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世界一のマザー工場をめざす 鉄道車両製造の聖地

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世界一のマザー工場をめざす 鉄道車両製造の聖地
E6系新幹線の製造風景
山口県下松市
今回の訪問先
Frontier Report
株式会社日立製作所
交通システム社 笠戸事業所
笠戸事業所の正門
世界一のマザー工場をめざす
鉄道車両製造の聖地
E6系新幹線。茜色を採用した大胆なカラーと先進
の車両デザインが目を引きます
(写真提供:東日本旅客鉄道株式会社)
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東 京ドームおよそ 1 1 個 分 の 広さ
どの鉄道車両に加え、
これらの車両に
(520,000㎡)
の広大な敷地をもつ株式
搭載する空調・換気装置などを作り続
会社日立製作所
(以下、
日立)
笠戸事業
けています。
所。
ここは、
日立が鉄道車両を製造する
笠戸事業所が製造する鉄道車両の
ための一大拠点です。
多くは、
日立が独自に開発したA-train
その歴史は、1917(大正6)年に日立
と呼ばれる車両生産コンセプトによる
グループの総帥であった久原房之助が
もの。A-trainには、Advanced(先進)、
日本汽船(株)笠戸造船所として起業し
Amenity(快適)、Ability(性能)、
たことに始まります。1921(大正10)年に
Aluminum(アルミニウム)
の意味が込
日立の工場として鉄道車両の製造を行
められており、高品質ながらシンプルで
うようになって以来、新幹線をはじめ、特
軽量、
リサイクルに優れた環境負荷の
急電車や通勤・近郊電車、
モノレールな
低い車両を実現することができます。
はいたっく 2014.1
All Rights Reserved,Copyright ©2014,Hitachi,Ltd.
山口県下松市
笠戸事業所で作られる車両には、
では作業に負担がかかるため、車両の
車両など、海外の鉄道車両の製造も手
FSW(摩擦撹拌接合)
という技術が使
上下をくるりと180度回転させ、重力に
がけています。
このIEPの車両は英国
われています。従来のアーク溶接に比
逆らわず下向きで作業できるようにした
の工場でも作られる予定です。
べ、消費電力が少なく、環境に優しい
そうです。
これにより作業の効率と精度
また、
日本の高品質な車両を作るた
だけでなく、塗装をしなくても美しい仕
が高まりました。
め、笠戸事業所のノウハウを学びに英
上がりの鉄道車両を作り出すことがで
在来線向け車両なら月産約60両の
国の作業リーダーが来る予定となって
きます。
生産能力を誇る笠戸事業所には、完成
います。世界に冠たるモノづくりの拠点
A-trainでは、
モジュール化を推し進
間近の車両も少なくありません。
昨年3月
として、
日本品質をグローバルに展開す
め、
高品質な鉄道車両を効率的に組み
にデビューした秋田新幹線E6系、10月
るマザー工場と言えるでしょう。
立てる工夫もなされています。ユニーク
に運行を開始したクルーズトレイン
「なな
事業所内のみならず、海外工場に対
な
「車両反転作業」
は笠戸事業所が独
つ星」
の客車も笠戸事業所生まれです。
しても技能・技術の伝承に力を入れて
自に開発した作業方法です。車両内部
さらに、
ロンドン五輪で活躍した英国
いる笠戸事業所。
これからも国内や海
の天井に配線や空調などのモジュール
納めのClass 395車両のほか、現在進
外で活躍する鉄道車両を続々と生み出
を取り付ける際に、見上げたままの姿勢
行中の英国都市間高速鉄道(IEP)
の
していくことでしょう。
笠戸事業所内のトラバーサ。作業工程
ごとに車両を移動させます
完成した新幹線などは大型クレーンを
使って桟橋まで運ばれます
私たちの職場周辺はこんなところです!
地元では
世界遺産登録に向けて
活動中です
笠戸事業所のある下松市のお隣、岩国市
の錦帯橋は県内有数の観光スポット。
5つの
木造橋を連ねた珍しい構造は、
「流されない
橋を作りたい」
という先人の知恵によるもの
です。
300年近く流れなかった橋が昭和になっ
て流失・再建。
平成には架け替えも行われま
した。
岩 国 錦 帯 橋 空 港の近くなので、
立ち
寄ってみてはいかがでしょう。
中央桟橋から新幹線や輸出車両は船
に乗せられ、海上輸送されます
車両の輸送は、機関車にけん引されて、
在来線経由でも行われます
「よいものを早く作るのは当たり前。
安全と納期を守るのが
私たちの使命です」
海
外における鉄道車両の製造は、納期
が遅延することもよくあり、納期を守る
ことが付加価値になります。言うまでもなく、
われわれにとって納期の厳守は使命であり、
日々の業務の改善活動を通じて、
リードタイム
の短縮に努めています。
また、
品質や効率に
ついても、
どこにも負けないという自負があ
総務部
浜安 崇 さん
ります。今後も品質確保の姿勢は譲るこ
となく、
さらに、海外拠点を育てていける
世界一のマザー工場として、双方向
拠点DATA
株式会社日立製作所 交通システム社 笠戸事業所
所 在 地 山口県下松市大字東豊井794番地 (大正10)
年 設
立 1921
事業概要 新幹線に代表される各種鉄道車両や
モノレールの設計・開発・製造
のコミュニケーションにより、品質に
対するマインドや技能・技術の伝
承、
発信を行っていきます。
茂山 正明 さん
車両製造部 部長
はいたっく 2014.1
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