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テーマ 人間の利益のために汚染される水
テーマ 人間の利益のために汚染される水 Ⅰ 世界で起こっている主な環境汚染 Ⅱ 身近で起きている環境問題 ①IC 工場∼ハイテク汚染∼ ②ゴルフ場の農薬問題 ③農薬の影響 Ⅲ 実験 汚染を減らすための努力 ①無農薬ゴルフ場∼千葉県の取り組み∼ Ⅳ まとめ 私たちのすべきこと 熊本県立熊本高等学校 2年9室 氏名 本田 カテゴリーNO. 9 カテゴリー名称 農・水産・環境科学 系統 クラス NO. カテゴリー顧問 1 浦 先生 1 テーマ 人間の利益のために汚染される水 ・ テーマ設定の理由 この頃環境問題が色々と取り上げられ話題となっているが、それらは人間による汚染が ほとんどであり、私たちの身近なところで生じている問題も多い。そこで私たち人間にと ってもっとも身近で必要不可欠な水について調べてみることにした。 ・ 研究の目的 現在人間の利益のためだけに汚染されている水の現状とその対策。 ・ 仮説 私たちは人間の利益のためだけに環境を汚染しつづけている、そのことの報復を最小限 度に抑えるためにも汚染拡大を抑える対策法が何かあるのではないか? Ⅰ世界で起こっている環境汚染 今日、世界では様々な環境汚染が進行しています。大気汚染、海洋汚染、土壌汚染、 水質汚染など例にあげるときりが無いほど種類は様々です。しかし、それら汚染の原因の ほぼ全ては人間が引き起こしたものなのです。それは、例えば大気汚染の例でいうと、温 暖化に関係があるとされる二酸化炭素は人間や人間の建てた工場、車などから排出され る量が増加したことから進行していると考えられています。またオゾン層の破壊も人間がフ ロンガスを大量に使用していた ことで起こったことです。そこで私は人間にとってもっとも 身近で必要不可欠である水において、人間が引き起こした汚染について調べてみること にしました。 水質汚染の例として挙げられるのは、工場排水や産業廃棄物の放置による地下水汚 染、生活廃水や合成洗剤の使用による富栄養化汚染、雨水による空気中の有害物質や ほこり・塵・タバコの吸殻・道路のアスファルト・動植物の死骸や排泄物の河川への流入、 ダム公害などです。ただ、今挙げた例はほんの氷山の一角でしかありません。 Ⅱ 身近で起きている環境問題 ① IC 工場∼ハイテク汚染∼ 2 地下水汚染については水道水を地下水でまかなっている熊本県としては深刻な問題 です。特に熊本にはシリコンアイランドと呼ばれるほど IC 工場が数多く進出しており、IC 工場では地下水汚染で問題になっている有機溶剤が金属洗浄に使われています。これ らの有機溶剤が回収タンクから漏出したり工場内の敷地内に捨てられたり、下水管に流さ れ漏れでた場合、それらが地下に浸透し、地下水が汚染される可能性があります。そこで 1990年に井戸の調査が行われました。すると、基準値を超越した有機溶剤が検出された ため、1991年には廃棄物処理法が1989年からは水質汚濁防止法が制定されたため、 これらの有機溶剤が地下に放出されることはほとんどなくなりました。しかし1993年の調 査では基準値を超える値が検出されているので継続的な調査が未だに続けられていま す。他にも有機溶剤は排気口からの汚染経路があり、屋外に排気された化合物のうちで 重いものは地表付近に漂い、局部的に高濃度になった所が雨などで地表に達し地下に 浸透して地下水汚染となる場合があります。これらIC工場の有機溶剤による地下水汚染 は日本だけではなくアメリカ、カリフォルニア州のシリコンバレーでも確認されており、実際 にこの水を飲用していた婦人の出産異常が多発しています。これらのIC工場の地下水汚 染はハイテク汚染とも呼ばれています。このようなことからIC工場で環境対策や環境保護 活動を行っている企業が多いのですが、実際に地下水への影響が分かるのは数十年か ら数百年先と言われているので本当に汚染が起こっていないかどうかは実際には分から ないのが現実です。 ② ゴルフ場の農薬問題 さらに熊本にはゴルフ場が数多くあります。私が調べた だけでも県内に44箇所のゴルフ 場がありました。ゴルフ場は山を切り開き森林を伐採するだけでなく、グリーンと呼ばれる 芝生を美しく守るためにたくさんの農薬を大量に散布しています。もともとゴルフ場は雑草 などの生えにくい植生のスコットランドで完成されたものであり、高温多湿で植物の繁殖が 盛んな日本では農薬を使わざるをえない状況なのです。そんななか1987年に制定され た「総合保養地域整備法」通称リゾート法によりゴルフ場の建設が急増しました。ゴルフ場 建設による樹林の減少、生態系の変化など自然環境への影響や、芝生育成のための肥 料、そして農薬による水質汚濁が心配された中で、1989年11月に北海道で「養殖魚全 滅事件」がおきました。北海道の芝には冬、雪をかぶっている間に、菌が発生して枯れる、 雪腐れ病というものがあります。そのた め養魚場の上流のゴルフ 場が殺菌剤の有機銅を 散布した結果、大雨により有機銅が川に流れ込み、下流にある養魚場で飼っていた魚、 計9万匹が全滅しました。この事件はゴルフ場の農薬汚染が実際の害を引き起こしたはじ めてのケースで、結果として農薬の急性毒性、つまり魚毒性を証明したのです。現在は市 販されている農薬・殺虫剤・成長剤・殺菌剤には 成分や毒性、そして魚毒性の割合が明 記されています。この事件にあるように、ゴルフ場は 山間部で川の上流に作られることが 多く水源が汚染されることが心配されています。そこで各都道府県がゴルフ場の排水口を 検査したところ、微量の農薬が数件検出されたことから、1990年に「ゴルフ場農薬暫定指 3 導指針」を環境省が、「ゴルフ場農薬水道水質目標」を厚生省が定めました。また農林水 産省も「ゴルフ場における農薬の適正指導について」の通達を出すなどし、各都道府県も 指導要綱を製作するなどして対応しました。その結果、2003年の検査では農薬が水道 水基準を超えて検出されることはありませんでした。しかし、やはり数年に何回かは基準 値を超えることもあるようで、安心はできません。それに農薬の慢性毒性については「発ガ ン性」、胎児に奇形をもたらす「催奇形性」、生殖能力に影響のある「繁殖毒性」、遺伝子に 変異をもた らす「変異原性」などが分かっています。そのた め農薬を使わないゴルフ場と いうものが誕生しています。また、ゴルフ場からでる排水をいった ん浄水器で浄化し場内 の施設で再利用するなどの動きも見られ、環境対策の活動も積極的に行われるようにな ってきました。各都道府県でも定期的に検査の結果を広報するなど しています。熊本県 でも『ゴルフ場における農薬の安全使用指針』が平成4年に作られており、これに基づい て平成14年6月から8月にかけてゴルフ場において使用される農薬に関する水質調査が 行われました。(現在は2年に1回ローリング調査が行われているようです。)ゴルフ場の排 出水(調整池の水も含む)、及びゴルフ場所有井戸水を対象とした調査でしたが、結果と してある1つのゴルフ場の排出水から、1種類の農薬が、ある1つのゴルフ場所有の井戸 水から1種類の農薬が検出されました。いずれの農薬も管理目標値を越えるものではあり ませんでしたが注意が必要です。 農 薬 排出水 除草剤 農 アシュラム 薬 井戸水 殺菌剤 フルトラニル 管理指針値 検出濃度 検出された mg/l mg/l ゴルフ場の数 2 0.007 1 管理目標値 検出濃度 検出された mg/l mg/l ゴルフ場の数 0.2 0.004 1 ③農薬の影響力 実験 そこで私は農薬には いったいどれくらいの影響力があるのかを実験してみることにしまし た。今回は、実際にホームセンターなどで市販されている一般的な農薬を使い生物への 影響力を観察することにしました。今回私が使ったのは一般的な殺虫剤に含まれている 「ダイアジノン」と言う成分が主成分の殺虫剤です。 4 ダイアジノン:(ダイアジノン、バルサン) 人体毒性=慢性毒性は マガモの受精卵に塗布する実験で奇形。受精鶏 卵1個に 1mgのダイアジノンで100%が奇形、ダイアジノンを 投与された 妊娠マウスから生まれた 仔は成長が遅く、行動異 常も見られた。 環境汚染=河川などの水質汚染、水道水からの検出も報告されている。 ダイアジノンは環境省がゴルフ 場の農薬流出実態調査に使う農薬濃度指針値の表にも 掲載されています。その表では0.05mg/Lが指針値とされています。また、今回、生物代 表として実験に用いた「ミジンコ」は魚毒性評価の試験でも実際に使われています。 そこで今回は ①普通の水道水 ②100ccの水道水に薬品を0.01g溶かした水溶液 ③100ccの水道水に薬品を0.001g溶かした水溶液 の3つを用意し、同じ場所から捕ってきたミジンコを数匹ずつそれぞれに入れて対照実験 をしました。水溶液の蒸発を防ぐため直射日光の当たらない場所に置き、容器に蓋をして 観察をはじめました。 ↑0.001gの農薬と水100cc ↑0.01gの農薬と水 100cc 5 ↑ミジンコを入れる容器に同量ずつ水溶液と水を入れた状態 ミジンコを入れてもすぐには変化がなく 30 分ごとに観察することにしました。しかしこれと 言った変化もおきず、観察をはじめて2日目の朝に 0.01gの殺虫剤が入った水溶液のミ ジンコが赤く変色し、死亡していました。その数時間後に0.001gの殺虫剤が入った水 溶液のミジンコも死亡していました。ミジンコが赤く変色していたのは、ミジンコは甲殻類 の生き物なので加熱したり、死んだりすると赤くなる性質があるからでした。 この結果から生物に対する毒性はたとえ僅かな数値の差でも関係性があり、ダイアジノン の魚毒性の効果は恐ろしいものだということが分かりました。 Ⅲ 汚染を減らすための努力 ① 無農薬ゴルフ場∼千葉県の取り組み∼ 環境汚染が増えてきた中で、汚染を防止しようと色々な対策を試みる動きもあります。そ の1例として千葉県が平成2年に「ゴルフ場の無農薬化」を宣言しています。もともと千葉 県はなだらかな地形が多いためゴルフ場の需要が多く、ゴルフ場の数も多くあります。そ んな中、マスコミによってゴルフ場使用農薬の実態に関する報道が目立ち始めたころ、当 時の千葉県知事である沼田氏の提案により昭和63年に県内の百余りのゴルフ場の農薬 使用実態調査が行われました。それによると県内のゴルフ場1ヶ所あたりの年間平均使用 量は除草剤710kg、殺虫剤430kg、殺菌剤860kg、防虫剤190kg の計2.19tという膨大 な量が使用されていることが分かりました。そこで県は全国に先駆けて「農薬の安全使用 に関する指導要綱」を施行し、各ゴルフ 場の管理課長クラスを1人「農薬管理指導責任 6 者」に指定し農薬使用量報告を義務付けました。また、「環境アセスメント指導要綱」にも 改正を加えました。しかしその後も県内のゴルフ場は増え将来、全国一のゴルフ場県と成 るのは確実であると見られていました。平成2年に県内104の即設ゴルフ 場の平成元年 度農薬使用状況報告をまとめたところ18ホール換算の1ゴルフ場当たりの農薬平均使用 量は2.43t、全ゴルフ場の年間農薬使用量は316.2tとなっており1年間に200k増えた ことになりました。また農薬は グリーンに使用されるよりも他の芝地に使用される割合の方 が大きいことも分かりました。そこで農薬の環境汚染に対する周辺住民の不安解消を最 重要課題とし新設ゴルフ場での農薬使用禁止を決断したのでした。「無農薬宣言」により 「ゴルフ場等の開発事業に関する指導要綱」の1部を改正し、ゴルフ場の開発許可などを 申請するさいに農薬を使用しないと言う契約書の提出を義務付けました。また既設のゴル フ場に対してもできる限り農薬を使わないよう要請しました。指導要綱の実施後も新設す るゴルフ場は増えました が、無農薬化の技術がまだ確立されていなかったため、害虫の 被害が多発しました。そこで「県芝草技術研究会」が発足し様々な実験を繰り返し害虫に 強い品種などの研究をしました。平成 11 年 4 月 1 日から平成 12 年 3 月 31 日までの調 査では農薬を使用している104のゴルフ場においての農薬総使用量は 133.1tで、調査を 開始した平成元年度の 316.2tに比較して 183.1t、つまり 57.9%減少し、過去最低の値とな っています。また、1 ゴルフ場当たりの平均使用量(18 ホ-ル換算)は 1,011.9kg で、平成元 年度に比較して 1,392.7kg 減少しています。また現在は耐病性品種「チバグリーン B-1」 の育成や天敵線虫や性フ ェロモンを利用した害虫の防除技術、土壌の酸度調整による 病害の抑制技術、フェアウエイの 20 ㎜カットによる雑草の抑制技術などが開発されて折り 更なる技術の開発も見込まれています。熊本にも無農薬ゴルフ場は存在しており、土壌中 のバクテリアと火山岩のミネラルを利用した「BM 技術」を芝の管理に用いたゴルフ場とな っています。 Ⅳ まとめ 私たちのすべきこと 今回私は、人間の利益のために汚染される水を中心に調べてきました。第一に気がつい たことは環境汚染の問題の多さです。環境問題の資料を検索すると図書館でもインター ネットでも膨大な資料が出てきました。そこでさまざまな汚染問題や公害について調べて 感じたのは、自分たちが生きていくためにしょうがなく自然を破壊するのはともかく、たった 1部の人間のためだけにた くさんの害を生じることをするのはおかしいではないかというこ とです。今回主に調べたゴルフ場の件にかかわらず、排気処理の費用を浮かせるために 産業廃棄物を不法放棄して有害物質を撒き散らしたり、自然観光のた めに山を削り駐車 場を作るなどという矛盾したことをしたりしています。また戦争だって大きな環境破壊なの です、爆撃によって森を焼き払ったり、毒ガスを撒いた り、爆弾を落とした り、核爆弾など の環境への影響は最悪です。日本でも最近こんなことが起こっています。 7 旧日本軍が製造した毒ガス類による環境調査を実施している環境省は22日、神奈川県 平塚市の旧相模海軍工廠跡地付近の井戸水から、毒ガス「くしゃみ剤」が分解されてでき る有機ヒ素化合物を検出したと発表した。検出量は1リットル当た り0.001ミリグラムで、ヒ 素の環境基準の10分の1の量だった。H16.03.24 他にもそこまで必要とされていないのにもかかわらずダムを作ることで、付近の生態系を 狂わせたりもしています。そんなことをするのも人間であり、またそれらを防止し、改善して いくのも人間なのです。だからこそ、これからの社会を支えていく私た ちは正しい知識を つけていかなければならないと思います。ここに、このような言葉があります。 「多くの鳥がさえずり、花が咲き乱れ、小川には魚が泳いでいた農村に、次第に死の影が 忍び寄り、空を飛ぶ鳥も野に咲く花もなくなり、名状しがたい静寂が広がってきた。鳥は卵 を温めても雛には かえらない。リンゴの花は咲くけれども実は ならない。空にも、小川にも 死の影が忍び寄ってきた。この傷ついた世界にしたのは人間であった。」 これは「沈黙の春」という有機塩素系農薬について取り上げている有名な本にかかれた言 葉です。ここに書かれたような世界にならないた めにも、私た ちはもっと環境問題につい て深く考え、限りある資源を浪費する今の生活態度から見直さなければなりません。環境 汚染は私たちの目の届かないところで確実に地球の寿命を縮めているのです。 参考資料 優しい環境化学 地球に優しいライフスタイル 今「水」が危ない 今日本が汚染される 地球環境問題に挑戦する 図説水の汚れと海洋汚染 日本の公害10 http://www.eic.or.jp/index.html http://www.jcpa.or.jp/index.htm http://www.pref.saitama.jp/A06/BC01/bozyo/q&a/gyoukai/qa30.htm http://www2.ezbbs.net/07/gnet/ http://www.pref.hokkaido.jp/kseikatu/ks-kkhzn/contents/mizukankyo/ippann/ domizuhozen/dohozen.files/doumizu.htm http://www.pref.hokkaido.jp/kseikatu/ks-kkhzn/contents/chemical/golf/jigyous ya.htm http://www.dojindo.co.jp/glocal/pestiside.html http://www.sunfarm.co.jp/donguri/ 8