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資料2 北海道水素社会実現戦略ビジョン(事務局案)

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資料2 北海道水素社会実現戦略ビジョン(事務局案)
資
北海道水素社会実現戦略ビジョン(事務局案)
平 成 2 7 年 1 1月
北
海
道
料
2
<
1
目
次
>
はじめに ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
1
(1)ビジョン策定趣旨
(2)目標年次
2
基本的な考え方 ――――――――――――――――――――――――――――――――
1
(1)ビジョン策定の背景
① 国の動き
② 北海道が抱える課題
③ 北海道の優位性と取り組む意義
(2)北海道が目指す方向
3
北海道における取組の現状と水素エネルギー技術
―――――――――――――――――
4
施策の展開 ――――――――――――――――――――――――――――――――――
8
(1)道内における取組の現状
① 実証事業
② 自治体の取組
③ 民間企業の取組
(2)水素の導入可能性
(3)水素エネルギー技術
① 製造
② 貯蔵・供給
③ 運搬
④ 利用
4
(1)取組初期の水素の利活用
(2)地域特性を活かした水素の利活用の展開
① 地域毎の水素の利活用
② 水素サプライチェーンの広域展開
③ 環境産業の育成・振興
(3)道民への理解の促進
(4)実現に向けた制度的課題等への対応
5
ビジョンの推進 ――――――――――――――――――――――――――――――――
(1)北海道独自の水素サプライチェーンの構築の推進・導入構想
(2)推進体制
(3)その他
14
1
はじめに
――(1)ビジョン策定趣旨 ――――――――――――――――――――――――――
化石燃料の燃焼により排出される二酸化炭素などの温室効果ガスによる地球温暖化は、
地球規模の深刻な問題で、早期に解決すべき喫緊の課題となっています。
道では、地球温暖化対策を総合的かつ計画的に推進するため、北海道地球温暖化防止
対策条例に基づき、平成22年5月に北海道地球温暖化対策推進計画を策定し、特に重点
的な施策として、「低炭素型ライフスタイルへの転換」、「環境にやさしいエネルギーの
導入」及び「森林の整備保全の推進」を三つの柱として、地球温暖化対策に取り組んで
います。
水素は、利用段階で二酸化炭素を排出せず、エネルギー効率が高いなどの優れた物理
的特徴を有しており、暖房や自動車などで利活用することにより、本道で課題となって
いる民生(家庭)部門や運輸部門での二酸化炭素排出量の削減が可能となります。
水素社会の形成は、低炭素社会づくりだけではなく、エネルギーの地産地消による災
害に強い安全安心な地域づくりや水素関連産業の創出などにも寄与するものです。
このビジョンは、中長期的な視点から、道内の各地域の特性を活かした北海道全体の
水素社会のあり方を示すため策定します。
――(2)目標年次 ――――――――――――――――――――――――――――――
平成28(2016)年度から平成52(2040)年度頃までとします。
2
基本的な考え方
――(1)ビジョン策定の背景 ―――――――――――――――――――――――――
①
国の動き
平成26年4月に策定されたエネルギー基本計画[第四次]では、安全性(Safety)を
前提とした上で、エネルギーの安定供給(Energy Security)を第一に、経済効率の向
上(Economic Efficiency)による低コストでのエネルギー供給を実現し、同時に、環
境への適合(Environment)を図る「3E+S」をエネルギー施策の基本的視点として、
多層化・多様化した柔軟なエネルギー需給構造の構築に向けて取り組んでいくことと
しています。
水素は、無尽蔵に存在する水や多様な一次エネルギー源から様々な方法で製造す
ることができるエネルギー源で、気体、液体、固体(合金に吸蔵)というあらゆる形
態で貯蔵・輸送が可能であり、利用方法次第で高いエネルギー効率、低い環境負荷、
非常時対応等の効果が期待され、将来、電気、熱に加え水素が二次エネルギーの中心
的役割を担うことが期待されていることから、多様な技術開発や低コスト化を推進し、
実現可能性の高い技術から社会実装のための制度やインフラの整備を進めていくこと
としています。
また、水素社会の実現に向けた取組の加速として、次の5つについて記載されて
います。
(ⅰ)定置型燃料電池(エネファーム等)の普及拡大
(ⅱ)燃料電池自動車の導入加速に向けた環境の整備
1
(ⅲ)水素の本格的な利活用に向けた水素発電等の新たな技術の実現
(ⅳ)水素の安定的な供給に向けた製造、貯蔵・輸送技術の開発の推進
(ⅴ)水素社会の実現に向けたロードマップの策定
平成26(2014)年6月に国は、「水素・燃料電池戦略ロードマップ」を策定し、3つ
のフェーズにより、ステップ・バイ・ステップで水素社会の実現を目指すこととし
ています。
フェーズ1(~2020年代前半) ~ 水素利用の飛躍的拡大
フェーズ2(2020年代後半)
~ 水素発電の本格導入
大規模な水素供給システムの確立
フェーズ3(2040年頃)
②
~ トータルでCO2フリー水素供給システムの確立
北海道が抱える課題
北海道は、積雪寒冷地であり、広い地域に人や市街地などが分散している地域特
性から、暖房や自動車による化石燃料の使用が多く、道民一人当たりの二酸化炭素排
出量が全国平均よりも多くなっています。
北海道と全国の二酸化炭素排出量(平成24(2012)年度)
区
分
北 海 道
全
国
二酸化炭素排出量
6,513万t-CO2
127,600万t―CO2
一人当たり
11.9t-CO2
10.0t-CO2
【廃棄物】
0.7
【工業プロセス】
【エネルギー転換】
2.6
北海道
【産業】
【民生(家庭)】
【 民生( 業務 )】
33.2
23.6
16.0
【運輸】
19.4
エネルギー転換
産業
4.5
民生(家庭)
民生(業務)
運輸
全国
6.9
32.7
16.0
21.4
17.7
3.3
3.3
工業プロセス
廃棄物
2.0
0%
20%
40%
60%
80%
100%
北海道と全国の部門別二酸化炭素排出量の構成比(平成24(2012)年度)
北海道内の電力系統は、規模が小さく、出力変動に対する調整能力に限りがあるこ
とに加え、再生可能エネルギーの導入に見合う送変電設備の容量が不足していること
などから、豊富なポテンシャルを有する再生可能エネルギーが十分に活用されていま
せん。
また、自立型エネルギー供給システムが構築されていないことから、災害などの緊
急時に避難場所となる公共施設などで使用する電力、熱の確保が必要です。
2
北海道の品目別輸入額のうち鉱物性燃料の割合は、約6割を占め、全国の約3割と
比べて全体に占める割合が約2倍で、鉱物性燃料は、道内で9,091億円の輸入超過と
なっており、経済の活性化の遅れの一因ともいわれています。(2014年)
③
北海道の優位性と取り組む意義
北海道は、太陽光や風力、地熱、バイオマスなどの再生可能エネルギーについて、
全国トップクラスポテンシャルを有し、この優位性を活かして、製造段階において
も二酸化炭素を排出しない水素の利活用をすすめることは、二酸化炭素の排出量削
減に有効です。
水素ステーションに必要な蓄圧機の製造や、水素の貯蔵・運搬に使用される水素
貯蔵合金、有機ハイドライドに関する研究開発が進められるなど、水素関連技術の
集積している地域があり、このような技術等の社会実装や各地域での展開は、環境
産業の振興、創出等につながることが期待されます。
また、燃料電池自動車(FCV)の国内寒冷地試験や寒冷地仕様の家庭用燃料電
池(エネファーム)の研究開発などの実績があり、今後も、水素関連の調査研究や
技術開発などの最適地となる可能性もあります。
暖房や自動車による化石燃料の使用が多い一方、その大部分を道外から調達して
おり、エネルギーセキュリティの確保の観点から、豊富な再生可能エネルギーを最
大限に活用して水素を製造し、利用することにより、エネルギー自給率の向上、ひ
いては経済の活性化に大きく貢献することも期待されます。
――(2)北海道が目指す方向 ―――――――――――――――――――――――――
国のエネルギー基本計画やロードマップに基づく施策を基本としながら、次の3つの
視点で北海道における水素社会の形成に取り組むことととします。
①
低炭素で安全・安心な地域づくり
エネルギー効率の高いエネファームや利用段階で二酸化炭素を排出しないFCV
などの普及を促進するとともに、製造段階でも二酸化炭素を排出しない再生可能エネ
ルギーを活用した水素製造を進めることなどにより、低炭素社会づくりを目指します。
また、水素の利活用によるエネルギーの多様化、地域で製造したエネルギーを地
域で利用するエネルギーの地産地消により、災害に強い安全・安心な地域づくりを目
指します。
②水素サプライチェーンの構築
豊富に賦存する再生可能エネルギーなどによる水素製造可能量や、各地域の特性
に応じた水素利用可能量を踏まえて、水素の製造から利活用までで水素エネルギーの
地産地消となるサプライチェーンを設定し、コスト、CO2削減量の試算などから事業
成立性の高い水素サプライチェーンの構築を目指します。
3
③
環境産業の育成・振興
豊富な再生可能エネルギーが賦存していることや積雪寒冷地といった本道の特性を
活かした研究開発、実証試験を行うことにより、水素に関する新たな産業の創出や環
境産業の育成・振興を図ることを目指します。
北海道における水素社会の形成
北海道水素社会実現戦略ビジョンの実現
国土強靱化
地方創生
低炭素で
安全安心な
地域づくり
水素サプライ
チェーンの構築
環境産業の
育成・振興
推進・導入構想(ロードマップ)の推進
北海道水素社会実現戦略ビジョン
推進・導入構想(ロードマップ)
3
北海道における取組の現状と水素エネルギー技術
――(1)道内における取組の現状 ―――――――――――――――――――――――
稚内市
・環境都市わっかない
・次世代エネルギーパーク
実証事業
自治体の取組
苫前町
風力発電を活用した実証事業
【NEDO事業】
札幌市
・札幌・エネルギーecoプロジェクト
・次世代エネルギーパーク
・次世代エネルギータウン(検討予定)
白糠町・釧路市
小水力発電を活用した実証事業
【環境省事業】
鹿追町
畜産バイオガスを活用した実証事業
【環境省事業】
室蘭市
・室蘭グリーンエネルギータウン構想
・移動式水素ステーション、FCV導入
4
①
実証事業
○ 鹿追町における畜産バイオガスを活用した実証事業(環境省事業)
家畜ふん尿由来のバイオガスの改質により得られる水素を、水素ガスボンベを活
用した輸送システムにより、町内の酪農家の牛舎や公共施設などに設置した定置
用燃料電池に供給し、照明や暖房の熱源などとして活用します。
(期間:平成27(2015)年度~31(2019)年度)
○ 苫前町における風力発電を活用した実証事業(NEDO*事業)
町有の風力発電施設を活用して得られる電気で、水電解装置により水素を製造し、
有機ハイドライドとして貯蔵・輸送し、町内施設に設置した定置用燃料電池に供
給し、照明や暖房の熱源などとして活用します。
(* NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)
(期間:平成27(2015)年度~29(2017)年度)
○ 白糠町・釧路市における小水力発電を活用した実証事業(環境省事業)
庶路ダムに小水力発電施設を設置して得られる電気で、水電解装置により水素を
製造し、高圧水素トレーラーや水素カードルにより輸送し、地元の酪農施設や温
水プールに設置した定置用燃料電池やFCVなどで利用します。
(期間:平成27(2015)年度~31(2019)年度)
②
自治体の取組
○
札幌市
平成27(2015)年3月に「札幌市温暖化対策推進計画」を策定し、温室効果ガス削
減策として「札幌・エネルギーecoプロジェクト」として、エネファームの導入を
補助しているほか、次世代エネルギーパーク(円山動物園)へのエネファームの率
先導入による啓発、平成27(2015)年度には燃料電池自動車の普及促進のための基
礎調査を実施しています。
また、平成28(2016)年度からは、将来的な水素社会を見据えた水素タウンのあ
り方などを検討し、平成29(2017)年度までに「次世代エネルギータウン」のコン
セプトを取りまとめることとしています。
○ 室蘭市
平成27(2015)年2月に「室蘭グリーンエネルギータウン構想」を策定し、移動式
水素ステーションやFCV、エネファームの導入など、水素利用社会のモデル構
築・実証などに取り組むこととしています。
○
稚内市
平成23(2011)年4月に次世代エネルギーパークに認定され、「環境都市わっかな
い」として内外に発信し、風力、太陽光、バイオマス等の再生可能エネルギーを
活用した取組を展開しています。
5
③
民間企業等の取組
室蘭市では、地元企業や大学などが研究会を設立し、地域の特色を活かして環境
との共生を図った地域分散型エネルギーシステムの検討や、安心・安全で豊かな地
域社会へ対応した地域自立型まちづくりを目指すなどの取組が行われています。
稚内市では、企業や団体、市民などからなる協議会が、風と燃料電池で築く温暖
化対策最先端のまちづくりを目指す取組が行われています。
函館市では、地元企業などが中心となって研究会を設立し、水素社会形成に向け
た情報の収集や地域特性を活かした取組を検討するなどの取組が行われています。
また、北海道経済連合会は、平成27年(2015)年7月に国に対して「北海道での定
置型燃料電池の普及拡大に向けた支援」、「水素・燃料電池戦略ロードマップ実現
に向けた実証事業の着実な実施」など、水素社会の創出に向けた取組について要
望し、北海道商工会議所連合会は、平成27(2015)年6月に取りまとめた「北海道成
長戦略ビジョン~暮らし・産業を支える社会資本整備に関する提言」の中で、水
素等を活用した環境に優しい最先端都市の整備を盛り込んでいます。
――(2)水素エネルギー技術 ―――――――――――――――――――――――――
①
製造
豊富なポテンシャルを有している太陽光や風力、小水力、地熱などの再生可能エ
ネルギーで発電した電気により、水電解装置で水素を製造することが可能です。
家畜ふん尿や下水汚泥などをメタン発酵させることにより得られるバイオガスを
回収し、メタンを分離して、水蒸気改質法で水素を製造することが可能です。
曹達工場で苛性ソーダの製造過程から発生する水素が利用されているほか、製鉄
所での製造過程で発生する水素の活用が可能です。
②
貯蔵・供給
貯蔵技術として、体積エネルギー密度が高い水素吸蔵合金の活用が期待されており、
民間企業による製品開発や、大学での研究が進められています。
供給技術として、定置型水素ステーションの設置コストは、現時点では、一般的な
ガソリンスタンドの約4~5倍程度となっている一方、移動式水素ステーションは、
定置型水素ステーションと比べて設置コストが低く、土地の確保が容易で、工期が短
いことなどのメリットがあります。
再生可能エネルギーを利用した水素ステーションとして、太陽光発電を利用し、
水素の製造、貯蔵、供給に必要なすべての機器をひとつに収めた設備が開発されてい
ます。
③
運搬
外販用の水素の運搬方法として既に普及している高圧ガス水素をトレーラーなど
で運搬する方法のほか、液体水素として運搬する方法や水素をトルエン等の有機物
に化合させて有機ハイドライド(メチルシクロヘキサン)としてケミカルローリー等
で運搬し、需要地などで脱水素して水素を使用する方法が開発されています。
6
また、北九州市では、水素を気体のままパイプラインを需要地まで送る方法につ
いて、製鉄所の副生水素を水素ステーションやエネファームへ供給する実証事業が
実施されました。
液体水素や有機ハイドライドは、貯蔵性に優れている一方、液体水素のエネルギー
効率や有機ハイドライドの脱水素装置の小型化が実用段階でないことなど、今後の技
術開発等を待つ必要があります。
④
利用
都市ガスやLPガスの改質により得られる水素と空気中の酸素を反応させ、電気
と熱を発生させるエネファームが平成21(2009)年から販売され、平成26(2014)年9月
には導入台数が全国で10万台を超えています。
道内では、平成23(2011)年に寒冷地対応のエネファームが、平成27(2015)年10月
には、耐寒性能を向上させた機器の販売が開始されています。
燃料電池で水素と酸素の化学反応によって発電した電気を使って、モーターで走
るFCVが、平成26(2014)年12月に国内メーカーにより世界に先駆けて市販が開始さ
れています。
これらのほか、水素・燃料電池の利用技術として、バスやフォークリフト、船舶、
鉄道車両などでの実証試験が行われ、水素を燃焼させて発電を行う利用方法なども検
討されています。
7
4
施策の展開
北海道における水素社会の形成に向けては、国の施策を基本としながら、地域によっ
て異なる再生可能エネルギーに応じた水素の製造や、地域の産業特性などに適した水素
の利活用を展開していく必要があります。
また、豊富なポテンシャルを有する再生可能エネルギー由来の水素を最大限活用した
水素社会の形成を目指した取組を進めますが、その製造や供給が本格化するまでは、L
NGやLPGなど化石燃料を原料とした水素や副生水素など、従来の原料や製造方法に
よる水素の利活用により、燃料電池の普及を促進していく必要もあります。
【展開イメージ図】(目標年次でのイメージ)
水素製造
水素カードル
再生可能エネルギー
風力発電
施設
水素利用
水素貯蔵・供給
太陽光
発電施設
水
電解
装置
水素
ホル
ダー
LNG
水素発電所
FCV(燃料電池自動車)
水素フォークリフト
水素ステーション
簡易式
水素
製造
装置
エネファーム
圧縮
ユニット
副生水素
FCバス
イメージ
水素トレーラー
FCトラクター
製鉄所
曹達工場
など
水素ステーション
業務・産業用燃料電池
褐炭
水素
製造
装置
移動式
水素ステーション
FC船
イメージ
燃料電池鉄道車両
――(1)取組初期の水素の利活用 ――――――――――――――――――――
北海道における水素社会の形成に向けた取組の初期には、足元で実現しつつある、
エネファームやFCVの導入を促進することにより、身近な水素の利活用を通じた道
内の水素社会の形成に向けた機運醸成が必要です。
【エネファームの導入促進】
エネファームは、平成26(2014)年9月に全国では導入台数の累計が10万台を超え
ましたが、道内では平成26(2014)年度末現在、350台程度に留まっています。
平成23(2011)年に寒冷地対応のエネファームの販売が開始され、平成27(2015)
年10月には、耐寒性能向上により利用可能エリアが拡大されたことから、新たな
地域への導入促進が必要です。
【FCVの導入促進、水素ステーションの道内展開】
FCVは、平成26(2014)年12月に販売が開始されましたが、水素ステーション
の整備が四大都市圏を中心に進められ、道内で整備されていないことなどから、
導入が進んでいません。
8
このため、札幌など道央圏を中心としたFCVの導入と水素ステーションの整
備促進や、道の駅、大規模商業施設、空港、港湾など交通の要所、主要道路沿線
等での水素ステーションの整備促進が必要です。
――(2)地域特性を活かした水素の利活用の展開 ――――――――――――――――
①
地域毎の水素の利活用
道内に豊富に賦存する再生可能エネルギーは、地域毎に日照時間や風況、土地の
利用状況などが異なるため、それぞれの地域の特性に応じて、水素製造に利用する再
生可能エネルギーを選択する必要があります。
また、農業や漁業などを中心としている地域や工場が多く立地している地域、空
港や港湾などの物流の拠点となっている地域など、それぞれの地域の産業特性に適し
た水素の利活用を展開していく必要があります。
地域で製造されたエネルギーを地域で活用するエネルギーの地産地消の観点から、
地域展開の全体イメージや地域特性を活かした水素の利活用例、水素の製造に利用す
る再生可能エネルギーは次のとおりです。
【地域展開全体イメージ】
農業
太陽光
庁舎
避難所
風力
災害対応
系
バイオマス
病院等
統
水素製造
貯蔵・供給
地熱
連
一般家庭
使用
系
FCV
小水力
公共交通
LNG
9
【地域特性を活かした水素の利活用例】
地域
水素源
主な利活用先
道北・日本海側
風力
農業、漁業
オホーツク地域
太陽光
農業、漁業
太陽光、小水力、
十勝・根釧地域
備考
冬期の卓越風
農業、漁業
畜産バイオガス
事務所・家庭、交通、観光
道央圏
他地域からの輸送
道南地域
風力、地熱
農業、漁業、観光
中核都市
他地域からの輸送
事務所・家庭、交通
水素の消費地
離島
風力、太陽光
事務所・家庭、交通
島内利用
物流拠点(空港、港湾)
副生水素
室蘭・苫小牧
工場、物流拠点(港湾)
風力、太陽光
【水素の製造に利用する再生可能エネルギー】
風力
太陽光
風力
地 バイオマス
熱
消費地
バイオマス
消費地
太陽光
風力
太陽光
小水力
消費地
地熱
副生
水素
風力
10
小水力
水素の大消費地
各産業分野や施設等での利活用については、次のようなものが考えられます。
産業分野、施設等
利活用先
ハウス栽培、植物工場、選果 ~ 業務・産業用燃料電池
農
業
FCフォーク
圃場 ~ FCトラクター、FCフォーク
畜舎、搾乳機、バルククーラー ~ 業務・産業用燃料電池
漁
業
養殖場 ~ 業務・産業用燃料電池
漁船 ~ FC船
食品産業
食品加工(発酵、加温消毒等)~ 業務・産業用燃料電池
物流拠点
空港、港湾、卸売市場 ~ FCフォーク
交
タクシー、バス ~ FCV、FCバス
通
リゾート施設、宿泊施設、観光施設 ~業務・産業用燃料電池
観
光
観光バス ~ FCバス
遊覧船 ~ FC船
イベント
公共施設等
会場連絡バス ~ FCバス
庁舎、図書館、体育館、病院、避難施設、防災拠点
~ 業務・産業用燃料電池
(実証、開発段階の技術を含む。)
②
水素サプライチェーンの広域展開
ア
地域特性を活かした水素の製造
太陽光は道東、風力は道北や日本海側、地熱は道南に多く賦存するなど、道内
の再生可能エネルギーは地域によって賦存量、利用可能量の分布が異なっていま
す。
また、石狩LNG基地を拠点とした道内各地への天然ガス供給網を活用して、地域
で水素を製造することなども考えられます。
地域特性を活かして製造された水素をその地域で優先的に利用するほか、余剰
分を近郊の消費地や大消費地である道央圏や中核都市で活用する広域展開を目指
します。
イ
消費地までの輸送
将来、地域で製造された水素について、多くの水素を消費する道央圏や中核都
市に輸送して利用する場合、輸送する水素の形態(液化水素、圧縮水素、有機ハ
イドライドなど)や方法(トレーラー、ローリー、ボンベ、カードルなど)につ
いて、現在、各地で実施されている実証事業や研究開発の動向を踏まえ、輸送に
係る二酸化炭素排出量、コストを考慮した輸送・供給体制を構築する必要があり
ます。
水素製造地域から消費地までの輸送が長距離になる場合、効率的に水素を供給
するため、配送拠点としての貯蔵施設の整備などの検討も必要。
11
【道内消費地への輸送イメージ】
太陽光
風力
小水力
貯蔵・供給
バイオマス
地熱
水素製造
長距離輸送体制
消費地
地域の
余剰分
輸送
配送
拠点
消費地
消費地による利活用
ウ
展開の手順
人口が密集している都市部や現在実証事業が行われている地域を中心に水素社
会の形成に向けた取組を展開し、その後、全道への展開を図ります。
地産地消の観点から、水素製造地域での活用を中心に検討し、余剰分を道内消費
地(札幌圏)に輸送して利用し、さらに余剰がある場合には、道外(主に首都圏)に
も供給を目指します。
12
【展開の手順のイメージ図】
実証事業実施地域
周辺地域への展開
人口が密集している都市部(札幌)
中核都市
水
素
供
給
水素製造地域
(地産地消)
全 道
展 開
水素供給
余剰分
道外
(首都圏等)
展開にあたっては、輸送に関する制度的・技術的課題の検討や、
酸化炭素削減量、コスト・事業成立性を考慮する必要があります。
③
環境産業の育成・振興
水素関連ビジネスを本道の新たな産業として創出し、育成・振興していくために
は、本道をフィールドとした水素関連実証プロジェクトの誘致や地域における事
業参入の気運醸成など、企業や自治体など関係者による長期的な視点に立った取
組を進めていく必要があります。
水素の本格的な利活用に向けては、技術面やコスト面などで多くの課題がありま
すが、技術開発の取組などを進めることを通じて、新たなビジネスの芽の創出を
図ることにより、環境産業の育成・振興につなげることを目指します。
――(3)道民の理解の促進 ――――――――――――――――――――――――――
水素に関する道民の認知度や理解度は必ずしも高くはなく、特に重要視すべき安全
性に関する誤解も見受けられることから、水素社会の形成の実現が二酸化炭素排出削
減や地球温暖化対策に加え、エネルギー自給率の向上に伴うエネルギーセキュリティ
の確保などにつながることなど、その有用性の認知度を高めるため、パンフレットや
ホームページ、メールマガジンなどを活用し、道民に対して分かりやすく情報を発信
していく必要があります。
また、産学官の協力・連携のもと、地域学習会やシンポジウムなどを通じた普及啓
発を継続的に実施していく必要があります。
13
――(4)実現に向けた制度的課題等への対応 ――――――――――――――――――
北海道における水素社会の形成に向け、関係者の意見等を踏まえ、水素輸送や水素
ステーション設置などに係る諸課題について整理を行うとともに、法律など制度的課
題において規制緩和が必要な事項については、国等に対し要望していく必要がありま
す。
FCVやエネファームなどの定置型燃料電池の導入に対する財政支援について、北
海道において本格普及期を迎えるまで、引き続き実施するよう、国に対して要望して
いく必要があります。
また、現在、四大都市圏を中心として運用されている水素ステーションの整備等に
係る財政支援について、北海道においても活用可能となるようにするなど、関係者の
意見等を踏まえ、国等に対して要望していく必要があります。
5
ビジョンの推進
――(1) 北海道独自の水素サプライチェーンの構築の推進・導入構想 ――――――
ビジョンに基づく具体的な取組を着実に推進するため、道内企業の技術開発や地域
の特性を活かした実証事業、取組事例などを踏まえ、豊富な再生可能エネルギーなど
の北海道の優位性を活かした具体的な取組を示す水素サプライチェーンの構築の推
進・導入構想(ロードマップ)を策定します。
――(2)推進体制 ――――――――――――――――――――――――――――――
水素サプライチェーンに関連する企業、団体、市町村等と連携し、本ビジョンを推
進します。
知事を本部長とする「北海道地球温暖化対策推進本部」や庁議などにおいて、庁
内での関連施策の総合調整を行います。
――(3)その他 ―――――――――――――――――――――――――――――――
このビジョンは、社会情勢の変化や規制の見直し、技術開発の進捗状況等を踏まえ、
適宜見直しを行います。
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