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北海道新聞野生生物基金ネーチャーフォーラム2013 「北海道の大自然
北海道新聞野生生物基金ネーチャーフォーラム2013 「北海道の大自然を未来へ」 14 2013年 道新ホール 月 10 日(月・祝) 14 しんだ。 スティック・アンサンブル」の演奏が行われ、観客は自然の音の響きを楽 語った。第2部は、 ケーナや馬頭琴などを中心とする「ネーチャー・アコー 枚 の 写 真 を 紹 介 し な が ら、 北 海 道 の 自 然 の 魅 力 や 写 真 へ の 思 い を 軽 妙 に 部は、札幌の自然写真家・山本純一さんの講演。道内で撮影した約100 北海道新聞野生生物基金ネーチャーフォーラム2013「北海道の大自 然を未来へ」が 月 日、道新ホールで開かれ約600人が訪れた。第1 10 ンドダスト、霧氷、小動物の足跡など、その 「マイナス 度以下の厳寒だからこそ見られ の厳しさを物語る吹雪の知床のシリーズでは 瞬間に出合えた自然の造形美や生き物の息づ ●第1部「自然の息吹〜北海道〜」 かいを感じられる写真が続いた。北海道の冬 山本純一さん(自然写真家) る風景がある。皆さんもぜひ体験を」と誘っ た。 ら感嘆の声が上がり、山本さんも「世界遺産 日を浴びた羊蹄山が映し出されると、会場か 前半では、大自然の情景をひとこま ごと、 冬から順に季節をたどって紹介。1枚目に朝 も交えて解説した。 ときはあまり印象が強くなくても、後に、やっ る。そこに素直にカメラを向けること。その とは、風景の方から『撮って!』と言ってく は 撮 れ な い こ と を 強 調 し た。 「心を打つ風景 でも次に訪れたときは決して同じ表情のもの め月や星の明かり、偶然入った車のヘッドラ 春、夏の花や新緑、秋の紅葉やこけむした 岩肌など、自然界の色合いの美しさを「パソ の富士山と引けを取らない、雄大な山」と称 ぱりいいなと思える写真になります」。 うと思います」と話し、自身の作品をスクリー 賛した。観光地などでの撮影は、人けのない コンでは作れない色」と表現。太陽光をはじ 場所や早朝に行くと思わぬ発見もあるとい 後半は動物編。親子や兄弟の微笑ましいも イトなどが功を奏することもあり、同じ場所 う。雪化粧をしたダケカンバの木やダイヤモ 写真を見ながら、写真への思いも語っていこ 20 ンに投影しながら、撮影時のエピソードなど 山 本 さ ん は、「 今 日 は、 北 海 道 の 美 し い 風 景や厳しい自然、そこで生き抜く動物たちの 自然写真家・山本純一が語る 北の大自然の魅力 野生動物の緊迫の瞬間を捉えた写真をスクリーンに投影し生態などを解説する山本さん 子育てにおいては、母親の強さや偉大さを 表す写真が多かった。巣に襲いかかるクマを えた作品が次々と映された。 など、野生動物の生態や緊迫の瞬間を鋭く捉 感、他の動物と獲物を奪い合う争奪戦の様子 のから、獲物を捕獲する際の鋭い目線、躍動 います」と、写真への思いを締めくくった。 ほしい。自然写真はそれを教えてくれると思 き物として、それらをすべてリアルに感じて れないものがある。同じ地球に生きている生 ければわからない、そこに居なければ感じら でなく、恐怖や心の痛みなど「そこに行かな 活力を伝えたいと願う山本さん。美しさだけ 不 安 定 に な る こ と が あ る た め、 り湿度が高く、チューニングが 嵯峨さんは「日本はモンゴルよ を 束 に し て 使 用 す る も の だ が、 族楽器。弦は本来、馬の尾の毛 馬頭琴は、さおの先端に馬頭 の彫刻がついた、モンゴルの民 ●第2部「大地の響き、いのちのうた」 は「メロディー楽器のようでも と話した。また、喉を詰めた発 てほしくないが」と前置きし、人間界や植物 まなざしや子どもの愛らしい姿に「駆除はし 渡辺亮さん(パーカッション) 嵯峨治彦さん(馬頭琴、喉歌) 岡田浩安さん(サンポーニャ、ケーナ) スパニッシュギター奏者の智 詠さん、ケーナ・歌の吉田ユウ 交えながら馬頭琴を演奏した。 ある」と言い、改めて、喉歌を 声で2つの音を同時に出す喉歌 ネーチャー・アコースティック・ アンサンブル 合成繊維の糸を使用しています」 撃退する母ウミウの写真では、後方で様子を うかがうだけの父ウミウを人間界の父親に例 え、 「 お 父 さ ん、 し っ か り!」 と、 会 場 の 男 性客に呼びかけて笑わせた。またクマやシカ に被害を与え、自然界のバランスを崩すので 智詠さん(ギター) の親子の情愛を感じる写真では、母の優しい あればやむを 得ないとした。 「カメラマンと 吉田ユウ子さん(歌、ケーナ) か、パーカッション奏者の渡辺 子さんもソロ演奏を披露したほ しては、 ただ捉えるだけ」と寂しげに語った。 に手を加えてはいけない」と、 静かに話した。 挙 げ、 「 自 然 界 に 無 駄 は な い。 私 た ち は そ れ と、生き抜くことが大前提であることなどを き物の死は別の生き物の生になり、食べるこ 攻撃をやめ、殺し合うまではしないこと。生 えて育てること。闘いでは、優劣がついたら で 「のどうたの会」 主宰の嵯峨治彦さん。ケー ユニットの中心となるのは、ケーナ、サン ポーニャ奏者の岡田浩安さんと、馬頭琴奏者 ション演奏も聴衆を楽しませた。 たほか、山本純一さんの写真とのコラボレー 器の紹介や自然との関わりについて語られ われた。演奏の合間には、それぞれが使う楽 スティック・アンサンブル」のステージが行 演奏家たちのユニット「ネーチャー・アコー 第2部では「大地の響き、いのちのうた」 と題して、自然素材の楽器で音楽活動をする に、客席から多くの歓声と拍手 ように音楽となっていく様子 がやがて互いの楽器に呼応する さんが撮影した動物写真を背景 特 に 観 客 が 沸 い た の は、 全 員 で 行 っ た 即 興 演 奏 の 場 面。 山 本 な音を響かせた。 音程を調節する奏法で、神秘的 弦をたたき、ひょうたんや石で ビリンバウを紹介。弓に張った 亮さんは、ブラジルの民族楽器 付半島の流氷の光景だ。沈みかけた月が残氷 ナやサンポーニャは、南米・チチカカ湖周辺 が送られた。この日は、アンコー 年以上演奏する岡田さんは、「原材料はアマ 器の素朴な音に魅了された一日 海道の大自然の写真と南米の楽 ケーナや馬頭琴などの民族楽器で聴衆を楽しませた5人の演奏 「人間は動物たちから多くを学ぶべき」と 言う。母は子に、たっぷりの愛情と試練を与 に薄く光を差し、上空には天の川や木星、金 に住むアイマラ族の民族楽器で、これらを に、そこからイメージされた音 星が輝く。流氷のきしむ音が聞こえる静寂さ ゾンの森に生育する竹の一種。成長するのに 約100枚の写真の最後に「好きな1枚」 として紹介したのは、2月のある夜明け、野 に、 「まるで宇宙にいるようでした」 。人間は 地球のほんの片隅にいる小さな存在であり、 何年もかかる上、近年は乱獲のため入手が困 曲 が 演 奏 さ れ、 北 人生は短いからこそ、次世代に伝えていくこ ルを含めた とが必要だと痛感した瞬間だった。 難となっています」と憂えた。 だった。 自然写真から、生きる勇気や希望、生への 20 11