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持続可能 社会 目指 、 企業 ステ イ ク ホ ル ダ ー 新 関係

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持続可能 社会 目指 、 企業 ステ イ ク ホ ル ダ ー 新 関係
に
持 続 可 能 な社 会 を目 指 す、
企業 と
ステイクホルダー の
新 たな関 係 と社 会 的 責 任
谷本 寛治
Interview with Kanji Tanimoto
一橋大学大学院商学研究科教授
持続可能な未来のために
問われるCSR
企業の社会的責任、
CSRは、これからの時代の企業
活動を方向づけるファクターであるとともに、地球社
会の持続可能な未来にもつながる重要なファクターで
あ る。こ う し た 観 点 か ら、こ こ で は 社 会 を 構 成 す る 多
様なステイクホルダーとの関係性やグローバルガバナ
ンスの展開を中心として、企業に今、
CSRが問われる
ことの本質的な意味について考えてみたい。
は じ め に、社 会 的 責 任 と い う 考 え 方 に お い て は、次
月に動きだした社会的
のふたつのことを分けて捉える必要がある。
まずひとつは、20 10 年
果たしていくことが求められる。
ダーが協力し合うとともに、それぞれの責任や役割を
決していくためには、企業を含む多様なステイクホル
いかなければならない課題である。それらを現実に解
可能で公正な社会をつくるためには、必ず取り組んで
しきれないものも存在するということ。これらは持続
全体に関係する課題であるために、企業単独では解決
途上国支援などのように、それぞれが地球環境や社会
は、例えば、環境保護、障害者の支援、消費者の問題や
そ れ と は 別 に、企 業 のCSRの 具 体 的 な 内 容 の 中 に
ある。
法律を守らないといけない、というのは当然のことで
な 組 織 で も、人 権 や 環 境 を 配 慮 し な け れ ば な ら な い、
も っ て い る の だ と い う こ と。行 政 やNGOで も、ど ん
う に、企 業 だ け で な く、す べ て の 組 織 が 社 会 的 責 任 を
責任の国際ガイダンスISO26000 で示されたよ
11
■
先進国の利益
途上国の利益
■
環 境 面
社 会 面
気候変動、温暖化、
貧困、人口、人権、
生物多様性、環境
社会開発、女性、
保全、資源、
エネル
社会的統合、
ギー、廃棄物
社会的公正性
図1 持続可能な発展とは
日本では、従来どちらかと言えば、社会的責任は不祥事や法律違
ない中、先進国だけが豊かさを享受している状況がある。これでは
いう幻想があったが、現実には、途上国の利益が必ずしも尊重され
さらに、社会的な面での問題意識の高まりもある。地球環境その
反 に 対 す る コ ン プ ラ イ ア ン ス の 問 題 と し て 問 わ れ て き た。し か し
をどのようにしてつくっていくのかを問う時に企業に求められる
も の の 持 続 可 能 性 は も ち ろ ん の こ と、19 9 0 年 代 半 ば か ら 言 わ
持続可能な地球社会を築くことはできない。
新しい責任や役割である。実際、
CSRに関するグローバルな議論
どの社会的な課題である。この問題は先進国にも途上国にもある。
れ て き た の が 貧 困 や 人 権 の 問 題、あ る い は 社 会 的 排 除 を な く す な
﹁持続可能な発展﹂の議論ベースとなったのは、国連の﹁環境と開
こうした社会的課題を同時に考えていかないと持続可能な発展は
は、これまでそういう流れの中から出てきたものである。
発に関する委員会﹂が1987年に出したブラントラント報告書に
望めないし持続可能な地球社会はつくれないのである。
世紀型の産業社
20
会 の あ り 方 が 問 い 直 さ れ 始 め、 年 代 に 入 っ て グ ロ ー バ ル 化 が 大
時 代 の 変 化 を ふ り 返 る と、1 9 7 0 年 代 に は
おける考え方で、
﹁将来の世代の能力を低下させることなく現在の
ニーズに沿って発展させる﹂というものである。
そ し て、こ れ に 先 進 国 と 途 上 国 と の 関 係 性 も 加 え ら れ る よ う に
90
4
CEL Mar. 2011
つ ま り、企 業 も 含 め て す べ て の 組 織 に 社 会 的 責 任 が あ る と い う
将来のニーズ
こ と と 同 時 に、企 業 にCSRと し て 問 わ れ て い る 持 続 可 能 な 社 会
づ く り に 向 け た 諸 課 題 に は、そ れ に 関 係 す る 各 ス テ イ ク ホ ル ダ ー
が共に解決に努める責任と役割をもっているということである。
例 え ば、地 球 温 暖 化 問 題 は 地 球 全 体 の 持 続 可 能 性 に 関 わ る テ ー
マである。当然、市場における大きな経済主体である企業には、も
のづくりや流通、消費、最終廃棄などのすべての活動の中で、温室
効果ガスを削減しなければならない責任がある。それと同時に、消
1990 年代∼
1980 年代後半∼
費者である我々は、大量生産・大量消費の中で次々と大量廃棄して
いくようなライフスタイルを改め、省エネにも努める必要がある。
こうしたことは、よりローカルな課題においても同様で、関係する
各ステイクホルダーがそれぞれの責任を共に果たしていくことが
必要である。今こうした流れの中で、
CSRのあり方が問われるよ
うになってきているのである。
経済活動そのものの中にある
現在のニーズ
今、問われているCSRの本質は、先述したように持続可能な社会
環境・社会の問題
■
なる。かつては グ ロ ー バ ル 化 が 進 む こ と で 途 上 国 も 豊 か に な る と
■ 持続可能な発展とは
きく進んだ。そこにはもちろんたくさんのプラス面はあるが、マイ
は 当 然 の こ と で あ る。企 業 経 営 そ の も の の 中 に そ れ ら が 組 み 込 ま
持続可能な社会をつくるためには、産業界のみならず各セクター
れていなければならないことが、今、
CSRとして問われている本
両 天 秤 に 乗 せ、バ ラ ン ス を 取 る と い う 考 え 方 は 必 ず し も 正 確 で は
はそれぞれに役割と責任を担う必要がある。政府セクター、そして
ナス面も顕在化する中、経済と環境・社会がバランスのある発展を
ない。両者は別個のものではなく、経済活動そのものの中に環境・
市場という企業が主体となるセクターがあり、
NPOや市民社会と
質的な課題なのである。
社 会 の 問 題 が 存 在 し て い る。経 済 活 動 に プ ラ スα と し て 環 境 配 慮
いう第三のセクターがある。従来、社会的な問題は基本的には政府
するべきだという議論が高まってくる。しかし、経済性と社会性を
をするのではなく、経済活動の中の、ものづくりから流通、廃棄ま
20 世紀型産業社会
への反省
グローバリゼーション、
NGO の台頭
→ CS Rを求める声
マルチ・ステイクホルダー
による取り組み
持続可能な発展
れるようになってきているのである。
には、ローカル/グローバルにおいて、より具体的な協働が求めら
が 求 め ら れ る よ う に な っ て き た。そ し て 現 実 の 課 題 の 解 決 の た め
可 能 な 社 会 の あ り 方 を 考 え る 時、各 セ ク タ ー に 新 し い 役 割 や 責 任
持 続 可 能 な 社 会 を ど の よ う に つ く っ て い く の か と い う こ と。持 続
SRとしてこれまでにはない役割が求められている。重要なのは、
そのような中で、一番大きな経済主体である企業に対しては、
C
︵コラボレーション︶なのである。
ではない。今求められているのは、まさにセクターを超えた﹁協働﹂
解 決 す る わ け で は な い し、ま たNPO/NGOの 力 だ け で も 十 分
もできない。一方、企業にだけ、市場にだけに任せることでそれが
の 限 界 も あ る し、細 か い 経 済 活 動 ま で の す べ て を 法 律 で 縛 る こ と
実際には、すべてのことに政府が対応することはできない。財政上
既 存 の 制 度 的 枠 組 み の 限 界 や﹁政 府 の 失 敗﹂に よ る も の で は あ る。
の存在意義を持つようになってきた。こうしたことが生じるのは、
ぶ つ か り 合 う。近 年 で は 国 境 を 越 え た 存 在 と し て 非 政 府 組 織 が そ
政 府 代 表 が 集 ま っ て く る と こ ろ で、各 国 政 府 の 利 害 が ど う し て も
割を果たすべきだという考え方もある。しかし、基本的には国連は
こ う し た 問 題 の 解 決 に は、国 連 の よ う な 国 際 機 関 が 中 心 的 な 役
が 担 う こ と だ と い う 理 解 が 主 だ っ た が、現 実 に は 一 国 の 政 府 だ け
図2 持続可能な発展ー歴史的な潮流
でのすべてのところで環境の問題をしっかりと捉えていくべきな
経済は環境・社会
の中で成り立つ
で は 対 応 し き れ な い 複 合 的 な 課 題 が 数 多 く 出 て き て い る。地 球 環
経済と環境・社会
のバランス
のである。社会的な問題に対しても、例えば人事管理があり、それ
■ 1990 年代∼
境問題をはじめとして、モノも人も国境を越える中、既存の境界線
新しい社会運動
にプラスα として人権配慮があるのではなく、人を雇えば、採用や
21世紀
■
経済成長が中心
環境・社会は与件
を越える様々な問題が顕在化してきた。
■ 1970 年代∼
昇 進 の 際 に、特 定 の 民 族 や 性 別 な ど で 差 別 が あ っ て は い け な い の
■ 持 続 可 能 な発展−歴史的な潮流
そ こ で は、経 済 で も 環 境 で も 社 会 政 策 で も 従 来 の 縦 割 り で は な
く、全体として問題を捉え、なおかつ政府の代表だけでなく、各ス
働組合、消費者団体、
NGOや有識者など、様々なステイクホルダー
当時、私はたまたまベルリンに滞在しており出席の機会を得た。産
年後=2050
て き た 各 分 野 に お け る 政 策 等 を ふ り 返 り、さ ら に 未 来 に 向 け て の
課題を率直に述べた。会議のテーマは、これから
に目指す﹂とし、
CSRはそれに重要な貢献をすると位置づけてい
争 的 で ダ イ ナ ミ ッ ク な 知 識 ベ ー ス の 経 済 の 構 築 を20 10 年 ま で
良い雇用と社会的統合を伴う持続可能な経済成長を可能にする競
ンスのスタイルである。今マルチ・ステイクホルダーによるガバナ
て取り組み、解決しようとする枠組みが、新しいグローバルガバナ
政府のみならず非政府組織など多様なステイクホルダーが協働し
ひ と つ の 組 織 だ け で は 解 決 が 困 難 な グ ロ ー バ ル な 課 題 に 対 し、
プロセスの時代
る。その翌年には、
﹁持続可能な発展﹂のための経済的発展、社会的
ン ス の あ り 方 が 求 め ら れ て お り、ガ バ ナ ン ス の ス タ イ ル が 大 き く
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持続可能な発展に向けた
テイクホルダーが同時にこの問題を考えていく必要があるという
持 続 可 能 な 発 展 と い う 考 え 方 に つ い て、ひ と つ の 大 き な 歴 史 的
の 代 表 が 集 ま り カ ウ ン シ ル を つ く っ て 議 論 し て い る。こ の カ ウ ン
世界的な潮流
転 換 点 に な っ た の は、19 9 2 年 に リ オ デ ジ ャ ネ イ ロ で 開 か れ た
シ ル の 置 き 方 に つ い て は 国 に よ っ て そ れ ぞ れ 異 な る。首 相 の 諮 問
認 識 が あ る。そ れ ぞ れ の 国 レ ベ ル で は、状 況 に 合 わ せ て、政 府、労
﹁国連環境開発会議﹂である。ここでは主として﹁環境﹂が議論され、
機関、議会の直轄など様々なスタイルがある。
年後の2002年、ヨハネスブルグにおけるリオ+ では、会
地 球 環 境 と 持 続 可 能 な 発 展 を ど う 考 え て い く か が 問 わ れ た。そ し
て
ドイツでは、2000年に German Council for Sustainable Development
を立ち上げている。2010年9月には 周年の会議を行ったが、
と な っ た。こ こ で は、経 済 成 長 と 公 平 性、天 然 資 源 と 環 境 の 保 全、
業界を含め各ステイクホルダーの代表が千人以上集まった会議に
年間に進め
社会開発の問題などが論議されたが、それは、
﹁持続可能な発展﹂を
という認識によるものである。
能 な 発 展 に 関 す る 国 家 委 員 会﹂を、す べ て の セ ク タ ー か ら 参 加 す
るマルチ・ステイクホルダーで設置すること、である。
ヨ ー ロ ッ パ で は こ れ を 受 け、2 0 0 2 年 の ヨ ハ ネ ス ブ ル グ で の
会 議 に 向 け てEU全 体 と し て の 戦 略 を 立 て、主 要 国 で も 国 家 戦 略
平等、環境保護について、ヨーロッパ全体としての戦略目標をまと
を中心にしたガバナンスがなされていた。それが変化し、国連が中
こ れ ま で は、世 界 一 の 軍 事 力 や 経 済 力 を ベ ー ス に し た ア メ リ カ
転換しつつある。
困﹂という7つの主要課題を提示している。
能な消費と生産﹂
﹁自然資源の保存と管理﹂
﹁健康﹂
﹁社会的統合﹂
﹁貧
め、
﹁気 象 変 動 と ク リ ー ン エ ネ ル ギ ー﹂
﹁持 続 可 能 な 交 通﹂
﹁持 続 可
を策定してきた。2000 年に発表したリスボン宣言では、
﹁より
マルチ・ステイクホルダー・
年 の ド イ ツ は ど う あ る べ き か に つ い て で あ り、未 来 へ の 展 望 を セ
ま た、リ オ デ ジ ャ ネ イ ロ の 会 議 に お い て﹁ア ジ ェ ン ダ
10
択 さ れ、そ の 中 で 次 の よ う な 提 案 が な さ れ て い る。
﹁持 続 可 能 な
40
クターを越えて熱心に議論していたのが印象的だった。
﹂が 採
おいて、メルケル首相が基調講演をし、ドイツで過去
議名が﹁環境﹂ではなく、
﹁持続可能な開発に関する世界サミット﹂
10
発 展 に 関 す る 国 家 戦 略﹂を 各 国 で 策 定 す る こ と、さ ら に﹁持 続 可
21
問うためには、経済・環境・社会の3 つを同時に考えていくべきだ
10
10
の 問 題 を 解 決 す る こ と も 難 し い。そ こ にNGOが 重 要 な 役 割 を 果
のは確かである。それでも、国の代表が集まる組織だけで、すべて
及 ぶ 国 が 加 盟 し、国 連 の あ り 方 や そ の 意 義 も 大 き く 変 化 し て き た
て き た 組 織 で あ る。も ち ろ ん 長 い 時 間 を 経 過 し て 今 で は19 2 に
しかし国連も本来は第二次世界大戦の戦勝国によってリードされ
心 と な っ て グ ロ ー バ ル に 統 治 し て い く べ き だ と い う 議 論 も あ る。
る の か と い う テーマについて、
E
考 え、ど う 進 め て い く の か、あ る い は 持 続 可 能 な 社 会 を ど う つ く
が 課 題 ご と に 議 論 す る こ と も あ っ た。し か し、CSR と は 何 か を
か ら 企 業 とNGO が 議 論 す る こ と は あ っ た し、企 業 と 消 費 者 団 体
消 費 者 問 題 に つ い て は 議 論 で き る わ け で は な い。も ち ろ ん、従 来
成 の 中 で 議 論 さ れ て き た が、生 活 領 域 に お け る 様 々 な 環 境 問 題 や
心 と し た 労 働 条 件 な ど は、政 府、経 営 者 団 体、労 働 組 合 の 3 者 構
のフォーマルな場でマルチ・ス
た す よ う に な っ て い る し、さ ら に 産 業 界 も 含 め て 各 セ ク タ ー が 協
働するような形が必要になってきている。
こういった背景から、マルチ・ステイクホルダーのパートナーシッ
テイクホルダーが 同 じ テ ー ブ ル に つ き 議 論 す る こ と は 従 来 な か っ
た こ と で あ る。こ れ は ガ バ ナ ン ス の 仕 組 み の 大 き な 変 化 で あ る と
くい。しかし、こういう形で協議することで、議論した内容に対し
意 思 決 定 に は 時 間 が か か る し、そ の 際 に は 単 純 な 多 数 決 も 採 り に
わけではない。さらに、その実行のためには非常に手間暇がかかる。
こには初めからこれがベストだというモデルやメカニズムがある
適切なガバナンスシステムをつくっていくことになる。ただし、そ
例もそう だ し、国 連 の 会 議 な ど で も こ の 流 れ が 目 立 つ よ う に な っ
いう形でないと今後は議論ができなくなるだろう。
ISOやEUの
画するもので、持続可能な社会をつくっていくにあたっては、こう
てのステイクホルダーが、その解決という共通の目標に向かって参
ナショナル、リージョナルのレベルで、特定の課題に関係するすべ
これがマルチ・ステイクホルダー・プロセスである。グローバル、
言える。
て は、各 ス テ イ ク ホ ル ダ ー も 責 任 を も っ て 実 行 し て い く こ と に な
てきた。
6 つのセクターからのステイクホルダーによって議論がなされた。
ある。政府、産業界、労働界、消費者団体、
NGOとその他有識者の
その典型例と言えるのが、
ISO26000の策定のプロセスで
ま た 、ガ バ ナ ン ス の ス タ イ ル が 変 わ っ て き た と い っ て も 、そ れ
ながら、その中で、ルールも同時に考えているのが現状である。 初 め か ら ル ー ル や モ デ ル が あ る わ け で は な い。具 体 的 な 議 論 を し
これにどう関わっていくべきだろうか。先述したように、それには
で は、こ の マ ル チ・ス テ イ ク ホ ル ダ ー・プ ロ セ ス を ど う 運 営 し、
そこでは多数決という形はとらず、全会一致をベースにし、ワーキ
から何かの課題と方向性を決めて進める審議会とは性格が大き
は 政 府 に 取 っ て 代 わ る も の で は な い 。む し ろ 政 府 の 意 思 決 定 の
EU で は、CSR に 関 す る 円 卓 会 議 が つ く ら れ て お り 議 論 が な
く 異 な る 。こ こ で は 政 府 も ひ と つ の ス テ イ ク ホ ル ダ ー と し て 、共
ンググループにも先進国と途上国からそれぞれ代表を出し合うと
さ れ て き て い る。こ こ も ま さ に マ ル チ・ス テ イ ク ホ ル ダ ー で 構 成
通 の 課 題 に 責 任 を 持 っ て か か わ る 。同 時 にN G O や 消 費 者 団 体
プ ロ セ ス に 情 報 を 提 供 す る も の で あ る だ ろ う 。多 様 な 議 論 が な
し て 議 論 し て い く も の。持 続 可 能 な 発 展 あ る い は 持 続 可 能 な 市 場
の 人 た ち も 、政 府 に 戦 略 目 標 な ど を 提 案 し て 終 わ り で は な く 、そ
いう形をとった。こうしたことは、
ISO規格の策定においても初
社 会 を ど う 構 築 し て い く の か に つ い て、NGO や 消 費 者 団 体、労
の課題に対する自分たちの責任と役割が何かを明確にして持ち
さ れ た 上 で ひ と つ の 方 向 性 が 出 て く る こ と に な り 、政 府 が 初 め
働 団 体 な ど を 含 め て 議 論 す る も の で あ る。こ れ ま で 賃 金 交 渉 を 中
めてのスタイルであった。
だと言える。
るし、協働の精神も生まれてくる。それはまさに民主的なプロセス
プが重要視されている。課題によって、多様なステイクホルダーが
U
トした。メンバー構成は、経済団体、労働団体、消費者団体、
NPO
能な未来に向けた社会的責任に関する円卓会議﹂という名称でスター
う 議 論 の 仕 方 や 協 力 し 合 う プ ロ セ ス が、持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 に
/NGO、金融セクター、専門家の代表からなる。同年8 月に中間
議題設定
自ら取り組み
図3 マルチ・ステイクホルダー・プロセス
会 議 で の 議 論 や 戦 略 目 標 に つ い て、政 府 が 政 策 の 中 に 明 確 に 位 置
づ け な い と、各 ス テ イ ク ホ ル ダ ー の 人 た ち が い く ら 懸 命 に な っ て
も、それだけでは問題解決には向かわない。マルチ・ステイクホル
ダ ー で 議 論 す る こ と の 大 切 さ と 課 題 を 学 び な が ら、少 し ず つ 具 体
的な取り組みが進むように期待したい。
CSR理解の深まりと
パラダイムの転換
こ の よ う に 見 て き た 時、企 業 に と っ てCSRは 余 裕 が あ れ ば 取
り 組 む よ う な も の で は な い こ と が 理 解 で き る だ ろ う。し か し な が
ら、2008 年からの世界金融危機を経て、
CSRが実際の経営の
中 に 組 み 入 れ ら れ て な い 企 業 が、残 念 な こ と に ま だ 多 い こ と も 明
らかになった。特に金融機関にはCSRへの誤解があったり、ガバ
ナ ン ス も 機 能 し な か っ た り し た た め、多 く の 問 題 が 生 じ た と い う
批判も強い。
それでも変化は確実に起こっている。2009年初めに、世界の
経 済 人 お よ び 学 者 やNGO、労 働 組 合 の 人 に 尋 ね た ア ン ケ ー ト
8
CEL Mar. 2011
帰 り、そ の 目 標 に 向 か い 自 分 た ち も 相 応 の 役 割 を 果 た す。こ う い
つながっていく。特に経済・社会・環境の領域が統一的に議論され
備﹂の4 つの課題を提示した。政権交代後一旦ストップしたが、2
報告を出したが、そこでは、
﹁ともに生きる社会の形成﹂
﹁地球規模
日本でも、これに類似した円卓会議が存在し、内閣府における国
010年3月に再スタートした。ワーキンググループをつくり、各
る よ う な 場 に お い て は、今 後 こ の プ ロ セ ス は 不 可 欠 な も の と な っ
民 生 活 審 議 会 総 合 企 画 部 会 で の 議 論 か ら 始 ま っ た。こ れ に は 私 も
ス テ イ ク ホ ル ダ ー の 代 表 が 入 っ て、4 つ の 課 題 に 関 し て 具 体 的 な
の課題解決への参画﹂
﹁持続可能な地域づくり﹂
﹁人を育む基盤の整
当 時 か ら 参 加 し て い る。こ の 時 に 出 し た 報 告 書 に は2 つ の 目 玉 が
戦 略 目 標 を 立 て る こ と が 進 め ら れ、20 1 1 年3 月 に 発 表 さ れ る
てくる。
あった。消費者庁と円卓会議の設置要請である。円卓会議について
見通しである。
消費者
団体
専門家
企業 /
経済団体
円卓会議
労働
組合
NPO/
NGO
政府 /
行政
こ こ で 最 も 重 要 な の は 政 府 の 中 で の 位 置 づ け で あ る。こ の 円 卓
は、2007年の秋から研究会を続け、翌年には準備委員会を設け
た。そ の 枠 組 み を 踏 ま え、2 0 0 9 年3 月 に﹁安 全・安 心 で 持 続 可
■ マルチ・ステイクホルダー・プロセス
︵ Sustainability Survey 2009
︶では、
﹁金融危機が持続可能な発展へ
のチャンスになるか﹂という設問に対し、ポジティブなインパクト
車など、北米やEU市場への依存度が高い企業、あるいは外国人持
の 取 り 組 み に 差 が あ る こ と も 事 実 で あ る。
ITや 機 械、電 気、自 動
し か し 日 本 の 企 業 に は 横 並 び の 意 識 が 強 い し、業 界 に よ っ て そ
% あ り、ネ ガ テ ィ ブ に 受 け と め る 人 の
を感じている人が全体の
ち株比率が高い企業は、
CSRに早い段階から積極的に取り組んで
いる。ただし、それらが実際の企業経営、ガバナンスの仕組みの中
%と拮抗している。
も う ひ と つ、世 界 の 経 営 ト ッ プ︵CEO︶を 対 象 と し た20 10
に ど こ ま で 本 当 に 組 み 込 ま れ て い る の か に つ い て は、ま だ 不 十 分
な面も多い。財務の部分だけでなく、非財務の部分までを含めたC
CSRに 関 連 し て﹁社 会 貢 献﹂を 進 め る 場 合 で も、例 え ば 環 境 保
SR経営がどこまでできるかがこれからの課題である。
経ったことを節目に行ったものである。
﹁〝サスティナビリティ〟と
全 に 取 り 組 むNPOな ど に 資 金 を 出 し て 支 援 す る だ け で は な く、
年
いう課題があなたのビジネスの将来にとって重要なテーマになり
自 分 た ち も そ こ に 一 緒 に 参 加 し、智 恵 や 経 験 を 共 有 す る こ と な ど
行 動原則である﹁国連グローバルコンパクト﹂を提唱してから
ますか﹂という設問に対し、 %のCEOが﹁重要﹂だと答えている。
10
年のアンケート調査︵ A New Era of Sustainability 2010.6
︶がある。
こ れ は、1 9 9 9 年 に ア ナ ン 国 連 事 務 総 長︵当 時︶が 企 業 の 自 主
40
さ ら に﹁環 境 や 社 会 や ガ バ ナ ン ス と い う 問 題 が 企 業 経 営 の 中 に 組
に 取 り 組 み、企 業 市 民 と し て 地 域 社 会 の 中 で そ の 役 割 を 果 た す こ
も、企業にとっては大切な役割になってきている。地域の課題に共
ある。2007 年の結果が %であり、金融危機を経てもこの間に
96
CSRは、地 球 社 会 を 持 続 可 能 な 未 来 に つ な ぐ 重 要 な 要 素 の ひ
より大きな成果も期待できる。
ビリティ〟は2007年にはビジネスの周辺課題であったが、今で
の転換がすでに始まっている。
本稿は、谷本寛治氏へのインタビューに
基づいて、編集室にて構成したものです
︵
︶
一橋大学大学院商学研究科教授。1955年大阪市生まれ。 年大阪
谷本寛治 ︵たにもと・かんじ︶
CEL
きている。持続可能な社会の実現に向けて、市民社会のパラダイム
とつである。その意味で、企業に求められる役割や責任は広がって
日本でも、金融危機後の2009年の日本経団連によるCSRに
% となっ
関 す る 調 査 で、
﹁CSR活 動 の 意 味 は 何 か﹂と い う 問 い に、
﹁持 続 可
能 な 社 会 づ く り へ の 貢 献﹂を 選 ん だ 企 業︵複 数 回 答︶は
ている。
日 本 企 業 の 現 状 を み る と、制 度 面 で は か な り 進 ん で き て い る こ
% を超える企
と が わ か る。千 社 を 超 え る 企 業 の デ ー タ ベ ー ス で あ る 東 洋 経 済 新
報 社 の﹃CSR企 業 総 覧﹄に よ る と、20 0 9 年 で
市 立 大 学 商 学 部 卒 業。 年 神 戸 大 学 大 学 院 経 営 学 研 究 科 博 士 課 程 修
79
了。 年経営学博士。 年一橋大学商学部教授。2000年から現職。
97 84
82
業がCSR部を設けている。また、約6割の企業がCSR担当の役
64
員を置いている。CSR報告書や環境報告書についても、4割を超
年﹁企業と社会フォーラム﹂
︵学会︶を立ち上げる。専門は、企業シス
89
︵東洋経済新報社︶など。
R︱ 企業と社会を考える﹄
︵NTT出版︶、
﹃SRIと新しい企業・金融﹄
テム論、企 業 社 会 論。主な著 書は、
﹃CSR経 営﹄
︵中 央 経 済 社︶、
﹃CS
11
ている。
はその重要性を増し、競争のルールを変え始めている﹂と結論づけ
% も 増 え て い る。こ う し た こ と か ら 同 調 査 で は、
﹁〝サスティナ
とも重要である。行政や地域のNPOなどと協働していくことで、
み込まれていますか﹂という設問に対しても、肯定する回答が %
93
72
え る と こ ろ が 出 し て い る な ど、多 く の 企 業 がCSRに 積 極 的 に 対
応していることがわかる。
9
48
24
Fly UP