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稲WCS利用の手引き
稲WCS利用の手引き 稲WCSの運搬と保管 運搬方法はいろいろありますが、品質の良い稲WCSにするのはロールベールを変形させず、ラッ プに穴やキズをつけずに運ぶことです。 ラップの破れは速やかにハウス補修用のテープで補修してください。また、ロールベールを強く掴 むと内部に空気の層ができカビの原因になります。 保管中にカラス・ネズミ・イノシシ等の被害に合わないよう対策をとっておきましょう。 <運搬方法のいろいろ> グリッパーと軽トラックを 使ったピストン搬送 フォークとトラックを使っ た搬送 ユニック車を使った搬送 <鳥獣害対策のいろいろ> イノシシ・シカ対策は鉄網等で 頑丈に。電気柵も有効です ネズミ対策はパレットやシー トを敷き、天敵のイタチが通 れるように隙間を確保します カラス対策は防鳥ネットの被覆 とテグス張りが効果的です 給与はいつから 約1か月でサイレージになりますが、稲WCSは繊維の 消化率を良くするために2か月程度経過してから給与を 始めるのが理想です。 刈取り時期や供給先によって使い分けができるよう、作 業導線を考慮して保管場所の配置を決めましょう。 給与前に飼料分析を行いましょう。 分析依頼は最寄りの普及センター までご連絡ください。 稲WCS1ロールの生産コストと飼料価値 県内で流通している稲WCSは250kgのロールで3,500円程度です。これを輸入スーダン 乾草に換算すると約6,000円の飼料価値になります。 しっかり保管して、廃棄量を少なく利用できれば、飼料費の大幅なコストダウンになります。 稲WCSの栄養価 稲WCSの栄養価は熟期でみると出穂期はCPが高く、黄熟期はTDNが高くなります。 黄熟期刈りの稲WCSはCP、TDNの値がスーダングラス乾草とほぼ同じです。 しかし、収穫方法によっては、籾の多くが未消化で排出されものもあるので、実際にはTDN の値は少し低めに見る必要があります。 DM中(%) 水分 飼料名 熟 期 (%) CP TDN NDF(繊維) スーダン乾草との代替 出穂期 稲WCS 糊熟期 黄熟期 稲ワラS スーダン(1番・出穂) 乾牧草 スーダン(2番・出穂) チモシー(1番・開花) アルファルファ(1番・開花) 69.3 65.2 62.7 68.8 15.5 10.4 14.1 16.8 8.8 7.8 7.0 7.1 6.9 4.7 10.1 19.1 50.2 54.6 55.8 42.9 54.5 52.1 62.2 57.7 59.9 48.3 48.5 59.9 62.5 61.3 64.8 44.1 ができますが、稲WC Sは繊維含量がやや 低くく、消化率も低い ので注意します! 参考文献 日本飼養標準(2006年版) βカロテンと硝酸態窒素 稲WCSに含まれるβ カロテンの含量は収穫時期やサ イレージ調製の方法により大きく変動します。収穫時期 が早いと高く、遅くなると低くなります。また2日以上の 予乾を行うと稲ワラ程度まで低くなります。 中毒の原因となる硝酸態窒素は、稲自身が硝酸塩を蓄 積しにくい特性を持っているので心配はありません。 硝酸態窒素 はほとんど 検出されま せん! 通年給与を目指した利用体系を考えましょう 稲WCSは保存環境が良ければ1年以上品質を低下させずに利用するのが理想です。 供給体制を整えて計画的に利用すれば通年給与が可能です。 利用体系としては、早生品種を前半に、中生・晩生品種を後半に利用します。 乳酸菌の添加やラップの巻き数を調製することで、生産コストを下げ品質を落とさずに 通年給与ができます。 <酪農50頭規模の通年給与例> 1日1ロール利用(5kg/頭・日給与)の場合 ①早生品種はラップを6重巻きして早期給与。年内利用分には乳酸菌を添加。 ②中生・晩生品種はラップを8重巻きして後半給与。稲の状態が悪いものは乳酸菌を添加。 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 ①早生品種 (150ロール:2ha) 収穫 調製 ②中生・晩生品種 (220ロール:3ha) ①を給与する 給与 ①を給与する ②を給与する 発酵品質や栄養成分のチェックをしましょう 稲WCSの発酵品質や栄養成分は稲の品種や熟期、保存期間等により差があります。 給与前に必ず分析を行いましょう。特に発酵品質は家畜の健康に大きな影響を与える ので、スコアの低いサイレージは思い切って廃棄するようにしましょう。 分析結果を確認 しましょう! スコア 81点以上 :優 80~61点 :良 60点以下 :不良 PH 4以下が理想です。 5以上になってき たら早めに給与! 品質の悪い稲WCS が多発した場合は、 供給先や生産者に 連絡しましょう! 原因を究明して次年 度の改善につなげま しょう! 先ず色や臭いをチェックしましょう カビの部分は廃棄しましょう 給与量の目安 乳 牛 乳牛への1日1頭当たりの最大給与量の目安は、下表のとおりです。 良質な稲WCSは嗜好性が高いので、高泌乳牛では食べ過ぎにならないよう 注意しましょう。 収穫時期の遅れた稲WCSは繊維含量や消化性が高くないので、他の良質 な乾草と併用するようにしましょう。 <泌乳牛> (水分含量約65%の場合) 乳量 40kg以上 40~30kg 30~20kg 20kg以下 給与量 3~5kg 5~7kg 7~8kg 8~9㎏ <乾乳牛> 区分 前期 給与量 9~12㎏ 後期 6~9㎏ 分娩前 5kg程度 <育成牛> 月令 給与量 9ケ月 3~4㎏ 13ケ月 5~8kg 5ケ月 1~2㎏ 17ケ月 10㎏程度 肉用牛 肥育牛への稲WCSの1日1頭当たりの最大給与量の目安は、下表のとおり です。 増体や肉質に遜色がないといわれていますが、β カロテンの含有量が多い傾 向にあるので、黒毛和種の肥育中期には給与を控えるようにします。 <肥育牛:乳用種去勢> 区分 給与量 (水分含量約65%の場合) 前期(7~13ケ月年齢) 後期(14~21ケ月年齢) 6~8㎏ 3~4㎏ <肥育牛:黒毛和種ビタミンA制御型> 区分 肥育前期 肥育中期 肥育後期 給与量 4~6㎏ 0㎏ 2kg <育成牛:黒毛和種> 月令 給与量 4ケ月 1~2㎏ 6ケ月 3~4㎏ 8ケ月 5~6kg 繁殖和牛 繁殖和牛への稲WCSの1日1頭当たりの最大給与量の目安は、下表のとお りです。 稲WCSは多給すると過肥につながり、繁殖成績の低下を招くことがあるので 注意しましょう。稲WCSは収穫機械や刈取り熟期の違いにより栄養価に差が 出るので、成分値を参考に給与量を決めましょう。 栄養価や発酵品質の変動を考慮し、乾草等との併用が安全です。 <繁殖和牛:黒毛和種> (水分含量約65%の場合) 区分 経産牛(通年) 給与量 18~20㎏ 監修:滋賀県農業技術振興センター