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リーマン・ショックとFRB-金融危機と短期金融市場

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リーマン・ショックとFRB-金融危機と短期金融市場
証券経済研究
第73号抜刷
2011年3月
リーマン・ショックとFRB
一金融危機と短期金融市場一
伊 豆 久
リーマン・ショックとFRB※
−金融危機と短期金融市場一
伊 豆 久
要 旨
2008年9月の米国大手投資銀行リーマン・ブラザーズの倒産は,大恐慌以来最
大の世界的金融危機をもたらした。本稿ではFRB(米国連邦準備制度理事会)
の緊急対策を整理し,今次金融危機の性格の一端を明らかにすることとしたい。
と言うのは,サブプライムローン問題が歴史的な金融危機となったのは,単に
欧米大手金融機関が経営不安・破綻に陥ったというだけでなく,それがドル短期
金融市場の機能停止という異例の事態を引き起こしたからではないかと考えるか
らである。
すなわち,レポ市場を中心とする短期金融市場は,2000年代半ばの米国住宅バ
ブル下において関連資産のファンデイング市場として機能したわけであるが,と
りわけ投資銀行にとってその役割は極めて大きかった。他方で,レポやCPなど
の短期金融商品は,MMFの資金運用先であるため,そのデフォルトはMMFへ
の信頼を根底から覆す。しかしながらMMFやレポ等は決済システムの範鴫に
含まれないため,そこへの流動性供給は中央銀行の正当な業務とはみなされてこ
なかった。
しかし,リーマン・ブラザーズの倒産がMMFの元本割れを引き起こし,
MMFへの解約の殺到が短期金融市場を麻輝させたことから,FRBがMMFや
CP市場に介入することになったのである。その介入とはどのようものであった
のか,それは通常のFRBの金融調節と,また2007年夏からのサブプライム危機
対策とどのように異なっているのか。さらには,金融危機が一旦収束した2009年
以降続けられているMBSや国債の買入れにはどのような意味があるのか。
こうした政策の推移から金融危機の特徴を再検討すること,それが本稿の目的
である。
※本稿の作成にあたって財団法人石井記念証券研究振興財団より研究助成を受けた。ここに記して感謝したい。
9
7
証券経済研究第73号(2011.3)
目
次
Ⅳ、MMF危機と中央銀行
I.はじめに
1.リーマン・ショックとMMF
1.本稿の目的
(1)リーマン・ショックの意味
2.FRBのバランスシート
Ⅱ、FRBの金融調節の特徴
(2)MMFの元本割れと「取付け」の発生
ⅢFRBの金融危機対策
1.オペ対象の変化
2.中央銀行とMMF
V、出口戦略の開始
2.TAFと為替スワップ協定(2007年12月)
1.出口戦略の第1段階
2.第2段階の準備
(1)TAFとスティグマ
(2)為替スワップ協定と国際通貨ドル
3.ベア・スターンズ危機への対応(2008年3
Ⅵ.おわりに
注
参考文献
月
)
4.リーマン・ショック下の資金供給(2008年9
月
)
場は,危機に至る2000年代半ばの米国住宅バブ
I.はじめに
ル下において,住宅ローン関連資産のファン
デイング市場として機能したわけであるが,と
1.本稿の目的
りわけ預金という資金源泉をもたない投資銀行
にとってその役割は極めて大きかった。また,
2008年9月の米国大手投資銀行リーマン・ブ
欧州の投資銀行は,ドルの預金ベースをもたな
ラザーズの倒産は,大恐慌以来最大の世界的金
い上に,母国中央銀行からもドルを調達できな
融危機をもたらした。危機の過程・原因・影響
いわけであるから,市場への依存はより大きな
についてはすでに多くの検証がなされている
ものとならざるをえなかった。
が,本稿ではFRB(米国連邦準備制度理事会)
他方で,レポやCPなどの短期金融商品は,
の緊急対策の整理を通して,今次金融危機の性
預金類似商品と見られてきたMMFの資金運
格の一端を明らかにすることとしたい。
用先であるため,その債務不履行・機能停止は
と言うのは,サブプライムローン問題が歴史
MMFへの信頼を根底から覆すことになる。し
的な金融危機となったのは,単に欧米大手金融
かしながら,MMFましてやレポやCPが法的
機関が証券化商品の巨額損失によって経営不
には預金でないことは言うまでもなく,<銀行
安・破綻に陥ったというだけでなく,それが短
預金→銀行の中央銀行預金→中央銀行>から成
期金融市場の機能停止という異例の事態を引き
る決済システムの範畷には含まれないため,そ
起こしたためではないかと考えるからである。
うした非預金市場への介入は,中央銀行の正当
すなわち,レポ市場を中心とする短期金融市
9
8
な業務とはみなされてこなかった。
リーマン・ショックとFRB
しかし,リーマンの倒産はMMFの元本割
第2に,サブプライムローンに端を発する金
れを引き起こし,MMFへの解約の殺到が短期
融危機は07年8月のパリバ・ショックによって
金融市場の機能を麻揮させ,FRBの介入を余
顕在化するが,FRBが資産を増大させるのは
儀なくしたのである。その介入とはどのようも
08年9月のリーマン・ショックからであって,
のであったのか,それは2007年夏からのサブプ
それまでのおよそ1年の間,資産総額はほとん
ライム危機対策と,また通常のFRBの金融調
ど変化していない。ただし,通貨の供給方法
節とどのように異なっていたのか。それを明ら
(=資産の構成)が微妙に変化している。①ま
かにするところから金融危機の特徴を再検討す
ず07年8月よりレポによる供給が増大し始め,
ることが本稿の目的である。
②同年12月にはTAF・中央銀行間為替スワッ
プ(図表1の「緊急対策」)が導入され金額が
2.FRBのバランスシート
FRBのバランスシートの推移を概観するこ
とで,本稿の課題をもう少し具体的に示すこと
としよう。
図表lは資産(=通貨供給量)の推移を示し
増加していくが,③国債保有額が減少している
ため資産総額はほぼ一定に維持されている。こ
れらの意味するところは何であろうか。
第3に,08年9月にリーマン・ショックが発
生すると,FRBは緊急的な政策をフル動員し,
たものであるが,08年秋に急拡大していること
前述したように資産を倍増させる。つまり,こ
がまず目につく。細かく言えば,9月10日に
の時点で(第2の③として述べた)資産総額を
9,617億ドルであった資産は.10月15日には1
一定に保つべく国債保有額を減少させるという
兆8,054億ドルに達しており,わずか1ケ月の
政策は放棄され通貨供給額が大幅に拡大したの
間に倍増,およそ9,000億ドルが市場に供給さ
である。こうした量的な変化だけでなく,08年
れたことになる。9月15日のリーマン倒産後の
9月には相次ぎ新たな通貨供給策が導入されて
混乱に対応したものである。
いる。新しい供給方法はどこが新しかったの
しかしながら,それ以外にも,このグラフは
多くの論点・疑問を提示している。時間の順に
挙げれば,以下の通りである。
か,そしてなぜそれが必要だったのかを明らか
にする必要がある。
第4に,09年に入ってパニック的な危機がひ
第1に,金融危機発生以前(07年夏以前)の
とまず落ち着きを見せると.①危機対策で導入
いわば「通常時」の特徴として,資産のほとん
された新たな方式での通貨供給額は大幅に減額
どが国債(買切りオペによる国債保有)によっ
され,10年初めには一部を除いてゼロとなって
て占められている点である。言い換えれば,
いる。また,②通常の通貨調節手段であるレポ
FRBは主たる通貨供給を国債の買切りによっ
も,09年1月より完全に停止し残高ゼロが続い
て実施しており,短期の金融調節手段であるレ
ている。他方で,③それまでは行われていな
ポのウエイトが非常に低いのである。これは,
かった政府機関債・MBSの買切りオペが08年
後述するように日本銀行が通貨供給の40%以上
9月に開始され,④国債の買切りオペも増額さ
を短期の金融調節に依存しているのと対照的で
れている。
ある。
こうしたバランスシートの変化の意味を,以
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証券経済研究縮73号(2011.3)
図表1FRBの資産(10億ドル)
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(注)2007年7川111から10年12月2911までの脈水峨日時点の磯間。
「緊急対紫」の内択はIxl表8に示している。
〔出所〕FRB‘StatisticalRelease.H4.1.より作成。
図表2FRBの負債(10億ドル)
3,000
口財務省SFA
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リーマン・ショックとFRB
図表3日銀のオペ残高(兆円)
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(本店貸付)
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短国売却
長期国債買入残高
46.9
〔出所〕日本銀行「2007年度の金融市場調節」2008年6月,図表18。
下,検討していく。
の大部分を固定化しても吸収オペを多用するこ
となく円滑な金融調節を行うことができる2)」
ⅡFRBの金融調節の特徴
からである。一方,日本は「他の国・地域と比
べて,銀行券,財政資金ともに大きく変動し,
危機対策の特徴を検討する前に,FRBの通
全体としての変動幅も大きい3)」ために比較的
常時の金融調節の特徴を,日銀との比較によっ
大きな額を柔軟に調節する必要がある。米国が
て示すこととしよう。
小切手・クレジットカード社会であるのに対し
FRBの金融調節の特徴は,第1に,資金供
て,日本では財政資金の季節変動が大きいこと
給のほとんどを国債の買切りで実施し')短期の
のほか,現金への依存度が非常に高いことが背
資金調節への依存度が低いことである。経済成
景にあると思われる。
長に応じた通貨需要に対応すべ<安定的に国債
第2の,そして本稿においてより重要な意味
を買い入れることが中心で,短期的に通貨を供
をもつ特徴は,米国では,国債の買切りであれ
給しただちに吸収するといったことはほとんど
短期のレポであれ,通貨調節のすべてが,参加
行われない。対照的に日本では短期の調節のウ
資格を認められた20社程度の大手証券会社(プ
エイトが非常に高く,通貨供給額の4割程度が
ライマリー・ディーラー,図表4)を取引相手
短期のオペでまかなわれている(図表3)。こ
とする,(事実上)国債だけを対象とする,売
うした違いの理由は,米国では「資金過不足の
買形式によってのみ行なわれてきたことであ
振れが絶対額としては比較的小さいため,資産
る。他方日本では,日銀の取引相手は,およそ
1
0
1
証券経済研究第73号(2011.3)
図表4プライマリー・ディーラー全21社
(2007年2月時点)
BNPParibasSecuritiesCorp、
BancofAmericaSecuritiesLLC
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CantorFitzgerald&CO,
CitigroupGlobalMarketslnc,
CountrywideSecuritiesCorporation
CreditSuisseSecurities(USA)LLC
DaiwaSecuritiesAmericalnc、
DeutscheBankSecuritiesInc・
DresdnerKleinwortWassersteinSecuritiesLLC
Goldman,Sachs&CO・
GreenwichCapitalMarkets,Inc・
HSBCSecurities(USA)Inc.
』.P,MorganSecuritieslnc・
LehmanBrotherslnc・
MerrillLynchGovernmentSecuritieslnc・
MizuhoSecuritiesUSAInc、
MorganStanley&CO・Incorporated
NomuraSecuritieslnternational・Inc・
UBSSecuritiesLLC.
〔出所〕FRBNY
150社に及び,かつ売買形式よりむしろ融資形
のオペの主力は担保付「貸出」である)4),ま
式での資金供給が中心であり,その担保も企業
た預金金融機関のみならず証券会社を含めた幅
向け融資債権を含む広範な種類が認められてい
広い金融機関を相手方としている。そして,補
る。
完貸付制度の場合にも,貸付金利が市場ではな
先進国の近年の金融調節手段は,通常の調節
く政策的に決定されている(入札ではなく金融
手段であるオペ(マーケット・オペレーショ
政策決定会合で事前に決定されている)点が異
ン,公開市場操作)と,資金繰りに窮した金融
なるだけで,対象先や担保の範囲はオペと同じ
機関への罰則金利での受動的「貸出」であるス
である。
タンデイング・ファシリテイ(FRBの「窓口
ところがFRBはそうではない。日銀の補完
貸出(DiscountWindow)」,日銀の「補完貸
貸付制度にあたる窓口貸出についてはほぼ同じ
付制度」など)の二つに分けられる。
であるものの(全預金金融機関を対象としてお
オペについて,日銀は,その取引形式がレポ
り,融資債権を含めた幅広い金融資産を適格担
であれ貸出であれ,金利が入札によって決定さ
保とする),オペについては,①取引方法は証
れるものはすべてオペであるとし(実際,日銀
券の売買形式(買切りとレポ)だけで貸出を含
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リーマン・ショックとFRB
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回政府機関債
回国債
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43
図表5FRBのレポ残高(四半期平均)(10億ドル)
同
Q1Q2Q3Q4Q1Q2Q3Q4Q1Q2Q3Q4Q1Q2Q3Q4
2005200620072008
(注)2008年3月に導入された.政府機関MBSのみを対象とするシングル・トランシユ・レポは含まない。
〔出所〕FRBNY,"DomesticOpenMarketOperationsduring2007,"February2008,p、21.Chart13."during2008,”
January2009.p、11.Chart5.
まず,②取引先を預金金融機関ではなくプライ
を供給できるはずである。しかしながら,米国
マリー・ディーラーに限定し,③売買対象債券
においてFRBから資金の貸出を受けることは
も国債と政府機関債(政府機関保証のMBSを
市場での資金調達の不能を意味し,市場におけ
含む)だけである。しかも実際のオペの対象
る信認を一挙に失う。米国金融市場において
は,金融危機発生まで8割前後を国債が占めて
「ステイグマ(Stigma:汚名,焔印)」と呼ば
いたのである5)(図表5)。
れる現象である。そのため,米国における中央
したがって,通常時におけるFRBの資金供
銀行「貸出」は事実上機能しないのである。
給は,プライマリー・ディーラーが国債(と政
日米間の資金供給方法の違いは,当然のこと
府機関債)を保有(国債貸借市場における借入
ながら両国の金融構造の違いを反映したもので
れ分を含む)している限りにおいて可能なので
ある。間接金融が優位である日本においては,
あり,言い換えればその範囲を超えてドルを供
中央銀行の金融調節手段においても,銀行を取
給することはFRBにとっても非常に困難とな
引相手先とし,証書貸付債権を含む幅広い担保
るのである。もちろん緊急時には,スタンデイ
を認めるほかない。対照的に米国では,銀行融
グ・ファシリティである窓口貸出によって資金
資のシェアが低く国債を中心とする債券市場の
1
0
3
証券経済研究第73号(2011.3)
役割が大きいことを反映してプライマリー・
ディーラーとの国憤レポによる資金調節が行わ
Ⅲ.FRBの金融危機対策
れてきたのである。
さらに,そうした金融構造の原因でもあり結
果でもある要因として,(裁量的な資金配分に
1.オペ対象の変化
対するものとしての)市場メカニズムへの評
FRBの金融調節は,2007年8月のパリバ・
価・態度をあげることもできるであろう。米国
ショックの発生を受け変化し始める。最初の政
のように金融調節方法を事実上国債の売買に限
策対応は,窓口貸出の期間延長(翌日物のみか
定することは,中央銀行の通貨供給から,企業
ら30日物へ)というものであったが,FRBみ
の信用リスク負担や貸出にともなう信用割当的
ずから「この政策措置は,窓口貸出をほとんど
性格を厳格に排除することを意味する。産業金
増加させなかった」6)と述べている。ステイグ
融的な要素の忌避,市場メカニズムへの強い信
マのためである。政策金利(FFレートの誘導
頼がベースにあると言える。
目標値)が9月から引下げられ'2月までに合計
しかし他方で,2000年代半ばからの住宅バブ
3回,1%の引き下げがなされているが,それ
ルの時期に,米国の短期金融市場では担保・売
でも07年末時点では4.25%という水準であっ
買対象とされる債券の多様化が急速に進んだ。
た。急激な金融緩和ではあるが,通常の政策枠
住宅ローン担保証券など幅広い金融商品がレポ
組みの範囲内での措置である。
取引の担保(対象)とされ,それが,住宅ロー
通貨調節方法については,短期オペ(レポ)
ン市場の資金供給を担うと同時に,投資銀行等
による供給が増加するが(図表5),供給額そ
のファンディング手段として機能したのであ
のものはほぼ一定に維持されている。すなわ
る。
ち,①それまで限界的なレポ手段にすぎなかっ
つまり,米国短期金融市場においては,取引
た政府機関債(ファニーメイ債等)と政府機関
対象や参加者が厳しく制限された公的部分(中
が保証したMBSを対象とするレポが増大する
央銀行による資金供給)と,多様化と肥大化が
一方で,②主力であった国債担保のレポは減額
進む民間市場の間に大きなギャップが存在した
している(図表5の2007年第3四半期からの変
のである。こうした状況下で民間市場において
化)。そして同時に,③買切りオペによる国債
危機が発生すると,金融機関は流動性を求めて
の保有額は漸減しているのである(図表6)。
中央銀行の窓口に殺到するものの,FRBの従
FRBは,通常時には,償還を迎えた保有国債
来型の通貨供給方法ではそのニーズを満たすこ
分については,ほぼ同額の買入れを行ってきた
とができない,という問題が発生したのであ
が,07年にはそれを停止している(さらに08年
る。それが具体的にどのように進行したのか見
には買切りオペそのものが停止された上で売切
てみよう。
りオペが実施されている)。
資金供給額を一定に維持しながら,政府機関
債・保証MBSをレポで買い入れると同時に,
国債についてはレポ。買切り両面で保有額を減
104
リーマン・ショックとFRB
000000000
05505050
−
1
2
3
−1
一2
一一
一
1
図表6FRBの国憤保有額の変化(10億ドル)
蕊 ■
■
1 屋 詞 霊 胃 1 I
■
園買切り
囚売切り
口償還
■増減計
2006
0
8
0
7
(注)2006年と07年の売切り.08年の買切りはゼロ
〔出所〕FRBNY."DomesticOpenMarketOperationsduring2008・軍January2009.p,14,Chart8.
らしたのであり,簡単に言えば,市場(民間)
損を発表。12月になるとFRBは新たなドル供
が負担していたリスクをFRBが肩代わりし,
給ルートを導入することとなった。それが,図
同時に,FRBが保有していた国憤を市場に放
表8に示している,TAFと為替スワップであ
出したということになる。民間レポ市場におい
る。
てリスク回避的な動きが出始め対象(担保)が
2.TAFと為替スワップ協定(2007年
国債に集中してきたこと,また,広く債券市場
1
2
月
)
において「質への逃避」が生じ,国債需要が高
まったことに対応したのである。
しかしその一方で,通貨供給総額を引き上げ
2007年12月12日,FRBは,TAF(Term
AuctionFacility)と名づけた新たな資金供給
るには至っておらず,また,プライマリー・
方法の導入と,欧州中央銀行(ECB)・スイス
ディーラーを通じたオペという通常の供給ルー
中央銀行との為替スワップ協定の締結を発表し
トにも変化は見られない。ここから,当時の
た
。
FRBの状況認識は,「不足しているのは国債で
あってドルではない」あるいは「市場に国債を
(1)TAFとスティグマ
供給すれば必要なドルは市場内部で融通可能
TAFの最大の特徴は,銀行(預金金融機
だ」というものであったと推測される。
ところが07年秋,大手投資銀行は相次いで,
サププライムローン関連証券化商品の巨額評価
関)に対して金利入札方式で資金を供給すると
いうところにある。
先述のように,FRBは,市場での資金調達
105
証券経済研究第73号(2011.3)
が困難となった銀行を対象に「窓口貸出」を用
ローンの長い歴史にまで遡ることもできよう。
意しているが,ステイグマの存在のためその利
それに対して米国では.資金調節をプライマ
用は進んでいなかった。そこで,相対かつ政策
リー・ディーラーとの国債の売買(レポと買切
金利(公定歩合)での貸出である窓口貸出に対
り)に限定するという市場メカニズムの原則を
して,貸出先も貸出金利も集団的な競争入札で
厳守してきた。そのことがスティグマを生み,
決定される方式を導入し(いわば「公定歩合の
新たな資金供給方法を必要としたのである。
市場化」。同時に期間も1ケ月物●3ケ月物に
延長),スティグマを排除することでFRB資
(2)為替スワップ協定と国際通貨ドル
金の利用を促した。それがTAFである7)。
TAFと同時に発表された為替スワップ協定
TAFが導入された原因はもちろん金融危機
においても,米国に特有の要因が背景にある。
の深まりにあるが,同時に.米国金融市場の制
為替スワップ協定は,FRBが大陸欧州の中央
度的要因に起因する側面も大きい。同様の危機
銀行(ECBとスイス中銀)と自国通貨を一定
が日本や欧州で起こったとしても,TAFのよ
額まで一定期間交換する取決めとして始まっ
うな方法の導入はなされなかったはずである。
た。機能的には自国通貨を担保に相手国通貨を
日銀の補完貸付は,導入当初こそ流動性不足に
借り入れるのと同じである。FRBはユーロや
陥った金融機関への罰則レートでの救済融資と
スイスフランを必要としていたわけではなく,
しての性格が強かったが,その後,その役割は
その目的はECBとスイス中央銀行にドルを与
短期金利に上限を画することに変化した8)。つ
えることにあった。欧州がドルを必要としたの
まり,基準貸付金利はコール・レートの誘導目
は,欧州の金融機関がドル建て金融資産への投
標値より高く設定されるが,なんらかの理由で
資を膨らませていたためである。必要なドル
市場金利がそれを上回った場合には,金融機関
は,証券化商品等のドル建て資産を裏付とする
はたとえ流動性不足の状態になくても金利裁定
レポ取引やABCPの発行で調達されていたと
を目的に補完貸付を利用している。つまり,日
推測されるが,証券化商品の暴落によってそう
本の金融機関・市場には中央銀行からの借入れ
した取引は困難となってしまった。ユーロ投の
に抵抗がないのであり,TAF導入の直接の原
為替スワップでもドルを調達できるはずである
因となったスティグマが存在しないのであ
が,ドル需給のアンバランス(需要の急激な上
る
9
)
。
昇)によってそのコストは急騰し,こちらも事
こうした日本の特徴の背景には,①オペと補
実上不可能となったのである。となると,
完貸付において,担保の種類と対象金融機関が
ECB等にはドルの発行機能がない以上,欧州
共通であり,しかも,②適格担保の範囲は企業
の金融機関にはドル調達の手段がなく,それを
向け貸付債権を含むなど非常に幅広く,また対
埋めるために,FRBがECBとスイス中央銀行
象金融機関も約150先と非常に広いことがある
にドルを供給したわけである。
と思われる。さらに言えば,中央銀行からの融
つまり,このスワップ協定にもとづくドル供
資を受けることを「汚名」とするよりむしろ
給は,ドルが国際通貨であることから生じた対
「恩恵」あるいは「特権」とみなすオーバー.
応策であったことがわかる。ドル圏以外の金融
1
0
6
リーマン・ショックとFRB
機関がドルの両建て取引の肥大化にリターンを
SecuritiesLendingを行ってきたが,その際の
求めていたわけで,短期金融市場と資産市場両
担保は別銘柄の国債,期間はオーバーナイトに
方におけるドル市場の魅力の高さが,危機時の
限定されていた。それに対してTSLFでは,
ドル不足を招いたのである。
①適格担保として,国債の他,政府機関債(保
このように見てくると,07年12月に導入され
証MBS),民間のRMBS・CMBS(ただしトリ
た二つの新たな資金供給は,もちろん金融危機
プルA格)を認め,②期間も1ヶ月としてい
を原因とするものではあるが,同時に,米国特
る10)(図表7)。すなわち,大手証券会社が抱
有の事情(窓口貸出に対するステイグマの存在
え込んだ各種債券のうち,一定の格付けを擁す
とドルの国際通貨機能)を背景とするもので
るもののすでにレポ市場でプレミアムを求めら
あった。少なくともこの段階までの新たなファ
れたり,取引対象とならなくなった債券を国債
シリテイの導入は,危機の発生が日本や欧州で
と交換するということである。そうした債券
あれば必要のないものであったと思われる。ま
は,住宅バブルの時期には,トライパーテイ・
た,こうした新たなルートが導入されつつも,
レポを制度的背景にレポ市場での資金調達で盛
繰り返し確認してきたように,08年9月のリー
んに用いられクレジット・バブルを支えていた
マン・ショックまでFRBの通貨供給総額は変
のである'')。
化していない。新たな資金供給に対して,
しかしながら,FRBはそれらを直接買い上
FRBは,買切り額の抑制,さらには売切りに
げることはしなかった。レポの担保として唯一
よって「量的緩和」を拒否したのであった。必
機能していた(それゆえ市場で極度の品不足が
要だったのは,流動性不足という量的な問題の
生じていた)国債との交換を認めるだけであ
解決ではなく,従来の主要な資金供給ルートの
り,ギリギリまで市場の枠組みの中での解決が
目詰まりに対応するための新たなルートの開設
目指されていたのである。貸出先も品貸し料も
にすぎなかったのである。
入札決定でスティグマからも自由であった。レ
3.ベア・スターンズ危機への対応
(2008年3月)
さらに2008年3月,FRBはベア・スターン
ズ危機を受けて,TSLF(TermSecurities
ポ市場の多様化という背景,それに対する「国
債本位制」とも言えるFRBの対応のいずれに
おいても,米国的要素が強いものと言えるであ
ろう。
もう一つのPDCFは,従来預金金融機関に
LendingFacility)とPDCF(PrimaryDealer
限定されていた窓口貸出を,プライマリー・
CreditFacility)を導入する。この二つのファ
ディーラーにも解禁するというものである。こ
シリティにも,危機対策としての側面と同時
れも日銀であれば,特に必要のないものであ
に,米国に固有の特徴が強く現れている。
る。前述のように,日本では,通常のオペであ
TSLFは,一言でいうと,民間債を担保とし
れ,スタンデイング・ファシリテイであれ,証
た国債の貸出である。FRBは,通常時におい
券会社も銀行と同様に参加することが認められ
ても,フェイル対策としてプライマリー・
ているからである。
ディーラーを対象に特定銘柄の国債を貸し出す
ただし,PDCFは窓口貸出を大手投資銀行
1
0
7
証券経済研究第73号(2011.3)
図表7TSLF残高(10億ドル)
250
200
150
1
0
0
5
0
0
2008年3月
12月
09年6月
〔出所〕図表1に同じ。
に拡大したものにすぎないためステイグマを免
うした手段では対応できない,はるかに深刻な
れず,導入後(リーマン・ショックまで)の利
危機を生み出すことになる。
用は(事実上経営破綻した)ベア・スターンズ
にほぼ限られていた'2)。
4.リーマン・ショック下の資金供給
(2008年9月)
以上,サブプライムローン危機が顕在化した
2007年8月からベア・スターンズ危機が起こっ
2008年9月のリーマン・ショックによって,
FRBの政策は以下のように変化する。
た2008年3月までに導入された特別措置を見て
一つは,通貨供給量の急増であり,ショック
きたが,それは要約すれば,①通貨供給量は維
直前には9,600億ドルだったFRBの資産額
持しつつ,②通貨供給量の「目詰まり」を解消
(=通貨供給額)は1ヶ月後には2兆ドルを超
し,③需要の急騰した国債を供給する(国債の
え,その後現在(2010年末)まで概ねその水準
放出・TSLF)というものであった。「目詰ま
が維持されている。市場での資金のやりとりが
り」を解消する手段が,ステイグマのために機
困難になったことを受けて,巨額のドルを供給
能しなくなった窓口貸出に対するTAFの導入
したのである。
であり,欧州の金融機関へのドル供給のための
もう一つの変化は,さらに新たな資金供給方
為替スワップ協定であり,窓口貸出を利用でき
法を導入したことである。図表9に示した
なかった証券会社を対象とするPDCFの導入
AMLECPFEMMIFFがそれであり,この
であった。
三つのファシリティに共通するのは短期金融市
しかし,リーマン・プラザーズの倒産は,こ
1
0
8
場に直接焦点を当てている点で,金融機関向け
リーマン・ショックとFRB
の一般的な資金供給であるそれまでのTAF等
れたTAF・PDCF(銀行・証券会社への窓口
と異なる。
貸出),スワップ協定(欧州へのドル供給),
①まず,2008年9月19日に発表された
TSLF(国債の貸出)が,金融機関への流動性
AMLF(ABCPMoneyMarketFundLiquid‐
供給であったのに対して,2008年9月∼10月に
ityFacility)は,預金金融機関・銀行持株会社
導入されたファシリテイはいずれもCPに流動
に対して,系列運用会社が運用するMMFか
性を供給するもので,その対象が,①AMLF
らABCPを買い取る資金をノンリコースで融
ではMMFの運用会社経由であったものが,
資するというものである。米国ではMMFの
②CPFFでは発行体からとなり,さらに③
運 用 会社がMMFから投資対象証券を買い取
MMIFFでは投資家からの買取りへと,より直
ることが認められており,結果的に運用会社に
接的になっているのである。
よる元本保証に近くなるが,それも運用会社の
このことは,リーマン・ショックの最大のポ
財務余力次第である。その買取資金をFRBが
イントが短期金融市場にあったこと,しかもそ
融資するというものである。
れが銀行間市場ではなく,ABCPを中心とす
②続く10月7日のCPFF(Commercial
る広義の短期市場にあったことを示している。
PaperFundingFacility)は,さらに一歩踏み
そしてこうした異例の措置が必要になったの
込んで,FRBが発行体からCPを購入するた
は,当該市場への主たる資金供給元であった
めのSPVを設立し,その資金をFRBが融資
MMF(MoneyMarketFund)において「取
するというもの,つまりは,実質的にFRBが
付け」が発生したためであった。
CPの買い取りを始めたのである。
③そして10月21日に創設されたMMIFF
銀行は,要求払い債務を顧客に提供する一方
で長期の融資債権を保有する機関であるため,
(
M
o
n
e
y
M
a
r
k
e
t
I
n
v
e
s
t
i
n
g
F
u
n
d
i
n
g
F
a
c
i
l
i
t
y
)
本来的に,「期間のミスマッチ」を内在させて
は,同じくFRBが設立したSPVが適格投資
いる。そのため銀行間での過不足資金の融通
家からCPを買い取るための資金をFRBが融
(銀行間市場)や預金保険,そして「最後の貸
資するというものであった'3)。
し手(中央銀行)」を必要とする。そして中央
図表8が示すように,リーマン・ショック後
銀行は,「政府の銀行」であることから不換紙
に急増した資金供給の主たるルートとなったの
幣であるにもかかわらず強制通用力をもつ銀行
は,ショック以前の07年12月に導入された
券の発行という特権を認められており,理屈上
TAFであり為替スワップである。しかし,新
無制限の流動性供給をなしうるのである。
たに導入された上記三つのファシリテイは,
ところが最近の短期金融市場における取引
CPとMMFへの直接的な資金注入を目的とし
は,単なる決済資金の過不足の調整にとどまら
ている点で,リーマン・ショックの性格を示し
ず,金利裁定のリターンを高めるためのファン
ており,さらには現代の金融市場の特徴,中央
ディングであり,MMFの資金運用の場となっ
銀行の役割をめぐる極めて重要な論点を提起し
ている。それによって,投資銀行等はレバレッ
ているように思われる。
ジを拡大さてより大きなポジションを取ること
すなわち,リーマン・ショック以前に導入さ
が可能となるのである。しかもそれは,MMF
1
0
9
;券維済研究第73号(2011.3)
図表8緊急対策(10億ドル)
1,800
2010年末時点の残高(10億ドル)
1,600
1,400
1,000
0
.
0
為替スワップ協定
0
.
1
CPFF
□その他
0.0
MidenLane
蝿
i
i
i
純
!
;
I
回CPFF
ツプ
園為替スワップ
27.0
MidenLaneⅡ
ー
その他
1,200
TAF
圏TAF
800
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
ー
−
ー
ー
1
6
.
2
ー
ー
ー
ー
MidenLaneⅢ
23.1
窓口貸出
0
.
1
PDCF
0
.
0
AMLF
0
.
0
AIG関連融資・出資
46.3
TALF
25.4
合計
i6m0
薄弱︾
400
138.2
哩一
鍵
pqE兜
即Iq
投軽!‐
8
07年7月07年12月
08年12月
09年12月
10年12月
〔出所〕例表lに同じ。
等の機関投資家からの,原則として元本保証の
許されない資金に大きく依存していた。FRB
Ⅳ、MMF危機と中央銀行
が金融機関への流動性供給にとどまらず,CP
11jjlルとMMFへの介入を余儀なくされたのは
そのためであるが,それは同時に,「銀行の銀
1.リーマン・ショックとMMF
行」としての役割から派生した中央銀行の伝統
的な「堆後の貸し手」機能の枠組みを踏み越え
(1)リーマン・ショックの意味
ることでもあった。
リーマン・ブラザーズという一つの会社の破
では,リーマン・ショック後に生じたMMF
綻が世界的な金剛危機をもたらしたのは,第一
への取付けとはどのようなものであったのか節
に,それが米国金融当局のくTooBigToFail>
を改めて見てみよう。
政策からの転換を示すものとみなされたからで
あろう。半年前(2008年3月)のベア・スター
ンズ危機の際には,FRBの支援のもとで(少
なくとも形式上は)倒産がInI避され,JPモル
ガンチェースによる救済合併が実現している。
しかしリーマンの場合には,結果的に当局が法
110
リーマン・ショックとFRB
︵嚢︶亘祭SP
国④員再目屋凹で冨室
連鎖垂巨畠く
Uヨ己屋菖昌忌君再三
U自己①自侭目員①で冨乏
︵謁筈一一。
I司溺く匡恒④﹄︶堅自く﹄
由些二画。︼ぬ①雲﹄。。妙切で①望。殉国
﹄“一園④色読﹄曳屋﹄畠︶﹂。。﹄
︵湯三一U困巴︺壱①﹄。
。④[。③。m・つ雨
◇守醐・雨・唾つつ駒
。③一・③・ぬ。色刷
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Yや岬や惇牽
︼当馬塞ぎ畠。重︶﹄陰三三
︵託︺雲U画聖配色毛屋弓﹄酌屋垣ゆ①シ自弓
︵諾三一U碍堅麺屋石屋。﹄
﹄。Q韓堅一塁旨“EEcU︶四隅色。
︵声]一一℃珂堅
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︵語三℃面﹄函屋石屋“白
葱g室堅Umく︶色昌男く
﹄含名言ウコで邑二陛芯茎﹄㈲幸二
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的塁︾恒富。④切冒眉④﹄︶﹂且切伊
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■
●
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︵望屋④日乱員圏﹄く
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︵為]碧。国些
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◆
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宝②掛召︶駆望一層一︵曽昌ECU倉云飼冨冨一官。︶U目白裡暑和揖望叩一分裡岬爵皇匿蝉賎駆×入1年Kトソ、
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ぶふ︾トハ毎K
二二重謁十望。よい望迂
身g一十空。肌色
芯入や卜ふい×
﹄○画くe昌雪[べ
爵二画⑮倹堅房三
垂華牽・裡黒心
里蛍墓巨熟翠
︵詮ぺ燕︶
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︵蛍ぺ誌︶
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−い’︾恥
宰覇ま号国華
・’一一F︾m裾
望章
至璽趨韻鞘隠
︵[屋飼角幽。﹄色
室鎮ロ領
参c壱昌彦旨.。鼠一口目愚﹄︶
胃
上。
ご舗亜①幹g@.三判匿卜群g︶鯛冒。e韓蝦種
掛き・︵︵一堂︵④誉g︶盟冒。e転蝦誉9.︵毎舗
針
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1,︵一みへ叩一く︵嚢︶画茶岬や倖牽蝉甥乏奉頚③
八1口潟窒目胃﹄誘眉Eごく籾曽窃。画一君Em・ハーロ
﹄l侭・入1口︺吉富画・入1口甜朴・埜圏くま綱e
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④畏騰蟻弾塞潤型ン儲@.岬拳鍛彦尉美国盛﹄e
革叡鐸越叩一迷獄eeや饗暑和伺認型﹄匡吻⑮・く匿
津製e⑮長騰蟻鎮・頒躍e﹄隆聖U・自室く越君函④
・蟻趨辿彦尉e中型国塵堅◎・岬昌皇冨蝉堅○・口。
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召埜竪当爵鐘e唆筆埠噸︶岬毎s匡蝉坐。︵画く︶e拝
垂上鈍心型F雄埠噸型ン閉③・噸坐頬ン閉︾領国“﹄③
﹄塵のe咋埜国臣。。︵建霞埠蝦K増e匿い’一冒掛
輪ハヤト.八年×
ぶふマトハ午〆
三ぺ
鋼︼毘罵峯
壁翠牽摺ヨ堂口熱
重塞望鎖頓嬉
望鯉圭筈・垣
至窪達署・墾画
導べ
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学べ
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富
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1
1
1
証券経済研究第73号(2011.3)
的な破綻を容認した形となった。大手金融機関
極めて高いとみなされてきた'4)。
といえども,常に当局によって救済されるわけ
第1に,MMFは,証券規制上,資産の95%
ではないことが明らかとなったわけで,金融機
以上を複数の格付け会社から最上位格付けを得
関の信用リスクが急騰した。短期金融市場でも
ている証券で占めねばならず,また組入れ証券
疑心暗鬼が広がり,破綻懸念の高まりが資金繰
の平均残存期間も90日以下でなければならな
りの悪化をもたらし,資金調達難の噂が破綻懸
い。
念を強めるという悪循環を描くようになる。そ
第2に,「ペニー・ラウンデイング・メソッ
うなれば,銀行の貸渋りや証券化市場の機能低
ド」と呼ばれる四捨五入方法も元本割れを起こ
下(住宅・自動車等の関連融資の減少)を通じ
りにくくしてきたとされる。日本であれば,元
て実体経済に影響が及ぶことも不可避であっ
本1万円を基準とし1円未満で四捨五入するた
た
。
め,9,999円50銭未満となった時点,すなわち
以上が,リーマン・ショックの主な内容であ
損失が0.005%以上となった時点で元本割れと
るが,しかしもう一つ,これと重複するものの
なる。ところが米国では,1ドル(100セント)
別個の波及経路として,リーマン債のデフォル
が元本で1セント未満を四捨五入するため,99
トがMMFの元本割れを引き起こし,それが
ドル50セント未満にならなければ,すなわち損
短期金融市場の機能低下を増幅させるという
失が0.5%以上にならなければ元本割れとはな
ルートがあった。そしてそのことが,FRBに,
らないのである。
量的な資金供給の拡大だけでなく,短期金融市
第3に,事実上,運用会社による損失補填が
場への直接介入という極めて異例の政策を採ら
認められている。組入れ証券が格下げまたはデ
せることになったのである。
フォルトとなった場合,運用会社やその親会社
が,当該証券を買い取るなどして損失を埋める
(2)MMFの元本割れと「取付け」の発生
ことが可能なのである。投資家の信認維持のた
9月15日にリーマンが破産法の適用を申請し
めに,運用会社は当然に元本割れを回避すると
た翌日,老舗運用会社であるリザーブ・マネジ
期待され,事実上の元本保証に近いと考えられ
メント(ReserveManagement)が,みずから
てきた。
が運用する「リザーブ・プライマリー・ファン
ところが,リーマンの倒産によって同社債務
ド」の元本割れを発表した(1ドルに対して97
の不履行が発生し,リザーブ・マネジメントが
セント)。同ファンドは,リーマンの発行した
元本補填を断念したことから,「安全神話」は
短期債券を7億8,500万ドル保有していたとさ
崩壊した。そして大手証券会社はじめ経営不安
れる(「日本経済新聞」08年9月18日夕刊)。
が噂される運用会社(の親会社)の補填能力へ
ここからMMF全体に対する解約請求が殺
到し,事実上の取付けが発生したのである。
の不信が広がったのである。
図表10と11で取付けの状況を見てみよう。米
MMFは預金とは異なり,元本の保証はなく
国では,MMFのうち,主たる組入対象を国
公的な保険も存在しない。しかしながら,以下
債・政府機関債に限定しているものを「ガバメ
のような制度的な措置によって,その安全性は
ント・ファンド」,民間物を主たる対象としそ
1
1
2
リーマン・ショックとFRB
1
05
00
05
00
05
00
05
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0
0
0
99
88
77
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図表10プライム・ファンドの資産残高(10億ドル)
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個人投資家向け
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…….…..……….…..….M譲聡童諏は...
9月12日18日24日30日10月6日
〔出所〕BIS.‘USdollarmarketfundsandnon-USbanks. Q”"”6'R“た",March2009.
の分,高利回りを目指すものを「プライム・
補填能力に集まり,大手証券会社により厳しい
ファンド」と分類するが,図表10は,プライ
評価がなされていたことを示している。
ム・ファンドをさらに機関投資家向け・個人投
FRBが,先に見たようなCP市場に焦点を
資家向けに分類してリーマン破綻後の資産額の
絞った資金供給を開始したのはこうした状況下
推移を示したものである。個人投資家の動きは
においてである'5)。リーマン倒産直後の9月19
鈍いが,機関投資家からは解約請求が殺到,9
日にAMLFを発表し,MMF運用会社に
千億ドルを超えていた運用額は10月初頭には6
ABCPの買取資金を融資したのは,「第二のリ
千億ドルに急減している。わずか2週間でおよ
ザーブ・マネジメント」の出現を防ぎ,CP市
そ3千億ドルが消えたのであり,MMFはそれ
場・レポ市場を守るためであった。
に見合うCP,レポ等のポジションを縮小させ
2.中央銀行とMMF
たはずである。
図11は,機関投資家向けのプライム・ファン
従来,MMFに対しては,こうした流動性供
ドの資産額の推移を,さらにその運用会社の系
給措置は認められずまた必要とも考えられてこ
列別に見たものである。銀行系MMFより証
なかった。それは第1に,MMFの抱える流動
券会社系MMFのほうが厳しい取付けにあっ
性リスクは銀行より小さいと考えられるからで
ていたことがわかる。市場の関心が運用会社の
あろう。MMFの換金性は,現在,銀行の一覧
1
1
3
証券経済研究第73号(2011.3)
図表11機関投資家向けプライム・ファンドの資産残高’(10億ドル)
120
110
100
9
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8
0
7
0
6
0
5
0
4
0
9月12日18日24日30日10月6日
(注1)2008年9月16日の残高をそれぞれ100として指数化。
(注2)バンクオプアメリカ.バンクオプニューヨーク.バークレイズ,JPモルガンチェース.ステートストリート.ワ
コビァ.ウェルズファーゴ。
(注3)ゴールドマンサックス,メリルリンチ,モルガンスタンレー。
〔出所〕図表10に同じ。
払い預金に極めて近いが,投資対象(保有資
きいという事情が,非常に重要であったと思わ
産)は,銀行が流通市場を前提としない中長期
れる。
の融資債権であるのに対して,MMFの場合は
ところが,こうした状況は過去20年ほどの間
短期債券で流通市場が存在する。第2に,銀行
に徐々に変化し,とりわけ2000年代半ばの住宅
の預金債務は「通貨」として決済システムにお
バブルの時期に急激な変化を遂げた。
いて中心的役割を担うのに対して,MMFは換
預金という資金源泉をもたない投資銀行は,
金性・安全性の高さから準通貨的機能を果たす
レポやCPによってレバレッジを高めたが,そ
ようになったとはいえ,厳密には価格リスクを
こへの資金提供者の中心はMMFである。住
含む有価証券に過ぎないからであろう。そして
宅,自動車,クレジットカード,奨学金等の個
第3に,資金循環全体の中において銀行による
人向け融資は,米国の実体経済にとって非常に
資金仲介の役割がMMFによるそれよりも大
大きな役割を果たしているが,それらは投資銀
114
リーマン・ショックとFRB
行による証券化によって維持され,さらにその
て,FRBの出口戦略の第1段階がスタートし
ファンデイングにおいてMMFが最重要の役
たと言えるであろう。ただし,通貨供給量総額
割を担ってきたのである(上に述べた第3の要
はおおむね2兆ドル程度が維持されている。つ
因の変化=証券化・直接金融化の進展)。
まり,2007年8月から08年9月(リーマン・
そして同時に.MMFの運用対象においても
ショック)までと同様,通貨供給量は一定に維
大きな変化が生じていた。レポでは,国債のみ
持したままその供給方法が変更されたわけで,
ならず高利回り債やサブプライムローンの証券
08年9月までが金融機関に通貨を供給しつつ国
化商品も担保として利用されるようになり,
償保有額の減少によって不胎化していたのに対
CP市場ではSIVなどが抱えるMBS等を裏付
して,09年からは,反対に非伝統的な方法での
けとするABCPのウエイトが高まった。それ
通貨供給が減らされる一方で政府機関が保証す
らは掛け目の設定や高格付けの維持等によって
るMBSと国債を大量に購入している。これは
高い安全性と流動性を維持するはずであった
CP市場やMMF市場における危機は収まった
が,サブプライムローンの不良債権化が明らか
ものの,住宅ローン市場などマクロ経済は不安
になると,関連する証券化商品は流動性を失
定な状況が続いているとの判断によるものと思
い,したがってMMFでは小さかったはずの
われる。
流動性リスクが顕在化したのである(第1の要
そして2010年に入って緊急危機対策による資
因の変化=MMF投資対象の流動性の低下)。
金供給残高はゼロに近くなり.また制度的にも
こうした中で元本割れするMMFが現れ,
ほとんどが2月初めをもって廃止された18)。こ
ある種の取付けが発生した時,FRBは,伝統
れによって,非伝統的な資金供給の回収という
的な金融政策の枠組みを越えて,MMF市場,
出口戦略の第1段階は終了したと言えよう。
CP市場に介入せざるをえなくなったのであ
2.第2段階の準備
る
'
6
)
。
続いて第2段階となるわけであるが,それは
V・出口戦略の開始
第1段階以上に難しい問題を抱えているように
思われる。
なぜなら,金融市場を通常状態に戻すために
L出口戦略の第1段階
は,ゼロ(0∼0.25%)にまで引き下げられた
2009年に入ると,金融市場は危機的な状況を
FF金利の誘導目標を引き上げること,少なく
脱し,FRBも緊急対策態勢から通常の金融調
とも必要時にはただちにそれが可能な状態を作
節モードへの移行を模索しはじめる。いわゆる
ることが求められるが,常識的にはそれはでき
出口戦略17)である。
ないからである。図表2が示すように預金金融
まず,緊急対策による短期金融市場への資金
機関はおよそ1兆ドルの余剰準備預金を保有し
供給額(図表’の「緊急対策」=図表8)は
ており,これが存在する限り,FF金利がゼロ
2008年12月をピークに減少しはじめ,かわって
近辺を越えて上昇することは原則的にありえな
債券の買切りが増加していく。この変化をもつ
い。FRBは,金利を引き上げる前に,準備預
1
1
5
証券経済研究第73号(2011.3)
金を危機前の水準まで削減しなければならない
金融を引き締める(金利を引き上げる)ことが
のである。
可能なのである。
では,どのようにしてバランスシートを縮小
二つ目の方法としてリバース・レポが挙げら
させるのか。資産を見ると,現在の最大項目は
れている。レポが国債等の債券を一時的に買い
09年以降急増したMBSであり,これを売却す
取る形で資金を貸し出すものであるのに対し
るというのが最もわかりやすい。額が大きいだ
て,リバース・レポはその逆に,債券を担保と
けでなく,フレイディマック等の政府機関が保
して資金を一時的に回収するものである。した
証したものとはいえ,住宅ローンという特定の
がって,債券の売切りオペと同様の資金回収効
民間資産を裏づけに通貨を発行するのは適切で
果をもちつつ,売切りオペとは異なって債券価
はないからである。しかし,その売却が市場に
格に直接影響を与えることはない。ただし,前
与える影響は極めて大きいと思われる。
述のように,FRBの通常の短期の金融調節手
2009年1年間に米国で供給された住宅ローン
段はレポによる資金供給のみであり,日本と異
は総計2兆1,100億ドル,その9割以上にあた
なり,資金回収が実施されることは稀である。
る1兆9,250億ドルが政府機関によって証券化
今回の危機の発生前を見ると20),07年には4回
されている(「日本経済新聞」2010年4月14
行われているもののそれは1日にまとめて実施
日)。一方09年でFRBが買い上げたMBSはお
されており,その前となると04年(実施回数1
よそ1兆1千億ドルであるから,つまり,現在
回)までさかのぼる。そこでFRBは,カウン
の米国住宅市場は半分をFRBに支えられてい
ターパーティとなるプライマリー・ディーラー
ることになる。FRBは,2009年以降も約2兆
と実務上の手続きを確認するため,少額での試
ドルという資産保有(=通貨供給)を維持して
験的取引を行い本格的な実施に備えている。
きたが,その目的は,リーマン・ショック直後
さらに三つ目の政策手段として,準備預金へ
の短期金融市場の混乱への対応から住宅ローン
の定期預金制度(TermDepositFacility)の
市場への支援に変化したと言える。景気の回復
導入が挙げられている。実際に,FRBは09年
が伝えられてきたが,住宅ローンの半年分の売
末にレギュレーション,(準備預金制度に関
却となれば,相当の時間をかけざるをえないで
する規則)の改正を提案,パブリックコメント
あろう。
を受け付けた後,10年4月30日,制度の導入を
そこで,FRBは,以下四つの政策ツールを
正式に決定した。準備預金を保有する銀行が,
用いて,出口戦略の第2弾を実施する方針を立
その一部を定期預金に振り替えると,その部分
てた'9)。
は当該期間,準備預金として計算・利用できな
一つは,準備預金金利の引上げである。米国
くなるため,準備預金の需給を引き締める効果
は2008年10月から,それまで無利子だった準備
がある。そしてバーナンキ議長は,「リバー
預金に金利を付けているが(0.25%),それを
ス・レポと定期預金で,FRBは,速やかに数
引き上げるというものである。準備預金金利が
千億ドルを吸収することが可能となる」と述べ
上昇すれば市場金利も上昇する。そうすれば,
ている(2010年2月10日)。FRBのバランス
FRBはバランスシートを縮小させることなく
シート上の余剰額(危機対策により増加した金
1
1
6
リーマン・ショックとFRB
額)は約1兆ドルであるから,この二つの政策
た。これがいわゆるQE2(Quantitative
手段によって相当部分の吸収が可能になると思
Easing2:量的緩和政策第2弾)である21)。図
われる。
表lにおける10年末の国債残高の増加からも,
4番目の政策手段として保有債券の売切りオ
ペ(満期償還を含む)が挙げられているが,前
その実施を確認することができる。
しかし,こうした国債買入れ政策にはどのよ
述のようにその実施は現実的ではないであろ
うな意味があるのだろうか。10年末時点では,
う。バーナンキ議長は,FRBには売りオペと
短期金融市場に不安定を示す兆候は見られず,
いう選択肢があるとしながらも,「私は,近い
金融機関や市場にさらに流動性を供給する必要
将来,少なくとも引締め政策が実施され,経済
性は小さい。むしろ実質ゼロ金利下での過剰準
が明確に持続的な回復に至るまでは,FRBが
備供給が長期間続けば,市場での取引が減少す
保有する証券を売却することは,現在想定して
るなどマイナスの影響を与えかねない。また,
いない」(2月10日)とし,「バランスシートの
日本における量的緩和政策の経験からしても,
規模と構成をより通常の状態に回復させること
預金金融機関に過剰準備を保有させることが対
は,我々の政策のより長期的な目的である」
企業・家計貸出の拡大につながるとは言えな
(3月25日)と述べている。
い。となると残るメリットは,国債買入れによ
る国債価格の下支え(=長期金利の抑制)とい
Ⅵ.おわりに
うことになろう。しかしそれが実体経済に与え
る効果はまだ明らかではない。
ところが,こうした出口戦略の第2段階の準
備が整ったところで,2010年春,ギリシャ問題
が発生した。ギリシャにおける政権交代後,前
政権下での財政赤字の偽装が公表されたことを
発端に,ギリシャ政府の償還能力が疑問視され
始めたのである。しかもそれが,アイルラン
ド,スペイン,ポルトガルなどにおける不動産
バブルの崩壊,金融不安の再燃,財政赤字の拡
大と重なり,リーマン・ショックに始まる世界
的不況はまだ終わっていないとの見方が急速に
広まった。
米国においても,2年におよぶ超金融緩和政
策によるインフレが懸念されるものの,景気回
復への道筋が明確でないことから,FRBは,
2010年11月3日,翌年6月までの8ヶ月間に
1ケ月約750億ドルのペースで総額6,000億ドル
注
l)FRBが09年3月18日に長期国債の買入れを発表した
際(注21参照).FRBが「異例の措置」に踏み込んだと
いった報道もあったが.やや不正確であるように思われ
る。①10年物を含めた国憤の買入れはFRBの中心的・
通常の通貨供給方法であり,②図表lからも明らかなよ
うに.この時の買入れは.危機対策の縮小による通貨供
給額の減少を防ぐためであり.金額(約3,000低ドル)
も07年から08年にかけての国債保有額の減少を埋める程
度にすぎなかった。
2)日本銀行企画局[2006],11頁。
3)日本銀行企画局[2006]、3頁。
4)日銀はオペについては誤解が多いとして以下のように
述べている。「オペとは何かを説明するとき,「中央銀行
が金触機関等から手形や国債を買うこと(売買するこ
と)」とされることが多い。確かに売買はイメージをつ
かみやすい面がある。しかし.実際には上述の通り.オ
ペ手段には売買と担保付貸付の両方があるうえ,日本で
は.担保付貸付である共通担保資金供給オペが主力のオ
ペ手段となっている。また,海外でも.例えば欧州中央
銀行の主力オペ(MainRefinancingOperation)は,落
札金融機関と各国中央銀行の間の取引は,国によって条
件付売買や有担保貸付など異なる法形式をとる。こうし
たことから.オペとは「中央銀行が金融機関等との間で
の長期国債を新たに買い入れることを発表し
1
1
7
証券経済研究第73号(2011.3)
入札を通じて行う金触資産の売買や資金の貸付けなどの
を集めている。金融当局による保護と規制の対象である
取引』と説明するのがより適当であろう」(日本銀行金
預金金融機関によらない金融仲介(シャドーバンキン
融市場局[2008b]25-26頁.傍点は引用者)。しかし
グ)のウエイトが高まり.にもかかわらずそこへの規制
ながらこの説明は日銀と欧州中央銀行には当てはまる
が十分でなかったことが問題とされている。ただ,そこ
が,本文で述べているようにFRBには当てはまらな
では、銀行以外の金融機関(市場)による資金仲介のす
い。
べて(機関投資家,投資銀行などを含む)が取り上げら
5)FRBの通常時の金融調節については,日本銀行企画
局[2006],BoardofGovemorsoftheFederalRe‐
serveSystem[1997],EuropeanCentralBank[2007]・
FederalBankofNewYork[2007a][2007b][2007c]参
照。
6)FederalReserveBankofNewYork[2008]p,4.
7)FederalReserveBankofNewYork[2008]p,6.
8)日銀は.補完貸付制度について.06年には「資金調達
の安全弁としての役訓を期待されている」と述べている
が(「2005年度の金倣市場調節」2006年5月.21頁),翌
年以降は.「翌日物金利の上限を画する機能を期待され
ている」(「2006年度の金融調節」2007年5月.18頁。翌
年版にも同じ記述がある)としている。
9)日銀は「補完貸付の利用を忌避するような動きは特に
みられないと考えられる」と述べている(「2007年度の
金融調節」2007年5月.19頁)。
10)これは通貨の供給をともなわず国俄の貸出にすぎない
ためFRBのバランスシートには計上されない。しか
し.その残高は吸大時には2.000億ドル近くに達してお
り.窓口貸出やPDCFなどよりも大きい
11)BankfbrlntemationalSettlements[2008c]p、46,
FederalReserveBankofNewYork[2009b]p、2,
FederalReserveBankofNewYork[2009c]p、4.
12)FederalReserveBankofNewYork[2009c]p,7.実
際にPDCFが活用されたのは.(ステイグマが意味を
失った)リーマン・ショック直後のみである。他方,入
札形式をとっていたTSLFは.結果的にPDCFを補う
ものとして利用されたとも言える。FederalReserve
BankofNewYork[2009b]p、9.
13)ただし,MMIFFは股立されたものの,突際には稼動
しないまま09年10月に終了した。また.これら三つの
ファシリテイの他にも.08年11月にTALF(Term
Asset-BackedSecuritiesLoanFacility)が導入されて
いる。これは,カーローン,中小企業向け融資債券等
を原資産とする適格ABSを保有する者(金融機関に限
定されない)に対するノンリコース融資である。また.
FRBはベアスターンズ関連(08年3月).AIG関連(08
年11月)の特別融資も実施しているが.これらについて
は図表9を参照されたい。
14)以下は.岩井・三宅[2008]・三宅[2008],松尾
[2008]に拠る。
15)また米国財務省は,預金保険に類似したMMF版の
保険を導入した。ファンドから,3カ月間で純資産の1
または1.5ベーシスポイントに相当する保険料を受け取
る代わりに.9月18日時点の基準価格を政府が保証する
というもので,MMFの98%以上が参加したとされる。
ただし実際に政府の保証を受けるケースは現れないま
ま.制度は09年9月18日に終了した。
16)この問題は,現在.シャドーバンキング論として注目
1
1
8
れることが多い。機側投資家の成長などの銀行以外の資
金仲介現象は20世紀半ばから指摘されており,今回の金
磯危機を考える上では,やや広すぎる論点であるように
思われる。シャドーバンキング茜については,さしあた
りAdrianandShin[2009]・FinancialCrisislnquiry
Commission[2010]参照。
17)「出口戦略(exitstrategy)」という言葉は,従来,買
収ファンドが対象企業を貿収したあとの戦略(リストラ
クチャリング後に再上場を目指すのか,他のファンドや
企業に転売するのかなど)を指すものであったが,2009
年頃から.金融政策の通常態勢への移行職略を指す言葉
としても頻繁に用いられるようになった。
18)ただし.図表8が示すように2010年末時点でも,ベ
ア・スターンズやAIGへの資本注入分が残っている。
また10年2月に廃止された為替スワップは,同年5月10
日,ギリシヤ危機を受けて再締結された(ただし10年末
時点での残高は750位ドルにとどまる)。
19)以下は.2010年2月10日.3月10日の公聴会に提出さ
れたFRB議長の原稿による。詳細は伊豆[2010]参
照。
20)リーマン・ショック直後の一時期.FRBはリバー
ス・レポを駆使して資金を回収しようとしたが,それ
は,緊急対策による通貨供給丑の急増を不胎化すべく保
有国債を売却したのと同じ目的によるものと思われる。
しかしそれはすぐに意味を失い(通貨供給mを抑制する
必要がなくなったため).09年に入ってからは実施され
ていない。
21)これは.FRBが2009年3月18日に,①政府機関保証
MBSの買い入れ額を7,500億ドル増額し1兆2.500位ド
ルとする,②政府機関債の買い入れ額を1,000低ドル地
額し2.000値ドルとする.③長期国債を新たに3.000世ド
ル買い入れる.と発表したもの(買入れ予定額への到達
とともに2010年初めに終了)をQElとみなし.その第
2弾と呼ばれるようになったものである。
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(久留米大学経済学部教授
・当研究所客員研究員)
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