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モザンビーク共和国における 先進型高効率ガス発電設備に
平成 25 年度 エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業 モザンビーク共和国における 先進型高効率ガス発電設備に係る 事業実施可能性調査 報告書 平成 26 年 10 月 31 日 1 / 66 ま え が き 本報告書は、経済産業省製造産業局産業機械課(以下「経済産業省」という)から、株式会社日立製 作所が平成25年度の事業として受託した「エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業」 の成果をまとめたものである。 株式会社日立製作所の担当部門(火力発電設備)は、平成26年2月1日をもって三菱重工株式会社の同 部門と事業統合、三菱日立パワーシステムズ株式会社(MHPS)が発足。本事業は三菱日立パワーシステ ムズ株式会社が継承して実施した。 本調査である「モザンビーク共和国における先進型高効率ガス発電設備に係る事業実施可能性調査」 は、モザンビーク共和国における電力不足の解消と天然ガスの有効利用の一助となることを目的とし、 南部内陸の乾燥したサバンナ気候地区に、先進型高効率ガス発電システム(設備容量70MW)を建設す るプロジェクトの実現可能性を調査したものである。先進型高効率ガス発電システムはガスタービン1 基と排熱回収ボイラ1基、他からなるシンプルな設備構成で、高効率運用、窒素酸化物排出抑制、水の使 用制限等の環境適合性に優れたSmart-AHAT TM(*)と呼ばれるシステムであり、実用に向けて開発さ れた新しい技術で商用運転実績がないという課題があるものの、具体的には、低気温から高気温迄発電 出力一定運用が可能で、補給水が不要な点、又、低い大気温条件下で造水が可能なため、サバンナ気候 の地域に適するという特徴を持った発電システムである。 *:Smart : Simple heat and water recovery tri-generation AHAT : Advanced Humid Air Turbine 本報告書が上記のプロジェクト実現の一助となり、加えて我が国の関係の参考となることを願う。 平成26年10月31日 三菱日立パワーシステムズ株式会社 2 / 66 調査報告書(要約) 【調査の背景とモザンビーク共和国について】 第 1 章および第 2 章では、本調査事業の背景と目的を述べ実施した事業内容を報告している。以下 にその概要を示す。 南部アフリカ地域のモザンビーク共和国は、近年開発が進められている世界有数の沖合天然ガス田を はじめとする天然資源が豊富な国であり、また一方で、電力需要の伸びが毎年 10%程度と高く、イン フラ整備支援の一環として今後発電プラントの輸出が見込める国のひとつである。資源を有する新興 国にとって天然資源の輸出は重要な外貨獲得手段であり、モザンビーク共和国においてもエネルギー の国内消費を効率良く削減し、より多くの天然資源を輸出に振り向けることが経済発展の大きな鍵と なる。モザンビーク共和国においては、高い電力需要の伸びに対応する高効率発電システムの早期導 入・建設による燃料消費量の低減が最も重要な課題となっている。これらの背景を踏まえながら、本 調査は先進型高効率ガス発電プラントシステムをモザンビーク共和国の適切な地点にて早期に建設し、 燃料消費量低減による相手国ニーズに合致した事業の可能性を調査・検討・提案することで、日本の 先進技術のモザンビーク共和国のみならず、同様な天然資源に恵まれた南部アフリカ地域諸国で経済 発展に寄与していくことを目的としている。 本事業では、以下の項目について、平成 25 年 12 月 26 日(木)~ 平成 26 年 10 月 31 日(金)の期間。 調査・検討を実施した。 (1) モザンビーク共和国における政治・経済・電力事情の現状の把握 (2) 先進型高効率ガス発電設備の技術的具現性調査・検討 (3) 先進型高効率ガス発電設備の経済的具現性調査・検討 (4) 先進型効率ガス発電設備の南部アフリカ地域への拡張性の検討 (5) 資金調達の見通し モザンビーク共和国で実施可能なプロジェクトの計画、事業性を評価するためには現地事情に精通し た、すなわち、1)モザンビーク共和国での建設工事の実績を持ち、2)南部アフリカ地域での適切な エンジニアリング手法に精通する調査パートナーとの連携が必須である。本調査においては、モザン ビーク共和国のテマネ地域での天然ガス開発プロジェクトにおいてエンジニアリングおよび建設の経 験を有するフォスターフィーラー南アフリカ(FWSA)を本事業性評価のパートナーとして選定、再業務 委託し調査を実施した。 【先進型高効率ガス発電設備の検討】 第 3 章では事業目的に適合し、且つモザンビーク共和国の特性に合致した先進型高効率ガス発電プ ラントシステムを比較検討し、結果として Smart-AHAT システムを提案している。以下にその概要を 示す。 本事業では、モザンビーク共和国内陸部をはじめ、南部アフリカ地域の水資源の確保が難しい乾燥 地帯において、消費水を最小化しながらも高い発電効率の達成が可能な先進型高効率ガス発電プラン トシステムの活用検討をその目的としている。この目的に適合する先進型高効率ガス発電システムと して Smart-AHAT システムと呼ばれるガスタービンを適用した発電システムがある。Smart-AHAT システムは、日本政府支援の国家プロジェクトの一つとして、省エネルギー及び CO2 削減の観点から 3 / 66 中・小容量ガスタービンの高効率化のために三菱日立パワーシステムズ株式会社(MHPS)により推進さ れている AHAT システム(AHAT とは、「高湿分空気利用タービン」Advanced Humid Air Turbine の略)の実用化派生技術の一つで、本邦固有の技術である。 本調査時点においては、Smart-AHAT システムは長期信頼性実証の途上にあり、国内外での商用運 転実績が未だないが、Smart-AHAT システムはガスタービンを適用した発電システムとして構成が簡 素であり、単純開放サイクル(シンプルサイクル)よりも発電効率が高く、またプラントへの補給水 を低減できるなどの先進的でユニークな利点・特徴を有しており、モザンビーク共和国での本調査の 目的に適合する点が多く、本事業での主たる先進型高効率ガス発電設備として調査、検討を実施した。 Smart-AHAT の基本的なシステム原理を以下に示す。 ガスタービンへ導入された燃料ガスはガスタービンの燃焼器で着火され、燃焼ガスはタービンのブ レードに力を伝達し発電機を回転させ電力に変換される。高温で高いエネルギーを残存するガスター ビンからの排気ガスは排熱回収ボイラ(HRSG)に導入され、ガスタービンに導入する蒸気を発生させ る。ガスタービンに導入された蒸気は同様にタービンのブレードに力を伝達し、同一の発電機を回転 させさらなる電力に変換される。ガスタービンに導入された蒸気と燃焼ガスの混合である HRSG から の混合排気ガスは、水回収装置(WRS)に導かれ、混合排気ガス中のほとんどの水分は回収され HRSG やシステムの冷却水の水源として再利用される。(図1.参照) 図1.Smart-AHAT システム概略構成図 Smart-AHAT システムは、先進的なタイプのガスタービン発電設備で、ガスタービンの排気を用い た HRSG で発生させた蒸気全量を、再度当該ガスタービンの吸気側に導入することにより、蒸気ター ビンを用いることなくシンプルサイクルガスタービン発電よりも高い発電効率が得られるシステムで ある。 「ハイブリッド(燃焼ガスおよび蒸気の二つの流体による駆動)」とも呼べるタービンは技術的に非 常にユニークで、次のような利点・特徴を持っている。 1) 高い大気温度条件下における高出力維持・高い発電効率 2) 最少の回転機のシステム構成 3) 窒素酸化物(NOx)の低減 4) 造水の特性 特に造水の特性では、ガスタービンに導入される蒸気の水分の回収に加え、炭化水素を主成分とする 4 / 66 燃料ガスの燃焼により生成された水分も水回収装置(WRS)により回収することができる。ガスター ビンを用いた他の発電システムであるシンプルサイクルや複合ガス(コンバインドサイクル)発電シ ステムでは、どのような条件下でも水を生成することはできないが、Smart-AHAT システムでは、一 定の大気温度条件下において、燃焼で生成される水分をも回収・利用可能であるという大きな特徴を 持つ。 Smart-AHAT システムが持つ技術的先進性の利点・特徴は、電力網が脆弱で未だ開発途上にあり、 比較的高気温の乾燥したサバンナ気候を特徴にもつモザンビーク共和国での高効率ガス発電プラント システムの必要性と合致するものであり、未だ商用運転実績がないという課題があるものの、本調査 にて詳細な計画・検討を進めた。 【プロジェクトサイト候補調査と選定】 第 4 章では、計画に基づいて実施したプロジェクトサイト実地調査の結果と、モザンビーク電力公 社(EDM)の意向を踏まえて選定された同国南部テマネ地点の具体的プロジェクト計画について報告し ている。以下にその概要を示す。 モザンビーク共和国での先進型高効率ガス発電設備の潜在需要も念頭に置きながら、事前に実地調査 候補箇所として、1) 既存の天然ガス供給がある、あるいは将来において天然ガス供給が予想される、 2) 既設変電所あるいは既設発電設備を有する地点、の二点を満たす条件にて絞り込みを行い、北部、 中部、南部で合計6地域の候補箇所を 3 回に亘る専門家の現地出張で実地調査を行った。 また、モザンビーク共和国における電源開発計画に沿った実現可能なプロジェクトサイトの選定のた めに、当該国において電源開発を管轄するエネルギー省所管であり、今後具体的交渉の相手先となる EDM 本社と面談を持ちその意向を確認するとともに、本調査の内容と実地調査計画を説明した。結果、 EDM は、地方電化推進の計画として実施した現地調査地点のうち、電力需要が急速に伸びているテマ ネに約 50MW のガス発電を計画しており、また 2018 年には 110kV の送電線の完成も予定しているこ とから、テマネ地域でプロジェクトを実現への強い意向を得た。 これによりモザンビーク共和国にて公共性の高い電源開発に貢献できる候補地点として、地方電化推 進計画に基づく EDM の強い意向がある既設テマネ発電所内の地点を本事業実施可能性調査のプロジ ェクトサイトとして選定した。 【プロジェクトの技術的具現性の検討】 第 5 章では、プロジェクトサイトとして選定したテマネ地点での Smart-AHAT によるガス発電設備 について、技術条件の設定と予想性能の計算、配置計画を実施して技術的具現性の確認を実施してい る。以下にその概要を示す。 テマネでの現地調査結果から設定したプロジェクト技術条件に基づき、Smart-AHAT ガス発電プラ ントの予想性能を検討した。Smart-AHAT システムでは、冬季の昼夜間及び夏季の夜間において水を 造水、夏季の昼間に水を消費し、夏季の昼間の気温の高い条件下も含め年間を通して約 70MW 一定の 発電ができることが確認された。また、利用率 90%において、年間約 4.2×106 mmBTU の燃料消費 とともに約 530 万 kWh の正味発電量が期待でき、年間約 34,000 トンの造水が期待できるとの結果が 得られている。 現地調査結果に基づきテマネにおいて最適となるようにシステムの配置構成を計画し、より詳細な 5 / 66 検討のため3D完成イメージ図(図2.「Smart-AHATガス発電プラント設備3Dイメージ図」)を作成し た。テマネでの発電設備設置エリアとしては約400m×約130mの候補地があり、変圧器エリアを含め たSmart-AHATガス発電プラント設備に必要な敷地(約150m×約120m)には十分な大きさであるこ とが確認された。 図2.Smart-AHATガス発電プラント設備3Dイメージ図 【プロジェクトの経済的具現性の検討】 第 6 章では、テマネでの Smart-AHAT プロジェクトについて、調査した予想性能と予想建設費をも とに EDM より示された燃料価格等の条件を適用して Smart-AHAT システムでの発電コストを指標に 経済性の評価を実施し、経済的具現性の確認を実施。以下にその概要を示す。 技術的具現性検討の結果であるテマネでの予想性能を基準として、燃料単価、運転コスト、予想建 設コスト、保守コスト、プロジェクト資金モデル等の入力情報に対して予想発電コストを計算する事 業性評価ツールを開発し、本調査のプロジェクト経済性評価の手法とした。 EDM との面談で、予定される発電開始時期(2018 年)でのテマネおける燃料価格として 3.2 US$/mmBTU の情報を入手しており、その価格を基準としてその後の燃料ガス価格上昇は、同様に EDM より指定された米国の消費者物価指数(米国 CPI)、およびモザンビーク共和国の消費者物価指 数(モザンビーク CPI)を適用する二つのケースにて感度分析し、プロジェクト経済性評価を実施し た。「図3. 燃料価格に対する予想発電コスト」に示されるように、発電開始時期 2018 年での燃料ガ ス単価 3.2 US$/mmBTU に対して、予想発電コストは、米国 CPI のケースで 1kWh あたり 0.0523 US$、 モザンビーク共和国 CPI ケースで 1kWh あたり 0.0582 US$との結果を得ている。 6 / 66 図3.燃料価格に対する予想発電コスト Generation Cost (US$/kWh) この予想発電コストの評価のため、2009年にモザンビーク共和国のエネルギー省が公表した電力マ スタープランに示される平均的な発電コストのレンジである0.050~0.062 US$/kWhと比較し、この情 報と同等レベルの発電コスト0.0523 US$/kWh(米国CPI適用ケース)~0.0582 US$/kWh(モザンビ ーク共和国CPI適用ケース)で電力を供給することが可能であるとの結果が導きだされた。すなわちテ マネでの先進型高効率ガス発電システムSmart-AHATでの発電は経済的具現性があると考えられる。 【資金調達の見通し】 第 7 章では、本案件を実現化していくに際して必要となる資金調達につき調査・検証し提案してい る。以下にその概要を示す。 EDM では自己資金での発電所建設が財政的に容易ではない状況下、エネルギー省を含めて、特に有 利な融資条件での資金手配が強く望まれている。 日本の融資機関として、国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)が考えられ、本案件へは JBIC のバイヤーズ・クレジット(B/C)とバンク・ローン(B/L)などの輸出金融が有望案となる。 JBIC が扱う輸出金融は日本企業の輸出や本邦技術提供を対象とした融資で、一般的に、総事業費の 85%まで融資し 15%は輸入者アレンジ必要。高効率ガス火力発電所の場合、償却期間は 10~12 年であ る。 1) バイヤーズクレジット(B/C) 日本の融資機関が外国の輸入者に対して、日本からの輸入、技術受入れに必要な資金を直接融資 する。前金となる 15%をアレンジできること、政府保証状(L/G)を発行することが B/C の要件で ある。 2) バンクローン(B/L) 日本の融資機関が海外の金融機関に貸し付け、その資金を原資に、海外の輸入者に対し国内転貸 の形で資金が貸付けられる。南部アフリカ開発銀行(DBSA)向けクレジットラインが有望であり、 EDM との取引実績もあり、政府保証状を入手以外でも融資が可能となる場合がある。融資額が 1 億米ドルであること、前金相当分(一般的に 15%)は自己資金確保が必要なこと、金利が DBSA 設定、 などを考慮する必要がある。 今回、短期間での発電所運開スケジュールを考慮すると、円借款を適用することは困難である。 7 / 66 一方、JBIC の B/C は、EDM にて前金が自己調達できるか、政府保証状を適切なタイミングで発行 できるか、財務諸表を公開していない EDM の与信を取ることができるかという課題は残る。 課題となる政府保証状の発行に際しては、EDM の管轄省であるエネルギー省の承認、そして財 務省の認可が必要となるため日本国政府の間接支援も望まれる。 EDM の財務状況等に対して知見のある DBSA の JBIC のクレジット・ラインを背景とした B/L が現状で最も有効な手段と考えられる。 【結論および推奨事項】 第 8 章では、調査した結果に基づき結論を導き出し、今後の推奨事項を提案している。以下にその 概要を示す。 1) モザンビーク共和国での先進型高効率ガス発電設備 Smart-AHAT の具体的プロジェクトサイトと して、燃料ガスの供給可能性、2018 年の送電線の完成による電力需要、用地を含む周囲条件の検 討により、南部イニャンバネ州のテマネに EDM が所有する既設ガス発電所内が最適との結論とな った。 2) 夏季の気温が比較的高く内陸の乾燥したサバンナ地域であるテマネにおいて Smart-AHAT システ ムでのガス発電を実施する場合、 A) 気温の高い夏季の日中条件であっても年間を通じて約 70MW の定格発電出力が得られる B) 年間のバランスとして用水や農業灌漑水として利用可能な造水が可能 であり、先進型高効率ガス発電システムとして Smart-AHAT システムが最も適するとの結論に至 った。 3) テマネにおける Smart-AHAT システムでの 2018 年における予想発電コストは、燃料ガス単価 3.2 US$/mmBTU、エスカレーションとして米国およびモザンビーク共和国の消費者物価指数の適用 条件で、1kWh あたり 0.0523 US$~0.0582 US$となった。この値はモザンビーク共和国での平均 的値と同等の発電コストで電力を供給することが可能で経済性があり、公共性の高い地方の電化 開発に合理的なレベルであるとの結論となった。 4) モザンビーク共和国でプロジェクトを検討する場合、Smart-AHAT が本調査時点では商用運転実 績がなく、運転実績が重要視される円借款での資金調達には大きな課題があるという結論となっ た。テマネでの Smart-AHAT でのガス発電プロジェクトを実施する場合、相手国の実施機関であ る EDM が 2018 年での発電を要望していることから、可能な限り迅速なプロセスでプロジェクト が成立するよう推進が必要で、このため今後はバンク・ローンあるいはバイヤーズ・クレジット による資金調達を中心に具体化を進めることが推奨事項となった。 8 / 66 目 第1章 事業内容 1.1 件名 1.2 事業目的 1.3 事業内容 1.4 調査実施期間 1.5 調査実施体制 1.6 調査実績工程 第2章 次 相手国の状況 2.1 モザンビーク共和国の概要 2.2 モザンビーク共和国における政治・経済情勢 2.3 電力需給の現状と電源・送電開発計画 2.4 天然ガス開発の現状と計画 2.5 第3章 南部アフリカにおけるガス発電プラント市場について 先進型高効率ガス発電システム (Smart-AHAT) 3.1 Smart-AHATガス発電システムの構成 3.2 Smart-AHATシステムの特徴および技術的先進性 3.3 他のガス発電システムとの技術比較・優位点の考察と南部アフリカ地域への拡張性 第4章 プロジェクトの基本事項 4.1 プロジェクトサイトの調査・選定とSmart-AHAT採用理由 4.2 プロジェクトの計画概要 4.3 プロジェクトの計画工程 4.4 プロジェクトの環境社会影響の考察 4.5 プロジェクトサイトの状況 4.6 相手国の当該プロジェクトの位置づけ・必要性 4.7 モザンビーク共和国経済および地域貢献波及効果の考察 4.8 社会・政治情勢によるプロジェクトリスクの考察 第5章 プロジェクトの技術的実現可能性 5.1 南部アフリカ地域向けSmart-AHATガス発電プラントの基本計画 5.2 南部アフリカ地域向けSmart-AHATガス発電プラントの設備仕様 5.3 テマネ発電所におけるプロジェクトの計画条件 5.4 テマネ発電所におけるSmart-AHATガス発電プラントの予想性能 5.5 テマネ発電所におけるSmart-AHATガス発電プラントの配置計画と完成イメージ 9 / 66 第6章 プロジェクトの資金調達の見通し 6.1 相手国政府・実施機関の資金調達に関する考え方 6.2 本邦以外の公的または民間の資金の活用の可能性 6.3 日本政府の資金活用の可能性 6.4 モザンビーク電力公社の反応とプロジェクトの資金調達の方針 第7章 結論及び推奨事項 7.1 結論 7.2 推奨事項 【添付資料】 添付資料-1 :電力網計画(出典:モザンビーク電力公社(EDM)) 添付資料-2 :天然ガス開発状況(出典:モザンビーク国営石油・ガス公社(ENH)) 添付資料-3 :モザンビーク電力公社ペンバ変電所調査状況写真 添付資料-4 :モザンビーク電力公社ナカラ変電所調査状況写真 添付資料-5 :モザンビーク電力公社ナンプーラ中央変電所調査状況写真 添付資料-6 :モザンビーク電力公社ナンプーラ220/110kV変電所調査状況写真 添付資料-7 :モザンビーク電力公社ベイラ変電所調査状況写真 添付資料-8 :モザンビーク電力公社テマネ発電所調査状況写真 添付資料-9 :レッサーノ・ガルシア地域調査状況写真 添付資料-10 :モザンビークの電力セクターの概要抜粋(出典:モザンビーク電力公社) 10 / 66 第1章 事業内容 1.1 件名 本事業の件名は、モザンビーク共和国の適切な地点に先進型の高効率ガスタービン発電設備を新 設することを目的とし、 「平成 25 年度エネルギー需給緩和型インフラ・システム普及等促進事業(モ ザンビーク共和国における先進型高効率ガス発電設備に係る事業実施可能性調査)」とする。 1.2 事業目的 新興国では増大するエネルギー需要に対し、発電所建設が急務となっており、我が国企業におい ても多数の発電プラントの受注機会が創出されることから、 「インフラ・システム輸出」の促進は今 や喫緊の課題となっている。 こうした中、アフリカは 54 の国に約 10 億人の人口を擁し、今後発展が見込まれる有望な地域・ 市場であり、2013 年 6 月に横浜で開催された第 5 回アフリカ開発会議(TICAD V)でも、安倍首 相がアフリカ支援を表明しており、日本にとってアフリカは非常に重要な地域である。 特に南部アフリカ地域のモザンビーク共和国は、近年開発が始められている世界有数の天然ガス 田をはじめとする天然資源が豊富な国であり、また電力需要の伸びは毎年 10%程度と高く今後発電 プラントの輸出が見込める国である。 資源を有する新興国の経済発展には天然資源輸出は重要な収入の手段であり、モザンビーク共和 国においてもエネルギーの国内消費を効率化し、より多くの天然資源を輸出に振り向けることが重 要となる。そのためモザンビーク共和国は、燃料消費量低減と高い電力需要の伸びに対応する高効 率発電システムの早期導入、発電所建設が最重要課題となっている。 その際、例えば高効率のコンバインドサイクル火力発電設備は一般に大量の冷却水を使用すると いう課題があるため、乾燥地帯で水資源の少ない南部アフリカ地域に適し、高い発電効率が達成可 能な先進型高効率ガス発電プラントシステム技術の活用なども含めた検討が必要となる。 これらの背景を踏まえながら、本調査は先進型高効率ガス発電プラントシステムのモザンビーク 共和国の適切な地点での早期の発電所建設、燃料消費量低減により相手国ニーズに合致した事業可 能性を調査・検討し提案することで、日本の先進技術のモザンビーク共和国のみならず同様に天然 資源に恵まれた南部アフリカ地域への展開にも寄与していくことを目的とする。 11 / 66 1.3 事業内容 本事業では、以下の項目について調査・検討を行うものとする。 (1) モザンビーク共和国における政治・経済・電力事情の現状の把握 モザンビーク共和国の政治・経済情勢及び電力需給の現状、電源・送電開発計画、天然ガス 開発の現状・計画といった電力・エネルギーセクターの状況を調査し、そのガス発電プラント 市場規模および特徴を把握するとともに、発電設備の設置対象地域の状況について調査し、先 進型高効率ガス発電システムの設置候補サイトの選定を行う。 (2) 先進型高効率ガス発電設備の技術的実現可能性調査・検討 設置候補サイトにおける諸条件を把握し、最適と考えられるガス火力発電システムを提案す るとともに、提案するシステムの技術的実現可能性、建設スケジュール、環境社会影響につい て言及する。またシステムの基本仕様、設備の配置計画などの基本計画を策定する。 (3) 先進型高効率ガス発電設備の経済的実現の可能性調査・検討 プロジェクト事業費の算定と、モザンビーク共和国の実情に合致した事業性の評価が可能な ツールの開発を行い、予想発電コストによりプロジェクトの採算性を評価するとともに、諸条 件(燃料ガス価格、プロジェクト資金借入金利)が発電コストに与える影響を検討する。 (4) 先進型効率ガス発電設備の南部アフリカ地域への拡張性の検討 モザンビーク共和国での先進型高効率ガス発電設備の基本計画、調査・検討結果を踏まえ、 他の南部アフリカ地域への拡張性の検討を行う。 (5) 資金調達の見通し モザンビーク共和国の政府及び実施機関の資金調達に関する考え方、民間資金活用の可能性 等について調査し、あわせて円借款要請の可能性について検討する。 1.4 調査実施期間 本事業の契約時の実施期間は以下のとおりである。 平成 25 年 12 月 26 日(木)(契約締結日)~ 平成 26 年 10 月 31 日(月) 12 / 66 1.5 調査実施体制 本調査は、モザンビーク共和国のエネルギー省(Ministry of Energy)の傘下であるモザンビーク 電力公社(EDM:Electricidade de Moçambique)による、モザンビーク共和国の適切な候補サイト での先進型高効率ガス発電設備での事業可能性調査の要請に基づき、株式会社日立製作所が経済産 業省からの委託を受けて調査事業を開始した。株式会社日立製作所の担当部門は、平成 26 年 2 月 1 日を以て三菱重工株式会社の同部門と事業統合し、三菱日立パワーシステムズ株式会社(MHPS)とし て発足することとなり、本事業は MHPS が継承して実施した。本調査の実施体制は、 「図 1.5-1 施体制」のとおりである。 図 1.5-1 実施体制 総括責任者(調査団長) 麻尾 孝志 事業実施責任者 関 純 再業務委託 主機システム エンジニアリング・ 設計調査チーム プロセス:佐藤 和彦 ガスタービン:堀井 信之 吉田 知彦 宍戸 大樹 機 械:有安 和夫 井上 康平 熱交換器:橋本 貴嗣 下館 拓也 電 気:水上 哲 川瀬 裕介 制 御:宮本 尚文 菅原 隆広 配 置:岡本 修二 牛渡 崇史 肱岡 祐也 マーケット調査・ 建設資金 (ファイナンス) 調査チーム 建設資金調査:水野 英樹 マーケット調査:吉谷 絵理 13 / 66 プラント補機システム エンジニアリング・ プロジェクト建設コスト 調査チーム エンジニアリング・建設会社 (フォスターフィーラー 南アフリカ) 実 なお、モザンビーク共和国で実施可能なプロジェクトの計画、事業性評価をするために現地事情 に精通した、特に 1)モザンビーク共和国での建設工事の実績を持ち、2)南部アフリカ地域での適 切なエンジニアリング手法に精通する調査パートナーとの連携が必須であり、候補の建設・エンジ ニアリング会社数社との面談を実施し、モザンビーク共和国のテマネ地域での天然ガス開発プロジ ェクトにおいてエンジニアリングおよび建設の経験があることから、フォスターフィーラー南アフ リカ(FWSA:Foster Wheeler South Africa (Pty) Ltd.)を、 「図 1.5-1 実施体制」に記載のように 本事業性評価のパートナーとして選定、再業務委託し調査を実施した。 本調査の一部の業務を FWSA に再委託した内容は、以下のとおり。 【再委託業務】 1) プロジェクトサイト候補地調査 2) テマネ発電所での Smart-AHAT プラントの設備配置計画と完成イメージ作成 3) テマネ発電所での Smart-AHAT プラントのプラント補機および建設予想コストの算定 4) モザンビーク共和国に適する事業性評価ツールの開発 5) 事業性評価ツールでの予想発電コスト算出 【成果物】 1) テマネ発電所での Smart-AHAT プラントの設備配置計画と完成イメージ図 2) テマネ発電所での Smart-AHAT プラントのプラント補機および建設予想コスト 3) モザンビーク共和国に適する事業性評価ツール 4) 事業性評価ツールでの予想発電コスト算出 14 / 66 1.6 調査実績工程 現地調査を効率的に進めるためにモザンビーク共和国での電力セクターである EDM より電力網 計画や地方電化計画の情報を事前入手し、発電計画担当のディレクターと緊密に連絡をとりながら 調査を実施した。また、モザンビーク共和国の条件に合致するガス発電設備の計画、事業性評価の ため、調査パートナーのフォスターフィーラー南アフリカ社(FWSA)と共同でその現地調査・検討を 実施した。 (1) 第 1 回現地調査 第 1 回現地調査は 2014 年 2 月 13 日(木)から 21 日(金)にかけて下記の相手先と面談、 現地調査を実施し、モザンビーク共和国の概況、中部および南部のプロジェクトサイト候補地 の調査、基本条件の情報収集を実施した。 なお、第 1 回現地調査の調査団員は関 純、吉谷絵理、井上康平、肱岡祐也の 4 名である。 また、調査パートナーである FWSA から 1 名のプロセスエンジニアが参加した。 (a) EDM 本店面談 (b) EDM ベイラ変電所調査 (c) EDM テマネ発電所調査 (d) レッサーノガルシア地域調査 (e) モザンビーク共和国エネルギー省面談 (f) モザンビーク投資促進センター(CPI)面談 (マプート本部) (ベイラ事務所) (g) 在モザンビーク日本大使館面談 (h) JICA モザンビーク事務所面談 (i) 欧州三井物産マプート事務所面談 (j) モザンビーク国営石油・ガス公社(ENH)面談 (k) 南アフリカ石油・ガス会社(SASOL)面談 (l) FWSA 面談 (2) 第 2 回現地調査 第 2 回現地調査は 2014 年 6 月 17 日(火)から 27 日(金)にかけて下記の相手先と面談、 現地調査を実施し、プロジェクト基本条件の情報確認、モザンビーク共和国北部のプロジェク トサイト候補地の調査を実施した。 なお、第 2 回現地調査の調査団員は佐藤和彦、宍戸大樹、吉谷絵理の 3 名である。また、調 査パートナーである FWSA から 1 名のプロセスエンジニアが参加した。 (a) EDM 本店面談 (b) EDM ペンバ変電所調査 (c) EDM ナカラ変電所調査 15 / 66 (d) EDM ナンプーラ変電所調査 (e) 在モザンビーク日本大使館面談 (f) 欧州三井物産マプート事務所面談 (g) 南アフリカ開発銀行(DBSA)面談 (h) FWSA 面談 (3) 第 3 回現地調査 第 3 回現地調査は 2014 年 9 月 9 日(火)から 12 日(金)にかけて下記の相手先と面談を実 施し、プロジェクト計画条件の確認と調査結果の説明を実施した。 なお、第 3 回現地調査の調査団員は関 純、佐藤和彦、吉谷絵理の 3 名である。 (a) EDM 本店面談 (b) 在モザンビーク日本大使館面談 (c) JICA モザンビーク事務所面談 これらに基づき本調査報告書を完成させた。 上記の調査・検討作業の実績工程を「図 1.6-1 調査実績工程」に示す。 図 1.6-1 調査実績工程 16 / 66 第3章 相手国の状況 2.1 モザンビーク共和国の概要 モザンビーク共和国はアフリカ南部東海岸、マダガスカルの対岸に位置する国で、インド洋に広 く開いた 2,500km の海岸線と数多くの良港を有する。最近開発が進む北部沿岸での天然ガス資源が 有望視されている。国土の大半はサバンナ気候で平地であることから、大きな農業開発の可能性も ある。南部の南アフリカ共和国側に近い位置に首都でモザンビーク共和国第一の都市であるマプー トがある。 国土面積は約 80 万平方キロメートルと日本の約 2.1 倍に対し、人口は約 2,392 万人。99.7%が黒 人で、ポルトガルの旧植民地であるため公用語はポルトガル語。宗教は主にキリスト教(約 40%)と イスラム教(20%弱)が占め、深刻な宗教対立はない。モザンビーク共和国は 1975 年にポルトガルか ら独立したが、その 2 年後に内戦が勃発し 1992 年に 15 年間に及んだ内戦は終了、現在は貧困削減 を最重要課題に掲げるゲブーサ大統領の下で民主化による安定を目指した発展が進められている。 日本との関係は 1977 年に国交樹立以降、友好的な関係を維持。2013 年 6 月にはゲブーサ大統領 が来日、2014 年 1 月には安倍首相がモザンビーク共和国を訪問している。 2.2 モザンビーク共和国における政治・経済情勢 1975 年にポルトガルから独立した後、1977 年から 15 年間に及ぶ内戦は、与党「モザンビーク解 放戦線(FRELIMO)」と反政府組織「モザンビーク民族抵抗運動(RENAMO)」との間で勃発したも のであったが、1992 年の内戦終結後、モザンビーク共和国では FRELIMO が与党、RENAMO が 野党第一党という二大政党制が続いている。また、2013 年 4⽉以降、少数野党となっている RENAMO の強引な政治要求が問題視されるようになっている。2014 年 10 月には総選挙(大統領 選挙(ゲブーサ大統領は三選により交代)、国民議会選挙)が予定されている。 独立後は社会主義路線が採られたが、1987 年に市場経済移行計画が導入され、以降、国際通貨基 金(IMF)の指導による経済改革が行われた。内戦終結後は、港と内陸を結ぶ巨大交通インフラ事 業、メガ・プロジェクトと呼ばれる積極的な外資誘致、外国政府からの減免措置などを通じて経済 の建て直しが行われ、現在では年 7~8%の経済成長を遂げている。豊富な天然資源(天然ガス、石 炭)を背景に、今後の 10 年間に世界で最も高い成長が期待される国の一つである。 モザンビーク共和国の経済を牽引しているのは農業、製造業及び貿易業である。金額ベースのセ クター別 GDP 比率によると、商業、農漁業、運輸・通信、製造業が主な産業である。 国民の約 8 割は農業に従事しており、たばこ、トウモロコシ、キャッサバ、カシューナッツ、胡 麻、綿花などの農業が国の基幹産業である。その中でもたばこ、綿などはモザンビーク共和国の主 な輸出産品であり、重要な外貨の獲得手段となっている。しかし、天候不順等の自然条件で輸出量 が左右され、モザンビーク共和国経済に大きな影響を与えてきた。 17 / 66 この一方で、近年は鉱物資源に対する外国直接投資が盛んに行なわれている。主に外国資本によ る天然資源関連の大規模プロジェクトは、メガ・プロジェクトと位置付けられ、法人所得税の免税 を受けている。メガ・プロジェクトの例としては、三菱商事が出資しているアルミ製錬事業「モザ ール」ある。アルミ生産は国内製造業生産額の 6 割超、輸出総額の 31.5%(2012 年)を占める。 北部テテ州には豊富な石炭が埋蔵されており、国際資源会社(含新日鉄住金)が開発を手掛けており、 2011 年には生産・輸出が開始され、今後も生産量・輸出額は増額していく見込みである。 北西部のカーボ・デルガド州の沖合には世界最大級の天然ガス田があり、2 つの鉱区で探査・開発 が進められている。産出した天然ガスは液化天然ガス(LNG)の形で輸出される予定であり、重要 な外貨獲得手段になると予想され、モザンビーク共和国は世界有数のエネルギー輸出国になると見 られている。 豊富な天然資源に恵まれながら、現時点ではモザンビーク共和国は世界で最も貧しい国の 1 つで ある。国民の教育・健康・経済水準を総合的に点数化した指数によって国連年次報告書で公表され る「人間開発指数」のランキングをみると、モザンビーク共和国は 187 カ国中の 184 位である。貧 困対策として、政府は全国で道路・水道・電力網を作っているため歳出が大きく、政府の財政は常 に大幅な赤字である。モザンビーク政府は先進国の政府や国際機関から毎年多額の資金贈与を受け ており、政府にとって貴重な収入源で、2012 年の歳入の約 20%は諸外国からの贈与である。加え て、歳出に対する歳入の不足分は、例年約 8 割を外国から借り入れている。2012 年末時点の政府対 外債務は計 48.3 億米ドルであり、37%が世界銀行(IBRD)、12%がアフリカ開発銀行(AfDB)、10% がその他政府機関、等となっている。 GDP は直近の 5 年間は毎年 7%前後の伸びを継続している。一人当たり GDP は 550US$前後で後 発開発途上国(LDC)に分類される。物価の上昇については 2013 年は前年度比較+5%前後で比較 的安定してきている。通貨メティカルは 2013 年半ば以降は 1US$=30 メティカル前後の水準で安 定して推移している。 モザンビーク共和国は上述のような発展段階であるが、天然資源などの将来的な潜在性を持って おり、この発展を活性化させ自助努力を促していくための支援を各国が積極的に行うことがモザン ビーク共和国および支援元においても天然資源の確保などの便益にもなっていく状況となっている。 2.3 電力需給の現状と電源・送電開発計画 2.3.1 電力事業の歴史 モザンビーク共和国の独立以前は、ポルトガル行政府が電気事業を運営しており、1969 年に 南アフリカ共和国の電気事業者である Eskom とポルトガル行政府間でザンベジ川にカオラ・バ ッサ水力発電所が建設する協定を結び、207.5 万 kW の水力発電所と 1,400km の高圧直流送電 線を建設した。カオラ・バッサ発電所は、内戦時に度々破壊されたが、現在は復旧し、電力供給 を行っている。 18 / 66 2.3.2 電力会社の事業体制 1975 年のモザンビーク共和国独立に伴い、モザンビーク政府が 18%、ポルトガル政府が 82% を出資して、カオラ・バッサ発電所の運転管理を行うカオラ・バッサ水力発電公社(Hidroelectrica de Cahora Basas: HCB)を設立した。現在はモザンビーク政府が 92.5%、ポルトガル政府が 7.5% を出資している。 1977 年にはエネルギー省所管の下、モザンビーク電力公社(EDM)が設立され、HCB を除 く全ての電気事業者は EDM に統合された。1995 年 7 月に EDM の公営企業化が行われ、組織 改編を実行し、発電・送電・配電に分けられた。 このほか、1998 年に南アフリカ、モザンビーク共和国、スワジランドの各国政府主導で、南 アフリカ国内からスワジランドを経由し、モザンビーク共和国の首都マプートまでの送電線の敷 設 、 保 守 、 運 営 を 行 う モ ザ ン ビ ー ク 送 配 電 会 社 ( Mozambique Transmission Company: MOTRACO)が設立された。MOTRACO は、アルミ精錬工場への電力供給が事業収入の大部分 を占めているが、余剰電力は国内およびスワジランドへ供給している。 今回の調査では、相手国の事業実施者として EDM をカウンターパートナーとした。 2.3.3 発電・送電設備 2009 年時点でのモザンビーク共和国の発電設備は下記の通りである。設備容量の大部分はカ オラ・バッサ水力発電所に依るものであることがわかる。 表 2.3.3-1 モザンビーク共和国の既存発電設備 出典:Generatino Master Plan for the Mozambican Power Sector/ エネルギー省 電化率は 2005 年時点では電化率は 8%に留まったが、2012 年には全ての州への電力アクセス が整備され、23%まで改善されたが依然として低い。 19 / 66 表 2.3.3-1 電化率 出典:モザンビーク電力公社(EDM) 2.3.4 電力需給 電力供給は毎年 10%程度増加しており、EDM として国内需要増へ早急な対応が必要となっ ている。政府エネルギー政策によると、2030 年には電力需要が最大 1,350MW、8,200GWh/ 年になると予測されている。 表 2.3.4-1 Medium Forecast 2008 – 2030 出典:モザンビークエネルギー省・Generation Master Plan for the Mozambique Power Sector 2.3.5 ガス発電プラント市場規模および特徴 南アフリカの石油会社(SASOL)は、2001 年にパンデ・テマネのガス田から南アフリカ共和 国の工業地帯セクンダまでの全長 865 キロにガス・パイプラインを敷設し、2004 年から操業を 20 / 66 開始した。同社は 2013 年までに総額 2 億 2,600 万ドルを投じ、EDM との合弁で(SASOL49%、 EDM51%)国境付近のレッサーノ・ガルシアに 140MW の天然ガス発電所を建設する計画を立 てている。 下記の表 2.5-1 はモザンビーク共和国に現在までに設置されている発電用ガスタービンの一 覧で、いずれも単純開放型(シンプルサイクル)型となっている。 表 2.3.5-1 モザンビーク共和国の発電用ガスタービン No. 1 製造 メーカー SIEMENS OIL&GAS 2 GE 3 MAN TURBO 4 MAN TURBO 顧客名 案件名 GT TYPE 台数 単機容量 運開年 燃料 EDM BEIRA SGT-500 1 18.5 MW 1988 年 OIL EDM MAPUTO MS5001PA 1 25.8 MW 1991 年 OIL TEMANE 1&2 THM 1304-11 2 11.2 MW 2002 年 GAS/NAT URAL TEMANE 1&2 THM 1304-11 2 11.2MW 2009 年 GAS/NAT URAL SASOL PETROLEUM TEMANE THYSSEN KRUPP UHDE 出典:McCoy Power Report 2.3.6 電力セクターの課題と開発計画 【発電設備について】 主要電源は、2,075MW の発電設備容量をもつカオラ・バッサ水力発電所である。南アフリカ の電気事業である Eskom と長期電力売買契約(Power Purchase Agreement: PPA)に結んでお り、発電容量の内 60%が、35%がジンバブエ電力公社(Zesa)、5%のみが自国で消費されている。 しかし、それも最大電力需要地であるマプート首都圏には届いておらず、不足電力は EDM によ る水力発電と老朽化した火力発電に依存している。カオラ・バッサ水力発電所はポルトガル植民 地時代の南アフリカ政府との取極めにより実質的に南アフリカ向け輸出用電源として機能して おり、国内への電力供給増を期待することが困難な状況となっている。 EDM はそのため 90%以上を水力発電に依存する形から脱却し、ガス・石炭をはじめとした火 力発電による電力需給を増やしていく方針である。 21 / 66 表 2.3.6-1 Power Balance (By Type of Fuel / resources) 出典:モザンビーク電力公社(EDM) 【地方電化率の向上について】 電化率は全国平均で 18%、首都マプト市では 82%、南部は 42%であり、発電所の増設および 送電網の整備を含めた地方の電化が今後の課題となっている。 また、「添付資料-1 電力網計画(出典:モザンビーク電力公社(EDM))」の通り、南アフリ カ共和国向け基幹送電線はあるが、国内送電網が脆弱であり都市間が分断、地方の電化が進んで いない。現状はカオラ・バッサ水力発電公社からの送電と、南アフリカ共和国からの輸入に頼る ところが大きい状態である。北部への送電網は、220kV のバックアップのないケーブルによっ て送電されている状況であり、どこかで争いが起こり送電網が破壊されるとカバーすることがで きない。この状況に対応すべく、カオラ・バッサとマプートを結ぶ、バックボーンプロジェクト と呼ばれる送電線の敷設計画等が併せて進められている。政府は、全長 2,000km の国土南北を 跨ぐ送電線を整備し、カオラ・バッサ水力発電所の電力を国内に供給する考えである。2017 年 の案件完工が予想されている。 2.4 天然ガス開発の現状と計画 中部のロブマ堆積盆地とモザンビーク堆積盆地で天然ガスの開発が進められている。イニャンバ ネ州のパンデ・テマネのガス田は、南アフリカ共和国の石油・ガス会社(SASOL)とモザンビーク 共和国の国営石油・ガス公社(ENH)が出資し、2001 年にパイプラインが敷設され 2004 年から操 業が開始された。ガス田から SASOL の化学プラントがある南アフリカ共和国のセクンダまでの全 長 865 キロにガス・パイプラインを敷設し、天然ガスを輸出している。現在は生産量全体の 95%に あたる年間 1 億 4,700 万ギガジュールを南アフリカ共和国に輸出している。 SASOL は EDM と合弁で、2013 年までに国境付近のレッサーノ・ガルシアに 140 メガワット規 模の天然ガス発電所を建設する計画を立てている。また、パンデ・テマネのガス田に 30%の株式を 22 / 66 有する ENH は、同ガス田よりイニャンバネ州ゴブロ、イニャソロ、ビランクロス郡まで家庭消費 用にパイプラインを新設し、また、マトウトウイネおよびマプート市の消費用にもパイプラインの 敷設が計画されている。 北部ロブマにおいて、三井物産が 20%の権益を有するロブマ・オフショア・エリア 1 鉱区(鉱 区面積約 1 万 700 平方キロ)の開発に、米アナダルコ(オペレーター;出資比率 26.5%)、ENH (15%)、 インド国営石油会社 BPRL(10%)、インドのインド石油天然ガス省(ONGC)/Oil India(20%)、タイ 石油開発公社(PTTEP)(8.5%)が出資する。2011 年 11 月にはアナダルコが、同鉱区の天然ガスの 可採埋蔵量は 15 兆立方フィートから最大で 30 兆立方フィートに上ると発表し、世界最大級のガス 田が発見されたとして話題を集めた。2018 年を目処に年産 500 万トン規模の液化天然ガス(LNG) 基地を 2 基建設する予定で、1,000 万トンのうち半分以上を日本に輸出することが計画されている。 ロブマ・オフショア・エリア 4 鉱区で権益を有するイタリア炭化水素公社(ENI)は、ENH、ポル トガルのガルプ、韓国ガス公社(KOGAS)とともに探査を進めており、これまでに 15 兆立方フィー ト超の埋蔵量が確認されている。 近年の巨大ガス田の発見により、モザンビーク共和国はアフリカ有数のガス保有国となったが、 資源の輸出のみに留まることなく、資源の有効活用による工業化、及び国内経済発展を促進するこ とが課題の一つとなっている。上記で述べた通り、イニャンバネ州でのガス開発が 2004 年より開始 されているが、依然として、モザンビーク共和国では工業化が進んでいない。 表 2.4-1 モザンビーク共和国の天然ガスの発見と推定額 地域 利用可能な総 TCFE 3P 発見された TCFE 発見されていない TCFE Rovuma offshore North 199.4 124.4 75.0 Rovuma offshore South 36.0 0.0 36.0 Rovuma onshore 3.1 0.0 3.1 Maniamamba Basin onshore 1.2 0.0 1.2 17.9 0.0 17.9 5.7 3.5 2.3 13.1 0 13.1 276.5 127.9 148.1 Central offshore South and West onshore South offshore 総計 出典:ICF 23 / 66 2.5 南部アフリカにおけるガス発電プラント市場について 南部アフリカの国々の中で電力市場が一定規模あり、且つ、ガス供給が見込まれるタンザニア、 ガーナ、南アフリカにおけるガス発電プラントについて下記に示す。 【タンザニア】 タンザニアは 40,000,000 人以上と多くの人口を抱え、中期的に石油・ガス開発による外資の直 接投資による経済成長が見込まれている。Song Songo と Muazi Bay から天然ガスが産出され、全 て国内で消費されている。70%以上の国内電力は Songo Songo からガスが供給されている。首都 Dar es Salaam へパイプラインが敷設され、Ubungo 発電所に加え、Tanzania Breweries や Wazo Hill セメント工場へも供給されている。タンザニア南東、モザンビーク国境の Rovuma basin では、 Mnazi と Msimbati の 2 箇所のガス田があり、現在は Mtwara でガス発電プラントがあり、南部回 廊地域へ電力供給している。 国内の電力需要は切迫しており、深刻な電力不足に悩まされている。背景として、水力発電所の 慢性的な水不足、増加する電力需要に沿うための新規発電所の開発不足が挙げられる。電力設備構 成は、ガス 38%、水力 32%、ディーゼル 29%、コジェネ 1%である。電力の安定供給のために、水 力発電への依存回避をし発電ミックスを推進するため、将来的にはガス焚き発電の需要が伸びるこ とが予想される。 アフリカ他国に比べて水インフラは良い環境にあったが近年は老朽化している。水資源は現況で 十分な量があるが、2025 年には人口増加により水資源不足が予想される。 表 2.6-1 Electricity Supply Mix (Tanzania) 2012 出典:TANESCO, Frost & Sullivan 24 / 66 【ガーナ】 ガーナはアフリカの中でも、最も安定して平和な、民主的国家のひとつと考えられている。世界 第二のカカオ生産量、アフリカ第二の金輸出量、また大規模な石油・ガスの生産量をプラント技術 部 配置計画二チーム、過去十年間堅調な経済成長を続けている。 現在は天然ガスを生産していないが、下記地域でのガス埋蔵量が確認されている。ナイジェリア からトーゴ、ベニンを経由してガーナの Tokoradi 発電所を結ぶ WAGP(西アフリカ・ガスパイプ ライン)に接続している。ナイジェリアはアフリカ最大の埋蔵量を誇るが、不安定な政治と不明瞭 な政策によりガス生産量は限定的である。昨今は、このナイジェリアからの WAGP による不安定な ガス供給がガーナでの電力供給の不安定化を引き起こしている。 国内の電力需要は切迫しており、定期的な停電があり年々状況は悪化している。高い経済成長率、 電力設備への投資不足やメンテナンス不足による電力供給は不十分となっている。需要をまかなう ためには 2015 年までに 5GW の発電設備容量が必要となる。豊富な水力資源を有するため、総発電 量の半分以上を水力発電に依存している。水資源には大変恵まれているが、産業などに活用できる 水資源は非常に限られている。 【南アフリカ】 南アフリカは豊富な資源を背景に成長を続ける中所得国である。2007 年の電力危機、2009 年のリ ーマンショックにより GDP 成長率が減少するも回復基調にある。失業率の高さが依然として課題 である。 南ア国内でガス資源の可能性が高い地域は下記 4 つとなる。PetroSA と SASOL が二大ガス会社 である。将来的には、オーストラリアの Sunbird Energy 社が開発している北西地域のガス田が有 望である。本案件が開発されれば、2019 年から 2021 年にかけて、南ア政府は 2,600MW のガス焚 き発電所を契約する予定である。 25 / 66 第3章 先進型高効率ガス発電システム (Smart-AHAT) 3.1 Smart-AHAT ガス発電システムの構成 3.1.1 Smart-AHAT システムについて 第 1 章 1.2 項に記述のように、本事業は乾燥地帯で水資源の少ないモザンビーク共和国の内陸部 をはじめとする南部アフリカ地域に適し、高い発電効率が達成可能な先進型高効率ガス発電プラ ントシステム技術の活用の検討をその目的としている。この目的に適合する先進型高効率ガス発 電システムとして Smart-AHAT システムと呼ばれるガスタービンを適用した発電システムがある。 Smart-AHAT システムは、日本政府支援の国家プロジェクトの一つとして、省エネルギー及び CO2 削減の観点から中・小容量ガスタービンの高効率化のために三菱日立パワーシステムズ株式 会社(MHPS)により推進されている AHAT システム(AHAT とは、「高湿分空気利用タービン」 Advanced Humid Air Turbine の略)の実用化派生技術の一つで、本邦固有の技術である。 本調査時点においては、Smart-AHAT システムは長期信頼性実証途上であり国内外での商用運 転実績が未だなく、開発途上国などでの資金の調達について大きな課題があるものの、 Smart-AHAT システムはガスタービンを適用した発電システムとして構成が簡素であり、単純開 放サイクル(シンプルサイクル)よりも発電効率が高く、またプラントへの補給水を低減できる などの先進的でユニークな特徴を有することから、モザンビーク共和国での本調査の目的に適合 するため本事業での主たる先進型高効率ガス発電設備として調査、検討を実施した。 以下にこの Smart-AHAT システムの開発の背景、システムの構成、特徴を記述する。 3.1.2 Smart-AHAT システムの開発の背景 ガスタービンは、短い工期で建設できるという点や急速起動が可能といった優れた特徴から本 邦では 1970 年代後半から非常用電源として広く採用され、現在ではその高温の排気エネルギーを 有効利用して高いプラント効率が得られ、主にベースロード用として採用される複合ガス(コン バインドサイクル)発電設備の主機として使用されている。 コンバインドサイクル発電設備は、一方でガスタービンの排気エネルギーを蒸気に変換して発 電に供する設備として蒸気タービンがあるため、急速起動や大きな負荷変化に追従しにくい、な どの運用性への対応に困難を伴う。さらなる高効率化のためのガスタービンでの燃焼温度の高温 化が高価な高温耐用高級材の使用につながり、高いメンテナンスコストを生じさせる要因ともな っている。また高い発電効率を得るために蒸気タービンの復水器では十分な量の冷却水の供給源 が必要となり立地条件に制約があるといった問題がある。 本邦技術のグローバル市場への積極展開の視点から MHPS は、これらのコンバインドサイクル 発電設備の弱みをカバーし、十分な水の供給源が必要であるなどの立地条件の制約を求めず、大 きな負荷変化への追従が要求される電力系統の脆弱な開発途上の地域・国々へ対応が可能で、シ 26 / 66 ンプルサイクルよりも発電効率が高いガス発電設備を目指して Smart-AHAT システムを開発した。 なお、Smart-AHAT システムの課題は、技術としては確立されているものの前述のように本調 査時点では、商用運転実績がないという点にある。 3.1.3 Smart-AHAT システムの構成 「図 3.1-1 Smart-AHAT システム概略構成図」に Smart-AHAT システムの構成概要を示す。 Smart-AHAT システムは、MHPS のヘビーデューティ型ガスタービン H-50、排熱回収ボイラ (HRSG)、および水回収装置(WRS)を主要な要素としてシステム構成されている。 図 3.1-1 Smart-AHAT システム概略構成図 Smart-AHAT の基本的なシステム原理は下記である。 ガスタービンへ導入された燃料ガスはガスタービンで着火され、燃焼ガスはタービンのブレード に力を伝達し発電機を回転させ電力に変換される。高温で高いエネルギーを残存するガスタービ ンからの排気ガスは HRSG に導入され、ガスタービンに導入する蒸気を発生させる。ガスタービ ンに導入された蒸気は同様にタービンのブレードに力を伝達し、同一の発電機を回転させさらな る電力に変換される。 ガスタービンに導入された蒸気と燃焼ガスの混合である HRSG からの混合排気ガスは、WRS に 導かれ、混合排気ガス中のほとんどの水分は回収され HRSG やシステムの冷却水の水源として再 利用される。 27 / 66 Smart-AHAT システムに適用されるヘビーデューティ型ガスタービン H-50 は MHPS によって 設計開発されたタービンである。このガスタービンは実績のある MHPS のヘビーデューティ型ガ スタービン H-80 の相似縮小モデルであり、Smart-AHAT システムに適したガスタービンである。 HRSG で発生させた蒸気の一部少量を窒素酸化物(NOx)排出低減などを目的にガスタービンに 導入する方式は一般的な技術として存在するが、HRSG で発生させた蒸気の全量を導入するガス タービンは、MHPS の H-50 ガスタービン以外にないといえる。 28 / 66 3.2 Smart-AHAT システムの特徴および技術的先進性 第 3.1 項にて導入紹介したように Smart-AHAT システムは、先進的なタイプのガスタービン発 電設備で、同じガスタービンに HRSG で発生させた蒸気全量を導入することにより、蒸気タービ ンを用いることなくシンプルサイクルガスタービン発電より高い発電効率が得られるシステムで ある。 この「ハイブリッド(燃焼ガスおよび蒸気の二つの流体による駆動)」とも呼べるタービンは技 術的に非常にユニークで、次のような利点・特徴を持っている。 1) 高い大気温度条件下における高出力維持・高い発電効率 Smart-AHAT システムで使用されるガスタービンは、二つのエネルギー源(燃焼ガス および蒸気)により駆動されることとなり、燃焼ガスだけの単一のエネルギー源で駆動 されるシンプルサイクルガスタービン発電と比較して高い発電効率が達成でき、また高 い大気温度条件下においても定格の出力を維持することが可能である。 2) 最少の回転機のシステム構成 Smart-AHAT は、コンバインドサイクル発電システムで設置されるガスタービンとは 別の駆動回転機となる蒸気タービンを有しないシステムであり、一般的なコンバインド サイクル発電システムと比較してより柔軟な運転対応特性を持つ。すなわち Smart-AHAT システムでは駆動回転機はガスタービンのみであり、シンプルサイクルと 同等レベルの高速起動と低負荷運用能力を持っており、また急速な負荷変動に対応可能 な特性を有している。 3) 窒素酸化物(NOx)の低減 NOx の低減に対しては、従来からガスタービン燃焼器へ水または蒸気を噴射する技術 が存在する。Smart-AHAT システムは、ガスタービンに蒸気を注入するため、水噴射ま たは蒸気噴射と同じ効果が期待でき、低い NOx 排出を達成することが可能である。 Smart-AHAT システムの混合排気ガス中には多量の水分が含まれている。Smart-AHAT システ ムでは、この水分のほとんどをシステムに設置される WRS により回収し、ガスタービンへの導入 される蒸気の水源および空冷ラジエータにより冷却された後に WRS 内で排気ガスに散布される 冷却水として再利用している。この「水の再利用」システムは次のような利点・特徴を持ってい る。 4) 造水の特性 ガスタービンに導入される蒸気の水分の回収に加え、炭化水素を主成分とする燃料ガス の燃焼により生成された水分も WRS により回収することができる。 従い一定の低い大気温度条件下では、ほとんど水を消費しない、あるいは造水をするシ ステムとしての機能を有している。ガスタービンを用いた他の発電システムであるシン 29 / 66 プルサイクルやコンバインドサイクル発電システムでは、どのような条件下でも水を生 成することはできないが、Smart-AHAT システムでは、一定の大気温度条件下で燃焼で 生成される水分をも回収・利用可能であるという大きな特徴を持つ。 上述の Smart-AHAT システムが持つ技術的先進性の利点・特徴は、電力網が脆弱な開発途上 で、比較的高気温の乾燥したサバンナ気候が特徴であるモザンビーク共和国での先進型高効率ガ ス発電プラントシステム活用の検討に合致するものであり、本邦技術の相手国のマーケット・ニ ーズに合ったものであるため、商用運転実績がないという課題があるもの、本調査にて検討を進 めた。 30 / 66 3.3 他のガス発電システムとの技術比較・優位点の考察と南部アフリカ地域への拡張性 3.3.1 比較対象となるガスタービン発電システム 技術比較の対象となる他のガスタービン発電システムとしては、電力網が脆弱なモザンビーク共 和国での分散化電源の位置づけから、中・小出力規模のシンプルサイクル、およびコンバインド サイクルシステムがその対象となる。さらにコンバインドサイクルシステムには、復水器の冷却 方式によって水冷式と空冷式が存在する。 それぞれのシステムには、それぞれの技術的利点があり、一般には設置されるサイトの条件など によりプロジェクト毎に最適なシステムが選定されていくが、次項にてそれらの技術事項を定性 的に比較し、本報告書の目的である乾燥地帯で水資源の少ないモザンビーク共和国内陸部をはじ めとする南部アフリカ地域への適用を視点として先進型である Smart-AHAT システムの優位性・ 拡張性を考察する。 3.3.2 技術事項の比較と優位点の考察と南部アフリカ地域への拡張性 Smart-AHAT システムと他のガス発電システムとの技術事項の比較を表 3.3-1 に示す。 シンプルサイクルガスタービン発電設備は、機器構成が最もシンプルで運用性に優れるものの、 高いエネルギーを残存する高温の排気ガスを大気に放出するため発電効率が最も低いシステムで、 また周囲大気温度が高温になると出力の低下が著しくなる。水をほとんど消費しないシステムで あり、乾燥した気候の砂漠地帯で燃料単価の低い場合に適用されることが多い。 コンバインドサイクルシステム発電設備は、蒸気タービンが設置されるなど機器構成が複雑で運 用性に劣るものの、ガスタービンの排気ガスが持つ残存エネルギーを最大限有効活用できるシス テムで、発電効率が最も高いシステムである。水冷式では大量の冷却水が必要となるため立地条 件の制約がある。蒸気タービンの復水器冷却に水を使わない空冷式では復水器が大型化して広い 発電所敷地面積が必要となってくる。空冷式では水冷式より発電効率は若干低くなるが、ともに コンバインドサイクルシステム発電設備として燃料単価が高く安定した電力網を有する地域でベ ースロード電源として適用されることが多い。 「表 3.3-1 ガスタービン発電システムの技術比較」の比較から Smart-AHAT システムはそのお おきな特徴として、 1) 高い大気温度時にもほぼ定格の出力での運転が可能、 2) 一定の低い大気温条件下で造水が可能、 という 2 つの点において他のガス発電システムに対して優位な点があること示されている。 これは構成機器が少なくメンテナンス性に優れているという特徴とともに、本事業の比較的高気温の乾 燥地帯で水資源の少ないモザンビーク共和国の内陸部をはじめとする南部アフリカ地域への先進型高効 率ガス発電設備の適用という目的に合致する優位点であり、その南部アフリカ地域の市場への拡張性を 示しているものである。 31 / 66 表 3.3-1 ガスタービン発電システムの技術比較 項 目 Smart-AHAT 単純開放サイクル 複合ガス(コンバインド 複合ガス(コンバインド システム (シンプルサイクル) サイクル)システム サイクル)システム (水冷式) (空冷式) △ △ 〇 機器構成 構成機器が少ない ◎ 構成機器が最も少ない 〇 発電効率 コンバインドサイク 構成機器が多く複雑 × 最も低い 構成機器が多く複雑 ◎ 最も高い ◎ 水冷式より若干低い ルより低いがシンプ ルサイクルより高い 高い大気温度 ◎ 時の出力特性 ほぼ定格出力での運 × 著しい出力低下となる △ 出力低下となる △ 出力低下となる 転が可能 ◎ ◎ シンプルサイクルと 起動時間、高速負荷変化 蒸気タービンを有する 蒸気タービンを有する 同等の など運用性に優れる ため運用性に劣る ため運用性に劣る 運用性 △ △ 運用性 〇 立地制約 ◎ 必要な敷地面積が最も 十分な供給量をもつ 必要な敷地面積が ンドサイクルとシン 小さい 水源の要求があり立地 大きい に制約条件ある ◎ 造水/消費 △ × 造水はできないが水を 件下で造水が可能 消費しないシステムが 消費を抑えたシステム 可能 が可能 ◎ 大量の水を消費 △ 一定の低い大気温条 〇 メンテナンス △ 敷地面積はコンバイ プルサイクルの中間 水の × △ 造水はできないが水の △ シンプルサイクルと 構成機器が少なくメン 構成機器が多くメンテ 構成機器が多くメンテ 同等レベルのメンテ テナンス性に優れる ナンス性に劣る ナンス性に劣る ナンス性を持つ 優位性評価記号は、◎⇒〇⇒△⇒×の順序として相対評価した。 32 / 66 第4章 プロジェクトの基本事項 4.1 プロジェクトサイトの調査・選定と Smart-AHAT 採用理由 4.1.1 プロジェクトサイト候補箇所の調査 案件への具体化および実現性の的確な評価のために提案候補地点の実地調査は不可欠であり、 より具体的な調査のために、以下の方法を採用して実地調査を実施した。 ・実地調査候補箇所の事前情報入手 実地調査候補箇所の絞り込みを行うための情報としてモザンビーク電力公社(EDM)およ びモザンビーク国営石油・ガス公社(ENH)より事前情報資料を入手。 ・実施調査での EDM の同行 実地調査箇所でのより具体的な情報収集のため関係者の同行を依頼したもの。 ・専門家による実地調査 発電プラントシステム、配置計画、主要機器の専門家を派遣し、EDM 関係者と面談する ことでより具体的、技術的な調査を実現したもの。 4.1.2 実地調査候補箇所の絞り込み 本事業は、エネルギー需要が増大するモザンビーク共和国に対して、先進型高効率ガス発電 システムの早期導入に寄与するものであり、将来我が国の液化天然ガスの輸入先の多様化の手段 として位置づけられるものである。 この目的を実現させるため、潜在需要の調査も含め近隣に燃料源となる天然ガス田が存在す る地域を北部、中部、南部に区分して EDM より入手の「添付資料-1:電力網計画」と ENH よ り入手の「添付資料-2:天然ガス開発状況」から下記の6地域に実地調査候補箇所を絞り込み、 すべての候補箇所を二回に亘る専門家の現地出張で実地調査を行った。 候補箇所の絞り込みの基準としては、1)既存の天然ガス供給がある、あるいは将来において天 然ガス供給が予想される、2)既設変電所あるいは既設発電設備を有する地点、の二点を満たす条 件にて絞り込みを行った。 【北部地域】 ・ペンバ(Pemba)地域 ・ナカラ(Nacala)地域 ・ナンプーラ(Nampula)地域 上記北部の 3 地域はいずれもカーボ・デルガド・エリア1(Cabo Delgado Area 1)の Off-shore ガス田から天然ガスの供給が予想される地域である。 【中部地点】 ・ベイラ(Beira)地域 近隣のブジ(Buzi)にて天然ガスの貯留が確認されている地点で、将来開発が予想される地 域である。 33 / 66 【南部地域】 ・テマネ(Temane)地域 操業中の On-Shore 天然ガス田の井戸元であり、また EDM による 50MW のガス発電計 画がある地域である。 ・レッサーノ・ガルシア(Ressano Garcia)地域 モザンビーク共和国のテマネのガス田より南アフリカ共和国に天然ガスを移送している パイプラインの通過点で独立発電事業者(IPP)による電源開発が進行中の地域である。 4.1.3 各実地調査の内容 実地調査にあたっては下記の四つの主要技術事項を、プロジェクトサイト提案地点の決定の 判断基準として特に調査した。 1) 燃料ガスの供給可能性 2) 電力需要・送電計画 3) 発電所用敷地の条件 4) 水源の条件 各調査地点の調査結果を以下に記載する。 4.1.3.1 北部 ペンバ地域 モザンビーク電力公社ペンバ変電所 既設の変電設備がある EDM ペンバ変電所の専門家による実地調査を 2014 年 6 月 23 日に実 施した。 1) 燃料ガスの供給可能性 現時点で天然ガス供給パイプラインはないが、カーボ・デルガド・エリア1のガス 田の開発が計画されている。カーボ・デルガド・エリア1の開発が進み、将来ペンバへ のガスパイプラインが敷設されれば、ガス供給の可能性がある。 2) 電力需要・送電計画 EDMの110kV/33kVの変電所がある。またペンバでの電力需要は増加中である。 3) 発電所用敷地の条件 新規発電所の建設に十分な敷地を得ることが可能な地点である。 4) 水源の条件 既設EDMペンバ変電所は内陸のサバンナ地域に位置する。大量の水を供給する設備 は有しない。「 ( 添付資料-3:モザンビーク電力公社ペンバ変電所で調査状況写真」参照。) 4.1.3.2 北部 ナカラ地域 モザンビーク電力公社ナカラ変電所 既設の変電設備がある EDM ナカラ変電所の専門家による実地調査を 2014 年 6 月 23 日に実 施した。 1) 燃料ガスの供給可能性 現時点で天然ガス供給パイプラインはないが、カーボ・デルガド・エリア1のガス 田の開発が計画されている。カーボ・デルガド・エリア1の開発が進み、将来ナカラへ のガスパイプラインが敷設されれば、ガス供給の可能性がある。 34 / 66 2) 電力需要・送電計画 EDMの110kV/33kVの変電所がある。またナカラでの電力需要は増加中である。 3) 発電所用敷地の条件 退役したディーゼル・エンジン発電設備がある。退役ディーゼル・エンジン発電設 備を完全に撤去すれば、新規の発電設備設置の敷地は得ることが可能な地点である。 4) 水源の条件 既設EDMナカラ中央変電所は沿岸に位置する。冷却水として海水が利用可能である が、河川からの微粒砂の堆積が予見され安定的に取水するのは困難と所見した。(「添 付資料-4:モザンビーク電力公社ナカラ変電所調査状況写真」参照。) 4.1.3.3 北部 ナンプーラ地域 モザンビーク電力公社ナンプーラ中央変電所 既設の変電設備がある EDM ナンプーラ中央変電所の専門家による実地調査を 2014 年 6 月 26 日に実施した。 1) 燃料ガスの供給可能性 現時点で天然ガス供給パイプラインはないが、カーボ・デルガド・エリア1のガス 田の開発が計画されている。カーボ・デルガド・エリア1の開発が進み、将来ナンプー ラへのガスパイプラインが敷設されれば、ガス供給の可能性がある。 2) 電力需要・送電計画 EDMの110kV/33kVの変電所がある。またナンプーラでの電力需要は増加中である。 3) 発電所用敷地の条件 既設非常用ディーゼル・エンジン発電設備がある。既設変電所は居住地域に位置し、 新規の発電設備設置の敷地としては狭い。 4) 水源の条件 既設EDMナンプーラ中央変電所は内陸のサバンナ地域に位置する。大量の水を供給 する設備は有しない。(「添付資料-5:モザンビーク電力公社 ナンプーラ中央変電所 調査状況写真」参照。) 4.1.3.4 北部 ナンプーラ地域 モザンビーク電力公社ナンプーラ 220kV/110kV 変電所 既設の変電設備がある EDM ナンプーラ 220kV/110kV 変電所の専門家による実地調査を 2014 年 6 月 26 日に実施した。 1) 燃料ガスの供給可能性 現時点で天然ガス供給パイプラインはないが、カーボ・デルガド エリア1のガス田 の開発が計画されている。カーボ・デルガド エリア1の開発が進み、将来ナンプーラ へのガスパイプラインが敷設されれば、ガス供給の可能性がある。 2) 電力需要・送電計画 EDMの220kV/110kVの変電所がある。またナンプーラでの電力需要は増加中である。 3) 発電所用敷地の条件 新規発電所の建設に十分な敷地を得ることが可能な地点である。 4) 水源の条件 35 / 66 既設EDMナンプーラ220kV/110kV変電所は内陸のサバンナ地域に位置する。大量の水を供給す る設備は有しない。(「添付資料-6:モザンビーク電力公社ナンプーラ220kV/110kV変電所調査 状況写真」参照。) 4.1.3.5 中部 ベイラ地域 モザンビーク電力公社ベイラ変電所 既設の変電設備がある EDM ベイラ変電所の専門家による実地調査を 2014 年 2 月 14 日に実 施した。 1) 燃料ガスの供給可能性 現時点で天然ガス供給パイプラインはないが、近隣のブジで検討されているガス田 の開発が進めば将来ガス供給の可能性はある。 ブジからのパイプラインを敷設する場合、途中に湾があるため海中敷設あるいは湾 を迂回しての建設となり、コストのかかるプロジェクトとなることが予想される。 2) 電力需要・送電計画 2系統の110kVの送電線とEDMの変電所がある。またベイラでの電力需要は増加中 である。 3) 発電所用敷地の条件 退役した石炭火力発電設備がある。退役石炭発電設備を完全に撤去すれば新規の発 電設備設置の敷地は得ることが可能な地点である。 4) 水源の条件 河川水が利用可能な地点である(「添付資料-7:モザンビーク電力公社ベイラ変電所 調査状況写真」参照。) 4.1.3.6 南部 テマネ地域 モザンビーク電力公社テマネ発電所 既設のガスエンジン発電設備がある EDM テマネ発電所の専門家による実地調査を 2014 年 2 月 16 日に実施した。 1) 燃料ガスの供給可能性 パンデ(Pande)およびテマネ(Temane)のガス田からの供給パイプラインがある。 2) 電力需要・送電計画 現時点では近傍のビランクロス(Vilankulos)へ送電する電力網に連携されていな い独立の33kVの送電線がある。テマネからシババーバ(Chibabava)を経由しマビジ (Mavisi)に至る110kVの送電ラインの完成が2018年に計画されている。また、地方 電化推進計画の中にテマネでの50MWのガス発電設備の計画がある。 3) 発電所用敷地の条件 既設のテマネ発電設備はサバンナ地域に位置している。新設の発電所建設にも十分 な敷地を得ることが可能な地点である。 4) 水源の条件 既設EDMテマネ発電所は内陸に位置する。既設発電所内には用水用の小規模な井戸 がある。(「添付資料-8:モザンビーク電力公社テマネ変電所調査状況写真」参照。) 36 / 66 4.1.3.7 南部 レッサーノ・ガルシア地域 テマネのガス圧送プラントより南アフリカ共和国に天然ガスを移送しているパイプラインの 通過点で、独立発電事業者(IPP)の開発が進行中のレッサーノ・ガルシア地域の専門家による 実地調査を 2014 年 2 月 18 日に実施した。 1) 燃料ガスの供給可能性 南アフリカ共和国の国境に向かうガスパイプラインがある。 2) 電力需要・送電計画 首都マプートに向かう送電線が通っており、変電所と発電所がある。また首都マプ ート(Maputo)での電力需要は増加中である。 3) 発電所用敷地の条件 新規発電所の建設に十分な敷地を得ることが可能な地点である。 4) 水源の条件 近隣に小川の水源がある。但し、年間を通じて大量の水を安定的に取水するのは困難と 所見した。(「添付資料-9:レッサーノ・ガルシア地域調査状況写真」参照。) 4.1.4 プロジェクトサイトの選定 4.1.4.1 実地調査地点の評価 下記の「表 4.1-1 調査地点の評価」に、地点の位置関係を示す「図 4.1-1 調査地点の位置 関係」と共に実地調査地点の調査の評価の一覧を示す。 表 4.1-1 調査地点の評価 実地調査地点 燃料ガスの 電力需要・ 発電所用敷 水源の 供給可能性 送電計画 地の条件 条件 ペンバ変電所 ▲ ○ ○ × ナカラ変電所 ▲ ○ △ × ナンプーラ中央変電所 ▲ ○ × × ナンプーラ 220/110kV 変電所 ▲ ○ ○ × 中部 ベイラ変電所 ▲ ○ △ ○ 南部 テマネ発電所 ○ △ ○ × レッサーノ・ガルシア地域 △ ○ △ △ 北部 ○:問題なくガス発電所建設に適合 △:現状は問題あるが早い時期(5 年以内)に解決可能と予測 ▲:問題があり、解決に時間(6 年以上)とコストが必要と予測 ×:問題あり、根本的な技術的要素により解決が必要 37 / 66 図 4.1-1 調査地点の位置関係 ナンプーラ地域 ペンバ地域 ナカラ地域 ベイラ地域 テマネ地域 レッサーノ・ガルシア地域 4.1.4.2 モザンビーク電力公社の意向・計画調査 モザンビーク共和国における電源開発計画に沿った実現可能なプロジェクトサイトの選定の ために、当該国において電源開発を管轄するエネルギー省所管の下にあり相手先となる EDM 本 社と 2014 年 2 月 19 日に面談を持ち、その意向を確認した。 「添付資料-10:モザンビークの電力セクターの概要抜粋」に記載あるように EDM は地方電 化推進の計画として、テマネ地域に約 50MW のガス発電を計画しており、Smart-AHAT システ ムによる本調査の内容と実地調査計画を説明したところ、実地調査では問題が予測された電力需 要・送電計画についてもテマネからシババーバを経由しマビジに至る 110kV の送電線の完成が 2018 年に予定されており電力需要が伸びるので、テマネ地域でプロジェクトを実現したいとの 強い意向を得ることができた。 4.1.4.3 プロジェクトサイトの選定と Smart-AHAT 採用理由 北部地域には既設火力発電所がなく、主要都市には中部の水力発電所のみから給電を受けて いる変電所が配置されている。北部は都市部に人口が集中しており、ガス田開発や工業化の流れ を受けて今後モザンビーク共和国の平均以上の電力の伸びが予想され、また水資源に乏しい地域 である。この状況は先進型高効率ガス発電設備である Smart-AHAT システムに適しているが、 前述の実地調査の報告にあるように燃料となる天然ガスの供給パイプラインがない。この北部の 3 地域(ペンバ、ナカラ、ナンプーラ)は将来の設置地域として有望であるが、燃料ガスの供給 38 / 66 に長期の時間とコストがかかることを考慮し、より早い時期での発電を具現化する目的から、こ の事業実施可能性調査のプロジェクトサイトとしては選定しないこととした。 中部地域のベイラ地点も同様に、実地調査結果から燃料ガス供給に時間とコストがかかるこ とを考慮し、この事業実施可能性調査のプロジェクトサイトとしては選定しないこととした。 前述の実地調査地点の評価からプロジェクトサイト候補地として南部に位置するテマネ地域 とレッサーノ・ガルシア地域が燃料ガス供給の可能性があり有望な地域となる。 この中で、レッサーノ・ガルシアではすでに独立発電事業者(IPP)による電源開発が進行中 であり、よりモザンビーク共和国にて公共性の高い電源開発に貢献できる地点として、地方電化 推進計画に基づく EDM の強い意向がある既設テマネ発電所内の地点を本事業実施可能性調査の プロジェクトサイトとして選定した。 テマネ地域でのガスタービン発電プロジェクトの具現化に対する課題は下記 2 点となる 1) 近傍のビランクロスへ送電する独立の 33kV の送電線があるが電力網に連携されておらず、 最大約 70MW の発電となる Smart-AHAT システムの負荷には不十分な容量である。 2) 既設テマネ発電所は内陸に位置し、発電所内には用水用の小規模な井戸があるのみで大量の 水を消費する発電方式には不向きである。 このうち、1)の電力需要・送電計画については、EDM よりテマネからシババーバを経由し マビジに至る 110kV の送電線の完成が 2018 年に予定されていることおよび、電力需要の増大を 確認している。2)については先進型高効率ガス発電設備である Smart-AHAT システムが、そ の大きな技術的特徴の一つである水の消費を極小化できるという点において根本的な技術要素 の解決策として適用が可能となる。 テマネでのガスタービン発電設備として、コンバインドサイクルシステムやシンプルサイク ルの発電方式の適用が考えられるが、ンバインドサイクルシステムは高いプラント効率が期待で きる一方、冷却水として大量の水を消費するシステムでありテマネ地域のように内陸のサバンナ 地域に位置し、用水用の小規模な井戸があるのみの地点には不向きなシステムである。またシン プルサイクル発電は、水は不要であるが、高温の排気エネルギーを大気に放出する方式でガス燃 料が持つエネルギーをすべて有効利用されているとは言い難い。 プロジェクトサイトのテマネ地域の特有の条件下で、上記の水の消費の課題、ガスタービン の排気のエネルギーの有効利用の課題を解決し、また高温の大気温度でもほぼ定格の出力を保持 できるという技術的特性を有するという点が、商用運転実績がないという課題があるものの、先 進型高効率ガス発電設備である Smart-AHAT システムをプロジェクトに採用した理由である。 39 / 66 4.2 プロジェクトの計画概要 4.2.1 プロジェクトサイトの立地条件ならびにその特徴 第 4.1 項でプロジェクトサイトに選定されたテマネ発電所は、首都マプートの北東約 510 km のイニャンバネ(Inhambane)州に位置する。イニャンバネ州は平坦で内陸部は乾燥しており、 北はマニカ州(Manica)、ソファラ州(Sofala)、西はガザ州(Gaza)と接し、東の沿岸はイン ド洋に面する州で全体的な気候は温暖である。 テマネ発電所はイニャンバネ州北部の町であるビランクロス(Vilanculos)の北北西約 40 km の内陸部に位置し、乾燥したサバンナ気候地域で夏季は気温が高いが冬季は平均気温が 20 度以 下まで下がる地点である。 東のインド洋までは約 20 km の距離があり、冷却用の大量の海水の取放水は困難な地点であ る。また、十分な水量を持つ最も近隣の水系は北に位置するサヴェ(Save)川で、そのテマネま での距離は約 75 km あり、これも大量の水を取送水するには困難である。 テマネ発電所の西約 1 km の地点にテマネのガス田があり、そのガス田プラントから首都マ プート近傍を通過して南アフリカのヨハネスブルグへ向かうガスパイプラインが敷設されてい る。テマネ発電所はそのガス田のガス圧送プラントの近傍の立地で井戸元となり燃料ガス供給に 有利な立地条件となる。 既設のテマネ発電所には一台あたりの容量 500kVA、発電端 33kV のガスエンジン発電機が常 用 6 基フル稼働中で主にビランクロスの民生需要を担っている。EDM より入手の「添付資料-1: 電力網計画」によると、このテマネ地点に将来シババーバを経由しマビジに至る 110kV の送電 線が敷設され、110kV/33kV 変電所が設置される予定となっている。 4.2.2 テマネ発電所におけるプロジェクトの計画 本調査において、モザンビーク共和国の現地状況に精通したパートナーである南アフリカ共和国 のフォスターフィーラー南アフリカ(FWSA:Foster Wheeler South Africa (Pty) Ltd)と共同で、 高温で乾燥が特徴となる南部アフリカ地域に適する Smart-AHAT プラントモデルの開発を実施 した。その南部アフリカ地域向け Smart-AHAT プラントモデルをベースに、調査した現地条件 を適用して、1 基をプロジェクトサイトとして選定したテマネ発電所域内に建設するプロジェク トを計画する。 40 / 66 4.3 プロジェクトの計画工程 テマネへの 110kV の送電線の完成が 2018 年に予定されていることから、 2018 年末に Smart-AHAT プラントシステムでの商用発電開始が可能なプロジェクト工程を計画としている(図 4.3-1 「プロジ ェクトの計画工程」参照。) 図 4.3-1 プロジェクトの計画工程 41 / 66 4.4 プロジェクトの環境社会影響の考察 4.4.1 Smart-AHAT システムの環境性能の特徴 ガスタービンから排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)の低減のために、一般的に用 いられる一つの方法は、少量の水あるいは蒸気をガスタービンの燃焼器に導入する方式である。 水あるいは蒸気の燃焼器への導入で、燃料の燃焼により大気中の窒素と酸素が結合して発生す るサーマル NOx を促す高温燃焼スポットの生成の機会を減らして窒素酸化物の排出低減を図 る原理である。 Smart-AHAT システムでは燃焼に高湿分空気、言い換えると蒸気をガスタービンに導入する ので、追加の水あるいは蒸気導入の装置を付加することなく前述の原理で低い NOx の排出を得 ることが可能となる。これは Smart-AHAT の環境に優しい特徴の一つである。 また、プラントシステムとして第 3 章に記述したように空冷ラジエータシステムが適用され るので、大量の冷却水が不要である。これは冷却水の消費や温排水拡散のアセスメントが不要 であることを意味している。 4.4.2 プロジェクトサイトでの環境社会影響への対応計画 テマネ発電所内で先進型高効率ガス発電プラントのプロジェクトを実施する場合、他のプロ ジェクトと同様に基本的に世界銀行のガイドラインをプロジェクトのすべての範囲に適用する こととする。 下記の 3 点が Smart-AHAT プラントのプロジェクトで環境社会影響上、主要に留意すべき点 であり、これらの条件を満たすプラントの設計とする。 1)NOx 排出 世界銀行ガイドラインの天然ガス焚きガスタービンの NOx排出基準 51 mg/Nm3 (25 ppm) at 15% O2 を適用。 2)プラント排水 世界銀行ガイドラインの排水基準に適合する排水処理設備を設置する。 3)騒音 プラント内の個々の機器の騒音は運転時平均で 90 dB(A)以内とするよう定め、騒音に配慮 する。プラントサイト境界線上の騒音分析が要求される場合には騒音対策を実施する。 また、第 4.1 項のテマネ発電所調査結果に記述のようにテマネ発電所はサバンナ地域の中 にあり、現地実地調査では、上記の他には取り立てるべき環境配慮や住民への影響項目は所 見されなかった。 42 / 66 4.5 プロジェクトサイトの状況 「図 4.4-1 プロジェクトサイト候補エリアの状況」にプロジェクトサイト候補エリア(テマネ発電 所)の状況を示す。テマネ発電所の敷地は、東西方向約 500m、南北方向約 130m の長方形の土地で ある。テマネ発電所の西側約 100m×約 130m のエリアには運転員事務所及び既設ガスエンジン発 電設備建屋がある。また、既設ガスエンジン発電設備建屋北側には、ガスエンジン発電設備増設エ リアとして敷地が確保されている。 Smart-AHAT 発電設備設置エリアとしてはテマネ発電所東側約 400m×約 130m のエリアが候補 である。候補エリアは土地の整地はされておらず草木が茂っており、用水用の小井戸が 1 箇所設置 されているだけで、そのほか設備は設置されていない。 テマネ発電所は赤土であり泥濘が散見されるが、既設発電設備建屋が杭打ちをせずに建設してい るとの情報から、地盤としては良好であると思われる。また、土地の高低差は大きくなく平坦な敷 地である。 候補エリアの面積及び地盤状況、燃料となる天然ガス供給の安定度などを考慮すると Smart-AHAT 発電設備設置に十分な条件が整っている。また、候補エリアの広い敷地を利用すると 将来、追設で Smart-AHAT 発電設備を 1 基増設することも可能なサイトの状況である。 図 4.4-1 プロジェクトサイト候補エリアの状況 43 / 66 4.6 相手国の当該プロジェクトの位置づけ・必要性 相手国であるモザンビーク共和国は、天然ガスや石炭を含めた天然資源が豊富であり、今後の関 連産業の発展および人口の増加に伴う電力需要の伸びの予測が年間 10%程度と高く、早急な発電設 備の整備が必要となっている。 天然資源の輸出による外貨獲得を図るため、国内で消費される天然ガス量を抑え、より多くの天 然資源を輸出に振り向けられる高効率ガス発電設備が有望視されており、特に、内陸部あるいは大 量の冷却水が確保しにくい場所を考慮したプロジェクト計画が望まれている。 また、現在のモザンビーク共和国内の送電網の未整備や電力需要の規模から中・小型発電設備を 各需要地の近くに設置していく分散型が適しており、本調査の 70MW 級ガス発電設備の導入は現状 に則した計画と考えられる。 2014 年 3 月に来日したイメデ・エネルギー省副大臣が日本で運転されているガス焚火力発電所サ イトを視察されており、日本製品の信頼性、先進性を理解いただいており、将来的なガス焚火力発 電設備の導入にも前向きな面が見られている。 また、EDM からは 2013 年 12 月に当該発電設備の F/S 実施の要請およびサポートが書面にて表 明されている。 4.7 モザンビーク共和国経済および地域貢献波及効果の考察 現在の EDM 所有発電設備容量 240MW の 3 割超の 70MW 高効率ガス発電設備が導入されるこ とになり、国内電力需要の増加への大きな対策になる。 本調査ではテマネ地域を対象サイトとしており、この近郊への 2018 年までの送電網の整備に伴 い、この周辺地域を含めた電化および電力の安定供給につながる。また大量の冷却水を必要とせず 燃料を節約した発電ができる先駆的発電所として今後の他地域あるいは隣国など、南部アフリカ地 域への電源開発計画へのサンプルともなり得る。 4.8 社会・政治情勢によるプロジェクトリスクの考察 1992 年に内戦が終結して以降、政治面ではこれまで 4 回の総選挙が実施され民主化が推し進め られており、2005 年就任のゲブーサ現大統領の求心力の下、安定に向かっている。 経済面でも従来からの肥沃な土地に恵まれた農業国である面に加えて、今後の天然資源産業の活 性化が大きく期待されている。 こういった安定・発展方向への見通しの中、その重要インフラである発電設備の導入計画は必要 性があり、継続的需要に従い進められていくと考えられる。 44 / 66 第5章 プロジェクトの技術的実現可能性 5.1 南部アフリカ地域向け Smart-AHAT ガス発電プラントの基本計画 本調査においてモザンビーク共和国の現地状況に精通したパートナーである南アフリカ共和国 のフォスターフィーラー南アフリカ(FWSA:Foster Wheeler South Africa (Pty) Ltd)と共同で、 高気温の季節があり乾燥が特徴となる南部アフリカ地域に適する Smart-AHAT プラントモデルの 開発を実施した。南部アフリカ地域に適する Smart-AHAT プラントモデルの開発に際して大気温が 35 ℃の高温時になっても定格の発電端出力が保たれるガスタービンの検討も同時に実施した。 南部アフリカ地域向け Smart-AHAT プラントモデルの基本技術条件は下記である。 (1) 大気条件 大気温度(乾球) 相対湿度 : : 大気圧力 : 設計 25 ℃ 最低 18 ℃ 最高 35 ℃ 設計 60 % 最低 30 % 最高 100 % 設計 1,013 mbar (2) 燃料ガス条件 燃料種類 : 天然ガス(乾燥ガス、硫黄分無し) 供給圧力 : 3.0 MPa(G) 供給温度 : 露点温度+28 ℃以上過熱の条件 (3) プラント用水条件 井戸水、河川水または水道水 (4) 設計運転時間 20 年(消耗品、定期交換部品等は除く) (5) 適用規格及び基準 国際的に認められた規格及び基準を採用。 45 / 66 5.2 南部アフリカ地域向け Smart-AHAT ガス発電プラントの設備仕様 前項にて設定した南部アフリカ地域向け Smart-AHAT プラントモデルの基本技術条件に適合する Smart-AHAT システム設備の最適仕様を検討・設定した。以下に主要設備の仕様概要を記載する。 Smart-AHAT システムは、ガスタービン、排熱回収ボイラ(HRSG)および水回収装置(WRS) から構成されているが、それぞれの設備について典型的な複合ガス(コンバインドサイクル)シス テム発電設備に比べ簡素化を図っている。 (1) ガスタービン Smart-AHAT システムに使用されるガスタービンは、三菱日立パワーシステムズ株式会社の H-50 ヘビーデューティ型ガスタービンである。このガスタービンは実績のある三菱日立パワー システムズ株式会社の、同じヘビーデューティ型ガスタービン H-80 の相似縮小モデルであり、 Smart-AHAT システムに適したガスタービンで、HRSG で発生させた蒸気を全量導入できるガ スタービンである。 (2) 排熱回収ボイラ(HRSG) 典型的なコンバインドサイクルシステム発電設備の排熱回収ボイラ(HRSG)では、高い発 電効率を得るため、複数の圧力の蒸気発生器(節炭器、蒸発器、ドラム及び過熱器など)を持っ ている。大型ガスタービンを使用した HRSG では、再熱三重圧型(3つの異なる圧力の蒸気発 生器および再熱器を持つ)が主流となっているが、 Smart-AHAT システムでは、非再熱単圧型(1つの圧力の蒸気発生器)を採用している。供 給圧力についても低く抑えることが可能で、これらにより HRSG の簡素化・重量低減を図って いる。 (3) 水回収装置(WRS) Smart-AHAT システムの排気ガスには多量の水分が含まれており、この水分を回収する目的 で WRS を設置している。WRS では、ガスタービンに注入された蒸気の回収に加えて、燃料ガ スの燃焼生成水も回収することができる。高い大気温の条件下では造水となるような水回収を得 ることは困難であるが、一定の低い大気温条件下では造水プラントとなる機能も有している。 WRS では高湿分の排気ガスに冷却するための水を直接噴霧接触し排気ガス温度を下げるこ とで、排気ガス中の水分を凝縮させ水の回収をしている。効率的に水分を回収するために、WRS の塔内には低圧損型の充填物を設置し、回収効率を高めている。 WRS に導入する冷却水は循環型としており、排気ガスとの接触により上昇した冷却水の温度 を下げるための空冷式のラジエータを設置し冷却をしている。 46 / 66 5.3 テマネ発電所におけるプロジェクトの計画条件 先進型高効率ガス発電設備である Smart-AHAT は、1)低い大気温度条件で燃焼ガス中の水分を 回収し造水をする、2)大気温度が高い条件においても発電端出力の低下が少なく年間を通じてほぼ 定格の出力条件で運転が可能、の 2 点の南部アフリカ地域に適した特徴を持つ。 これらを踏まえ、前述第 5.1 項、5.2 項にて設定した南部アフリカ地域向けプラントモデルを適用 し、プロジェクトサイトであるテマネ地点のサイト条件に沿った、より具体的な運転での評価を検 討するため、現地調査結果から以下の条件をその検討のベースラインとして設定した (1) 大気条件 大気条件は、以下の 4 条件を検討のベースとした。 No. 条件 気温 相対湿度 気圧 (℃) (%) (mbar) 1 冬季、昼間の平均条件 26.2 48 1,013 2 冬季、夜間の平均条件 15.9 48 1,013 3 夏季、昼間の平均条件 29.8 74 1,013 4 夏季、夜間の平均条件 22.0 74 1,013 <定義> 冬季 :10 月~ 4 月(7 ヵ月) 夏季 : 5 月~ 9 月(5 ヵ月) 昼間 :午前 7:00~午後 7:00(12 時間) 夜間 :午後 7:00~午前 7:00(12 時間) (2) 燃料ガス条件 テマネ地域のガス田にはパンデとテマネの貯留域があり、合理的でより具体的なガスの成分 としてパンデガス 35%とテマネガス 65%の混合ガスの性状を検討のベースとすることとした。 表 5.3-1 にその適用した成分表を示す。その低位発熱量(Low Heat Value)は 47.95 MJ/kg (11,453 kcal/kg)となる。 燃料種類 : 天然ガス(乾ガス、硫黄分無し) 燃料ガス成分 : 成分は、表 5.3-1 を参照。 低位発熱量 : 47.95MJ/kg (3) プラント用水条件 テマネ既設発電所内には用水用の小規模な井戸がある。現地調査の結果では高濃度塩分の水で はないとの所見があり、これを水源として Smart-AHAT の運転条件において少量の補給水が必 要となる期間の原水の条件(一般的な井戸水)とした。 47 / 66 表 5.3-1 燃料ガス成分 No. mol% 成 分 N2 2.060 メタン CH4 92.882 3 エタン C2H6 2.506 4 プロパン C3H8 1.255 5 イソブタン i-C4H10 0.348 6 ノルマルブタン n-C4H10 0.416 7 イソペンタン i-C5H12 0.141 8 ノルマルペンタン n-C5H12 0.120 9 ヘキサン C6H14 0.063 10 ヘプタン C7H16 0.045 11 オクタン C8H18 0.131 12 ノナン C9H20 0.019 13 二酸化炭素 CO2 0.001 14 酸 素 O2 0.015 1 不活性ガス(窒素で代表) 2 100 合 計 48 / 66 備 考 5.4 テマネ発電所における Smart-AHAT ガス発電プラントの予想性能 前述の第 5.2 項にて設定した南部アフリカ地域向けプラントモデルを用い、第 5.3 項に記載のテ マネにおけるプロジェクト計画条件を適用して、Smart-AHAT ガス発電プラントの予想性能を検討 した。 検討結果を、ヒートバランス図として図 5.4-1~図 5.4-4 に示す。また、それぞれの水バランス を表 5.4-1~表 5.4-4 に示す。なお、ヒートバランス図では排熱回収ボイラのブローも含めシステム 全体の水の消費と回収のバランスも示している。 図 5.4-1 ヒートバランス図(冬季、昼間) 531.6 t/h (E) 42 degC The water content of the symbol (A)-(G) shown in table of water balance. WRS (C) 83.4 t/h, 2.4 MPa, 458 degC Fuel 150 degC 617.6 t/h 503 degC 11.55 t/h 47.95 MJ/kg 2314.0 t/h, 40 degC (B) (D) HRSG Comp. 26.2 degC 48.0% RH Air (A) HP LP GEN. 2400.0 t/h, 70 degC Radiator 86.0 t/h (F) Gas Turbine Power Output 69.4 MW Efficiency 45.1 % (LHV) 83.4 t/h Tank 2.6 t/h 0.0 t/h (G) Makeup Water Recovered Water (G) Remarks : The performance data of Smart-AHAT is preliminary for feasibility study, and is not subject to the guarantee. Expected Power Output at Generator Terminal Expected Plant Auxiliary Consumption Gas Fuel Consumption Water Consumed(-)/Recovered(+) 表 5.4-1 水バランス表(冬季、昼間) 項 目 数値(t/h) 備 考 (A) 大気中の水分量 5.3 (B) 燃焼生成水分量 24.2 (C) ガスタービンへの蒸気噴射量 83.4 (D) 水回収装置入口 112.9 (E) 水回収装置出口 26.9 (F) 水回収装置回収水量 86.0 (F)=(D)-(E) (G) 水消費量(-)/水回収量(+) 2.6 (G)=(F)-(C) 49 / 66 (D)=(A)+(B)+(C) : 69,400 kW : 3% : 11.55 T/h : + 2.6 T/h 図 5.4-2 ヒートバランス図(冬季、夜間) The water content of the symbol (A)-(G) shown in table of water balance. WRS (C) 81.3 t/h, 2.4 MPa, 449 degC Fuel 2306.7 t/h, 30 degC 149 degC 633.7 t/h 490 degC 11.67 t/h 47.95 MJ/kg 540.4 t/h (E) 32 degC (B) (D) HRSG Comp. 15.9 degC 48.0% RH Air (A) HP LP GEN. Radiator 2400.0 t/h, 62 degC 93.3 t/h (F) Gas Turbine Power Output 70.0 MW Efficiency 45.0 % (LHV) 81.3 t/h Tank 12.0 t/h 0.0 t/h (G) Makeup Water Recovered Water (G) Remarks : The performance data of Smart-AHAT is preliminary for feasibility study, and is not subject to the guarantee. Expected Power Output at Generator Terminal Expected Plant Auxiliary Consumption Gas Fuel Consumption Water Consumed(-)/Recovered(+) 表 5.4-2 水バランス表(冬季、夜間) 項 目 数値(t/h) 備 考 (A) 大気中の水分量 2.6 (B) 燃焼生成水分量 24.5 (C) ガスタービンへの蒸気噴射量 81.3 (D) 水回収装置入口 108.7 (E) 水回収装置出口 15.4 (F) 水回収装置回収水量 93.3 (F)=(D)-(E) (G) 水消費量(-)/水回収量(+) 12.0 (G)=(F)-(C) 50 / 66 (D)=(A)+(B)+(C) : 70,000 kW : 3% : 11.67 T/h : + 12.0 T/h 図 5.4-3 ヒートバランス図(夏季、昼間) The water content of the symbol (A)-(G) shown in table of water balance. WRS (C) 84.3 t/h, 2.4 MPa, 462 degC Fuel 2319.0 t/h, 44 degC 150 degC 612.2 t/h 507 degC 11.52 t/h 47.95 MJ/kg 531.2 t/h (E) 47 degC (B) (D) HRSG Comp. 29.8 degC 74.0% RH Air (A) HP LP GEN. Radiator 2400.0 t/h, 72 degC 81.0 t/h (F) Gas Turbine Power Output 69.1 MW Efficiency 45.1 % (LHV) 84.3 t/h Tank 0.0 t/h 3.3 t/h (G) Makeup Water Recovered Water (G) Remarks : The performance data of Smart-AHAT is preliminary for feasibility study, and is not subject to the guarantee. Expected Power Output at Generator Terminal Expected Plant Auxiliary Consumption Gas Fuel Consumption Water Consumed(-)/Recovered(+) 表 5.4-3 水バランス表(夏季、昼間) 項 目 数値(t/h) 備 考 (A) 大気中の水分量 10.0 (B) 燃焼生成水分量 24.1 (C) ガスタービンへの蒸気噴射量 84.3 (D) 水回収装置入口 118.4 (E) 水回収装置出口 37.4 (F) 水回収装置回収水量 81.0 (F)=(D)-(E) (G) 水消費量(-)/水回収量(+) -3.3 (G)=(F)-(C) 51 / 66 (D)=(A)+(B)+(C) : 69,100 kW : 3% : 11.52 T/h : - 3.3 T/h 図 5.4-4 ヒートバランス図(夏季、夜間) The water content of the symbol (A)-(G) shown in table of water balance. WRS (C) 82.4 t/h, 2.4 MPa, 454 degC Fuel 2309.8 t/h, 36 degC 150 degC 624.0 t/h 497 degC 11.60 t/h 47.95 MJ/kg 533.8 t/h (E) 38 degC (B) (D) HRSG Comp. 22.0 degC 74.0% RH Air (A) HP LP GEN. Radiator 2400.0 t/h, 67 degC 90.2 t/h (F) Gas Turbine Power Output 69.6 MW Efficiency 45.1 % (LHV) 82.4 t/h Tank 7.8 t/h 0.0 t/h (G) Makeup Water Recovered Water (G) Remarks : The performance data of Smart-AHAT is preliminary for feasibility study, and is not subject to the guarantee. Expected Power Output at Generator Terminal Expected Plant Auxiliary Consumption Gas Fuel Consumption Water Consumed(-)/Recovered(+) 表 5.4-4 水バランス表(夏季、夜間) 項 目 数値(t/h) 備 考 (A) 大気中の水分量 6.4 (B) 燃焼生成水分量 24.3 (C) ガスタービンへの蒸気噴射量 82.4 (D) 水回収装置入口 113.1 (E) 水回収装置出口 22.9 (F) 水回収装置回収水量 90.2 (F)=(D)-(E) (G) 水消費量(-)/水回収量(+) 7.8 (G)=(F)-(C) 52 / 66 (D)=(A)+(B)+(C) : 69,600 kW : 3% : 11.60 T/h : + 7.8 T/h ヒートバランス図および水バランス表に示すように、Smart-AHAT システムでは、冬季の昼夜間 及び夏季の夜間において水を造水し、夏季の昼間に水を消費する。シンプルサイクルやコンバイン ドサイクルシステム発電システムでは水を生成することができないため、この点は Smart-AHAT システムのモザンビーク共和国での適用に対する大きな利点となる。また、ヒートバランス図で示 されるように Smart-AHAT システムでは夏季の昼間の気温の高い条件下も含め、年間を通して約 70MW 一定の発電ができるシステムとなっている。 表 5.4-5 水回収/消費の予想収支は、年間の水回収/消費の予想収支を示しており、年間約 34,000 トンの水の造水が期待できるとの結果が得られている。 表 5.4-5 水回収/消費の予想収支 条 件 運転時間 水消費量(-)/水回収量(+) (時間) (トン) 冬季、昼間の平均条件 1,642.5 +4,271 冬季、夜間の平均条件 1,642.5 +19,710 夏季、昼間の平均条件 2,299.5 -7,588 夏季、夜間の平均条件 2,299.5 +17,936 7,884.0 +34,328 年間合計 プラント利用率:90%(7,884 時間) 「表 5.4-6 年間正味発電量」は想定値を示しており、90%利用率において年間約 530 万 kWh の 発電量が期待できるとの結果が得られている。 表 5.4-6 年間正味発電量 条 件 運転時間 正味発電量 (時間) (GWh) 冬季、昼間の平均条件 1,642.5 110.57 冬季、夜間の平均条件 1,642.5 111.53 夏季、昼間の平均条件 2,299.5 154.13 夏季、夜間の平均条件 2,299.5 155.24 7,884.0 531.47 年間合計 プラント利用率:90%(7,884 時間) 53 / 66 「表 5.4-7 燃料ガス消費量」年間に必要な燃料ガス量の合計を示し、テマネ発電所では年間約 4.2 ×106 mmBTU が必要であるとの結果が得られている。1 GJ は 1055 mmBTU として換算してい る。 表 5.4-7 燃料ガス消費量 条 件 運転時間 燃料ガス消費量 (時間) (×106mmBTU) 冬季、昼間の平均条件 1,642.5 0.863 冬季、夜間の平均条件 1,642.5 0.872 夏季、昼間の平均条件 2,299.5 1.205 夏季、夜間の平均条件 2,299.5 1.213 7,884.0 4.153 年間合計 プラント利用率:90%(7,884 時間) 54 / 66 5.5 テマネ発電所における Smart-AHAT ガス発電プラントの設備配置計画と完成イメージ 5.5.1 Smart-AHATガス発電プラントの設備配置計画方針 発電プラント設備の配置計画においては、メンテナンスや運用など様々な要素を考慮して計画し なければならない。Smart-AHATガス発電プラントの設備配置計画に適用した方針を以下に示す。 1) メンテナンス性 一般にガス発電プラント設備においては、定期的なメンテナンスを必要とする。設備のメン テナンスには大型の設備を吊り上げるため、重機などのメンテナンス用設備が必要となる。特 にガスタービンや発電機などの大型・重量機器については、大型のメンテナンス用重機が必要 となるため、重機設置スペースを考慮した配置計画とした。 2) 建設性 Smart-AHATガス発電プラント設備建設時において、建設用機材の導線を考慮してプラント 道路構成を計画した。 3) 運用性 Smart-AHATガス発電プラント運転時において運転員の作業がしやすいよう、また非常時の 退避経路を考慮し発電プラント設備内の通路を計画した。 4) 周辺接続への適応 Smart-AHATガス発電プラント設備は燃料ガスや送電等の外部との接続を考慮し、合理的な 接続計画となるように配置計画をした。 5.5.2 Smart-AHATガス発電プラントの設備配置構成 本プロジェクトの、Smart-AHATガス発電プラント設備に必要な敷地は約120m×約120mであり、 変圧器エリアを含めると約150m×約120mの敷地が必要となる。 燃料ガスなど外部との取合いがあるものは既設発電設備側としている。ガスタービンの吸気は、 三菱日立パワーシステムズHシリーズガスタービンの標準である上方吸気方式としている。H-50ガ スタービンは、軸の一方に起動装置が接続され他方に発電機が接続されるため、ガスタービンの排 気は側方となる。そのため、HRSGはガスタービン軸に対し垂直に配置される。HRSGの後流にWRS が設置される。WRSへ送水される水の冷却は、空冷ラジエータで行われるため、水回収装置近傍に 空冷ラジエータを配置した。(「図5.5-1 Smart-AHATガス発電プラント設備配置構成」参照。) 55 / 66 図5.5-1 Smart-AHATガス発電プラント設備配置構成 56 / 66 5.5.3 テマネ発電所における Smart-AHATガス発電プラントの完成イメージ 前項に記述のSmart-AHATガス発電プラント設備のシステム構成を基にプロジェクトサイト候補 地において最適となるように配置構成を計画し、より具体的な検討のため本調査にて完成イメージ 図を作成した(「図5.5-2 Smart-AHATガス発電プラント設備3Dイメージ図」参照。) Smart-AHAT ガス発電プラント設備の主要設備は、以下に示す通りである 1) 三菱日立パワーシステムズ H-50ヘビーデューティー型ガスタービン 2) 発電機 3) 主変圧器 4) 排熱回収ボイラ(HRSG) 5) 水回収装置(WRS) 6) 空冷ラジエータ 図5.5-2 Smart-AHATガス発電プラント設備3Dイメージ図 57 / 66 第6章 プロジェクトのファイナンス調査・検討 6.1 相手国政府・実施機関の資金調達に関する考え方 本調査を通じて、モザンビーク共和国にてエネルギー省、石油公社、商工会議所、モザンビーク 国内の複数の発電所・変電所を訪問したが、いずれの機関からも電力不足の現状を改善する高効率 火力発電所の建設計画の早期実現に期待しており、特に日本の技術導入を大いに期待しているとの 意見を得ることができた。また、モザンビーク共和国在および日本の両方にて日本政府機関等を訪 問したところ、2014 年 1 月の安倍総理大臣のモザンビーク共和国訪問、公簡公文等署名式を受けて、 各機関ともモザンビーク共和国への融資に対して大変前向きであった。一方、国として円借款や民 間事業の受入れの経験が少ないところが懸念材料との意見も示している。 モザンビーク電力公社(EDM)では自己資金での発電所建設が財政的に容易ではない状況下、エ ネルギー省を含めて、特に有利な融資条件での資金手配を強く望んでいるが、日本からの政府系融 資(特に後述の円借款や国際協力銀行(JBIC)のバイヤーズ・クレジット(B/C)の適用にあたっては、 モザンビーク政府からの保証状発行や前金分(一般的に 15%)の自己資金での確保、財務諸表開示 などが必要となる面があり考慮が必要となる状況である。 また、天然ガスなどの資源の開発に伴い電源開発が急務となっているが、EDM は有利な融資条件 の場合には、そのプロセスが複雑で時間を要することも承知しており、その点においても短期間で プロジェクトの資金を調達し、電源開発に活かしていきたいとの意向もあった。 7.1 本邦以外の公的または民間の資金の活用の可能性 1) 国際復興開発銀行(世銀、IBRD: International Bank of Reconstruction and Devekipment)) 世銀の電力セクターへの融資の考え方として、再生エネルギー分野(水力、風力、太陽光・熱、 地熱、省エネルギー)に重点が置かれており、火力発電案件への融資実績は近年著しく減少して いる。現在の世銀方針を考慮した場合、本案件での期待は薄い。 2) アフリカ開発銀行(African Development Bank : AfDB) 一般的に発電所案件への融資は金利 2.5%/年前後、返済期間 35~40 年。これまで主に北ア フリカへの融資に注力しているため、これも本案件での期待は薄い。 3) 市中銀行 三菱東京 UFJ 銀行へのヒアリングでは、モザンビーク共和国は国としての与信度につき、単 独で融資を行うステータスになっていないため、JBIC などとの協調融資を除いて、市中銀行と して融資を行える状況にはない。他市中銀行も同様の考え方と推測される。 58 / 66 7.3 日本政府の資金活用の可能性 日本の融資機関として、 JBIC や国際協力機構(Japan International Cooperation Agency: JICA) が考えられ、以下の資金調達手法・融資機関について検討を実施した。 1) 輸出金融/バイヤーズ・クレジット(JBIC) 2) 輸出金融/バンク・ローン(JBIC) 3) 円借款(JICA) 4) 円借款・本邦技術活用条件(JICA - STEP) 以下にそれぞれの概要と調査結果および課題を示す。 1) 輸出金融/バイヤーズ・クレジット(B/C) 1-1) 輸出金融の特徴 日本企業の日本国内で生産/製造された機材/設備等を輸出や、本邦技術(調査、設計、 コンサルティング、土木建設工事等)の提供を対象とした融資である。先進国向け輸出の場 合は、融資対象はインフラ輸出案件とその他の船舶案件等の特定分野に限られる。 Smart-AHAT 案件は電力インフラ案件であり、モザンビーク共和国は開発途上国であるの で輸出金融の対象となる。 本対象案件は、本邦製品が総事業費の 30%以上を占める場合に限られる。JBIC の融資割 合はプロジェクト総額の 60%、市中銀行と協調して総事業費の 85%まで融資する。残り 15% は輸入者がアレンジする必要がある。高効率ガス火力発電所の場合、償却期間は 10 年、一 定の条件を満たせば 12 年である。 図 7.3-1 輸出金融の流れ 出典:JBIC 1-2) バイヤーズ・クレジット バイヤーズ・クレジット(Buyer’s Credit : B/C)では、日本の融資機関が外国の輸入者 に対して、日本からの設備等の輸入、技術の受入れに必要な資金を直接融資する。 59 / 66 「表 7.3-2 リスクプレミアム料率算定条件)に示すように、B/C を適用する場合、モザンビ ーク共和国のリスクプレミアム料率算定条件にて算出すると、JBIC 融資分に対する金利は 約 4.56%のレベルが想定される。 表 7.3-2 リスクプレミアム料率算定条件 プレミアム徴求方式 マージン方式 合成金利の有無 あり 元本償還の形態 均等賦 元本 100 million US Dollar 国分類 分類 6 バイヤー分類 SOV 貸出期間 2 年 6 ヵ月 償還期間 10 年 起算日から第一回償還日までの期間 6 ヵ月 起算日 2018 年 12 月 31 日 1 年あたりの償還回数(回/年) 2回 適用 CIRR(%) 3.17% リスクプレミアム料率 1.39% アップフロントプレミアム料率(参考) 7.54% 融資金利(JBIC 融資分) 4.56% 出所:JBIC の試算シートを参考に調査団にて作成(平成 26 年 9 月 5 日) B/C の要件は前金となる 15%をアレンジできること、および政府保証状が発行されるこ とである。 2) 輸出金融/バンク・ローン(B/L) バンク・ローン(Bank Loan : B/L)では、日本の融資機関が海外の金融機関に貸し付け、そ の資金を原資に、二段階の形で海外の輸入者に対し国内転貸の形で資金が貸付けられる。(2ス テップ・ローン) JBIC が提供するモザンビーク共和国含むアフリカ地域を対象とした輸出用バンク・ローン (B/L)には下記の 3 つがある。 - 南部アフリカ開発銀行(Development Bank for South Africa: DBSA)向け輸出クレジッ ト・ライン - アフリカ輸出入銀行(Afreximbank)向け輸出グローバルバンク・ローン - BMCE Bank(Banque Marocaine du Commerce Extérieur : BMCE Bank) 上記の中、南部アフリカ開発銀行(DBSA)向けクレジット・ラインは、調査のなかで DBSA の担当者と面談した情報では、過去にモザンビーク共和国における融資の実績を持っており、 EDM との取引実績もあるとのことで、非公開の EDM の財務諸表も内々に把握している。その ため、政府保証状を入手する以外にも DBSA 独自の方法にて EDM の信用調査を行い融資が可 60 / 66 能と判断できれば、クレジット・ラインを利用して、EDM に融資することに検討要素の一つと なるとのことであった。バンク・ローン(B/L)では、海外の輸入者に対するリスク判断を海外 の金融機関に任せるため、JBIC では融資できない海外の輸入者であっても日本企業の海外進出 のサポートになる。 この検討にあたっては、当該融資総額が 1 億米ドルであることと、融資期限が 2015 年 2 月で 一旦満了(受付延長される見通しあるが、調査時点では詳細不詳)すること、金利が南部アフリ カ開発銀行により設定されること、などの課題を克服する必要がある。 3) 円借款(JICA) 国際協力機構(JICA)が開発途上国向けに低利で長期の緩やかな条件で貸し付けることによ り、開発途上国の発展への取組みを支援する円建て融資に円借款がある。途上国での大型インフ ラ開発案件の融資制度として用いられている。 大きく以下の 6 つのステップ、プロジェクト準備、当該国政府からの要請、JICA による検討・ 品・事業事前評価、公簡公文と借款契約の調印、プロジェクトの実施、完成・事後評価・フォロ ーアップの流れで実施される。このため一般的に現地側からの要請がなされてから円借款契約の 調印までに通常 3 年程度以上かかる。 表 7.3-3 プロジェクトサイクル 出典:JICA モザンビーク共和国においては 2014 年 1 月に EDM を事業実施機関としたマプート・ガス複 合式火力発電所整備事業を対象として円借款契約の調印が行われた。この際の融資条件は下記で ある。 金利 : 0.01%/年 償還期間 : 40 年 据置期間 : 10 年 調達条件 : 一般アンタイド 円借款は低金利で借入者にとって有利な融資条件である一方で、この実現までに時間が掛か る他、モザンビーク政府保証状が必要であること、前金(一般的に 15%)が自己資金で確保必要 なこと、この採択に運転実績が重要視されること、マプート向け円借款案件が先行していること 61 / 66 などを考慮すると、本先進型高効率ガス発電事業への適用は、克服すべき課題が多くまた高いと 考えられる。 以下に参考として、モザンビーク共和国向けの日本政府開発援助(ODA)の実績を示す。 (参考)モザンビーク共和国向け日本政府開発援助(ODA)実績 4) 円借款 無償支援 技術協力 2008 - 17.58MUS$ 6.15MUS$ 2009 - 50.19MUS$ 10.49MUS$ 2010 0.38MUS$ 48.95MUS$ 13.52MUS$ 2011 17.21MUS$ 14.29MUS$ 17.08MUS$ 2012 14.55MUS$ 24.18MUS$ 31.57MUS$ 円借款・本邦技術活用条件(JICA - STEP) 円借款の一部となるが、開発途上国の経済成長において大きな役割を果たす本邦技術やノウ ハウを活用し、開発途上国への技術移転を通じて日本の「顔が見える援助」を促進するために、 本邦技術活用条件(Special Terms for Economic Partnership: STEP)が 2003 年度から導入さ れた。特徴のひとつが、タイド円借款制度であり、円借款全体に占める割合は平均 10%程度にと どまる。本調査にて提案している Smart-AHAT システムは本邦固有の技術であるため、商用運 転実績がないという課題は残るが、円借款の STEP を適用できる可能性は十分にある。しかしな がら、円借款・STEP の対象国は円借款の対象国であり、経済協力開発機構(OECD)のルール 上、タイド借款が供与可能な国のみとなっている。「表 7.3-4 主要国所得階層別分類(国連及 び世銀の分類による。)」にて示すように、国連及び世銀の分類によると、モザンビーク共和国 は、国カテゴリーが後発開発途上国(Low Development Country : LDC)であり、円借款・STEP の適用外となる。 円借款・STEP では適用範囲拡大や条件緩和を実施して、適用外の国に対しても円借款・STEP を適用するケースはあるが、時間がかかるため早期(2018 年)の発電開始のスケジュールを目 指す本案件への適用は難しいと判断される。 62 / 66 表 7.3-4 主要国所得階層別分類(国連及び世銀の分類による。) 所得段階 一人当たり GNI (平成 24 年) LDC うち貧困国 アフガニスタン、ウガンダ、エチオピア、エリトリア、ガンビア、 カンボジア、ギニア、ギニアビサウ、コモロ、コンゴ民主共和国、 シエラレオネ、ソマリア、タンザニア、チャド、中央アフリカ、 トーゴ、ニジェール、ネパール、ハイチ、バングラデシュ、ブル キナファソ、ブルンジ、ベナン、マダガスカル、マラウイ、マリ、 南スーダン、ミャンマー、モザンビーク、リベリア、ルワンダ アンゴラ、イエメン、キリバス、サモア、サントメ・プリンシペ、 ザンビア、ジブチ、スーダン、赤道ギニア、ソロモン諸島、セネ ガル、ツバル、バヌアツ、東ティモール、ブータン、モーリタニ ア、ラオス、レソト 貧 困 国 低所得国 US$ 1,035 以下 キルギス、ケニア、ジンバブエ、タジキスタン US$ 1,036 以上 インド、ウズベキスタン、ガーナ、カメルーン、コートジボワー US$ 1,965 以下 ル、ナイジェ リア、ニカラグア、パキスタン、パプアニューギニ ア、ベトナム 中所得国 US$ 1,966 以上 アルバニア、アルメニア、イラク、インドネシア、ウクライナ、 US$ 4,085 以下 エジプト、エルサルバドル、ガイアナ、カーボヴェルデ、グアテ マラ、グルジア、コソボ、コンゴ共和国、シリア、スリランカ、 スワジランド、パラグアイ、フィリピン、ベリーズ、ボリビア、 ホンジュラス、ミクロネシア、モルドバ、モロッコ、モンゴル 中進国 US$ 4,086 以上 アゼルバイジャン、アルジェリア、イラン、エクアドル、グレナ US$ 7,115 以下 ダ、コロンビア、ジャマイカ、セルビア、セントビンセント・グ レナディーン、セントルシア、タイ、中国、チュニジア、ドミニ カ共和国、ドミニカ国、トルクメニスタン、トンガ、ナミビア、 ブルガリア、フィジー、ベラルーシ、ペルー、ボスニア・ヘルツ ェゴビナ、マケドニア、マーシャル諸島、モルディブ、モンテネ グロ、ヨルダン、リビア 中進国を超 US$ 7,116 以上 アルゼンチン、カザフスタン、ガボン、コスタリカ、スリナム、 える 所得 US$12,615 以下 セーシェル、 トルコ、パナマ、パラオ、ブラジル、ベネズエラ、 水準の 開 ボツワナ、マレーシア、南 アフリカ、メキシコ、モーリシャス、 発途上国 ルーマニア、レバノン (注)アフガニスタン、ソマリア、ミャンマー、ルワンダ、イエメン、ジブチ、イラク、シリア、ベリーズ、 アルジェリア、イラン、リビア、アルゼンチンにつ いては、世銀ガイドラインにおいて平成 24 年度の一人 当たり国民総所得が記載されていないところ、平成 23 年度と同じ所得階層に位置づけている。 出典:国際協力機構(JICA) 63 / 66 6.4 モザンビーク電力公社の反応とプロジェクトの資金調達の方針 当該調査は、EDM の役員会(Board of Directors)から、ファイナンス調査を含めた Smart-AHAT プロジェクトの事業化調査要請があったものであり、EDM の発電担当 Director に確認したところ、 本計画調査の終了後、速やかに公社内役員会への報告と、プロジェクト推進の承認を得たい考えと のことである。 EDM の発電担当 Director からは、可能な限り条件の良いファイナンスの要求があるが、本調査 での面談を通じて、6.3 項の説明を実施し、それぞれに課題があるが、主案として JBIC のクレジッ ト・ラインを背景とした DBSA のバンク・ローン、代案として JBIC の B/C にての提案を進める。 この背景には、Smart-AHAT の商用運転実績がなく、円借款での資金調達が難しいこと、また 候補地の Temane では 2018 年に 110kV 送電網が整備されるため、EDM は同時期に発電所が運開 することを強く望んでいることがある。短期間での発電所運開スケジュールを考慮すると、この点 においても円借款を適用することは困難である。一方、JBIC の B/C は、EDM にて前金が自己調達 できるか、政府保証状(L/G)を適切なタイミングで発行できるか、財務諸表を公開していない EDM の与信を取ることができるかという課題は残る。 課題となる L/G の発行に際しては、EDM の管轄省であるエネルギー省の承認、そして財務省の 認可が必要となるため日本国政府の間接支援も望まれる。 EDM の財務状況等に対して知見のある DBSA の JBIC のクレジット・ラインを背景としたバン ク・ローンが現状で最も有効な手段と考えられる。 64 / 66 第7章 結論および推奨事項 7.1 結論 1) モザンビーク共和国での先進型高効率ガス発電設備 Smart-AHAT の具体的プロジェクトサイト として、燃料ガスの供給可能性、2018 年の送電線の完成による電力需要、用地を含む周囲環境 条件の検討により、南部イニャンバネ州のテマネに EDM が所有する既設ガス発電所内が最適と の結論に至った。 2) 夏季の気温が比較的高く内陸の乾燥したサバンナ地域であるテマネ地域において Smart-AHAT システムでのガス発電を実施する場合、Smart-AHAT の利点である A) 気温の高い夏季の日中の条件であっても年間を通じて約 70MW の定格発電出力が得られる、 B) 年間のバランスとして用水や農業灌漑水として利用可能な造水が可能 が他のガス発電設備より技術的に優位な点であり、先進型高効率ガス発電設備として最適な提案と の結論となった。 3) 調査結果として、テマネ地域における Smart-AHAT システムでの 2018 年における予想発電コ ストは、燃料ガス単価 3.2 US$/mmBTU、米国およびモザンビーク共和国の消費者物価指数(CPI、 Consumer Price Index)適用、の条件で、1kWh あたり 0.0523 US$(米国 CPI 適用ケース)~ 0.0582 US$(モザンビーク共和国 CPI 適用ケース)となった。この値はモザンビーク共和国で の平均的値と同等の発電コストで電力を供給することが可能、すなわち経済性があるとの結論が 導きだされており、公共性の高い地方の電化開発に合理的なレベルであるとの結論となった。 4) モザンビーク共和国でプロジェクトを検討する場合、Smart-AHAT が本調査時点では商用運転 実績がないことから、運転実績が重要視される円借款での資金調達には大きな課題があるという 結論となった。このことから、可能な限り迅速なプロセスでプロジェクトの成立の可能性がある 他の資金調達の検討が必要との結論となる。 上記のように、乾燥地域であるテマネのサバンナ地域に用水・灌漑水の供給の可能性を持つ先進 型高効率ガス発電設備 Smart-AHAT システムの提案は、商用運転実績がないというために資金調 達で大きな課題を解決すべきであるものの、経済性については、テマネ地域において比較的安価な 燃料ガスを原料とし、より高い発電効率で燃料消費量を低減しながら、高付加価値の電力に変換し 地方電源開発に貢献し、モザンビーク共和国のみならず同様に天然資源に恵まれた南部アフリカ地 域への展開にも寄与していくこと、本調査の目的に適合すると考える。 65 / 66 7.2 推奨事項 第 7.1 項に示されているように、本調査による事業性検討結果としてモザンビーク共和国、南部イ ニ ャ ン バ ネ 州 の テ マ ネ に EDM が 所 有 す る 既 設 ガ ス 発 電 所 内 に 先 進 型 高 効 率 ガ ス 発 電 設 備 Smart-AHAT を設置するプロジェクトが将来のモザンビーク共和国の発展・地方電化に貢献できる ことが結論として得られている。 反面、プロジェクトの具体化に関しては既述のように、そのプロジェクト資金の調達が大きな課 題となっている。第 6 章に記載のように、実現までに時間が掛かること、採択に運転実績が重要視 されることを考慮すると円借款での資金調達は課題が多い。また、モザンビーク共和国が後発開発 途上国(Low Development Country)に分類されることから、Smart-AHAT が本邦固有に開発され た技術であるにも関わらず、STEP 融資のガイドラインからも外れ、日本国の開発援助枠に入らない 状況となっている。 テマネ地域での Smart-AHAT でのガス発電プロジェクトを実施する場合、相手国の実施機関であ る EDM が 2018 年での発電を要望していることから、可能な限り迅速なプロセスでプロジェクトが 成立するよう推進が必要で、このため今後は日本国政府の間接支援によるバンク・ローンあるいは バイヤーズ・クレジットによる資金調達を中心に具体化を進めることが推奨事項となる。 66 / 66 添付資料-1 Palma TANZÂNIA N Auasse Macomia Pemba Metoro Lichinga Lúrio ZÂMBIA LILONGWE Nacala Cuamba MALAWI Namialo Nampula Alto Malema Monapo Songo Nampula Central Manje Gurué Tete Mepanda Nkua Alto-Molócue Boroma Moma Matambo Mocuba Linha de ± 535 kV Caia Bindura 2015 Uape Lupata Nicuadala Catandica Linha de 400 kV Quelimane Linha de 275 kV HARARE Linha de 220 kV ZIMBABWE Mutare Chibata Linha de 132 kV Marromeu Chimoio Linha de 110 kV Linha de 66 kV OCEANO Lamego Subestação ÍNDICO Chicamba Nhamatanda Mavuzi Posto de seccionamento Dondo Beira Buzi Central Hidroeléctrica Central Térmica Chibabava Matambo Mutare Messica Temane Chibata Chimoio Manica Gondola Inchope Lamego Chimoio 2 Chicamba Mutua Vilanculos Mafambisse Nhamatanda Chicualacuala Mavuzi Apollo Dondo Buzi Massinga Massingir Beira Inhambane Kuvaninga Corumana Matola Gare Lindela Macia Lionde ÁFRICA DO SUL Xai-Xai Infulene Arnot Maputo Machava Corumana Komatiport Arnot Maputo Matola MBABANE Mozal Macia Moamba Infulene MAPUTO Edwaleni II Salamanga SE6 SE4 SE2 P. Mozal Edwaleni II Laulane SE8 Matola Beluluane SE7 CTM SE5 SE1 Cimentos Matola Rio C d Camden SUAZILÂNDIA Manhiça Komatipoort Boane Salamanga SE3 MAPUTO 添付資料-2 Petroleum Exploration and Production Activities in Mozambique 7 recent gas discoveries ~ 10 Tcf of recoverable resources Pemba oil seep Mecufi oil seep Angoche oil seep Rovuma Basin Block Cundue Creek gas seep oil show Onshore Rovuma Buzi gas field oil show Partners Anadarko (35.7%), Wentworth (15.3%), Maurel & Prom (24%), ENH (15%), Cove Energy (10%) Area 1 Anadarko (36.5%), Mitsui (20%) ENH(15%), Bharat Petroleum Corporation (10%), Videocon Energy Resources (10%), Cove Energy (8.5%) Area 4 Eni (70%), ENH (10%), Galp (10%), Kogas (10%) (14 Bcf) oil show Area 2 & 5 Statoil (90%), ENH (10%) Area 3 & 6 Petronas (90%) e ENH (10%) Pande gas field Reserves: 2.321 Tcf Temane 0,25 MGJ/a Mozambique Basin Inhassoro gas field Temane gas field Reserves: 0.618 Tcf Block Pande - Temane Partners Sasol (70%) ENH (25%), IFC (5%) Funhalouro 16 & 19 Sofala Rompco: 164 MJ/a Magude Lake Nhangela oil seep oil show Ressano Garcia 3,0 MGJ/a MGC: 10 MJ/a Secunda 147 MGJ/a Sasol (85%), ENH (15%) M10 Sasol (42.5%), Petronas (42.5%), ENH (15%) Buzi Buzi Hydrocarbons (75%), ENH (25%) Area A Macarretane Sasol (50%), Petronas (35%), ENH (15%) Sasol (90%), ENH (10%) 添付資料-3 モザンビーク電力公社ペンバ変電所調査状況写真 変電設備 変圧器 添付資料-4 モザンビーク電力公社ナカラ変電所調査状況写真 退役発電所の建屋 ディーゼル発電機撤去後の基礎 添付資料-4 退役発電所の運転操作デスク 退役発電所の冷却水槽 添付資料-5 モザンビーク電力公社ナンプーラ中央変電所調査状況写真 変圧器 ディーゼル発電機 添付資料-5 ディーゼル発電機運転操作デスク 添付資料-6 モザンビーク電力公社ナンプーラ 220/110kV 変電所調査状況写真 変電設備 変電設備 添付資料-6 送電系統 周辺敷地状況 添付資料-7 モザンビーク電力公社ベイラ変電所調査状況写真 変電設備 スイッチギア室 添付資料-7 非常用ガスタービン発電機 (油焚き) 退役石炭火力設備エリア 添付資料-8 モザンビーク電力公社テマネ発電所調査状況写真 既設小型ガスエンジン・発電機 送電系統 添付資料-8 天然ガス供給配管 用水用小井戸 添付資料-9 レッサーノ・ガルシア地域調査状況写真 変電設備 近隣の小川 ELECTRICIDADE DE MOÇAMBIQUE, E.P. 1 com energia construimos futuro Overview of Mozambique Electricity Sector 添付資料-10 Massingir (25 MW) Mavuzi 2 & 3 (60 MW) ELECTRICIDADE DE MOÇAMBIQUE, E.P. Ressano Garcia (160 MW) Kuvaninga (40 MW) Moatize (2400 MW) Mphanda Nkuwa (1500 MW) Cahora Bassa North (1245MW) Benga (2000 MW) 22 Boroma (200 MW) Alto-Malema (50 MW) Lúrio (180 MW) com energia construimos futuro CTM (100 MW) Aggerko (100 MW) Gigawatt (200 MW) Temane (50 MW) Lupata (600 MW) Generation Projects: Geographic location Overview of Mozambique Electricity Sector 添付資料-10 N D P Pre-Feasibility ELECTRICIDADE DE MOÇAMBIQUE, E.P. A – STE /Backbone B – MNK C – CBN D – MASSINGIR E – ALTO MALEMA F – BENGA G – MOATIZE H – LURIO I – CTM J – R. GARCIA K – BOROMA L – LUPATA M - CAIA - NACALA N – MAVUZI -3 O - KUVANINGA P - TEMANE Q – GIGAWATT R - Agreeko S – CTM (JICA) Conceptual 28 S K L M E H C Feasibility Project Tracking O G A Q B R Construction com energia construimos futuro I F J Commercial agreements Overview of Mozambique Electricity Sector 添付資料-10