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3. - 早稲田大学

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3. - 早稲田大学
課題を考える(総論)
学内状況からみえる課題
Ⅰ.総論
1.本大学には満足できるサービスがない
「本大学の学生サービスのなかに満足できるものがある」とする学生は、半数にも満
たず、また、「本大学の学生サービスに全体として満足している」学生は、
「やや満足」
を加えても 30%に止まっている。
自由記述のなかに「学生数が多くて大変でしょうが...」という書き出しの記述がい
くつかあることを考え合わせると、満足度のバー設定は決して高くないなかでの学生満
足度であると認識しておく必要がある。
本大学の学生の多くは、「本大学の学生サービスには満足できるものがなく、学生サ
ービス全体についてもあまり満足していない」とみざるを得ない。
◎学生向アンケート調査
あなたが、本大学の「学生サービス」のなか
で満足しているものがあればお教えください
あなたは、本大学の「学生サービス」
に全体として満足していますか?
不満であ
る
10%
ない
53%
満足して
いる
7%
やや満足
している
22%
やや不満
である
23%
ある
47%
普通
38%
満足している「学生サービス」で多数に昇ったもの
・中央図書館(施設・設備、蔵書、情報システム、レファランスサービス、窓口サービス等)
・キャンパス図書館(
〃
)
・端末室(施設・設備・24 時間開室)
・情報ネットワークサービス全般
・生協の各種サービス
(1)満足しているサービスでも「供給量」には不満
中央図書館でも、座席数の満足度は総合評価に比べて低い。自由記述欄にも、
「いつ
も込んでいて座れないことがある」との意見がみうけられた。
端末室は、「満足できる学生サービス」として多数の学生が挙げているが、個別設問
においては、総合的にみて「利用しやすい」とした学生は 40%に止まっている。(次ペ
ージ参照)これは、PC 台数への不満の大きさが反映したものとみていいだろう。
また、情報ネットワークサービス全般においても、午後11時以降にはインターネッ
トダイヤルアップについて接続し難くなることに対しての学生の不満は大きい。
満足度の高い学生サービスであっても、学生は「供給量」については満足していない
のである。
26
課題を考える(総論)
総合的にみて中央図書館は利用しやすいですか?
座席数をどう思いますか?
どちらと
もいえな
い
14%
どちらとも
いえない
21%
利用し
にくい
10%
不十分
29%
利用し
やすい
69%
総合的にみて端末室は利用(=学生の個人利用)
しやすいですか?
どちら
ともい
えない
28%
PC台数をどう思いますか?
どちら
ともい
えない
11%
利用し
やすい
40%
十分
57%
利用し
にくい
32%
十分
21%
不十分
68%
2.意見・要望は言い出しにくい
「学生サービスについて、意見・要望・不満等をたやすく申し出ることができる」と
思う学生は 10%に止まっており、半数以上の学生は「たやすく申し出ることができる」
とは思っていない。
自由記述欄にも、「言ってもムダ」や「どこに申し出たらいいのかわからない」といっ
た記述が見受けられた。
一方、
「『学生の意見・要望』をすくいあげる仕組み」があるとする箇所は 76%に昇
っている。
学生の認識と箇所長の認識とが大きくずれていると言っていいだろう。
①学生向アンケート調査
②箇所長向アンケート調査
本大学は、学生が「学生サービス」について
意見・要望・不満等をたやすく申し出ることが
できる大学だと思いますか?
どちら
ともい
えない
37%
貴箇所には、
「学生の意見・要望」をすくい
あげる仕組みがありますか?
思う
10%
いいえ
24%
思わな
い
53%
27
はい
76%
課題を考える(授業・カリキュラム)
Ⅱ.授業・カリキュラム
1.学生の声は大切...しかし
授業についてもカリキュラム編成についても、「学生の意見・要望」についての考
え方・とらえ方は学生も箇所長も共通であると言って差し支えない。
しかし、実態は、授業について箇所レベルで「学生の意見・要望」を定期的に収集
している箇所は極めて少ない。カリキュラムについても同様である。
◎学生向アンケート調査
◎箇所長向アンケート調査
「学生の授業評価」を授業に対する「学生の意見・
要望」を収集する手段として利用することについて、
検討の価値があるとお考えですか?
あなたは、魅力のある授業づくりの
ために、学生の意見・要望をとり入
れるべきだと思いますか?
採り入れ
る必要は
ない
2%
可能なら
採り入れる
べきである
44%
いいえ
13%
是非とも採
り入れるべ
きである
54%
はい
87%
なお、学生団体が、独自に「学生による『授業評価』
」をしている例が複数の箇所でみられ
る。いずれの例も、教員へのフィードバックも行なわれ、教員の反応を「授業評価」結果に付
記しているものもある。
◎学生向アンケート調査
◎箇所長向アンケート調査
貴箇所では、「カリキュラム」を編成するうえで
「学生の意見・要望」を聞く必要がある
とお考えですか?
あなたは、カリキュラム編成に、学生
の意見・要望をとり入れるべきだと
思いますか?
とり入れ
る必要は
ない
4%
可能なら
とり入れ
るべきで
ある
45%
調査対象=現在の「カリキュラム」内容について「学生の
意見・要望」を聞いたことがない箇所
いいえ
27%
是非とも
とり入れ
るべきで
ある
51%
はい
73%
箇所長が、いくら「学生の意見・要望を聞くことは重要」と考えていても、実際に行
動を起こさなければ、学生にとっては無意味である。
28
課題を考える(授業・カリキュラム)
2.低い授業満足度
本大学学生の授業満足度は、「大部分の授業に満足」(4%)と「満足な授業がやや多
い」(17%)をあわせても 21%に止まっている。
一方、
「不満足な授業がやや多い」(24%)と「大半が不満足な授業」(12%)をあわ
せると 36%にも昇っている。
ここでは、本大学には「授業満足度の低い学生」が「授業満足度の高い学生」をはる
かに上回っていることに注目する必要がある。
また、学部学生と比較して勉学の環境条件が良いと考えられる大学院学生においてさ
え、「不満足な授業がやや多い」(18%)と「大半が不満足な授業」(4%)をあわせて
22%に達していることもおさえておきたい。
◎学生向アンケート調査
あなたは、これまでに受講してきた授業に満足していますか?
①全体
大半が不満
足な授業
12%
大部分の
授業に満足
4%
②大学院学生
満足な授業
が
やや多い
17%
不満足な授
業がやや多
い
18%
大半が不満
足な授業
4%
不満足な授
業がやや多
い
24%
大部分の授
業に満足
11%
満足な授業
がやや多い
30%
満足と不満
足が半々
43%
満足と不満
足が半々
37%
3.すれ違う「授業の不満」への対応
(1)「授業への不満」
授業について「不満はない」とした学生は 4%で、ほとんどの学生がいずれかの科目
の授業で何らかの不満を抱いている。
授業への不満は多岐にわたるが、多数に昇ったものは以下のとおりである。
(括弧内は不満の性質)
・教員の熱意が感じられない
(=教員の姿勢)
・授業が一方的である
(=教員のスキル)
・教員の声が小さい、または聞き取りにくい
(=
〃
)
・板書の仕方がよくない
(=
〃
)
・授業がつまらない/興味をかきたてられる授業ではない(=教員の姿勢・スキル)
・教え方が下手
(=教員のスキル)
・わかりやすく伝えるための工夫がない
(=教員の姿勢)
学生の「授業への不満」の多くは、「教員の姿勢」および「教員のスキル」に起因し
ていると言ってよさそうである。
また、
「授業への不満」は、学生の「早稲田大学への期待」と「現実の授業」との「ギ
ャップ」ととらえることもできるだろう。
一方、箇所長向アンケートには、「学生の授業に対する姿勢」を嘆く記述がみうけら
れた。
今回の調査結果からは、「学生の教員不信」だけでなく「教員の学生不信」という側
面も垣間みられた。
29
課題を考える(授業・カリキュラム)
(2)「魅力のある授業づくり」
「魅力ある授業づくり」のための組織的な取り組みをしている箇所は、24 箇所中 19
箇所(79%)に昇っている。
組織的な取り組みの内容は以下のとおりである。
・設置科目の見直し/新しい学科目の設置(多数)・科目毎の教員相互の授業方法等
・寄付講座の設置
の意見交換
・小人数クラスの設置
・学生へのアンケート実施
・実務者等外部の人材の招聘
・マルチメディア機器・施設の活用
それぞれの箇所が独自の「魅力のある授業づくり」のための組織的な取り組みをして
いる。にもかかわらず、学生の授業満足度は低く、授業への不満は大きい。
(3)すれ違い
学生は、授業に対する「教員の姿勢」や「教員のスキル」に対して不満を持っている
のに対し、箇所長の取り組みは「設置科目の見直し」を始めとする「学科目の『品揃え』
」
が中心となっている。「教員の姿勢」や「教員のスキル」について組織的に取り組んで
いるのはほんの数箇所である。これでは、箇所の取り組みは、学生の「授業への不満」
解消にはつながらない。
全体として双方のベクトルは、ぶつかることなく見事にすれ違っていると言っていい
だろう。
箇所長が、「教員の姿勢」や「教員のスキル」に対して正面から取り組むことの難し
さは容易に想像できる。
しかし、だからと言って「学科目の『品揃え』」をいくら良くしても、それだけでは
学生の「授業への不満」は解消しないのである。
4.改善がみられない「カリキュラム」満足度
以下は、学生生活実態調査報告書(学生部編)に掲載されている調査結果(左図およ
び中央図)と今回の調査結果(右図)である。
これら3図からは、選択肢の設定が少々異なるものの、全体の傾向はこの5年間ほと
んど変化がないことをみてとることができる。
◎学生生活実態調査報告書(学生部編)
◎学生向アンケート調査(監査室)
あなたは、現在のカリキュラムに満足していますか?
95.10 調査
不満で
ある
21%
00.10 調査
97.10 調査
満足して
いる
6%
どちらかと
いえば満足
している
31%
どちらかと
言えば不満
である
42%
あなたは、所属学部(研究科)のカリキュラムに
満足していますか?
不満である
22%
よくわか
不満であ らない
る
3%
13%
満足して
いる
6%
どちらかとい
えば満足して
いる
31%
やや満足
している
21%
やや不満
である
24%
どちらかと言
えば不満であ
る
41%
普通
26%
30
満足して
いる
13%
課題を考える(授業・カリキュラム)
(1)活かされていない「学生生活実態調査報告書」
◎箇所長向アンケート調査
学生部において、
「学生生活調査報告書」を作成していますが、貴箇所ではそれ
を「学生サービス」全般の充実・向上に活用していますか?
はい
19%
いいえ
81%
活用しているのは 19%に止まっている。活用法は以下のとおりである。
・関係会議体に協議資料として使用した
・学生への周知
・各種委員会にタイムリーな話題提供資料と活用した ・箇所独自の奨学金が用意された
実態として、「学生生活実態調査報告書」は、「カリキュラム」・「授業」の改善には
全く活用されていない。
「学生生活実態調査報告書」には、授業およびカリキュラムの学生満足度を高めるた
めの手懸りが沢山含まれているはずだが...
(2)教室が足りない
学生が抱くカリキュラムに関わる不満に「履修希望科目がとれない」がある。これは、
履修希望者が教室の収容人数を上回る場合等に、「抽選」で履修登録者を決定している
ことによるものであるが、「教室不足」に起因するケースが多いようである。
一方、箇所長の多くも「学生サービス」を阻害する本大学の構造的要因として「教室
の不足」を挙げている。
カリキュラム編成だけでなく多方面で、教室を始めとする「供給量」の不足という課
題を本大学は抱えている。
【カリキュラムに関わる学生の不満】
・体系的な学科目配当がされていない
・履修希望科目がとれない
・年間登録単位数の上限引き上げ
・授業の試聴ができない/登録科目の
・授業規模が適正でない(履修者が多過ぎる) 変更ができない
【箇所長が挙げる「学生サービス」の充実・向上を阻害する本大学の構造的要因】
・教室の不足/自習室不足/フリースペースの不足
・箇所定員の肥大化
・教員の希望優先の時間割編成
「教員の希望優先の時間割編成」を本大学の構造的な問題としてとらえているところ
に箇所長の苦悩がみえる。
31
Ⅲ.主に事務所が担う学生サービス
1.「大学の都合優先」の学生サービス
「昼休み(夕方)の事務所の開室」、「情報伝達方法の多様化」について、箇所長も専
任職員も学生の要望・期待に対して、理解を示し必要性を認識している。
(下図参照)
しかし、実態は箇所各々の対応に差異があり、全体として「斑模様」であり学生の要
望・期待に応えているとはいえない。
これらにみられるとおり、教職員の本意でないとしても、結果的に「大学の都合優先」
の学生サービスが展開されている例が多く、学生の利便には結びついていない。
(1)「昼休み(夕方)の事務所閉室」に関わる事項
◎学生向アンケート調査
◎箇所長向/専任職員向アンケート調査
本大学の学生向のカウンター対応を行なっている
事務所は、一部を除いて昼休み休憩時に閉室にし
ますが、それについてどう思いますか?
本大学の「一般的問題」としてとらえたうえで、
お答えください。
現在、ごく一部を除いて学部(研
究科)事務所は昼休み(または夕
方)に閉室していますが、あなた
はどう思いますか?
学生
箇所長
昼休み
(または
夕方)は
閉室で
よい
24%
専任職員
閉室で
よい
10%
できれば
開室した
方がよい
が現状で
はやむを
えない
52%
開室する
必要があ
る
38%
昼休み
(または
②「情報伝達」に関わる事項
夕方)も
◎学生向アンケート調査
開室すべ
きである
76% ②「情報伝達」に関わる事項
昼休みも
開室する
必要がある
49%
昼休みは
閉室でよい
できれば開
17%
室した方が
よいが、現
状では昼休
みの閉室は
やむをえな
い
34%
◎箇所長向/専任職員向アンケート調査
(2)「情報伝達」に関わる事項
◎学生向アンケート調査
大多数の学部(研究科)では、
「学生への情報伝達は掲示板
で行なう」としていますが、
あなたはどう思いますか?
学生
◎箇所長向/専任職員向アンケート調査
多くの箇所で、学生への情報伝達は「すべて掲示板で
行なう」とし、電話等による問い合わせには応じない
こととしていますが、これについてどう思いますか?
本大学の「一般的問題」としてとらえたうえで、お答
えください。
箇所長
現状で
よい
26%
他の情
報伝達
手段も
採用す
べきで
ある
74%
専任職員
「すべて掲示板」と
するのは適当である
10%
掲示板以外の方法も
あわせて採用する必
要がある
73%
できれば掲示板以外
の方法も採用したい
が、現状では「すべ
て掲示板」はやむを
「掲示板」以
えない
外の方法もあ
17%
わせて採用す
る必要がある
66%
32
「すべて掲示
板で行なう」
とするのは
適当である
10%
掲示板以外の
方法も採用す
べきだが、現
状では「すべ
て掲示板で行
なう」とする
のはやむをえ
ない
24%
課題を考える(事務所が担う学生サービス)
2.厳しい学生の評価
「昼休み(夕方)休みの事務所開室」および「掲示板以外の情報伝達方法の採用」
についての要望が大きい。これは、斑模様である実態への評価の低さでもある。
また、「科目登録手続き」や「窓口サービスの快適さ」についても評価が高いとは
言えない。総じて、学生が所属箇所事務所をみる目は厳しい。
ここでは、「窓口サービスの快適さ」についてみていく。
◎学生向アンケート調査
所属学部(研究科)の窓口サービスは、あなたにとって全体として快適ですか?
不快で
ある
9%
快適で
ある
14%
どちらかと
いえば不快
である
24%
どちらかと
いえば快適
である
53%
「快適」または「どちらかといえば快適」あわせて 67%に達しており、
「良い結果」
にもみえる。しかし、自由記述欄に「窓口サービス」について厳しい意見・指摘の
記述が少なくなかった。主なものは以下のとおりである。
・職員の態度が高圧的・横柄/学生を見下している(多数)
・「教えてやっている」という姿勢
・呼びかけても無視する/話をしても態度が冷たい/話を聞いてくれない
・科目登録でマークミスを申し出たら、登録取消に反省文を書くよう言われた
・3年連続で同一科目抽選漏れを申しでたら、「運が悪い」で片付けられた etc...
一方、専任職員向アンケートの自由記述欄にも次のような記述がみられた。
・学生を見下したような物言いをする職員がいる限り、いくら設備を充実しても...
・「知らない!」、「あっち!」など省エネのつもりか学生とは口も聞きたくない
といったような態度はいただけない。
・どこに異動しても、学生への対応が悪い職員がいるが...
・学生からクレームがつくような態度の職員は、ある程度の減給等の処遇をとっても
構わないのでは etc...
このように、同僚職員の学生への対応を苦々しく思っている専任職員も少なくない。
特別な事情を抱える学生を除いて学生が、事務所窓口を訪れる回数は年間で指折り数
える程度である。一度、悪い印象を与えてしまうと覆すのは難しい。
学生の厳しい意見・指摘に対しては、真摯な反省が必要である。たとえ学生に非があ
るとしても、不快感を与えるような対応はいただけない...サービス業であるならば。
33
課題を考える(事務所が担う学生サービス)
3.専任職員の「大学職員観」・「学生観」はバラバラ
以下に示すとおり、専任職員の「大学職員観」、「学生観」はバラバラである。職種別
にみても傾向は変らない。
「大学職員観」や「学生観」が専任職員個々人により異なるということは、
「学生サ
ービス」についての考え方や取り組みも人により異なることにつながる。このことは、
特に「事務所窓口サービス」に対する学生の不満と大きく関連していると考えられる。
(1)専任職員の「大学職員観」
「『大学職員=サービス業』と思う」が 75%を占めた。
「思わない」・「その他」と回答した専任職員が描く「大学職員観」からみて、
「大
学職員=サービス業」とした専任職員の「サービス業」の内容も多種多様であること
が想像できる。
◎専任職員向アンケート調査
あなたは、
「大学職員=サービス業」だと思いますか?
その他
14%
思わ
ない
11%
思う
75%
◎ 「思わない」
、
「その他」の主な内容
・サービスと教育の両面がある ・大学の管理・運営が業務
・サービスは業務の一部である ・担当業務により異なり一概にいえない
・イコール関係ではない
・研究・教育のサポートである(司書職特有)
・サービスの定義・概念が不明確・教育指導/技術支援である(技術職特有)
(2)専任職員の「学生観」
専任職員の「学生観」も、職種により若干傾向を異にするが、職種に関係なく下図
の5種類に散らばっている。
◎専任職員向アンケート調査
あなたは、学生をどのような対象としてみていますか?
サービスを提供
する対象でもあ
るが、どちらか
といえば指導・
訓育を行なう対
象である
15%
半分は指導・訓
育を行なう対象
で、半分はサー
ビスを提供する
対象である
29%
指導・訓育を行
なう対象である
2%
サービスを提供
する対象である
13%
指導・訓育を行
なう対象でもあ
るが、どちらか
といえばサービ
スを提供する対
象である
41%
34
課題を考える(事務所が担う学生サービス)
(3)専任職員と「教育指導」
「あなたは、『大学職員=サービス業』だと思いますか?」の問いに、
「思わない」
・
「その他」と回答した専任職員の具体的内容のなかに「教育機関だからサービスと教育
の両面がある」とするものが、職種に関係なくしばしば見受けられた。
一方、学生向アンケート調査結果からは、学生は大学からサービスを受ける権利を持
っているという意識が強いことが感じられた。学生は事務所窓口にサービスは求めても
「教育指導」は求めていないのである。そこに、学生と専任職員の認識のギャップがみ
える。
大学が教育機関であるという理由だけで、専任職員(職種の性質上「技術職」は除く)
の職務として、学生の「教育指導」が必要なのかどうか。大学が、専任職員に学生の「教
育指導」を職務として課しているのかどうか。例えば、学生が事務所窓口を訪れるのと、
一般市民が役所の窓口を訪れる、あるいは交番で道を尋ねることとは違いがあるのか、
ないのか。
社会一般にある他のサービスとも比較しながら、専任職員が果たすべき役割について
根源的な問い直しが必要である。
4.管理業務が先、学生サービス業務は後回し
(1)「仕事が忙しくて学生サービスができない」
専任職員アンケート調査にみられた記述である。ここにいう仕事とは、データ処理を
中心とする管理業務を指すものと考えられる。
管理業務に忙殺され、学生相談等の学生サービスを後回しにせざるをえない、専任職
員が置かれた状況を象徴的に表している記述である。
仕事の優先順位を「管理業務>学生サービス(対応)」と考える専任職員の記述は数
多く、そのいくつかを紹介する。
個人の業務量が増大したため、カウンター対応を「面倒」と感じるようになった。
カウンター業務をするとオーバーワークになってしまう。
体制ができていないので、学生相談等に応じると、処理作業が進まず残業せざるを
なくなってしまう。その結果、残業できない人は学生がカウンターにいても無視し
ている。その結果、相談に応じている人はさらに残業が増えてしまう。
(2)高い専任職員の「潜在意識」
一方で、専任職員の「学生サービスを良くしたい」という意識は下図のとおり高い。
「昼休み事務所開室」や「掲示板以外の情報伝達手段の採用」に関する認識からも
「学生サービスを良くしたい」という意識をくみ取ることができる。
◎専任職員向アンケート調査
あなたは、学生にとってサービス向上に結び
つくことであれば、自分の仕事が多少増えて
もよい(または、仕方がない)と思いますか?
いいえ
8%
あなたは、「学生サービス全般に関わる業
務以外の負担が減れば、その分を学生サー
ビスの充実・向上に振り向けることができ
るのに...」と思うことがありますか?
いいえ
30%
はい
92%
はい
70%
35
課題を考える(事務所が担う学生サービス)
専任職員の記述に次のようなものがあった。
5.学生サービスの阻害要因
正直言って、先生方のお世話にかかるエネルギーを学生サービスに向けることが
できたらと思う。
過去からの慣習がそのままで、今の学生にはマッチしていない。
積極的に学生サービスをしようがしまいが、給与等に全く反映されない。
学生サービスに関わる劇的な改善があっても、当事者や当該部署が報わ
れることがなく、むしろ一層の負担が強いられる。給与や人事異動の面
でも高付加価値を生みだしているほど損な役回りにみえる。
箇所の実情を考慮しない人事異動で学生サービスが低下した。
学生と直接向き合ってサービスを行なう業務は、本来の業務を阻害する
面倒な業務である、という確信に基づく行動を戒めるものがない。
とりわけ、カウンター業務は専任職員の仕事でないといった風潮がある。
大学の方針がないから、学生への対応がバラバラであって当然。
これらは、代表的な専任職員の記述である。
「学生サービス(学生相談・接遇等)と評価・給与の関係」と「学生サービス方針」
に関わる記述が目立って多かった。
記述内容毎に整理・分類すると以下のとおりとなる。
【所属箇所内の課題】
・業務分担のあり方/業務引継ぎのあり方
・職員間・係間の意思疎通
・過去からの慣習/業務がスクラップされずビルドばかり
・箇所内ルールの運用(運用の硬直化)etc...
【人事制度関連の課題】
・要員の不足
・人事異動のあり方
・学生サービスについての研修がない
・学生サービスを評価する制度(人事考課・給与制度)がない
・管理職者の学生サービスについての意識欠如 etc..
【大学構造の課題】
・学生サービスについて方針がない
・仕事が縦割りで、足並みが揃った学生サービス向上ができない(箇所相互間)
・職員が教員の下に位置付けられていて、自ら決定することができない etc..
箇所長向アンケートのなかにも、「要員不足」や「繁忙時期には学生サービスど
ころではなくなる」といった記述がみられた。
36
課題を考える(課題の確認・整理)
Ⅳ.課題の確認・整理
ここでは、「学内の現状をみる」から抽出した課題を確認・整理し、とらえ方を明らかに
する。
1.課題の確認
ここまでに抽出した課題は以下のとおりである。(=「タイトル名」)
(1)総論
①本大学には満足できるサービスがない
②満足しているサービスでも「供給量」には不満
③意見・要望は言い出しにくい
(2)授業・カリキュラム
④学生の声は大切...しかし
⑤低い授業満足度
⑤-1 すれ違う「授業の不満」への対応
⑥改善がみられないカリキュラム満足度
⑥-1 活用されない学生生活調査実態報告書
⑥-2 教室が足りない
(3)主に事務所が担う学生サービス
⑦「大学の都合優先」の学生サービス
⑧厳しい学生の評価
⑨専任職員の「大学職員観」・「学生観」はバラバラ
⑩専任職員と「教育指導」
⑪管理業務が先、学生サービスは後回し
⑫学生サービス阻害要因
2.課題整理のキーワード
抽出した課題の本質を突き詰めていくと、以下の4つのキーワードに行きつく。
(1)過密
(2)情報受発信の「アンテナ」
(3)大学運営の枠組み
(4)学生サービスの理念
3.キーワードにもとづく課題の整理
(1)過密
②満足しているサービスでも「供給量」には不満
⑥-2 教室が足りない
⑪管理業務が先、学生サービスは後回し
37
課題を考える(課題の確認・整理)
②、⑥-2 は、「学生数と座席の設置数」あるいは「カリキュラム編成に見合う教室数、
履修希望者に見合う教室数」の課題であり、それは最終的に「供給量」に対する学生数
の多さ、つまり「過密」に行きつく。
⑪には、学生数が多いことに伴うデータ量の膨大化による影響という側面もある。
「過密」は、「本大学の宿命」「所与の環境」ととらえがちであるが、少なくとも「学
生サービスの充実・向上」を考えるうえでは、避けて通ることができない本大学最大の
課題ととらえなければならない。
(2)情報受発信の「アンテナ」
③意見・要望は言い出しにくい
④学生の声は大切...しかし
⑤-1 すれ違う「授業の不満」への対応
⑥改善がみられないカリキュラム満足度
⑥-1 活用されない学生生活調査実態報告書
⑧厳しい学生の評価
この5つは、いずれも情報を受ける仕組みが確立しているか、またはその仕組み
を通じて「学生の声」をきちんと受け止めているか、という「受信アンテナの機能」
につながる課題である。
また、学生に対して情報をどのように流しているかという「送信アンテナの機能」
としての課題もあわせてもつものである。
特に、情報発信については、学生向アンケート調査において「奨学金があるなら貰
いたかった」という記述が複数みうけられるなど、大学のごく基本的なサービスさえ
十分に認知されていないことや「掲示板の掲示や HP の掲載が体系的でなく、必要な
情報を得にくい」という記述等、現在の発信のあり方も省みる必要がある。
(3)大学運営の枠組み
⑤-1 すれ違う「授業の不満」への対応
⑦「大学の都合優先」の学生サービス
⑪管理業務が先、学生サービスは後回し
⑫学生サービスの阻害要因
「すれ違う『授業の不満』への対応」は、「授業は教員個人の専権事項」という
「教員諸制度」に関わり、また、「『大学の都合優先』の学生サービス」は「大学の
組織構造」や「大学の仕事の構造」に関わりを持つものである。
「専任職員の『大学職員観』
・
『学生観』はバラバラ」は、専任職員は学生をどう位
置付けてとらえるのか、について大学が明確にせず専任職員任せにしてきたことによ
るものである。「専任職員と『教育指導』」についても同様である。いずれも、
「大学
運営の枠組み」に関連する課題である。
「管理業務が先、学生サービスは後回し」は、「過密」に関わる側面ももつが、「大
学の組織構造」、「大学の仕事の構造」および「職員人事制度」のいずれにも関わる課
題である。「学生サービスの阻害要因」も同様である。
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「主に事務所が担う学生サービス」おける諸課題(⑦⑪⑫)は、すべて「大学運営
の枠組み」に関わるものとして取り組む必要がある。
専任職員に対して、「これからは気持ちを入れ替えて取り組め」というような個人
の意識喚起に解決を委ねられる課題は一つもない。
(4)学生サービスの理念
⑨専任職員の「大学職員観」・「学生観」はバラバラ
⑩専任職員と「教育指導」
これらは、いずれも学生をどういう存在として位置付けるかという「学生サービスの
理念」の核としての課題である。
レーダーサイト②
ホッと・メッセージ
この報告書は、学生の大学に対する不満や批判を中心軸において論を展開している。
だから、紹介する学生の声は、どうしても、われわれ教職員にとって耳が痛いもの、読
んでいてあまり楽しくないものになりがち。でも(あまり数は多くないのが残念なのだ
が)
、学生向アンケートには、こんな声も寄せられている。アンケートに目を通していた
監査室員もほんとうにホッとさせられたメッセージである。
・大学のサービスでいちばん満足しているのは、私に対する教員の研究指導。私が中心
に学んでいる分野は、早稲田には4人の専任教員がおり、研究レベルがきわめて高い。
・10代後半から20代前半のいわゆる青春とよべる季節を早稲田で過ごすことがで
き、感謝と感無量の気持ちでいっぱいです。他のどの場所にもかえることはできない
早稲田大学!
・私が通うキャンパス図書館の職員は親切で、心に灯がともるような気分になる。
・所属箇所の事務所の職員の方が、気持ちよく接してくれる。
・所属箇所の事務所の職員の方は、いつも親切で気持ちがいい。
・所属箇所の事務所の職員の方は、諸連絡などの際、私の顔を覚えてくれていて(個別
に)対応してくださいます。
・所属箇所の事務所。すごくやさしくて好きです。
・所属箇所の事務所の窓口サービスは、非常に充実している。
・組織が大きくてたいへんだとは思うが、よく努力していると思います。
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