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「非鉄金属技術分野」における標準化戦略 日本工業標準調査会 標準

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「非鉄金属技術分野」における標準化戦略 日本工業標準調査会 標準
「非鉄金属技術分野」における標準化戦略
日本工業標準調査会 標準部会
非鉄金属技術専門委員会
【日本工業標準調査会 標準部会 非鉄金属技術専門委員会 構成表】
氏 名 勤 務 先 及 び 役 職 名
(委員会長) 神 尾 彰 彦 東京工業大学 名誉教授
(委 員) 藍 田 勲 株式会社神戸製鋼所 溶接カンパニー執行副社長
有 川 彰 一 財団法人船舶標準協会 専務理事
一 瀬 明 住友金属鉱山株式会社 技術本部副本部長
開 沼 章 夫 社団法人軽金属学会 理事
柿 本 明 廣 日本伸銅協会 規格委員会委員長
齋 藤 鐵 哉 独立行政法人物質・材料研究機構 理事
酒 井 勝 之 社団法人日本アルミニウム協会 産学懇談会議長
西 村 尚 東京都立大学工学部機械工学科 教授
平 山 晴 彦 日本鉱業協会 技術部長
村 上 陽 一 社団法人日本電機工業会 技術部長
柳 沢 健 史 古河電気工業株式会社 裸線事業部主査
山田 桑太郎 社団法人日本鉄道車輌工業会 常務理事
(五十音順、敬称略)
目 次
1. 標準化対象分野及び主なデジュール規格制定の状況
・・・・・1
1.1.標準化対象分野
・・・・・1
1.2.JI
S制定の状況
・・・・・1
1.2.1.鉱山関連
・・・・・1
1.2.2.非鉄金属材料関連
・・・・・1
1.2.3.金属表面処理加工技術
・・・・・2
1.2.4.金属系新素材
・・・・・2
1.3.JI
Sと強制法規、調達基準との関係
・・・・・3
1.4.国際規格の整備動向
・・・・・3
1.4.1.当該分野に該当するTC及び審議団体
・・・・・3
1.4.2.主なTCにおける動向
・・・・・4
(1)I
SO/TC18 (2)I
SO/TC26 (3)I
SO/TC79 (4)I
EC/TC90 ・・・・・4
2.デファクト標準形成の動向
2.1.主なデファクト標準の現状
2.1.1.超電導分野におけるデファクト標準の現状
(1) VAMAS (2)I
CFA (3)I
TER (4)高温超電導導体関連
・・・・・6
・・・・・6
・・・・・6
・・・・・6
2.2.デファクト標準のデジュール標準への影響
・・・・・7
2.2.1.超電導分野におけるデファクト標準の影響
・・・・・7
3.標準化・国際標準化活動の問題点、課題及びその対応策
・・・・・8
3.1.全般について
・・・・・8
3.1.1.標準化活動における体制
・・・・・8
3.1.2.循環型社会の構築
・・・・・9
3.1.3.国際整合化・国際規格適正化について
・・・・・9
3.1.4.知的基盤整備の成果利用
・・・・・9
3.2.個別分野について
・・・・・10
3.2.1.国内審議団体とJI
S原案作成団体の不一致
・・・・・10
3.2.2.給水装置における鉛浸出基準の強化
・・・・・11
3.2.3.純チタンの試験評価方法
・・・・・11
3.2.4.新素材分野の体制整備
・・・・・11
1.標準化対象分野及び主なデジュール規格制定の状況
1.1.標準化対象分野
当該技術専門委員会では、非鉄金属材料全般、金属表面処理加工技術及び金属系
新素材の標準化に関することを対象分野とする。
1.2.JI
S制定の状況
本専門委員会では、前述の標準化対象分野に該当するJI
S制定を実施している。非
鉄金属全般(鉱山関連・非鉄金属材料関連)、金属表面処理加工技術及び金属系新素
材の各分野における主な規格は以下のとおりであり、総数は427規格である。
1.2.1.鉱山関連(47 規格)
非鉄金属に関連する鉱産物を対象にJI
Sを制定している。基本規格として用語や記号等、
方法規格としてサンプリング、試料調製及び水分決定方法や定量方法を制定する。なお、
製品規格は制定されていない。
①主な基本規格(
3 規格)
○用語規格(M0102:鉱山用語)
○記号規格(M0101:鉱山記号)
○基準規格(M1001:鉱量計算基準)
②主な方法規格(
44 規格)
○試料調製方法等規格(M8101:非鉄金属鉱石のサンプリング、試料調製及び水分
決定方法 他)
○試験方法規格(M0202:坑水・廃水試験方法 他)
○定量方法規格(M8126:鉱石中のニッケル定量方法 他)
1.2.2.非鉄金属材料関連(284 規格)
金属種類及び製品形状ごとによるJI
S制定を基本に、基本規格として用語や記号等、方
法規格として定量方法や分析方法等を、製品規格としては地金、鋳物及び展伸材等のJI
S
を制定しており、非鉄金属分野の規格は大部分がここに該当する。また、必要に応じ非鉄
金属材料全般に対応したJI
Sも制定している。
①主な基本規格(
6 規格)
○用語規格(M0500:伸銅品用語 他)
○記号規格(H0001:アルミニウム、マグネシウム及びそれらの合金−質別記号)
○基準規格(H2109:銅及び銅合金くず分類基準 他)
1
②主な方法規格(
178 規格)
○試験方法規格(H0501:伸銅品結晶粒度試験方法 他)
○検査方法規格(H0321:非鉄金属材料の検査通則 他)
○ 性能測定方法規格(H0505:非鉄金属材料の体積抵抗率及び導電率測定方法
他)
○分析・定量方法規格(H1303:アルミニウム地金の発光分光分析方法 他)
③主な製品規格(
100 規格)
○原材料(H2102:アルミニウム地金 他)
○展伸材(H3100:銅及び銅合金の板及び条 他)
○鋳物及びダイカスト(H5102:銅及び銅合金鋳物 他)
○二次製品(E2101:みぞ付き硬銅トロリ線 他)
1.2.3.金属表面処理加工技術(67 規格)
防食等を目的として金属表面に施される加工技術を対象としている。基本規格として、用
語や表示方法等を、方法規格として加工技術や試験方法等のJI
Sを制定している。
なお、金属表面処理の加工技術を施された製品規格は、当該分野では制定されていない。
①主な基本規格(
10 規格)
○用語規格(H0201:アルミニウム表面処理用語 他)
○表示方法規格(H0404:電気めっきの記号による表示方法 他)
○作業標準規格(H9124:溶融亜鉛めっき作業指針 他)
②主な加工技術規格(
25 規格)
○加工技術規格(H8615:工業用クロムめっき 他)
③試験方法規格(32 規格)
○性能試験方法規格(H8401:溶射皮膜の厚さ試験方法 他)
1.2.4.
金属系新素材(29 規格)
新技術分野である金属系新素材の技術開発の加速に効果をもたせるため、基本規格とし
て用語を、また、金属系新素材の試験方法についてのJI
S制定を行う。
①主な基本規格(
7 規格)
○用語規格(H7001:形状記憶合金用語
H7005:超電導関連用語 他)
②主な方法規格(
22 規格)
○試験方法規格(H7101:形状記憶合金の変態点測定方法
H7301:超電導体の試験方法−直流臨界電流の試験方法−
銅安定化ニオブ・チタン合金複合超電導線 他)
2
1.3.JI
Sと強制法規、調達基準との関係
当該分野のJI
S規格は、強制法規の技術基準等を定めた政令・省令・告示における解
釈基準例として、展伸材等の製品規格を中心に、材料の品質水準として広く引用されて
いる。
<JI
Sの強制法規等における活用例>
○ガス事業法関連の「ガス工作物の技術上の基準の細目を定める告示」等では、銅、ア
ルミニウム、鉛、ニッケルなどの展伸材や鋳物の規格を主要材料として引用している。
○労働安全衛生法の「圧力容器構造規格」、「小型ボイラー及び小型圧力容器構造規
格」、「ボイラー構造規格」、「ゴンドラ構造規格」では、銅、アルミニウム、鉛、ニッケル
などの展伸材や鋳物の規格を主要材料として引用している。
○高圧ガス保安法の「特定設備検査規則」、「製造施設の位置、構造及び設備並びに製
造の方法等に関する技術基準の細目を定める告示」、「容器保安規則」では、銅、アル
ミニウム、鉛、ニッケルなどの展伸材や鋳物の規格を主要材料に、また、試験方法や
定義について引用している。
○電気事業法「発電用水力設備に関する技術基準の細目を定める告示」、「電気設備に
関する技術基準の細目を定める告示」、「電気工作物の溶接に関する技術基準を定め
る省令」では、銅、アルミニウム、鉛、ニッケルなどの展伸材や鋳物の規格を主要材料
に、また、主要材料の引張強さについて引用している。
○その他、薬事法、電気用品安全法、消防法、農林物資の規格化及び品質表示の適正
化に関する法律、液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律、建築
基準法関連の政令、省令、告示等に主要材料などとして当該分野の製品規格等が引
用される。
1.4.国際規格の整備動向
非鉄金属分野の国際標準化については、金属別に ISO/TC が設立されて審議が行
われている。非鉄金属関連国内団体は所掌範囲が明確に区分されており、それぞれに
対応した団体が国際標準化活動及び国内審議を行う。(一部のSCではあるが、国内審
議団体が対応するJI
Sの原案作成団体と不一致がある)
1.4.1.当該分野に該当するTC及び審議団体
ISO/TC18:Zinc and zinc alloys (亜鉛及び亜鉛合金):日本鉱業協会
TC26:Copper and copper alloys (銅及び銅合金):日本伸銅協会
TC79:Light metals and their alloys (軽金属及び同合金):(社)日本アルミニウム協会
SC2:Anodized aluminium (陽極酸化アルミニウム):軽金属製品協会
3
TC107:Metallic and other inorganic coatings
(金属及び無機質皮膜):(社)表面技術協会
TC119:Powder metallurgy (粉末冶金材料及び製品):日本粉末冶金工業会
TC129:Aluminium ores – STAND-BY
(アルミニウム鉱石及び鉱物:休眠中):(社)日本アルミニウム協会
TC155:Nickel and nickel alloys (ニッケル及びニッケル合金):ニッケル製品協会
:日本鉱業協会
SC2:Wrought and cast nickel and nickel alloys
(ニッケル、ニッケル合金展伸材及び鋳物):ニッケル製品協会
:日本伸銅協会
SC3:Analysis of nickel, ferronickel and nickel alloys
(ニッケルの分析方法):ニッケル製品協会、日本伸銅協会
SC5:Ferronickel (フェロニッケル):ニッケル製品協会、日本鉱業協会
TC174:Jewellery (ジュエリー):(社)日本ジュエリー協会
TC183:Copper, lead and zinc ores and concentrate
(銅、鉛及び亜鉛の鉱石並びに精鉱):日本鉱業協会
IEC/TC90:Superconductivity
(超電導):(財)国際超電導産業技術研究センター内 IEC/TC90 超電導委員会
1.4.2.主なTCにおける動向
(1)I
SO/TC18
1996年、約20年間スタンドバイ状態となっていたTC18は、アメリカからの要請で国際
規格と現状の乖離が大きくなった国際規格改正へむけ活動を再開(幹事国:ベルギー)。S
Cを再開又は新設し、製品規格及び分析規格の審議を開催している。また、当該TCには不
適切な国際規格があるため、国際規格適正化事業を委託している。
なお、現在、韓国からの提案でTC18/SC4(亜鉛製品)を新設する動きがある。
(2) I
SO/TC26
約10年間活動を行っておらず、TC26の規格はほとんど使われていなかった。1999年
10月に行われた国際会議でTC26の機構を変更し各SCを解散、現状の課題を抽出し検
討するAHGを設立した。制定されていた製品規格はすべて廃止され、AHG のもとで銅及
び銅合金分野の国際規格のあり方を策定することが決定しており、日本としても積極的に
活動に参加していく。
(3) I
SO/TC79
当該TCの所掌は、軽金属(アルミニウム、マグネシウム及びチタン)であるが、チタン関係
のSCは設立されていない。このため、SC設立を日本から提案していくことを検討している
(国内での対応団体:(社)日本チタン協会)。なお、アルミニウム及びマグネシウム関連で
は大きな問題はない。
4
TC79/SC4(アルミニウム地金)は日本が幹事国を務める。
(4) I
EC/TC90(超電導)
超電導材料は、現在、医療診断装置、分析装置、超電導加速器等に実用化されているが、
さらに電力ケーブル、変圧器等へ適用すべく各国において研究開発が行われている。
TC90においては、新技術の普及促進に寄与できる国際規格の制定に向けた活動が行
われて、日本を含め11カ国がPメンバーとして積極的に活動に参加する。TCの幹事国と1
1のWGのうち、6つのWGの主査を日本が務めており、積極的な活動を行っている。現在、
用語規格1規格、試験方法5規格が制定されている。
5
2. デファクト標準形成の動向
2.1.主なデファクト標準の現状
非鉄金属材料及び表面処理加工技術は、成熟産業であり技術革新のスピードよりも
安定した素材・技術の供給が要求される分野である。このため、デファクト標準よりも、J
I
S、I
S、ASTMといったデジュール標準が中心となり、デジュール標準に取り上げるほ
どの汎用性が少ない標準については、業界内で団体規格として制定され、JI
Sを補完す
るという形で活用されている現状にある。新素材分野は技術開発期であり、超電導分野
を中心として特殊な用途を目的としたデファクト標準の作成が一部にみられる。
2.1.1.
超電導分野におけるデファクト標準の現状
(1) VAMAS (Versailles Project on Advanced Materials and Standards:新材料と
標準に関するベルサイユプロジェクト)
VAMASは、新材料(ファインセラミックス、高分子材料、生体材料、超電導材料、表面・
薄膜材料技術等)の使用基準、仕様等を策定するために必要な技術的基礎を提供する事
を目的としている。超電導材料を検討するTWA16(Technical Working Area:技術作業
部会)は、日本が事務局と議長国を務める。
現在、ビスマス系銀シース線材の臨界電流試験方法、ビスマス系酸化物線材の臨界電
流の曲げ特性のガイドラインの作成が実施されている。
(2) I
CFA(International Committee for Future Accelerator:加速器将来計画国際委
員会)
I
CFAの組織は、日本、CERN(欧州合同原子核研究機関)、米国、ロシア、カナダ、中国
等の主要加速器の建設に関与している研究所長クラス15名によって構成され、議長は日
本の高エネルギー加速器研究機構長が務める。
デファクト標準として、加速器用超電導マグネットに使われる素線のパラメーターである①
臨界電流特性、②寸法精度、③機械的特性、④磁化特性、⑤銅比、⑥RRR、⑦交流損失
及び⑧素線間接触抵抗について規定している。
(3) I
TER (International Thermonuclear Experimental Reactor:国際熱核融合実験
炉)
I
TERの組織は、日本、ロシア、ヨーロッパ連合及び米国の4極の核融合研究機関によっ
て構成されており、4極の国際協力によって運営されている。
デファクト標準として、I
TERを構成する各種超電導体の設計基準書DDD(Design
Description Document)が作成されている。記載されている標準化項目として、適用範囲、
供資材の調整、臨界電流試験、臨界温度試験、RRR試験、磁化特性、クロムめっき、ツイ
ストピッチ、銅比試験、寸法などが挙げられている。
6
(4)高温超電導導体関連
① CIGRE (Conference International des Grands Reseaux Electriques a hatue
tension:国際大電力システム会議)
CI
GREは民間の非営利団体で、世界各国エンジニアの技術交流の活性化を図り多
様性に富んだ送変電に関する技術的問題を検討する目的で、1921年にフランスで
設立された。会員数は760団体50機関、個人会員約3,300人(1996年現在)にの
ぼり、全世界において国、電力会社、メーカーという立場を超えて送変電技術の発展
に貢献している。
CI
GREは本来発電及び送変電に関する電力機器の新規格の策定・推進する機関
であり、現在、超電導機器関連のケーブル技術を扱うSCにWGを設置し、第一段階と
して機器の仕様書に記述すべき項目の整理を開始した。
② NEDO (New Energy and Industrial Technology Development Organization:
新エネルギー・産業技術総合開発機構)超電導技術開発委員会
NEDOは、石油代替エネルギーの開発、産業分野における技術開発等を推進する
特殊法人である。
現在NEDOが実施している超電導技術開発プロジェクトの評価基準として通電特性
試験、デバイス機能試験、交流損失試験、安定性試験など係わるローカル規格の作
成作業がスタートしている。
2.2.デファクト標準のデジュール標準への影響
先に述べたように、当該分野のうち非鉄金属材料・表面加工技術分野はデジュール標
準を中心とした活動が実施され、デファクト標準が形成されにくい。また、業界内での団
体規格は、JI
Sを補完する形として位置づけられている。新素材分野におけるデファクト
標準はデジュール標準の整備活動を全面的に支援する体制にある等の理由から、当該
分野におけるデファクト標準がデジュール標準に与える影響は非常に小さいといえる。
2.2.1.
超電導分野におけるデファクト標準の影響
超電導分野のデファクトは、I
EC/TC90との人事交流及び技術交流により密接な関わり
がある。特にI
EC/TC90の国内委員会においては、各デファクト作成機関から最新情報
が提供され、新規業務事項の選定、ワーキングドラフト作成等に大きく貢献している。なお、
I
EC/TC90とVAMAS/TWA16とはリエゾン関係を結んでいる。
I
EC/TC90で作成された国際規格が各国の国内委員会において各国内規格原案とし
て提案され、各国内規格として制定されている。日本の場合、国際規格発行とほぼ同時期
にJI
Sが制定されるように心掛けている。このように超電導分野においてはデジュールとデ
ファクトとは三位一体的な関係であるといえる。
7
3.標準化・国際標準化活動の問題点、課題及びその対応策
3.1.全般について
非鉄金属分野の標準化活動を効率的に遂行するためには、関係者が密接な連携を
図り、国内外における標準化課題やニーズに迅速に対応することが必要である。このた
め、当該分野における問題点や今後の課題を抽出し、その対応のあり方を具体的に整
理する。
3.1.1.
標準化活動における体制
【論点】
デファクト標準及びデジュール標準の国内外の動向を的確に把握し、これをふまえた標準
化を戦略的に実施することが必要となってきている。国内・国際標準化活動をどのように捉
え、その体制について官民の役割をどのように位置づけるかを検討する。また、標準化に対
する産業界の意識が高いものであるとは言いがたいが、産業界の意識向上を促す必要が
ある。
【今後の対応策】
国内外における標準化活動は、市場への進出を念頭においた標準化が必要となる場合
があり、企業活動の一環として産業界が主体的に取り組むべきものである。このため、国内
外を問わずその活動の主体を民間に移行していく。国内標準にあっては12条提案を積極
的に活用していくことで、産業界の現状や動向を的確かつ迅速に標準化し、JI
Sの規定内
容の見直し等のメンテナンスについても、同様にその主体を民間に移行することで、現状を
反映させた規格作りを行う。国際標準化活動の場合には、世界市場進出を念頭においた標
準化の必要性が特に強く、企業戦略のツールとして産業界が主体となり積極的な標準化活
動を行っていくことが重要である。標準化活動を円滑に推進していくため、国としては産業界
が主体的に取り組めるように標準化体制の強化を促し、関連業界の密な連携を図ることに
より積極的な活動を推進できるような環境作りを行う必要がある。
民間だけでは積極的な標準化が図れない公共財的な規格や新技術分野等については、
従来どおり国が主体となり標準化活動を行う必要がある。具体的には、公共財的な役割を
果たす試験評価方法等の標準化を目指した研究開発を積極的に実施するとともに、標準化
による技術の普及効果を一層活かし、新技術を採用した規格の制定・改正を積極的に検討
する。この際、研究開発成果の効率的普及を確保するため、標準化と研究開発を一体的に
推進していくことが重要となってくる。その観点から、迅速な普及の重要性が認められる技
術については、標準化までをも明確に意識した研究開発を実施する。標準化体制の強化を
促し、標準化活動を原則として民間主体で活動していくことにより、ひいては、民間における
標準化活動に対する意識向上を図る。
8
3.1.2.
循環型社会の構築
【論点】
21世紀に向けた標準化課題検討特別委員会報告にあったとおり、現在、環境保護・資源
循環に資する標準化ニーズが高まっている。国土の制約から資源の多くを輸入に依存して
いる我が国で素材の安定供給を行い、また、良好な環境を維持していくことが重要な課題と
なっている。当該分野でも環境側面を導入し循環型社会構築に資するJI
Sの策定を検討す
る必要があると考えられる。
【今後の対応策】
リサイクル関連の製品規格のみならず、それらの品質確保を図る上で必要な試験方法規
格や、多数の関係者間で共通の認識を促す基本規格の導入を検討していく。また、リサイク
ルにおける分別作業をより効率化するため、製品に使用されている非鉄金属材料に、分別
のための材料記号を表示するよう検討する。製品における再生素材の使用率の表示や、こ
れらの要否について非鉄金属材料のうち主要素材であるアルミニウム分野を中心として検
討していく。また、近年ニーズの高いマグネシウム分野にあっては、マグネシウムくずの分
類基準といった基本規格の制定等を検討していく。
3.1.3.
国際整合化・国際規格適正化について
【論点】
貿易障壁を軽減する観点から、国際規格と整合した国内規格の活用が重要な課題となっ
てきている。JI
S規格の制定・改正時において国際規格の規定を採用し、より一層の整合化
を図るとともに、実情を反映していない国際規格については、国際標準化機関に対する規
格改正への働きかけを推進する必要がある。
【今後の対応策】
既に国際標準が成形されている場合には、国際標準を国内標準に採用することを原則と
した国内標準化活動を実施する。適正化の必要がある場合には、国際会議へ積極的に参
加するとともに、日本と主張を同じくする国々と強調し連携をもち、国際規格の改正提案を
行っていく。特に環境・安全に関連する標準化は、EU等において、実質的な貿易障壁とな
ることが危惧されるので、我が国企業の利益確保の観点からも、我が国が率先して検討・
策定したJI
Sの内容が、実質的にI
SO規格に取り入れられるように、積極的な働きかけを行
う。また、積極的な国際標準化活動を推進していくにあたり、現在I
SOの参加地位がOメン
バーであるTCについては、参加地位をPメンバーヘと変更することを必要に応じて検討する。
適正化等の国際標準化活動を行う場合、国としては国際規格作成のルール改善提案や
産業界の取り組みに対する予算措置等による支援を検討していく必要があり、官民一体と
なった活動を推進していくことが必要である。
3.1.4.
知的基盤整備の成果利用
【論点】
新しい材料の研究開発や材料の新たな用途の開発等にあっては、材料の特性、機能、物
9
性、信頼性に関するデータが必要不可欠であり、その評価方法も確立する必要がある。こ
れにより、材料の研究開発、加工技術開発及び利用の効率的実施を図ることができる。特
に新たに創製された材料の場合には、試験評価方法が未確立で、物性値や信頼性等の
データ不足であることが多い。このことが、情報通信産業をはじめとする新規産業分野の発
展等の阻害要因ともなっている。
知的基盤整備特別委員会ではこの問題を鑑み、広範な産業分野における研究開発、事
業活動等の共通技術知識として用いられ、産業競争力の源泉となる材料関連の基盤整備
に取り組んでいる。これにより、非鉄金属に関する動的変形、破壊挙動、耐熱性などの試
験・評価方法の開発、物性値等のデータ収集・データベース構築等を図る予定である。
【今後の対応策】
市場ニーズの変化と技術の発展に対応する評価方法の導入、新規産業の普及や新材料
の利用拡大といった観点から、上記で開発された試験・評価方法や、これらで得られたデー
タ等の成果を有効利用した標準化活動を推進していく必要がある。知的基盤整備について
は、研究成果の円滑で迅速な標準化を進められるよう、研究開発と標準化を一体化し、あら
かじめ標準化までも視野に入れた研究開発を行うことが重要な課題である。このため、知的
基盤整備の段階で産官学の協力によりその推進に務める必要があろう。また、反応性の高
い材料に関する標準化については、労働安全の観点を考慮した規格作成を検討する必要
があろう。
3.2.個別分野について
非鉄金属分野の標準化活動における全般的な問題点、課題及びその対策をふまえ、
各個別分野の問題点や今後の課題を抽出し、その対応のあり方を具体的に整理する。
3.2.1.
国内審議団体とJI
S原案作成団体の不一致
【論点】
国内外の標準化活動を円滑に推進していくためには、JI
S原案作成団体と国際規格の国
内審議団体が十分な連携を持ち、国内外で矛盾のない標準化活動を行う必要がある。また、
国内外の標準化動向や社会ニーズを把握し、その情報を関係者間で共有することが重要
である。
非鉄金属技術分野では、それらの団体が同一組織である場合が多いが、同一組織でない
分野が一部ある。
【今後の対応策】
国内外の標準化活動団体が同一組織でない場合、連携不足による問題を生じる恐れが
ある。国内外の標準化活動を円滑に行うため、関係者が十分な連携をとれるような体制と
なるように促していくことが重要である。また、場合によっては、上記の不一致を解消し国内
10
外の標準活動を行う業界団体を変更することを検討する必要があろうと思われる。
3.2.2.
給水装置における鉛浸出基準の強化
【論点】
厚生労働省では平成15年を目処に水質基準の見直しを行う予定で、これが実施された
場合には給水装置の鉛浸出性能基準が強化される。現在給水装置の材料として使用され
ている鋳物地金(JI
SH2202)及び銅合金棒(JI
SH3250)に規定の一部の合金が、性能
基準強化にともない給水装置材料として使用できなくなるおそれがある。このため、鉛溶出
の問題を満足した新材料の開発に各社乗り出し始めている。
【今後の対応策】
鉛溶出の問題を満足した材料の開発は、各メーカーがバラバラに行っている。今後、材料
のリサイクル面を考えると各メーカーの負担は大きなものになると予想されることから、水
質基準の見直しにあわせ、給水装置として使用できる合金を追加規定するといった鋳物地
金及び伸銅品のJI
Sの改正を行う必要があると思われる。
3.2.3.
純チタンの試験評価方法
【論点】
新規産業支援型国際標準開発事業のテーマとして、純チタンの試験評価方法を実施する
(期間10f
y
∼13fy)。この事業の内容は、現在、純チタンの高精度な純度分析手法と客観
的な特性評価手法がないので、成分の分析方法及びチタン部材の信頼性評価に関する試
験評価方法を確立するものである。具体的な事業内容は、純チタン(Ti
:
99.9%以上)中に
おける微量元素の分析方法の確立(
I
CP発光分光分析等)、チタン材料の非破壊検査方法
(差圧試験、超音波試験等)の確立である。
【今後の対応策】
この成果をもとに、国際提案を視野に入れた標準化活動を実施していくよう事業委託団
体に促し、民生品を中心として需要が増加しているチタン製品の普及を推進していく必要が
ある。
3.2.4.
新素材分野の体制整備
【論点】
新素材の実用化例としては、超電導材料は、医療診断装置、分析装置、超電導加速器等
に実用化されている。また、超電導材料以外の新素材は、例えば、形状記憶合金が衣類、
メガネフレーム等に、アモルファス金属が、電子機器、電源用トランス等に、水素吸蔵合金
が Ni-水素電池、水素貯蔵等に実用化されている。現在のところ市場規模はさほど大きく
はないが、今後拡大していく可能性は十分にあると考えられる。
現在、これらの新素材の性能、信頼性、寿命等の改良、新素材の応用範囲の更なる拡大
のため、研究開発が各国において行われているところである。
我が国はI
EC/TC90(超電導)の幹事国を引き受けているため、超電導分野については
国際標準化活動上、我が国の意見が反映されやすい現状にある。しかし、超電導分野も含
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めた新素材分野では、標準化活動に必要な資金等が非鉄金属分野の中でも特に逼迫して
いる分野であるため、標準化体制整備の検討が必要である。
【今後の対応策】
新素材における標準化は、資金等の課題から考えると、対象分野を再検討し優先度が高
いものに絞って行っていくことが必要となる。例えば、既に産業化された技術及び研究開発
実施中のもののうち産業化される見込みのあるものについて、技術の普及及び研究開発
の促進に寄与できる標準化活動を行うことが必要である。
これらの標準化活動の推進体制については、基本的には民間が主体となって行っていく
ことが必要であると思われる。民間による規格作成のインセンティブが働きにくい場合には
国による標準化調査研究等を活用する。
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