...

会 計 検 査 院 第 24回 公 会 計 監 査 機 関 意 見 交 換 会 議 プ ロ グ ラ ム

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

会 計 検 査 院 第 24回 公 会 計 監 査 機 関 意 見 交 換 会 議 プ ロ グ ラ ム
目
次
(ページ)
Ⅰ
第24回公会計監査機関意見交換会議の概要
Ⅱ
基
調
講
演
・・・・・・・・・・・・・
1
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
5
「公会計への信頼回復と監査の役割」
(講演者)
Ⅲ
碓井
光明(明治大学大学院法務研究科
パネルディスカッション
教授)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
「再発防止に向けた検査・監査・評価~公会計への信頼を回復するには~」
Ⅰ
第24回
公会計監査機関意見交換会議の概要
-1-
-2-
開 催 の 趣 旨
公会計監査に関与する機関の関係者が一堂に会して、公会計監査の現状、効果的な監査活動
の在り方等について公開討議を行ったり、意見交換を行ったりすることにより、監査機関相互
の連携を強化し、検査・監査活動の一層の充実に資することを目的として意見交換会議を開催
するものです。
プ
構
成
時
ロ
13:00~13:05
基
13:05~14:05
講
演
ラ
ム
重松
博之
(会計検査院長)
間
主 催 者 挨 拶
調
グ
「公会計への信頼回復と監査の役割」
講演者:碓井 光明
(
パネルディスカッション
プレゼンテーション
休
討
憩
議
14:05~15:05
15:05~15:20
15:20~16:30
明治大学大学院法務研究科
教授
)
「再発防止に向けた検査・監査・評価
~公会計への信頼を回復するには~」
パネルディスカッションの概要
再発防止に向けた検査・監査・評価
~ 公会計への信頼を回復するには
~
近年、地方公共団体を始め、様々な公的諸機関において、虚偽の内容の関係書
類を作成するなどして公金を不正に支払ったり、さらにこれを別途に経理して業
務の目的外の用途に使用したりするなどの不適正な会計経理が行われていたこと
が、本院の決算検査報告において明らかにされ、マスコミで報道されたことか
ら、公会計における信頼が脅かされる事態が見受けられている。
このような状況の中、総務省において地方公共団体監査制度の見直しについて
も議論されているところである。
公的機関において、基本的な会計経理を適正に処理する責任は、第一義的には
執行部門が有しているところであるが、公会計監査に関与する機関も基本的な使
命として執行部門のけん制、業務の実施状況の確認、不適正事態の再発防止な
ど、一定の役割を果たすことが求められており、特に不適正な会計経理が会計法
令等の遵守及び公金の取扱いの重要性に対する認識の欠如などを原因として行わ
れた場合には、その再発防止について果たすべき役割は一層重要なものと考えら
れる。
このことから公会計における不適正な会計経理等の再発防止を図るために、実
質的に執行部門と組織を同じくしている内部監査と組織的に独立している外部監
査はどう取り組み連携していくべきか、それぞれの役割について公会計監査に関
与する各機関がさまざまな角度から討議する。
(パネリスト) 碓井 光明
松本 順
高徳 敏弘
髙橋 敏朗
八木原壮夫
遠藤 尚秀
田代 政司
(明治大学大学院法務研究科教授)
(総務省北海道管区行政評価局長)
(香川県監査委員事務局長)
(大阪市代表監査委員)
(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構監事 )
(日本公認会計士協会常務理事)
(会計検査院総括審議官)
(司
(日本大学総合科学研究所教授)
会) 有川
博
-3-
-4-
Ⅱ
-5-
基調講演
-6-
【基調講演者】
う す い
みつあき
碓井
光明
(明治大学大学院法務研究科教授)
経
歴
昭和44年 3月 横浜国立大学経済学部経済学科 卒業
49年 3月 東京大学大学院法学政治学研究科公法専門課程博士課程修了
49年 4月 横浜国立大学経済学部助教授
63年 4月 横浜国立大学経済学部教授
平成 3年 4月 東京大学大学院法学政治学研究科教授
20年 4月 明治大学大学院法務研究科教授
現在に至る
これまで、財務省財政制度等審議会委員、総務省地方行財政検討会議構成員、地
方制度調査会委員などを歴任。
現在、日本財政法学会(理事長)、日本自治学会(理事)、租税法学会、日本公法
学会等に所属。
主な著書として、『行政契約精義』(信山社、11年)『社会保障財政法精義』(信山
社、09年)、『政府経費法精義』(信山社、08年)、『公的資金助成法精義』(信山社、07
年)、『公共契約法精義』(信山社、05年)、『要説住民訴訟と自治体財務(改訂版)』
(学陽書房、02年)、『要説地方税のしくみと法』(学陽書房、01年)、『要説 自治体
財政・財務法(改訂版)』(学陽書房、99年)など
-7-
第 24 回公会計監査機関意見交換会基調講演
「公会計への信頼回復と監査の役割」
明治大学大学院法務研究科 碓井光明
1
不適正な会計処理の発生原因の分析
大きな不適正経理の場面
国にあっては、競争的研究資金のことが多い。
不適正会計処理の類型
A型:公務員の誰もが告発したくなる不正行為(横領等)
B型:不正ではあるが敢えて告発すると思わない不正行為
C型:組織的不正行為
C-1型
課単位のような比較的小さな組織単位の不正行為
C-2型
全庁的な不正行為
不適正な会計処理を発生させる真の原因の究明の必要性
役所内の「通念」と世間の社会通念との乖離
役所内の通念も社会通念も変化する。
C型からB型へ、さらにA型へと移行。
競争的研究資金に関しては、研究機関ないし研究者の歪んだ意識と研究費使用
についての会計的制約→通常の役所の不適正経理とは異なる。
「再発防止」の意味
同一の公務員が同一の不適正な処理を繰り返すという意味の「再発」なのか?
同種の不適正な処理が、他の部門、他の組織においても繰り返されるという意
味の「再発」か。後者であるとするならば、「他山の石」として学ぶ必要。
民間企業と公共部門との違い
民間企業:売上げないし利益の獲得を最大の目標にする。粉飾決算等が最大の
問題
公共部門:大部分は消費型→例外はあるものの違法不当な公金支出に警戒する
ことが主たる課題
会計年度独立主義による制約
国の予算執行において、配賦された予算の示達が遅延することが多い。
年度末直前の追加示達(にもかかわらず年度内消化を迫る)
不要不急の経費に充てられることも起こる。
真に必要な経費に充てる予算が不足していることとのアンバランス
建前としての弾力化と運用実態(繰越し手続を厭う運用)
地方公共団体は、年度の後半に成立する補正予算に基づき、短期間の予算執行
を余儀なくされる。
-8-
2
内部統制の重要性とその限界
内部統制体制の整備により、A型やB型の発生は、ある程度抑止できる。
会計処理を一人の者に委ねることの危険性及び現物確認必要性の認識
内部統制体制を整備しても、C型、特にC-2型には必ずしも有効に機能しない。
不適正処理があった場合には、それに対するPDCAを徹底する必要。
組織に見合った内部統制体制の必要性
国:各省内部部局、外局、出先機関、独立行政法人
地方公共団体:長部局、それ以外の執行機関、公営企業、地方独立行政法人
内部統制体制の整備の中には、内部監査体制も含まれる。
省庁は内部監査体制をとっている(A型、B型には有効)。
地方公共団体には、会計管理者のほかに、別個に監察の組織又は職を設けてい
る場合がある。
→その組織を一定程度まで充実させるならば、現行の監査委員の監査機能の縮
減を図ることができる。そのほかに、特別の検査体制を整備する方式もある。
たとえば、神奈川県の「特別会計事務検査」実施体制の整備(平成 22 年 10 月)
内部通報(公益通報)制度の整備も重要
通報先と通報についての処理体制が課題
通報者の完全な保護の必要性。通報者探しの虞れ。
3
独立監査機関ないし独立監査
A型やB型については、長直属の独任型監査人の監査で抑止することも可能。
C型とくにC-2型は最も難しい。
C-2型に有効な監査を実施するには、独立性のある監査機関が監査方法を工
夫して監査を実施することが必要。
包括外部監査制度があるにもかかわらず、C-2型の不適正処理の是正に決定
的な貢献をした旨を聞いたことはない。
国にあっては、憲法上の独立機関として会計検査院が存在する。
検査を強化しても、会計検査院の職員の身分は保障される。
地方公共団体における組織的預け等による不適正処理が、第一次的に会計検査院の
検査によって指摘された事実をいかに見て、何を学ぶか。
→地方公共団体の監査委員監査がC-2型には機能を発揮していないことを示
している。
地方公共団体の監査委員制度は、制度上の建前としては、長等の他の執行機関、議
会からの独立性があるといってもよい。
しかし、三重の問題がある。
① 監査委員自身の意識・能力
-9-
名誉職的意識の識見委員、議会における有力者意識をくすぐる議選委員
解決策→監査能力を備えた者を選任
② 監査委員を支える事務局職員
事実上、長による人事権の下で異動するために、真の独立を確保すること
は難しい。監査事務で力を発揮した職員が爾後の人事異動で積極評価され
るかが問題。
複数の地方公共団体が事務局の共同設置をしても、その事務局に長年勤務
するとなると人事の停滞を招きやすい。
解決策→監査委員が補助者として公会計に関する一定程度の専門知識を備
えた人を活用できる制度を創設してはどうか。
「公会計監査士」としての認
定を受けて登録されている者を補助者とすることなどが検討されるべきで
ある。会計検査院の退職者、その他公会計の事務に一定年数従事した者な
どが考えられる。
③ 議会との関係
議会の意思決定による行為でありながら、予算執行は長の系列でなされる。
議会の事項について指摘することは、監査事務に従事する職員にとって躊
躇したくなる。
議選監査委員(それは長の下にある組織には重く受け止められる役割を果
たしている)の存在が、議会との関係においては時にはマイナスに作用。
解決策→議員の圧力的行動は公表する。議選委員は廃止。代替措置は後述。
4
再発防止と検査・監査
クライアントに気兼ねしない監査体制をいかにして整備するかが最大の課題。
その際に監査のコストも重要な視点
全国統一的な監査組織を新設することは、膨大なコストを要するか。
会計検査院が地方公共団体の監査を行うことはどうか。
地方分権の趣旨に反するとの世論に抗しきれない。
しかし、個別の地方公共団体が会計検査院に個別外部監査的な監査を有料
で委ねることは、地方分権の趣旨に反しない?
監査事務者の頻繁な異動に伴う研修コスト
会計検査院と異なり、地方公共団体の監査事務従事者は、監査委員の事務
を補助する職員、内部監査職員を含めて、頻繁に異動することが多い。そ
の結果、研修のコストがかかるうえに、習熟した頃には異動する。
専門職設置の必要
理想は、専門の資格・能力を持つ人が、監査市場において競争できる(よりよ
い待遇を求めて異動できる)環境の整備
-10-
任期付職員の採用(大阪市の例)による代替措置
保証型監査論の有用性と限界
粉飾決算の発見等との関係において保証型が採用されることには合理性がある。
しかし、監査人の責任論を背景にした保証型監査論は、再発防止には必ずしも
貢献しない。
包括外部監査は、テーマ設定方式であるので、保証型ではない。
議会の検査・監査機能は、独自に追求すべきである。
議選監査委員は廃止して、議会自体の検査・監査機能を充実させる必要がある。
たとえば、
「監査常任委員会」を設置して、閉会中においても常時活動すること
が考えられる。
5
おわりに
政府部門における情報の共有
不祥事の例と対策の情報を共有
神戸市経理適正化外部検証委員会報告書(平成 23 年 5 月 11 日)
これに基づき市長をトップとする神戸市経理適正化推進本部、その下部組
織として課長級職員をメンバーとする神戸市経理適正化委員会を設置
監査、監察業務等に係る情報連絡会:会計室、行財政局監察室、監査事務局の
関係職員をメンバーとする。
総務省「国の行政機関の法令遵守(会計経理の適正化等)に関する調査の結果に基
づく勧告に対する改善措置状況(回答)等の概要」
→この結果を各省庁が真摯に受け止めて、活用する姿勢が望まれる。
会計検査院と省庁監査部門との情報共有
会計検査院主催の各府省等内部監査担当者連絡会
各府省等内部監査担当者と会計検査院能力開発官付公会計監査連携室との
間、各府省等の内部監査担当者相互間における情報や意見の交換を通じて会計
者が適切な連携を深めるとともに、各府省等の内部統制の一層の向上に資する
ことを目的として開催。
情報共有の問題点
情報共有のための場の形骸化への警戒
A型には、ある程度有効であるが、外部監査機関がC型特にC-1型検査・監
査の手の内を見せてしまう結果になることもある。
最後に強調したいこと
「形式」ないし「外観」を整えることを最優先する発想からの脱皮。
各種書類の日付を空欄にする、印鑑を預けるなどの扱いについて警戒する必
要がある。
-11-
-12-
Ⅲ
パネルディスカッション
-13-
-14-
再発防止に向けた検査・監査・評価
~ 公会計への信頼を回復するには ~
(ページ)
(パネリスト)
碓井
光明
明治大学大学院法務研究科教授
<以下、発表順>
田代
政司
会計検査院総括審議官‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥16
高徳
敏弘
香川県監査委員事務局長‥‥‥‥‥‥‥‥‥・・・・・・・・・・24
髙橋
敏朗
大阪市代表監査委員………・・・・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥30
八木原壮夫
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構監事・・・・36
松本
順
総務省北海道管区行政評価局長‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥40
遠藤
尚秀
日本公認会計士協会常務理事‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥46
(司
有川
会)
博
日本大学総合科学研究所教授
-15-
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥56
【パネリスト】
た し ろ
せ い し
田代
政司
(会計検査院総括審議官)
経
歴
昭和54年 3月 東京大学教養学部教養学科
54年 4月 会計検査院 採用
平成18年 4月 第1局財務検査課長
19年 7月 事務総長官房総務課長
21年 8月 同
審議官
23年 7月 同
総括審議官
現在に至る
-16-
卒業
第24回公会計監査機関意見交換会議
再発防止に向けた検査・監査・評価
~公会計への信頼を回復するには~
平成24年8月24日
会計検査院事務総長官房
総括審議官 田代政司
基本的な会計経理に関する検査の方針
平成24年次会計検査の基本方針(会計検査院全体の方針)
「合規性の検査は、なお多くの不適切な事態が見受けられ
ていることを踏まえて、引き続きこれを十分に行う。その際に
は、近年一部の府省等において不正不当な事態が相次いだ
ことも踏まえて、特に基本的な会計経理について重点的な検
査を行う。」
この基本方針を踏まえて、各検査課は、次の点を勘案し
て、検査に当たって重点的に取り組むべき事項を検査上の
重点項目として設定して検査に当たっている。
・所掌する検査対象機関の予算等の規模や内容
・内部監査、内部牽制等の内部統制の状況
・過去の検査の状況や結果等
2
-17-
検査の方法
物品購入契約、工事や役務の請負契約、委託契約の場合
○計算証明規則により本院に送付される契約書、領収証書等の証
拠書類により書面検査を実施
○官側の事務所に対する会計実地検査を実施して、検査調書、実
績報告書、精算報告書等の書類を検査
○あらかじめ業者に対して、国等との間の当該契約を検査すること
を通知した上で、業者に赴いて総勘定元帳等の会計帳簿により
確認(会計検査院法第23条第1項第7号の規定による検査権限)
3
基本的な会計経理に関して検査した結果、判
明した不適切な事態(1)
- 最近の検査報告から主な指摘事項を抜粋 -
① 物品の購入等に当たって、虚偽の内容の関係書類を作成するなどし
て、 預け、差替え、一括払い、翌年度納入など不適正な経理処理を
行っていた事態 (9省庁、1独立行政法人)
② 農林水産省、国土交通省の国庫補助事業に係る事務費等の執行に
当たって、物品の購入に関して虚偽の内容の関係書類を作成するな
どして、預け、差替え、一括払いなど不適正な経理処理を行っていた
事態 (実地検査を実施した47の全都道府県及び18の全政令指定
都市)
③ 科学研究費補助金の経理において、研究代表者が業者に架空の取
引を指示して虚偽の納品書、請求書等を作成させて、購入代金を別
途に経理していた事態
4
-18-
基本的な会計経理に関して検査した結果、判明した
不適切な事態(2)
- 最近の検査報告から主な指摘事項を抜粋 -
④ 一括して一般競争入札に付することが可能な業務を意図的に予定価
格が100万以下になるよう8契約に分割して、随意契約により特定の
業者に発注していた事態
⑤ パンフレットの作成に当たり、関係書類に架空の日付を検収日として
記載して現年度に納入されたこととして代金を支払っていたが、翌年
度の会計実地検査時点においても未納入となっていて、会計実地検
査の際、この事実を糊塗するために急きょ見本のパンフレットを少量
印刷していた事態
⑥ 歳入徴収官が自ら行うべき徴収の意思決定を行っておらず、会計担
当者が歳入徴収官の印鑑を独断で押印していたり、資金前渡官吏が
自ら行うべき支払の決定や振替指示書の署名を行っておらず、会計
担当者が署名していた事態
5
基本的な会計経理に関して検査した結果、判明した
不適切な事態(3)
- 最近の検査報告から主な指摘事項を抜粋 -
⑦ 業務委託契約において、支出負担行為をすることなく追加業務を受託会
社に実施させていたり、追加業務の経費が予算額を超えることになって
いたにもかかわらず予算措置を講じていなかったりしていた事態
⑧ 教職員が、勤務時間中に職員団体の活動を行ったり、児童等が夏休み
の長期休業の期間に勤務時間を遵守していなかったり、校外で行ってい
たとした研修を実際には行っていなかったりしていて、勤務時間中の職
務専念義務が遵守されておらず、この結果、義務教育費国庫負担金に
影響する事態
⑨ 支払相手先は報償費を受領していない旨の回答があるにもかかわらず、
報償費の執行の裏付けとなる領収証書等の証拠書類が保存されておら
ず、その使途を確認できない事態
6
-19-
発生原因
- 物品購入に係る不適正経理を例にすると -
○ 私的流用ではなく、事務手続きの省力化になるのであれば多少の手続
きの瑕疵は許されるという意識
○ 予算を余らせない、あるいは交付を受けた補助金は返還が生じないよう
にすべて使い切らなければならないという意識
(この意識が会計法令を遵守しなければならないという意識より優先)
(物品の購入の必要性、価格の妥当性を検討することなく発注)
○ 契約事務と検収事務を同一の担当者が行っていたために、検収事務が
形骸化して、契約した物品が納入されていないのに納入されたとして経
理処理することが安易にできたなど会計事務手続き上の問題
すなわち、内部統制の機能不全
(調達要求課が発注から検収までの一連の会計事務手続きを行ってい
て職務の分担による相互牽制が機能しにくい)
7
当局が執った再発防止策
- 物品購入に係る不適正経理を例にすると-
○職員の意識改革
職員に対する基本的な会計法令等の遵守に関する研修指導の徹底
公務員倫理の徹底、会計事務処理の適正化等についての文書発出
○物品調達体制の見直し
相互けん制機能が発揮されるようにするために、契約事務と検収事
務を行う部署の分離や集中調達機関の新たなる設置
○監査機能の強化
内部監査担当部局への専任職員の配置
内部監査実施要領の制定
監査委員事務局の職員数の増加や監査経験豊富な職員の配置
8
-20-
検査結果の実効性の確保
実効性確保の内容
○損害の回復
○改善の処置
(会計経理や行政運営に関す
る法令、内規、要綱等の改正
や、不適正な事態の再発防止
としての指導強化など)
○予算への反映
実効性確保の手段
○会計事務職員の責任の追及
(弁償責任及び検定、懲戒処分
の要求など)
○他機関等への検査結果の情報
提供
○指摘事項のフォローアップ
(フォローアップ検査、国会との
連携、財務当局との連携)
9
検査・監査機関間の協力・連携のタイプ
(INTOSAIによる分類)
助言(advisory)
→ 監査機関間の情報交換
信頼(reliance)
→ ある監査機関によって行われた監査結果の他の
監査機関での利用
同時(concurrent)→ 複数の監査機関が類似の検査を行う。
監査方法を共有し、ほぼ同時期に行われる。
それぞれが監査チームを構成し、監査結果は
それぞれの報告義務者に報告される。
共同(joint)
→ 複数の監査機関に所属する調査官から成る監査
チームが監査を実施する。監査結果の報告書は
それぞれの報告義務者に提出される。
INTOSAI:International Organization of Supreme Audit Institutions
10
-21-
◎監査機関間の協力・連携の効果
○監査を受ける機関の負荷の軽減
○監査対象の重複が避けられることによる監査する
側の資源の効率的な利用
○監査を受ける機関についての情報共有
○監査業務に関する深い知識の向上
○監査の方法、手続きの選択肢が広がり、その結果
グッド・プラクティスの実践
◎協力・連携を阻害する要因
○異なった権限
○方法論の違い
○秘匿する必要がある情報の存在
11
会計検査院が行う協力・連携
○情報交換
総務省行政評価局、日本公認会計士協会、地方公共団体の監査
委員事務局等との定期的な協議会の開催など
○研修
安中研修所を利用して監査担当職員等に対する研修の実施
○人事交流
他の監査機関への出向、公認会計士やシステム監査専門家の任
期付採用など
○監査機関共通の課題に関する全国規模の
フォーラム
12
-22-
参考
米国における内部監査と外部監査(1)
○監察総監(Inspector General)
地位
→ 連邦政府の各機関に監察総監室が設置される(1988年)。
大統領によって任命されるIGは35名、所属機関長により任命
されるIGは34名、計69名。
我が国に比べて独立性の高い内部監査機関
我が国では、原局原課と内部監査部門とを定期人事異動
により行き来する仕組みとなっており、内部監査部門の独
立性が担保されていない懸念
主な職務→ ①プログラムや業務の経済性、効率性の促進(監査)
監査は、GAOの作成した政府検査基準に準拠して行われ
ている。
②不正行為・濫用の防止・摘発するための活動(捜査)
③上記①、②について、当該省庁の長や連邦議会に対して、
是正措置を執るための情報を提供するとともに、是正措置
の実施状況を報告する。
13
参考
米国における内部監査と外部監査(2)
○米国会計検査院(Government Accountability Office)
地位
→ 明文の規定はないが、歳出予算法や連邦財務報告
書では立法府の機関とされている。GAO自身も立法
府の機関であるとしている。院長は、上院の助言と
承認に基づき、大統領により任命される。
主な職務→ ①歳入、歳出及び使途に関する調査
②議会の命令による調査
③政府が実施するプログラム及び活動の結果を評価
(議会からの検査要請に係る報告が、GAOの報告の大半)
14
-23-
【パネリスト】
たか とく
とし ひろ
高徳
敏弘
(香川県監査委員事務局長)
経
歴
昭和52年 3月 岡山大学 法文学部
平成13年 4月 人事課副課長
15年 4月 子育て支援課長
16年 4月 交通政策課長
19年 4月 健康福祉総務課長
20年 4月 大阪事務所長
22年 4月 監査委員事務局長
法学科卒業
現在に至る
-24-
香川県における不正経理再発防止に向けた取組み
1
2
3
4
香川県での不正経理事件
再調査で預け金の発覚
預け金への再発防止策
香川県での監査・検査の体制
5
監査機能の強化のための取組み
香川県監査委員事務局長
高 徳
敏 弘
1
香川県での不正経理事件
香川県庁消費生活協同組合を中心にした預け金
① 平成13年12月、不正行為職員への停職 12 月の懲戒処分
②
平成14年1月、預け金の全庁調査を開始
③
平成14年3月、調査結果を発表
預
④
け
先
費消額(6年間)
左のうち不正費消額
香川県庁消費生活協同組合
4億 2,000 万円
1 億 3,000 万円
約 40 の民間企業
3億 2,000 万円
700 万円
平成14年3月末、懲戒処分等
懲戒免職2人、減給 114 人、戒告 156 人、書面訓告等 1,839 人
⑤
平成14年4月、給料カット等
①知事等の特別職給料減額
②職員の1年間給料カット
計 6 億円相当
(管理職給料 3%、その他職員給料 2%又は 1%、管理職手当 10%)
⑥
平成14年4月末、利息5%を含めての不正費消の弁済
1 億 8,500 万円弁済・このほか弁済協力残余金 4,000 万円を県へ寄附
(部長級 40 万円、課長級 20 万円、係長 1 万円、一般職員 5 千円)
⑦
国への補助金の返還
-25-
2
①
再調査で預け金の発覚
平成20年11月、出納局が約 60 の民間企業に一斉調査した結果、1つの出
先機関で 21 万円の預け金形成等の発覚
②
3
費消額(平成 15 年度以降)
左のうち不正費消額
14 万円
なし
平成20年12月、懲戒処分等
預け金への再発防止策
(1)平成14年の主な防止策
原
因
再発防止策
①公金意識の欠如
①管理職員等に対する研修内容の見直し
②責任体制の不明確とチェック機 ①納品書徴収の義務付け
能の欠如
②複数職員による検収
③所属長による年 2 回の自主検査の実施
③予算の使い切り意識
監査委員の主な防止策
①不用額の返還
(略)
(2)平成20年の主な防止策
①支出前の購入伺手続の導入
②出納局による取引業者への計画的な裏付け調査の実施(平成21年度)
物品、印刷物等の取引の検査に当たり、毎年度、約 40 業者を抽出し調査
監査委員の主な防止策
①監査委員による取引業者への計画的な裏付け調査の実施(平成21年2月)
毎年度、約 20 業者を抽出し調査
※
再発防止策の香川県の特色
①懲戒免職基準の公表(平成2 預け金を形成し、使用した職員や、旅費を不
1年10月)
正支出させた職員は免職
②監査委員及び出納局の両者 全国初の取組み
による裏付け調査の実施
○ 取引業者の協力
○ 職員への抑止効果も期待
○ 課 題
-26-
4
香川県での監査・検査の体制
外部・監査
知事・執行機関
内部・検査 知事の補助機関
会計管理者・出納局
部
監
査
人
内部・監査
独立した 執行機関
監 査 委 員
内部・調査権、監査請求権
決算認定
議決機関
県
議
包
括
外
香
川
県
会
(1)会計管理者・出納局による検査
知事の補助機関であり、県会計規則 262 条に基づき会計事務の執行状況につ
き定例的に実地検査を行っている。民間企業の監査部、考査部といった内部監
査部門に当たる。地方自治法第 243 条の 2 で会計管理者等の賠償責任を定めて
いる
(2)監査委員による監査
知事から独立した執行機関である。地方公共団体の財務や経営につき監査を
行っているが、知事の内部統制組織を使っての内部監査ではない。民間企業の
監査役のように監査委員の賠償責任は明記されていない。
①定期監査
監査委員の職務
②決算審査
③行政監査
④例月出納検査
⑤財政的援助団体の監査
⑥住民監査請求に基づく監査等
-27-
→
→
上記「①定期監
査」の流れ
→
210 の対象所属から監査調書の提出
監査調書等を基に準備
監査委員事務局職員による全所属への予備調査
→
の実施
監査委員による監査の実施(うち約 40 所属は隔
年実施)
各部長へ部の監査結果の講評
→
知事へ県全体の監査結果の説明(9 月)
(3)県議会
重要な事項についての議決機関である。予算、決算を審議するほか、調査権、
監査請求権の行使を通じて調査ができるなど、執行機関に対して監視、けん制
機能がある。
(4)包括外部監査人
県から独立した専門家が、県との委託契約に基づいて特定テーマにつき監査
を行う。
5
監査機能の強化のための取組み
(1)監査委員
①隔年実施の所属をつくらないと十分な委員監査が難しいこと。
②専門知識を有する識見委員と、大局的見地や県民視線を持った議選委員
の役割は大きいこと。
③委員監査と監査委員事務局職員の予備調査を連携すること。
(2)監査委員事務局職員の資質向上
①公認会計士である監査委員による研修の開催
②各種研修への計画的な参加
③簿記検定の資格取得の促進
(3)一般職員の理解と協力
①指摘事項につき翌年度監査でのフォローアップ
②事務的ミス防止のための指摘事項の事例集「監査だより」の配信
③予備調査時での課題の聴き取りと積極的な助言
-28-
-29-
【パネリスト】
たか はし
とし ろう
髙橋
敏朗
(大阪市代表監査委員)
経
歴
昭和43年 3月 大阪市立大学大学院経営学研究科修士課程 修了
平成 5年10月 大阪市立大学商学部教授
8年 1月 同
商学部長、同大学院経営学研究科主任
10年 4月 同
副学長
13年 4月 同
商学部・経営学研究科教授
14年 3月 同大学退職、同大学名誉教授
14年 4月 奈良産業大学経営学部教授
16年 4月 大阪成蹊大学現代経営情報学部教授
18年 3月 同大学退職
18年 4月 大阪市代表監査委員就任
現在に至る
-30-
第24回公会計監査機関意見交換会議
平成24年8月24日
大阪市代表監査委員
髙 橋 敏 朗
資料中、意見にわたる部分については、私見であることをお断りしておきます。
1.最近の監査をめぐる状況(大阪市)
平成16年度~ 職員厚遇問題発覚
平成17年度 任期付職員(公認会計士)2名(課長・係長)採用
(全国都市初)
平成18年度 代表監査委員(常勤)を市職員OB以外から初めて選任
平成18年度 職員等の公正な職務執行の確保に関する条例の施行(公益通報制度)
(平成16・17年度における「職員厚遇問題」の発覚を受けて)
平成18年度 長の要求による地域医療機関(芦原病院)の補助金監査を実施
平成19年度 不適正資金問題発覚
平成19年度 公の施設指定管理者監査実施
平成20年度 「健全化判断比率等審査意見書(平成19年度決算)」提出
平成21年度 不適正契約問題発覚(水道局専決工事随意契約案件)
平成21年度 中央卸売市場事業会計「経営健全化計画策定」
財政健全化法に規定する長からの要求に係る個別外部監査実施
平成21年度 区役所決算審査実施(平成20年度決算)
平成24年度 任期付職員(公認会計士)を5名に増加
平成24年度 監査業務民間委託開始(出資団体等監査)
〔市場化テストに基づくもの〕
1
-31-
2.大阪市における不適正資金問題発覚とその経緯
平成19年10月3日 東住吉区役所において平成3年度より平成18年度まで継続管理していた
不適正資金(プール金)の存在を総務局法務監察室へ報告
平成19年12月5日 公正職務審査委員会による調査実施の決定
平成20年2月4日
公正職務審査委員会から市長に対して「不適正資金の調査についての
勧告」
平成20年2月5日
不適正資金についての全庁調査の開始(当初締切日:2月21日)
平成20年3月10日
「不適正資金問題等についての全庁調査」結果報告を公表
平成20年3月14日
公正職務審査委員会から市長への意見書において別途の専門機関・
組織を設置するなど大阪市の権限と責任において解決を図るべき旨の
意見表明
平成20年4月1日
大阪市不適正資金問題調査検討委員会(以下「調査委員会」という)を
設置
平成20年6月5日
大阪市長へ調査報告書を提出
(調査報告書より)
2
3.不適正資金問題の調査結果(1/2)(調査報告書より)
① 調査結果から判明した大阪市の不適正会計処理の総額
所属数
件数
不適正資金
18
28
175,315,731円
預
16
26
30
58
140,541,676円
315,857,407円
け
計
捻出が確認された金額
不適正資金
公金や公金外現金から不正に捻出し、いったんプールした後、通常
の決裁手続を経ずに支出するために保管している資金のこと
預
物品の納品なしに代金名目で一定額を取引事業者に支払い、後の
物品購入等の代金として、取引事業者に管理させるもの
け
② 不適正資金捻出方法
•
•
•
•
アルバイト賃金の架空或いは出勤日数の水増請求
事業費用の架空或いは水増し請求
切手シートの現金化
廃液から回収した塩化銀を売却
3
-32-
3.不適正資金問題の調査結果(2/2)(調査報告書より)
③ 使 途
• アルバイト賃金、事務用消耗品・備品等の購入、タクシー代
• 民間人選挙関係者の食事代・手土産代・車代等
• 投票事務従事職員の自動車出勤時ガソリン代、宿泊代、弁当代等
• 懇親会費・職員の飲食代
その他
④ 預けの手法
• 安易に契約できる物品や金額が対象となる
• 納品させないまま、代金を支払う
• 後日必要なときに必要な物を納品させる
⑤ 不適正会計処理発生の原因と背景の分析
•
•
•
•
予算は使い切らなければならないという意識の存在(預けの多くはここに起因する)
区役所内部でのチェック機能が十分でなかった
コンプライアンス意識の不足や職場の組織風土
監査の取り組みが不十分
4
4.調査委員会が提示した改善策
① 意識・風土の改革
・ 職員の意識改革 (コンプライアンス研修や会計事務担当者研修の実施)
・ 職場の風土改革(局区間人事交流の推進 等)
② 公会計制度の改革
・予算の配当保留制度 の解除のタイミングの適切化、 予算の節減インセンティブ制度の導
入
・ 口座振込払いの徹底、 小口支払基金の活用
③ 公金外現金の取扱い
・精算報告の義務付け
④ 預けの防止対策
・尐額特名随意契約にも見積合わせを実施、不正協力業者の指名停止措置 等
⑤ 監査における厳正なチェックの実施
・監査実施上の主たる着眼点として実施 等
⑥ より厳格な懲戒指針の策定
・不適正資金に関する事項について 規定追加
5
-33-
5.再発防止に向けた取り組み(1/3)
不正のメカニズムへの対応(不正のトライアングル)
正当化
従って、内部統制と監査
が相互に協力する体制も
存在せず、監査機能にも限
界があった
動
米国監査基準No.99の補録
機会
動機
「不正リスク要素」を参考に作成
<問題点>
<3要素>
<不正対策>
個人の動機
機
閉鎖的な組織風土
(インセンティブ、プレッシャー)
不正防止
プログラム
人事評価上の問題点
不公平な人事制度
正 当 化
複雑・煩雑な事務システム
潤滑油としての資金の必要性
内部統制の
整備・運用
モニタリングが不在
機
いままで行政の内部では
内部統制が殆んど機能し
てこなかった
会
形式的なチェック体制
コミュニケーションの欠如
6
5.再発防止に向けた取り組み(2/3)
不適正会計処理に関する職員の意識
コンプライアンス研修前に実施したアンケート結果より(平成21年1-2月に実施)
質
問
はい
どちらとも
いえない
いいえ
合計
たとえ 不適正な会計手続により捻出
された資金であっても公的目的に使
用されれば本当は問題がないと思う
15人
(2.9%)
72人
434人
(13.8%) (83.3%)
521人
(100%)
不適正な手続で捻出された資金であ
ったとしても私的費消さえなければ、
問題はないと思う
8人
(1.5%)
54人
459人
(10.4%) (88.1%)
521人
(100%)
7
-34-
5.再発防止に向けた取り組み(3/3)
① 不正防止プログラム(予防)
・職員向け各種相談制度、所属向け相談など (早期の問題解決策の提示)
・監査における指導的役割の発揮 (事前監査プログラム : 事例説明会・解決案の準備)
② 内部統制の整備・運用(内部牽制・内部監査・内部監察・公益通報・内部評価など)
・ダブル・チェックの徹底
・履行確認の徹底
(注)内部統制とは、行政の経営と業務を正しく遂行するためのチェック機能を十全に働かせるための仕組み
③ 厳格な監査の実施
・不正リスクが顕在化していないか監査着眼点への織込み
・リスク・アプローチ型監査への転換
④ 内部統制と監査の連携
・監査が本来の役割を発揮するには、内部統制がある程度機能していることが前提
・内部監査が問題点として指摘した項目を監査がしっかりとフォローする
・これからの内部統制と監査の課題
財政状況が厳しい中、3E視点をも導入した内部統制への移行が喫緊の課題
 内部統制と監査を別個に評価するのではなく、ガバナンス体系の中に位置づけ、そ
の網の目で不正会計処理を防止する
8
6.今回の不適正会計処理をめぐる総括
① 現行の監査委員監査 - 不適正会計処理を見つけられず - 制度欠陥 あり?
② 不適正会計処理
③ 発生タイミング
-
-
発生原因の究明が重要
水際チェックの重要性
④ 予算単年度主義の問題点
-
予算は使い切らねばならないか
⑤ 全国都市監査委員会理事会の議論
-
「制度廃止を含めた抜本的改革」に
は賛同できない
⑥ 監査もコストパフォーマンスの対象 ― 監査委員事務局も行財政改革の対象
⑦ 監査の調査権限
-
制約あり
⑧ 内部統制・監査の連携のあり方
⑨ ガバナンスの全体系
-
不適正会計処理の防止
⑩ 不適正会計処理のリスク ― 監査としての対応策 ― 一部対応済み・対応計画
検討中のものあり
-35-
9
【パネリスト】
や
ぎ
は ら
八木原
た け
お
壮夫
(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構監事)
経
歴
昭和48年 3月 日本大学文理学部心理学科 卒業
48年 4月 雇用促進事業団採用
平成15年 4月 日本障害者雇用促進協会 国立吉備高原職業リハビリ
テーションセンター職業評価部長
17年 4月 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構情報研究部長
17年10月 同
監事
23年10月 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構監事
現在に至る
-36-
監視機能の強化と不正への対応
1.独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構の概要
2.不適正な会計経理の主な態様例と事案の概要
3.不正のトライアングル
4.旧雇用・能力開発機構における対応と再発防止策
5.新機構における再発防止策の強化
独立行政法人
高齢・障害・求職者雇用支援機構
監事 八木原壮夫
1.独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の概要
旧独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構
平成15年10月設置
○障害者の就職促進や職場定着を図るため、障害者や事業主に対する相談・情報提供、報奨金等各種の
支援を実施。
○高年齢者等の雇用の促進を図るため、事業主等に給付金を支給。
旧独立行政法人雇用・能力開発機構
平成16年3月設置
○求職者等の再就職、能力向上のため、職業訓練を実施。
○企業の雇用管理改善のため、雇用相談等を実施。
↓
平成23年10月廃止解散
※職業訓練業務を旧独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に継承
(職員数約3,000名)
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構
平成23年10月名称変更(職員数約3,800名)
○障害者の就職促進や職場定着を図るため、障害者や事業主に対する相談・情報提供、報奨金等各種の
支援を実施。
○高年齢者等の雇用の促進を図るため、事業主等に給付金を支給。
○求職者等の再就職、能力向上のため、職業訓練を実施。
-37-
2.不適正な会計経理の主な態様例と事案の概要
【不適正な会計経理事案の概要】
適正
翌年度納入
契約前納入
前年度納入
先払い
【件名】物品の購入等に当たり、虚偽の内容の関係書類を作成
するなど不適正な会計経理を行って経費を支払っていたもの
納
品
内
容
【当事案の内容】
旧雇用・能力開発機構の本部、27施設に対する平成21年
の会計検査院による会計実地検査の結果、平成14年度及び
16年度から20年度までの契約について、旧雇用・能力開
発機構の9施設において以下の不適正な経理処理が判明。
預け金:5施設、 約788万円
差替え:5施設、 約 58万円
約846万円
金額合計
不適正
適正
納品時期
※業者に架空取引を指示し、
未納の契約物品を納入済みと
する虚偽の書類を作成し、代
金を支払い、業者に預け金とし
て保有させ、後日、これを利用
して契約物品と異なる物品を
納入。
※業者に虚偽の請求書等を提
出させ、未納の契約物品を納
入済みとする虚偽の書類を作
成し、代金を支払い、実際には
契約物品とは異なる物品に差
し替えて納入。
差替え
預け金
不適正
3.不正のトライアングル
納入業者とのなれあい
・取引回数の多いなじみの業者には
安易に不適正な依頼を行いやすい。
けん制体制の不備
・経理担当者を過信した上司等の
審査確認不足。
機会
不十分なコンプラ意識
・法令や規程を遵守する意識が弱かった。
単年度予算消化
・施設に配賦された予算を
使い切ることで、翌年度の
配賦予算の削減を防ぎたい。
不正行為
動機
前例踏襲
・従前からの経理処理を当然視した。
正当化
-38-
4.旧能開機構における対応と 再 発 防 止 策
外部機関の取り組み
機構内部の取り組み
監事監査等の強化
職員の意識改革
・会計責任者である施設長に対する自覚の
徹底(全国所長等会議における指示)
・経理事務担当者研修における指導
自主点検の実施
・物品の購入等に係る会計処理の自主点検
を実施
物品調達・管理体制の
改善
監事による監査
再発
防止
・年度末の物品の大量調達に注視した監査
会計監査人による監査
・施設における内部統制の整備運用状況の検証
・適正な調達手続きの遵守を指示
・事務消耗品の本部一括契約・調達を開始
・年度途中の予算執行状況調査による不要予
算の引き上げ・再配分
内部監査機能等の
強 化
・内部通報制度の制定
・物品の購入等に係る内部監査の実施
5.新機構における再発防止策の強化
新機構における再発防止策の強化
●法令遵守等の行動規範の徹底
●公益通報制度の強化
●適正な会計処理の徹底
●監事監査、内部監査、会計監査人監査の三機
能がそれぞれ独立して、評価を行う体制を整備
●内部監査室による施設監査の強化
-39-
【パネリスト】
まつ もと
じゅん
松本
順
(総務省北海道管区行政評価局長)
経
歴
昭和51年 3月 茨城大学人文学部 卒業
51年 4月 行政管理庁東北管区行政監察局 採用
平成14年10月 総務省行政評価局調査官
16年 7月
行政評価局総務課政策評価審議室長
18年 7月
行政評価局総務課地方業務室長
19年 1月
行政評価局評価監視官
23年 7月
北海道管区行政評価局長
現在に至る
-40-
不適正な会計経理等の再発防止を図るための
内部監査と外部監査の取組み・連携について
総務省北海道管区行政評価局長
松本
順
公共調達の適正化に関する監視体制の充実強化に係る政府の方針
1
各府省
○内部監査の強化
・所管公益法人等との随意契約について重点的に監査
○入札監視委員会等の第三者機関の設置・活用
・全府省に設置
本省のみならず相応の発注規模の地方支分部局にも設置
・すべての契約を対象に監視
工事本省のみならず物品・役務等も監視対象
入札契約のみならず随意契約も監視対象
・応札者(応募者)が1者しかないものなどは重点的に監視
・第三者機関の審議の概要は公表
○談合疑義案件に係る公正取引委員会との連携強化
2
独立行政法人等
○監事、会計監査人等による入札・契約の適正性の徹底的なチェック
○各府省独立行政法人評価委員会による事務執行の適正性の厳正な評価
3
各府省横断的(一元的)な監視体制の整備
○総務省行政評価局が各府省横断的に調査
→「契約の適正な実施に関する行政評価・監視」を実施し、H20.12 勧告
○政策評価・独立行政法人評価委員会(総務省)が厳正な2次評価
○公共調達の適正化に関する関係省庁連絡会議(議長:内閣官房副長官)
による関係省庁間の連携確保
(注)
随意契約の適正化の推進について(H19.11 公共調達適正化関係省庁連絡会議)等による。
-41-
内部監査等に関する最近の総務省行政評価局の指摘事項
1
内部監査について
(H22.7 国の行政機関の法令遵守(会計経理の適正化等)に関する調査結果に基づく勧告等)
○「預け金」等の不適正な会計経理の問題について重点的に監査すべき
ところ、内部監査(会計監査)計画等にその旨を定めず
○会計経理の適正性をチェックする監査手法の一層の充実が必要
→ 納品書等の5年間程度の保存義務
→ 契約相手のみならず納品業者からの聞き取り調査の実施と、両
者の帳簿の突合
○内部監査(会計監査)結果に対する改善措置結果の報告義務なし
○内部監査(会計監査)結果を関係部署全体に周知(共有)せず
【勧 告】
内部監査においては、公共調達における不適正な会計経理の問題を
重点的に監査することとし、その旨を監査計画等に明確に定めるとと
もに、監査手法を充実するなどにより、内部監査の強化を図ること
2
入札監視委員会等の第三者機関について
(H20.12 契約の適正な執行に関する行政評価・監視の結果に基づく勧告)
○中立性・公正性の観点から疑問のある者(契約実績のある所管公益法人
の役員等)が委員に選任
○審議案件の抽出を委員ではなく事務局が実施
○重点監視の対象とすべき1者応札(応募)案件を全く審議せず
○審議概要の公表が相当期間(約 6 か月)経過後、具体的な審議内容が未
記述
-42-
内部監査と外部監査の取組み・連携について
1
監査に求められる機能
(1) 合規性(適正性)のチェック
会計部門職員等が会計法令等の遵守及び公金の重要性を十分認識し
て業務を執行しているか → 会計監査
(2) 必要性・有効性・効率性等のチェック
組織が行っているすべての業務の執行状況について、その必要性を
含め、効果的・効率的に行われているか → 業務監査
2
監査等の実施主体の現状(国の行政機関の例)
(1) 内部監査(各府省)
ア 会計監査 : 会計課監査係
イ 業務監査 : 監察官、監査官
ウ 政策評価 : 政策評価課
エ 行政事業レビュー : 会計課
オ 法令等遵守 : 官房コンプライアンス室
(2) 外部監査
ア 各府省
第三者機関によるチェック : 入札監視委員会
イ 制度官庁(予算執行の適正性を監査)
財務省主計局 : 四六監査、予算執行調査
ウ 政府部内の(評価等)専担組織(府省横断的にチェック)
(ア) 総務省行政評価局
: 行政評価・監視、政策評価
(イ) 内閣府行政刷新会議 : 事業仕分け、行政事業レビュー
エ 国会
(ア) 衆議院 決算行政監視委員会 : 事業仕分け
(イ) 参議院 決算委員会、行政監視委員会 : 決算審査等
オ 会計検査院
-43-
3
課題(各方面からの指摘)
○会計法等に基づく現行会計制度の見直し(不適正な会計経理の背景との指摘)
予算単年度主義、複数年契約や支払方法等の制限 等
○会計経理部門における内部統制体制の整備
○監査部門職員の専門性
公会計の制度・運用に関する専門知識、様々な監査手法に精通した
人材の確保・育成 → 採用、人事、研修等の見直し
○監査部門の連携
組織の集約を含む、適切な役割分担と情報交換の一層の推進
※ 行政改革の総合的かつ集中的な実行に関する法律案
第 33 条 行政刷新及び行政監視に係る機能を一元的に担いつつ、行政改
革を恒常的かつ強力に推進する組織の在り方を検討
○人事評価への反映
会計法令等の遵守状況、費用対効果(便益)や歳出の無駄の排除に
関する取組実績を人事評価に反映 → 幹部の責任の明確化
【留意点】
○監査担当者の既存資格の取得や新たな資格の創設の必要性
・既存資格:公認会計士、内部監査士、評価士 等
・新資格 :公会計の監査に必要な専門的知識に着目した資格制度
を創設する必要性
○監査の独立性の確保方策
監査テーマや外部監査人の選定を誰が行うのか
※監査役に会計監査人の選任や解任に関する決定権を持たせ、監査機能を強化
(会社法制の見直しに関する要綱案(第 1 次案))
○監査基準の必要性
内部監査及び外部監査の質(水準)を確保するため、各府省共通の
監査基準を設定する必要性
-44-
-45-
【パネリスト】
えん どう
なお ひで
遠藤
尚秀
(日本公認会計士協会常務理事)
経
歴
昭和59 年
61年
61年
平成 9年
3月
3月
4月
8月
16年
19年
20年
8月
7月
4月
22年
4月
22年
7月
22年
7月
22年10月
23年 3月
24年
1月
関西学院大学 商学部卒業
関西学院大学大学院 商学研究科博士課程前期課程修了
遠藤公認会計士事務所入社
遠藤公認会計士事務所退社後、8年間の某法人勤務を経て、
センチュリー監査法人(現 新日本有限責任監査法人)入所
新日本有限責任監査法人パートナーに就任(現在に至る)
日本公認会計士協会理事/近畿会副会長に就任
関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科非常勤講師
(内部統制論、自治体原価計算論 現在に至る)
兵庫県立大学大学院会計研究科非常勤講師
(地方公会計特論 現在に至る)
日本公認会計士協会常務理事(公会計担当)に就任
(現在に至る)
財務省独立行政法人評価委員会造幣局分科会委員に就任
(現在に至る)
国際公会計学会理事に就任(現在に至る)
関西学院大学大学院 経営戦略研究科博士課程後期課程修了
(先端マネジメント博士)
総務省独立行政法人会計基準研究会委員に就任(現在に至る)
-46-
-47-
-48-
-49-
-50-
-51-
-52-
-53-
-54-
-55-
【司
会】
ありかわ
ひろし
有川
博
(日本大学総合科学研究所教授)
経
歴
昭和47年 3月 東北大学法学部 卒業
47年 4月 会計検査院 奉職
平成14年 6月 会計検査院退職(第4局長)
14年 7月 国家公務員共済組合連合会理事 就任
17年 3月 同
退職
17年 4月 日本大学総合科学研究所教授 就任
現在に至る
-56-
〔
メ
モ
〕
Fly UP