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Antigen Microarrays for the Study of

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Antigen Microarrays for the Study of
Review
Antigen Microarrays for the Study of Autoimmune Diseases
Ada Yeste1 and Francisco J. Quintana1,*
Author Affiliations
1
Center for Neurologic Diseases, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School, Boston, MA
* Address correspondence to this author at: Center for Neurologic Diseases, Harvard Medical School, 77
Avenue Louis Pasteur, HIM 714, Boston, MA 02115. Fax 617-525-5305; e-mail
[email protected].
Clinical Chemistry 2013;59:1036-1044
自己免疫疾患の研究に用いる抗原マイクロアレイについて
概要
背景:標的抗原へのアフィニティおよび特異性が異なる T 細胞および B 細胞のヘテロな集団の活性
化が、免疫応答に関与している。免疫をコントロールする分子レベルのメカニズムを研究するため
にいくつかの技術が開発されているが、免疫反応の特異性をモニターするためには大量処理方によ
る測定法(high-throughput assay)が必要と考えられている。
内容:抗原マイクロアレイは、免疫反応を研究する新しいツールである。 我々は、抗原マイクロア
レイの利点と限界を調査し、自己免疫疾患に関する研究での有用性を評価した。抗原アレイ(配列)
は、自己免疫疾患の研究に用いられてきた。例えば、病気の診断、病因のメカニズムの解明、個々
の患者の自己免疫応答に対する抗原特異的治療法に対する病気の進行、および治療効果をモニター
するためである。 この総説で我々は、Ⅰ型糖尿病、全身性エリテマトーデス、関節リウマチおよび
多発性硬化症の 4 つの自己免疫疾患とそれらの動物モデルにおいて、抗原マイクロアレイの有用性
について考察した。
結論:抗原マイクロアレイは、自己免疫疾患、さらに腫瘍やアレルギーのような他の病態の免疫応
答を研究するための新しいツールと成り得る。 現在の技術的限界が克服されれば、抗原マイクロア
レイを用いることにより、革新的な自己免疫疾患の研究ならびに治療の管理が可能となる。
免疫反応は、一致協力して作用する遺伝子とタンパク質の複雑なネットワークによって制御され
ている。いくつかの技術は、これらの遺伝子とタンパク質の相互作用を解析するために開発されて
おり、免疫応答解明への適応性をめざし、さらな成る挑戦をしている。その結果として、標的抗原
への種々のアフィニティおよび特異性を持つ T 細胞および B 細胞の不均一な集団の活性化が、免疫
反応に関与していることが解明されてきた。 さらに免疫反応は感染症あるいは自己免疫疾患では、
一つだけでなく、いくつかの抗原を標的としていることが解ってきた。したがって免疫応答をモニ
ターするには、大量処理する分析方法を開発する必要がある。
1
T 細胞ならびに B 細胞の機能を検討するために、多数の方法が開発されている。T 細胞の特性を解
析することを目指した分析として、T 細胞上の少ない頻度の特有の抗原を捉える方法がある。この
方法には、通常比較的多くの細胞が必要である。T 細胞反応の測定は、 特定のペプチドを付加した
分子(1, 2)からなるリコンビナント組織適合複合体(MHC)の四量体を用いて、蛍光活性化細胞を検出
するセル・ソーターの開発により、非常に改善された。 これらの四量体は容易に生成されず、特定
の MHC 対立遺伝子による特定のペプチドに反応する T 細胞を検知できる。MHC ペプチド四量体は
ペプチドに特有の T 細胞の研究にとって非常に貴重なツールとなるが、しかしながらそれらペプチ
ド特異反応を用いても、種々の MHC 対立遺伝子を備えた人母集団において、多くの抗原と反応す
る T 細胞反応の研究には限界がある。
B 細胞は、血清、血漿および他の臨床的に応用できる体液、例えば滑液(SF)および脳脊髄液(CSF)を
用いて検出できる、大量の抗体を産生する(3, 4)。したがって体内を循環する抗体により、少ない頻
度の抗原特異的 B 細胞の脈絡でさえ、B 細胞応答に関する特異的分析ができる。さらに保持された
抗体産生には、T ヘルパー細胞の支援が必要である。また確かに抗体反応は、T 細胞免疫研究のサ
ロゲートとして、B 細胞と T 細胞は標的特異性を共有すると分かってきた(5, 6)。したがって、抗体
反応の分析は、健常人と患者で T 細胞反応研究に関連する限界のうち、いくつかを克服する機会を
得ることができる。さらに、我々は臨床研究のために十分に吟味分類した患者のコホートから得ら
れた、解析済みの抗体レパートリーの試料(血清、血漿、CSF および SF)を利用することができる。
それらの標的抗原を捉える抗体の相互作用は、抗体反応の測定方法の開発を促進し、MHC のような
追加の分子を必要としない。これらの技術として、ELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降、フロ
ーに基づいた分析(flow-based assay)、蛍光を用いた免疫測定および RIA である。しかしながら、
これらの技術は比較的サンプルを大量に必要とし、大量処理の分析結果と互換性をもたない。抗体
反応に関する初期の大量処理方法の試みは、抗原として細胞と組織の溶解物を用いるウェスタンブ
ロット分析に基づいている(7, 8)。しかしながら、ウェスタンブロット分析の主な課題は、陽性反応
として見つかったとしても、標的抗原が特定できないことである。
抗原マイクロアレイ
96 穴のマイクロアレイ・フォーマットを使用する大量処理の ELISA の構築は、抗体反応の分析のた
めの大量処理方法の開発への第一歩であった(9)。非常に高密度で化学修飾されたスライド・ガラス
上(10)に、タンパク質を化学的に結合する技術を用いて小型化した分析法は、抗原マイクロアレイ
の開発に結びついた(11, 12)。それらのアレイには、最初タンパク質とペプチドの抗原が含まれてい
たが、後で脂質のような他の抗原を組込むことが可能となった(13, 14)。
少量のサンプルを使用して、何百もの抗原抗体の相互作用測定できる能力に加えて、抗原マイクロ
アレイは、抗原に特異的な抗体濃度と線形相関する信号を生成して、従来の ELISA よる分析よりも、
数ケタ高感度に測定できる。(11, 14)。 しかしながら、抗体反応の分析のための抗原マイクロアレ
イの使用に関係するいくつかの課題は、他の固相分析のように、抗原の 3-次元の構造が、スライド
表面へのそれらの吸着結合、共有結合、あるいはマイクロアレイの乾燥によって影響される場合が
ある。抗原構造のこれらの変化は、臨床的に目的となる抗原の結合エピトープを破壊することとな
り、抗体が結合できないエピトープをさらに露出することとなる。しかしながら、少なくとも結合
エピトープに対する抗体量は、抗原マイクロアレイで測定されるシグナルと線形関係にあり、この
技術が抗体量を検知することができること示している。
2
更に明白な課題は、スクリーニングの際、抗原マイクロアレイが構造的に予期しない標的抗原に対
する抗体を検出しないで、使用される抗原に反応する抗体だけを検出するということである。しか
しながら、3 つの異なるアプローチがこれらの限界を克服するために使用されている。
試験管内全プロテオーム解析
Felgner らは、無細胞系を使用して、平行して何百ものオープン・リーディング・フレームを用いる
ことのできる PCR に基づいたアプローチを開発した(15)。この新しいアプローチは、病原体プロテ
オームを含んでいるタンパク質マイクロアレイを構築するために使用された。それは後に感染した
マウスおよび人間からの血清サンプル中の抗体反応を分析するためにも使用された。これらの研究
は、診断に価値のある免疫優勢の抗原の識別に結びついた(16, 17)。そしてさらに、予防接種による
感染防御免疫に関連した抗体を同定できる(18)。
合成プロテオーム
Larman らは、ファージ表面上に存在するヒトゲノム中のオープン・リーディング・フレームをすべ
てカバーする、36 個のアミノ酸からなるペプチドをコードする合成ヌクレオチドを用いた phage
immunoprecipitation sequencinng(ファージ免疫沈降シークエンス)について最近報告している(19)。
この技術により、ファージにより表現された候補自己抗原が、患者血清サンプルの抗体により免疫
沈降し、大量処理 DNA シーケエンスによって同定される(19)。現在の形式では、クリニックで容易
にこのアプローチは実施できないが、今後、臨床応用を目指した抗原マイクロアレイが抗原同定の
ために開発が進み、疾病と関連する抗原を同定することができるかもしれない。
PEPTOID
Peptoid マイクロアレイは、バイオマーカー発見用の抗原マイクロアレイの構築に、抗原選択の課題
を克服するためのアプローチを提供している。Reddy らは、抗体との相互作用に利用可能な分子形
状のコレクションを作成するために、4068 peptoids のマイクロアレイを使用した(20)。このプラット
フォームを使用して著者は、バイオマーカーとして antibody-peptoid 相互作用を識別した。このアプ
ローチでは、バイオマーカーとしての抗体によって生体内で捕捉される抗原との同一性の確認はで
きないが、この方法は抗体レパートリーの全体を網羅するために広いエピトープ候補を提供してい
る。
最後に、抗原マイクロアレイの臨床の使用のためのもっとも挑戦的な課題は、異なる実験で、およ
び異なる場所で得られた結果の比較が難しいので、その実験で得られた一度の結果の解析であるこ
とである。cDNA マイクロアレイ研究で扱われた方法(21, 22)においても一度の結果の解析結果を用
いるているが、この課題は将来恐らく克服されるでしょう。
自己免疫疾患における抗原マイクロアレイの応用
cDNA マイクロアレイ(23) は、材料を保存し、平行して何百もの遺伝子の大量の性質の解析を可能
にし、コストを下げて、転写反応の分析を革新した。 同様に、抗原マイクロアレイを備えた抗体レ
パートリーの分析は、自己免疫疾患、アレルギー (28, 29)、腫瘍( 30, 31)、予防接種 (32)また伝染病
(33)における免疫反応の大規模解析に結びついた(24-27)。これらの研究は臨床に価値のある抗体を
3
同定した(図 1)。 また、疾病病因のさらに新しいメカニズムを解析した。 本報では、自己免疫疾
患に関する抗原マイクロアレイの応用に注目する。
図 1 自己免疫疾患の研究に用いる抗原マイクロアレイ
集められた自己抗原(タンパク質、ペプチドあるいは脂質)は、化学的修飾されたスライド・ガラス
上に存在し、患者試料(血清、血漿、CSF、SF)とハイブリダイゼーションした。抗原抗体反応は蛍
光標識抗体(Ab)で検知される。蛍光性のシグナルを生物情報学的分析し、疾病診断、疾病のステー
ジングおよび治療モニタリングに役立つ自己抗体を同定する。
自己免疫疾患は、慢性炎症、組織損傷および不全に関係する自己抗原に対する免疫系の活動の調節
異常が特徴である(34)。免疫反応に関する研究は、診断、自己免疫疾患患者の予後、治療およびモ
ニタリングにとって重要な意味合いを持つ。さらにそれは、治療の介在の新しい目標の識別に結び
つく場合がある。次のセクションでは、我々は、抗原マイクロアレイがⅠ型糖尿病(T1D)、全身性エ
リテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)および多発性硬化症(MS)のような 4 つの自己免疫疾患の中
で、免疫反応の研究にどのように使用されたか論述する ( 表 1)。
.
4
表 1 自己免疫疾患の研究に用いられた抗原マイクロアレイ
Ⅰ型糖尿病(TID)
T1D は、自己反応性 T 細胞による膵臓中のインシュリンを生産するβ細胞の選択的な破壊に起因し
ている(35)。T1D は T 細胞が関係した疾病と考えられるが、膵島で反応する抗体は、T1D を持った
患者から検知することができる。しかしこれらの抗体の病原性の役割は、いまだ未知である。疾病
病因におけるそれらの役割にかかわらず、膵臓で反応する抗体は高血糖の発症が先行し、T1D のた
めの有用なバイオマーカーになると考えられる(36, 37)。注意事項として、膵臓のランゲルハンス島
特有な抗体を予測する試験は、使用する抗原量を増加させることにより特有な抗体を捉えることが
できます。それで、インシュリン、グルタミン酸脱炭酸酵素およびタンパク質チロシンホスファタ
ーゼに対する血清中の自己抗体は、T1D を進展させ、リスクの解析や TID の臨床試験のデザインに
用いられている(36, 37)。しかしながら T1D の進展のリスクは、任意の個々の抗体の存在ではなく、
自己抗体の数に基づいて計算されることに注意を要する。自己抗体レパートリーのこれらの研究か
ら、T1D の将来の進展についての有用な情報を提供することができる可能性を示唆している。
T1D の自己抗体レパートリーは、96 穴プレートに乗せた 87 の自己抗原のアレイを用いて、最初に
研究された。これらの研究で、MS の患者群、健常者のコントロール群、Behcet 病およびⅡ型糖尿
5
病と区別して、T1D を持った患者において膵島のランゲルハンス島のβ-細胞抗原に対する特定の抗
体の存在を明らかになった (27, 38, 39)。これらの調査結果は、自己反応する抗体のレパートリーが
異なる炎症性の疾病に関連する特定の免疫反応を反映することを示唆している。しかしながら、自
己抗体が、各疾病の直接病因に関係しないが、組織破壊に続く自己抗原のリリースの原因となって
いる。
T1D の自己抗体レパートリーの predictive value(予測値)は、糖尿病が加速され、シクロフォスフ
ァミドを投与した糖尿病のハツカネズミを研究に用いて、抗原マイクロアレイを用いて研究された
(12)。4 週齢で処理する前と処理後のハツカネズミから血清サンプルを採取し、IgG 抗体の反応性が
266 の抗原を含んでいるマイクロアレイで分析された。糖尿病誘導されやすいハツカネズミや、シ
クロフォスファミドの投与の前のハツカネズミから 27 の抗原に対する反応が見つかった。総合すれ
ばこれらの研究は、T1D の診断や T1D の将来の進展を予測する分析の両方に抗原マイクロアレイを
使用することができることを実証した。
全身性エリテマトーデス
SLE は、皮膚、腎臓および脳を含むいくつかの器官に影響し、糸球体腎炎が特徴の慢性的な異種混
合の自己免疫疾患であり、二重らせん構造の DNA、ヒストンおよびαエラスチンのような核や細胞
膜を構成するコンポーネントに対して作用する抗体の存在として認められている(40)。100 を超える
自己抗体が SLE 患者に存在することが想定された(41)。比較的少数の自己抗体はクリニックでルー
チン検査されているが、病気の診断、病期分類、また SLE を持った患者の予後に関する適切で利用
可能な情報が捕らえるとは限らない。さらに、養子免疫伝達実験は、ヒストンまたはヌクレオソー
ムに対する抗体が病因でなく、二重らせん構造の DNA に対する抗体および糸球体に対する抗体が
病因であることを明らかになった。したがって、異種性の SLE 患者の抗体反応を観察することで、
重要な臨床的意義を持っている(42-44)。
SLE 患者の抗体レパートリーの完全な特性を提供するために、Mohan らは SLE 関連の抗原を含む抗
原マイクロアレイを開発した(25)。これらの抗原マイクロアレイを使用して Mohan らは、抗体反応
のクラスタが糸球体腎炎および全面的な疾病活動に関連することを見つけた(25, 45)。追跡調査では、
彼らは、SLE 患者や不完全な LE 症候群に苦しむ患者の一親等の人から抗体プロファイルを同定し、
診断として少なくとも1~4つの SLE 診断基準を満たすことや、SLE 患者の一等親血縁者を定義し
た。これらの研究は、抗原マイクロアレイが患者の早期診断および SLE を進展させる危険因子の同
定するツールの提供を示唆した(46)。これらの研究は、転写のプロファイリングと組み合わせて、
より積極的な治療の介在に対する候補となる疾病進行のための、最も高い危険因子を持っている
SLE 患者を識別することを示唆している(47)。したがって抗原マイクロアレイは、SLE 患者の異種
混合の抗体反応および病気の進行に関連する抗体反応を分析するためのプラットフォームを提供し
ている。
関節リウマチ
RA は、関節破壊、苦痛および機能不能に結びついて、滑膜性連結および骨浸食の慢性炎症が特徴
である(48)。RA 患者は、異なる臨床経過および治療に対する応答を示し、その病気が異なる分子の
メカニズムによって駆り立てられる患者群の存在を示唆している。現在行われている RA 診断の検
査は、単一のバイオマーカーを測定して、RA には特異的でなく、患者の一部を診断しているにす
ぎないことから、必ずしも満足できるものではない(49, 50)。加えて言うなら、これらのバイオマー
カーは疾病の進展および治療に対する応答の予測に役立つ(51, 52)。Robinson らは、RA 診断や臨床
6
的に関連するサブタイプの分子層化のためのバイオマーカーを同定するために、関節滑液に分泌さ
れる抗原を含んでいる抗原マイクロアレイを開発した(53)。自己抗体反応を膠着する脊椎炎、乾癬
性関節炎およびコントロールとしての健常人と比較して、6 か月未満の罹患期間の RA 患者 120 人の
患者血清中から RA に特異的な抗体パターンを発見した。さらに抗体の反応は、RA 患者を異なるサ
ブグループへ階層化を可能にした(53)。そのグループの一つで、peptidylarginine(アルギニン残基)
が peptidylcitrulline(シトルリン残基)に置換された citrullinated(シトルリン化)されたペプチドに
対する抗体が特徴であるグループの患者が、増悪な RA 進展につながる可能性があることを発見し
た。反対に抗体が在来の抗原を標的とした RA 患者では、その病気の進展はそれほど厳しくない事
が示された(54)。これらの結果は、その循環するシトルリン化されたフィブリノーゲンを含む免疫
複合体の存在を示す研究 (55)や、シトルリン化された抗原を標的する自己抗体に関係している前炎
症性のサイトカインの血中濃度を増加させることを示した研究 (26)によって拡大した。確かに、循
環サイトカイニン濃度の定量を組み合わせた抗原マイクロアレイを用いて抗体レパートリーを分析
すると、抗腫瘍壊死要因治療に対する応答を予測するバイオマーカーの可能性が示されている (56)。
したがって、抗原マイクロアレイは、疾病予後期間および RA 治療に対する応答の患者の層別化用
(グループ分け)のツールになり得る。
さらに、シトルリン化された抗原の免疫と RA の増悪化との間に関する関連性が、疾病病因に対し
て新しい見解を示した。RA のモデル実験で行なわれた研究で、シトルリン化された抗原の認識部
位が、その病気の慢性期を特徴づけることが明らかとなった(57)。さらに、シトルリン化されたフ
ィブリノーゲンで免除した後、RA に関連する MHC クラス II の DRB1*0401 分子を組みこんだヒト
型の遺伝子組み換えのハツカネズミは、RA を進展させた(58)。RA のこの新しいモデル実験型は、
シトルリン化された抗原で免疫し、さらにシトルリン化された抗原を追加することで、T および B
細胞が応答することが特徴である(58)。したがって、これらのデータは、RA 病因中のシトルリン化
のための重要な役割を明らかにし、疾病病因のメカニズムの解明のために抗原マイクロアレイが応
用できることを強く示唆している。
多発性硬化症(MS)
MS は神経学的な障害が主要原因で、若い成人で発症する(59)。その病気は初期では急性の発作を伴
う再発寛解型 MS(RRMS)を経過し、患者の 85%が全快する(60)。RRMS の大多数の患者は神経学的
な障害が進展し、不可逆的に蓄積することで、次に2次的に進展する MS(SPMS)を発症する(60)。
患者のおよそ 10%で、MS は一次的に進展する MS(PPMS)を示している。さらに MS において、活発
に浸潤する炎症細胞および随鞘脱落の免疫病理学的なパターン(様式)は、多種多様である(61 62)。
中枢神経系(CNS)に対する適応的免疫反応は、RRMS の病因と関係がある。SPMS において病気の進
展は、一般的に新しい炎症性病変がない状態でも観察される。また、適応的免疫反応を標的とする
SPMS の治療はその効果に限界があり、他のメカニズムが MS のこの段階に役割を果たしているこ
とを示唆している (63)。これらの観察に基づいて、適応性があり先天的である免疫反応両方が
RRMS に関係し、CNS に対する先天的な免疫反応の持続的な活性化が SPMS を誘導することを提案
している(64)。
Quintana らは、神経学的な疾病に関連する 362 ミエリン(myelin)と炎症に関係する抗原のパネル
を含んでいるマイクロアレイの使用することで、臨床的に異なる MS の型と病理学的サブタイプを
区別することができる血清 IgG および IgM 抗体を見つけた。それには異なる免疫のメカニズムが、
MS の各型に関わっているという考えが並列している(14)。MS の中で最も一般的な型である RRMS
7
を、SLE、副腎白質ジストロフィーおよびアルツハイマー病のような他の疾病と識別するために抗
体パターンを利用することができるかもしれない(14)。鞘内での抗体産生が抗原マイクロアレイで
測定され、RRMS と健常人との間の差も観察された(24)。ミエリンへの自己抗体に加え、RRMS は、
PPMS または SPMS で観察されなかった熱ショック蛋白質(HSP)への自己抗体が特徴であった。HSP
は炎症とその機序に関係しており(65)、HSP に対する抗体が MS の免疫反応を制御する役割を担っ
ているタンパク質の指標となる可能性がある。 確かに、小さな HSP 分子であるαB-クリスタリン
(crystallin)は、活発な MS 病変で最も豊富な遺伝子記録であり(66)、T 細胞とマクロファージの重
要な抗炎症作用を持っており、神経膠の抗アポトーシス性の役割を担っている(67)。
抗原マイクロアレイは、MS の治療効果のモニターにも利用されてきた。治療していない RRMS 患
者の CSF サンプルと、メチルプレドニソロンで治療された患者からのサンプルを比較し、この抗炎
症性薬が RRMS 患者において CNS 内の抗体産生を減少させることを実証した(24)。さらに、RRMS
のミエリン塩基性蛋白質をコードした DNA ワクチンの影響を検討することを目指した無作為化さ
れたプラセボ対照のフェーズⅡ試験において、抗原マイクロアレイは抗ミエリン免疫反応を測定す
るために使用された(68)。著者らは、治療前のミエリン塩基性蛋白質への免疫反応が、治療による
有益な反応(治療効果)に関係していることを発見した。総合すればこれらのデータは、MS 治療
に対する応答をモニターしたり、発展的な特異的療法による効果がある患者の同定に、抗原マイク
ロアレイが利用できることを示唆している。
脂質は MS で自己免疫反応のさらに重要な標的となる(69)。MS における脂質への免疫反応を研究す
るために、Kanter らはガングリオシード、スルファチド(sulfatide)、セレブロシド(cerebrosis)お
よび脳の脂質画分を含むミエリン sheath に存在する脂質の分析をおこなうマイクロアレイを開発し
た(13)。著者らは、MS 患者の CSF の試料から sulfatide、スフィンゴミエリン、および酸化した脂質
に対する脂質に特異的な抗体を確認した。同様に脂質マイクロアレイにより、ミエリン脂質中にオ
リゴクローナルなバンドの実質的な反応を確認し(70)、脂質に反応するオリゴクローナルなバンド
が MS の疾病進行に関係している重要な知見を得た(71) 。脂質に特異的な抗体は、MS 患者の血清サ
ンプルから確認された(14)。総合して、これらの研究は MS のいくつかの脂質が病原性の役割を識別
することに結びついた。Kanter らは、さらに sulfatide に特異的な抗体が MS のネズミを用いた実験
で疾病の進展を後押しすると報告している(13)。さらに、Farez らは、neurodegeneration(神経破壊)
を促進して臨床的な不全の蓄積に関する鐘状の受容体 2 およびポリ[ADP リボース]ポリメラーゼ 1
(それは CNS の星状細胞、microglia および浸透するマクロファージ中の脂質によって活性化される)
が関与するシグナル経路を確認した(72)。逆に言えば、MS のいくつかの自己抗体がフォスファチジ
ルセリンや酸化したホスファチジルコリン誘導体のリン酸基を標的にするという最近の報告がある。
ハツカネズミの実験では、これらの脂質が T 細胞活性化を抑えることにより MS が改善された。し
たがって、MS 患者から検出された脂質に反応する抗体が、これらの天然の抗炎症性作用を示す脂
質を不活性化することが提案された(73)。総合すれば、脂質に特異的な免疫反応に関する研究、お
よび疾病病因のメカニズムの解明の研究を通して、抗原マイクロアレイはその重要性を示している。
要約
抗原マイクロアレイは、自己免疫疾患の免疫反応の情報を直接的に得ることができる他に類のない
ツールであり、疾患マネジメントにとって重要で発展的な適用能力を有している。これらの適用能
力は、病気の診断を含んでおり、病気の徴候が現れる前に自己免疫疾患に進展する個々の早期診断
や、特定の自己免疫疾患に進展する個々の危険因子の同定に応用できる。例えば、患者の階層分け、
病気の進展や治療に対する応答の追跡のような、病気のモニタリングにも応用できる。 また、病因
のメカニズムの解明、治療の介在のための標的の同定にも応用できる。大多数の自己免疫疾患では、
8
免疫的な反応は非常に多種多様で、つまり、異なる患者毎に異なる抗原による免疫系が存在する。
この複合的な反応の存在から、治療の効能を改善するために、個々の患者の自己免疫反応を標的と
する抗原に特有の治療の取り組みが必要となることが推察される。抗原アレイは、各患者の中で自
己免疫反応を誘導する抗原を同定し、かつ DNA ワクチン(74、80)あるいはナノ粒子(81)を基材と
するような、個別化された抗原に特有の免疫寛容原性的な取り組みを深める機会を提供している。
また、抗原マイクロアレイは、自己免疫疾患や他のアレルギー疾患における免疫応答の研究に有用
な新しいツールである(82, 83)。一旦現在の技術的な限界が克服されれば、抗原マイクロアレイの技
術は自己免疫疾患の診断、モニタリングおよび治療を革新する可能性がある。
(訳者:岸 浩司)
Footnotes
2 Nonstandard abbreviations:
MHC,
major histocompatibility complex;
SF,
synovial fluid;
CSF,
cerebrospinal fluid;
HSP,
heat shock proteins;
T1D,
type 1 diabetes;
SLE,
systemic lupus erythematosus;
RA,
rheumatoid arthritis;
MS,
multiple sclerosis;
RRMS,
relapsing–remitting course;
SPMS,
secondary progressive MS;
PPMS,
primary progressive course MS;
CNS,
central nervous system;
HSP,
heat shock protein.
Author Contributions: All authors confirmed they have contributed to the intellectual content of this
paper and have met the following 3 requirements: (a) significant contributions to the conception and
design, acquisition of data, or analysis and interpretation of data; (b) drafting or revising the article for
intellectual content; and (c) final approval of the published article.
9
Authors' Disclosures or Potential Conflicts of Interest: Upon manuscript submission, all authors
completed the author disclosure form. Disclosures and/or potential conflicts of interest:
Employment or Leadership: F.J. Quintana, Brigham and Women's Hospital, Harvard Medical School.
Consultant or Advisory Role: None declared.
Stock Ownership: None declared.
Honoraria: None declared.
Research Funding: None declared.
Expert Testimony: None declared.
Patents: None declared.
Received for publication September 26, 2012.
Accepted for publication February 19, 2013.
© 2013 The American Association for Clinical Chemistry
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