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問題解決型の学習過程に論理的な思考活動の場面を位置づけて

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問題解決型の学習過程に論理的な思考活動の場面を位置づけて
PISA型「読解力」を視点として
数学的な見方や考え方を育てる算数科の指導法の工夫
-問題解決型の学習過程に論理的な思考活動の場面を位置付けて-
研究の概要
本研究は,小学校算数科において数学的に事象を見たり,考えたりする力を育てるために,PISA型
「読解力」の「読解のプロセス」と問題解決型の学習過程との関連を図ることを試みた。また,授業
では,思考活動の場面を位置付ける学習活動を設定することで指導法の改善を目指した。
キーワード
PISA型「読解力」
Ⅰ
「読解のプロセス」
問題解決型の学習過程
数学的な見方・考え方
主題設定の理由
1
算数・数学科教育の今日的課題
(1)思考力・判断力・表現力等の育成
平成19年6月に公布された学校教育法の一部改正では,義務教育の目標が具体的に示されるととも
に,小中高等学校等においては ,「生涯にわたり学習する基礎が培われるように,基礎的な知識及び
技能を習得させ,これを活用して課題を解決するために必要な思考力,判断力,表現力等をはぐくみ
主体的に学習に取り組む態度を養うこと」としている。この規定は,学力の重要な要素を示すもので,
新しい学習指導要領の改訂案(平成20年2月)においても,これまで以上に基礎的・基本的な知識・
技能の習得とともに,それらを活用する学習活動を充実させることにより,思考力・判断力・表現力
等の「確かな学力」をはぐくむことを求めている。
(2)言語力育成への課題
今後の学校教育では,知識・技能の習得と考える力の育成を総合的に進めていくために,知識・技
能を実際に活用して考える力を育成することを求めている。その際「言葉」を重視し,すべての教育
活動を通じて国語力を育成することが必要である。
言語力育成の課題の一つとして,教科等を横断した指導の充実をあげられる。その中で,教科等を
横断した指導については,
○事実を正確に理解し,他者に的確に分かりやすく伝える技能を伸ばすこと
○クリティカル・リーディングやPISA型「読解力」の考え方を踏まえ,自分の考えを深めることで,
解釈や説明,評価,論述をする力を伸ばすこと
○考えを伝え合うことで,自分の考えや集団の考えを発展させる力を伸ばすこと
など
各教科等の特質を踏まえて取り組むことが重要であるとしている。
算数・数学科においては,算数・数学を活用して考えたり,判断したりする活動に重点を置き,そ
の活動がよりよく行われるように,言葉や数,式,図,表,グラフなどを用いて,筋道を立てて説明
したり,論理的に考えたりして,自らが納得したり他者を説得したりする指導を行うことが大切であ
る。また,予測や推測を生み出し,それらを確かめたり,よりよい予測や推測をしたりするための指
導を行うことも大切である。
2
国際的な学力調査等の結果と算数・数学科教育
(1)子どもたちの学力の状況
平成15年(2003年)に実施された国際的な学力調査の結果(経済協力開発機構(OECD)のPISA調査,国際教育到達度評価学会(I
- 1 -
ED) のTIMSS調査 )では,我が国の生徒の学力は,全体として国際的に上位にあるものの ,「読解力」や
記述式問題に課題があることやPISA調査の「読解力」の習熟度レベル別の生徒の割合において,前回
の調査(2000年)と比較して,成績中位層が減り低位層が増加していることなどの低下傾向が見られ
ると報告している。さらに,平成19年12月には,平成18年(2006年)の調査結果が発表され,「読解
力」など3分野で順位が後退していることが明らかになった。
また,国立教育政策研究所が,平成15年度実施した小中学校教育課程実施状況調査においては,基
礎的・基本的な知識・技能の習得を中心に成果が認められる一方で,国語の記述式問題の正答率が低
下するなどの課題が見られた。
このような調査結果から,基礎的・基本的な知識・技能については,全体的には一定の成果が見ら
れるが,思考力・判断力・表現力等を問う「読解力」や記述式の問題に課題があるとしていえる。こ
れらの力は,現行の学習指導要領が重視し,児童生徒が社会において必要とされる力であることから,
学校教育の大きな課題である。
山梨県教育委員会では,県小中学校教育課程実施状況調査(平成18年度)の小学校6年算数科の結
果を受けて,その取組を次のように示している。
①ふだんの生活の中の事象などをできるだけ教材として扱い,算数的活動を重視すること
②いろいろな事象について数学的な見方ができるようにすること
③いろいろな考え方ができる教材を準備し,自分の考えをもち,それを表現したり,互いの考えの
よさを認め合ったりする学習過程や形態を工夫すること
④論理的な思考力を育てるために,日ごろの授業の中で筋道を立てて考える活動を行うこと
など
これらの取組内容を踏まえ,算数科においては,数学的な見方や論理的に考える力,算数的表現力を
育てることで,「確かな学力」の育成を図ることが大事であると考える。
(2)PISA型「読解力」と算数・数学科教育
文部科学省では,経済協力開発機構(OECD)のPISA調査を受けて,平成17年に「読解力向上プログ
ラム」及び「読解力向上に関する指導資料」を発表した。その中で,「例えば,数学においては数学
的に解釈する力や表現する力の育成を目指した指導の充実を求めているが,そのためには与えられた
状況やデータを数学的に解釈し,それに基づいて自分の考えを整理し,数学的な表現を用いて自分の
考えを述べる力を育てることが大切である 。」と指摘している。これは,単に出来上がった算数・数
学を知るのではなく,算数的・数学的活動を通して学ぶことを経験し,その過程の中で見られる工夫
や驚き・感動を感得することが大切であると考える。同時に論理的な思考活動が行われることで,数
学的な見方・考え方も育てられ,思考力や判断力,表現力等の「確かな学力」の育成が期待される。
以上の主題設定の理由から,研究主題を「PISA型「読解力」を視点として数学的な見方や考え方を
育てる算数科の指導法の工夫」-問題解決型の学習過程に論理的な思考活動の場面を位置付けて-と
した。
Ⅱ
研究のねらい
算数科において数学的な見方・考え方を育てるために,PISA型「読解力」の「読解のプロセス」を
視点とした学習過程に思考活動の場面を位置付けた指導を行うことで「確かな学力」の育成を目指す。
Ⅲ
1
研究の基本的な考え方
算数科における「読解力」とテキスト
「読解力向上に関する指導資料」では,
「読解力」については,
「テキストの解釈,熟考・評価」
「自
- 2 -
由記述(論述)の設問」に課題があるとしている。その改善の方向として,
①テキストを理解・評価しながら読む力を高める。
②テキストに基づいて自分の考えを書く力を高める。
③様々な文章や資料を読む機会や,自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実する。
の3点をあげている。
このことから,算数科においての「読解力」の育成の視点として,テキストを読む場面では指導の
ねらいに迫ることができる提示の仕方を工夫する必要がある。また,児童相互の考えを読む場面を意
図的に位置付けることにより,数学的に事象を読み取ることや自分の考えを表現することにつながる
と考える。また,児童が互いに教え合い,学び合う学習活動を進めることは,学びを共有化すること
にもなる。そのためには,自分の考えを他者に分かりやすく表現することが重要になってくる。
「読解力」向上を目指した算数科の授業づくりとして,文科省調査官の吉川成夫氏は,
テキストとして……
・身の回りの数量や図形(具体物)
表,グラフなど)
・数量や図形についての事柄や関係(言葉,数,式,図,
・整数,小数,分数など
・他の教科の教科書や副教材
・単位を伴った量
・図書館にある年表などの参考書
・算数の教科書,副教材
・本,新聞,雑誌
等
これらに書かれたテキストを読み,そこから情報を取り出していく。そうした情報をもとにし
て,適切に事柄を解釈したり,意味を理解したりする。その上で,自分で納得のいく判断をした
り,自分に必要な問題を解釈したりするなど,目的に応じた活用をしていくのである。算数の「読
解力」とは,こうした一連の活動を進めていく力であるととらえることができる。
このことから,本研究の算数科における「読解力」を,
○文章や数,式,図,表,グラフなどから正しく必要な情報を取り出す力…<情報の取り出し>
○取り出した情報から筋道立てた解答を導き出す力…<解釈>
○求めた解答が正しいか,より簡潔な方法や明確な方法はないかなど,学習のねらいや思考の
過程に即して考える力…<熟考・評価>
○解答に至るまでの考え方を文章や式,図などで論理的に表現する力…<熟考・評価>
○自分の感じたことや考えたことを他者に分かりやすく表現する力…<論述(表現)>
ととらえて,問題解決型の学習過程に関連付けて授業を構成する。
なお,テキストについては吉川氏の考えを基にしながら,児童の身近な生活に関連するものや既習
の学習に結び付けて考えることができるもの,などを取り入れていきたい。
2
PISA調査の「読解のプロセス」と問題解決型の学習過程との関連
PISA調査の「読解力」の問題は,「読む行為(読解)のプロセス」としては,単なる「テキストの
中の情報の取り出し」だけでなく,書かれた情報から推論して意味を理解する「テキストの解釈」,
書かれた情報を自らの知識や経験に関連づける「熟考・評価」の三つの観点を設定している。また,
出題形式は記述式問題を多く取り入れることで,テキストを単に読むだけでなく,テキストに基づい
て自分の意見を論じたりすることが求められている。
広島大学大学院教授角田重樹氏は ,「読解力」向上のために授業のどこを改善すべきかを授業改善
の視点として,
①児童が他者とかかわり,自己の考えと他者の考えの違いに気付き,自分の考えの判断と根拠な
- 3 -
どの視点で記述し,的確に表現し,対立する問題点を解決する過程が大切であること
②児童が目標(めあてや問題)やそれを実現(解決)する方法を考察し,実行する過程(プロセ
ス)を明確に書いたり,表現したりすること
が大切であると提言している。
「読解のプロセス」と授業の改善の二つ視点とを考え合わせていくと,これは「学びのプロセス」
ととらえることができる。また,問題解決型の学習過程に,自分の考えの根拠などを明らかにし,目
的に合わせて的確に表現することを授業の中核に位置付けていくことで,その関連を一層図ることが
できると考える。
具体的には1時間の授業においては,その学習活動として考えられる内容を,次のような基本形と
とらえ,PISA型「読解力」を視点とする学習過程として位置付ける。
情
報
の
取
り
出
し
問
題
把
握
段
階
熟
考
・
評
価
自
力
・
集
団
解
決
段
階
論
述
∧
表
現
∨
ま
と
め
段
階
解
釈
3
学習の活動として考えられる内容の基本形
①正しく問題の内容や状況をつかむ。
・分かっていることは何か,何を求めればいいのか,分からないことは何か
②問題の解決に向けて必要なものはどれかを考えて選ぶ。
・必要なところに線をひくことができる,大切だと思うことを挙げる
③数字や式,図,表,グラフが表している意味や関係を正しく読み取る。
・どちらが大きいか,合計はいくつか,最大値と最小値,二つの数量の関係
④これまでの学習と関連付けて読み取る。
・既習の学習内容を復習する,前時の学習のまとめを読む。
<情報(情報の取り出し)①~④>
①数字や式,図,表,グラフなどが表す意味や関係を考える。
②どうやったら答えを求めることができるか考える。
・かけ算で求めればいい,まず辺の長さで比べてみよう,まず全体を求めてか
ら,次に…しよう。
③求めた答えが正しいか理由を考える。
④どこが間違っているかを考える。
⑤どうやって求めたか順序だてて説明しようと考える。
⑥自分の考えと他の考え方と比べて考える。
⑦新しい方法やもっと違ったやり方を考える。
⑧数理的な事象を図,表,数,式,言葉等の多様な表現・表記を活用して表現す
る。(算数的な表現)
⑨問題の解決や探究にかかわって解決の理由や探究の仕方などを表現する。
(思考過程の表現)
<解熟(解釈・熟考・評価)①~⑨>
①学習を振り返り,思ったことや考えたことを学習感想として書く。
②学習した内容を通して算数のよさについて気付いたことを書く。
③自分の考えと他者の考えを比べるなど多様な考え方について気付いたことを書
く。
④学習した内容から新たな課題について書く。
*ノートやワークシート,プリントなどの活用
<論表(論述<表現>)①~④>
論理的な思考活動の場面の位置付け
論理的な思考活動の場面では,活動そのものが論理的思考力を育てることにつながるものであり,
次の三つの視点を踏まえたものであると考える。金本良通氏は著書の中で,次のように述べている。
論理的思考力の育成にあたって…
第1は,子ども自身が自らの思考過程を振り返ることである。また,その思考過程を表現す
- 4 -
ることである。どのように考えたかを説明できることであり,それを反省することにより,よ
り的確な表現,筋道だった表現ができるようにしていくことが大切である。
第2は,いくつかの思考の仕方が身に付ていくことである。
例えば,○分類・整理して考えること
○いくつかの事例をもとに帰納的に考えること
○既に知っていることをもとに類推していくこと
○演繹的に考えること
など
いくつかの思考の仕方を経験し,振り返り,表現していくことである。
第3に,他の子ども達や教師との交流を通し,考えを検討していくことである。自分だけが
分かればよいのではなく,自分たちの分かり方を明らかにし,その内容や過程を検討し合うこ
とである。
このような視点から,論理的な思考活動とは,
①自らの思考過程を振り返ることができる活動
③思考の仕方を身に付けることができる活動
②自らの思考過程を表現することができる活動
④他者との交流を通して納得し合いができる活動
⑤多様な考えの交流と関係付けができる活動
を含んだものと考える。
4
学習感想と授業評価
矢部敏昭氏は,学習感想を取り入れる意義について,「子どもの学びの過程は個々の子どもによっ
て異なる。結果としては同じ目標に到達しても,考えのもち方やつまずきは様々である。そうした個
々の子どもの悩みや発見が学習感想から読み取れる授業を行うことで,子どもが能動的に活動する授
つく
業を創る必要がある 。」と述べている。学習感想は,児童の学びの姿そのものであり,その姿を評価
し,次の学習に生かすことができる。児童の状態や意識によっても様々に変化しその段階も変わるが,
高い段階を目指すことは,児童の学びの姿そのものを高めることになり,教師にとっては,授業の質
そのものを高めることにつながる。本研究では,授業評価を行うにあたって学習感想を活用していく。
Ⅳ
研究の目標
小学校第4学年の算数科の授業(図形領域「三角形 」)において ,「読解のプロセス 」「
( 情報の取
り出し」「解釈」「熟考・評価」「論述(表現)」)と問題解決型の学習過程の関連を図り,論理的な思
考活動の場面を位置付けることにより,児童の数学的な見方・考え方を育てることを目標とする。
<A>問題解決型の学習過程
①問題をつかむ。(問題把握<含む,見通しをもつ段階>の段階)
②自力で解決する。(自力解決の段階)
③共同で思考する。(集団解決の段階)
④振り返る。(まとめ段階)
<B>論理的な思考活動の位置付け
①問題把握の段階………………………「読解のプロセス」「
: 情報の取り出し」
学習のめあてをつかむ
○問題を読む。
○問題を分析する。
○今までの学習と比較する
- 5 -
②③自力・集団解決の段階……………「読解のプロセス」「
: 解釈」「熟考・評価」
④まとめの段階…………………………「読解のプロセス」「
: 論述(表現)」
自己を振り返る
○感じたことや考えたことを簡潔に表現する。
○学習感想をノートなどに書く。
Ⅴ
研究の内容と方法
1
研究の内容
(1)「読解のプロセス」と問題解決型の学習過程を位置付けた授業実践
(2)思考を高める話型モデル案の作成
(3)児童の学習感想にかかわる評価表案の作成
2
研究の方法
(1)授業研究
①研究の対象:公立小学校第4学年の3学級
②実施期間:10月下旬から11月中旬
③単元名及び時数:「三角形」全8時間(研究授業6時間)
(2)結果の処理の方法
①事前・事後アンケート調査(質問紙法による意識調査)
「学習への意欲・態度」
「思考活動への意識」
「問題解決的な学習」
「教科としての算数学習」
②授業観察
3
③学習プリント・学習感想の記述の分析
④事前・事後テスト
4年「三角形」学習指導案(一部)
(1)本研究の数学的な見方・考え方にかかわって
本単元の「三角形」の学習を通して身に付けさせたい数学的な見方・考え方を単元の目標から,次の4点としていく。
①三角形の二つの辺,三つの辺が等しいという観点から,三角形を分類整理しようとする。(集合の考え)
②図形の置かれている位置,大きさなどに関係なく,二等辺三角形,正三角形を認めようとする。(一般化の考え)
③角の大きさは辺の長さに関係なく,辺の開き具合だけで決まることを考えようとする。(一般化の考え)
④二等辺三角形や正三角形の作図の根拠を追求することにより,筋道立てて考えようとする。(論理的な考え)
(2)本時の学習
二等辺三角形と正三角形
第1,2時
(1)本時の目標
○いろいろな三角形の中から,辺の長さに着目して三角形を弁別することができる。
○二等辺三角形と正三角形の定義を理解し,これらを弁別することができる。
(2)評価規準
【関】
・辺の長さに着目して,三角形を分類しようとする。
【考】
・辺の長さに着目して,三角形などを見いだしている。
・辺の長さに着目して,三角形を弁別することができる。
【表】
・ストローを使って,いろいろな三角形を作ることができる。
【知】
・二等辺三角形と正三角形の定義を理解している。
(3)PISA型「読解力」との関連において育成を目指す能力
<本時の算数科における読解力>
○文章や数,式,図,表,グラフなどから正しく必要な情報を取り出す力…<情報の取り出し>
○取り出した情報から筋道立てた答えを導き出す力…<解釈>
○自分の感じたことや考えたことを他者に分かりやすく表現する力…<論述(表現)>
- 6 -
(4)展開
段階
学習内容
主な学習活動
評価の観点・ 指導上の留意点(*)
問
1.3年生での学習
◎三角形がどのような形かを既習の学習から思い出
*既習の学習から三
題
を想起させる。
す。
角形の定義を確認
把
●ここに磁石の棒が
○黒板に出で三角形をつくる。
する。
握
あります。この棒で
45
三角形を作ってくだ
読解のプロセス
さい。
●三角形とはどのよ
うな形ですか。
◎三角形とはどのような形か考える。
*発表を通して三角
①三つの辺からできている形
形や角度などへの
②三つの直線で囲まれた形
関心を高める。
③直角三角形も三角形だ。
2.身の回りから三
◎教科書の写真や身の回りにある三角形の形をした
角形のをしたものを
具体物を見て,他にどんなものがあるかを発表す
はいえないが,図
夫
探す。
る。
形を理想化して概
(身近な生活と
●身の回りで三角形
○三角定規,ハンガー,屋根の形,トライアング
形としてとらえれ
のかかわり)
の形をしたものは何
ル
など
*身の回りのものか
◎ストローで三角形を作る見通しをもつ。
形を作る。
ら,図形として三
角形へと導く。
●教科書の写真は,何を作っているところでしょうか。
*ストローの長さが
◎何をしているところか考える。
6㎝,8㎝,10
①ストローで三角形を作っている。
㎝,12㎝のもの
②長さの違うストローが4種類ある。
を用意する。
③モールでストローをつないでいる。
④円の形の紙の上で作っている。
●3本のストローを
使ってできる形は何
◎3本のストローでできる形を考える。
○三角形ができる。
◎4種類のストローから3本を選んで三角形を作
る。
ください。
○同じ色のストローは長さが同じであることを知
る。
不等辺三角形4)できる。
◎できたいろいろな三角形を黒板にはる。
(ストローを使
った自作の三角
う長さだけのスト
児童に助言する。
って,いろいろな
三角形を作ること
ができる。
(観察)
○黒板の三角形と自分の作った三角形を見比べ,
同じ三角形を見付ける。
きましたか。
見て,気付いたこと
◎黒板にはられた三角形を見て,ストローの色や辺, *いろいろな三角形
形,大きさなどから気付いたことを発表する。
ができたことに気
を発表する。
①同じ色(辺の長さ)のストローでできた三角形
付かせる。
●黒板にはった三角
②大きな三角形や小さい三角形がある。
形を見て,気が付い
③とがった三角形もある。
たことはありますか。
④直角三角形のような三角形
⑤三つとも違った色(辺の長さ)のストローを使
った三角形
- 7 -
夫
ープで固定する。
【表】ストローを使
・全部で19種類(正三角形4,二等辺三角形11,
□ テキストの工
★同じ長さだけ,違
とを知る。
◎八つの三角形を作る。
5.できた三角形を
をつかむ。
トローを6本ずつ
ローで作っている
○モールはストローとストローのつなぎであるこ
●どんな三角形がで
の内容や状況
台紙と4種類のス
*台紙にセロハンテ
作ってみます。見て
発表する。
①正しく問題
*円形に切り抜いた
本配る。
●ストローを使っていろいろな三角形を作ろう。
4.できた三角形を
◇情報…①
3㎝のモールを24
ですか。
●まず,先生が一つ
□ テキストの工
ばよいとする。
ですか。
3.ストローで三角
*厳密には三角形と
形)
自
6.作った三角形を
力
「似たものでなかま
◎自分が作った八つの三角形のを「似たものでなか
解
わけ」をする。
を集めていけばよ
決
●自分が作った三角
いことを確認して
15
形を似たものでなか
ま分け」をする。
とは似ているもの
◇解熟…①②
いく。
ま分けをしましょう。
*作った三角形の中
7.いろいろな三角
から種類の違うも
図,表,グラフ
形を「なかま」分け
のを黒板に掲示す
などが表す意味
した観点を考える。
る。
●いろいろな三角形をどんな分け方で分けたか,プリントに書いてみよ
う。
◎三角形を分類する観点を考える。
①大きい三角形と小さい三角形に分ける
ける。
や関係を考え
る。
②どうやったら
目して分類しよう
答えを求めるこ
としている。(観
とができるか考
える。
*机間指導の中でど
のような分類の観
③使ったストローの色の数で分ける。
④ストローの長さで分ける。
6.三角形を分類す
①数字や式,
【関】辺の長さに着
察,プリント)
②かどがとがっているものとそうでないものに分
集
★「なかま」を作る
点があるか見い出
など
◎三角形を分類する観点について,同じ分け方,違
しておく。
*大小やかどのとが
◇解熟…⑤⑥⑨
団
る観点について話し
った分け方などに気付き,話し合う。
り方ではあいまい
解
合う。
①大きさ
になることに気付
決
●自分の分け方につ
④ストローの長さ
20
いて説明しましょう。
すると確実に分類
●自分の分け方と友
できることをおさ
⑥自分の考えと
達の分け方を比べな
える。
他の考え方と比
がら聞きましょう。
②かどの形
③ストローの色の数
等の観点で分類する。
◎辺の長さを観点として分類する。
かせ,長さに着目
*児童の発言をまと
⑤どうやって求
めたか順序だて
て説明しようと
考える。
べて考える。
⑨問題の解決や
7.作った三角形の
○同じ長さの辺が二つのもの,三つとも同じ長さ
める形で分類する
辺の長さに着目して
のもの,三つとも長さが違うものに分類する。
【考】辺の長さに着
て解決の理由や
目して,三角形を
探究の仕方など
弁別することがで
を表現する。
分類する。
◆数学的な見方・考え方①
①三角形の2つの辺,3つの辺が等しいという
観点から三角形を分類整理しようとする。
◆数学的な見方・考え方②
②図形の置かれている位置,大きさなどに関係
なく,二等辺三角形,正三角形を認めようとす
る。
探究にかかわっ
きる。(発言)
◆数学的な見方・考
え方の視点での評
価①(集合の考え)
◆数学的な見方・考
え方の視点での評
価②(一般化の考
え)
ま
8.二等辺三角形と
◎分類した結果を見ながら,二等辺三角形と正三角
と
正三角形の定義を知
形の定義を知り,ノートにまとめる。
め
る。
10
二等辺三角形は
二つの辺の長さが等しい三角形
【知】二等辺三角形
①学習を振り返
と正三角形の定義
り,思ったこと
を理解している。
や考えたことを
(観察,ノート)
学習感想として
書く。
正三角形は
③自分の考えと
三つの辺の長さが等しい三角形
他者の考えを比
べるなど多様な
考え方について
9.二等辺三角形と
◎二等辺三角形や正三角形の弁別の仕方を考える。
正三角形を弁別する。
①ものさしで辺の長さを調べればよい。
(適用問題をする。)
②コンパスで辺の長さを調べればよい。
*見た目だけで分類
している児童は,
定義に基づいて辺
●二等辺三角形や正
の長さを調べるよ
三角形はどれでしょ
うに助言する。
- 8 -
気付いたことを
書く。
うか。どのようにし
らべればよいでしょ
うか。
10.学習を振り返る。
◎学習感想をノートに書く。
●今日の学習を振り
◇論表…①③
①学習を振り返って,思ったことや考えたこと,
返えり,ノートに学
分かったこと
習感想を書きましょ
②自分の考えと友達の考えを比べて気付いたこと
う。
など
:テキストとのかかわり→テキストの工夫
:「読解のプロセス」の「情報の取り出し」→情報①~④
Ⅵ
「解釈・熟考・評価」→解熟①~⑨
「論述(表現)」→論表①~④
研究結果と考察
1
数学的な見方・考え方について
本研究では,第4学年「三角形」の単元(全8時間)のうち6時間を研究授業として設定し ,「読
解のプロセス」と問題解決型の学習過程を位置付けた授業実践を行ってきた。授業では,単元目標か
ら四つの数学的な見方・考え方について設定している。授業観察を通しての児童の発言や学習プリン
ト・学習感想の記述から分析・評価することを試みた。
以下は,研究対象の4年B組(31名)の学習記録によるものである。
○数学的な見方・考え方①:三角形の二つの辺,三つの辺が等しいという観点から,三角形を分
類整理しようとする。(集合の考え)
本単元2時間目では,児童自身が作製した八つ三角形を自力解決の段階で,自分なりの観点
を設けて「なかま分け」を行った。
①辺の長さに着目した分け方:4種類(24名)
(24名)
②三角形の形に着目した分け方:5種類
③三角形の大きさに着目した分け方:1種類(3名)
種類(9名)
④その他の分け方:2
⑤分けられなかった:(1名)
自力解決の段階で,児童は四つの観点とその中に12種類の分け方を発見している。また,
本時のねらいである「辺の長さに着目した分け方」は,77.4%となっている。これは前時
の学習において,教科書の写真や具体物を活用したり(「 テキストの工夫」と「情報の取り出
し 」),算数的活動として,個々の児童が4種類(色)のストローで三角形を作製する活動を
取り入れることなどで,辺の長さ(色)に着目できた児童が比較的多いと考える。
集団解決の段階においては,自分の分け方を説明したり,友達の分け方を比べるながら観点
を導き出すこと(「 解釈」と「熟考・評価 」)を意図的に設定することより,自分自身のなか
ま分けとは違った分け方に気付くことができている。
◆児童の学習感想から◆
・MさんTさんの考えがあったから,二等辺三角形のこととが,よく分かってよかった。
・なかま分けをするときに,Tさんは色が三つ同じ,二つが同じで一つ違う,ばらばらという考えがいいな
と思いました。
・わたしの三角形のなかま分けがいいと思ったけど,友達の考えを聞いて友達の考えもすごくいいと思った。
このような活動を通して,辺の長さに着目した分類をすることで,二等辺三角形と正三角形
の定義を学ぶことができる。
○数学的な見方・考え方②:図形の置かれている位置,大きさなどに関係なく,二等辺三角形,
正三角形を認めようとする。(一般化の考え)
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三角形の「なかま分け」にあっては,作製した三角形の置く向きによって辺の長さに着目し
ても「同じなかま」としてとらえられない児童が見られる。そこで,ストローで作製した三角
形は円形の台紙にはることで,自由に置く向きを変えるができ,「同じなかま」として認識す
ることができる。(教科書も同様の扱い)
2時間目の学習感想の記述にも,「置く向きが違っても同じなかまの三角形がある」ことに
気付いている児童もいる。作製する三角形(八つの三角形)を多くしたことが,児童の一人一
人の学習活動を豊かにさせ,考えへの気付きへとつながったのではないかと考える。
○数学的な見方・考え方③:角の大きさは辺の長さに関係なく,辺の開き具合いだけで決まるこ
とを考えようとする。(一般化の考え)
三角形と角の学習(5時間目)は,形としての角の概念を理解し,角の大小を比べることが
できることをねらいしている。問題把握の段階では,3年の学習を基に三角定規の直角につい
て復習するとともに「角」に目を向けさせる。
(「情報の取り出し」)また,
「角」の定義や「辺」
「頂点」に意味を学び ,「角の大きさ」が辺の開き具合いで決まることを先に学習した。「
( 情
報の取り出し 」)その後,大小二つ三角定規の角の大きさを見比べる <二つの角は45°∠ア=∠ウ>学習を
行い,自分の予想が正しいか理由を考えさせるようにした。「
( 解釈」と「熟考・評価」)
◆児童の学習プリントの記述から◆
「大小の三角定規の二つの角(アの角とウの角)の大きさを比べる」(自分の予想と理由)
①アの角の方が大きい。(1名)
・小さいと角が長くて,大きいと角が狭いからだと思う。
②ウの角の方が大きい。(9名)
・先生の三角定規の方が大きく自分の三角定規は小さいから。(8名)
・よく見たら,ウの方が大きいから。
③アとウの角は同じ。 (20名)
・三角定規は大きいもの小さいものもあるけど,三角定規は全部同じだと思うから。
・大きさは違っていても角が同じだと,角の幅(開き具合い)は同じだと思う。
・先生の三角定規が大きくても,三角定規は同じだから。
・定規の大きさは,ウの方が大きいけど,角の大きさは変わらないと思う。
・同じ形で大きさだけが違うと思うから。
・定規の大きさが違うだけで,角の大きさは変わらないと思う。
・アの角とウの角が重ねて見ると同じに見える。(2名)
・同じ形だから。(5名)
・角の大きさが違ったら,はかるときにはかれないから。
・アの三角形が大きくなって,ウの三角形と同じになるから。(2名)
・ウの角の所に,アの角をくっつけると,同じだと思う。
・辺が合うから角の大きさが同じだと思う。
・見たら同じくらいかなと思ったから。
学習プリントの記述から,児童のほとんどが三角定規の「大きさ」を理由としてあげている
ことが分かる。その中で ,「大きい三角定規の方が角も大きい。」(8名:27%)と考える児
童と,大きさは違っていても,
「形は同じだから角の大きさも同じ。」
「辺の開き具合いは同じ。」
「見比べてたり,重ねたりすることで大きさが同じ。」「測るときに測れない。」など(20名
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:67%)と考える児童に分かれている。視覚的にとらえるだけでなく,そこから,さらに考
えを深めようとする様子がうかがえる。
集団解決の段階では,自分が考えた「わけ」(理由)を友達に分かるように三角定規や図な
どを使って説明したり,考えたわけの違いを比べながら聞いたりするようにした 。「
( 解釈」
と「熟考・評価 」)また,二つの角の大きさを比べる方法を児童に考えさせ ,「三角定規の二
つの角を重ね合わせる」方法により調べた。
◆児童の学習感想から◆
・角の大きさは辺の長さに関係なく,辺の開き具合いだけで決まるということが分かった。
・角の見分け方も分かった。どれが違うか,どれが同じかも分かってよかった。
・角は一つの頂点から出ている二つの辺がつくる形を角ということが分かった。
・三角定規の角の大きさを比べようが,あまりよく分からなかった。
直接比較により,二つの角の大きさを比べることができた。授業では二つの課題を同時に学
習していたためか,児童に難しさを感じさせていたのではないかと思う。
○数学的な見方・考え方④:二等辺三角形や正三角形の作図の根拠を追求することにより,筋道
立てて考えようとする。(論理的な考え)
二等辺三角形や正三角形の作図(3,4時間目)では,作図の仕方や根拠(理由)を考えた
り,説明したりする学習を行った。授業では,問題把握の段階で前時の学習と関連付けて,二
等辺三角形の定義について振り返りを行い,二つの辺の長さに着目させるようにした 。「
( 情
報の取り出し 」)また,自力解決の段階では,作図の仕方が分かりやすく説明できるように,
学習プリントを活用し ,「はじめに…,次に…,それから…,最後に…」の書き始めの言葉を
使って記述させるようにした 。「
( 解釈」と「熟考・評価」)また,発表時には実物投影機を活
用することで,作図の仕方が分かりやすくなるようにした。
3時間目の二等辺三角形の作図として,三つの方法が児童から出された。
◆児童の学習プリントの記述から◆
「辺の長さが4㎝,5㎝,5㎝の二等辺三角形(△アイウ)のかき方」
①定規で直線を4㎝ひきアイとする。辺アイの両端からコンパスで5㎝とる。交わった点を
ウとする。アウとイウを定規で結ぶ。(定規とコンパス使用:27名)
②定規で5㎝の直線アイをひく。定規で5㎝アウの直線をかく。同じように定規で5㎝イウ
の直線をかく。(定規のみ使用:3名)
③コンパスで点アからウの方へ5㎝とる。同じく点アからイの方へ4㎝とる。円の一部から
点イを決め,コンパスでウの方に5㎝をとり,交わった点をウとする。点イから点アに5
㎝とる。点ア,イ,ウを結ぶ。(コンパス使用:1名)
集団解決の段階では,自分の作図方法とどこが違っているのか,友達の考え方と比べながら
学習を展開した。「
( 解釈」と「熟考・評価」)
話し合いでは,作図方法について「正確性」や「簡便性 」,「便利性」からその「よさ」を
考えさせた。具体的には ,「どこの辺から書いたらよいのか 」「三つの頂点の位置の決め方を
考える」「コンパスを使えば,三つ目の頂点が決められる」ことを考える視点として,また既
習の学習(「円の学習」)を想起させ,コンパスの機能を気付かせながら討議をさせた。
◆児童の学習感想から◆
・Mさん考えは正確で,簡単でよかったと思いました。
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・Mさんの考え方は,すごくかき易かったです。
・MさんとRさんの考えで,こっちはやりやすいと分かりました。この考えで二等辺三角形ができると思い
ました。
・ぼくと同じ考えが3人いました。Kさんの考えを聞いて,「あんな考えもあるんだ。」と思いました。
集団討議を通して,それぞれの作図方法を認めながら,二等辺三角形の作図のよりよい方法
を学び取ることができたと考える。また,学習感想の中では,
・今日はすごい発見をしました。二等辺三角形の書き方を知りました。Mさんの考えでよく分かりました。
今度のときは,この考え方を利用したいです。
・MさんやRさんのやり方が,とっても参考になってよかったなと思いました。わたしも今度このような問
題が出たら,MさんやRさんみたいにやってみたいと思いました。
・わたしは二等辺三角形のかき方を学びました。いろいろな書き方の意見が出て,その中でMさんの考えが
よいと思いました。
集団思考の場面では,自分の思考過程を表現することで,友達の多様な考えの交流と交流を
通して納得し合うことができていた。
(表1)事前・事後アンケート
今回,学習の事前・事後アンケート調査を
実施し,児童の算数科学習に対する意識の変
容をみることとした。
調査項目は ,「学習への意欲・態度①③⑤
⑥ 」「思考活動への意識⑨⑩⑫ 」「問題解決的
な学習⑦⑧⑪⑬ 」「教科としての算数学習②
④⑭⑮」である。事前・事後の調査の結果は,
表1と図1の通りである 。( 調査は四つの選択肢の「とてもそ
う思う」4点,「だいたいそう思う」3点,「あまりそう思わない」2点,「全くそう思
わない」1点とし,数値化して表した。)
「学習への意欲・態度」の項目では,『課題を見付けて勉強する』が0.03ポイント伸びているものの,
『算数が好き』は0.02ポイント,『図形学習が好き』は0.09ポイント,『進んで勉強する』は0.02ポイントと減
(図1)事前・事後アンケート
っている 。「思考活動への意識」
の項目 では ,『 考えをもつのが
好き』が0.28ポイント,『考えを比
べ,説明する勉強』は0.21ポイン
トは伸びているが ,『学び合う勉
強』は0.02ポイント減っている。
「問
題解決的な学習」の項目では,
『コンパスなどを使う勉強』が,
0.12ポイント ,『図形を切ったりす
る活動』は0.13ポイント ,『班やグ
ループ学習』は0.12ポイント減少
してい る。しかし ,『自分の考
- 12 -
えを発表する』は0.18ポイント増加している。「教科としての算数科学習」の項目では,『算数が得意』
は0.18ポイント増えているが ,『図形学習が得意』は0.04ポイントは減っている。また ,『算数が生活に役
立つ』は0.03ポイン『算数を生活に生かす』は0.12ポイントと,ともに伸びている。
このような調査結果から ,「学習への意欲や態度」では若干ではあるが低い傾向を示している。児
童の身近な生活から三角形の図形を見付けようとする学習内容や,学びの姿を教師だけでなく,児童
同士が互いに評価し,肯定的に認め合う学習を工夫することが必要ではないかと考える。
本研究授業においては,数学的な見方・考え方を育てることをねらいとしている。学習を通して児
童一人一人が考えをもったり,その考えを集団思考の場面で伝えることを意図的に設定している。
自分の考えをもちそれを発表したり,比べたりする学習については図2,3,4のとおりである。
<図2>
<図3>
<図4>
このような結果から,授業において自力・集団解決の段階で「図形が表す意味や関係を考える」
「考
えのわけを考える 」「自分の考えと友達の考えを比べて考える 」「どうやって求めたか順序立てて説
明しようと考える」など ,「読解のプロセス」と関連付けて学習過程に位置付けたことは,児童にと
って肯定的に受け止められていることがうかがえる。これは,数学的な見方・考え方をはぐくむこと
につながるのではないかと考える。
しかし,「教え合ったり,学び合ったりする活動」や「少ない人数での班学習やグループ学習」の
設問は,図5のように減少している。
授業の中で,班やグループによる話合いや調べる活動を位置付けてきた場面もあったが,全体的に
は「個から全体」という学習形態が多かった。学習のねらいに即して,班やグループ活動を取り入れ
<図5>
ることで,考えを深めたり,広げ
たりすることも可能であり,児童
相互のかかわり合いをより一層大
切にした学習展開を工夫する必要
がある。
また,肯定的な教師評価は多く
見られたが,児童が互いに認め合
ったりする相互評価の場面を取り
入れることが大切になる。
- 13 -
2,「読解のプロセス」と問題解決型の学習過程の関連について
本研究では算数科における「読解力」を五つにとらえた。「
( 研究の基本的な考え方」)毎時間の授
業中では目指す力として設定し,問題解決型の学習過程に関連付けて授業を構成してきた。また,
「学
習の活動として考えられる内容の基本形」を『読解のプロセス』として学習過程に組み入れて,自力
解決や集団解決の段階で「論理的思考な思考活動の場面」を位置付けることで,児童の考えの広がり
や深まりを求めてきた。そこで,研究の考察として授業の振り返りの学習感想から授業評価を試みた。
(表2)児童の学習感想にかかわる評価表案(例)
視点
レベル1
レベル2
レベル3
①学習に対する
楽しかった,分かっ
いくつかの楽しかった,
いくつかの楽しかった,分か
感想や気付きを
ことなどの簡単な感
分かったことなどの感想
ったことなどの感想や気付き
述べる
や気付きを述べる。
や気付きを述べる。
を理由をつけて述べる。
⑭友達の考えを
友達の説明を聞いて
友達の説明を聞いて,そ
友達の説明を聞いて,自分の
解釈する
る。
の内容が言える。
考えや他の考えと関連付けて
表2の例にある
ように,児童の学
習感想を15の視
点と三つのレベル
(質的・量的な水
準)で分類するこ
ととした。
言える。
単元を通して,児童がどのような考え
(図6)児童の学習感想の分類表
や学習に対する感想を授業の中で持っ
たのか,図6は学習感想の記述のあっ
た視点とその数を表した分類表である。
学習感想の多くの記述は ,『感想や気
付きを述べる』の項目であり ,「楽しか
った 」「面白かった」など,学習内容に
ついての記述ではなく,気持ちや心情
的な言葉が多い。また,「分かった」「で
きるようになった 。」などの記述は多いが,その具体的な内容に触れて書かれていることは少ない。
次に,多い記述として ,『きまりや方法・分かったことを見付ける』である。その時間の学習内容に
かかわるものと,その内容をいくつか記述している。また ,『友達の考えを解釈する』では,他者の
考えについてどう思ったか,考えのよさや具体的な内容の記述が見られる。さらに,『学習活動を振
り返る』では,コンパスを使っての活動や三角形づくりなど作業的・操作的な活動をあげている。
「考
え」にかかわる記述では,算数のよさや既習の学習との関連,学んだことを,次の学習と結び付けて
の内容が見られる。
以上のように,感想的な内容の記載が多い一方で,学習内容についてどこが分かり,どこでつまず
いたかを書いたり,自分の考えだけでなく,他者の考えやよさにふれることで,自分の考えを見直し,
自らに問い直し,学習内容の発展を考えている内容も見られる。学びの姿として児童が「多様に考え
る」「関係付けて考える」「発展的に考える。」「他者と比較して考える」など,『算数・数学で考える
力を育てる授業の工夫』が,さらに必要であると考える。
Ⅶ
研究のまとめと今後の課題
本研究では,PISA型「読解力」そのものを高める研究ではなく,算数科の指導改善を図るために,
「読解のプロセス」と問題解決型の学習過程の関連を図りながら,児童が数学的に事象を見たり,考
えたりする力を育てることを試みた。学習過程では,自分の考えをもち,それを表現するための学習
プリントの活用や互いに考えを交流させる場面を設定することで,個々の考えを深めたり,広げたり
- 14 -
する指導を展開した。1年次の研究の成果や課題を,以下のようにまとめた。
①「読解のプロセス」として ,「学習の活動として考えられる基本形」を明確にし ,「読解力」を
視点とした学習過程を位置付けることができた。
②問題把握の段階では,自力解決につながるように問題の理解や学習の見通しを持たせるための活
動を取り入れことができた。しかし,教科書を中心としたテキストを使用したが,「読解力」と
いう視点から身の回りの具体物や生活の事象など幅広いテキストの活用も考えたい。
③自力・集団解決の段階では,書く活動や算数的活動を通して自分の考えをもつことできていた。
集団思考の場面では,考えの発表はできても,考えを練り合わせるところまではいかないことも
あった 。「思考を深める話型モデル案」を作成し,話型を広げることで討議の活発化を図った。
児童の中には,発言のなかで意識的に生かそうとしている場面もみられた。さらに,課題や討議
の視点を明確にしたり,算数的表現力を日常実践の中で高める取組や繰り返しの指導も必要であ
ると考える。
④児童の思考活動を高めるために,班やグループ活動を積極的に取り入れるとともに,児童相互に
よさを認め合ったり,肯定的に評価できる手だてや場面を組み入れることを考えたい。
⑤まとめの段階で学習感想を取り入れることは,児童の学びの姿を読み取る上で有効であると考え
る。学習の記録だけでなく,児童が学びを振り返り,自己を高める手だてとして,また教師が指
導の改善に生かすように取り入れていきたい。
以上のように,研究の目指す方向性や課題をふまえ,児童の思考過程を重視した授業の構築を目指
すとともに,児童実態に応じた指導の在り方や評価について研究を積み上げ,2年次の研究へとつな
げていきたい。
参考文献
研究協力校
・「小学校学習指導要領解説算数編」
笛吹市立八代小学校 校長 稲木 幹夫
文部省(平成11年5月)
・「 読解力向上プログラム」及び「読解力向上に
研究協力員
関する指導資料」 文部科学省(平成17年12月)
市川 真木 笛吹市立八代小学校教諭
・「数学的コミュニケーション能力の育成」
山下 大雄 笛吹市立八代小学校教諭
金本良通
明治図書
前田 りさ 笛吹市立八代小学校教諭
・「算数力がつく教え方ガイドブック」
志水 廣
明治図書
・「学習感想を取り入れた新しい算数の学習」
矢部敏昭
明治図書
・「授業研究21」2006№602
角田重樹
明治図書
・「算数的表現力を育てる授業」
田中博史 東洋館出版社
平成19年度 山梨県総合教育センター
・「算数の力 数学的な考え方を乗り越えて」
長崎栄三 東洋館出版社
執 筆 者 主幹・研修主事 丸山 一彦
・「新編新しい算数」 教師用指導書
東京書籍
・広島県忠海西小学校研究「問題解決型授業モデル」
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