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高校生によるESRを用いた化学的探究活動

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高校生によるESRを用いた化学的探究活動
高校生によるESRを用いた化学的探究活動
―紫外線防止ストッキングの紫外線防止効果―
仲島浩紀
(帝塚山中学校・高等学校)
梶原 篤
(奈良教育大学理科教育講座)
An exploration activity on chemistry by high school students
-Examinations of the sun protection of effect of nylon stocking by ESR-
奈良教育大学 教育実践開発研究センター研究紀要 第21号 抜刷
2012年 3 月
高校生によるESRを用いた化学的探究活動
―紫外線防止ストッキングの紫外線防止効果―
仲島浩紀
(帝塚山中学校・高等学校)
梶原 篤
(奈良教育大学理科教育講座)
An exploration activity on chemistry by high school students
-Examinations of the sun protection of effect of nylon stocking by ESR-
Hiroki NAKAJIMA
(Tezukayama Junior and Senior High School)
Atsushi KAJIWARA
(Nara University of Education)
要旨:帝塚山高等学校女子特進コースと奈良教育大学の間での高大連携事業の一環として、「化学実験」体験講座を
実施している。この講座では、理系の大学生活において重要な研究室の活動を知る機会を提供するとともに、基本的
な実験操作の確認から大型分析装置(電子スピン共鳴分光;(ESR)法)を用いた実験などを実施した。また、高校
生たちが専門の研究会で発表する機会を得て、食品・化粧品・繊維をテーマにした化学実験について3つのポスター
セッション発表を行った。本稿では、繊維のテーマで得られた実験結果とともに、生徒自身による「実験のテーマ設
定」から「発表」という一連の化学探求活動ついて報告する。
キーワード:高大連携 cooperation between high school and university、
化学的探究活動 exploration activity on chemistry、
化学教育 education of chemistry、ESRフォーラム研究会 study group of ESR forum
1.はじめに
高校 1 年生・2 年生(理系志望者)を対象に、受講
希望者を募集し、土曜・日曜日(合計 8 ~ 10 回程度)
を利用して奈良教育大学の研究室で講義や実験を行っ
2008 年度から帝塚山高等学校女子特進Ⅱコースと
奈良教育大学で高大連携事業の一環として、「化学実
ている。講座の内容は、理系研究室の紹介から始まり、
験」体験講座を実施している 1 − 3)。本講座では、理系
ガラス細工や基礎的な実験を行った後、ESR を用い
の大学生活において重要な研究室の状況を知る機会を
た実験を行っている 4)。簡単な ESR 測定の実験を通
高校の比較的早い段階から提供するとともに、基本的
じて、ESR について学習させた後、生徒たちに実験
な実験操作の確認をしながら学ぶことを目的として電
テーマを決めさせ、3 - 5 名程度のグループに分かれ
子スピン共鳴分光(ESR)法を用いた実験などを実施
実験を行うというのが一連の流れである。毎年 10 名
している。 前後の生徒が受講を希望し、実験を行っている。これ
帝塚山高等学校は、将来の進路目標に応じて男子英
まで実施した研究テーマを表1に示す。
数コース、女子英数コース、女子特進Ⅱコース、女子
特進Ⅰコースという4つのコース制をとっている。筆
者の1人が所属する女子特進Ⅱコースは、理系の学部
への進学を希望する生徒が比較的多く、将来研究職に
就きたいと考えている者も少なくない。しかしながら、
大半の生徒は研究者という職業を具体的にイメージで
きていないのが現状である。そこで、女子特進Ⅱコー
スでは各種の体験活動の提供にも力を入れており、そ
の一つとして実施しているのが、本講座である。
193
仲島 浩紀・梶原 篤
【実験】
表1 これまで実施した研究テーマ一覧
試 料 管 に 2.5 % の AIBN(2,2’ - Azobisisobutyro-
日焼け止めクリームに含まれる酸化チタンと紫外線吸収
2010 UV対策ストッキングの紫外線防止効果の検討
食材成長段階による常磁性ミネラルの変化とその追跡
nitrile,(H3C)2(CN)C ‐ N = N ‐ C(CN)(CH3)2)) ベ ン ゼ
ン溶液を入れ、超高圧水銀ランプを照射し ESR で測
定 し た。AIBN は、 紫 外 線( 長 波 長 紫 外 線;UVA、
紫外線照射時間による日焼けクリームの紫外線遮断の変化
2009 加工食品やサプリメントに含まれる常磁性ミネラルの検出
食材の各部位に含まれる常磁性ミネラルの検出
中波長紫外線;UVB)があたると容易にラジカル(遊
離基)が発生するので、ESR で可能となる(図1)。
数種の日焼け止めクリームの紫外線遮断効果の検討
2008
食材中に含まれる常磁性遷移金属(ミネラル)の検出
受講生にとってテーマ設定は、最初の難関である
が、日常生活で疑問に思っていることと関連させて、
食品や紫外線防止製品などをテーマとして設定し、実
験を行っている。この3年間は、得られた研究成果を
ESR フォーラムという ESR の専門研究会で生徒によ
るポスター発表を行っている。
図1 AIBN の分解の様子
本稿では、特に 2010 年度に実際に受講生が取り組
んだ「UV 対策ストッキングの紫外線防止効果の検討」
によって得られた研究成果を紹介すると同時に、ESR
直接、紫外線を試料管に当てた場合と、フィルター
フォーラムで発表までに至った受講生の感想や提言か
として紫外線防止をうたうストッキングと通常のス
ら生徒自身による「実験のテーマ設定」から「発表」
トッキングを設置したものとでラジカルの発生量を比
という一連の化学探求活動ついて考察したい。
較検討した。また、通常のストッキング(ナイロン製)
を切り取り ESR チューブに入れ、超高圧水銀ランプ
を照射し、ESR で測定した。継続的に紫外線を照射し、
2.高校生が行った研究内容
照射時間の経過とともにラジカル量がどのように増加
するのかを検証した(図2)。
-身近な衣料に用いられる繊維の
紫外線防止効果の検討-
帝塚山高等学校 女子特進コース
植村 奈央、佐伯 光希、山村 瑠納
【緒言】
紫外線が皮膚に当たると、フリーラジカルが発生
し、それが原因で日焼けやシミが発症すると考えられ
ている。この日焼けやシミを防止するために、数多く
図2 ストッキングの劣化の検証
の紫外線対策商品が販売されている。主には、日焼け
止めクリームが挙げられるが、その他にも紫外線防止
【結果・考察】
効果をうたう衣類や帽子なども存在する。しかし、そ
・ストッキングによる紫外線防止効果の検討
の衣類等の素材を調べてみると通常のものと変わらな
何 も フ ィ ル タ ー と し て 設 置 し な か っ た 場 合 は、
い繊維素材であるナイロンなどが使用されている。こ
AIBN が分解して発生するラジカル由来の ESR スペ
れまでの ESR(電子スピン共鳴分光)法による日焼
クトルが観測できた。各種ストッキングをフィルター
け止めクリームの紫外線防止効果の知見 5)を踏まえ、
として設置した場合も、同様のラジカル由来の ESR
ESR 法と紫外線照度計を用いて加工されたストッキ
スペクトルを観測したものの、そのシグナル強度は低
ングと通常のストッキングの紫外線防止効果を検討し
下していた。そこで、各スペクトルからラジカル量の
た。また、紫外線による繊維の劣化の検証も試みた。
相対値を見積もった。何もフィルターを設置しなかっ
たもののラジカル量を 100 % とすると、通常のストッ
キングは 70 % 程度、紫外線防止効果をうたうストッ
キングは 50 % 程度となった(図3)。
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高校生によるESRを用いた化学的探究活動
₃.一連の化学探究活動を通じて
・生徒自身で調べ、まとめる
2010 年度受講した生徒の感想や提言をまとめた文
章を表2に示した。3名ともがまず「テーマ設定」が
大きな関門であったことを述べている。これは、通常
の大学生による研究であっても同様のことであると考
えられる。日常生活において人々が気が付いていない
化学の疑問点を探しだし、できるだけ多くの人々が関
心を示すテーマを探すように受講生には指導を行う
図3 図1の実験で発生したラジカルの相対値
が、なかなか簡単にテーマが見つかるわけではない。
ここで、受講生徒の感想(1)にも「先生に全てを頼
この結果は、同じナイロン素材であるストッキング
るのは違うと思った。」とあるように担当教員がすべ
であっても紫外線防止効果に有意な差があることを示
て指導してしまうと生徒たちによる「テーマ設定」と
唆していると考えられる。
はならない。このような高大連携事業であると、高等
学校教員と大学教員が密に連携を取り合い、高校生の
・ストッキングの紫外線による劣化の検証
実情に沿いながらも探究可能な実験内容について生徒
通常のストッキングに紫外線を照射し始める前で
たちと議論していくことが最善の方法であるように思
は、ラジカル種を検出することができなかった。しか
われる。
し、紫外線を照射すると、有機ラジカル由来と考えら
また、テーマを設定後それぞれのグループで ESR
れるシグナルが検出でき、紫外線照射時間が経過する
を用いて測定を行う。受講生たちは、ESR の測定の
につれてそのシグナルの強度が増加していることが分
ために必要な試料の調整と測定の補助を行うが、実験
かった。シグナルの増加から考えられる劣化のモデル
回数を重ねた者には指導教員立ち合いのもと測定の
をスペクトルの下に示した。紫外線が照射されること
初期条件の設定から ESR の測定まで体験させている。
によってナイロン分子が切断され、ラジカルが発生し
慣れない操作で戸惑うことも多いが、最終的には一つ
ているというモデルである(図4)。もし、このよう
一つの操作の意味を理解しようと積極的に取り組む者
な劣化が実際に起きているとすると紫外線をより多く
も現れる。表2にあるように大学が保有する大型分析
吸収する紫外線防止効果をうたうストッキングと比較
装置を用いて自分達の研究を行うことは、受講生生徒
検討することでより詳細な検討ができるものと考えて
にとっても非常に印象深く残っているようである。一
いる。
回の体験でなく、継続的に自分たちの実験のためにそ
今回の実験では、同じナイロン素材でありながら、
の装置に触れる機会があることが受講生徒のモチベー
商品がうたうように紫外線防止効果に違いを図3の比
ションアップにもなっているようである。もちろん、
較で見出すことができた。また、紫外線による劣化の
ESR という大型装置の原理や得られるスペクトルの
可能性を示唆する結果も図4のように得ることができ
解釈などは、高度な化学知識が求められる。しかし、
た。高等学校の教科書にも記載され、実際にその合成
ESR スペクトルの分裂の数やシグナル強度の変化な
実験まで行うナイロンが身近な日常生活においても多
どは、十分に高校生でも認識できるものである。
岐にわたり利用されていることや、同じ化学素材で
得られた実験成果をまとめるという作業も受講生徒
あっても様々な機能が付加されていることに強い関心
にとっても大きな関門のようである。本講座では、最
を持つことができた。
終的に研究会での発表を視野に入れているため得られ
た成果は一枚のポスターにまとめることとなる。まだ
図4 ストッキングの紫外線照射(図2)によるESRスペクトルの変化と照射時間経過によるラジカル相対量の変化
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仲島 浩紀・梶原 篤
表2 「化学実験」体験講座に参加した受講生徒の感想
受講生徒の感想(1)
大学に行けば当たり前であろう、自ら考え、自ら行う研究が高校生でもできるという魅力に惹かれて、この実験講座に参加した。
研究とは実際に何をするのか、大学の実験室に入らせてもらえる、大学生気分を少なからず味わえるかもしれないということも
興味をそそられた。
研究をするにあたっての初めの関門は、研究テーマを考えること。学校の美術の時間、なかなかアイデアが思いつかず、自分
には創造力がないと思っていたが、もちろんここでも苦戦した。知らないこと、調べてみたいことは沢山あるが、結果これを調
べてどうなるのか、ただ闇雲に研究するだけではいけないことを知った。初めてなのだからと始末して、そのこと1つについて
懸命に考えた。日常生活の中にもヒントになるものがないか探した。そして、先生の助言のおかげもあり、この関門を乗り越え
ることができた。いざ実験といっても、どのように実験操作を順序立てていくなど分かるはずもない。パソコンで情報集めをして、
自分が今何をしているのか、疑問を解決するにあたって次に何をするのか。まだ実験もしてないのに、思考を働かせなければな
らない。先生のお話を聴き、自分の知識不足を痛感したが、先生に全てを頼るのは違うと思った。
学会発表では、仲間とお互いに助け合い乗り越えられたと思う。仲間がいるからこそ、堂々と受け答えをすることができた。
内容について深く追究されなくて良いのか悪いのか複雑だったが、内容もわからないくらい難しい話をされたときは、笑うしか
なかった。
高校生で実験講座、学会発表を体験するメリットは、詳しく知らない研究職というものに触れることができる、これから重要
になってくるであろうコミュニケーション力やポスターの見せ方を学べること。 とりあえず興味に思ったことを行動に移すこと
が大事だと思う。高校生活は短い、積極的に何事にも取り組むことが大事だと気づいた。やる気さえあれば、乗り越えられる。
少しでも興味をもてたら、ぜひ参加してほしい。
受講生徒の感想(2)
私がこの実験に参加しようと思ったのは、まず一番は先生の話を聞いて大変興味を持ったことです。そして大学にしかない
ESRという機械を使って実験することができ、学会で発表するという普通の高校生ではできないような貴重な体験に魅力を感じ
たからです。やりはじめて、実際にテーマを決めるとなると非常に時間がかかりました。色々疑問はでてくるけれど「それで何
を調べたいの?」と先生に聞かれると、途端に言葉に詰まってしまったり、決まってからでも実験結果が思うように出なかった
りして色々と大変でした。ようやくテーマを決めて実験を始めたのですが、最初は微妙な結果でしたので、いきなりつまずきま
した。どうすればいいのか?というのを先生や大学の先生にアドバイスをもらい、色々実験を続けていきました。また、その実
験をまとめて発表に使うためのポスターを作成するのも時間がかかりました。パソコンを使ってするのが初めてだったので、見
る人に分かりやすくグラフを書くことや、図を入れたりするのにも非常に時間がかかりました。
当日の学会発表はとても緊張しました。高校生は帝塚山高校生だけだったので、色々な大学の方に混じって大丈夫なのかと不
安に押し潰されそうになりました。私は人に理解してもらえるように説明することがどれだけ難しいことかを改めて実感しまし
た。それでもできる限りの努力をしました。高校生の時期にこういう体験ができて本当に良かったと思います。ESRという機械
を使えたこと、大学生と一緒の舞台で発表をできた体験、パソコンを使ってポスターを作成したことなど、普通ならできない貴
重な体験ができたことが将来に役に立つと思います。ですから後輩の皆さんで、少しでも来年やってみたいと思ったら是非参加
してみて下さい。やりたいけれど部活が忙しいと思う人がいるかも知れませんが、実際私も部活が大会前で忙しい時期だったけ
れど、同じ班の友達と協力し、無事にやり遂げることができたので大丈夫です。とても遣り甲斐があって自分の財産になると思
います。是非、前向きに考えて参加してみて下さい!
受講生徒の感想(3)
初めになぜ私が今回の実験講座に参加したかと言うと、まず、先生の話を聞いて興味があったのと大学の研究室を見てみたか
ったのと珍しい機械であるESRで研究するので貴重な体験ができると思ったからです。大学にはこの機械以外にも学校にはない
ような機械や薬品が並んでいて見ていて楽しかったです。研究テーマは私たちの班はなかなか決まりませんでした。何個か選択
肢を出して実験しました。結果が思うように出なくて何回もボツになりました。劇的に反応が出るものが限られているので難し
かったです。何回か実験をした後ようやくストッキングに決まりました。
実験で一番大変だったのは紫外線の量を測る時でした。次々と数値が変化してしまうので書き留めるのが大変でした。また、
太陽光で測った時は測った日が曇りだったので、なかなか太陽がでてこなくて大変でした。そのため、測る時になるべく数値が
まばらにならないように、光の当たる角度、距離などを決めて固定して測りました。
学会発表では緊張しましたが、たくさんの人達が聴いてくださって、関係のある話を聴かせてもらってすごくためになりました。
私がこの実験講座や学会発表を体験して良かったと思う事は私ははじめて、パソコンで発表用の表を作ったので、それが一つ良
かったと思います。パソコンは大学生になっても使うのでやり方を知っておいて損はないなと思います。あとは、大学の研究室
を生で見れて新鮮でした。なによりこの研究自体がすごく貴重なので、とても価値のあるものだと思います。デメリットは時間
がかかってなかなか進めなかった事ぐらいです。ラストの一週間は放課後も使って大変だったのを覚えています。最後に、この
実験は大変ですが達成感がとにかくハンパないのでぜひ、後輩にはやってもらって、この研究をもっと広げていって欲しいです。
196
高校生によるESRを用いた化学的探究活動
まだパソコン操作に慣れない者にとっては、この作業
促している。これは、これまでの取組みが一学年を対
も効率的に進めることは難しい。ここでも、高等学校
象としたものであり、「化学実験」体験講座を介した
教員と大学教員が、プレゼンテーションの方法につい
学年を超えたコミュニティーの形成を行ってこなかっ
てそれぞれの立場で共同して指導にあたることが重要
たことを意味している。講座で身につけたノウハウを
であるように思われる。
下級生に伝達することができる環境を設定することが
・生徒自身で発表する
できれば、さらに継続的な研究を行うことができる。
2009 年~ 2011 年の三年間、ESR フォーラム研究会
次年度以降では、この講座の取り組みを軸とした、
(主催:同研究会、共催:日本化学会ほか)で高校生
学年を超えたコミュニティーの形成し、生徒間で科学
が発表する機会を頂いている。研究会には、高校生唯
的好奇心や研究者的プレゼンテーション能力の継承を
一の発表者ということもあり、毎年多多くの方に来て
目指すことが重要な課題であると考えている。
頂きプレゼンテーションを行うことができている(図
謝辞
5)。学会発表という大きな舞台は、受講生にとって、
非常に緊張する機会であることが伺えるが、これを大
きなチャンスと捉え、積極的にプレゼンテーションを
本講座は、科学技術振興機構(JST)のサイエンス・
行う者が数多くみられる。様々な専門の先生方が集ま
パートナーシップ・プロジェクト(SPP)事業と帝塚
る研究会で議論させて頂くことで、1つのテーマの研
山高等学校の支援を受けて実施しました。2009 年~
究においてもその考察には幅広い視野と知識が必要で
2011 年の ESR フォーラム研究会事務局の坂井亙先生
あることを高校生たちは痛感する。指導者の立場とし
と田嶋邦彦先生(京都工芸繊維大学)、右田たい子先
ても、一連の研究体験を通じて、総合的かつ多角的な
生(山口大学)、山中千博先生と荒田敏昭先生(大阪
学力と視点を高校生段階から養成していくことが重要
大学)には高校生の ESR フォーラム研究会への参加
であると考えている。
を快くご承諾いただきました。また、研究会では中島
暉先生(宮崎大学)をはじめ多くの先生方に高校生の
ポスター発表に対し、様々なアドバイスや議論を頂き
ました。
荒田聡恵さん(奈良女子大学)と都吉雅さん(奈良
教育大学)には、講座の準備や高校生への指導など全
般で協力を得ました。また、帝塚山高等学校の先生方
にも多くのご理解とご協力を得ました。ここに記して
感謝致します。
受講生一覧
2010 年度の「化学実験」体験講座に参加した生徒
図5 第 15 回 ESR フォーラム研究会での発表の様子
は以下の通り。
(* は第 15 回 ESR フォーラム研究会での発表者)
₆.まとめ
荒木 香澄 * 植村 奈央 * 奥田 千晶 *
帝塚山高等学校女子特進Ⅱコースと奈良教育大学が
興山 葵 * 佐伯 光希 * 下谷 良奈
行った高大連携事業「化学実験」体験講座についての
新宅 遥 * 冨井 祐里 * 文字 菜月
報告を行った。生徒への化学に対する興味関心の喚起
安木 春香 *
のため、2008 年から独自に奈良教育大学教育学部と
領木 志帆 *
山村 瑠納 * 山本まるみ * 連携して「化学実験」体験講座を実施した。2009 年
参考文献
度からは、科学技術振興機構(JST)の SPP 事業と
して採択され、受講生への化学教育だけでなくキャリ
ア教育(大学教員などの研究職への理解と認識の深化)
1)仲島浩紀,梶原 篤 高大連携「化学実験」体験
も視野にいれ、より発展的な事業として継続してきた。
講座の試みとその成果-高校生が調べた身近な化
表2からも受講生にとって一定の意義があったと読み
学物質- , 奈良教育大学教育実践総合センター研
取ることができる。加えて、今後の課題も表2から見
究紀要 , 2010, 19, 201 - 206
えてくる。感想を述べた3名すべてが、来年度以降も
2)仲島浩紀 ESR を用いた高大連携「化学実験」
同様の講座が開講され、下級生たちにそれへの参加を
体験講座の試み , 電子スピンサイエンス , 2010,
197
仲島 浩紀・梶原 篤
15, 127 - 128
3)仲島浩紀 ESR を用いた高校生への化学教育実
践活動の試み , 電子スピンサイエンス , 2011, 17,
148 - 149
4)梶原 篤 , 仲島浩紀 電子スピン共鳴分光(ESR)
法による身近な自然に隠れた常磁性種の検出とそ
の教材化の試み , 化学と教育 , 2007, 55, 620 ‐ 623
5)仲島浩紀 『日焼け止めクリーム』は紫外線をど
の程度カットするの?―女子高生の素朴な疑問に
答える高大連携「化学実験」体験講座の試み―,
化学と教育 , 2011,(印刷中)
198
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