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モルフォロジカルスケルトンによる3次元画像の構造解析 Structural

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モルフォロジカルスケルトンによる3次元画像の構造解析 Structural
モルフォロジカルスケルトンによる3次元画像の構造解析
入山 彰夫
剣持 雪子
小谷 一孔
北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科
〒923-1292 石川県能美郡辰口町旭台 1-1
E-mail: {akio-iri, kenmochi, ikko}@jaist.ac.jp
あらまし 近年,3次元画像の利用機会の増加に伴い,それらを対象とした形状認識手法が求められている.
これまで様々な研究が行われたが,従来手法では形状認識を階層的に行う事は困難であった.階層的な認識を
行うには,形状を階層的に表す特徴情報を得る必要がある.階層的な画像表現手法として,多重解像度表現が
一般的であるが,多重解像度表現では低解像度ほど特徴情報のロバスト性が低いという問題がある.本研究で
は,認識処理上のロバスト性を考慮した,モルフォロジカルスケルトンに基づく新たな特徴情報(SIMS)を提
案する.SIMS により階層的な認識が可能であることを示し,その分解能を定量的比較に基づき検証する.
キーワード 3 次元画像処理,モルフォロジ,スケルトン,SIMS, 多重解像度表現
Structural Analysis of 3D Digital Shape Using Morphological Skeleton
Akio IRIYAMA, Yukiko KENMOCHI, and Kazunori KOTANI
School of Information Science, JAIST
Asahidai 1-1, Tatsunokuchi-machi, Nomi-gun, Ishikawa, 923-1292 Japan
E-mail: {akio-iri, kenmochi, ikko}@jaist.ac.jp
Abstract We propose a new feature extraction method called SIMS to analyze 3-D digital shapes. It is possible by using
SIMS that the hierarchical analysis of 3-D digital shapes. It was difficult for performing recognition hierarchicaly by the
conventional method using multi-resolution analysis. Because it has no robustness to phase change or a spatial change in
low resolution. SIMS has robustness that needs to perform hierarchical recognition. SIMS is based on a Morphological
skeleton. We verified the character of SIMS by quantitive experiment.
Key words
3-D Digital Shape, Morphology, Morphological Skeleton, SIMS, multi-resolution
1. はじめに
は元形状の情報を完全に保持する.しかし,スケル
トンも座標空間中の画素集合として表されるため,
CT スキャナやレーザーレンジファインダ等に代
空間的・位相的な変化に対するロバスト性が低い.
表される3次元スキャナの普及に伴い,ボリューム
そこでスケルトンを極座標系に置き換え,形状認識
データの利用機会はますます増加している.これに
に適した特徴情報として新たに SIMS (Structure
伴い,ボリュームデータを対象とした形状認識手法
Information based Morphorogical Skeleton) を提
も求められているが,ボリュームデータは膨大なデ
案する.SIMS の性質及び分解能を調べ,その結果
ータ量を持ち,またボリュームデータで表された 3
を報告する.なお簡略化のため説明は主に 2 次元画
次元形状そのものも形としての複雑さを持つため,
像により行う.
形状認識を行う事は容易ではない.このため,形状
認識を行うための様々な手法がこれまで研究されて
きた.
形状認識は,
形状から何らかの特徴情報を抽出し,
2. モルフォロジカルスケルトン
モルフォロジカルスケルトンはモルフォロジー演
算により求められ,スケルトンは元画像の情報を完
得られた特徴情報を元にあるクラスを基準として分
全に保持する.以下,スケルトン化手法及びスケル
類するという過程に分けられる.様々な特徴情報が
トンの性質について説明する.
提案されているが,その一つとして対象画像をテン
プレート形状の集合で表し,その分布を特徴情報と
する手法がある.ボクセル表現されたオブジェクト
に対し,テンプレート形状とのマッチングを行う手
法として,大域的な検索を GA やハフ変換を用いて
効率的に行う手法[1][2]がある.また,動的輪郭法を
用いてボクセル表現されたオブジェクトを球面の集
合で代表し,それを特徴情報とする事で,オブジェ
クトの概形表現や領域抽出を行う手法[3][4]がある.
一方,ボクセル表現されたオブジェクトに3次元細
線化を行い,得られた形状の骨格情報を特徴情報と
して形状分類を行う手法[5]も提案されている.これ
らの手法により得られる特徴情報は,形状特徴を階
層的に表すものではないため,認識処理も階層的に
行う事はできない.
これに対し,形状特徴を階層的に表す特徴情報と
して多重解像度表現された画像を用いてオブジェク
ト分割を行う手法[6]が提案されている.しかし,オ
ブジェクトを多重解像度表現する事で階層的な解析
処理が可能であるが,低解像度においてオブジェク
トの空間的・位相的変化に対するロバスト性が低い
ため,形状認識に適した特徴情報とは言えない.
2.1 モルフォロジーに基づくスケルトン化
スケルトン化は,モルフォロジー演算における基
本演算であるミンコフスキー和とエロージョンの組
み合わせで構成される.各演算は画像と構造要素と
の論理演算として定義される.構造要素とは複数の
位置ベクトルの集合を画素に置き換えたものであり,
構造要素の形状に依存してスケルトン化結果は変化
する.本研究では特に安定したスケルトン化が行え
る円(3 次元では球)を構造要素として用いる.画像 A,
構造要素 B,それぞれの集合要素を a ∈ A, b ∈ B ,
B の対称集合を BS とする.ユークリッド空間を E
とすると,A と B のミンコフスキー和,エロージョ
+ ,o を用いてそれぞれ式(1),(2)で表さ
ンは演算子○
れる.
A ⊕ B = {z ∈ E : z = a + b, a ∈ A, b ∈ B}
(1)
A o B S = {x ∈ E : x − b ∈ A, ∀b ∈ B S }
(2)
A のスケルトン SK(A)は式(3)で表される.ただし A
のスケルトン部分集合 S n ( A) は式(4) で表され,nB
は B の n 回ミンコフスキー和であり式(5)のように表
される.ここでは n をスケールと呼ぶ.
N
SK ( A) = U S n ( A)
(3)
モルフォロジカルスケルトンは,モルフォロジー演
S n ( A) = ( A o nB S ) − ( A o (n + 1) B S ) ⊕ B
(4)
算[7][8]により得られる形状の骨格情報である.これ
nB = B ⊕ B ⊕ ... ⊕ B ⊕ B
(5)
多重解像度表現とは異なる形状特徴を階層的に表
す特徴情報にモルフォロジカルスケルトンがある.
は細線化により得られる骨格情報とは異なり,モル
フォロジー演算は可逆変換であるため,スケルトン
n =0
2.2 モルフォロジカルスケルトンの性質
3.1 スケルトンから SIMS への変換
スケルトンは,スケルトン部分集合の論理和とし
画像に対して距離変換[9]を行った場合,スケルト
て表され,スケルトン部分集合は互いに素である.
ンは距離値が極大となる点を中心として放射状に広
スケルトン部分集合 S n ( A) と元画像Aとの関係は
がった分布を示す.そして形状中心に近いほど,よ
式(6)で表され,スケルトンから元画像を完全復元可
り大きなスケール値のスケルトン部分集合が分布す
能である.スケール n のスケルトン部分集合は,構
る.このような分布特性からスケルトンを中心点か
造要素 B による n 回分のミンコフスキー和を含む.
らの広がりを表すパラメータとして考える事ができ
このためスケール値が大きいスケルトン部分集合ほ
る.そして,中心点からの位相と広がりでスケルト
ど,元画像における大局的情報を表し,逆にスケー
ンを表すことで,元画像の空間的・位相的変化に対
ル値が小さいスケルトン部分集合は局所的情報を表
するロバスト性が得られる.
そこで,スケルトン部分集合 Sn (A) を中心点 O か
す.
(6)
ら極座標系の位相−広がり空間へ変換する.スケル
スケルトン部分集合 S n ( A) は,構造要素 B による
度θ方向上にあり OP 間の距離が最小となる点を
N
A = U [S n ( A) ⊕ nB ]
n =0
n 回ミンコフスキー和分の領域を代表しているため,
トン部分集合 Sn (A) に属する点を Pn とし,O より角
min Pn,OP 間の距離が最大となる点を max Pn とす
スケルトンを用いることで元画像よりも少ないデー
る.min Pn と max Pn の 2 点間の距離を,角度θ方
タを解析対象とする事ができる.また,スケルトン
向の広がり mn として次式(7)で定義する.
はスケール値によって階層化された情報であり,階
層的な解析処理が可能である.スケルトンの階層性
はスケールで表され,構造要素により変化する.2
次元画像に対して,構造要素を円に限定した場合,
円の半径が大きいほど階層性は減少し,スケルトン
部分集合一つあたりの分布が増大する.この例とし
て,図1(a)に示す三角形を半径 3 [pixel]の円と半径
11 [pixel]の円形構造要素によりスケルトン化した
結果をそれぞれ図 1(b)(c)に示す.
(a)元画像
mn = max OPn − min OPn
(7)
この定義に基づき,各位相についてそれぞれのス
ケルトン画素から広がり m を求める.例を図 2 に示
す.図 2(a)に示すスケルトン部分集合 Sn (A) の場合,
その SIMS は図 2(b)のようになる.
この変換により,
各スケルトン部分集合の広がり m が図 2(b)のように
位相θ (−π ≤ θ ≤ π ) ,広がり m のパラメータ空間
上で表される.但し位相は x 軸正方向を基準 0 とす
る.
(b)半径 3 の場合 (c)半径 11 の場合
図 1.構造要素の違いによるスケルトン分布の変化
3. SIMS
スケルトン分布の形状ごとの違いから形状認識を
(a) Sn (A)
(b) Sn (A) の SIMS
図2.スケルトンから SIMS への変換
3 次元画像を対象とした場合は,スケルトンも中
行う事が可能であるが,スケルトンは座標空間中の
心点から 3 次元的に分布する.中心点からの位置ベ
画素集合として表されるため,元画像の空間的・位
クトルがデカルト座標系において ( x, y, z ) で表され
相的変化に対するロバスト性は低い.このため,本
研究ではスケルトンを元に認識に適した特徴情報へ
の変換を提案する.変換後の特徴情報を特に
SIMS( Structure Information based Morphorogical
Skeleton)と呼ぶ.
る時,SIMS は極座標系の ( r ,θ ,ϕ ) で表され,それ
ぞれの対応関係は式(8)(9)(10)で表される.
x = r sin θ cos ϕ
y = r sin θ sin ϕ
z = r cosθ
(8)
(9)
(10)
3 次元画像に対して実際に SIMS を求め,極座標
空間に置き換えた例を図3に示す.
(a)
(b)
(c)
図4.離散空間における SIMS への変換
3.3 SIMS の性質
(a)元画像
(b)スケルトン
SIMS は,元画像の空間的・位相的変化に対する
ロバスト性を得るため,スケルトン部分集合を変換
した特徴情報である.そのため,スケルトンの持つ
性質とスケルトンによらない性質を併せ持つ.
3.3.1
SIMS の構造要素に対する依存性
SIMS は,スケルトン部分集合の分布を中心から
の広がりとして捉え,極座標系に置き換えたもので
(c)SIMS
図3.3次元画像における SIMS
ある.そのため構造要素として用いる円(3次元では
球)の半径が小さくなるほど広がりは減少し,逆に半
径が大きくなるほど広がりは増大する.この例を図
3.2 離散空間におけるスケルトンから SIMS への変換
5に示す.先に図1では,
元画像に対し半径 3 [pixel]
実際にスケルトンに対して SIMS への変換処理を
と半径 11 [pixel]の円形構造要素によりスケルトン
行う場合,処理対象となるスケルトンは離散空間に
化を行った結果を示した.さらにそれを SIMS へ変
おける画素の集合として表されるため,厳密に式(7)
換した結果が図5である.ただし簡略化のため,
の定義に沿った SIMS への変換を行う事はできない.
SIMS はスケール2のスケルトン部分集合のみを示
スケルトン部分集合 Sn (A) を対象とする実際の
す.図より,半径 3 と半径 11 の SIMS は,広がり
SIMS への変換処理は,次の4つの過程で行われる.
方向に大きな差が生じ,円形構造要素の半径が大き
それぞれの番号は図4(a),(b),(c)中の番号に対応す
いほど広がりが増大する傾向が分かる.
る.
構造要素半径3
直線の角度θを求める(3次元の場合はθ ,ϕ ).
この直線に対応する画素列を求め,これを検索
対象とする.
②検索対象の画素列中,OP 方向で P に隣接する
12
広がり m [pixel]
① Sn (A) に属する任意の点Pを選び,OP 間を結ぶ
9
6
3
0
点を調べ,O を中心として P より外側に同じ
-4
-3
-2
Sn (A) に属するスケルトンが存在しない事を確
に戻る.
③P より PO 方向に直線上の点を順に探索し,最
初に同じ Sn (A) に属さない点 Q を調べる.
④PQ 間の距離を求め,広がりの値 m とする.得
-1
0
1
位相θ [rad]
2
3
4
図5.構造要素の違いによる SIMS の変化
認する.存在しない場合は処理③,存在する場
合は他の Sn (A) に属する点を対象として処理①
構造要素半径11
3.3.2
SIMS の階層性
SIMS は,それぞれのスケルトン部分集合より得
られるため,階層性を保持している.この例を図6
に示す.図6(a)の元画像に対して半径7 [pixel]の
円形構造要素によりスケルトン化した結果が図6
られたパラメータを ( r ,θ ) 空間(3次元では
(b)である.これを SIMS に変換した結果が図6(c)
(r ,θ ,ϕ ) 空間)へプロットする.
である.スケールの小さいスケルトン部分集合の
SIMS は位相全域に分布し,広がりが小さい.逆に
複数の中心点が存在するような形状を解析対象と
スケールの大きなスケルトン部分集合の SIMS は,
する場合は,形状の分割処理が必要となる.中心点
特定の位相領域において広がりが明確に分かる分布
が連続するような長方形やトーラス等の形状を解析
を示している.
対象とする場合は,連続する中心点の分布を解析す
る必要がある.
4. SIMS の分解能 − 角に対する分解能 −
SIMS で解析可能な形状の範囲を求めるため,定
量的な比較に基づき SIMS の分解能を調べる.3 次
(a)元画像
元形状は,辺・頂点・稜線・曲面等により構成され
(b)スケルトン
広がり m [pixel]
るが,ここでは分解能を計るための指標として,頂
スケール1
8
7
6
5
4
3
2
1
0
スケール4
点と辺により構成される角に注目する.どの程度の
角度まで角の存在を確認できるかを計るため,問題
を簡略化し角の集合で構成される 2 次元画像を解析
対象とする.
4.1 分解能の解析方法
次に示す 2 つの方法を分解能の解析に用いる.
-4
-3
-2
-1
0
1
2
3
4
位相θ [rad]
(c)SIMS
図6.SIMS の階層性
3.3.3 SIMS で解析可能な形状
3 次元形状の記述手法として,従来より提案され
a. 広がり基準
SIMS における広がりの極大値を分解能の基準と
する(図8(a)
)
.SIMS における一定の位相領域内
において,広がりの値が極大となる点を計測する.
即ち対象画像は,広がり値が極大を取る位相方向に
広がる形状として評価する.対象とする位相領域は
ている超 2 次関数とその組合わせによる記述手法と
実験的に 0.5 [rad]とする.
SIMS を比較した場合, 超 2 次関数では定義不可能
b. 位相基準
な,非対称でいびつな形状に対しても SIMS は記述
SIMS を位相方向でクラスタリングし,クラス数
可能という点が長所として挙げられる.ただし
を分解能の基準とする(図8(b)).即ち対象画像
SIMS で記述可能な形状には制限がある.SIMS は
は,SIMS の分布が集中する位相方向に広がる形状
式(7)で定義されるため,解析可能な形状は,解析の
として評価する.クラスタリングはクラスタを動的
起点として中心点に用いる距離値極大の点が 1 点と
に 生 成 す る 手 法 と し て 一 般 的 な NN(Nearest
なるような形状に限定される.またスケルトンの分
Neighbor)法[10]を用いる.クラスタリングを行う位
布を中心点からの広がりとして極座標で表すため,
相方向の類似度の閾値は実験的に 0.3 [rad]とする.
形状は中心点から放射状に広がった形に限定される.
中心点が連続する場合,あるいは複数の中心点が
存在する図7に示すような形状の場合,SIMS を用
いた解析を行うためには他の何らかの処理を必要と
する.
-4 -3 -2 -1 0
1 2
(a)広がり基準
3
4
-4 -3 -2 -1 0
(b)位相基準
図8.SIMS の分解能の解析
図7.SIMS による解析が困難な形状
1 2
3
4
4.3 実験結果・考察
4.2 分解能の検証方法
実験結果を表1∼6に示す.解析により検出され
角数が段階的に異なる正多角形を解析対象とする.
ここで述べる正多角形とは,k 個の角を持つ多角形
た角数 k’ が,入力画像の角数 k と一致した場合を●
において,
角の角度がいずれも等しい多角形とする.
で示す.形状より得られた SIMS を表中のグレー領
ただし実験対象は,k が 3≦k≦15,k∈Z である多角
域で示す.
構造要素の半径が 11 [pixel]の時,
広がり基準によ
形とする.実験画像の例として,k=3, 10, 15 の場合
る分解能の実験結果(表 5)より,k =6,角度にして
をそれぞれ図9 (a),(b),(c)に示す.それぞれの SIMS
を求め,a,b 2 つの手法で解析を行う.角数 k の正
120°相当まで●がある.即ち SIMS により検出さ
多角形と,解析により検出された角数 k’が一致した
れた角数 k’ が,入力画像の角数 k と一致しており,
場合,その多角形を構成する角の角度は検出可能で
120°相当の角度の角まで検出可能である事を示す.
ある事が確認される.角数 k における正多角形の一
同様に,位相基準による分解能の実験結果(表6)
では,k=10,角度にして 144°相当の角まで検出可
つの角の角度 r [rad]は式(11)で表される.
r = (k − 2)π k
能である事がわかる。
(11)
ただし,いずれも離散空間中の画素で表された画
入力画像は 256×256 [pixel]の 2 次元画像とし,
像における角度であり,画像から厳密に角度を求め
構造要素は半径 7,9,11 [pixel]の円形構造要素を
る事はできないため,角度は式(11)より元画像の角
用いる.
数から求めた.
表 1.半径 7 広がり基準による分解能
スケール
k
3
4
1
●
●
2
●
●
3
●
●
4
●
●
5
●
●
6
●
●
7
8
9
10
●
●
●
●
11
12
表 2.半径 7 位相基準による分解能
角度
[°]
スケール
k
60.0
90.0
3
7
1
●
●
●
●
●
2
●
●
●
●
●
3
●
●
●
●
●
4
●
●
●
●
●
5
●
●
●
●
●
6
7
8
9
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
10
11
12
角度
[°]
60.0
●
●
●
●
128.6
●
10
144.0
10
144.0
15
156.0
15
156.0
(a) k = 3
表 3.半径 9 広がり基準による分解能
スケール
k
3
4
5
1
●
●
●
2
●
●
●
3
●
●
●
4
●
●
●
5
6
7
8
9
10
11
12
表 4.半径 9 位相基準による分解能
角度
[°]
スケール
k
60.0
●
●
●
●
3
●
108.0
120.0
●
10
144.0
1
●
●
●
●
●
●
●
2
●
●
●
●
●
●
●
3
●
●
●
●
●
●
10
4
5
6
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
7
8
9
10
11
12
角度
[°]
60.0
●
●
●
●
●
●
●
140.0
144.0
●
(b) k = 10
15
156.0
表 5.半径 11 広がり基準による分解能
スケール
k
3
4
5
6
10
1
●
●
●
2
●
●
●
3
●
●
●
4
5
6
7
8
9
10
11
12
角度
[°]
60.0
●
●
●
●
●
●
●
15
表 6.半径 11 位相基準による分解能
スケール
k
3
108.0
120.0
144.0
156.0
10
1
●
●
●
●
●
●
●
●
2
●
●
●
●
●
●
●
●
3
4
5
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
6
7
8
9
10
11
12
角度
[°]
60.0
●
●
●
●
●
●
●
●
144.0
●
(c) k = 15
図9.実験画像
●
15
156.0
15
156.0
全体的に,広がり基準よりも位相基準の方がより
れぞれ図 11(a),(b),(c)に示す.
高い分解能が得られる傾向がある.また,スケール
実験画像を a,b 2 つの手法で解析し,検出された
値の大きい SIMS は大局的な情報を表すが,多重解
角数 k’ が 4 の場合,即ち角の欠損した方向へも角と
像度表現のように大局的情報ほど分解能が悪化する
しての広がりを検出する場合を●とする.また検出
傾向は見られない.
された角数が3の場合,即ち欠損した角方向には,
構造要素に対する分解能の傾向として,円形構造
角の存在を検出しない場合を○とする.
要素を用いた場合の SIMS の分解能は,円の半径が
入力画像は 256×256 [pixel]の 2 次元画像とし,
大きいほど分解能が高くなり,代わりに階層数が減
基となる正方形は 151×151[pixel]とする.
構造要素
少する傾向が見られる.
は半径 7,9,11 [pixel]の円形構造要素を用いる.
以上の結果より,高い分解能を得るためには円形
構造要素の半径を大きくする必要があり,半径 11
において解析可能な角の上限角度は 144°相当の角
であることが分かった.ただし今回の分解能の検証
では,元画像の解像度が変化した場合の検討を行っ
ていないため,元画像の画像サイズにより SIMS の
傾向も変化する可能性がある.
5. SIMS の分解能 − 曲線に対する分解能 −
曲線に対し SIMS がどのような傾向を示すかを調
べるため,曲線に対する SIMS の分解能を調べた.
分解能の解析手法には先に述べた 2 つの手法を用い
る.
5.1 分解能の検証方法
曲線に対してどのような SIMS の傾向が表れるか
5.2 実験結果・考察
実験結果を表7∼12に示す.形状より得られた
SIMS を表中のグレー領域で示す.広がり基準によ
る分解能の実験結果(表 7,9,11)より,広がり基準で
は R =10 から R =60 まで●と○の分布が段階的に変
化する.
スケール値との対応を見ると,スケール値が大き
いほど●が分布し,スケール値が小さいほど○が分
布する.スケール値の大きさは,元形状における大
局性・局所性を表す.このため,大局的には角数4
の形状として検出し,局所的には角数3の欠損方向
に角の無い形状として検出する.
R =70 以上からは全てのスケールにおいて●が検
出されなくなる.即ち欠損した角方向へは,角の存
在が確認されない.
を調べるため,曲率半径を基準として解析を行う.
位相基準による分解能の実験結果 (表 8, 10, 12)
曲率半径とは曲線の曲がり方を表すパラメータで
の場合においても,こうした傾向に大きな違いは見
あり,平面曲線 C 上の点 P における曲率半径とは,
点 P で C を局所的に近似した時の円の半径に一致す
る(図 10)
.なお曲率半径の詳細は文献[11]に譲る.
られない.ただし位相基準では,R =10 において全
てのスケールで●が分布し,欠損した角と欠損の無
い角との違いを評価できていない.
構造要素に対する分解能の傾向として,円形構造
要素を用いた場合の SIMS の分解能は,構造要素円
の半径が小さいほど曲率半径に対する分解能が高く
なる傾向が見られる.しかし角に対する分解能の傾
向ほど大きな変化はみられない
図 10.曲率半径
以上の結果より,R =60 以下の曲率半径を持つ曲
線に対し,大局的には角として,局所的には曲線と
解析対象には,既に分解能が確認された 90°の角
しての評価が可能であると言える.ただし角に対す
で構成される正方形を基に,その角の一つに対して
る分解能の検証と同様に,元画像の解像度が変化し
設定した曲率半径に沿って角を欠損させた形状を用
た場合,これらの傾向も変化する可能性がある.
いる.曲率半径を R [pixel]とし,10≦R≦100 の範
囲で R を 10 づつ段階的に変化させた形状を用意す
る.実験画像の例として,R=10, 50, 100 の場合をそ
[2] 熊沢 逸夫:"セルラーHough 変換による形状抽出", 電子
情報通信学会技術研究報告, Vol.96, No.435, (PRMU96
104-117) pp.9-16, 1996.
[3] 堀越 力,末永 康仁,中根 一成:"超2次関数膨張法と球
面 調 和 関 数 に よ る 3 次 元 形 状 の 記 述 ", 信 学 論 ,
Vol.J78-D-II, No.1 pp.50-60, 1995.1.
[4] 清水昭伸, 松阪匡芳, 長谷川純一, 鳥脇純一郎, 鈴木隆
一郎 : "動的輪郭線モデルを用いた輪郭線抽出手順の自
動構成と胸部 X 線像上の肺輪郭抽出への応用", コンピュ
ータ支援画像診断学会誌, 1, 1, pp.1-11, 1997.8.
[5] コマツソフト株式会社:"形状特徴マイニングエンジンの開
発", 高度情報化支援ソフトウェアシーズ育成事業論文, 00
第 001 号, 2001.1.
[6] Gunilla Borgefors, Gabriella Sanniti di Baja, and Stina
Svensson: "Deconposing Digital 3D Shapes Using a
Multiresolution Structure", DGCI^99, LNCS 1568,
pp.19-33, 1999.
[7] 小畑 秀文:"モルフォロジー", コロナ社, 1996.
[8] 小畑 秀文:"3 次元画像とモルフォロジー", MEDICAL
IMAGING TECHNOLOGY, Vol.19 No.3, pp.168-173,
May 2001.
[9] 齋藤 豊文, 鳥脇 純一郎:"3 次元ディジタル画像に対する
ユ ー ク リ ッ ド 距 離 変 換 ", 信 学 論 , Vol.76-D-II, No.3
pp.445-453, 1993.3.
[10] 宮本 定明:"クラスター分析入門", 階層的クラスタリング,
pp88-105,森北出版株式会社, 1999.
[11] 杉 原 厚 吉 : " グ ラ フ ィ ッ ク ス の 数 理 ", 曲 線 の 表 現 ,
pp107-110,共立出版株式会社, 1995.
6. おわりに
3 次元画像解析を目的とし,空間的・位相的にロ
バストで階層的に形状特徴を表す新たな特徴情報と
して SIMS を提案した.SIMS の分解能を定量的な
比較に基づいて検証し,その性質を調べた.その結
果,SIMS は中心点より放射状に広がる形状を解析
可能であり,144°相当の角度まで角として検出可
能である事が分かった.また曲線については,曲率
R=60 までは,大局的には角を検出し,局所的には
角の無い曲線としての評価が可能である事が分かっ
た.
これら SIMS の分解能の傾向を踏まえ,今後は実
際に形状認識・推定を行うための具体的な評価モデ
ルを作成すると同時に,SIMS を拡張し,より複雑
な形状への適用を考えていく予定である.
文
献
[1] 堀田 裕弘,北村 聡宰,Han Tee Siew,村井 忠邦:"超2
次関数と CSG 表現を用いた3次元物体の形状記述の基礎
検討", 信学論, Vol.J82-D-II, No.4 pp.790-797, 1999.4.
表 7.半径 7 広がり基準の分解能
R
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
1
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○
○
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2
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○
○
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3
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○
○
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○
4
●
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○
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○
○
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○
スケール
5
6
●
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7
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○
8
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○
表 8.半径 7 位相基準の分解能
9
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○
10
●
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●
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○
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○
表 9.半径 9 広がり基準の分解能
R
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
1
○
○
○
○
○
○
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○
○
○
2
●
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○
3
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○
○
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○
4
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○
スケール
5
6
●
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●
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○
○
○
○
○
○
7
●
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○
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○
○
8
●
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●
●
R
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
1
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
2
●
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○
○
○
○
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○
3
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●
○
○
○
○
○
○
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4
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●
○
○
○
○
○
○
7
9
10
R
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
○
○
8
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
1
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
2
●
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○
○
○
○
○
○
○
○
3
●
●
○
○
○
○
○
○
○
○
4
●
●
●
○
●
○
○
○
○
○
スケール
5
6
●
●
●
●
●
●
●
●
○
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○
○
○
○
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○
○
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○
7
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○
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○
○
○
8
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○
○
9
●
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●
●
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●
10
9
10
(a) R=10
表 10.半径 9 位相基準の分解能
表 11.半径 11 広がり基準の分解能
スケール
5
6
●
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○
R
9
1
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
2
●
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3
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○
○
○
○
○
○
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4
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○
○
○
○
スケール
5
6
●
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●
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●
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○
○
○
○
○
○
○
7
●
●
●
●
●
●
8
(b) R=50
表 12.半径 11 位相基準の分解能
10
R
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
1
●
○
○
○
○
○
○
○
○
○
2
●
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○
○
○
○
○
○
3
●
●
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○
○
○
○
○
4
●
●
●
●
●
○
○
●
○
スケール
5
6
●
●
●
●
●
○
○
●
7
8
9
10
(c) R=100
図11.実験画像
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