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12 E \( ミ j
北朝鮮政治体制研究
研究代表者
法学部
礒﨑敦仁
研究概要
本研究は、北朝鮮の最高指導者、金正日(キム・ジョンイル)が自らの体制のキーワードと称する「先軍(ソングン)」概念について、生成及
び発展の過程とその背景を明らかにし、それに基づいていかなる政治体制が構築されたかを明らかにすることが目的である。これま
で「特殊性」ばかりが主張されてきた北朝鮮の政治体制だが、その「普遍性」にも留意し、他の非民主主義体制の中で金正日体制が
いかに位置づけられるかを示すことも必要と考える。
「先軍」
先軍」
「先軍」概念生成、発展の背景について明らかにする。金日成(キム・イルソン)が「主体(チュチェ)」、「主体思想」といった概念を最重視し
たのに対し、金正日は「先軍」、「先軍思想」といった概念を提示している。その本質と変質を検討することは体制分析の根幹となる。
「先軍」概念は1999年6月に公に周知されて以降、北朝鮮の報道媒体で言及されなかった日はない。当時は「1995年1月から『先軍
政治』が始まった」と主張されていたが、その後その起源は「1960年8月から」と再定義された。「先軍」概念を掲げて何年も経たずに
歴史の書き換えを行い、「先軍」に重みを持たせているのである。2003年からは、「先軍思想」という新たな思想が、憲法で唯一思想と
規定されていた「主体思想」と同列に扱われるようになり、限定的とはいえ「先軍思想によって全社会を一色化」する運動が開始され
た。それらの対内的・対外的背景を探る。
「国防委員会」
国防委員会」中心の
中心の国家運営
「先軍」概念に基づいていかなる体制が構築されたかを明らかにする。例えば、1998年の憲法改正によって、それまでの主席制が
廃止され、「国防委員会」中心の国家運営が行なわれているとされる。しかし、同機関に関する先行研究は皆無といって良い。『労働
新聞』や『民主朝鮮』等の北朝鮮側資料を精査し、「内部資料」や脱北者証言と突き合わせることにより、「先軍」政治体制の姿を描く。
非民主主義体制論の
非民主主義体制論の中の北朝鮮
「先軍」を掲げた金正日体制の「特殊性」と「普遍性」について分析する。
現在までの準備段階の研究により、金正日体制を分析するのに最も有用な枠組みの一つとして、ホアン・リンス(J. Linz)による「全
体主義」体制モデルと「スルタン主義」体制(Sultanistic Regime)モデルを想定している。両者を区別するのは①イデオロギー、②リー
ダーシップ、③動員、④多元主義という四つの視点である(Chehabi, H.E. & Linz, J.J.,Sultanistic Regimes.及びJuan J. Linz & Alfred
Stepan, Problems of Democratic Transition and Consolidation. Southern Europe, South America, and Post-Communist Europe)。金
正日による「先軍」政治体制の特徴をこれら四つの視点から分析し、他のさまざまな非民主主義体制の中で、いかに位置づけられる
かを検討している。但し、とりわけ「スルタン主義」については必ずしも定着した概念とはいえないため、理論的枠組みについては今
後さらに検証を深めていく。
研究の
研究の特色
・北朝鮮の一次資料を精査した結果と各種「内部文書」や脱北者(・亡命者)証言をはじめとする新資料を証憑突合。
・現場での経験(在中国日本国大使館北朝鮮担当専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、政府系シンクタンク研究員、
韓国・ソウル及び中国・上海への長期留学、中朝国境踏査20回、北朝鮮訪問7回、北朝鮮関連人権団体での活動)と人脈を生かす。
主たる研究成果
たる研究成果(最近2
最近2年分)
年分)
・「脱北者問題をめぐる中国・北朝鮮・韓国関係」『季報国際情勢』第75号(2005年2月、85-96頁)。
・「北朝鮮における住民意識の動態―忠誠心の行方」小此木政夫編『韓国における市民意識の動態』(慶應義塾大学出版会、2005年3月31日、119-146
頁)。
・「金正日体制の出帆―『苦難の行軍』から『強盛大国』論へ」鐸木昌之・平岩俊司・倉田秀也編『朝鮮半島と国際政治―冷戦の展開と変容』(慶應
義塾大学出版会、2005年10月15日、171-194頁)。
・「北朝鮮政治体制論の研究動向と『スルタン主義』」『季報国際情勢』第76号(2006年2月、107-119頁)。
・「金正日『先軍政治』の本質」小此木政夫編『危機の朝鮮半島』(慶應義塾大学出版会、2006年12月25日、283-304頁)。
・「北朝鮮の『多元主義』―弛緩と抑制」『東亜』第476号(霞山会、2007年2月、24-34頁)。
・「北朝鮮の日本人観光客受け入れ」『国際観光情報』2007年4月号(7-16頁)。
・「多様化する北朝鮮観光とその問題点」『国際観光情報』2007年5月号(14-22頁)。
・「北朝鮮」小倉紀蔵・小針進編『韓流ハンドブック』新書館、2007年6月10日、146-150頁)。
・「日朝関係を考える視角」『改革者』2007年11月号。
※研究の概要は、『東京新聞』・『中日新聞』(2007年10月29日夕刊文化面)でも紹介されました。
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