...

ISO9001 概論 ①

by user

on
Category: Documents
16

views

Report

Comments

Transcript

ISO9001 概論 ①
ISO9001 概論 ①
寺尾塾 山本 一満
最近テレビのCMでも「ISO認証を取得」なんていっています。耳にする機会は増えましたが、一般にはいま
いち浸透していません。しかし、製造業をはじめサービス業、土木建設業、病院などでも取得する事業体が増加し
ています。今回はISOをとりあげます。
ISOを日本ではアイエスオー、イソ、アイソなどと呼びます。一般には「品質がよいこと」と解釈されていま
す。ISOは、international Organization for Standardization:国際標準化機構の頭文字をとっていますが、
そのままではIOSになってしまいます。これはギリシャ語 ISOS(相等しい)から「規格」の標準
化を推進いてゆきたいという願いを込めて「ISO」としたそうです。国際的に規格を標準化し
ている事例として、写真フィルムの感度表示があります。ISO100、ISO400 と表示することで、何
処のメーカーのフィルムを使ってもカメラの設定をその表示に合わせれば露出設定の失敗をしな
くてすみます。そのほかにも ISO ネジもあります。また非常口のシンボル・マークがあります。
世界の誰が見てもそこは非常口であることを認識できるように、標準化しているのです。
テレビ・コマーシャルをみているとISOは「高品質の証」と誤解しかねない内容になっています。ISO9000 は
「品質マネジメント」、ISO14000 は「環境マネジメント」を指しています。そこでは ISO が高品質とか極上品であ
ることなどまったく触れていません。ですから、ISO の認証取得ができているから、良い品質のものやサービスで
ある保証はありません。では ISO9000 の認証取得を得ているとはどういったことになるかといえば、それは製品や
・ ・ ・
サービスの生産に関わる過程で管理がきちんとしていることなのです。ISO:国際標準化機構が、ISO9000 シリーズ
(ISO9001∼9003 番)で要求しているのは、品質管理にかかわる経営方法を指しています。よって、ISO9000 の認証取
得を受けている企業が生産した物は、きちんと管理された体制下で生産されているということです。
しかし、きちんと管理されているイコール高品質ではありません。最高級の材料を使って、最高の技術で作り上
げていることを指すのではありません。いつもきっまた材料を定められた製法で作り、その生産記録もきちんと保
管し、問題が発生すれば、その対象製品がすぐに特定でき、かつ、そのような不良品が企業外部に流出しにくい組
織になっていることです。
このような管理体制を構築した企業に ISO9000 の認証が与えられます。ですから一流企業だけが授かるものでは
ありません。中小零細企業でも認証取得は可能です。最近では政府が入札条件に ISO 取得を義務付けるようになっ
てきました。特に建築土木関係に増えています。また、これらを受注した企業の下請けまで取得させられるように
なりました。それは ISO が日本工業規格 JIS にも採用されたからです。その大きな理由は、公共機関が発注した工
事が、きちんと管理された状態で工事が完了すると期待できるからです。
では ISO9000 はどのようなことを要求しているのでしょうか。大きくは 5 項目に分類できます。
◎ 品質マネジメント・システム
1
◎ 経営者の責任
◎ 資源の運用管理
◎ 製品実現
◎ 測定、分析および改善
これらはさらに細かく分類されていますが、それは後述します。
概略は、
企業として、品質達成のためのマネジメント・システムの構築とその運用およびその記録です。経営学風に言い
直せば、顧客満足を得るため、経営理念や方針の明確化および従業員全員への浸透、目標達成のための組織体制と
運営方法の確立、そして問題発生時の速やかな事象の把握と分析および是背措置、さらに顧客満足の調査や体制維
持のための内部監査の実施です。
山本の個人的見解
1990 年代、ISO はヨーロッパ企業から発展しました。当時の ISO は「品質保証のモデル」の確立を要求してい
たのでした。ヨーロッパの企業は ISO の認証を得た企業からだけ製品を購入するとしたため、日本の輸出企業が
こぞって取得しました。当時は、抽象的に表現された ISO の要求事項の解釈にばらつきがあり、解釈論議からス
タートしました。結果的には猜疑的な懸念から、深読みをしてしまい複雑な社内文書が沢山できてしまうことに
なりました。
また、記録重視(エビデンス主義)のため、品質記録と銘打って何でも文書発行し、それを保管することになり
ました。また、文書管理にはハンコ行政を伴いました。誰がいつ発行し、承認はいつで、受領はいつか、また発
行文書の更新や変更記録はと際限なく拡大してゆきました。管理職は、実務より ISO の記録管理に振り回される
ことが多くなり、紙が増えただけでなく、仕事が大変増えてしまいました。
最近ではそのような不都合から、拡大解釈せず、企業の実情に合わせて必要最低限の対処で ISO の認証が得ら
れるように改善されていますが、それでも中小企業では作業の増大は免れないでしょう。また、認定を受けると
き、またその後の定期監査において ISO 監査者から、あれこれ不備を指摘されることに苛立ちを感じるでしょう。
はっきりって「メンドクサイ」です。
さらに ISO を取得しても不良品はなくなりません。不二家は ISO9000 を取得した工場で生産していました。法
律があるからといって犯罪がなくならないのと同じです。確信的に不正を行えば ISO 取得組織でも問題は発生す
るし、不可抗力で不良品が出荷されてしまうことがあります。材料が経時変化してしまうことをことがあれば、
出荷時は良品でも結果的に不良品が出荷されたことになります。このようなときでも ISO をまじめに運用してい
れば、不良が発生したロットを特定でき、そのロットがいつ、何処へ出荷したかの追跡ができ早期に回収が可能
になるのです。これをトレーサビリティーと呼び、品質保証の重要事項です。
認証取得をコンサルする企業の「うたい文句」
◎ コスト削減
◎ 目標管理体制の構築
◎ 顧客満足の実現
2
◎ 品質安定化と問題再発防止
◎ 企業内コミュニケーションの促進
いいことを沢山あげるが、実際は面倒な作業が増える方の印象が強い。なぜなら一応の経営管理体制が出来上がっ
ている企業文化に、新たな要求(特に文書管理)が負担となるからです。しかし、ズボラ管理の場合は、謙虚に受
け止めれば効果はあります。土建関係ではどんぶり勘定(ひとつの工事で採算が解らない。穴埋めを別工事から費用
の付回しで調整していた)が、是正された話を聞いたことがあります。
旧来は従業員があくせく奮闘して、認証取得をえる活動を中心にした傾向が強かったが、2000 年からは経営者の
関与が強く求められるようになりました。社長が目標を設定し、その実行、状況チェック、未達成の場合の対策(P
DCAサイクル)を経営者として推進しなければならない要求に変わりました。目標は具体的な数値を設定するが、
必ず品質管理と整合させなければならない。売上○○円の達成だけではダメ、不良率とかクレーム件数とか納期な
どを合わせて向上させる必要があります。
ISO9000 が求めていること
経営者
経営理念
↓
マネジメント
経営者方針(工場の場合は工場長でも OK)
↓
目標設定(Plan)
状況チェック(Check)
実
行
対策の実行(Action)
社員
能力開発
→
人材育成
インラ
品質マニュアル
内部監査
文書管理
業務マニュアルル
3
再発防止
予防処置
記録管理
Fly UP