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実在鉄骨建物の現地破壊実験

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実在鉄骨建物の現地破壊実験
実在鉄骨建物の現地破壊実験
田中 裕之
1C1
B
(2C1) 加力ジャッキ (2C1)
(RG2)
(2C1)
2G3
1C1
1C2
(RG1)
2G3
(2C1)
1C1
1C2
1C2
2G2
2G1
(RG2)
1C1
1C2
2G2
2G1
(RG1)
(RG1)
(RG1)
火打補強材
加力ジャッキ
A
1C1
(2C1)
1
2G3
(RG2)
1C1
(2C1)
3
1C1
(2C1)
2
図 1 2階床梁伏図
反力部分
7760
3600
RSL
1C1
2G3
(RG2)
※()は R 階
4
(2C1)
試験部分
加力ジャッキ
68%
2SL
32%
4160
1. 序
実在鉄骨建物の水平加力実験を行い、
稀に生じる地震
に対して仕上げ材や建具にどのような不具合が生じるの
か、極めて稀に生じる地震に対して柱や梁、接合部など
の構造部材にどの様な損傷が生じるのか、
さらに最終的
に倒壊レベルまで変形させた場合に、
建物がどのような
破壊形式を示すかを調査した。さらに、実大実験では内
ダイヤフラム溶接部が早期に破断すると、
梁フランジの
亀裂を引起こす可能性があることが分かった。
そこで内
ダイヤフラムの溶接不良が、亀裂・破断に及ぼす影響を
明らかにするため、
実在骨組から切り出した柱梁接合部
を用いて実験を行った。また、亀裂・破断は鉄骨造骨組
では、
早期の耐力劣化および骨組の不安定をもたらす大
きな原因の一つと考えられ、亀裂・破断が建物に与える
影響を明らかにすることは、
近年重要とされている性能
設計を行う上でも非常に重要なことである。そこで、実
在建物の水平加力実験に基づき、
梁端の局部座屈と亀裂
を考慮した部材要素モデルを提案し、検証した。
2. 実 大 実 験
2.1
建物概要
2.1 建物は延べ床面積 500m2、第一層階高 4.16m、第二層
階高 3.6m、X 方向 3スパン、Y 方向 1スパンの2階建て
純鉄骨ラーメン構造である。図 1、図 2に骨組の伏図と
軸組図を示す。試験部分は北側のX方向のうち1スパン
で、
中央のスパンを撤去し南側のスパンは反力として利
用した。
2階梁は合成床スラブのデッキプレートが栓溶
接されており、合成梁として機能している。第一層柱脚
はいわゆるピン仕様で、ボックス柱の平板部を欠いて
ベースプレート(PL-19)を溶接し、アンカーボルト(M22)4本で留められている。柱は STKR400、梁は SS400
である。A 通りは柱脚が露出した状態であり、回転剛性
はあまり期待できないが、B通りはベースプレート下面
から500mmの高さに土間コンクリートが打設してあり、
柱脚の固定度がかなり高いことが考えられる。表 1に柱
と梁の断面リスト、表 2に標準引張試験による実測の板
厚と鋼材の機械的性質を示す。
2.2
加力方法
2.2 構造計算書が残ってないため、設計用地震力推定を
行った結果、
設計用層せん断力から屋根面および2階床
レベルに作用する水平力の割合は、32%と 68%になり、
図2に示すように実験ではこの比率で屋根面と2階床レ
ベルに、加力用縦材を介してトーナメント形式で油圧
ジャッキにより、水平力を作用した。実験時の試験骨組
外観を写真 1に示す。加力方法は、建物頂部の水平変位
を建物高さで除した値 R(全体層間変形角)を制御変数
として、3段階にわけて水平加力を行った。第1段階は
R=± 1.0%以下での繰返し(稀に生起する地震)
、第2
GL
加力用縦材
7000
4
3
2
1
6000
6000
図 2 軸組図(B 通り)
表 1 部材断面リスト
符号
断面部材
1C1
1C2
□- 300 300 12
□- 100 100 6
2G1
2G2
2G3
H- 446 199 8 12
H- 496 199 9 14
H- 350 175 7 11
2C1
□- 250 250 9
RG1
RG2
H- 298 149 5.5 8
H- 248 124 5 8
表 2 鋼材の機械的性質
符号
部位
厚
(mm)
1C1
11.38
2G3 フランジ 10.30
ウェブ
6.36
2C1
8.59
RG2 フランジ 7.40
ウェブ
4.50
降伏強さ 引張強さ
(N/mm2) (N/mm2)
390
328
385
337
340
413
482
463
495
464
476
511
段階は R=± 2.0%または± 3.0%以下での繰返し(極め
て稀に生起する地震)
、および第3段階は一方向へ倒壊
までの加力(建物の倒壊時の崩壊形式調査)である。第
1段階では窓、外壁は現状のままとし、建具・仕上げ材
の機能を調査する。
第2段階と第3段階は構造部材以外
はすべて撤去し、
純粋に骨組構造の挙動と損傷を調査す
る。実験は最終的にジャッキのストローク一杯の
R=11.5% まで加力を行った。
2.3
小変位振幅実験の不具合状況
(第1段階)
2.3 小変位振幅実験の不具合状況
小変位振幅実験の不具合状況(
まず、全体層間変形角 R が± 0.5%の時、第一層の開
き窓が開閉困難になった。しかし、除加すると機能は回
復した。第二層の換気窓は一部が開閉困難になった。し
かし、引き違い窓は開閉機能に支障はなかった。次に R
が± 1.0%の時、第二層の換気窓のすべてが開閉困難に
なり、開き窓もすべて開閉不能になった。しかし、引き
違い窓については窓と窓枠に隙間ができるものの開閉機
能は維持された。
41-1
R=±1.5%
2 B4接合部梁下端フランジの亀裂
B4接合部梁下端フランジの亀裂
反力部分
試験部分
写真 2 亀裂の様子
写真 1 試験骨組概観
R=10 %
2 B 3接合部梁下端フランジの破断と
ウェブの亀裂
R=±2.5%
2A4接合部梁下端フランジの破断
写真 3 破断の様子
写真 4 ウェブの亀裂
R=11.5 %
RB3接合部梁下端フランジ近傍の
RB3接合部梁下端フランジ近傍の
鋼管壁破断
鋼管壁破断
R=11.5 %
2A4接合部梁下端フランジの局部座屈
写真 5 鋼管の破断
写真 6 フランジの局部座屈
200
層せん断力 (kN)
150
100
層せん断力 (kN)
50
0
- 50
- 100
- 150
- 200
- 0.02
- 0.01
0
0.01
層間変形角 (r ad.)
(a)A通り
0.02
層せん断力 (kN)
層せん断力 (kN)
100
50
0
- 50
100
0
- 100
0.01
0.02
(b)B通り
200
100
0
- 200
- 0.02
0
0.02
層間変形角 (r ad.)
(a)A通り
0.04
- 0.04
- 0.02
0
0.02
層間変形角 (r ad.)
0.04
(b)B通り
図 4 大変位振幅実験
250
250
200
200
層せん断力 (kN)
0
層間変形角 (r ad.)
- 100
- 200
150
150
100
100
50
0
0
- 0.01
図 3 小変位振幅実験
200
- 0.04
200
150
- 100
- 150
- 200
- 0.02
層せん断力 (kN)
2.4
大変位振幅実験の損傷状況
(第2段階)
2.4 大変位振幅実験の損傷状況
大変位振幅実験の損傷状況(
R=± 1.5%で、写真 2に示すように 2B4(2階床レベ
ルのB通りと4通りの交点)接合部の梁下フランジに亀
裂が見られた。
梁はフランジ辺が柱鋼管の外面に揃うよ
うに柱に対して偏心して接合されており、
亀裂は外壁側
の外縁に発生し、内側へ進展した。一方、上フランジに
はまったく異常が見られなかった。また、2B3接合部で
は、余盛り不足と溶接不良箇所から亀裂が進展した。A
通りのピン仕様の柱脚はべ−スプレートの曲げ変形無し
に、剛体的に回転していることが観察された。一方、B
通り土間コンクリートで埋込み状態の柱脚では、
土間コ
ンクリ−トに肌隙と亀裂が発生した。R=± 2.0%で、A
通りの2階梁下フランジにも亀裂が発生した。A通りの
梁の亀裂がB通りの梁より遅かったのは、柱脚がピン仕
様のため梁端のヒンジ回転角が少し小さかったこと、
梁
フランジの溶接外観も比較的良かったことが挙げられ
る。亀裂の原因として、柱梁接合部の内ダイヤフラムは
片面隅肉溶接で溶接されており、溶接サイズも不十分
で、鋼管フランジを十分繋ぎとめることができなかった
と考えられる。R=± 2.5%で、写真 3に示すように2階
梁のすべての下フランジが破断した。また、荷重の風下
側接合部の梁下フランジは、
破断面が柱と接触して圧縮
応力を伝える際に局部座屈が発生している。屋根面のR
階梁の亀裂は R=±3.0% の時点で発生した。亀裂の箇所
は下フランジであった。
(第3段階)
2.5
一方向破壊実験の崩壊状況
2.5 一方向破壊実験の崩壊状況
一方向破壊実験の崩壊状況(
R=10% の時点で、写真 4に示すように余盛り不足、溶
接不良で早期に破断した2B3の梁ではウェブにも大きな
亀裂が進展した。R=11.5% では、写真 5に示すように柱
鋼管の破断が屋根面の RB3接合部で観察された。また、
写真 6に示すように、水平荷重に対して風下側接合部の
梁下フランジには、A、B 通り共に、大きな局部座屈波
形が生じ、圧縮抵抗の劣化を推測させる。土間コンク
リートで埋め込まれたB通り柱脚では、土間コンクリー
トの破壊が激しく進展した。一方、ピン仕様の A通り柱
脚では、ベースプレートの塑性変形はない状態で、剛体
回転だけが生じる状況になった。従って、ベースプレー
ト直下のモルタルは圧壊し、
引張側アンカーボルトは抜
け出すことになった。
荷重変形関係の実験結果
2.6
2.6 荷重変形関係の実験結果
図 3∼図 5に実験から得られた A 通りと B 通りの第一
層の層せん断力−層間変形角関係を示す。
水平の破線は
一次設計(標準層せん断力係数 C0=0.2)の必要層せん断
力である。
図3からB 通りの水平剛性がA通りより大きいことが
分かるが、これはB通りの柱脚が土間コンクリートの影
響で、固定支持に近い条件だったことが考えられる。一
方、A 通りの柱脚では、ベースプレート直下のモルタル
の充填が不十分であることが観察され、
理想的なピン支
持に近い状態であった。しかし、A 通りの各層の C0=0.2
の時の層間変形角はほぼ 1/200以下であり、耐震設計上
は十分な剛性を保有していると言える。
図 4 では、スリップ形の履歴性状が強く現れている。
A通りでは、ベースプレート直下のモルタルの早期破壊
や2階梁の亀裂、B 通りでは、2階梁の下フランジが溶
接不良のため早期に亀裂が発生したこと、
柱脚が土間コ
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14
層間変形角 (r ad.)
(a)A通り
50
0
0
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14
層間変形角 (r ad.)
(b)B通り
図 5 一方向破壊実験
ンクリートの影響で第一層の柱が片持ち柱の効果を発揮
したため、土間コンクリートと柱鋼管に接触・乖離が生
じたことが原因と考えられる。
図 5における A 通りの実験の最大耐力は、一次設計用
層せん断力に対して3倍程度であり、
設計上は十分と考
えられる。B 通りでは、固定支持の柱脚の影響で A 通り
に比べて耐力が 50%程度高くなっている。A、B 通り共
に耐力の劣化は緩慢で、
耐力は層間変形角が10%を超え
た時点でも、最大耐力の 80%以上を保持している。
41-2
250
200
41-3
340
300
340
200
100
340
250
2PLs-12
3. 接 合 部 実 験
既存梁フランジ A
実験概要
3.1 3.1
既存梁フランジ A
試験体は、図 6、図7に示すような接合部試験体であ
り、両梁フランジに能力 2000kNの万能試験機によって
単調な引張荷重を載荷する。
図において柱鋼管に対し上
11
210
部に溶接されている梁は、
実在骨組から切り出したまま
の状態で、内ダイヤフラムは片面隅肉溶接であった。ま
12
た、柱鋼管に対し下部に溶接されている梁は、既存梁の
14
反対側鋼管面に、
既存梁と同等の寸法の梁を新たに溶接
したものであり、内ダイヤフラムは両面隅肉溶接とし
150
303
た。既存の梁を既存梁フランジ A、新たに溶接した梁を
新設梁フランジBと呼ぶ。試験体の鋼管はSTKR400、梁
新設梁フランジ B
新設梁フランジ B
鋼板はSS400であり、梁フランジは降伏強さ328N/mm2、
引張強さ 463N/mm2 の鋼材である。
172
3.2
既存梁接合部実験
3.2 既存梁接合部実験
実験開始後、荷重580kN時に既存梁フランジA側の内
図 6 試験体図
図 7 試験体立面図
ダイヤフラム隅肉溶接に破断が発生した。その後、引張
荷重は急激に低下したが、再び上昇を始め、荷重 441kN
の時点で既存梁フランジ A の溶接部(柱鋼管偶角部で、
外壁側フランジ縁)に亀裂が発生した。内ダイヤフラム
溶接部が破断することで、
柱鋼管壁が膨らんで梁フラン
ジ外縁に歪が集中し、
梁溶接部の早期亀裂を誘発したと
考えられる。新設梁フランジBに関しては内ダイヤフラ
写真 7 隅肉溶接の破断
写真 8 梁フランジの亀裂
ム、梁フランジと鋼管の溶接部共に損傷はなかった。内
ダイヤフラムの隅肉溶接の破断の様子を写真 7に、梁フ
ランジ溶接部の亀裂の様子を写真 8 に示す。
σ
引張側
3.3
補修梁接合部実験
3.3 補修梁接合部実験
f
t
既存梁接合部実験に引き続き、
実験で破断した内ダイ
E
ヤフラムを両面隅肉溶接とし、
亀裂の生じた既存梁フラ
ε
pt
ε
ンジAを切り取り、同寸法の梁フランジを完全溶け込み
溶接として再溶接し、補修フランジCとして再度引張荷
圧縮側
重を載荷した。
実験開始後、荷重852kNの時点で補修梁フランジC母
図 8 亀裂を考慮した
材に破断が生じた。破断は延性的であり、梁フランジ母
スケルトンモデル
写真
9 梁フランジ母材の破断
材が伸びきって破断が生じたものと考えられる。
これに
破断応力(実験結果の破断時たわみ角に合わせて設定)
対し、内ダイヤフラム、鋼管、および梁フランジ溶接部
で急速に劣化を生じ、
圧縮に対しては弾性的に挙動する
に損傷はなかった。
梁フランジ母材の破断の様子を写真
圧縮側の劣化の程度は立ち上がり剛
9に示す。
写真より梁フランジの絞り変形も観察される。 としたものである。
性と最大応力時歪の組合せで決まるが、
数値解析の安定
4. 解 析 概 要
性を保つ範囲で最急の劣化とした。
また、
繰返し履歴で
解析手法
4.1
4.1 は、歪が圧縮のとき原点からの弾性直線に復帰すること
解析方法は、
ファイバーモデルを用いた梁柱要素の一
とし、梁フランジの接触・乖離を考慮した。
次元有限要素解析であり、詳細は本文に譲る。
骨組解析モデルは実大実験の骨組を基にしており、
加
4.2
解析モデル
4.2 1)
力位置も実験と同様に、
2階床レベルと屋根レベルの水
応力歪関係については、鋼材は Menegotto-Pinto関数
平力が 6.8:3.2になるように仮定した。柱と梁は塑性ヒ
を用い、秋山等 2)によるスケルトンカーブを履歴曲線と
ンジ領域として、
断面せいと同じ長さの柱梁要素を設け
して消費していく履歴則を適用している。
コンクリート
ている。断面分割についてはフランジ部分を1、ウェブ
の応力歪関係は Popovics 関数 3)を用い、除荷曲線は弾性
部分を6とした。2階梁は合成梁と考え、
「鉄筋コンク
勾配の50%の勾配を持つ直線とする。
局部座屈は山田等
4)
リート構造計算規準」
に従う有効幅の無筋コンクリート
の提案にしたがって圧縮側のスケルトンカーブに局部
スラブを考慮している。ベースプレート下部は、アン
座屈の影響を考慮している。
カーボルト(4本)を鉄筋とし、ベースプレート面積を
亀裂を考慮する解析を行う場合、梁材端の短領域(梁
コンクリート断面とするRC柱にモデル化した。また、実
せいの 1/10)に亀裂要素を挿入することで表現してい
験における B 通り柱脚は土間コンクリートが高さ
る。この要素の断面の応力ファイバーには、図 8に示す
500mmまで柱を拘束しており、その影響を表すため、柱
ような亀裂を考慮した応力歪関係モデルを用いる。
つま
り、コンクリートに利用されるPopovics関数 3)を用いて、 要素に水平方向に無筋コンクリート(材長200mm)部材
を配置し固定度を高くした。
応力歪関係のスケルトン曲線を表現し、
引張に対しては
41-4
層せん断力 kN
層せん断力 kN
層せん断力 kN
層せん断力 kN
層せん断力 kN
層せん断力 kN
層せん断力 kN
層せん断力 kN
層せん断力 kN
層せん断力 kN
200
300
5. 静的漸増載荷解析
150
200
実在鉄骨骨組の水平変形挙動を予測するため、
局部座 100
100
50
屈と亀裂を考慮しない、局部座屈を考慮する、局部座屈
0
0
- 50
- 100
と亀裂を考慮する、以上の3つに解析のモデルを区分 - 100
- 200
- 150
し、解析を行った。 - 300
- 200
- 0.03 - 0.02 - 0.01
0
0.01 0.02 0.03
- 0.03 - 0.02 - 0.01 0 0.01 0.02 0.03
5.1
繰返し載荷解析
5.1 繰返し載荷解析
層間変形
層間変形
(a)実験結果
図 9 に A 通り第一層の繰返し載荷における実験結果、
400
解析結果を示す。
図(a)実験結果はかなり強いスリップ形 200
200
の履歴性状を示しているが、
図(b)の局部座屈と亀裂を考 100
0
慮しない解析では、この性状を表現できていない。図(d)
0
の局部座屈と亀裂を考慮した解析によれば、実験耐力、 - 100
- 200
および履歴特性をほぼ予測できている。
図(c)の局部座屈 - 200
- 400
- 0.03 - 0.02 - 0.01 0
0.01 0.02 0.03
- 0.03 - 0.02 - 0.01
0
0.01 0.02
0.03
層間変形
層間変形
を考慮した解析は、紡錘形の履歴曲線を示しているの
(b)局部座屈と亀裂を考慮しない解析結果
で、スリップ形状に最も大きな影響を与えるのは、梁フ
ランジ端の亀裂・破断だと言える。全体的に実験結果に 200
400
比べて解析結果はスリップ形状が弱い傾向にあるが、
こ 100
200
れは解析では柱脚のベースプレート直下のモルタルが十
0
0
分効くことを前提としてモデル化しており、
実際にはモ - 100
- 200
ルタルの充填が不十分であったために、
柱脚の抵抗を過 - 200
- 400
- 0.03 - 0.02 - 0.01 0 0.01 0.02 0.03
- 0.03 - 0.02 - 0.01
0
0.01 0.02 0.03
層間変形
層間変形
大評価したと考えられる。モルタルの充填性の問題は、
(c)局部座屈を考慮した解析結果
実験結果における立ち上がり剛性が、
解析結果の立ち上
300
がり剛性よりかなり小さいことからも裏付けられる。 200
150
200
図10にB通り第一層の繰返し載荷における実験結果、 100
100
解析結果を示す。図(a)の実験結果は柱脚が土間コンク 500
0
- 100
リートに埋込まれているいるため、A通りと比較しても - 50
- 100
- 200
耐力も履歴曲線の膨らみも大きい。
これは図(d)の局部座 - 150
- 300
- 200 - 0.03 - 0.02 - 0.01 0 0.01 0.02 0.03
- 0.03 - 0.02 - 0.01
0
0.01 0.02 0.03
屈と亀裂を考慮した解析によってほぼその特徴が捉えら
層間変形
層間変形
(d)局部座屈と亀裂を考慮した解析結果
れている。しかし、土間コンクリートのモデル化がやや
過大だったようで、耐力は高くなっている。立ち上がり
図 9 A 通り第一層(繰返し) 図 10 B 通り第一層(繰返し)
剛性は実験結果と解析結果とは良く一致している。ス
考慮無し
考慮無し
局部座屈考慮
局部座屈,亀裂考慮
リップ形の履歴特性は、
実験結果と図(d)の局部座屈と亀 350 局部座屈考慮
局部座屈,亀裂考慮
実験結果
実験結果
500
300
裂を考慮した解析結果が同様な特徴を示すこと、
図(b)や
400
250
図(c)の亀裂を考慮しない解析ではスリップ形特性が顕著 200
300
でないことを合わせて考えると、
梁フランジ端の亀裂が 150
200
100
主な原因であると言える。
100
50
5.2
一方向載荷解析
5.2 一方向載荷解析
0
0
0
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
0
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12
層間変形角
層間変形角
図 11、図 12にそれぞれ A 通り第一層、B 通り第一層
図
11
A
通り第一層(一方向)
図
12
B
通り第一層(一方向)
の一方向載荷における実験結果と解析結果の比較を示
す。ただし、実験では繰返し加力を経験した後に一方向
溶接部の早期亀裂を誘発することが分かった。一方、十
載荷が行われたが、
解析では初期段階から一方向に加力
分なサイズの両面隅肉溶接で内ダイヤフラムを溶接する
した。図から、局部座屈や亀裂を考慮すると耐力が大き
と、梁フランジ母材が十分に塑性伸びを示し、破断し
く低下し、実験結果に近づくことがわかる。A通りでは、 た。従って梁溶接部の亀裂・破断を防ぐには、内ダイヤ
局部座屈と亀裂を両方考慮した解析結果と実験結果は良
フラムの溶接を十分にする必要があることが分かった。
く一致していることが分かる。これに対して B 通りで
局部座屈と亀裂を考慮した骨組解析では、
解析は梁の
は、局部座屈と亀裂を両方考慮した解析結果は実験結果
下フランジの早期破断が示すスリップ形の履歴性状や、
の耐力を過大評価している。
これは土間コンクリートの
立ち上がり剛性、
耐力劣化後の挙動など実験挙動を概ね
モデル化の不十分さに起因するものである。
しかし耐力
予測できた。
劣化後の挙動に関しては、
実験結果と同じ勾配を示し良
参考文献
く一致している。
1) Menegotto, M and Pinto P E: Method of Analysis for Cyclically Liaded
RC Frames Including Changes in Geometory and Non-Elastic Behaviour
6. 結 論
of Elements under Combined Nomal Force and Bending, IABSE Con 実大実験ではベースプレート直下のモルタル充填の不
gress Reports of the Working Commission Band13, 1973.
十分さ、梁フランジの余盛り不足と溶接不良、内ダイヤ
2) 加藤勉、秋山宏、山内奏之:鋼材の応力 - ひずみ曲線に関する実
フラムの溶接の不十分さなどが骨組の剛性と耐力劣化に
験則、大会学術講演梗概集、937-938,1973.10.
3) Popovics,S.: A Numerical Approach to Complete Stress-Strain Curve
大きく影響することが分かった。
of Concrete, Cement and Concrete Research, Vol.3, pp.583-599, 1973.
接合部実験では内ダイヤフラムが不十分な片面隅肉溶
4) 山田哲、秋山宏、桑村仁:局部座屈を伴う H 形断面鋼部材の劣
接であると、内ダイヤフラム溶接部は早期に破断し、梁
化挙動、日本建築学会論文報告集、第 454 号 ,179-186, 1993.12.
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