...

取引条件作成マニュアル - 日本配電制御システム工業会

by user

on
Category: Documents
75

views

Report

Comments

Transcript

取引条件作成マニュアル - 日本配電制御システム工業会
制御・情報システムにおける
取引条件作成マニュアル
平成 19 年 9 月
社団法人日本配電制御システム工業会
もくじ
はじめに…………………………………………………… 1
第1章
契約時における確認事項……………………… 2
1.一般的な記載事項
2.注文書受領時
3.納入品の明細書
4.設計(ハードウェア・ソフトウェア)
5.ソフトウェアの評価に関する課題
6.納入仕様書 の返却と製作仕様
7.機能検査(社内検査の内訳・立会検査)
8.保証(ソフトウェア・ハードウェア・保証期間)
9.その他
第2章
製造時における確認事項……………………… 8
1.仕様変更の場合の対応
2.納期変更の場合の対応
第3章
納入時における確認事項……………………… 9
1.特記事項
2.搬入方法
3.製品完成後の長期保管
第4章
その他の留意事項………………………………10
1.機密保持
2.特許権・著作権等知的財産権の取扱い
3.個人情報保護
付録1.トラブル事例……………………………………11
付録2.メンテナンス契約条項(例)…………………13
あとがき……………………………………………………16
JSIA-CI001-2007
はじめに
制御情報システムの売買契約は、その供給範囲がハードウェアのみでなく、プログラム、さら
に発注者サイトでの試験・試運転立会などソフトウェアサービスにいたるまで多岐にわたるケー
スが多く、見積の提出、受注契約における各種条件が複雑である。
会員企業が見積書を提出し受注契約を発注者と締結する際に、それらの必要な条件を漏れなく
提示し、発注者との合意を確実に得ることが、制御情報システム事業の健全な発展のために必要
なことである。
また、当工業会が実施している JSIA 優良工場認定においても、あるいは ISO9001 品質マネ−
ジメントにおいても、取引条件の管理は重要なポイントとして位置付けられている。
そこで、制御・情報システム部会では、制御情報システムに関する取引条件の調査研究を行い、
制御・情報システムメーカが適正な利益を確保するための取引条件作成に役立つ資料を作成した。
事業部会の取引正常化委員会が平成 16 年 8 月に作成した「カスタム盤営業担当者研修用テキス
ト」とともに活用して頂ければ幸いである。
制御・情報システム部会
部 会 長
盛田豊一(株式会社豊電子工業)
副部会長
田原
副部会長
松尾隆徳(東洋電機株式会社)
副部会長
上原隆史(株式会社日本電機研究所)
1
博(株式会社田原電機製作所)
JSIA-CI001-2007
■■
第1章
契約時における確認事項
■■
受注者は納入品目、請負業務範囲等以下に挙げるような取引条件を明確にし、発注者との間で
確認すべきである。
1.一般的な記載事項
1)文書発行日
2)番号(見積書番号、発注者依頼番号など)
3)発注者名
4)工事名称
5)受け渡し条件
6)支払い条件
7)見積有効期限(見積書の場合)
8)受注商品の内容(ハ−ドウェア設計・ソフトウェア設計・製作品員数・立会検査・現地
試運転・運転立会)
9)適用規格(日本の規格:JIS、JEM、JEC 等。海外の規格:UL、EN、IEC、GB 等)
10)金額
11)支払期日(納品検収後○日・ソフトウェア検収後○日等)
12)支払い方法(現金・手形・ファクタリングシステム等)
13)納入期日
14)納入場所(納入先住所)
15)納入方法
・梱包材(木枠梱包・段ボール梱包・ビニール梱包)
・搬入条件(一括搬入・分割搬入・現場軒先車上渡し・現地指定場所)
・輸送手段(4t・10t・直送便・混載便・宅配便・ユニック付)
2.注文書受領時
1)注文書発行日
2)注文番号
3)品名・数量
4)金額
5)納入先住所
6)受渡条件
7)納入期日
8)支給品明細
9)検収日
10)支払い条件
11)注文請書の返却(注文請書には税法で定められた収入印紙が必要)
2
JSIA-CI001-2007
3.納入品の明細書
納入品の明細書とは、箱体の形状、様式、構造や塗装の仕様、さらに使用する部品のメーカや
型式などを詳細に記載したものである。
(1) 外箱
1)設置場所(屋内、屋外)
耐塩・耐酸区域、クリーンルームなど
2)盤構造(自立、壁掛、スタンド、デスク)
両面型、片面型など
3)盤形態(防雨、防滴、防塵、防爆)
4)盤材質(SPCC、SUS、アルミ、FRP)
5)盤材厚(側面板、底板、扉、屋根板、基礎ベース)
(2)塗装仕様指定の有無
1)下地処理(亜鉛溶射、亜鉛どぶ漬)
2)塗料(ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、亜鉛溶射)
3)塗装色(外面色、内面色)
半艶・全艶、5Y7/1標準色、その他指定色・色見本による
4)膜厚(外面、内面)
(3)部品・部材
1)盤内機器メーカの指定(有無)
(4)配線材料
1)電線メーカの指定(有無)
2)盤内配線方式(ダクト、結束)
4.設計
(1)ハードウェア設計
一般的にハードウェア設計は受注者の所掌であるが、まれに発注者からの図面支給がある。
しかし、支給される図面だけでは制御盤の製作が困難な場合が多く、板金図、盤内機器配置図、
端子番号配列図等も支給されないことが多い。また、盤内機器配置図面が支給されたとしても、
縮尺が曖昧で目安にならず再度、検図する必要がある。このような場合は、当然、受注者で書く
図面工数分の金額を見積書に明記すべきである。
さらに、構造的な配慮として PLC に隣接する機器(インバーター・サーボアンプ等)のノイ
ズ対策、発熱対策及び環境対策(粉塵・塩害・防水・腐食性ガス等)を発注者と充分打ち合わせ
する必要がある。昨今は発熱機器・防塵構造等の対策として特に盤用クーラーを設置することが
多くなってきている。
(2)ソフトウェア設計(PLC・PC)
ソフトウェアを構築するには詳細な仕様書が要求される。発注者仕様書の内容によってはソフ
トウェア設計ができない場合も多く、打合せにより詳細な説明を受けてから設計に入るべきであ
る。そこで、ソフトウェア設計は見積りの段階で詳細な打合せが必要になる。
ソフトウェア設計が発注者支給の場合は、ソフトウェアの免責を詳細に記述する必要がある。
3
JSIA-CI001-2007
この場合のデバッグ作業は発注者に担当して頂く事が肝要で、
「デバッグ作業は所掌外」と明記す
べきである。また、ソースプログラム、オブジェクトプラグラム、現地サイトでのインストール
作業及び機能確認、現地作業を含む場合の出張費用などの所掌範囲も明確にすべきである。
タッチパネル画面の構成(デザイン)は、発注者個人の嗜好に大きく左右され、作画ソフト工
数を決定する上で苦慮することが多いので、最低でも画面数・帳票数・機能・種類・配色数・拡
張性は明確にしておくことが必要である。
5.ソフトウェアの評価に関する課題a
ソフトウェア価格に関しては、発注者と受注者との間で必ずしも評価が一致しているとはいえ
ない事例が多い。発注者は、提示した購入仕様書に対する受注者の見積価格が想定以上に高く、
仕様が不明な点などを見積価格に上乗せしているのではないかといった懸念を抱き、一方で受注
者は発注者の意図、真意を推し量って必要十分な機能を実現するためにはこれだけのボリューム
が必要であると主張する場合がある。
このように両者の間に大きなギャップが存在することもあり、発注者と受注者双方が納得でき
る価格とすることが商取引を行う上で重要な課題である。
そのためには、購入仕様書及び見積仕様書の記述内容を発注者と受注者との双方で吟味し、明
らかに不足している機能や過剰な機能の有無を検討した上で、システムをできるだけ定量化し、
客観的な評価対象として協議していくことが必要となる。
6.納入仕様書bの返却と製作仕様
納入仕様書は、受注者が製作を開始するに先だって、製作仕様、設計諸元に関し発注者に最終
承認を求めるドキュメントである。
発注者は納入仕様書類をチェックし、内容について承認した旨、承認条件表を付けて、受注者
に返却しなければならない。この納入仕様書の返却で製作仕様が確定する。
受注者は契約時点で定められた契約仕様と、この製作仕様との相違を確認し、追加・変更があ
る場合には、その差異に関わる費用を請求すべきである。また、製作仕様確定後に変更が生じた
場合には、同様に追加契約、契約変更となる。
発注者が納入仕様書の返却時に仕様を変更する場合、受注者に対し遅滞なく仕様変更依頼書を
提出する。発注者と受注者はこの仕様変更依頼書に基づいて変更内容と変更に伴う見積を相互に
確認し、追加契約を締結することになる。
a
日本電機工業会技術資料 JEM-TR219「監視制御システムのソフトウェアの円滑な契約に向けて」を参考に記述
した。
b
「納入仕様書」は、納入製品や部品の仕様、規格、外形等を定めた文書や図面で、
「承認図」と呼ばれる書類で
ある。税務当局は、この納入仕様書等に“承認”する旨の表現があった場合、契約書とみなし、収入印紙の貼付
を求めている。以上の理由から、現在では「承認図」を「納入仕様書」と呼ぶのが一般的である。
4
JSIA-CI001-2007
7.機能検査
(1)社内検査の内訳
1)試験環境構築・試験方案書の作成
2)ソフトウェア機能試験・性能試験
3)システム起動・停止・運用試験
4)総合試験(模擬回路・データシミュレーションを含む)
5)試験データのとりまとめ・試験成績書の作成
(2)立会検査
立会検査に必要な日数及び検査員の人数(工数)を明記する。工場立会検査の要綱はカスタム
盤cと同じであるが、システム制御の場合には
PC・PLC・タッチパネルを接続しての動作確認の
ほか、データの通信や PC 間の整合性の確認、日報・月報のデータ入出力確認など、規模によっ
ては日程が長くなることが多い。検査工数を明確に記載した「立会検査申請書」で確認すべきで
ある。
また、発注者立会とは別に、エンドユーザーの立会が数回に及ぶ場合もあるため、慎重に検査
工数を積算し、必要に応じて見積書に明記した方がよい。
8.保証
(1)ソフトウェアの保証
ソフトウェアの保証という概念は、かならずしも発注者と受注者とで統一されていない。ソフ
トウェアはハードウェアと異なり経年変化がなく、強いてあげれば監視制御対象設備の増加や機
能増強に伴う性能の劣化が挙げられる。
“保証”とは納入仕様書等に記載した“機能”及び“性能”を保証することである。受注者が
発注者にシステムを引き渡した後に受注者所掌範囲において設計上の原因により瑕疵が発生し
た場合には改修する必要がある。
保証期間内に当該ソフトウェアに不具合が発見された場合には、受注者は無償で改善、補修、
代替処置等をとることになる。予め当該ソフトウェアの使用に直接起因して発注者又は第三者に
物的もしくは人的災害を生じた際の受注者の責任範囲を明確にしておくことが望ましい。
<受注者の免責>
受注者が許容する以外の仕様条件下での使用、誤操作に起因するいかなる瑕疵に対しても、受
注者の責任は免責されるべきである。
更に、ソースプログラム、オブジェクトプログラムのいずれかを受注者以外の発注者もしくは
第三者がその一部又は全部を、変更した時には、システムの全体のソフトウェアに関して、製品
品質の保証から、受注者は免責されるべきである。
(2)ハードウェアの保証
ハードウェアはソフトウェアとは異なり、使用条件を無視したり使用環境に問題を生じたりし
c
「カスタム盤営業担当者研修用テキスト
ページに掲載)
。
第7章工場立会検査」を参照されたい(JSIA ホームページ会員専用
5
JSIA-CI001-2007
ないかぎり社内検査や立会検査・試運転で不具合が発見される場合が多い。
ハードウェアの保証については、ほとんどの受注者が機器メーカから機器を購入してアセンブ
リーしているため、機器メーカの保証期間(検収後1年間)と同じ保証期間で対応している場合
が多く、受注者は「*1 社内保証書」を発行する事で発注者に対し保証することもある。
また、機器の故障等で製品及び人体に影響が出た場合の保証も、例えば PL 保険に加入するな
ど予め検討しておくべきである。
(3)保証期間
日本配電制御システム工業会として推奨する無償保証期間は次のとおりである。
1)ハードウェア:検収後1年間
2)ソフトウェア:*2 引渡し日から起算して 1 年間
*2 一般的にハードウェアは納入時に検収されるが、ソフトウェアは現地調整までの期間が長期に亘る場
合がある。そこでソフトウェアの無償保証期間は引渡し日からの起算を推奨する。
*1 社内保証書記載項目参考例
保証書
お客様名、お客様住所、電話番号
<工事名又は製品名>
<保証期間>(○年○月○日から 1 年間)
配電制御システムメーカ名
本保証書の記載製品は、厳密な品質管理及び検査に合格し出荷されたものであることを証明し下記条件に従い
保証致します。
【記】
1.使用説明書及び本体注意ラベルなどの注意表示に従った正常な使用状態において、保証期間内に故障した
場合は、出張修理に際して本保証書をご提示頂ければ、無償で修理致します。
2.保証期間内でも次の場合は有償での修理となります。
(1)取扱上の不注意、誤用に起因する故障及び損傷
(2)移動時の落下等に起因する故障及び損傷
(3)販売店及び当社または当社指定の者以外による修理や改造に起因する故障及び損傷
(4)火災、地震、水害、落雷、その他の天災地変、公害や異常電圧に起因する故障及び損傷
(5)接続している他の機器に起因する故障及び損傷
(6)本保証書の提示がない場合
(7)本保証書の所定事項の未記入あるいは字句を書き換えた場合
(8)転売、譲渡、貸与した場合
3.消耗品は、本保証書による保証の対象とはなりません。
4.本保証書は日本国内においてのみ有効です。
5.本保証書は再発行致しませんので、紛失しないよう大切に保管してください。
*本保証書は、本書に明記した期間、条件の下において、無償修理をお約束するためのもので、これによりお
客様の法律上の権利を制限するものではありません。
*保証期間経過後の修理につきましては、当社にお問い合わせ下さい。
6
JSIA-CI001-2007
9.その他
(1)支給品
支給品には、PLC、PC、タッチパネル、計装計器等がある。支給品がある場合には、支給品リ
ストを作成して発注者に提出し、支給日時などを明確にしたうえで社内の製造計画に反映させる。
支給品には特に計装計器が多いが、最近の計装計器は多様な分野に使用できるように製作され
ており、目的に応じてパラメ−タ−の設定が生じるため、設定は発注者の所掌か受注者かを明確
にすべきである。受注者の所掌だと支給品の用途に応じて解析が必要になり相応の工数が発生す
る。
また、支給品は管理や補償及び高価な機器には保険も必要となり、支給品管理費用が発生する。
(2)付属品・予備品
タッチパネル・PLC 制御においては、どの部品に支障があっても、その対象プラントの運転に
支障を起こし大きな損失につながる恐れがある。予備品を常時備えていれば、発注者の設備(電
気)担当者に交換して頂き、立上げ復帰時間を短縮し被害を少なくすることが可能である。
そこで、制御盤内に収納した制御用部品に対しては各種最低1品の予備品を購入して頂くよう
に、また PLC はモジュールごとに(CPU、電源、通信、各種入出力)、タッチパネルについては
各種1台の予備を持つよう発注者に提案することが望ましい。
PLC・タッチパネルのプログラムは、バックアップ用として CD に書き込み保管しておくこと
と付属品としてそのツ−ル(PC)も常備して頂くことが必須である。
(3)諸経費
諸経費には一般的に営業経費、管理費などが挙げられるが、次のような項目は個別に計上すべ
きである。
①遠隔地での打合せによる交通費・宿泊費・移動費
②工程の写真撮影・ファイリング
③完成図書作成費用
(4)現地調査・打合せの必要性
正確な見積り(受注)をするには、現場の状況を把握しておいた方がよい。後日、現場での手
直し作業などが発生することによって発注者から不信を抱かれたり、経費が増大したりする可能
性も発生する。そのためにも発注者に現地の調査及び打合せの必要性を提案し費用を計上するこ
とが望ましい。
7
JSIA-CI001-2007
■■
第2章
製造時における確認事項
■■
1.仕様変更の場合の対応
発注者からの仕様変更依頼書または納入仕様書の修正などで仕様変更が発生した場合は、契約
時の仕様明細と変更内容の比較が可能なドキュメントの作成を行い、発注者との合意の上で仕様
変更見積書を提出する。
仕様変更見積書は項目毎に記入し、一式は避け、契約時点で見積仕様書の明細があれば添付し、
発注者が承認しやすい仕様変更見積書の提出が望ましい。
また仕様変更見積書は、発生の都度発注者へ提出する方が、後でまとめて提出するより承認さ
れやすい。
2.納期変更の場合の対応
納期変更については、発注者からの要求と受注者の都合で発生する場合があり、その対応は大
きく異なる。
発注者からの納期変更の場合は、短縮(人件費)
、延期(保管)などにかかわる費用が発生する
ので発注者と十分な協議を行う。
受注者からの納期変更の場合は、速やかにその理由と変更後の日程について発注者の承諾を頂
くことが優先される。
また、契約時点での内容によってはペナルティーの発生もあるので対応には十分な注意が必要で
あり、契約時点での納期確認は慎重に行うべきである。
8
JSIA-CI001-2007
■■
第3章
納入時における確認事項
■■
1.特記事項
(1)現地改造
現地改造は、発注者の条件に対応するため社内の作業に比べ効率が悪くなるので、社内での十
分な準備とともに、現場の状況を正確に把握することが必要である。そこで、現地調整後、円滑
な作業のために発注者との詳細な打合せが重要になる。当然、現地作業と社内準備工数は見積に
明記しておくべきである。
また、ソフトウェアについては、社内で十分なデバッグをしておくこと。
(2)現地試運転調整・運転立会
現地での試運転調整及び運転立会は調整項目数、現地派遣人数、派遣日数を明確に記述する。
まれに機械設置工事、電気工事の遅れ等で不定期な時間(深夜)での作業を強いられることがある。
これらの費用も請求することが望ましい。
(3)現地オペレータ教育
発注者へのオペレータ教育にはマニュアルが必要で、マニュアル作成に関する量と教育時間を
明確に記載する。発注者によっては 3 交代の職場もあり、同じ教育を 3 回行うことがあり得るの
で注意が必要である。
2.搬入方法
製品が完成し各検査も終了して発注者の指定日・指定場所に製品を搬入するが、この場合に重
要なのが契約時点での搬入条件と相違しているかどうかの確認である。相違している場合は、契
約時点の搬入条件と照合し必要に応じて追加請求を行うべきである。
例えば一括搬入から分割搬入に変更されると搬入回数が増え、車上渡しが軒先渡しに変更され
るとユニック車の手配が必要となる。
また近年、建設現場などに製品を搬入する場合に ISO14000 の関係で簡易梱包や梱包材を指定
される場合が増加してきている。さらに搬入車両に梱包材料の引き取りの指定がある場合もある
が、通常搬入の場合は外部運送業者に委託しているケースが殆どなので、積み込み時点で引き取
りが発生する事を指示しないと運送業者とのトラブルの原因となる。
3.製品完成後の長期保管
受注者は発注者との打合せにより納期・仕様を確認し承諾後に製作を行い、完成検査を経て納
入することになるが、完成後に発注者から納期延期に伴う長期保管を依頼される場合がある。
この場合、製品の保管スペースや製品本体の管理が問題となり、また、他物件の製作スペース
確保の妨げになる場合は、保管場所を発注者または受注者が確保しなければならないという問題
が発生する。
いずれにしても受注者が保管する場合は、倉庫保管料及びその間の保険料など、必要な経費を
請求すべきである。
9
JSIA-CI001-2007
■■
第4章
その他の留意事項
■■
1.機密保持
機密保持を要する項目においては、発注者と受注者との間で「機密保持契約」を締結し、特に
ソフトウェアの外注、関係者の退職等に留意しながらこれを厳守しなければならない。
2.特許権・著作権等知的財産権の取扱いd
新しいシステム、ソフトウェアを受託開発する場合は、その間に得られた発明、考案、ノウハ
ウ等の技術的成果の取扱いを明確にしておくことが必要である。
また、この成果に基づく特許権、著作権等の知的財産権及びこれらの取得に関わる費用等は、
発注者側と受注者側で共有すること(折半)が望ましい。
この場合、知的財産権の譲渡、担保化についても、文書により双方が合意しておくべきである。
さらに、開発したシステム、ソフトウェアが、第三者の知的財産権に抵触した場合の処置や開
発仕様決定の主体が発注者にある場合の受注者の免責についても明文化しておいたほうがよい。
3.個人情報保護e
住所、氏名、電話番号、メールアドレスなどの個人情報は、個人情報保護の観点から、発注者
と受注者双方が、他の目的には一切使用しない、また使用させないよう厳重に管理しなければな
らない。
d
知的財産権の種類は、創作意欲の促進を目的とした知的創造物についての権利(特許権、実用新案権、意匠権、
著作権など)と使用者の信用維持を目的とした営業標識についての権利(商標権や商号など)に大別される。
また、工業所有権とは、特許権、実用新案権、意匠権、商標権などの総称である。
e
平成 17 年 4 月に個人情報保護法が施行されたが、これは個人情報の有用性に配慮しながら、個人の権利利益を保
護することを目的として、個人情報を取り扱う上でのルールを定めたものである。
10
JSIA-CI001-2007
■■
付録1.トラブル事例
■■
事例1
飼料生産過程においてロット自動切換え時、配合ミスが生じた製品が発注者に配送された。そ
のため、不良製品の回収、原材料の処分、再生産による費用等を要求され支払いに応じた。
<原因>
PC と PLC 間のソフト(整合性の確認)の不具合が原因
事例2
顔料調合プラントのバルブ追加工事完了後に中央 PC で仮調合を行い、結果は良であったので
本稼動になった。しかし、数日後バルブが誤動作して顔料が多く流れて製品不良となった。元請
業者から受注者に損害請求がきたが、受注者と元請業者・発注者の3社で折半とした。
<原因>
発注者使用条件が元請業者・受注者に伝わらなく、運転マニュアル以外の操作を行なったた
め、バルブが誤動作した。
事例3
10 年前から使用している ID コードが仕様範囲内であるが、新規パレット追加により、ID コー
ドも新設され PLC シーケンス内で思わぬメモリが動作して搬送系の制御が異常となり、工場の安
定稼働に多大な迷惑をかけた。緊急対応要請があり、トラブルの要因を究明するとともに、責任
の所在を明らかにするよう指示があった。PLC は各社で、変更している経緯がある。
<トラブル内容の整理>
①PLC シーケンスの異常個所は、明らかに自社で作成した部分と判明した。
②PLC のサブルーチンの使用方法で、入出力引数が適正使用されていなく人為的なミスであっ
た事が判明した。
③システム構築した担当者はすでに退職していて残ったのは自社が処理した実績。
事例4
食品工場内の既設電力監視盤更新を受注し、完成引渡しの際に、発注者から帳票ソフトの不足
が指摘された。打合せ時点で何ら話題に上らなかったので見積範囲外と思い込み、帳票ソフトの
作成を行わなかったが、見積は帳票ソフト一式で提出していたため、発注者との間の話し合いは
結局水掛け論となり最終的に受注者の負担で帳票ソフトの追加を行った。
<原因>
見積前打合せで受注者が既設帳票を全て確認していなかった。また、見積を帳票ソフト 5 種
類一式で提出したことで、発注者は 5 種類には当該ソフトが当然入っているものと考えた。
<対策>
往々にして発注者は見積の金額だけを重視し内容はあまり見ないものである。
そこで見積提出の際には内容をできる限り詳細に記入し、契約前金額交渉の際は内容を説明
し議事録にまとめ、承諾を頂くことで再発を防止する。
11
JSIA-CI001-2007
事例5
海外工場向けラインの制御盤を受注し国内で試運転を行い何ら問題なく現地に出荷し、現地ラ
インも完成してスーパーバイザーが現場に行き調整を行ったが誤動作した。
機器は発注者からメーカを指定されたが型式指定がなく、かつ工場全体でネットワークを組む
ラインであった。
発注者を通じて現地のメーカに確認したら 1 ランク上の機種に変更しなければネットワークが
組めないことが判明した。機種変更の作業費用・現場での確認に日本から再度作業員を派遣しそ
の費用は受注者が負担した。
<原因>
設計者が既設 PLC とネットワークが組める機種と思い込んで設計した。
<対策>
PLC メーカが同じであっても仕様によってはネットワークが組めない機種もあり、また海外
メーカのため仕様の把握が困難な場合がある。そこで機器選定の際は仕様の確認を必ず行い、
不明点はメーカに確認する。また発注者から指定がある場合は型式まで指定して頂くことで
再発を防止する。
事例6
国内ビールメーカの製造プラントにおいて改造依頼があり、既設 PLC ソフトウェアに追加改造
して発注者立会のもとで動作確認も行った。ところが冷却水の送水バルブが開かないためビール
80 キロリットルが冷却されず不良製品として廃棄処分となり多大な迷惑をかけた。
<原因>
受注者が保管していた PLC ソフトウェアに改造ソフトウェアを追加したが、保管していたソ
フトウェアは古いものであったことに前任者が気付かず今回の担当者に渡していた。今回の
改造とは関係ないところであったが改造ソフトウェアを検証したらインタロック回路にバグ
を発見し、受注者のソフトウェアミスが判明した。
<対策>
ソフトウェアの改造を受注する際は、もとになるソフトウェアが最終バージョンであるかど
うかを確認する。
12
JSIA-CI001-2007
■■ 付録2.メンテナンス契約条項(例)
契
「
」殿(以下甲と呼ぶ)は「
約
条
■■
項
」
(以下乙と呼ぶ)との間に甲の所有する下記の機器の保守
メンテナンスについて請負として次のとおり契約する。
第1条
保守メンテナンスの委託及び受託
本契約に記載のとおり、甲は第2条の定める機器(以下機器という)の保守メンテナンスを乙に契約書記載の
保守料金を支払って委託するものとし、乙は受託時に機器が正常な状態にあることを条件として受託するものと
する。
第2条
保守メンテナンス対象
保守メンテナンスを行う対象機器の範囲は、別紙「
第3条
」に記載されたものとする。
保守メンテナンスの範囲
1.予防保守(定期点検)
乙は原則として年1回の定期点検作業を実施する。
2.緊急保守
①システムに障害が発生した場合は、甲はその障害の原因機器を調査し、故障個所が乙の対象機器にあるこ
とを確認した後に、乙への保守の要求を行う。
②乙は甲からの通知により速やかに技術者を派遣し、甲の立ち会いのもとに保守作業を実施する。
③乙の保守範囲は、乙の納入機器とし修理は対象機器の機能が故障前の機能に回復したことを甲が確認する
ことにより完了とする。
第4条
作業時間帯
1.甲の乙に対する予防保守の要請は原則として次の時間帯に行うものとし、かつ甲はこの時間内に保守が完
了する様に乙に対して、必要な時間を提供するものとする。
詳細な曜日(平日/休日)及び時間帯は、別途甲と乙にして調整し決定するもとする。
2.緊急保守要請が甲より発生した場合は、その要請に係わる乙の技術者の派遣は原則として翌日とする。緊
急要請度が非常に高い場合は、この限りでない。
第5条
保守に係わる機器の費用とその他付帯項目
次の各項目によるものは有償とする。この項目に関してはオーバーホール、部品交換一覧表による。
また、その費用に関しては協議の上、実施の有無/料金を決定する。
1.機器の移設、増設、撤去の作業並びにその立ち会い。
2.風水害、地震等の天災地変、政治的若しくは社会的騒乱など不可抗力による機器の損傷または、故障の修
理
3.誤使用、不適当な使用または、取り扱いなど甲の重大な過失による故障の修理
4.オーバーホール
5.消耗品の供給
13
JSIA-CI001-2007
6.乙または、乙の指定するサービス機関以外による修理または改造が行われた為に、発生した故障の修理
7.乙の指定した以外の消耗品を使用し、または消耗品の保管不完全の為に発生した故障の修理
8.機器の日常点検清掃を甲が怠った為に発生した故障の修理
9.重要部品に関しての稼働時間がメーカの指定する時間を超えた場合。
第6条
保守料金並びに支払い
甲の乙に対する契約料金の支払いは、契約成立時、乙の請求に基づき支払うものとし、期間延長時の支払いも
同様とする。なお、支払い済み保守料金は如何なる場合も返却されない。
第7条
保守料金の変更
1.増設または一部撤去により機器の構成に変更があった場合は、その翌年から保守料金の変更を行う。
2.経済情勢の急激な変化などにより必要がある場合は、契約期間内であっても甲と乙間の協議により保守料
金を変更することができる。
第8条
オーバーホール
機器についてオーバーホールを乙が必要と認めた場合は、甲と乙で協議の上オーバーホールまたは、交換を行
う。
実施時期及び費用に関しては、第5条の項目とする。
第9条
設置条件の遵守
甲は乙の定める機器の設置環境を遵守し、完備するもとする。
第10条
保守要員
機器の保守、修理は乙または乙の指定するサービス機関の派遣する技術者のみによってこれを行い、その他の
機関によって実施された場合、乙はその責を負わない。
第11条
保守便宜の提供
甲は乙の保守メンテナンス作業に当たり、次の便宜を提供する。
1.保守メンテナンスを行うために必要な時間及びスペース
2.保守メンテナンスに必要な消耗品
3.設置場所への出入りの保証
4.設置場所での安全の保証
第12条
設置場所の変更
本契約は、表記の設置場所においてのみ有効であり、若し甲が機器を移転する場合は、あらかじめ書面をもっ
て乙に通知し、乙の承諾を得なければならない。この場合、双方保有の契約書の設置場所を変更する。
第13条
秘密の保全
甲及び乙は本契約の履行に関して知り得た相手方の秘密を本契約の有効期間中のみならず、その満了または解
約後においても第3者に漏洩してはならない。
第14条
契約の更新
本契約は表記契約満了の3ヶ月前までに両者からの何らかの申し出のない場合は、更に1カ年間同一条件を自
動延長するものとし、その後も同様とする。
第15条
解約
1.甲が本契約を解約したい場合、解約日の3ヶ月前までに乙へ解約通知を行うものとする。
2.保守契約の解約については、次の事を明確にした解約確認書を解約の2ヶ月前に通知するものとする。な
14
JSIA-CI001-2007
お、契約年度の途中で解約された場合、保守料金の払い戻しは、行わないものとする。
①機器設置場所
②機器名、製造番号
③解約希望日
第16条
免責
乙は、乙の責任において保守業務を行うものとするが、天災、戦争、騒乱、労働闘争、不可抗力の事故その他、
乙の責に帰することのできない理由により保守業務を履行できない場合、乙は免責されるものとする。
第17条
協議事項
本契約に定めのない事項及び本契約中疑義を生じた事項、並びに本契約の変更については、両社は誠実に協議
して決定する。
平成
甲
乙
住所
・・・・・・・・・
会社名
・・・・・・・・・・
代表者名
・・・・・・・・・・・・
15
年
月
日
JSIA-CI001-2007
■■
あとがき
■■
この「制御・情報システムにおける取引条件作成マニュアル」は、製造ラインの監視制御シス
テムや電力監視制御システムに適用する中・小型の監視制御システムを円滑に受注・契約を進め
るにあたって、これまでの契約時の問題点などを明確にし、発注者・受注者がお互いに納得のい
く受注・契約するための手引きとして作成しました。
従来から JSIA 会員企業は受配電盤を始めとする、ハードウェアを主体とする製品の受注から
生産、出荷、現地での据付・試験調整を主体とした事業を展開してきました。しかし、当部会が担
当する制御情報システムの分野では、それまでのハードウェア主体の契約に加え、ソフトウェア
の売買契約が伴うケースが多くなります。そして、そのソフトウェア契約の締結はハードウェア
の契約に比べ、更に色々な点を考慮しなければなりません。JSIA 会員にとっては、その点が制御
情報システム事業を進める上で、難関となっていました。
本マニュアルは、以上の点を考慮し、メーカとお客様とがより対等に契約でき、かつ双方にと
って仕事をスムースに進められるよう、特に重要な契約上のポイントを取上げ解説したつもりで
す。
制御・情報システムメーカの営業は、お客様に納得して頂けるシステムの供給のために良きア
ドバイザーとなり、新技術・情報を提供し安心して設備の契約を締結して頂くことではないかと
思念しておりますが、そのために本書を十分活用されることをお願い致します。
制御・情報システム部会実行委員会
委 員 長
<執筆者>
丹治直昭(株式会社田原電機製作所)
本間英之(株式会社勝亦電機製作所)
松村和成(東洋電機株式会社)
天野敏夫(株式会社豊電子工業)
三好秀徳(株式会社日本電機研究所)
大澤清和(社団法人日本配電制御システム工業会専務理事)
松山 明(社団法人日本配電制御システム工業会事務局長)
16
丹治直昭
Fly UP