを、操作する対象物に合わせて変化さ せることで、質感や重量感、反発感などを感じることができるのが情報リアライゼーショ ンである。 5 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 第 4 章 提案する作品の説明 本作品は、マウスカーソルなどに様々な動きをさせることで、質感や重量感、反発感な ど様々な感触を付加したデスクトップである。この章では、提案する作品の考えや実装方 法、実装手順、操作方法について説明する。 4.1 提案する作品の考え 本研究の作品である HapticDesktop とは、3章にもあるように情報リアライゼーション を基礎としてつくられている。この情報リアライゼーションを使うことによって、質感や 重量感、空間認識を可能にしている。 我々がモノを操作するときは、握る、押す、引く、つぶすなど様々な動作を行う。その 際に必ず対象のモノに力を加える。その力の入れ具合や手に帰ってくる反発力などを演出 することで、質感や重量感などを表している。 例えば、マウスカーソルを 10 移動させようと考えたとき、10 の距離だけ移動させれば 良いが、20 の距離を移動しなければ目的の位置までマウスカーソルが動かなかったら普段 より重く感じるだろう。そのようにマウスカーソルに演出を加えることで重量感を与えて いる。 図 4.1: マウスカーソルの動きによる重さの表現方法例 また、質感を与えるにはそれに合った動きをマウスカーソルにさせれば、ユーザはその 6 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 質感を感じることができる。 例えば、砂のような感触を与えたい場合はマウスカーソルを小刻みに揺れさせることで、 その質感を感じ取ることができる。 図 4.2: マウスカーソルの動きによる質感の表現方法例 4.2 制作ツール この章では制作ツール、特に Flash と開発環境について説明する。 4.2.1 Flash について 本作品は Adobe Systems 社の Flash を用いて開発を行った。Flash は旧 Macromedia 社 が開発したオーサリングソフトで、ビデオ、オーディオ、グラフィックエフェクト、アニ メーション、テキストなどを組み合わせることでインタラクティブなコンテンツを作るこ とができる。また、マウスやキーボード、web カメラ、マイクロフォンなど様々なデバイス で容易にインタラクティブなコンテンツを作成することができ、インタラクティブな web サイト、インターフェース、ゲーム、モバイルコンテンツなどの制作には欠かせないソフ トになってきている。また、ActionScript を使うことで様々な動きを制御することができ る。本作品では ActionScript によって、デスクトップの壁紙の変更機能やヘルプ画面の表 示、マウスカーソル、フォルダ、ファイルの動きの制御など様々なところで用いている。 Flash によって作られたファイルを再生するには、web ブラウザに専用のプラグインで ある Flash Player をインストールする必要がある。Flash は有料だが Flash Player は無料 で配布されている。また、現在では多くの web ページで Flash が使われているため、Flash Player をインストールされているパソコンは多い。 そして Flash コンテンツやアプリケーションは、Windows、Macintosh 、Linux、Unix、 7 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop PDA、携帯電話など様々なプラットフォームに対応しており、インターネットに接続され たパーソナルコンピュータの 98 %以上にインストールされているため、本作品を誰でも 再生できると考えた。 4.2.2 開発環境 本作品は以下の環境で開発された。 ・ OS - Mac OS X ・ プロセッサ 2GHz Intel Core Duo ・ メモリ 2GB 667 MHz DDR2 SDRAM 4.3 実装手順 感触を感じるためにはマウスカーソルをどのように動かせば良いか考え、実装していっ た。実装した作品を他の人に見てもらい改良点を見つけ、改良していった。 4.4 操作方法 この章では、HapticDesktop の操作方法やファイル操作で可能な動作、壁紙による演出 について説明する。 4.4.1 画面説明 HapticDesktop の画面について説明する。図のようにデスクトップ上にフォルダが2つ ありこれらを操作することでファイル操作を行うことができる。また、右のメニューバー には、help と wallpaper がある。操作する上で分からないことがある場合は help のヘル プボタンを押すと本作品についての説明を見ることができる。また、本作品の特徴である 感触を感じるため wallpaper で壁紙を変更することができる。壁紙は3種類あり、紙、麻、 水面がある。それぞれに対応した演出がされており、マウスカーソルを動かすだけで、そ れぞれの感触が感じることができる。それぞれに対する演出の説明は 4.4.3 でする。 8 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 図 4.3: HapticDesktop 画面 図 4.4: ヘルプボタンと壁紙選択ボタン 図 4.5: ヘルプ画面 9 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 4.4.2 ファイル操作で可能な動作 本作品では、より直感的に分かりやすい操作ができるように、我々が無意識にやってし まう行為を可能にすることで、ファイルをより直感的な操作ができるようにした。下図の ような日常的動作がデスクトップ上で可能になっている。この章では、これらの動作の操 作について説明する。 図 4.6: HapticDesktop における可能な動作 10 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 『振って出す』について 我々の普段の生活において、振って出す行為がよく見られる。例えば、瓶の中に入ってい る塩を出すときに行う。この行為の「中にあるモノを外に出す」という行為をメタファー にし、デスクトップ上に表現したのが『振って出す』である。 従来フォルダの中身をデスクトップ上に出すにはフォルダを開き選択し、そのままデス クトップ上にドラッグするという手順をとっていた。しかし、本作品では以下の手順をふ むことで、フォルダを開くことなく中身を外に出すことができる。 『振って出す』手順 1、 外に出すファイルが格納されているフォルダを左クリックする。するとフォルダ が持ち上がる。 2、 フォルダをドラッグしたまま左右に大きくふる。 3、 ファイルが外に飛び出す。 図 4.7: 『振って出す』の手順 11 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 『振って確かめる』について 我々の普段の生活において、振って確かめる行為がよく見られる。例えば、机の上にあ る缶にまだ中身が入っているか確かめるときに行う。この行為の「中身を出さずに中のモ ノを量る」という行為をメタファーにし、デスクトップ上に表現したのが『振って確かめ る』である。 従来フォルダのフォルダサイズを見るためには、Windows の場合左クリックをし、プロ パティを選択しなければいけなかった。しかし、厳密なフォルダサイズを知りたいときは 割と少ない。本作品では以下の手順をふむことで、フォルダの大まかなフォルダサイズを 容易に知ることができる。 『振って確かめる』手順 1、 サイズを知りたいフォルダを左クリックする。するとフォルダが持ち上がる。(こ のときサイズが大きければ大きいほど持ち上がる動作が鈍く重く感じる) 2、 横に振る。(このときサイズが大きければ大きいほど動きは鈍く重く感じる) 図 4.8: 『振って確かめる』の手順 12 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 『触る』について 我々の普段の生活において、触る行為がよく見られる。例えば、服を購入するときにそ の素材を調べるときに行う。この行為の「より詳細に調べる」という行為をメタファーに し、デスクトップ上に表現したのが『触る』である。 従来マウスポインタをファイルやフォルダに合わせても何も変化が無く、どのような表 面なのか、立体的なのか分からなかった。本作品では壁紙やフォルダなどにおいてマウス カーソルでなぞると表面や立体感が感じられる。 図 4.9: 『触る』で質感や立体感を感じられる例 13 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 『持ち運ぶ』について 我々の普段の生活において、持ち運ぶ行為がよく見られる。例えば、食事の際に自分が 食べやすい位置に器を移動させるときに行う。この行為の「物理的に持って移動させる」 という行為をメタファーにし、デスクトップ上に表現したのが『持ち運ぶ』である。 従来フォルダを移動させる際、フォルダをドラッグし目的のところでリリースすれば一 瞬にして移動するため、フォルダがどれくらいのファイルが入っているか分からなかった。 本作品では以下の手順を踏むことで、フォルダを移動させる際もファイルサイズが分かる ようになっている。 『持ち運ぶ』の手順 1、 移動させるフォルダを左クリックする。するとフォルダが持ち上がる。 2、 目的の場所までする。 3、 リリースするとそこにフォルダが落ちる。 図 4.10: 『持ち運ぶ』の手順 14 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 4.4.3 壁紙による演出 本作品は、選択された壁紙によって得られる感触が異なっている。この章では紙、麻、 そして水面においてどのような演出がされているか説明する。 紙の演出 選択されている壁紙が紙の場合は、マウスカーソルに対する演出はされないので、普段 使用しているデスクトップと同じである。そのため他の壁紙との比較ができるため、本作 品のコンセプトである仮想感触を感じるためにも必要と考えた。 図 4.11: 壁紙(紙) 15 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 麻の演出 選択されている壁紙が麻の場合は、マウスカーソルに対する演出がある。マウスを動か すとマウスカーソルが拡大したり縮小したり、上下左右に小刻みに動くことで表面のざら ざら感が感じ取ることができる(章 4.4.2.3 の図)。また、ファイル操作の『振って出す』 を行ったときに出るファイルは、抵抗のためすぐ止まってしまうようになっている。 図 4.12: 壁紙(麻) 16 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 水面の演出 選択されている壁紙が水面の場合は、マウスカーソルに対する演出がある。マウスを動 かすと水面をなぞったように波紋が広がるようになっている。また、ファイル操作の『振っ て出す』を行ったときに出るファイルは、抵抗が少なく流れていくようになっている。さ らに、動いているファイルにも波が生じる(章 4.4.2.3 の図)。停止中でもファイルにマウ スカーソルを合わせると、紙の形に合わせた四角い波紋が広がり、水面にマウスカーソル を合わせると丸い波が出現する。 図 4.13: 壁紙(水面) 17 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 第 5 章 展示とレビュー 本作品を、2006 年 11 月 27 日から 12 月 1 日まで公立はこだて未来大学ミュージアムに て行われた「アート・コンピューティング迎山和司研究室作品展」にて展示し、多くの人 に触ってもらった。 このときによく見られたのは、『振って出す』がなかなか思うようにできず、途中であ きらめてしまう鑑賞者が数名いた。その他にもヘルプ画面の閉じずにそのままファイル操 作を行っている鑑賞者も数名いた。 得られた意見として次のようなものがあった。 ・ 感触がよく感じられたが、感触の応用先はまだあるはずだ ・ 実用的なものを目指しているのか、アート的なモノを目指しているのかわかりづらい ・ アート的な作品として出すのであれば、見た目の向上が必要 ・ 質感や凹凸感を感じることができた ・ フォルダのような事務用品のメタファ(喩え)がふさわしいのか 図 5.1: 展覧会全体の様子 18 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 図 5.2: HapticDesktop 展示風景 図 5.3: HapticDesktop 操作風景 19 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 第 6 章 考察 今回の展覧会において「質感や凹凸感を感じる」という結果をえることができた。しか し、「デスクトップに感触が本当に必要なのか」という声も多くあった。 その原因は、本作品では感触情報のおもしろさや機能性を表現し切れなかったためだと 考える。 現実空間において、感触は非常に多くの情報を含んでおり、手で触るだけでその質感や 凹凸感などが一瞬でわかる非常に便利な情報取得方法であり、我々の生活で無くてはなら ないものである。例えば、新しい服を選ぶにしろ、家具用品を購入するにしろ、質感を確 かめるために手で触ったりして感触情報を得る。このように、無意識に行ってしまう行為 にまで感触情報を得ることは日常化している。そして、このような日常的な動作をデスク トップ上でも可能にすることで、よりわかりやすく、便利な操作ができると考えた。 そのひとつに『振って確かめる』という機能がある。 これはフォルダを振るだけで中に入っているファイルの量が大体わかるという機能であ る。従来のデスクトップでフォルダの内容量を知るためには、右クリックしプロパティを 開く必要があった。しかし、そこまで正確な内容量を知りたいわけではない場合も多い。 この機能は従来のデスクトップには無かった機能で、便利な機能といえる。レビューでは 「操作が少なく感触を生かした機能だ」という意見も得た。 しかし、これとは別に、『壁紙を変更することでその壁紙の質感がわかる』という機能 を追加した。この機能は、今回の展示会において、「特別なデバイスを利用しなくても感 触が感じられる」ということを鑑賞者にわかってもらうためには、よい機能だと考え付加 した。その結果レビューでは「何のためにあるかわからない」という評価を得た。 以上のような『振って確かめる』と『壁紙を変更することでその壁紙の質感がわかる』 に対するレビューを比べることで、鑑賞者は便利な機能を新しいデスクトップに求めてい るということがわかる。感触をデスクトップのどの部分に適応させるかが問題で、ただ質 感だけが感じられても意味がないのである。 これらのことから、鑑賞者に「デスクトップに感触が必要だ」と感じてもらうためには、 『振って確かめる』のような感触を感じられて、より便利な機能をさらに考える必要がある。 20 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 第 7 章 まとめと今後の展望 本研究では、視覚情報だけで触覚情報を付加するデスクトップシステム HapticDesktop を制作し、次のような作品になった。 デスクトップ上にフォルダが2つありこれらを操作することでファイル操作を行うこと ができる。また、右のメニューバーには、help と wallpaper がある。操作する上で分から ないことがある場合は help のヘルプボタンを押すと本作品についての説明を見ることが できる。また、本作品の特徴である感触を感じるため wallpaper で壁紙を変更することが できる。壁紙は3種類あり、紙、麻、水面がある。それぞれに対応した演出がされており、 マウスカーソルを動かすだけで、それぞれの感触が感じることができる。 その結果、感触が感じられるデスクトップを開発することができた。しかし、「デスク トップに感触が本当に必要なのか」という声も多くあったため、現在のデスクトップに感 触情報が必要だと鑑賞者に思わせるような、感触が感じられる便利な機能を考える必要が あった。 これからは、VisualHaptics[8] で表現されていた感触提示方法をさらに発展させる必要 がある。そして、オブジェクトの複数選択やウィンドウの切り替えなど、普段我々がコン ピュータを使う際に不便だと感じていることを解決するなど、目的を持って開発していく 必要がある。 21 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 謝辞 本研究を進めるにあたり、ご指導いただいた迎山和司助教授(公立はこだて未来大学) に深く感謝いたします。また、本研究に多くの助言を頂いた迎山研究室の、加藤瑞樹さん、 櫻庭翼さん、中谷洋輔さん、芳賀匡平さん、古川千尋さん、宮腰麻知子さんに感謝いたし ます。 そして、本研究を進めるきっかけになった、「Instants en suspens:クロノ・インタラク ティブによる点と線」でお世話になった Jean-Louis Boissier 教授(パリ第 8 大学)と竹内 創講師(パリ第 8 大学)に感謝いたします。 最後に、「アート・コンピューティング迎山和司研究室作品展」で様々な助言を頂いた 皆様に感謝いたします。 22 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 参考文献 [1] 『Haptic Interface - PHANToM』 http://www.kk.iij4u.or.jp/ kbhiromi/HTML/haptic.htm [2] 渡邊恵太, 安村通晃: RUI: Realizable User Interface カーソルを用いた情報リアライゼー ション. ヒューマンインタフェースシンポジウム 2003 論文集, pp.541-544, September 2003. [3] J.J. Gibson : ギブソン 生態学的視覚論 ヒトの知覚世界を探る THE ECOLOGICAL APPROACH TO VISUAL PERCEPTION 1979. [4] 『Macromedia - Flash Professional 8』 http://www.adobe.com/jp/products/flash/flashpro/ [5] 『PHANToMs < Haptics < TWiki』 http://bdml.stanford.edu/twiki/bin/view/Haptics/PHANToMs [6] 『NIST ’Pins’ Down Imaging System for the Blind』 http://www.nist.gov/public affairs/factsheet/visualdisplay.htm [7] 『NIST News Release』 http://www.nist.gov/public affairs/releases/visual display.htm [8] 渡邊恵太:『VisualHaptics カーソルによる手触り間提示システム』 http://www.persistant.org/visualhaptics.html 23 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA HapticDesktop 図目次 1.1 1.2 ワークショップの様子 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . PHANToM([5] より転載) と触覚式ディスプレイ ([6] より転載) . . . . . . . 2 2 2.1 HapticDesktop の概念図 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 4 4.1 4.2 4.3 4.4 4.5 4.6 4.7 4.8 4.9 4.10 4.11 4.12 4.13 マウスカーソルの動きによる重さの表現方法例 マウスカーソルの動きによる質感の表現方法例 HapticDesktop 画面 . . . . . . . . . . . . . . . ヘルプボタンと壁紙選択ボタン . . . . . . . . ヘルプ画面 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . HapticDesktop における可能な動作 . . . . . . 『振って出す』の手順 . . . . . . . . . . . . . 『振って確かめる』の手順 . . . . . . . . . . . 『触る』で質感や立体感を感じられる例 . . . 『持ち運ぶ』の手順 . . . . . . . . . . . . . . 壁紙(紙) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 壁紙(麻) . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 壁紙(水面) . . . . . . . . . . . . . . . . . . 5.1 5.2 5.3 展覧会全体の様子 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 18 HapticDesktop 展示風景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19 HapticDesktop 操作風景 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 19 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 6 7 9 9 9 10 11 12 13 14 15 16 17 24 BA Thesis at Future University-Hakodate, 2007 Shunsuke NAKAMURA